(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149329
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】窒化珪素基板の製造方法、窒化珪素基板の製造装置および窒化珪素基板
(51)【国際特許分類】
C04B 35/591 20060101AFI20231005BHJP
C01B 21/068 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C04B35/591
C01B21/068 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057844
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 馨
(72)【発明者】
【氏名】今村 寿之
(57)【要約】
【課題】連続的な窒化処理により効率的な窒化珪素基板の製造を可能とするとともに、窒化率を向上させた窒化珪素基板を安定して得ることができる窒化珪素基板の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】珪素を含むシート状成形体50を、加熱機構13を有する窒化処理炉10の入口から搬入する工程、窒化処理炉10内に搬入されたシート状成形体50を、入口から連続的に移送しながら、窒素雰囲気下で窒化させて窒化処理基板を得る工程、窒化処理基板を窒化処理炉10の出口から搬出する工程、窒化処理基板を焼結して窒化珪素基板とする工程、を備え、窒化処理の窒素雰囲気下における酸素濃度を100ppm以下に制御する窒化珪素基板の製造方法および製造装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)珪素を含むシート状成形体を、加熱機構を有する窒化処理炉の入口から搬入する工程、
(b)前記窒化処理炉内に搬入された前記シート状成形体を、前記入口から連続的に移送しながら、窒素雰囲気下で窒化させて窒化処理基板を得る工程、
(c)前記(b)工程の後、前記窒化処理基板を焼結して窒化珪素基板とする工程、
を備える窒化珪素基板の製造方法であって、
前記(b)工程において、前記窒素雰囲気下における酸素濃度を100ppm以下に制御する、窒化珪素基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の窒化珪素基板の製造方法において、
前記窒化処理基板の中央部および端部における窒化率が90%以上であり、
前記窒化処理基板の前記中央部と前記端部との窒化率の差が10%以内である、窒化珪素基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の窒化珪素基板の製造方法において、
前記窒化処理炉内への窒素供給流量が、前記窒素供給流量を前記窒化処理炉内の容積で除した値が、6~310[1/h]となる範囲である、窒化珪素基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の窒化珪素基板の製造方法において、
前記窒化処理炉に、前記入口から出口に向かって複数の領域を設定し、前記複数の領域の一部または全部において、酸素濃度を100ppm以下に制御する、窒化珪素基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の窒化珪素基板の製造方法において、
前記複数の領域のうち、前記酸素濃度を制御する各領域で、前記窒化処理炉内に窒素を供給させる供給配管と、前記窒化処理炉内の内部雰囲気を排出させる排出配管と、を備える、窒化珪素基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の窒化珪素基板の製造方法において、
前記シート状成形体の平面形状は、矩形形状であり、
前記シート状成形体の短辺が100mm以上である、窒化珪素基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の窒化珪素基板の製造方法において、
前記(b)工程の前に、前記窒化処理炉内において、前記シート状成形体の脱脂をする脱脂工程を備える、窒化珪素基板の製造方法。
【請求項8】
珪素を含むシート状成形体を、窒素雰囲気下で窒化処理するための窒化処理炉と、
前記シート状成形体を、前記窒化処理炉の入口から搬入させ、前記窒化処理炉内を移送し、前記窒化処理炉の出口から搬出させる搬送機構と、
前記窒化処理炉内の前記窒素雰囲気下における酸素濃度を100ppm以下に制御する制御機構と、
を有する、窒化珪素基板の製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載の窒化珪素基板の製造装置において、
前記窒化処理炉が、前記入口から前記出口に向かって複数の領域が設定され、
前記制御機構は、前記複数の領域のそれぞれにおいて、酸素濃度を100ppm以下に制御する機能を有する、窒化珪素基板の製造装置。
【請求項10】
請求項9に記載の窒化珪素基板の製造装置において、
前記複数の領域には、それぞれ、前記窒化処理炉内に窒素を供給する供給配管と、前記窒化処理炉内の内部雰囲気を排出する排出配管と、を備える、窒化珪素基板の製造装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の窒化珪素基板の製造装置において、
前記窒化処理炉が、前記窒化処理の前に、前記シート状成形体を脱脂する脱脂領域を備える、窒化珪素基板の製造装置。
【請求項12】
中央部および端部における窒化率が90%以上であり、
前記中央部と前記端部との窒化率の差が10%以内である、窒化珪素基板。
【請求項13】
請求項12に記載の窒化珪素基板において、
前記窒化珪素基板の熱伝導率が、110W/(m・K)以上である、窒化珪素基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化珪素基板の製造方法、窒化珪素基板の製造装置および窒化珪素基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セラミックス基板と金属回路および金属放熱板とを接合したセラミックス回路基板は、半導体モジュール、パワーモジュール等に利用されている。
【0003】
このパワーモジュール等に使用されるセラミックス回路基板は、高い絶縁性、高い機械的強度、高い熱伝導率等をもつセラミックス基板に、金属回路や金属放熱板を接合して形成され、金属回路にさらに半導体チップ等が接合される。この半導体チップは、その動作時に発熱するため、その放熱を行うことができるように、セラミックス基板、金属回路および金属放熱板には、良好な熱伝導率が要求される。それと同時に、セラミックス基板に対しては、同時に高い絶縁性(電気抵抗率)も要求される。
【0004】
近年、このような特性を有するセラミックス基板として、窒化珪素(Si3N4)を主成分とするものが注目され、種々検討されている。
【0005】
