(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149378
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】解析システム及び露光方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20231005BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G03F9/00 Z
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057919
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100136261
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 俊成
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 聖二
(72)【発明者】
【氏名】樋口 潔
(72)【発明者】
【氏名】澤岡 陽介
(72)【発明者】
【氏名】木村 道博
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA09
2H197CC11
2H197DA02
2H197DA03
2H197DA09
2H197DB10
2H197DB11
2H197EA04
2H197EA11
2H197EB16
2H197EB18
2H197EB20
2H197EB23
2H197HA03
2H197HA05
(57)【要約】
【課題】 スループットを向上する。
【解決手段】 解析システムは、第1基板上の第1パターンのパターン情報である第1情報を計測する第1計測部と、前記第1計測部で計測した前記第1情報を記憶する記憶部と、第2基板上に露光された第2パターンのパターン情報である第2情報を計測する第2計測部と、前記記憶部に記憶された前記第1情報と、前記第2情報と、に基づき、前記第1情報のうち所定の条件を満たす第1情報である第3情報を選定し、前記第3情報に基づいて前記第2基板の前記第2パターン上に第3パターンを露光する第1露光条件を決定する決定部と、を備える。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板上の第1パターンのパターン情報である第1情報を計測する第1計測部と、
前記第1計測部で計測した前記第1情報を記憶する記憶部と、
第2基板上に露光された第2パターンのパターン情報である第2情報を計測する第2計測部と、
前記記憶部に記憶された前記第1情報と、前記第2情報と、に基づき、前記第1情報のうち所定の条件を満たす第1情報である第3情報を選定し、前記第3情報に基づいて前記第2基板の前記第2パターン上に第3パターンを露光する第1露光条件を決定する決定部と、
を備える解析システム。
【請求項2】
前記決定部は、前記第3情報と前記第2情報とに基づいて前記第1露光条件を決定する、
請求項1に記載の解析システム。
【請求項3】
前記決定部は、前記第1情報と前記第2情報との差分を示す第1差分情報を算出し、前記第1差分情報が前記所定の条件を満たすか否かに基づいて前記第3情報を選定し、前記第1露光条件を決定する、
請求項1または請求項2に記載の解析システム。
【請求項4】
前記決定部は、複数の前記第3情報の平均に基づいて、前記第1露光条件を決定する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の解析システム。
【請求項5】
前記第2パターンは、前記第1パターンと同一である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の解析システム。
【請求項6】
前記第1基板上の前記第1パターン上に露光された第4パターンのパターン情報である第4情報を計測する第3計測部と、
前記第2基板上の前記第3パターンのパターン情報である第5情報を計測する第4計測部と、をさらに備え、
前記記憶部は、前記第4情報を記憶し、
前記決定部は、前記記憶部に記憶された前記第4情報と、前記第4計測部によって計測された前記第5情報と、に基づき、前記第4情報のうち所定の条件を満たす前記第4情報である第6情報を選定し、前記第6情報に基づいて前記第3パターン上に第5パターンを露光する第2露光条件を決定する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の解析システム。
【請求項7】
前記第2基板上の前記第3パターンのパターン情報である第4情報を計測する第3計測部をさらに備え、
前記決定部は、前記記憶部に記憶された前記第1情報と、前記第4情報と、に基づき、前記第1情報のうち所定の条件を満たす前記第1情報である第5情報を選定し、前記第5情報に基づいて、前記第2基板の前記第3パターン上に第4パターンを露光する第3露光条件を決定する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の解析システム。
【請求項8】
前記第1計測部、前記第2計測部、および前記第3計測部の少なくとも2つは同一の計測部である、
請求項6または請求項7に記載の解析システム。
【請求項9】
前記第1情報は、前記第1基板に複数設けられたマークである第1マークの位置情報を含み、
前記第2情報は、前記第2基板に複数設けられたマークである第2マークの位置情報を含み、
前記第1計測部は、複数の前記第1マークのうち第1の数の前記第1マークを計測して前記第1情報を計測し、
前記第2計測部は、複数の前記第2マークのうち第2の数の前記第2マークを計測して前記第2情報を計測する、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の解析システム。
【請求項10】
前記第2の数は、前記第1の数よりも小さい、
請求項9に記載の解析システム。
【請求項11】
前記第1情報は、前記第1基板に複数設けられたマークである第1マークの位置情報を含み、
前記第4情報は、前記第2基板に複数設けられたマークである第2マークの位置情報を含み、
前記第1計測部は、複数の前記第1マークのうち第1の数の前記第1マークを計測して前記第1情報を計測し、
前記第3計測部は、複数の前記第2マークのうち、前記第1の数よりも少ない第2の数の前記第2マークを計測する、
請求項7に記載の解析システム。
【請求項12】
第1基板上に露光された第1パターンのパターン情報である第1情報を計測する第1計測部と、
前記第1情報を記憶する記憶部と、
前記第1基板上の前記第1パターン上に露光された第2パターンのパターン情報である第2情報を計測する第2計測部と、
前記第1情報と、前記第2情報と、に基づいて、前記第1基板上の前記第2パターンの上に第3パターンを露光する第1露光条件を決定する決定部と、
を備える解析システム。
【請求項13】
第1基板上に露光された第1パターンのパターン情報である第1情報を計測する第1計測部と、
前記第1基板上の前記第1パターン上に露光された第2パターンのパターン情報である第2情報を計測する第2計測部と、
前記第1情報と、前記第2情報と、の差分を示す第1差分情報を算出する算出部と、
前記第1差分情報を記憶する記憶部と、
第2基板上に露光された前記第1パターンのパターン情報である第3情報を計測する第3計測部と、
前記第2基板上の前記第1パターン上に露光された前記第2パターンのパターン情報である第4情報を計測する第4計測部と、
前記第3情報と、前記第4情報と、前記第1差分情報と、に基づいて、前記第2基板の前記第2パターンの上に第3パターンを露光する第1露光条件を決定する決定部と、
を備える解析システム。
【請求項14】
前記第1計測部は、複数の前記第1基板について前記第1情報を計測し、
前記第2計測部は、複数の前記第1基板について前記第2情報を計測し、
前記決定部は、複数の前記第1情報と複数の前記第2情報とに基づいて複数の前記第1差分情報を算出し、複数の前記第1差分情報の平均値を取得し、
前記決定部は、前記第3情報と、前記第4情報と、複数の前記第1差分情報の前記平均値と、に基づいて、前記第1露光条件を決定する、
請求項13に記載の解析システム。
【請求項15】
前記第1情報及び前記第2情報は、前記第1基板に複数設けられたマークである第1マークの位置情報を含み、
前記第3情報及び前記第4情報は、前記第2基板に複数設けられたマークである第2マークの位置情報を含み、
前記第1計測部は、複数の前記第1マークのうち第1の数の前記第1マークを計測して前記第1情報を取得し、
前記第2計測部は、複数の前記第1マークのうち第2の数の前記第1マークを計測して前記第2情報を取得し、
前記第3計測部は、複数の前記第2マークのうち第3の数の前記第2マークを計測して前記第3情報を取得し、
前記第4計測部は、複数の前記第2マークのうち第4の数の前記第2マークを計測して前記第4情報を取得する、
請求項13に記載の解析システム。
【請求項16】
前記第4の数は、前記第3の数よりも少ない、
請求項15に記載の解析システム。
【請求項17】
前記第1基板上の前記第2パターン上に露光された第3パターンのパターン情報である第3情報を計測する第3計測部を更に備え、
前記決定部は、前記第1情報と、前記第3情報と、に基づいて、前記第1基板上の前記第3パターンの上に第4パターンを露光する第2露光条件を決定する、
請求項12に記載の解析システム。
【請求項18】
前記第1基板上の前記第2パターン上に露光された第3パターンのパターン情報である第5情報を計測する第5計測部と、
前記第2基板上の前記第3パターンのパターン情報である第6情報を計測する第6計測部と、
をさらに備え、
前記決定部は、前記第1情報と、前記第5情報との差分を示す第2差分情報を算出し、
前記記憶部は、前記第2差分情報を記憶し、
前記決定部は、前記第3情報と、前記第6情報と、前記第2差分情報と、に基づいて、前記第2基板の前記第3パターンの上に第4パターンを露光する第2露光条件を決定する、
請求項14に記載の解析システム。
【請求項19】
前記第1計測部は、複数の前記第1基板について前記第1情報を計測し、
前記第5計測部は、複数の前記第1基板について前記第5情報を計測し、
前記決定部は、複数の前記第1情報と複数の前記第5情報とに基づいて複数の前記第2差分情報を算出し、複数の前記第2差分情報の平均値を取得し、
前記決定部は、前記第3情報と、前記第6情報と、複数の前記第2差分情報の前記平均値と、に基づいて、前記第2露光条件を決定する、
請求項18に記載の解析システム。
【請求項20】
前記第1計測部、前記第2計測部、前記第3計測部、前記第4計測部、前記第5計測部、及び前記第6計測部の少なくとも2つは、同一の計測部である、
請求項18または請求項19に記載の解析システム。
【請求項21】
前記第5情報は、前記第1基板に複数設けられたマークである第1マークの位置情報を含み、
前記第6情報は、前記第2基板に複数設けられたマークである第2マークの位置情報を含み、
前記第5計測部は、複数の前記第1マークのうち第1の数の前記第1マークを計測して前記第5情報を取得し、
前記第6計測部は、複数の前記第2マークのうち第2の数の前記第2マークを計測して前記第6情報を取得する、
請求項18から請求項20のいずれか一項記載の解析システム。
【請求項22】
前記第2の数は、前記第1の数よりも少ない、
請求項21に記載の解析システム。
【請求項23】
第1基板に第1パターンを露光する第1露光工程と、
前記第1基板上の前記第1パターンのパターン情報である第1情報を第1計測部によって計測する第1計測工程と、
前記第1情報を記憶部に記憶させる記憶工程と、
前記第1基板とは異なる第2基板に第2パターンを露光する第2露光工程と、
前記第2基板上に露光された前記第2パターンのパターン情報である第2情報を第2計測部によって計測する第2計測工程と、
前記記憶工程で記憶された前記第1情報と、前記第2情報と、に基づき、前記第1情報のうち所定の条件を満たす第1情報である第3情報を選定し、前記第3情報に基づいて前記第2基板の前記第2パターン上に第3パターンを露光する第1露光条件を決定する決定工程と、
前記第1露光条件に基づいて前記第2基板の前記第2パターン上に前記第3パターンを露光する第3露光工程と、
を有する露光方法。
【請求項24】
第1基板上に露光された第1パターンのパターン情報である第1情報を計測する第1計測工程と、
前記第1情報を記憶部に記憶させる記憶工程と、
前記第1基板上の前記第1パターン上に第2パターンを露光する第1露光工程と、
前記第1基板上に露光された前記第2パターンのパターン情報である第2情報を計測する第2計測工程と、
前記第1情報と、前記第2情報と、に基づいて、前記第1基板上の前記第2パターンの上に第3パターンを露光する第1露光条件を決定する決定工程と、
前記第1露光条件に基づいて前記第1基板上に前記第3パターンを露光する第2露光工程と、
を有する露光方法。
【請求項25】
第1基板上に露光された第1パターンのパターン情報である第1情報を計測する第1計測工程と、
前記第1基板上の前記第1パターン上に第2パターンを露光する第1露光工程と、
前記第1基板上に露光された前記第2パターンのパターン情報である第2情報を計測する第2計測工程と、
前記第1情報と、前記第2情報との差分を示す第1差分情報を算出する算出工程と、
前記第1差分情報を記憶部に記憶させる記憶工程と、
第2基板上に前記第1パターンを露光する第2露光工程と、
前記第2基板上に露光された前記第1パターンのパターン情報である第3情報を計測する第3計測工程と、
前記第2基板上の前記第1パターン上に前記第2パターンを露光する第3露光工程と、
前記第2基板上に露光された前記第2パターンのパターン情報である第4情報を計測する第4計測工程と、
前記第3情報と、前記第4情報と、前記第1差分情報と、に基づいて、前記第2基板の前記第2パターンの上に第3パターンを露光する第1露光条件を決定する決定工程と、
前記第1露光条件に基づいて前記第2基板上に前記第3パターンを露光する第4露光工程と、
を有する露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
解析システム及び露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示デバイスや半導体デバイスなどの各種デバイスは、マスク等に設けられたパターンを感光基板に転写するフォトリソグラフィ工程を利用して製造されている。このフォトリソグラフィ工程で使用される露光装置では、例えば、マスクが載置されたマスクステージと、感光基板が載置された基板ステージとを同期走査しつつ、マスクに形成されたパターンを感光基板に転写する。
【0003】
一般に、液晶表示デバイスに対するフォトリソグラフィ工程では、1枚の感光基板上に複数の露光領域(液晶表示デバイスの表示画面に対応する領域)を設定し、各露光領域を順次露光してパターンを転写することが行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の露光方法では、各露光領域の近傍に設けられたアライメントマークを検出し、この検出結果に基づいて露光領域ごとにアライメント(位置合わせ)を行って露光する処理が繰り返される。
【0004】
近年、上述のようなフォトリソグラフィ工程では、スループットの向上が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
開示の第1の態様によれば、解析システムは、第1基板上の第1パターンのパターン情報である第1情報を計測する第1計測部と、前記第1計測部で計測した前記第1情報を記憶する記憶部と、第2基板上に露光された第2パターンのパターン情報である第2情報を計測する第2計測部と、前記記憶部に記憶された前記第1情報と、前記第2情報と、に基づき、前記第1情報のうち所定の条件を満たす第1情報である第3情報を選定し、前記第3情報に基づいて前記第2基板の前記第2パターン上に第3パターンを露光する第1露光条件を決定する決定部と、を備える。
【0007】
開示の第2の態様によれば、解析システムは、第1基板上に露光された第1パターンのパターン情報である第1情報を計測する第1計測部と、前記第1情報を記憶する記憶部と、前記第1基板上の前記第1パターン上に露光された第2パターンのパターン情報である第2情報を計測する第2計測部と、前記第1情報と、前記第2情報と、に基づいて、前記第1基板上の前記第2パターンの上に第3パターンを露光する第1露光条件を決定する決定部と、を備える。