このような窒化珪素基板を製造するにあたっては、珪素粉末からなるシート状成形体を窒素雰囲気中、1200℃以上1500℃以下で加熱する窒化工程を含み、真空・加圧雰囲気炉を使用するバッチ方式の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、効率的に製造するために、金属ケイ素と窒素源を含む反応ガスとの反応により窒化ケイ素とする際に、トンネル型プッシャー炉等の連続炉を使用して連続的に窒化を行う方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5836522号公報
【特許文献2】特開平8-175811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のようにバッチ方式の場合、連続的な処理により窒化珪素基板を得ることができず、製造効率を一定以上向上させることができず、製造コストが高くなるという問題がある。
【0009】
また、この点を改善し連続的な処理を可能とした特許文献2では、上記製造コストの問題が解消し得ると考えられるが、この場合、金属ケイ素の窒化反応が十分に進まない場合があることを本発明者らは発見した。その場合、窒化反応が十分に進まなかった未反応珪素の存在量が多くなり、その後の焼結工程等の昇温過程で溶融してしまい、均一な窒化体を得ることができないという問題が生じるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、連続的な窒化処理により効率的な窒化珪素基板の製造を可能とするとともに、窒化率を向上させた窒化珪素基板を安定して得ることができる、窒化珪素基板の製造方法および製造装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施の形態における窒化珪素基板の製造方法は、(a)珪素を含むシート状成形体を、加熱機構を有する窒化処理炉の入口から搬入する工程、(b)前記窒化処理炉内に搬入された前記シート状成形体を、前記入口から連続的に移送しながら、窒素雰囲気下で窒化させて窒化処理基板を得る工程、(c)前記(b)工程の後、前記窒化処理基板を焼結して窒化珪素基板とする工程、を備える窒化珪素基板の製造方法であって、前記(b)工程において、前記窒素雰囲気下における酸素濃度を100ppm以下に制御する。
【0012】
一実施の形態における窒化珪素基板の製造装置は、珪素を含むシート状成形体を、窒素雰囲気下で窒化処理するための窒化処理炉と、前記シート状成形体を、前記窒化処理炉の入口から搬入させ、前記窒化処理炉内を移送し、前記窒化処理炉の出口から搬出させる搬送機構と、前記窒化処理炉内の前記窒素雰囲気下における酸素濃度を100ppm以下に制御する制御機構と、を有する。
【0013】
一実施の形態における窒化珪素基板は、中央部および端部における窒化率が90%以上であり、前記中央部と前記端部との窒化率の差が10%以内である。
【発明の効果】
【0014】
一実施の形態の窒化珪素基板の製造方法および製造装置によれば、連続的な窒化処理により効率的な窒化珪素基板の製造を可能とするとともに、窒化率を向上させた窒化珪素基板を安定して得ることができる。
【0015】
一実施の形態の窒化珪素基板によれば、窒化率が向上されたものであり、良好な窒化珪素基板を提供できる。そして、このような窒化珪素基板を用いることにより、製品の歩留まりを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態における窒化処理装置の概略構成を示した図である。
【
図2】シート状成形体の積層体の一構成例を示した図である。
【
図3】シート状成形体の積層体の他の構成例を示した図である。
【
図4】
図1の窒化処理装置における窒化処理炉の、変形例を示した図である。
【
図5】本実施の形態における窒化処理基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図や側面図であってもハッチングを付す場合があり、また、断面図であってもハッチングを省略する場合がある。
【0018】
以下、本実施の形態における窒化珪素基板の製造方法、窒化珪素基板の製造装置および窒化処理基板について説明する。
【0019】
<窒化珪素基板の製造方法>
本実施の形態における窒化珪素基板の製造方法は、珪素粉末、焼結助剤、バインダ、溶剤等からなる原材料を用い、これら原材料を混合してスラリーを作製し、そのスラリーをシート状に成形することでシート状成形体(グリーンシート)とし、そのシート状成形体を脱脂、窒化、焼結と順次処理することで、窒化珪素基板とする公知の製造方法に従って製造できる。
【0020】
(1)シート状成形体の窒化
まず、珪素を含むシート状成形体を用意する。次いで、このシート状成形体を加熱することにより、成形体中の有機バインダを除去する脱脂工程と、シート状成形体を窒素雰囲気で加熱することにより、成形体中に含まれる珪素(Si)と窒素(N)を反応させて窒化させる窒化工程と、を行う。これらの工程は、別々の炉で逐次的に行ってもよいし、同じ炉において連続で行ってもよい。
【0021】
本実施の形態においては、この脱脂工程および窒化工程を行うにあたって、シート状成形体の主面に、粉末状の窒化硼素(BN)を塗布し、窒化硼素(BN粉)層を形成する。この窒化硼素(BN)は、シート状成形体を複数枚積層する場合には、焼結後の分離を容易にする分離材としても機能するため、複数のシート状成形体を積層する場合には、シート状成形体同士の間に窒化硼素(BN)が存在することとなり、焼結後に得られる焼結体積層体から各焼結体を容易に分離できる。
【0022】
このように窒化硼素粉(BN粉)を塗布したシート状成形体を、脱脂(有機バインダ等の除去)したのち、900~1300℃で脱炭素し、窒素雰囲気下で、所定の温度まで昇温して窒化させる。このとき成形体に10~1000Paの荷重をかけながら加熱するのが好ましい。なお、脱脂は800℃以下の温度で行うのが好ましい。
【0023】
なお、上記分離材として厚さ約3~20μmのBN粉層を用いるのが好ましい。各シート状成形体の一面にBN粉のスラリーを、例えばスプレー、ブラシ塗布またはスクリーン印刷することによりBN粉層を形成することができる。BN粉は95%以上の純度および1~20μmの平均粒径(D50)を有するのが好ましい。
【0024】
窒化処理において、窒化時の窒素分圧は0.05~0.7MPaが好ましく、0.07~0.2MPaがより好ましい。窒化温度は、1350~1500℃が好ましく、1400~1450℃がより好ましい。窒化温度まで加熱した後の保持時間は、3~12時間が好ましく、5~10時間が好ましい。
【0025】
窒化温度が1350℃未満の場合、または保持時間が3時間未満である場合、シート状成形体に未反応の珪素粉末が残存し、窒化工程後に行う焼結工程によって緻密体を得ることができない場合がある。窒化温度が1500℃超であると、珪素粉末が窒化する前に溶融してしまうことで窒化せずに残存する場合があったり、焼結助剤成分が揮発して焼結工程において焼結助剤成分が不足し、緻密な焼結体を得ることが難しくなる場合があったりする。保持時間が12時間超である場合、焼結助剤成分が揮発して焼結工程において焼結助剤成分が不足し、緻密な焼結体を得ることが難しくなる場合がある。
【0026】
(2)窒化処理成形体の焼結
次いで、得られた窒化処理成形体を焼結により緻密化する。
【0027】