【0008】
開示の第3の態様によれば、解析システムは、第1基板上に露光された第1パターンのパターン情報である第1情報を計測する第1計測部と、前記第1基板上の前記第1パターン上に露光された第2パターンのパターン情報である第2情報を計測する第2計測部と、前記第1情報と、前記第2情報と、の差分を示す第1差分情報を算出する算出部と、前記第1差分情報を記憶する記憶部と、第2基板上に露光された前記第1パターンのパターン情報である第3情報を計測する第3計測部と、前記第2基板上の前記第1パターン上に露光された前記第2パターンのパターン情報である第4情報を計測する第4計測部と、前記第3情報と、前記第4情報と、前記第1差分情報と、に基づいて、前記第2基板の前記第2パターンの上に第3パターンを露光する第1露光条件を決定する決定部と、を備える。
【0009】
開示の第4の態様によれば、露光方法は、第1基板に第1パターンを露光する第1露光工程と、前記第1基板上の前記第1パターンのパターン情報である第1情報を第1計測部によって計測する第1計測工程と、前記第1情報を記憶部に記憶させる記憶工程と、前記第1基板とは異なる第2基板に第2パターンを露光する第2露光工程と、前記第2基板上に露光された前記第2パターンのパターン情報である第2情報を第2計測部によって計測する第2計測工程と、前記記憶工程で記憶された前記第1情報と、前記第2情報と、に基づき、前記第1情報のうち所定の条件を満たす第1情報である第3情報を選定し、前記第3情報に基づいて前記第2基板の前記第2パターン上に第3パターンを露光する第1露光条件を決定する決定工程と、前記第1露光条件に基づいて前記第2基板の前記第2パターン上に前記第3パターンを露光する第3露光工程と、を有する。
【0010】
開示の第5の態様によれば、露光方法は、第1基板上に露光された第1パターンのパターン情報である第1情報を計測する第1計測工程と、前記第1情報を記憶部に記憶させる記憶工程と、前記第1基板上の前記第1パターン上に第2パターンを露光する第1露光工程と、前記第1基板上に露光された前記第2パターンのパターン情報である第2情報を計測する第2計測工程と、前記第1情報と、前記第2情報と、に基づいて、前記第1基板上の前記第2パターンの上に第3パターンを露光する第1露光条件を決定する決定工程と、前記第1露光条件に基づいて前記第1基板上に前記第3パターンを露光する第2露光工程と、を有する。
【0011】
開示の第6の態様によれば、露光方法は、第1基板上に露光された第1パターンのパターン情報である第1情報を計測する第1計測工程と、前記第1基板上の前記第1パターン上に第2パターンを露光する第1露光工程と、前記第1基板上に露光された前記第2パターンのパターン情報である第2情報を計測する第2計測工程と、前記第1情報と、前記第2情報との差分を示す第1差分情報を算出する算出工程と、前記第1差分情報を記憶部に記憶させる記憶工程と、第2基板上に前記第1パターンを露光する第2露光工程と、前記第2基板上に露光された前記第1パターンのパターン情報である第3情報を計測する第3計測工程と、前記第2基板上の前記第1パターン上に前記第2パターンを露光する第3露光工程と、前記第2基板上に露光された前記第2パターンのパターン情報である第4情報を計測する第4計測工程と、前記第3情報と、前記第4情報と、前記第1差分情報と、に基づいて、前記第2基板の前記第2パターンの上に第3パターンを露光する第1露光条件を決定する決定工程と、前記第1露光条件に基づいて前記第2基板上に前記第3パターンを露光する第4露光工程と、を有する。
【0012】
なお、後述の実施形態の構成を適宜改良しても良く、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させても良い。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る露光装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る露光装置の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る照明システムの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る投影システム及び基板ステージの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る検出システムの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る照明領域、検出領域、マスクの位置関係の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る投影領域、検出領域、基板の位置関係の一例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る露光方法を示すフローチャート(その1)である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る露光方法を示すフローチャート(その2)である。
【
図10】
図10(A)は、第1層目のパターンが形成された基板を示す模式図であり、
図10(B)は、第1層目のパターンの露光結果の一例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、位置及び姿勢が補正された基板を示す模式図である。
【
図12】
図12は、第2層目のパターンが形成された基板を示す模式図である。
【
図13】
図13(A)は、計測されたアライメントマークの位置の一例を示す図であり、
図13(B)は、位置及び姿勢が補正された基板を示す模式図である。
【
図14】
図14は、アライメントマークの補正後位置の推定について説明するための図である。
【
図15】
図15は、第3層目のパターンが形成された基板を示す模式図である。
【
図16】
図16は、アライメントマークの補正後位置の層間のずれについて説明する図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係る露光方法を示すフローチャート(その1)である。
【
図18】
図18は、第2実施形態に係る露光方法を示すフローチャート(その2)である。
【
図19】
図19は、第2実施形態に係る露光方法を示すフローチャート(その3)である。
【
図20】
図20は、第3実施形態に係る露光方法を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、サンプル処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、オブジェクト基板とサンプル基板との比較について説明するための図である。
【
図23】
図23は、露光領域の形状の類似度の判断方法について説明するための図である。
【
図24】
図24(A)は、X軸方向におけるEGAの補正後位置情報との差の分布を示す図であり、
図24(B)は、Y軸方向におけるEGAの補正後位置情報との差の分布を示す図である。
【
図25】
図25(A)は、X軸方向におけるEGAの補正後位置情報との差の分布を示す図であり、
図25(B)は、Y軸方向におけるEGAの補正後位置情報との差の分布を示す図である。
【
図26】
図26(A)は、X軸方向におけるEGAの補正後位置情報との差の分布を示す図であり、
図26(B)は、Y軸方向におけるEGAの補正後位置情報との差の分布を示す図である
【
図27】
図27は、変形例3に係る露光方法を示すフローチャートである。
【
図28】
図28は、第4実施形態に係る露光方法を示すフローチャートである。
【
図29】
図29は、第4実施形態に係る露光方法を示すフローチャートである。
【
図30】
図30は、第5実施形態に係る露光方法を示すフローチャート(その1)である。
【
図31】
図31は、第5実施形態に係る露光方法を示すフローチャート(その2)である。
【
図32】
図32は、半導体デバイスを製造する際の製造工程の一部を示すフローチャートである。
【
図33】
図33は、液晶表示素子を製造する際の製造工程の一部を示すフローチャートである。
【
図34】
図34は、半導体デバイスあるいは液晶表示素子を製造する際に用いられるマスクの一種を示す。
【
図36】
図36(A)及び
図36(B)は、基板に第1レイヤと第2レイヤとを走査露光するときの、走査方向と走査順序とを示す図であり、
図36(A)は、第1レイヤの各ショットの走査方向と走査順序とを示し、
図36(B)は、第2レイヤの各ショットの走査方向と走査順序とを示す。
【
図37】
図37(A)及び
図37(B)は、基板に第1レイヤと第2レイヤとを走査露光するときの、走査方向と走査順序とを示す図であり、
図37(A)は、第1レイヤの各ショットの走査方向と走査順序とを示し、
図37(B)は、第2レイヤの各ショットの走査方向と走査順序とを示す。
【
図38】
図38は、制御装置への指示について説明するための図である。
【
図39】
図39は、テンプレートを格納するテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0015】
[第1実施形態]
図1および
図2はそれぞれ、本実施形態に係る露光装置EXの一例を示す概略構成図および斜視図である。
図1及び
図2に示すように、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージ1と、基板Pを保持して移動可能な基板ステージ2と、マスクステージ1を移動する駆動システム3と、基板ステージ2を移動する駆動システム4と、マスクMを露光光ELで照明する照明システムISと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板Pに投影する投影システムPSと、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置CONTと、各種データを記憶する記憶部STRGと、を備えている。
【0016】
本実施形態の露光装置EXは、マスクステージ1及び基板ステージ2の位置情報を計測する干渉計システム6と、マスクMの表面の位置情報を検出する第1検出システム7と、基板Pの表面の位置情報を検出する第2検出システム8と、基板Pのアライメントマークを検出するアライメントシステム9と、を備えている。
【0017】
露光装置EXは、ボディ13を備えている。ボディ13は、例えばクリーンルーム内の支持面(例えば床面)FL上に防振台BLを介して配置されたベースプレート10と、ベースプレート10上に配置された第1コラム11と、第1コラム11上に配置された第2コラム12とを有する。
【0018】
ボディ13は、投影システムPS、マスクステージ1、及び基板ステージ2のそれぞれを支持する。投影システムPSは、定盤14を介して、第1コラム11に支持される。マスクステージ1は、第2コラム12に対して移動可能に支持される。基板ステージ2は、ベースプレート10に対して移動可能に支持される。
【0019】
露光装置EXは、マスクMと基板Pとを所定の走査方向に同期移動しながら、マスクMのパターンの像を基板Pに投影する。すなわち、本実施形態の露光装置EXは、所謂、マルチレンズ型スキャン露光装置である。露光装置EXには、7つの投影光学系PL1~PL7を有する投影システムPSが設けられている。また、露光装置EXには、照明システムISが設けられている。なお、投影光学系及び照明モジュールの数は7つに限定されず、例えば投影システムPSが、投影光学系を11個有し、照明システムISが、照明モジュールを11個有してもよい。
【0020】
照明システムISは、例えば7つの照明モジュールIL1~IL7を有する。照明モジュールIL1~IL7は、例えばマスクMのうち7つの照明領域IR1~IR7をそれぞれほぼ均一な照度分布とされた露光光ELで照明する。照明システムISから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)などが用いられる。
【0021】
マスクステージ1は、マスクMを保持した状態で、照明領域IR1~IR7に対して移動可能である。マスクステージ1は、マスクMを保持可能なマスク保持部15を有する。マスク保持部15は、マスクMを真空吸着可能なチャック機構を含み、マスクMをリリース可能に保持する。マスク保持部15は、マスクMの下面(パターン形成面)とXY平面とがほぼ平行となるように、マスクMを保持する。
【0022】
駆動システム3は、例えばリニアモータを含み、第2コラム12のガイド面12G上においてマスクステージ1を移動可能である。マスクステージ1は、駆動システム3の作動により、マスク保持部15でマスクMを保持した状態で、ガイド面12G上を、X軸、Y軸、及びθZ方向の3つの方向に移動可能である。
【0023】
投影システムPSは、所定の投影領域PR1~PR7に露光光ELを投影する複数の投影光学系を有する。投影領域PR1~PR7は、各投影光学系PL1~PL7から射出される露光光ELの照射領域に相当する。投影システムPSは、異なる7つの投影領域PR1~PR7にそれぞれパターンの像を投影する。投影システムPSは、基板Pのうち投影領域PR1~PR7に配置された部分に、マスクMのパターンの像を所定の投影倍率で投影する。
【0024】
基板ステージ2は、基板Pを保持した状態で、投影領域PR1~PR7に対して移動可能である。基板ステージ2は、基板Pを保持可能な基板保持部16を有する。基板保持部16は、基板Pを真空吸着可能なチャック機構を含み、基板Pをリリース可能に保持する。基板保持部16は、基板Pの表面(露光面)とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。駆動システム4は、例えばリニアモータを含み、ベースプレート10のガイド面10G上において基板ステージ2を移動可能である。基板ステージ2は、駆動システム4の作動により、基板保持部16で基板Pを保持した状態で、ガイド面10G上を、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
【0025】
図3は、本実施形態に係る照明システムISの一例を示す概略構成図である。
図3において、照明システムISは、超高圧水銀ランプからなる光源17と、光源17から射出された光を反射する楕円鏡18と、楕円鏡18からの光の少なくとも一部を反射するダイクロイックミラー19と、ダイクロイックミラー19からの光の進行を遮断可能なシャッタ装置20と、ダイクロイックミラー19からの光が入射するコリメートレンズ21A及び集光レンズ21Bを含むリレー光学系21と、所定波長領域の光のみを通過させる干渉フィルタ22と、リレー光学系21からの光を分岐して、複数の照明モジュールIL1~IL7のそれぞれに供給するライトガイドユニット23と、を備えている。
【0026】
なお、
図3においては、第1~第7照明モジュールIL1~IL7のうち、第1照明モジュールIL1のみが示されている。第2~第7照明モジュールIL2~IL7は、第1照明モジュールIL1と同等の構成である。以下の説明においては、第1~第7照明モジュールIL1~IL7のうち、第1照明モジュールIL1について主に説明し、第2~第7照明モジュールIL2~IL7についての説明は簡略若しくは省略する。
【0027】
リレー光学系21からの光は、ライトガイドユニット23の入射端24に入射し、複数の射出端25A~25Gから射出される。第1照明モジュールIL1は、射出端25Aからの光の進行を遮断可能なシャッタ装置26と、射出端25Aからの光が供給されるコリメートレンズ27と、コリメートレンズ27からの光が供給されるフライアイインテグレータ28と、フライアイインテグレータ28からの光が供給されるコンデンサレンズ29とを備えている。コンデンサレンズ29から射出された露光光ELは、照明領域IR1に照射される。第1照明モジュールIL1は、照明領域IR1を均一な照度分布の露光光ELで照明する。
【0028】
第2~第7照明モジュールIL2~IL7は、第1照明モジュールIL1と同等の構成である。第2~第7照明モジュールIL2~IL7のそれぞれは、各照明領域IR2~IR7を均一な照度分布の露光光ELで照明する。照明システムISは、照明領域IR1~IR7に配置されたマスクMの少なくとも一部を均一な照度分布の露光光ELで照明する。
【0029】
図4は、本実施形態に係る投影システムPS、第1検出システム7、第2検出システム8、アライメントシステム9、及び投影領域PR1~PR7に配置された基板ステージ2の一例を示す図である。
【0030】
まず、第1投影光学系PL1について説明する。
図4において、第1投影光学系PL1は、第1照明モジュールIL1により露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板Pに投影する。第1投影光学系PL1は、像面調整部33と、シフト調整部34と、二組の反射屈折型光学系31,32と、視野絞り35と、スケーリング調整部36とを備えている。
【0031】
照明領域IR1に照射され、マスクMを透過した露光光ELは、像面調整部33に入射する。像面調整部33は、第1投影光学系PL1の像面の位置(Z軸、θX、及びθY方向に関する位置)を調整可能である。像面調整部33は、マスクM及び基板Pに対して光学的にほぼ共役な位置に配置されている。像面調整部33は、第1光学部材33A及び第2光学部材33Bと、第2光学部材33Bに対して第1光学部材33Aを移動可能な駆動装置(不図示)とを備えている。第1光学部材33Aと第2光学部材33Bとは、気体軸受により、所定のギャップを介して対向する。第1光学部材33A及び第2光学部材33Bは、露光光ELを透過可能なガラス板であり、それぞれくさび形状を有する。制御装置CONTは、駆動装置を作動して、第1光学部材33Aと第2光学部材33Bとの位置関係を調整することにより、第1投影光学系PL1の像面の位置を調整することができる。像面調整部33を通過した露光光ELは、シフト調整部34に入射する。
【0032】
シフト調整部34は、基板P上におけるマスクMのパターンの像をX軸方向及びY軸方向にシフトさせることができる。シフト調整部34を透過した露光光ELは、1組目の反射屈折型光学系31に入射する。反射屈折型光学系31は、マスクMのパターンの中間像を形成する。反射屈折型光学系31から射出された露光光ELは、視野絞り35に供給される。
【0033】
視野絞り35は、反射屈折型光学系31により形成されるパターンの中間像の位置に配置されている。視野絞り35は、投影領域PR1を規定する。本実施形態において、視野絞り35は、基板P上における投影領域PR1を台形状に規定する。視野絞り35を通過した露光光ELは、2組目の反射屈折型光学系32に入射する。
【0034】
反射屈折型光学系32は、反射屈折型光学系31と同様に構成されている。反射屈折型光学系32から射出された露光光ELは、スケーリング調整部36に入射する。スケーリング調整部36は、マスクMのパターンの像の倍率(スケーリング)を調整することができる。スケーリング調整部36を介した露光光ELは、基板Pに照射される。本実施形態において、第1投影光学系PL1は、マスクMのパターンの像を、基板P上に、正立等倍で投影する。
【0035】
上述の像面調整部33、シフト調整部34、及びスケーリング調整部36により、第1投影光学系PL1の結像特性(光学特性)を調整する結像特性調整装置30が構成される。結像特性調整装置30は、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に関する第1投影光学系PL1の像面の位置を調整可能であり、パターンの像の倍率を調整可能である。
【0036】
以上、第1投影光学系PL1について説明した。第2~第7投影光学系PL2~PL7は、第1投影光学系PL1と同等の構成を有する。第2~第7投影光学系PL2~PL7についての説明は省略する。
【0037】
図2及び
図4に示すように、基板保持部16に対して+X側の基板ステージ2の上面には、基準部材43が配置されている。基準部材43の上面44は、基板保持部16に保持された基板Pの表面とほぼ同一平面内に配置される。また、基準部材43の上面44に、露光光ELを透過可能な透過部45が配置されている。基準部材43の下方には、透過部45を透過した光を受光可能な受光装置46が配置されている。受光装置46は、透過部45を介した光が入射するレンズ系47と、レンズ系47を介した光を受光する光センサ48とを有する。本実施形態において、光センサ48は、撮像素子(CCD)を含む。光センサ48は、受光した光に応じた信号を制御装置CONTに出力する。
【0038】
また、基板保持部16に対して-X側の基板ステージ2の上面には、透過部49を有する光学部材50が配置されている。光学部材50の下方には、透過部49を透過した光を受光可能な受光装置51が配置されている。受光装置51は、透過部49を介した光が入射するレンズ系52と、レンズ系52を介した光を受光する光センサ53とを有する。光センサ53は、受光した光に応じた信号を制御装置CONTに出力する。
【0039】
次に、干渉計システム6、第1,第2検出システム7,8、及びアライメントシステム9について説明する。
図1及び
図2において、干渉計システム6は、マスクステージ1の位置情報を計測するレーザ干渉計ユニット6Aと、基板ステージ2の位置情報を計測するレーザ干渉計ユニット6Bとを有する。レーザ干渉計ユニット6Aは、マスクステージ1に配置された計測ミラー1Rを用いて、マスクステージ1の位置情報を計測可能である。レーザ干渉計ユニット6Bは、基板ステージ2に配置された計測ミラー2Rを用いて、基板ステージ2の位置情報を計測可能である。本実施形態において、干渉計システム6は、レーザ干渉計ユニット6A,6Bを用いて、X軸、Y軸、及びθX方向に関するマスクステージ1及び基板ステージ2それぞれの位置情報を計測可能である。
【0040】
第1検出システム7は、マスクMの下面(パターン形成面)のZ軸方向の位置を検出する。第1検出システム7は、所謂、斜入射方式の多点フォーカス・レベリング検出システムであり、
図4に示すように、マスクステージ1に保持されたマスクMの下面と対向配置される複数の検出器7A~7Fを有する。検出器7A~7Fのそれぞれは、検出領域MZ1~MZ6に検出光を照射する投射部と、検出領域MZ1~MZ6に配置されたマスクMの下面からの検出光を受光可能な受光部とを有する。
【0041】
第2検出システム8は、基板Pの表面(露光面)のZ軸方向の位置を検出する。第2検出システム8は、所謂、斜入射方式の多点フォーカス・レベリング検出システムであり、
図4に示すように、基板ステージ2に保持された基板Pの表面と対向配置される複数の検出器8A~8Hを有する。検出器8A~8Hのそれぞれは、検出領域PZ1~PZ8に検出光を照射する投射部と、検出領域PZ1~PZ8に配置された基板Pの表面からの検出光を受光可能な受光部とを有する。
【0042】
図5は、検出器7Aの一例を示す概略構成図である。
図5に示すように、検出器7Aは、検出領域MZ1に検出光を照射する投光部54と、検出領域MZ1に配置されたマスクMの下面からの検出光を受光可能な受光部55とを有する。投光部54は、検出光を射出する光源56と、光源56から射出した検出光が入射される送光レンズ系57と、送光レンズ系57を通過した光を、マスクMの下面に傾斜方向から導くミラー58とを備えている。受光部55は、マスクMの下面に照射され、その下面で反射した検出光を受光レンズ系60に導くミラー59と、受光レンズ系60を通過した光を受光する撮像素子(CCD)61とを備えている。送光レンズ系57は、検出光を例えばスリット状に整形してからマスクMに照射する。
図5に示すように、検出領域MZ1に配置されたマスクMの下面のZ軸方向に関する位置が変化した場合、そのマスクMの下面のZ軸方向に関する変位量に応じて、撮像素子61に対する検出光の入射位置がX軸方向に変位する。撮像素子61の撮像信号は、制御装置CONTに出力され、制御装置CONTは、撮像素子61からの信号に基づいて、検出領域MZ1に配置されたマスクMの下面のZ軸方向に関する位置を求めることができる。
【0043】
検出器7B~7F、及び検出器8A~8Hのそれぞれの構成は、
図5に示した検出器7Aの構成と同等である。検出器7B~7Fは、検出領域MZ2~MZ6に配置されたマスクMの下面のZ軸方向に関する位置を求めることができる。検出器8A~8Hは、検出領域PZ1~PZ8に配置された基板Pの表面のZ軸方向に関する位置を求めることができる。
【0044】
アライメントシステム9は、基板Pに設けられているアライメントマークを検出する。アライメントシステム9は、所謂、オフアクシス方式のアライメントシステムであり、
図4に示すように、基板ステージ2に保持された基板Pの表面と対向配置される複数の顕微鏡9A~9Fを有する。顕微鏡9A~9Fのそれぞれは、検出領域AL1~AL6に検出光を照射する投射部と、検出領域AL1~AL6に配置されたアライメントマークの光学像を取得可能な受光部とを有する。
【0045】
図6は、照明領域IR1~IR7と、検出領域MZ1~MZ6と、マスクMとの位置関係の一例を示す模式図であり、マスクMの下面を含む平面内の位置関係を示している。
図6に示すように、マスクMの下面は、パターンが形成されたパターン領域MAを有する。
【0046】
本実施形態において、照明領域IR1~IR7のそれぞれは、XY平面内において矩形である。本実施形態において、照明モジュールIL1、IL3、IL5、IL7による照明領域IR1、IR3、IR5、IR7が、Y軸方向にほぼ等間隔で配置され、照明モジュールIL2、IL4、IL6による照明領域IR2、IR4、IR6が、Y軸方向にほぼ等間隔で配置されている。照明領域IR1、IR3、IR5、IR7は、照明領域IR2、IR4、IR6に対して-X側に配置されている。また、Y軸方向に関して、照明領域IR1、IR3、IR5、IR7の間に、照明領域IR2、IR4、IR6が配置される。
【0047】
本実施形態において、検出器7A、7C、7Eによる検出領域MZ1、MZ3、MZ5が、照明領域IR1~IR7に対して-X側に配置され、検出器7B、7D、7Fによる検出領域MZ2、MZ4、MZ6が、照明領域IR1~IR7に対して+X側に配置される。また、検出領域MZ1、MZ3、MZ5が、Y軸方向にほぼ等間隔で配置され、検出領域MZ2、MZ4、MZ6が、Y軸方向にほぼ等間隔で配置される。
【0048】
複数の検出領域MZ1~MZ6のうち、Y軸方向に関して外側2つの検出領域MZ1と検出領域MZ5との間隔(検出領域MZ2と検出領域MZ6との間隔)は、複数の照明領域IR1~IR7のうち、Y軸方向に関して外側2つの照明領域IR1の-Y側のエッジと照明領域IR7の+Y側のエッジとの間隔より小さい。
【0049】
また、複数の検出領域MZ1~MZ6のうち、Y軸方向に関して外側2つの検出領域MZ1と検出領域MZ5との間隔(検出領域MZ2と検出領域MZ6との間隔)は、パターン領域MAの-Y側のエッジと+Y側のエッジとの間隔とほぼ等しいか、わずかに小さくしている。
【0050】
制御装置CONTは、マスクステージ1をX軸方向に移動して、検出器7A~7Fの検出領域MZ1~MZ6に対してマスクステージ1に保持されたマスクMの下面をX軸方向に移動して、検出器7A~7Fの検出領域MZ1~MZ6に、マスクMの下面(パターン領域MA)に設定された複数の検出点を配置して、それら複数の検出点のZ軸方向の位置を検出可能である。制御装置CONTは、第1検出システム7から出力される、複数の検出点のそれぞれで検出されたマスクMの下面のZ軸方向の位置に基づいて、マスクMの下面(パターン領域MA)のZ軸、θX、及びθY方向に関する位置情報(マップデータ)を取得可能である。
【0051】
図7は、投影領域PR1~PR7と、検出領域PZ1~PZ8と、検出領域AL1~AL6と、基板Pとの位置関係の一例を示す模式図であり、基板Pの表面を含む平面内の位置関係を示している。
図7に示すように、本実施形態おいて、基板Pの表面には、マスクMのパターンの像が投影される複数の露光領域(被処理領域)PA1~PA4が設定されている。本実施形態において、基板Pの表面には、4つの露光領域PA1~PA4が設定されている。露光領域PA1、PA2は、Y軸方向に所定の間隔で配置され、露光領域PA3、PA4は、Y軸方向に所定の間隔で配置されている。露光領域PA1、PA2は、露光領域PA3、PA4に対して+X側に配置されている。
【0052】
本実施形態において、投影領域PR1~PR7のそれぞれは、XY平面内において矩形である。本実施形態において、投影光学系PL1、PL3、PL5、PL7による投影領域PR1、PR3、PR5、PR7が、Y軸方向にほぼ等間隔で配置され、投影光学系PL2、PL4、PL6による投影領域PR2、PR4、PR6が、Y軸方向にほぼ等間隔で配置されている。投影領域PR1、PR3、PR5、PR7は、投影領域PR2、PR4、PR6に対して-X側に配置されている。また、Y軸方向に関して、投影領域PR1、PR3、PR5、PR7の間に、投影領域PR2、PR4、PR6が配置される。
【0053】
本実施形態において、検出器8A、8C、8E、8G、8Hによる検出領域PZ1、PZ3、PZ5、PZ7、PZ8が、投影領域PR1~PR7に対して-X側に配置され、検出器8B、8D、8Fによる検出領域PZ2、PZ4、PZ6が、投影領域PR1~PR7に対して+X側に配置される。また、検出領域PZ1、PZ3、PZ5、PZ7、PZ8が、Y軸方向にほぼ等間隔で配置され、検出領域PZ2、PZ4、PZ6が、Y軸方向にほぼ等間隔で配置される。
【0054】
複数の検出領域PZ1~PZ8のうち、Y軸方向に関して外側2つの検出領域PZ1と検出領域PZ8との間隔は、複数の投影領域PR1~PR7のうち、外側2つの投影領域PR1の-Y側のエッジと投影領域PR7の+Y側のエッジとの間隔より大きい。また、Y軸方向に関して中央のPZ2~PZ7のうち、Y軸方向に関して外側2つの検出領域PZ3と検出領域PZ7との間隔(検出領域PZ2と検出領域PZ6との間隔)は、複数の投影領域PR1~PR7のうち、外側2つの投影領域PR1の-Y側のエッジと投影領域PR7の+Y側のエッジとの間隔より小さい。
【0055】
また、複数の検出領域PZ1~PZ8のうち、Y軸方向に関して外側2つの検出領域PZ1と検出領域PZ8との間隔は、露光領域PA1(PA3)の-Y側のエッジと露光領域PA2(PA4)の+Y側のエッジとの間隔より僅かに小さく、各露光領域PA1(~PA4)の-Y側のエッジと+Y側のエッジとの間隔より大きい。
【0056】
制御装置CONTは、基板ステージ2をX軸方向に移動して、検出器8A~8Hの検出領域PZ1~PZ8に対して基板ステージ2に保持された基板Pの表面をX軸方向に移動して、検出器8A~8Hの検出領域PZ1~PZ8に、基板Pの表面(露光領域PA1~PA4)に設定された複数の検出点を配置して、それら複数の検出点のZ軸方向の位置を検出可能である。制御装置CONTは、第2検出システム8から出力される、複数の検出点のそれぞれで検出された基板Pの表面のZ軸方向の位置に基づいて、基板Pの表面(露光領域PA1~PA4)のZ軸、θX、及びθY方向に関する位置情報(マップデータ)を取得可能である。
【0057】
本実施形態において、顕微鏡9A~9Fによる検出領域AL1~AL6が、検出領域PZ1、PZ3、PZ5、PZ7、PZ8に対して-X側に配置されている。検出領域AL1~AL6は、Y軸方向に離れて配置される。複数の検出領域AL1~AL6のうち、Y軸方向に関して外側2つの検出領域AL1と検出領域AL6との間隔は、複数の露光領域PA1~PA4のうち、Y軸方向に関して露光領域PA1(PA3)の-Y側のエッジと露光領域PA2(PA4)の+Y側のエッジとの間隔とほぼ等しい。
【0058】
図7に示すように、本実施形態において、基板Pの表面には、Y軸方向に所定間隔で複数(本実施形態では6個)のアライメントマークm11~m16、m21~m26、m31~m36、m41~m46が配置されている。これらのアライメントマークm11~m16、m21~m26、m31~m36、m41~m46は、X軸方向においては4箇所に配置される。
【0059】
アライメントマークm11、m12、m13は露光領域PA3のX軸方向における一端部(-X側の端部、以下同様)に隣接して設けられる。アライメントマークm14、m15、m16は露光領域PA4のX軸方向における一端部に隣接して設けられる。アライメントマークm21、m22、m23は露光領域PA3の他端部(+X側の端部、以下同様)に隣接して設けられる。アライメントマークm24、m25、m26は露光領域PA4のX軸方向における他端部に隣接して設けられる。
【0060】