この焼結時の窒素分圧は、0.1~0.9MPaが好ましく、0.5~0.9MPaがより好ましい。焼結温度は、1800~1950℃が好ましく、1850~1900℃がより好ましい。焼結温度まで加熱した後の保持時間(焼結時間)は、3~12時間が好ましく、5~12時間が好ましい。焼結温度が1800℃未満の場合、または保持時間が3時間未満である場合、窒化珪素粒子の成長や再配列が不十分で緻密体を得ることができない場合がある。焼結温度が1950℃超の場合、または保持時間が12時間超の場合、焼結助剤成分が揮発して不足し、緻密な焼結体を得ることが難しくなる場合がある。窒化処理成形体を焼結により緻密化する工程(焼結工程)は、窒化工程と別の炉で逐次的に行ってもよいし、同じ炉において連続で行ってもよい。
上記のような方法により、窒化珪素基板が得られる。
【0028】
この窒化珪素基板は、典型的には、矩形形状であり、各辺を100mm以上のものとして得ることが好ましい。窒化珪素基板は、熱伝導率が良好で、上記した用途、例えば、パワーモジュール等の用途に好適である。その熱伝導率は、100W/m・K以上が好ましく、110W/m・K以上がより好ましく、130W/m・K以上がさらに好ましい。上記詳細に説明した、窒化工程を有する窒化珪素基板の製造方法においては、窒化珪素の純度を向上できるため、熱伝導率も110W/m・K以上のものが容易に製造でき、好ましい。
【0029】
上記のように製造される窒化珪素基板は、相対密度が98%以上の緻密な構造を有していることが好ましい。窒化珪素基板の相対密度が98%未満であると高い熱伝導率が得られない。このような緻密な窒化珪素基板は、ボイドによる熱伝導の阻害が起こりにくく、特に本実施の形態の窒化珪素基板は、厚み方向の熱伝導率が110W/m・K以上であることが好ましい。
【0030】
また、窒化珪素基板の曲げ強度は、例えば600MPa以上であることが好ましい。後述するように、窒化珪素基板にろう材を介して金属板などの回路を接合したパワーモジュール用の窒化珪素回路基板とした場合、実装時や駆動時に高い応力がかかるため、その方式にもよるが曲げ強度は600MPa以上であることが好ましい。また、曲げ強度が600MPa以上と高いことにより、窒化珪素基板を薄くすることも可能である。
【0031】
窒化珪素基板の厚さは、特に限定されるものではなく、任意の厚さとすることができる。例えば、半導体素子や電子機器の絶縁放熱基板として用いる場合、その厚さは、0.05~2.5mmが好ましく、0.1~1mmがより好ましく、特に、パワーモジュール用の窒化珪素回路基板とする場合には、0.2~0.7mmがさらに好ましい。焼結後の窒化珪素基板の厚さは、焼結時の厚さへの影響を考慮して、シート成形工程におけるシート成形体の厚さを調整することで、所望の厚さに調節することができる。
【0032】
[連続的窒化処理]
本実施の形態においては、上記の窒化珪素基板の製造方法で説明した窒化処理時に、連続的に窒化処理でき、かつ、窒化率を向上した窒化処理基板を得ることができるようにしている点に特徴を有する。この連続的窒化処理について、以下、詳細に説明する。
【0033】
この連続的窒化処理を説明するにあたっては、まず、この窒化処理に用いる窒化処理装置について説明する。
【0034】
(窒化処理装置)
ここで用いる窒化処理装置としては、例えば、
図1に示した窒化処理装置1が一例として挙げられる。
図1に示した窒化処理装置1は、装置を側面から見たときの概略構成を示しており、窒化処理炉10と、搬送機構20と、制御機構30と、を有して構成されている。
【0035】
窒化処理炉10は、その内部に、シート状成形体50を搬入する入口と、搬入したシート状成形体50を窒化処理して、窒化処理基板とした後、その窒化処理基板を炉外へ搬出するための出口とを有し、入口にはシャッター11が、出口にはシャッター12がそれぞれ設けられている。シャッター11およびシャッター12は、それぞれ所定のタイミングで開閉して、シート状成形体50の搬入および窒化処理基板の搬出をスムーズに行うことができるようになっている。
【0036】
窒化処理炉10は、窒化処理を行うための加熱機構13を有している。加熱機構13は、窒化処理炉10の内部を搬送されるシート状成形体50に対して、所望の温度となるように加熱するものであり、例えば、ヒーター等の公知の加熱機構で構成される。加熱機構13は、その加熱温度に応じて複数の加熱機構13を配置することが好ましい。
【0037】
この加熱機構13は、通常、入口側から出口側に向かって移送されるシート状成形体50に対して、まずは、徐々に加熱していくようにして窒化処理温度(最高処理温度)まで加熱し、窒化処理を行った後、今度は徐々に冷却していくように温度設定される。
【0038】
この加熱機構13は、シート状成形体50および窒化処理基板の表と裏を所望の温度に加熱できるように、シート状成形体50を搬送する搬送機構20の上方と下方に配置することが好ましい。
【0039】
また、窒化処理炉10は、その内部に窒素(N2)ガスを供給するための供給配管14と、その内部雰囲気を外部に排出する排出配管15とを有する。供給配管14は、窒素ガスを収容する窒素タンク(図示を省略)に接続されており、この窒素タンクから供給配管14を通じて窒化処理炉10内に窒素ガスが供給される。排出配管15は、窒化処理炉10内の内部雰囲気を外部に排ガスとして放出する。このとき、排出配管15は、排出される排ガスを無害化して放出可能とするように除害装置(例えば、燃焼除害装置等)に接続されていることが好ましい。この場合、排ガスは無害化処理された後、外部雰囲気に放出される。
【0040】
このように供給配管14と排出配管15とを有し、所定の濃度の窒素ガスを供給することができるようにすることで、窒化処理炉10内の窒素雰囲気、圧力などを所定の状態に保つことができる。
【0041】
窒化処理炉10内には、上記したように、その入口にシャッター11が、出口にシャッター12が設けられており、所定のタイミングで開閉でき、この供給配管14および排出配管15と合わせて窒化処理炉10内を所定の窒素雰囲気に保つことができるようになっている。
【0042】
なお、供給配管14と排出配管15を設置する位置は、窒化処理炉10内の内部雰囲気を所定の状態とできれば特に限定されない。例えば、供給配管14を出口側に、排出配管15を入口側に接続するように設けて内部雰囲気を出口側から入口側(搬送方向と反対の方向)に流れるようにしてもよいし、供給配管14を入口側に、排出配管15を出口側に接続するように設けて、内部雰囲気を入口側から出口側(搬送方向と同じ方向)に流れるようにしてもよい。また、供給配管14と排出配管15を共に窒化処理炉10の上方にまたは下方に設けてもよいし、一方を上方、他方を下方に設けてもよい。
【0043】
シャッター11は、シート状成形体50の搬入時に開け、搬入後に閉じるように、シャッター12は、窒化処理基板の搬出時に開け、搬出後に閉じるように動作させる扉である。このように動作させることで、不必要に外部雰囲気と内部雰囲気との入れ替え等が生じることがなくなり、窒化処理炉10の内部雰囲気を所定の雰囲気に保つことができる。
【0044】
また、
図1に示した窒化処理装置1は、処理を円滑に、かつ、安定して行うことができるように、窒化処理炉10の入口側に前室16を、出口側に後室17を、それぞれ設けることが好ましい。
【0045】
前室16は、窒化処理炉10の入口側に設けられ、窒化処理炉10の入口と外部雰囲気とを接続する空間(前室)を形成する部材であり、この前室16にはシャッター16aが設けられている。シャッター16aは、シート状成形体50の搬入時に開け、搬入後に閉じるように動作させるものである。
【0046】
この前室16内には、シャッター16aを開けてシート状成形体50を搬入する際に外部雰囲気が取り込まれる。そのため、シート状成形体50を前室16から窒化処理炉10へ移送する前に、その内部雰囲気を窒化処理炉10の窒素雰囲気下と同等となるようにガス置換室を設けることが好ましい。このガス置換室を設けることにより、次いでシャッター11を開けた際にも、窒化処理炉10内の窒素雰囲気が大きく変動することを抑制でき、安定した窒化処理を行うことができる。
【0047】
後室17は、窒化処理炉10の出口側に設けられ、窒化処理炉10の出口と外部雰囲気とを接続する空間(後室)を形成する部材であり、この後室17にはシャッター17aが設けられている。シャッター17aは、窒化処理基板の搬出時に開け、搬出後に閉じるように動作させるものである。
【0048】
この後室17内には、シャッター17aを開けて窒化処理基板を搬出する際に外部雰囲気が取り込まれる。そのため、シート状成形体50を後室17から装置外部へ移送した後に、その内部雰囲気を窒化処理炉10の窒素雰囲気下と同等となるようにガス置換室を設けることが好ましい。このガス置換室を設けることにより、次にシャッター12を開けた際にも、窒化処理炉10内の窒素雰囲気が大きく変動することを抑制でき、安定した窒化処理を行うことができる。
【0049】
なお、前室16および後室17では、上記のように、ガス置換を行うようにすることが好ましい。このとき、窒化処理炉10と同様に、窒素ガスを供給できる供給配管およびその内部雰囲気を外部に排出できる排出配管を設け(図示は省略)、これらを動作させることで、前室16および後室17の内部を、窒化処理炉10内の内部雰囲気と同等の窒素雰囲気とすることができるようにできる。
【0050】
搬送機構20は、入口から窒化処理炉10内に搬入されたシート状成形体50を、出口方向へ向かって搬送する部材である。この搬送機構20としては、例えば、ローラーコンベアやベルトコンベア等のように、一定の速度でシート状成形体50および窒化処理基板を搬送可能とする公知の装置を用いることができる。
【0051】
搬送機構20は、シート状成形体50の搬送動作を常に一定の動作で行うようにしてもよいし、処理状況に応じて搬送速度を変更したり、搬送動作と停止動作を所定のタイミングで繰り返し行うようにしたりしてもよい。このように動作させることで、窒化処理炉10内でのシート状成形体50および窒化処理基板の加熱状態を制御でき、また、シート状成形体50の窒化処理炉10内への搬入および窒化処理基板の窒化処理炉10外への搬出を所定のタイミングで行うようにすることもできる。
【0052】
なお、搬送機構20は、前室16の内外、後室17の内外にも設けておき、窒化処理炉10内の搬送機構20と併せて、シート状成形体50を外部から前室16内、窒化処理炉10内、後室17内、へと順次搬送し、最後に装置外部へ搬出させるように一連の搬送経路を構成するようにしておくことが好ましい。このとき、1つの搬送機構20から他の搬送機構20への移送は、搬送機構20同士を協働させて行ってもよいし、ロボットアーム等により行ってもよい。
【0053】
制御機構30は、窒化処理炉10内の窒素雰囲気において、その酸素濃度を100ppm以下に保つための制御を行う装置である。本実施形態においては、窒化処理にあたって、酸素濃度が高いと、シート状成形体50の珪素と窒素との反応が十分に進まずに未処理の珪素の割合が多くなり、100ppm以下とすることで、珪素と窒素が十分に反応し、未処理の珪素の割合が少なくなることから、その酸素濃度を所定の範囲に制御しようとするものである。
【0054】
この制御機構30は、窒素ガスの供給配管14に設けられたバルブ31と配線31aで接続され、内部雰囲気を外部に排出する排出配管15に設けられたポンプ32と配線32aで接続されている。バルブ31は、窒化処理炉10へ供給する窒素ガスの流量を調節する作用を奏し、ポンプ32は、窒化処理炉10内の内部雰囲気を外部へ排出する作用を奏する。このポンプ32は、内部雰囲気を外部へ排出する流量を調整できるものであってもよい。制御機構30は、これらバルブ31およびポンプ32の動作を、配線31aおよび配線32aを介して制御信号を送信することで調節し、窒化処理炉10内が所定の窒素雰囲気となるように機能する。
【0055】
さらに、制御機構30は、窒化処理炉10内の窒素雰囲気における酸素濃度に応じて、このバルブ31とポンプ32とを動作させ、供給配管14と排出配管15を流れるガスの流量を調節することができる。
【0056】
具体的には、窒化処理炉10内の酸素濃度が100ppmを超えている場合、バルブ31の開度を大きくして、供給する窒素ガスの流量を多くし、酸素濃度が100ppm以下の場合、バルブ31の開度は維持し、供給する窒素ガスの流量も変更することなくそのままとするように、制御機構30を動作させる。
【0057】
酸素濃度の測定は、一定の時間ごとに窒化処理炉10内の内部雰囲気をサンプリングして測定してもよいし、窒化処理炉10に、その内部雰囲気の酸素濃度を計測できる酸素濃度計を設けて、常時測定できるようにしてもよい。酸素濃度計を設ける場合、酸素濃度計と制御機構30とを接続し、その測定結果をフィードバックさせて、制御機構30を動作させるようにすることもできる。
【0058】
なお、上記説明では、制御機構30がポンプ32に接続されている場合を例示したが、排出配管15にはポンプ32を設けていなくてもよい。この場合、制御機構30は、バルブ31の動作のみを調整することで酸素濃度を制御するようにする。
(窒化処理方法)
次に、上記説明した窒化処理装置1を用いた窒化処理方法について説明する。
【0059】
まず、前室16の外部に配置された搬送機構20に、シート状成形体50を載置する。このとき、搬送機構20には、搬送方向に複数枚のシート状成形体50を並べて配置する。
【0060】
次に、シート状成形体50を前室16に向かって搬送しながら、シャッター16aを開け、シート状成形体50を前室16内に移送する。シート状成形体50が前室16内に移送されたら、シャッター16aを閉め、前室16内に窒素ガスを供給し、窒化処理炉10内と同等の窒素雰囲気とする。
【0061】
次いで、シート状成形体50を窒化処理炉10に向かって搬送しながら、窒化処理炉10の入口のシャッター11を開け、シート状成形体50を窒化処理炉10内に移送する(搬入工程)。シート状成形体50が窒化処理炉10内に移送されたら、シャッター11を閉める。
【0062】
窒化処理炉10内に移送されたシート状成形体50は、窒化処理炉10内を搬送機構20により出口側に向かって搬送しつつ、加熱機構13により所定の温度に加熱される。このとき、加熱機構13は、入口から出口に向かって徐々に加熱温度が高くなるように設定され、窒化処理を行う最高温度に到達した後は、徐々に温度が低くなるように設定される。
【0063】