アライメントマークm31、m32、m33は露光領域PA1のX軸方向における一端部に隣接して設けられる。アライメントマークm34、m35、m36は露光領域PA2のX軸方向における一端部に隣接して設けられる。アライメントマークm41、m42、m43は露光領域PA1のX軸方向における他端部に隣接して設けられる。アライメントマークm44、m45、m46は露光領域PA2のX軸方向における他端部に隣接して設けられる。
【0061】
以下において、X軸方向の4箇所に配置されるアライメントマークm11~m16、m21~m26、m31~m36、m41~m46の4個のグループのうち、基板Pの-X側のエッジに最も近いアライメントマークm11~m16のグループを適宜列R1といい、列R1の+X側に隣接するアライメントマークm21~m26のグループを適宜列R2といい、列R2の+X側に隣接するアライメントマークm31~m36のグループを適宜列R3といい、列R3の+X側に隣接するアライメントマークm41~m46のグループを適宜列R4という。
【0062】
アライメントシステム9は、基板Pに設けられている複数のアライメントマークm11~m16、m21~m26、m31~m36、m41~m46を検出する。本実施形態においては、基板P上においてY軸方向に離れて配置された6つのアライメントマークm11~m16、m21~m26、m31~m36、m41~m46に対応して、顕微鏡9A~9F(検出領域AL1~AL6)が配置されている。顕微鏡9A~9Fは、例えばアライメントマークm11~m16が検出領域AL1~AL6に同時に配置されるように設けられている。アライメントシステム9は、顕微鏡9A~9Fを用いて、6つのアライメントマークm11~m16を同時に検出可能である。
【0063】
上記の露光装置EXにおいて、露光動作等の動作の少なくとも一部は、予め定められている露光に関する制御情報(露光制御情報)に基づいて実行される。露光制御情報は、露光装置EXの動作を規定する制御命令群を含み、露光レシピとも呼ばれる。以下の説明において、露光に関する制御情報を適宜、露光レシピと称する。
【0064】
露光レシピは、制御装置CONTに予め記憶されている。少なくとも基板Pの露光時(マスクM及び基板Pに対する露光光ELの照射動作時)における露光装置EXの動作条件は、露光レシピによって予め決定されている。制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、露光装置EXの動作を制御する。
【0065】
露光レシピは、基板Pの露光時におけるマスクステージ1及び基板ステージ2の移動条件を含む。基板Pの露光時、制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、マスクステージ1及び基板ステージ2を移動する。本実施形態の露光装置EXは、マルチレンズ型スキャン露光装置であり、基板Pの露光領域PA1~PA4の露光時において、マスクM及び基板Pは、XY平面内の所定の走査方向に移動される。制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、マスクMと基板Pとを走査方向に同期移動しながらマスクMの下面のパターン領域MAに露光光ELを照射して、そのパターン領域MAを介して基板Pの表面の露光領域PA1~PA4に露光光ELを照射して、それら露光領域PA1~PA4を露光する。
【0066】
本実施形態において、基板P上に設けられた複数の露光領域PA1~PA4に対する露光処理は、露光領域PA1~PA4を投影領域PR1~PR7に対して基板Pの表面(XY平面)に沿って走査方向に移動させるとともに、マスクMのパターン領域MAを照明領域IR1~IR7に対してマスクMの下面(XY平面)に沿って走査方向に移動させながら実行される。
【0067】
本実施形態においては、基板Pの走査方向(同期移動方向)をX軸方向とし、マスクMの走査方向(同期移動方向)もX軸方向とする。例えば基板Pの露光領域PA1を露光する場合、制御装置CONTは、投影領域PR1~PR7に対して基板Pの露光領域PA1をX軸方向に移動するとともに、その基板PのX軸方向への移動と同期して、照明領域IR1~IR7に対してマスクMのパターン領域MAをX軸方向に移動しながら、照明領域IR1~IR7に露光光ELを照射して、マスクMからの露光光ELを投影光学系PL1~PL7を介して投影領域PR1~PR7に照射する。これにより、基板Pの露光領域PA1は、投影領域PR1~PR7に照射された露光光ELで露光され、マスクMのパターン領域MAのパターンの像が基板Pの露光領域PA1に投影される。
【0068】
例えば露光領域PA1の露光が終了した後、次の露光領域(例えば露光領域PA2)を露光するために、制御装置CONTは、投影領域PR1~PR7が次の露光領域PA2の露光開始位置に配置されるように、基板ステージ2を制御して、投影領域PR1~PR7に対して基板PをXY平面内の所定方向に移動する。また、制御装置CONTは、照明領域IR1~IR7がパターン領域MAの露光開始位置に配置されるように、マスクステージ1を制御して、照明領域IR1~IR7に対してマスクMを移動する。そして、投影領域PR1~PR7が露光領域PA2の露光開始位置に配置され、照明領域IR1~IR7がパターン領域MAの露光開始位置に配置された後、制御装置CONTは、その露光領域PA2の露光を開始する。
【0069】
制御装置CONTは、マスクステージ1が保持するマスクMと基板ステージ2が保持する基板PとをX軸方向に同期移動しながら基板Pに露光光ELを照射する動作と、次の露光領域を露光するために、基板PをXY平面内の所定方向(例えばX軸方向)にステッピング移動する動作を繰り返しながら、基板P上に設けられた複数の露光領域PA1~PA4を、マスクMに設けられたパターン及び投影光学系PL1~PL7を介して順次露光する。
【0070】
次に、上述の構成を有する露光装置EXを用いて基板Pを露光する方法の一例について
図8及び
図9を参照して説明する。
図8及び
図9は、第1実施形態に係る露光方法を示すフローチャートである。
【0071】
まず、制御装置CONTは、基板Pに形成しようとする第1層に対応するマスクMをマスクステージ1に搬入(ロード)する。マスクMがマスクステージ1に保持された後、露光レシピに基づいて、マスクMのアライメント処理、各種計測処理、及びキャリブレーション処理を含むセットアップ処理が実行される。
【0072】
本実施形態において、マスクMのアライメント処理は、マスクMに配置されたアライメントマーク(不図示)の像を投影システムPS及び透過部45を介して受光装置46で受光して、XY平面内におけるマスクMの位置を計測する処理を含む。
【0073】
計測処理は、例えば各投影光学系PL1~PL7より射出される露光光ELの照度を受光装置51を用いて計測する処理、各投影光学系PL1~PL7の結像特性を受光装置46を用いて計測する処理、及びアライメントシステム9の検出領域AL1~AL6とマスクMのパターン像の投影位置との位置関係(ベースライン量)を、アライメントシステム9、透過部45、及び受光装置46等を用いて計測する処理の少なくとも一つを含む。
【0074】
キャリブレーション処理は、計測処理の結果を用いて、各照明モジュールIL1~IL7から射出される露光光ELの照度を調整する処理、及び受光装置46を用いて計測した結像特性の計測結果に基づいて、各投影光学系PL1~PL7の結像特性を結像特性調整装置30を用いて調整する処理の少なくとも一つを含む。
【0075】
制御装置CONTは、上記各処理を完了させた後、所定のタイミングで、基板Pを基板ステージ2に搬入する(ステップS3)。当該基板Pは、予め別途塗布装置などによって表面にレジストなどの感光材料が塗布された状態にしておく。基板Pが基板ステージ2に保持された後、制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、露光条件を調整する処理を実行する。当該露光条件は、例えば投影光学系PL1~PL7による投影像の投影倍率、投影位置並びに投影像の回転などの結像条件、及び、基板Pの位置や姿勢などに関する基板配置条件の少なくとも一方を含む。
【0076】
露光条件調整処理において、制御装置CONTは、まずプリアライメント処理を実行する。この場合、制御装置CONTは、プリアライメント用計測装置に基板Pのエッジ等を検出させる。基板Pのエッジ等が検出された後、制御装置CONTは、検出結果に応じて投影光学系PL1~PL7の結像特性調整装置30及び基板ステージ2を駆動させ、露光条件を調整する。
【0077】
露光条件調整処理の後、
図10(A)に示すように、基板Pに対して、第1パターンMP1を転写する(ステップS7)。第1パターンMP1には、例えば露光領域PA1~PA4にそれぞれ形成される所定の回路パターンr11~r14と、4列のアライメントマークm111~m116、m121~m126、m131~m136、m141~m146のパターンと、が含まれる。
【0078】
露光が行われた基板Pは、露光装置EXの外部に搬出され(ステップS8)、例えば現像工程や、第1パターンMP1に基づく最初の層(第1層)を形成する工程などの各工程が適宜行われることになる。第1層が形成された基板Pに対して別の層(第2層)を積層させる場合、基板Pの表面(第1層の表面)に感光層を形成する。
【0079】
以下、同一ロット内の基板P(N枚)の処理が終了するまで(ステップS9)、ステップS3~S8の処理が繰り返される。同一ロットは、同一のマスクMを用いて露光される複数の基板Pのグループを含む。少なくとも同一ロットにおいては、同一の露光レシピの下で、露光が実行される。なお、以下の説明において、ステップS3~S8の処理をまとめて、第1パターンMP1の転写工程と記載する場合がある。
【0080】
同一ロット内の基板Pに対する第1パターンMP1の転写工程が終了すると(ステップS9/YES)、制御装置CONTは、基板Pに形成しようとする第2層に対応するマスクMをマスクステージ1に搬入(ロード)する。マスクMがマスクステージ1に保持された後、制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、第1層を形成する場合と同様に、マスクMのアライメント処理、各種計測処理、及びキャリブレーション処理を含むセットアップ処理を実行させる。
【0081】
制御装置CONTは、上記各処理を完了させた後、所定のタイミングで、基板Pを基板ステージ2に搬入する(ステップS13)。基板Pが基板ステージ2に保持された後、制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、露光条件を調整する処理を実行させる。この露光条件調整処理において、制御装置CONTは、アライメントシステム9を用いて、
図10(A)に示す第1パターンMP1のパターン情報を計測する(ステップS14)。
【0082】
第1パターンMP1のパターン情報は、第1パターンMP1に含まれるアライメントマークm111~m116、m121~m126、m131~m136、m141~m146の位置情報を含む。位置情報は、X座標、Y座標、θZ等を含む(以下同様)。本実施形態では、制御装置CONTは、基板Pに設けられる4列のアライメントマークm111~m116(列R1)、m121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)、m141~m146(列R4)を、例えば列R1、列R2、列R3、列R4の順に検出させることで、第1パターンMP1のパターン情報を計測する。
【0083】
ここで、例えば、第1パターンMP1の転写工程において基板Pが歪んだ状態で基板ステージ2に配置され、その状態で第1パターンMP1が転写されると、基板Pの配置が解除されたときに、例えば
図10(B)に示すように、第1層のパターンが変形して歪んでしまう。この場合、第2層形成時以降の転写ステップにおいては、変形した状態で形成された第1パターンMP1に転写像(PA1~PA4)を重ね合わせる必要がある。なお、
図10(B)では、第1層のパターンの歪みを誇張して例示している。
【0084】
そこで、制御装置CONTは、まず、アライメントマークm111~m116(列R1)、m141~m146(列R4)の位置情報に基づいて、基板P全体の露光条件を調整する処理を実行する(ステップS15)。当該露光条件は、例えば、投影光学系PL1~PL7による投影像の投影倍率、投影位置並びに投影像の回転などの結像条件、及び、基板Pの位置や姿勢などに関する基板配置条件の少なくとも1つを含む。制御装置CONTは、投影光学系PL1~PL7の結像特性調整装置30や基板ステージ2を駆動させ、基板P全体の露光条件を調整する。これにより、
図11に示すように、基板Pの位置及び姿勢が補正される。
【0085】
次に、制御装置CONTは、基板Pの位置及び姿勢が補正された後の、アライメントマークm111~m116(列R1)、m121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)、m141~m146(列R4)のXY座標系における位置(以後、補正後位置と記載する)に関する情報(以後、補正後位置情報と記載する)を基板Pに対応づけて記憶部STRGに記憶する(ステップS16)。制御装置CONTは、例えば、アライメントマークm111~m116(列R1)、m121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)、m141~m146(列R4)の補正後位置情報を、基板Pごとの識別データ(基板ID)と対応させたデータテーブルを作成する。なお、補正後位置情報に加えて、計測した位置情報および露光条件のデータを基板Pに対応付けて記憶してもよい。記憶部STRGは、例えば、制御装置CONTとネットワークを介して接続されたサーバが備える記憶装置であってもよいし、制御装置CONTが有する記憶装置(ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ)であってもよい。
【0086】
ステップS16の後、制御装置CONTは、列R1、列R2、列R3、及び列R4のアライメントマークの補正後位置情報と、露光レシピと、に基づいて、走査ごと(露光領域PA1~PA4ごと)の露光条件を決定する(ステップS17)。当該露光条件は、例えば、投影光学系PL1~PL7による投影像の投影倍率、投影位置並びに投影像の回転などの結像条件、及び、基板Pの位置や姿勢などに関する基板配置条件の少なくとも1つを含む。
【0087】
露光条件を決定した後、
図12に示すように、基板Pに対して、第2パターンMP2を転写する(ステップS18)。第2パターンMP2には、例えば露光領域PA1~PA4にそれぞれ形成される所定の回路パターンr21~r24が含まれる。
【0088】
露光が行われた基板Pは、露光装置EXの外部に搬出され(ステップS19)、例えば現像工程や、第2パターンMP2に基づく第2層を形成する工程などの各工程が適宜行われることになる。第2層が形成された基板Pに対して更に別の層(第3層)を積層させる場合、基板Pの表面(第2層の表面)に感光層を形成する。
【0089】
以下、同一ロット内の全ての基板Pに対する処理が終了するまで(ステップS20)、ステップS13~ステップS19に係る処理が繰り返される。なお、以後の説明において、ステップS13~ステップS19の処理をまとめて、第2パターンMP2の転写工程と記載する場合がある。
【0090】
同一ロット内の全ての基板Pに対する処理が終了すると(ステップS20/YES)、制御装置CONTは、基板Pに形成しようとする第3層に対応するマスクMをマスクステージ1に搬入(ロード)する。マスクMがマスクステージ1に保持された後、制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、第1層、第2層を形成する場合と同様に、マスクMのアライメント処理、各種計測処理、及びキャリブレーション処理を含むセットアップ処理を実行させる。
【0091】
制御装置CONTは、上記各処理を完了させた後、所定のタイミングで、基板Pを基板ステージ2に搬入する(ステップS23)。制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、露光条件を調整する処理を実行させる。この露光条件調整処理において、制御装置CONTは、アライメントシステム9を用いて、
図12に示す第2パターンMP2のパターン情報を計測する(ステップS24)。
【0092】
第2パターンMP2のパターン情報は、アライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報を含む。4列のアライメントマークは、第1パターンMP1を転写した際に形成したアライメントマークと同じアライメントマークを使用する。具体的には、M211~M216はm111~m116に対応し、M221~M226はm121~126に対応し、M231~M236はm131~m136に対応し、M241~M246はm141~146に対応する。本実施形態では、制御装置CONTは、アライメントシステム9に、基板Pに設けられる4列のアライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、及びM241~M246(列R4)のうち、最も+X側のアライメントマークM211~M216(列R1)と、最も-X側のアライメントマークM241~M246(列R4)と、を、例えば列R1、列R4の順に検出させ、第2パターンMP2のパターン情報を計測する。ステップS24においては、4列のアライメントマークのうち2列のみを検出するため、4列全てを検出する場合に比べて検出時間が短くなり、スループットを向上させることができる。
【0093】
次に、制御装置CONTは、アライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報に基づいて、基板P全体の露光条件を調整する処理を実行する(ステップS25)。当該露光条件は、例えば、投影光学系PL1~PL7による投影像の投影倍率、投影位置並びに投影像の回転などの結像条件、及び、基板Pの位置や姿勢などに関する基板配置条件の少なくとも1つを含む。制御装置CONTは、投影光学系PL1~PL7の結像特性調整装置30や基板ステージ2を駆動させ、基板P全体の露光条件を調整する。
【0094】
図13(A)は、ステップS24において計測されたアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置の一例を示す図である。ステップS25の処理によって、
図13(B)に示すように、基板P全体の位置及び姿勢が補正される。
【0095】
図9に戻り、制御装置CONTは、未計測のアライメントマークM221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の補正後位置を推定する(ステップS26)。
【0096】
ステップS26の処理について具体的に説明する。制御装置CONTは、まず、データベースに記憶されている列R2のアライメントマークm121~m126及び列R3のアライメントマークm131~m136の補正後位置情報の中から、現在露光対象となっている基板Pの基板IDに紐付けられている列R2のアライメントマークm121~m126及び列R3のアライメントマークm131~m136の補正後位置情報を取得する。
【0097】
次に、制御装置CONTは、取得した列R2のアライメントマークm121~m126及び列R3のアライメントマークm131~m136の補正後位置情報に基づいて、未計測の列R2のアライメントマークM221~M226及び列R3のアライメントマークM231~M236の補正後位置を推定(算出)する。推定された列R2のアライメントマークM221~M226及び列R3のアライメントマークM231~M236の補正後位置(以後、推定位置と記載する)に関する情報を、推定位置情報と呼ぶ。
【0098】
制御装置CONTは、
図14に示すように、位置情報を計測したアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の補正後位置情報と、位置情報を未計測のアライメントマークM221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の推定位置情報と、に基づいて、各露光領域PA1~PA4を特定し、露光領域PA1~PA4(走査ごと)の露光条件を決定する(
図9:ステップS27)。なお、
図14では、計測された列のアライメントマークを実線で示し、推定された列のアライメントマークを点線で示している。
【0099】
制御装置CONTは、
図15に示すように、基板Pに対して、調整後の露光条件で第3パターンMP3を転写する(
図9:ステップS28)。第3パターンMP3には、例えば露光領域PA1~PA4にそれぞれ形成される所定の回路パターンr31~r34が含まれる。
【0100】
露光が行われた基板Pは、露光装置EXの外部に搬出され(ステップS29)、例えば現像工程や、第3パターンMP3に基づく第3層を形成する工程などの各工程が適宜行われることになる。
【0101】
以下、同一ロット内の全ての基板Pに対する処理が終了するまで(ステップS30)、ステップS23~ステップS29に係る処理が繰り返される。同一ロット内の全ての基板Pに対する処理が終了した後(ステップS30/YES)、第4層に対応する第4パターンMP4の転写工程を行ってもよい。なお、以後の説明において、ステップS23~ステップS29の処理をまとめて、第3パターンMP3の転写工程と記載する場合がある。
【0102】
以上、詳細に説明したように、第1実施形態によれば、露光装置EXは、基板P上に露光された第1パターンMP1のパターン情報であるアライメントマークm111~m116(列R1)、m121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)、m141~m146(列R4)の位置情報を計測するアライメントシステム9と、計測した位置情報を記憶する記憶部STRGと、制御装置CONTと、を備える。アライメントシステム9は、基板P上の第1パターンMP1上に露光された第2パターンMP2のパターン情報であるアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報を計測する。そして、制御装置CONTは、アライメントマークm111~m116(列R1)、m121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)、m141~m146(列R4)の位置情報と、アライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報と、に基づいて、基板P上の第2パターンMP2の上に第3パターンMP3を露光する露光条件を決定する。これにより、第3パターンMP3を露光する露光条件を決定する処理において、位置情報を計測するアライメントマークの列数を少なくできるため、4列のアライメントマークを計測する場合と比較してスループットを向上することができる。
【0103】
上記第1実施形態では、第2パターンMP2の転写工程において計測した第1パターンMP1のパターン情報(アライメントマークm111~m116、m121~m126、m131~m136、m141~m146の位置情報)と、第3パターンMP3の転写工程において計測した第2パターンMP2のパターン情報(アライメントマークM211~M216、M241~M246の位置情報)と、に基づいて第3パターンMP3を露光する露光条件を決定していたが、これに限られるものではない。
【0104】
例えば、第2パターンMP2の転写工程において計測した第1パターンMP1のパターン情報(アライメントマークm111~m116、m121~m126、m131~m136、m141~m146の位置情報)と、第4パターンMP4の転写工程において計測した第3パターンMP3のパターン情報(アライメントマークM311~M316、M341~M346の位置情報)と、に基づいて第4パターンMP4を露光する露光条件を決定してもよい。なお、4列のアライメントマークは、第1パターンMP1を転写した際に形成したアライメントマークと同じアライメントマークを使用する。具体的には、M311~M316はm111~m116に対応し、M321~M326はm121~126に対応し、M331~M336はm131~m136に対応し、M341~M346はm141~146に対応する。この場合、第4パターンMP4の転写工程において、第3パターンMP3のパターン情報の計測時に4列のアライメントマークを計測する場合よりも計測時間を短縮できるため、スループットを向上できる。
【0105】
[第2実施形態]
第1実施形態では、第2パターンMP2の転写工程において位置情報を計測した第1パターンMP1が有するアライメントマークm121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)の補正後位置情報を、第3パターンMP3の転写工程において位置情報を未計測のアライメントマークM221~M226(列R1)、M231~M236(列R3)の補正後位置を推定する(露光領域PA1~PA4を特定する)のに用いていた。
【0106】
第2実施形態では、
図16に示すように、第1パターンMP1が有するアライメントマークm111~m116、m121~m126、m131~m136、m141~m146の補正後位置と、アライメントマークM211~M216、M221~M226、M231~M236、M241~M246の補正後位置と、の間に「ずれ(差)」が生じた場合にも、層間で生じる各アライメントマークの補正後位置の差を補正し(レイヤ間差補正と呼ぶ)、位置情報を計測していないアライメントマークの補正後位置の推定精度を向上させる。また、第1パターンと第2パターンとの「ずれ(差)」をレイヤ間差とも呼ぶ。なお、
図16では、第1パターンMP1のアライメント結果から推定される第1パターンMP1の露光領域を実線で示し、第2パターンMP2のアライメント結果から推定される第2パターンMP2の露光領域を点線で示している。
【0107】
図17~
図19は、第2実施形態に係る露光方法を示すフローチャートである。
【0108】
第2実施形態に係る露光方法は、第3パターンMP3の転写工程が、第1実施形態に係る露光方法と異なる。そこで、
図18のステップS51以降の処理について詳細に説明することとし、第1パターンMP1の転写工程と、第2パターンMP2の転写工程と、は、第1実施形態に係る露光方法と同一であるため、
図8と同一のステップ番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0109】
図17に示すように、処理すべき全ての基板Pに対して第1パターンMP1の転写工程(ステップS3~ステップS8)及び第2パターンMP2の転写工程(ステップS13~S19)が終了すると、制御装置CONTは、基板Pに形成しようとする第3層に対応するマスクMをマスクステージ1に搬入(ロード)する。マスクMがマスクステージ1に保持された後、制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、マスクMのアライメント処理、各種計測処理及びキャリブレーション処理を含むセットアップ処理を実行する。
【0110】
図18のステップS51~S60の処理は、サンプル基板に分類される基板Pに対する第3パターンMP3の転写工程であり、ステップS61~S69はオブジェクト基板に分類される基板Pに対する第3パターンMP3の転写工程である。
【0111】
初めに、サンプル基板の処理について説明する。制御装置CONTは、所定のタイミングで、基板Pを基板ステージ2に搬入する(ステップS51)。制御装置CONTは、これから処理される基板Pと同一あるいは類似した処理経路を経た基板Pや、任意に設定された有効期限内に処理された基板Pなど、所定の条件を満たした基板Pのレイヤ間差に関するデータが記憶部STRGのデータベースに所定枚数以上蓄積されているか否かを判断する(ステップS52)。
【0112】
制御装置CONTが、レイヤ間差に関するデータがデータベースに所定枚数以上蓄積されていないと判断した場合(ステップS52/NO)、基板Pはサンプル基板として処理される。ここで、複数の基板Pについて、第1パターン、第2パターン、第3パターンで使用された露光装置や現像装置や成膜装置といったフォトリソグラフィ工程で用いられる処理装置や処理レシピなどが同一あるいは類似であれば、当該複数の基板Pは処理経路が同一あるいは類似とみなされる。
【0113】
サンプル基板として判断された基板Pが基板ステージ2に保持された後、制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、露光条件を調整する処理を実行させる。この露光条件調整処理において、制御装置CONTは、アライメントシステム9を用いて、第2パターンMP2のパターン情報を計測する(ステップS53)。ステップS53では、制御装置CONTは、基板Pに設けられる4列のアライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)を、例えば列R1、列R2、列R3、列R4の順に検出させることで、第2パターンMP2のパターン情報を計測する。したがって、ステップS53で計測される第2パターンMP2のパターン情報には、アライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)の位置情報が含まれる。
【0114】
次に、制御装置CONTは、第2パターンMP2のパターン情報に含まれるアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報に基づいて、基板P全体の露光条件を調整する処理を実行する(ステップS54)。
【0115】
ステップS54の後、制御装置CONTは、ステップS53において位置情報を計測した列R1、列R2、列R3、及び列R4のアライメントマークの補正後位置情報と、露光レシピと、に基づいて、走査ごと(露光領域PA1~PA4ごと)の露光条件を決定する(ステップS55)。
【0116】
露光条件を決定した後、基板Pに対して、第3パターンMP3を転写する(ステップS56)。露光が行われた基板Pは、露光装置EXの外部に搬出され(ステップS57)、例えば現像工程や、第3パターンMP3に基づく第3層を形成する工程などの各工程が適宜行われることになる。
【0117】
基板Pが搬出された後、制御装置CONTは記憶部STRGにサンプル基板である基板Pのサンプル情報を記憶する(ステップS58)。サンプル情報とは具体的に、ステップS54で算出した基板P全体の露光条件や、基板Pに紐づけられている基板IDや基板の番号、基板Pのフォトリソ工程の各工程で用いられた処理装置や処理レシピ、各工程が行われた処理日時などの情報である。
【0118】
記憶部STRGにサンプル基板である基板Pの情報が記憶された後、制御装置CONTは基板Pの第1パターンMP1と第2パターンMP2との間のレイヤ間差を算出し、算出した結果を記憶部STRGに保存する(ステップS59)。レイヤ間差は、ステップS15で第2パターンMP2を露光するために基板全体の露光条件を調整したときの調整後のアライメントマークm111~m116(列R1)、m121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)、m141~m146(列R4)の位置情報と、ステップS55で第3パターンMP3を露光するために基板全体の露光条件を調整したときの調整後のアライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)の位置情報を用いて
図16のように各アライメントマークの位置の差分を算出する。
【0119】
最後に、サンプル基板として複数の基板Pが処理され、記憶部STRGにサンプル基板である複数の基板Pのレイヤ間差の情報が記憶された後、制御装置CONTは複数の基板Pのレイヤ間差の平均値である平均補正量を算出し、平均補正量に関する情報を記憶部STRGに保存する(ステップS60)。
【0120】
次に、オブジェクト基板の処理について説明する。制御装置CONTは、所定のタイミングで、基板Pを基板ステージ2に搬入する(ステップS51)。制御装置CONTは、これから処理される基板Pと同一あるいは類似した処理経路を経た基板Pや、任意に設定された有効期限内に処理された基板Pなど、所定の条件を満たした基板Pのレイヤ間差に関するデータが記憶部STRGのデータベースに所定枚数以上蓄積されているか否かを判断する(ステップS52)。基板Pのレイヤ間差に関するデータが所定枚数以上蓄積されていると判断された場合(ステップS52/YES)、基板Pはオブジェクト基板として処理される。
【0121】