より具体的には、例えば、入口側から出口側に向かって順番に、350℃から1100℃へ徐々に温度が高くなるように加熱機構13を設け、シート状成形体50の脱脂および予熱を行う。次いで、1100℃から1400℃へ徐々に温度が高くなるように加熱機構13を設け、シート状成形体50を窒化処理し、窒化処理基板とする(窒化工程)。このとき、窒化処理を行う最高温度の加熱機構13を複数設定しておいてもよい。
【0064】
さらに、1400から300℃程度へ徐々に温度が低くなるように加熱機構13を設け、得られた窒化処理基板の温度を低下させる。最後に、300℃から室温へと徐々に温度が低くなるようにして、窒化処理基板を窒化処理炉10から搬出する準備を行う。窒化処理基板を室温にする最後の段階では、加熱機構13を設けないようにして、温度を低下させるようにしてもよい。
【0065】
次いで、得られた窒化処理基板を出口に向かって搬送しながら、窒化処理炉10の出口のシャッター12を開け、窒化処理基板を窒化処理炉10から後室17内に移送する(搬出工程)。窒化処理基板が後室17内に移送されたら、シャッター12を閉める。
【0066】
そして、窒化処理基板を後室17のシャッター17aに向かって搬送しながら、シャッター17aを開け、窒化処理基板を後室17外に移送する。窒化処理基板が後室17外に移送されたら、シャッター17aを閉め、後室17内に窒素ガスを供給し、窒化処理炉10内と同等の窒素雰囲気とする。
【0067】
上記の動作を、前室16側の搬送機構20に整列したシート状成形体50について、順番に処理し、また、この搬送機構20には所定のタイミングでシート状成形体50を載置して、上記処理を連続して行う。
【0068】
また、上記窒化処理炉10内での窒化処理については、処理前に予め供給配管14から窒素ガスの供給および排出配管15から内部雰囲気の排出をしておき、窒化処理炉10内を所定の窒素雰囲気としておく。さらに、窒化処理を行っている間においても、上記窒素ガスの供給と内部雰囲気の排出を継続して行い、窒化処理炉10内の雰囲気を所定の窒素雰囲気に維持するようにする。
【0069】
ここで、本実施の形態における所定の窒素雰囲気とは、その酸素濃度が100ppm以下となる雰囲気である。窒化処理炉10内に供給する窒素ガスとしては、窒素ガス(N2ガス)、窒素と水素の混合ガス(N2+H2ガス)などの酸素ガスを含有しないガスを用いることができる。窒素と水素の混合ガスとする場合、混合ガス中に水素を1~5%含有するガスが好ましく、2~4%含有するガスがより好ましい。
【0070】
窒化処理炉10内の窒素雰囲気中の酸素濃度を100ppm以下とするには、窒化処理炉10内の窒素雰囲気における酸素濃度を測定し、その酸素濃度に応じて、制御機構30によりバルブ31とポンプ32の動作を調節して行うことができる。
【0071】
例えば、一定の時間ごとに窒化処理炉10内の内部雰囲気をサンプリングしたり、窒化処理炉10に、その内部雰囲気の酸素濃度を計測できる酸素濃度計を設けたりして、酸素濃度を測定し、その測定結果に応じて制御機構30を動作させる。
【0072】
具体的には、窒化処理炉10内の酸素濃度が100ppmを超えている場合、バルブ31の開度を大きくして、供給する窒素ガスの流量(窒素供給流量)を多くし、酸素濃度が100ppm以下の場合、バルブ31の開度は維持し、供給する窒素ガスの流量も変更することなくそのままとすればよい。
【0073】
なお、窒化処理炉10内を窒素雰囲気とするために、窒素ガスは常時供給するようにするが、このとき、窒素ガスの流量は、窒化処理炉10内の容積に応じて設定すればよく、例えば、窒素ガスの流量を窒化処理炉10内の容積で除した値が6~310[1/h]であることが好ましい。より具体的には、容積が0.15~0.3m3の場合には、0.9~93m3/hの範囲とすることが好ましい。
【0074】
また、
図1では、シート状成形体50を搬送機構20の上に載置して整列した図を例示しているが、シート状成形体50は、通常、複数枚重ね合わせた積層体50Aとして処理を行う。このように積層体とすることで、一度に多数枚の窒化処理を行うことができるため処理の効率が向上する。
【0075】
積層体50Aとしては、
図2に示したように、窒化硼素からなるBNセッタ100を上下方向に間をあけて複数段配置し、そのBNセッタ100間に積層体50Aを配置するようにしてもよいし、
図3に示したように、この積層体50AをBNセッタ100で挟み込み、上側のBNセッタ100には重しとなるペレットを載せるようにしてもよい。
【0076】
さらに、シート状成形体50(積層体50A)を、搬送方向に対して垂直方向かつ水平方向(横方向)に複数列となるように搬送機構20上に載置して窒化処理を行うこともできる。このように配置することで、窒化処理炉10内に同時に搬入するシート状成形体50の枚数を多くすることができ、より処理効率を向上できる。
【0077】
そして、このようにして得られた窒化処理基板を、上記した焼結処理に付して、窒化珪素基板が得られる。
【0078】
(変形例)
窒化処理について、上記説明した構成とできるが、窒化処理炉10において、入口から出口に向かって複数の領域を設定し、その複数の領域のそれぞれにおいて、酸素濃度を100ppm以下に制御するようにすることもできる。
【0079】
この場合、上記複数の領域は任意の大きさ、数に設定することができ、各領域の境界にはその一部を区切る壁を設けてもよいし、壁などは設けずに窒化処理炉10の内部を区切るものがない1つの空間としてもよい。なお、壁を設ける場合でも、空間を完全に区切るようにはしないようにする。
【0080】
図4に示したように、例えば、窒化処理炉10の内部を加熱機構13が上下一対で設けられているところを1つの領域とすることができる。この場合、入口側から出口側まで、順番に領域R1~領域R8とする。そして、各領域において、その酸素濃度を100ppm以下となるように制御する。
【0081】
このとき、酸素濃度の制御は、上記説明した供給配管14と排出配管15を、各領域にそれぞれ設け、これら供給配管14と排出配管15とを制御機構30(図示せず)により各領域でそれぞれ個別に制御できるようにすればよい。
【0082】
また、
図4では、全領域にそれぞれ供給配管14と排出配管15とを設けている例を記載しているが、その一部に設け、残りの部分には設けないようにしてもよい。この場合、入口側から実際に窒化処理を行う領域には供給配管14と排出配管15とを設け、窒化処理後の温度を低くしていく領域にはこれら配管を設けないようにする例が挙げられる。
【0083】
この変形例のように供給配管14を複数有する場合において、窒化処理炉10内へ供給する窒素ガスの流量は、全ての供給配管14から窒化処理炉10内に供給される窒素ガスの総量であり、この総量が上記説明した窒素ガスの流量の範囲となるようにすることが好ましい。
【0084】
[その他]
本実施の形態における特徴的な構成については上記で説明したが、以下、シート状成形体50の作製、焼結して得られた窒化珪素基板についても、詳細に説明する。
【0085】
(スラリーの作製)
シート状成形体50を作製するために、まず、基板の原料となるスラリーを作製する。ここで用いられるスラリーは、例えば、珪素粉末に、焼結助剤として希土類元素酸化物およびマグネシウム化合物を添加して原料粉末とし、これをメディア分散等の方法で粉砕して、作製できる。以下、使用する原料、調製操作について詳細に説明する。
【0086】
(1)珪素