オブジェクト基板と判断された基板Pが基板ステージ2に保持された後、制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、露光条件を調整する処理を実行させる。具体的には、まず、制御装置CONTは、第2パターンMP2のパターン情報を計測する(ステップS61)。ステップS61において、制御装置CONTは、アライメントシステム9に、基板Pに設けられる4列のアライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、及びM241~M246(列R4)のうち、2列のアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)を、例えば列R1、列R4の順に検出させ、第2パターンMP2のパターン情報を計測する。したがって、ステップS61で計測される第2パターンMP2のパターン情報には、アライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報が含まれる。ステップS61では、4列のアライメントマークのうち2列のみを検出するため、4列全てを検出する場合に比べて検出時間が短くなり、スループットが向上する。
【0122】
制御装置CONTは、第2パターンMP2のパターン情報に含まれるアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報に基づいて、基板P全体の露光条件を調整する処理を実行する(ステップS62)。
【0123】
次に、制御装置CONTは、位置情報を計測していないアライメントマークM221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の補正後位置情報を推定する(ステップS66)。
【0124】
ステップS66の処理について具体的に説明する。制御装置CONTは、まず、データベースに記憶されているアライメントマークm121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)の補正後位置情報の中から、現在露光対象となっている基板PのIDに紐付けられているアライメントマークm121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)の補正後位置情報を取得する。
【0125】
次に、取得したアライメントマークm121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)の補正後位置情報と、ステップS60において算出した平均補正量と、に基づいて、位置情報を計測していないアライメントマークM221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の補正後位置を推定(算出)する。
【0126】
より詳細には、データベースから取得したアライメントマークm121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)の補正後位置を、ステップS60において算出した平均補正量で補正し、アライメントマークM221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の補正後位置とする。これにより、位置情報を計測していないアライメントマークM221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の補正後位置の推定において、層間に生じるずれ(差)が考慮されるため、補正後位置の推定精度を向上させることができる。
【0127】
また、平均補正量として、オブジェクト基板である基板Pと同じ処理経路、処理レシピや処理日時が近いサンプル基板のアライメントマークの測定結果を用いることで、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の補正後位置の推定精度を向上させることができる。
【0128】
制御装置CONTは、位置情報を計測したアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の補正後位置情報と、アライメントマークM221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の推定位置情報と、に基づいて、各露光領域PA1~PA4を特定し、露光領域PA1~PA4(走査ごと)の露光条件を決定する(ステップS67)。
【0129】
制御装置CONTは、基板Pに対して、決定した露光条件で第3パターンMP3を転写する(ステップS68)。露光が行われた基板Pは、露光装置EXの外部に搬出され(ステップS69)、例えば現像工程や、第3パターンMP3に基づく第3層を形成する工程などの各工程が適宜行われることになる。
【0130】
以上、詳細に説明したように、第2実施形態によれば、露光装置EXは、サンプル基板上に露光された第1パターンMP1のパターン情報であるアライメントマークm111~m116(列R1)、m121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)、m141~m146(列R4)の位置情報を計測するアライメントシステム9と、制御装置CONTと、を備える。アライメントシステム9は、サンプル基板上の第1パターンMP1上に露光された第2パターンMP2のパターン情報であるアライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)の位置情報を計測し、制御装置CONTは、アライメントマークm111~m116(列R1)、m121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)、m141~m146(列R4)の補正後位置情報と、アライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)の補正後位置情報と、の差分(補正量)を算出し、記憶部STRGに記憶する。また、アライメントシステム9は、オブジェクト基板上に露光された第1パターンMP1のパターン情報であるアライメントマークm111~m116(列R1)、m121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)、m141~m146(列R4)の位置情報を計測し、オブジェクト基板上の第1パターンMP1上に露光された第2パターンMP2のパターン情報であるアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報を計測する。制御装置CONTは、アライメントマークm121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)の補正後位置情報と、アライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報と、補正量と、に基づいて、オブジェクト基板の第2パターンMP2の上に第3パターンMP3を露光する露光条件を決定する。これにより、位置情報を未計測のアライメントマークM221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の補正後位置の推定において、層間に生じるずれ(差)を考慮できるため、補正後位置の推定精度を向上させることができる。また、オブジェクト基板への第3パターンMP3の転写工程において、第2パターンMP2のパターン情報の計測処理では、4列中、2列のアライメントマークの位置情報を計測するため、4列すべてを計測する場合と比較して、スループットを向上することができる。
【0131】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様、第2パターンMP2の転写工程において計測した第1パターンMP1のパターン情報(アライメントマークm111~m116、m121~m126、m131~m136、m141~m146の位置情報)と、第4パターンMP4の転写工程において計測した第3パターンMP3のパターン情報(アライメントマークM311~M316、M341~M346の位置情報)と、に基づいて第4パターンMP4を露光する露光条件を決定してもよい。
【0132】
この場合、サンプル基板に対する第4パターンMP4の転写工程において、第3パターンMP3のパターン情報(アライメントマークM311~M316、M321~M326、M331~M336、M341~M346の位置情報)と、第1パターンMP1のパターン情報(アライメントマークm111~m116、m121~m126、m131~m136、m141~m146の位置情報)と、に基づいて、第1層と第3層との間で生じる各アライメントマークの補正後位置の差(補正量)を算出する。そして、オブジェクト基板に対する第4パターンMP4の転写工程において、アライメントマークm121~m126、m131~m136の補正後位置情報と、アライメントマークM311~M316、M341~M346の補正後位置情報と、平均補正量と、に基づいて第4パターンMP4を露光する露光条件を決定すればよい。
【0133】
[第3実施形態]
第2実施形態では、基板IDが一致する基板について第2パターンMP2の転写工程において計測した第1パターンMP1が有するアライメントマークの位置情報と平均補正量とを用いて、第3パターンMP3の転写工程において計測を行っていないアライメントマークM221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の位置情報を推定した。
【0134】
また、第2実施形態では、平均補正量を処理経路や処理日時が同一あるいは類似するサンプル基板の測定結果を用いて算出していた。第3実施形態ではサンプル基板の中でもレイヤ間差が近いサンプル基板を選択して平均補正量を算出する点が異なる。
【0135】
サンプル基板の処理においては、第3実施形態では、第2実施形態と比較してステップS58以降の処理が異なる。そこで
図19のステップS51~ステップS57については説明を省略する。また、オブジェクト基板の処理においては、第3実施形態では、第2実施形態と比較してステップS62とステップS66との間にステップS63、ステップS64、ステップS65が追加される。そこで
図19のステップS61~ステップS62については説明を省略する。
【0136】
サンプル基板の処理の変更点について具体的に説明する。ステップS57において第3パターンが転写された基板Pが搬出される。制御装置CONTは、基板Pのサンプル情報を記憶部STRGによってデータベースに記憶させる(ステップS58)。ここで、サンプル情報には、列R1、列R2、列R3、及び列R4のアライメントマークの補正後位置情報も含まれる。また、制御装置CONTは基板Pのレイヤ間差を算出し、記憶部STRGによってデータベースに記憶させる(ステップS59)。第2実施形態では、さらに、ステップS60においてサンプル基板の複数の基板Pのレイヤ間差の平均値を記憶部STRGに記憶させていたが、第3実施形態ではそのステップS60を行わない。
【0137】
次にオブジェクト基板の処理の変更点について具体的に説明する。オブジェクト基板である基板PについてステップS62において基板全体の露光条件の調整が行われた後、ステップS61で測定されたアライメントマークM211~M216(列R1)とM241~M246(列R4)との補正後位置情報と、ステップS14で測定されたアライメントマークm111~m116(列R1)とm141~m146(列R4)との補正後位置情報と、を用いて基板Pのレイヤ間差を算出する(ステップS63)。
【0138】
次に、制御装置CONTは、ステップS63で算出されたレイヤ間差の結果とデータベースに保存されているサンプル基板のレイヤ間差とを比較し、類似するサンプル基板が所定枚数だけ存在するか否かを判定する(ステップS64)。具体的な類似の判断の方法については第4実施形態で詳述する。抽出される類似するサンプル基板の数は1枚であってもよいし、2枚以上であってもよい。
【0139】
類似するサンプル基板が所定枚数存在する場合(ステップS64/YES)は、次のステップS65へと進む。類似するサンプル基板が所定枚数存在しない場合(ステップS64/NO)は、そのオブジェクト基板はサンプル基板として扱われ、ステップS53からステップS59の処理が行われる。
【0140】
次に、ステップS64でYESと判断された場合、抽出されたサンプル基板のレイヤ間差の平均値を算出する(ステップS65)。算出された平均値は平均補正量として扱われる。
【0141】
ステップS65で算出された平均補正量と、ステップS61の計測結果と、を用いてアライメントマークM231~M236(列R2)、M331~M336(列R3)の推定処理を行う(ステップS66)。具体的には、現在露光対象となっている基板PのIDに紐付けられているアライメントマークm121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)の補正後位置情報を取得し、取得したアライメントマークm121~m126(列R2)、m131~m136(列R3)の補正後位置情報を、ステップS65で算出された平均補正量と、ステップS61の計測結果と、を用いて補正する。
【0142】
その後、走査ごとの露光条件を決定し(ステップS67)、基板Pに第3パターンMP3を転写する(ステップS68)。ステップS68の終了後、第3パターンMP3が転写された基板Pが搬出される(ステップS69)。
【0143】
[第4実施形態]
第1、第2及び第3実施形態では、基板IDが一致する基板について、第2パターンMP2の転写工程において計測した第1パターンMP1が有するアライメントマークの位置情報を、第3パターンMP3の転写工程において計測を行っていないアライメントマークの位置情報を推定するのに使用していた。
【0144】
第4実施形態では、基板IDが一致する基板ではなく、露光領域PA1~PA4の形状が処理対象の基板の露光領域PA1~PA4の形状と類似する他の基板(サンプル基板)において計測されたアライメントマークの位置情報に基づいて、処理対象の基板(オブジェクト基板)において計測を行っていないアライメントマークの位置情報を推定する。
【0145】
図20は、第4実施形態に係る露光方法を示すフローチャートである。
図20は、第n層に対応するパターンを形成する処理を示している。なお、以後の説明では、一例として第3層に対応するパターンを形成する場合について説明するが、第2層に対応するパターンを形成する場合、第4層に対応するパターンを形成する場合でも
図20に示す処理を適用することが出来る。
【0146】
まず、制御装置CONTは、基板Pに形成しようとする第3層に対応するマスクMをマスクステージ1に搬入(ロード)する。マスクMがマスクステージ1に保持された後、制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、マスクMのアライメント処理、各種計測処理、及びキャリブレーション処理を含むセットアップ処理を実行させる。
【0147】
制御装置CONTは、上記各処理を完了させた後、所定のタイミングで、基板Pを基板ステージ2に搬入する(ステップS111)。基板Pが基板ステージ2に保持された後、制御装置CONTは、サンプル処理を実行する(ステップS112)。
【0148】
<サンプル処理>
図21は、サンプル処理の詳細を示すフローチャートである。基板Pが基板ステージ2に保持された後、制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、露光条件を調整する処理を実行させる。この露光条件調整処理において、制御装置CONTは、アライメントシステム9を用いて、第2パターンMP2のパターン情報を計測する(ステップS102)。ステップS102では、制御装置CONTは、アライメントシステム9に、基板Pに設けられる4列のアライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、及びM241~M246(列R4)を、例えば、列R1、列R2、列R3、列R4の順に検出させ、第2パターンMP2のパターン情報を計測する。したがって、ステップS102で計測されたパターン情報には、アライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)の位置情報が含まれる。
【0149】
次に、制御装置CONTは、アライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報に基づいて、基板P全体の露光条件を調整する処理を実行する(ステップS103)。