ここで用いる珪素としては、工業的に入手可能なグレードの珪素粉末を使用することができる。粉砕前の珪素は、メジアン径D50が6μm以上、BET比表面積が3m2/g以下、酸素量が1.0質量%以下、および珪素中の不純物C量が0.15質量%以下の粉末が好ましく、メジアン径D50が7μm以上、BET比表面積が2.5m2/g以下、酸素量が0.5質量%以下、および珪素中の不純物C量が0.10質量%以下の粉末がより好ましい。珪素粉末の純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましい。
【0087】
珪素に含まれる不純物酸素は、反応焼結によって得られる窒化珪素基板の熱伝導を阻害する要因の一つであり、できるだけ少ない方が好ましい。さらに本実施の形態では、後述するように、マグネシウム化合物からの酸素量を制限することで、珪素粉末に含まれる不純物酸素およびマグネシウム化合物からの酸素の総量を調整するのが好ましい。このとき、粉末原料において、窒化珪素に換算した珪素に対して、酸素の総量が0.1~1.1質量%の範囲とすることが好ましい。
【0088】
また、珪素に含まれる不純物炭素は、反応焼結によって得られる窒化珪素基板において、窒化珪素粒子の成長を阻害するおそれがある。その結果、緻密化不足となり熱伝導や絶縁が低下する要因の一つとなる。
【0089】
なお、本願明細書においてBET比表面積(m2/g)は、BET比表面積計でBET一点法(JIS R 1626:1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」)によって求めた値であり、メジアン径D50(μm)は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布において累積度数が50%となるときの粒径である。
【0090】
本実施の形態の製造方法においては必須ではないが、原料粉末に窒化珪素の粉末を含んでもよい。ただし、珪素に比べて窒化珪素を使用した場合はコストがかかるので、窒化珪素の使用量はできるだけ少ない方がよい。また、原料粉末に窒化珪素を使用した場合、後述する窒化工程の寄与が小さくなるため、窒化珪素の使用量は、珪素(窒化珪素換算)の20mоl%以下が好ましく、10mоl%以下がより好ましく、5mоl%以下がさらに好ましい。
【0091】
(2)希土類元素酸化物
ここで用いる希土類元素酸化物としては、入手が容易であり、また、酸化物として安定なY、Yb、Gd、Er、Lu等の酸化物が好ましい。希土類元素酸化物の具体例としては、Y2O3、Yb2O3、Gd2O3、Er2O3、Lu2O3等が挙げられる。希土類元素酸化物の含有量は、珪素(窒化珪素に換算)、希土類元素酸化物(三価の酸化物換算)およびマグネシウム化合物(MgO換算)の合計に対して、0.5mol%以上3mol%未満である。
【0092】
希土類元素酸化物の含有量が0.5mol%未満である場合、焼結助剤としての効果が不十分となり密度が十分に上がらないため好ましくない。一方、希土類元素酸化物の含有量が3mol%以上である場合、低熱伝導率の粒界相が増えることにより焼結体の熱伝導率を下げるとともに、高価な希土類元素酸化物の使用量が増えることとなり好ましくない。希土類元素酸化物の含有量は、好ましくは0.6mol%以上3mol%未満であり、より好ましくは1mol%以上2mol%以下である。
【0093】
なお、本明細書において、珪素が全て窒化したときに得られる窒化珪素(Si3N4)のモル数と、希土類元素酸化物を三価の酸化物RE2O3(REは希土類元素)に換算したときのモル数と、マグネシウム化合物をMgOに換算したときのモル数との合計を、単に「珪素(窒化珪素に換算)、希土類元素酸化物(三価の酸化物換算)およびマグネシウム化合物(MgO換算)の合計」ということもある。
【0094】
(3)マグネシウム化合物
マグネシウム化合物としては、珪素(Si)、窒素(N)または酸素(O)を含有するマグネシウム化合物を1種または2種以上使用することができる。特に、酸化マグネシウム(MgO)、窒化珪素マグネシウム(MgSiN2)、珪化マグネシウム(Mg2Si)、窒化マグネシウム(Mg3N2)等を使用するのが好ましい。
【0095】
ここで、マグネシウム化合物の合計に対して、87質量%以上がMgSiN2となるように選択することが好ましい。87質量%以上のMgSiN2を使用することにより、得られる窒化珪素基板中の酸素濃度を低減することができる。マグネシウム化合物中のMgSiN2が87質量%未満である場合、焼結後の窒化珪素粒子内の酸素量が多くなることで焼結体の熱伝導率が低い値となるおそれがある。マグネシウム化合物中のMgSiN2は好ましくは90質量%以上である。
【0096】
窒化珪素基板中のマグネシウム化合物の含有量(MgO換算)は、珪素(窒化珪素に換算)、希土類元素酸化物(三価の酸化物換算)およびマグネシウム化合物(MgO換算)の合計に対して、8mol%以上15mol%未満である。マグネシウム化合物の含有量が8mol%未満である場合、焼結助剤としての効果が不十分となり密度が十分に上がらないため好ましくない。マグネシウム化合物の含有量が15mol%以上である場合、低熱伝導率の粒界相が増えることにより焼結体の熱伝導率を下げるため好ましくない。マグネシウム化合物の含有量は、好ましくは8mol%以上14mol%未満であり、より好ましくは9mol%以上13mol%未満である。
【0097】
(4)粉砕
珪素粉末に、焼結助剤として希土類元素酸化物およびマグネシウム化合物を所定の比率となるように添加して、分散媒(有機溶剤)および必要に応じて分散剤を添加し、ボールミルで粉砕しスラリー(原料粉末の分散物)を作製する。メディアは直径5mm以上、スラリー中の原料粉末の濃度(スラリー濃度とも言う。)は40質量%以上が好ましく、6時間以上粉砕するのが好ましい。メディアは、窒化珪素の熱伝導率を下げる要因となるAlやFeを主成分としない材質のものを使用するのが好ましく、窒化珪素製が特に好ましい。分散媒および分散剤の種類は、特に限定されるものではなく、シート成形する方法等に応じて任意に選択することができる。
【0098】
分散媒としては、エタノール、n-ブタノール、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等を使用することができ、分散剤としては、例えば、ソルビタンエステル型分散剤、ポリオキシアルキレン型分散剤等を使用できる。分散媒の使用量は、例えば、上記粉末の総量に対して40~70質量%が好ましく、分散剤の使用量は、例えば、上記粉末の総量に対して0.3~2質量%が好ましい。なお分散後に必要に応じて分散媒の除去、または他の分散媒への置換を行ってもよい。
【0099】
粉砕を行う時間は使用するミリング装置や出発原料の量、特性等により異なるため特に限定されないが、原料粉末を十分に粉砕、混合できるように時間を選択することが好ましい。粉砕時間は例えば6時間以上48時間以下で行うのが好ましく、12時間以上24時間以下で行うのがより好ましい。粉砕時間が短すぎる場合、十分な粉砕ができず本実施の形態で求める特性の窒化珪素基板が得られない場合がある。粉砕時間が長過ぎる場合、不純物酸素量が徐々に増加し、窒化珪素基板の熱伝導率が低下する場合がある。
【0100】
粉砕後の珪素粒子は、その酸素量が、1.0質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましい。できるだけ少ない酸素量の珪素粒子とすることにより、窒化珪素の熱伝導率を向上させることができる。なお、焼結助剤と混合した後に珪素粒子のみの酸素量を測ることは難しいので、試料として焼結助剤を混合しない珪素粒子のみのスラリーを同じ粉砕条件で作製しておくと、このスラリーを珪素粒子の酸素量の測定に用いることができる。例えば、スラリーから珪素粒子を抽出し、珪素粒子について不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法の酸素分析装置を用いて酸素量を測定できる。
【0101】
粉砕によって得られたスラリー中の珪素粒子のBET比表面積(m2/g)、メジアン径D50(μm)および酸素量は、希土類元素酸化物およびマグネシウム化合物を添加しない以外、同様にして粉砕した珪素粒子を用いて測定した値として得られる。希土類元素酸化物の粉末およびマグネシウム化合物の粉末は、珪素粉末に対してごく少量しか添加していないので、粉砕効率にほとんど影響を与えず、このようにして求めた値はスラリー中の珪素粒子と実質的に同じであると考えられる。
【0102】
(シート状成形体の作製)
得られたスラリーに、必要に応じて分散媒、有機系バインダ、分散剤等を加えて、必要に応じて真空脱泡を行い、粘度を所定の範囲内に調整し、塗工用のスラリーを作製する。上記スラリー粘度は1Pa・s以上15Pa・s未満の範囲内に調整するのが好ましい。スラリーの粘度は、回転型粘度計を用いて、温度:25℃、回転数10rpmで測定した値である。場合によっては、上述したように、分散媒の除去や置換を行ってもよい。
【0103】
作製した塗工用スラリーを、シート成形機を用いてシート状に成形し、所定の大きさに切断した後、乾燥することによってシート状成形体を得る。塗工用スラリー作製に用いる有機系バインダは、特に限定されないが、PVB系樹脂(ポリビニルブチラール樹脂)、エチルセルロース系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。分散媒、有機系バインダ、分散剤等の添加量は塗工条件に応じて適宜調整するのが好ましい。
【0104】
塗工用スラリーをシート状に成形する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ドクターブレード法等のシート成形法を用いることができる。
【0105】
また、搬送用フィルムの材質は、公知の搬送用フィルムに用いられているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル等が挙げられる。
【0106】
このドクターブレード法における、塗工用スラリーの成形速度は600mm/min以下とするのが好ましい。本実施の形態で用いる塗工用スラリーは、チクソトロピー性を有するため、塗工用スラリーがドクターブレード法のドクターブレードを通過する際に、塗工用スラリーにせん断応力がかかり、塗工用スラリーの粘度の低下が起こる。従って、成形速度が600mm/minを超えると、塗工用スラリーが容易に流動し空孔の要因となる泡を巻き込み易くなり緻密化が阻害される場合がある。
【0107】
搬送用フィルム上に形成されたシート状のスラリーは、その後所定の温度および湿度に設定された乾燥室に搬送され、溶剤を蒸発させて乾燥したシート状成形体となる。このとき、塗工用スラリーの乾燥速度は0.8質量%/min以下とするのが好ましい。塗工用スラリーの乾燥速度が0.8質量%/minを超えると、分散媒が急激に揮発することによりシート内に気泡が生成し易くなることがある。塗工後のシートは乾燥ゾーンを通過させることで、徐々に昇温して乾燥させるために、乾燥過程における乾燥速度は一定ではなく変動する。そのため、最大乾燥速度が0.8質量%/minを超えないようにするのが好ましい。
【0108】
成形工程において形成するシート状成形体の厚さは、最終的に得られるセラミックス基板の厚さが所望の厚さ、例えば、0.15mm以上0.8mm以下、となるように調整でき、また、シート状成形体は、必要に応じて、打ち抜き機等で所定の大きさにカットを行うことができる。
【0109】
このときシート状成形体は、その平面形状が矩形形状(正方形も含む)とすることができ、このシート状成形体の短辺が100mm以上であることが好ましく、短辺が100~300mm、長辺が100~300mmがより好ましい。なお、平面形状はこれに限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
【0110】
(窒化珪素基板)
上記原料などを用いて得られる焼結後の窒化珪素基板は、β相窒化珪素を主成分とし、希土類元素およびマグネシウムを含有する。希土類元素は単体の状態であってもよく、他の物質と化合物を形成していてもよい。窒化珪素基板に含まれるマグネシウムは単体の状態であってもよいし、他の物質との化合物であってもよい。
【0111】
上記のように形成される窒化珪素基板は、窒化珪素粒子と、上記窒化珪素粒子の粒界を形成する粒界相とを有する窒化珪素焼結体となる。粒界相中の希土類元素(三価の酸化物RE2O3換算(REは希土類元素))の含有量は0.5~3.0mol%およびマグネシウム(MgO換算)の含有量は0.5~10mol%が好ましい。なお、本実施の形態の窒化珪素基板において、希土類元素の含有量およびマグネシウムの含有量は、窒化珪素(Si3N4)のモル数と、上記希土類元素を三価の酸化物RE2O3(REは希土類元素)に換算したときのモル数と、上記マグネシウムをMgOに換算したときのモル数との合計を100mol%として求めた値である。以下、上記合計を、単に「窒化珪素、希土類元素(三価の酸化物換算)およびマグネシウム(MgO換算)の合計」ということもある。
【0112】
ここで、上記粒界相中の希土類元素(三価の酸化物RE2O3換算(REは希土類元素))の含有量およびマグネシウム(MgO換算)の含有量の合計(粒界相の総量)は、1.0~12.3mol%が好ましい。
【0113】
窒化珪素基板中の窒化珪素、希土類元素およびマグネシウムの含有量は、製造時に添加した珪素粉末、ならびに焼結助剤として添加した希土類元素酸化物およびマグネシウム化合物の添加量に依存する。
【0114】
上記の方法においては、焼結時に、主にマグネシウム化合物が揮発により減少するため、製造時に添加した量に対して、焼結後の窒化珪素基板中のマグネシウムの含有量は減少する。一方、希土類元素酸化物はほとんど揮発しないため、マグネシウム化合物が減少したことにより、窒化珪素、希土類元素(三価の酸化物換算)およびマグネシウム(MgO換算)の合計に対する含有率としてはやや増加する場合がある。なおマグネシウム化合物の揮発量は、成形体の形状、焼結条件等によって変動する。
【0115】
窒化珪素粒子内の酸素量は0.05質量%以下が好ましい。酸素量が0.05質量%超であると高い熱伝導率が得られないおそれがある。なお、試料として同じ条件の窒化珪素基板を2つ作製しておき、一方の窒化珪素基板は基板として用い、他方の窒化珪素基板を酸素量の測定に用いることができる。たとえば、他方の窒化珪素基板を粉砕して、酸洗いをすることで窒化珪素粒子を抽出し(粒界相を酸洗いで除去)、窒化珪素粒子について不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法の酸素分析装置を用いて酸素量を測定する。