【0150】
次に、制御装置CONTは、基板Pの位置及び姿勢が補正された後の、アライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)のXY座標系における位置情報(補正後位置情報)を基板Pに対応づけて記憶する(ステップS104)。
【0151】
次に、制御装置CONTは、ステップS102において位置情報を計測した列R1、列R2、列R3、及び列R4のアライメントマークの補正後位置情報と、露光レシピと、に基づいて、走査ごと(露光領域PA1~PA4ごと)の露光条件を決定する(ステップS105)。
【0152】
制御装置CONTは、基板Pに対して、決定した露光条件で第3パターンMP3を転写する(ステップS106)。
【0153】
露光が行われた基板Pは、露光装置EXの外部に搬出され(ステップS107)、例えば現像工程や、第3パターンMP3に基づく第3層を形成する工程などの各工程が適宜行われることになる。
【0154】
図20に戻り、サンプル処理が終了すると、制御装置CONTは、全てのサンプル基板に対してサンプル処理を行ったか否かを判断する(ステップS113)。全てのサンプル基板に対してサンプル処理を行っていない場合(ステップS113/NO)、ステップS111に戻る。全てのサンプル基板に対してサンプル処理が終了した場合(ステップS113/YES)、オブジェクト基板に対する第3パターンMP3の転写工程が開始される。
【0155】
制御装置CONTは、所定のタイミングで、基板Pを基板ステージ2に搬入する(ステップS121)。基板Pが基板ステージ2に保持された後、制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、露光条件を調整する処理を実行させる。この露光条件調整処理において、制御装置CONTは、第2パターンMP2のパターン情報を計測する(ステップS122)。ステップS122では、制御装置CONTは、アライメントシステム9に、基板Pに設けられる4列のアライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、及びM241~M246(列R4)のうち、2列のアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)、を、例えば列R1、列R4の順に検出させ、第2パターンMP2のパターン情報を計測する。したがって、ステップS122で計測される第2パターンMP2のパターン情報には、アライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報が含まれる。
【0156】
次に、制御装置CONTは、アライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報に基づいて、基板P全体の露光条件を調整する処理を実行する(ステップS123)。
【0157】
次に、制御装置CONTはデータベースに登録されているサンプル基板の中から、露光領域の形状がオブジェクト基板の露光領域の形状と類似するサンプル基板を特定する(ステップS124)。オブジェクト基板の露光領域の形状は、列R1のアライメントマークM211~M216及び列R4のアライメントマークM241~M246の補正後位置情報に基づいて決定される。本実施形態では、例えば、
図22に示すように、データベース内に格納された複数のサンプル基板のそれぞれについて、オブジェクト基板の露光領域の形状と、サンプル基板の露光領域の形状とを比較し、露光領域の形状が類似する基板を1枚特定する。
【0158】
ここで、露光領域の形状の類似度の判断方法について、
図23を参照して説明する。なお、
図23ではサンプル基板の露光領域およびアライメントマークを点線で示し、オブジェクト基板の露光領域及びアライメントマークを一点鎖線で示している。
【0159】
制御装置CONTは、サンプル基板のアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)と、オブジェクト基板のアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R2)とをそれぞれ結ぶベクトルV11~V16、V41~V46について、その長さ(x
2+y
2)
1/2を算出する。なお、
図24において、各アライメントマークの位置は補正後位置情報に基づくものである。
【0160】
本実施形態において、制御装置CONTは、ベクトルV11~V16、V41~V46の長さのうち最大値を、サンプル基板の代表値とする。代表値は、オブジェクト基板の露光領域の形状との類似度を表す。第3実施形態の場合、代表値が小さいほど、オブジェクト基板の露光領域の形状との類似度が高いことになる。なお、類似度を表す代表値は、例えば各ベクトルの長さの総和、各ベクトルの長さの平均、または、各ベクトルの長さの中央値などの他の値であってもよいし、代表値の算出にベクトルを使用する方法以外の方法を用いてもよい。
【0161】
本実施形態において、制御装置CONTは、複数のサンプル基板のうち、代表値が小さいサンプル基板を、露光領域の形状がオブジェクト基板の露光領域の形状と類似する基板として特定する。また、前述した第3実施形態における類似性の判断にも本手法を用いることができる。
【0162】
図20に戻り、制御装置CONTは、特定したサンプル基板のアライメントマークM221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の補正後位置情報に基づいて、アライメントマークM221~M226(列R2)及びM231~M236(列R3)の補正後位置を推定(算出)する(ステップS125)。
【0163】
次に、制御装置CONTは、ステップS122において位置情報を計測したアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の補正後位置情報と、ステップS125において推定したアライメントマークM221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の推定位置情報と、に基づいて走査ごとの露光条件を決定する(ステップS126)。
【0164】
制御装置CONTは、基板Pに対して、決定した露光条件で第3パターンMP3を転写する(ステップS127)。露光が行われた基板Pは、露光装置EXの外部に搬出され(ステップS128)、例えば現像工程や、第3パターンMP3に基づく第3層を形成する工程などの各工程が適宜行われることになる。
【0165】
次に、制御装置CONTは、全てのオブジェクト基板に対して露光及び第3パターンMP3の転写が終了したか否かを判断する(ステップS129)。ステップS129の判断が否定された場合には、ステップS121に戻り、全てのオブジェクト基板に対する処理が終了するまで、ステップS121からの処理が繰り返し実行される。
【0166】
<シミュレーション1>
EGA(Enhanced Global Alignment)による列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置と、露光領域の形状が類似する1枚のサンプル基板を特定し、該当するサンプル基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置に基づいて推定したオブジェクト基板における列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置(推定位置)と、の差をシミュレーションした。シミュレーションに使用したデータは、露光装置EXに蓄積された、列R1~R4のアライメントマークの位置情報の計測データであり、637枚の基板についてシミュレーションした。
【0167】
EGAは、4列全てのアライメントマークを計測し、計測結果に基づいて各アライメントマークの補正後位置を算出するため最も精度が高い方法である。したがって、EGAによる補正後位置との差が小さいほど、比較対象となる方法によるアライメントマークの補正後位置の推定精度が高いことになる。
【0168】
また、比較例として、特開2012-04259号公報に記載された方法(c-EGA(間引きEGA))でオブジェクト基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置を推定し、EGAによる列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置との差をシミュレーションした。特開2012-04259号公報の方法では、オブジェクト基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置は以下のように推定される。
【0169】
比較例に係る方法では、まず、N枚の基板Pを有するロットのうち、露光処理されるロット先頭のm枚のサンプル基板について、列R1~列R4のアライメントマークの位置情報を計測し、列R1~列R4のアライメントマークの補正後位置を算出する。複数のサンプル基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置を平均し、平均補正後位置を算出する。N枚の基板Pを有するロットのうちN-m枚のオブジェクト基板に対するパターンの転写工程では、列R1及び列R4のアライメントマークの位置情報を計測し、列R2及び列R3のアライメントマークの位置情報は計測せず、列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置は、複数のサンプル基板から算出された列R2及び列R3のアライメントマークの平均補正後位置に基づいて推定する。
【0170】
図24(A)は、X軸方向におけるEGAの補正後位置情報との差の分布を示す図であり、
図24(B)は、Y軸方向におけるEGAの補正後位置情報との差の分布を示す図である。
図24(A)の横軸のマイナスの数値は、各方法によるアライメントマークの推定位置がEGAによるアライメントマークの補正後位置よりも-X方向にずれていたことを示し、プラスの数値は、各方法によるアライメントマークの推定位置がEGAによるアライメントマークの補正後位置よりも+X方向にずれていたことを示す。
図24(B)の横軸のマイナスの数値は、各方法によるアライメントマークの推定位置がEGAによるアライメントマークの補正後位置よりも-Y方向にずれていたことを示し、プラスの数値は、各方法によるアライメントマークの推定位置がEGAによるアライメントマークの補正後位置よりも+Y方向にずれていたことを示す。以後の図でも同様である。
【0171】
図24(A)において、第3実施形態に係る方法とEGAとの差の3σは0.43であり、比較例に係る方法とEGAとの差の3σは0.75であった。また、
図24(B)において、第3実施形態に係る方法とEGAとの差の3σは0.58であり、比較例に係る方法とEGAとの差の3σは0.78であった。シミュレーション1により、第3実施形態の方法により各オブジェクト基板に類似する基板を1枚だけ選んだ場合でも、従来のc-EGAと比較して、列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置の推定精度が向上することが確認できた。
【0172】
以上、詳細に説明したように、第3実施形態によれば、露光装置EXは、サンプル基板上の第2パターンMP2のパターン情報であるアライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)の位置情報を計測するアライメントシステム9と、計測された位置情報を記憶する記憶部STRGと、制御装置CONTと、を備える。アライメントシステム9は、オブジェクト基板に露光された第2パターンMP2のパターン情報であるアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報を計測し、制御装置CONTは、記憶部STRGに記憶されたサンプル基板のアライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)の位置情報と、オブジェクト基板のアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報と、に基づき、代表値が最も小さいサンプル基板のアライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)の位置情報を選定する。そして、制御装置CONTは、代表値が最も小さいサンプル基板のアライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)の位置情報と、オブジェクト基板のアライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報と、に基づき、オブジェクト基板の第2パターンMP2上に第3パターンMP3を露光する露光条件を決定する。これにより、シミュレーション1で示したように、従来のc-EGAによる方法よりも、位置情報の計測を行っていないアライメントマークの補正後位置の推定精度が向上するので、露光時におけるオブジェクト基板のアライメント(位置合わせ)精度を向上できるとともに、オブジェクト基板へのパターンの転写工程において位置情報を計測するアライメントマークの列数が、EGAよりも少ないため、スループットを向上させることができる。
【0173】
(変形例1)
上記第3実施形態では、露光領域の形状が類似するサンプル基板を1枚特定し、当該特定したサンプル基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置情報を用いて、オブジェクト基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置を推定していた。変形例1では、露光領域の形状が類似するサンプル基板を複数枚特定し、特定された複数のサンプル基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置の平均値を用いて、オブジェクト基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置を推定する。
【0174】
変形例1の露光方法では、
図20のフローチャートのステップS124において、代表値が最も小さい(類似度が最も高い)サンプル基板を1枚特定するのではなく、代表値が小さいものから順に複数枚(例えば、5枚)のサンプル基板を特定する。
【0175】
そして、ステップS125の推定処理において、特定された所定枚数のサンプル基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置を平均化した平均補正後位置を算出し、当該平均補正後位置に基づいて、オブジェクト基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置を推定する。その他の処理は、第3実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0176】
<シミュレーション2>
シミュレーション1と同様に、EGAによる列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置と、変形例1の方法による列R2及び列R3のアライメントマークの推定位置と、の差をシミュレーションした。シミュレーションに使用したデータは、露光装置EXに蓄積された、列R1~R4のアライメントマークの位置情報の計測データであり、637枚の基板についてシミュレーションした。
【0177】
図25(A)は、X軸方向におけるEGAの補正後位置情報との差の分布を示す図であり、
図25(B)は、Y軸方向におけるEGAの補正後位置情報との差の分布を示す図である。
図25(A)において、第3実施形態に係る方法とEGAとの差の3σは0.43であり、変形例1に係る方法とEGAとの差の3σは0.36であった。また、
図25(B)において、第3実施形態に係る方法とEGAとの差の3σは0.58であり、変形例1に係る方法とEGAとの差の3σは0.48であった。シミュレーション2により、代表値が小さいものから順に所定枚数のサンプル基板を特定し、特定したサンプル基板における列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置を平均化した平均補正後位置を用いることにより、オブジェクト基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置の推定精度をさらに向上させることができることを確認できた。