【0116】
未処理の珪素は、その後の窒化、焼結等のための加熱操作により溶けてしまい、均一で、安定した窒化珪素基板を得ることができなくなり、歩留まりが低下する要因となる。
【0117】
<窒化珪素基板>
本実施の形態における窒化珪素基板は、シート状成形体50を上記説明したように窒化処理することで得られる窒化処理基板を、さらに焼結処理して得られる基板である。
【0118】
この実施の形態の窒化処理基板は、例えば、
図5に示したように、その平面形状が矩形形状(正方形も含む)である窒化珪素基板51が例示できる。このとき、窒化珪素基板の短辺が100mm以上であることが好ましく、短辺が100~300mm、長辺が100~300mmがより好ましい。なお、平面形状はこれに限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
【0119】
ここで得られる窒化珪素基板51は、その中央部SCおよび端部SEにおける窒化率が90%以上であり、かつ、その中央部SCにおける窒化率と端部SEにおける窒化率の差が10%以内である。
【0120】
ここで、窒化珪素基板51の中央部SCは、基板を平面視したとき、その外形形状の中心(窒化珪素基板51における各角部からの対角線の交点)から半径30mmを含む領域を言い、その端部SEは、基板を平面視したとき、その外形形状の角部から半径40mmを含む領域を言う。
【0121】
ここで、窒化率は、中央部SCおよび端部SEの領域内から10mm各の試験片を切り出し、X線解析により測定される珪素の含有量より以下の式を基に求められる。
窒化率(%)=100-珪素の含有量(質量%)。
【0122】
例えば、測定された珪素の含有量が10質量%であるときは窒化率90%であり、測定された珪素の含有量が0質量%であるときは窒化率100%である。
【0123】
上記説明した窒化処理を行うことで、シート状成形体50において良好な窒化処理を行うことができ、得られる窒化処理基板は、その中央部および端部の窒化率が90%以上であり、中央部の窒化率と端部の窒化率の差が10%以内とできる。このように良好でムラのない窒化処理を行うことで、その後の焼結工程において、未反応珪素の溶融が少なく、良好な特性の窒化珪素基板51を得ることができる。なお、窒化処理基板と窒化珪素基板51との窒化率は同一のものである。
【0124】
このように窒化率が良好な窒化珪素基板51は、その後の回路形成等により、例えば、半導体装置が製造されるが、製品の製造歩留まりを良好なものとすることができる。
【実施例0125】
本実施の形態について、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0126】
(1)窒化処理基板の作製
(スラリー作製工程)
BET比表面積が2.1m2/g、メジアン径D50が8.2μm、酸素量が0.3質量%の珪素粉末に、珪素(窒化珪素換算)、希土類元素酸化物(三価の酸化物換算)およびマグネシウム化合物(MgO換算)の合計に対して、1.2mol%のY2O3の粉末および9.8mol%のMgSiN2の粉末を焼結助剤として添加し、原料粉末を得た。この原料粉末に、分散媒および分散剤を添加して、42質量%の濃度のスラリーとし、ボールミルを用いて、メディアとして窒化珪素製ボールを使用し、24時間粉砕を行った。
【0127】
なおマグネシウム化合物の添加量は、マグネシウム化合物を全てMgOに換算したときのmol%で示した。粉砕前の珪素粉末のBET比表面積、メジアン径D50および酸素量は、それぞれBET一点法のBET比表面積計、レーザー回折・散乱法の粒度分布計、および不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法の酸素分析装置を用いて測定した。
【0128】
(シート成形工程)
得られたスラリーは、分散媒および有機系バインダ(アクリル系樹脂)を加えて濃度調整し、脱泡処理を施してスラリー状の塗工液とした。この塗工用スラリーをドクターブレード法により、搬送用フィルムに塗工し、成形速度を600mm/min以下として、厚さ0.38mmのシート状に成形し、257mm×190mmの大きさに切断しシート状成形体を得た。
【0129】
(窒化工程)
得られたシート状成形体について、主面に窒化硼素(BN粉)層を形成する。窒化硼素粉(BN粉)層(厚さ4.5μm)を挟んで15枚のシート状成形体を積層した積層体50Aを作製し、
図2に示したように、複数段となるように構成したBNセッタ100上に分離材を挟んで設置した。このとき、積層体50Aは、複数段のBNセッタの上下に間隔をあけて2つ配置した。
【0130】
図1に示した窒化処理装置を用い、この積層体50Aを、次のように脱脂処理および窒化処理した。なお、使用した窒化処理装置は、
図4に示したように窒化処理炉内の領域を複数設定したものを用いた。窒化処理炉は、幅330mm、奥行き7200mm、高さ110mmで、各領域の長さを450mmとして16個の領域に分け、入口側から1~13個までの領域(1~13ゾーン)を加熱エリア、14~16個までの領域(14~16ゾーン)を冷却エリアとした。ここで、窒素ガスの供給配管は、1~16ゾーンにそれぞれ設け、内部雰囲気の排出配管は、1~7ゾーンにそれぞれ設けた。供給配管と排出配管は、それぞれシート状成形体の搬送方向と向流となるように、供給配管は装置下方に、排出配管は装置上方に配置した。
【0131】
窒化処理炉の加熱機構として、1~13ゾーンにSiCヒーターを設け、搬送機構としては、ローラーコンベアを有するものとした。
【0132】
この窒化処理装置を用い、表1に示す条件で、窒化処理を行った。このとき、保持時間は窒化温度での保持時間を示し、炉内圧力は15~20Paとなるようにした。また、窒化処理炉内の酸素濃度は常時1ppm以下に制御した。
【0133】
得られた窒化処理基板の窒化率、α化率、β化率をそれぞれ測定し、表2にまとめて示した。窒化率は、
図5に示した基板の中央部SCの窒化率と、端部SEの窒化率とを調べ、それぞれ90%以上であり、それらの差が10%以内であることを確認した。
【0134】
【0135】
【0136】
(2)窒化珪素基板の製造
(焼結工程)
次に、窒化装置の外に出した積層体50AをBN製ルツボ中に収めたうえで、焼結装置に搬入し、窒素雰囲気下(窒素分圧0.8MPa)、1850℃で12時間焼結し(焼結工程)、BN粉層を除去して、窒化珪素焼結体からなる窒化珪素基板を得た。得られた窒化珪素基板の大きさは200mm×170mm、厚さ0.32mmであった。
【0137】
得られた窒化珪素基板(焼結体)の密度、相対密度、熱伝導率κ、曲げ強度σをそれぞれ測定して、表3に示した。
【0138】
【0139】
上記結果より、シート状成形体の窒化処理時において、酸素濃度を低く制御することにより、基板の窒化率を90%以上と良好なものとし、基板内での窒化ムラも抑制できることがわかった。さらに、このようにして得られた窒化処理基板を焼結処理して得られた窒化珪素基板は、その伝導率が110W/m・K以上と良好であることも確認できた。
【0140】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。