【0178】
(変形例2)
第3実施形態及びその変形例1では、オブジェクト基板搬入後の計測処理(
図21のステップS122)において、列R1及び列R4のアライメントマークを検出し、列R1及び列R4のアライメントマークの位置情報に基づいてオブジェクト基板の位置及び姿勢の補正を行い、列R1及び列R4のアライメントマークの補正後位置情報に基づいて露光領域の形状が類似するサンプル基板を特定していた。
【0179】
変形例2では、オブジェクト基板搬入後の計測処理(
図20のステップS122)において、列R1、列R3、列R4のアライメントマークを検出し、列R1及び列R4のアライメントマークの位置情報に基づいてオブジェクト基板の位置及び姿勢の補正を行い、列R1、列R3、列R4のアライメントマークの補正後位置情報に基づいて露光領域の形状が類似するサンプル基板を特定する。これにより、列R1及び列R4のアライメントマークの補正後位置情報を用いる場合よりも、露光領域の形状の類似度が高いサンプル基板を特定できるため、オブジェクト基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置の推定精度をより向上させることができる。また、位置情報を計測するアライメントマークの列数が3列のため、4列を計測する場合よりもスループットを向上させることができる。
【0180】
<シミュレーション3>
以下の3つのケースについて、オブジェクト基板の列R2及び列R3のアライメントマークの推定位置と、EGAによる列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置と、の差についてシミュレーションした。シミュレーションには、露光装置EXに蓄積された、列R1~列R4のアライメントマークの位置情報の計測データを用い、637枚の基板についてシミュレーションした。
【0181】
(ケース1)
オブジェクト基板において列R1及び列R4のアライメントマークを検出し、列R1及び列R4のアライメントマークの位置情報に基づいてオブジェクト基板の位置及び姿勢を補正し、列R1及び列R4のアライメントマークの補正後位置情報に基づいて露光領域の形状が類似するサンプル基板を特定する。
(ケース2)
オブジェクト基板において列R1及び列R3のアライメントマークを検出し、列R1及び列R3のアライメントマークの位置情報に基づいてオブジェクト基板の位置及び姿勢を補正し、列R1及び列R3のアライメントマークの補正後位置情報に基づいて露光領域の形状が類似するサンプル基板を特定する。
(ケース3)
オブジェクト基板において列R1、列R3、列R4のアライメントマークを検出し、列R1及び列R4のアライメントマークの位置情報に基づいてオブジェクト基板の位置及び姿勢を補正し、列R1、列R3、列R4のアライメントマークの補正後位置情報に基づいて露光領域の形状が類似するサンプル基板を特定する。
【0182】
なお、オブジェクト基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置の推定は、変形例1の方法(代表値が小さいものから順に5枚のサンプル基板を特定し、その平均補正後位置を用いる方法)で行った。ここで、ケース2では、列R2及び列R4のアライメントマークの補正後位置を推定し、ケース3では列R2のアライメントマークの補正後位置を推定する。
【0183】
図26(A)は、X軸方向におけるEGAの補正後位置情報との差の分布を示す図であり、
図26(B)は、Y軸方向におけるEGAの補正後位置情報との差の分布を示す図である。
図26(A)において、ケース1の3σは0.36であり、ケース2の3σは0.60であり、ケース3の3σは0.35あった。また、
図26(B)において、ケース1の3σは0.48であり、ケース2の3σは0.68であり、ケース3の3σは0.39あった。
【0184】
シミュレーション3により、列R1、列R3、列R4のアライメントマークを検出し、列R1及び列R4のアライメントマークの位置情報に基づいてオブジェクト基板の位置及び姿勢を補正し、列R1、列R3、列R4のアライメントマークの補正後位置情報に基づいて、露光領域の形状が類似するサンプル基板を特定することにより、オブジェクト基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置の推定精度をより向上できることが確かめられた。
【0185】
(変形例3)
第3実施形態では、代表値が最も小さいサンプル基板をオブジェクト基板との類似度が高いサンプル基板として特定し、変形例1及び2では、代表値が小さいものから順に所定枚数のサンプル基板をオブジェクト基板との類似度が高いサンプル基板として特定していた。発明者らは、サンプル基板の代表値が所定値以上になると、第3実施形態並びに変形例1及び2の各方法による列R2及び列R3のアライメントマークの推定位置とEGAによる列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置との差が大きくなることを発見した。そこで、変形例3では、代表値が所定値以上の場合には、露光領域の形状が類似するサンプル基板がないと判断し、オブジェクト基板に対してサンプル処理を実行する。
【0186】
図27は、変形例3に係る露光方法を示すフローチャートである。
図27のフローチャートは、第n層に対応するパターンをオブジェクト基板に転写する工程を示している。すなわち、サンプル基板に対するサンプル処理は終了し、データベースが作成されているものとする。なお、以下の説明では、第3パターンMP3を転写する場合を例に説明する。
【0187】
制御装置CONTは、所定のタイミングで、基板Pを基板ステージ2に搬入する(ステップS151)。基板Pが基板ステージ2に保持された後、制御装置CONTは、露光レシピに基づいて、露光条件を調整する処理を実行させる。この露光条件調整処理において、制御装置CONTは、第2パターンMP2のパターン情報を計測する(ステップS152)。ステップS152では、制御装置CONTは、アライメントシステム9に、基板Pに設けられる4列のアライメントマークM211~M216(列R1)、M221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)、及びM241~M246(列R4)のうち、3列のアライメントマークM211~M216(列R1)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)を、例えば列R1、列R3、列R4の順に検出させ、第2パターンMP2のパターン情報を計測する。したがって、ステップS152で計測された第2パターンMP2のパターン情報には、アライメントマークM211~M216(列R1)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)の位置情報が含まれる。
【0188】
次に、制御装置CONTは、アライメントマークM211~M216(列R1)、M241~M246(列R4)の位置情報に基づいて、基板P全体の露光条件を調整する処理を実行する(ステップS153)。
【0189】
次に、制御装置CONTは、アライメントマークM211~M216(列R1)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)の補正後位置情報に基づいて、データベースに登録されているサンプル基板の中に、露光領域の形状が類似するサンプル基板が存在するか否かを判断する(ステップS154)。変形例3では、代表値が閾値以下のサンプル基板が所定枚数(例えば、5枚)以上存在するか否かを判断するものとする。
【0190】
代表値が閾値以下のサンプル基板が所定枚数(例えば、5枚)以上存在する場合(ステップS154/YES)、制御装置CONTは、代表値が小さいものから順に所定枚数(例えば、5枚)のサンプル基板を、露光領域の形状が類似するサンプル基板として特定する(ステップS155)。
【0191】
次に、制御装置CONTは、位置情報の計測が行われていないアライメントマークM221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の補正後位置を推定する(ステップS156)。具体的には、ステップS155で特定した所定枚数のサンプル基板のアライメントマークM221~M226(列R2)、M231~M236(列R3)の補正後位置を平均化した平均補正後位置に基づいて、オブジェクト基板のアライメントマークM221~M226(列R2)の補正後位置を推定する。
【0192】
次に、制御装置CONTは、ステップS152で位置情報を計測したアライメントマークM211~M216(列R1)、M231~M236(列R3)、M241~M246(列R4)の補正後位置情報と、ステップS156において推定したアライメントマークM221~M226(列R2)の推定位置情報と、に基づいて走査ごとの露光条件を決定する(ステップS157)。
【0193】
制御装置CONTは、基板Pに対して、決定した露光条件で第3パターンMP3を転写する(ステップS158)。露光が行われた基板Pは、露光装置EXの外部に搬出され(ステップS159)、例えば現像工程や、第3パターンMP3に基づく第3層を形成する工程などの各工程が適宜行われることになる。
【0194】
ところで、代表値が閾値以下のサンプル基板が所定枚数(例えば、5枚)以上存在しない場合には、ステップS154の判断が否定され、オブジェクト基板に対し、
図21に示すサンプル処理が実行される(ステップS161)。これにより、露光領域の形状が類似する可能性が低いサンプル基板のデータに基づいて、オブジェクト基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置が推定されることを抑制することができ、オブジェクト基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置の推定精度を向上することができる。また、全てのオブジェクト基板に対してサンプル処理が行われるわけではないため、EGAと比較してスループットを向上させることができる。
【0195】
ステップS159の終了後、または、サンプル処理(ステップS161)の終了後、制御装置CONTは、全てのオブジェクト基板に対して露光及び第3パターンMP3の転写が終了したか否かを判断する(ステップS160)。ステップS160の判断が否定された場合には、ステップS151に戻り、全てのオブジェクト基板に対する処理が終了するまで、ステップS151からの処理が繰り返し実行される。
【0196】
<シミュレーション4>
EGAによる列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置と、変形例3の方法による列R2及び列R3のアライメントマークの推定位置と、の差をシミュレーションした。シミュレーションには、露光装置EXに蓄積された、列R1~列R4のアライメントマークの位置情報の計測データを用い、637枚の基板についてシミュレーションした。
【0197】
X軸方向における差について、閾値を設定しなかった場合(変形例2の場合)の3σが0.35であったのに対し、閾値を設定した場合(変形例3の場合)の3σは0.32であった。また、Y軸方向における差について、閾値を設定しなかった場合(変形例2の場合)の3σが0.39であったのに対し、閾値を設定した場合(変形例3の場合)の3σは0.36であった。なお、変形例3の方法を採用した場合に、サンプル処理の対象となったオブジェクト基板の数は、637枚中34枚であった。
【0198】
このように代表値に対して閾値を設定することで、位置情報を計測していない列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置の推定精度を向上させることができる。また、EGAと比較して検出するアライメントマークの列数が少ないため、EGAよりもスループットを向上させることができる。
【0199】
閾値が小さすぎると、サンプル処理の対象となるオブジェクト基板の数が増えるため、スループットが低下する。一方、閾値が大きすぎると、列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置の推定精度の向上に寄与しない。したがって、閾値は、スループットと推定精度とのバランスから決定される。
【0200】
[第5実施形態]
第5実施形態では、第n層に対応するパターンの転写工程においてサンプル処理を行ったオブジェクト基板については、第n+1層に対応するパターンの転写工程において、露光領域の形状が類似するサンプル基板の特定を行わずに、サンプル処理を実行する。第n層に対応するパターンの転写工程においてサンプル処理が行われた場合、第n+1層に対応するパターンの転写工程においても、露光領域の形状が類似するサンプル基板がデータベースに存在する可能性が低いからである。
【0201】
図28は及び
図29は、第5実施形態に係る露光方法を示すフローチャートである。
図28は、第n層に対応するパターンの形成処理を示し、
図29は、第n+1層に対応するパターンの形成処理を示す。
【0202】
まず、第n層に対応するパターンの形成処理について説明する。
図28のフローチャートでは、露光領域の形状が類似するサンプル基板が存在しないと判断され(ステップS154/NO)、サンプル処理(ステップS161)を行った場合、サンプル処理を行ったオブジェクト基板の情報(例えば、基板ID)をサンプル処理リストに追加する(ステップS162)。その他の処理は、
図27に示す処理と同一であるため、
図27と同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0203】
次に、第n+1層に対応するパターンの形成処理について説明する。
図29は、オブジェクト基板に対する処理を示しており、サンプル基板に対するサンプル処理は終了し、データベースが作成されているものとする。
【0204】
図29の処理では、まず、制御装置CONTが、所定のタイミングで、オブジェクト基板を搬入する(ステップS201)。次に、制御装置CONTは、搬入したオブジェクト基板の情報(基板ID)が、第n層のパターンの転写工程において作成したサンプル処理リストに存在するか否かを判断する(ステップS202)。
【0205】
制御装置CONTは、オブジェクト基板の基板IDがサンプル処理リストに存在しない場合(ステップS202/NO)、露光領域の形状が類似するサンプル基板を特定する処理を開始する。ステップS203~ステップS210の処理は、
図28のステップS152~S159の処理とそれぞれ同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0206】
一方、オブジェクト基板の基板IDがサンプル処理リストに存在する場合(ステップS202/YES)、制御装置CONTは、オブジェクト基板に対してサンプル処理(
図21参照)を実行する(ステップS212)。サンプル処理リストにオブジェクト基板の基板IDが存在するということは、第n層のパターンの転写工程において、露光領域の形状が類似するサンプル基板が存在せずに、サンプル処理を行ったということである。したがって、第n+1層においても、露光領域の形状が類似するサンプル基板が存在しない可能性が高い。そこで、オブジェクト基板の基板IDがサンプル処理リストに存在する場合(ステップS202/YES)、露光領域の形状が類似するサンプル基板が存在するか否かを判断せず、サンプル処理を実行する。これにより、ステップS203~ステップS205の処理を行った結果、露光領域の形状が類似するサンプル基板がなくサンプル処理を行う場合と比較して、オブジェクト基板の処理時間を短くすることができる。
【0207】
[第6実施形態]
第6実施形態では、運用例について説明する。
図30および
図31は、第6実施形態に係る露光方法を示すフローチャートである。なお、
図30および
図31は、第n+1層に対応するパターンの転写工程におけるオブジェクト基板の処理を示しており、サンプル基板に対するサンプル処理は終了しているものとする。
【0208】
図30の処理では、まず、制御装置CONTは、記憶部STRGに格納されているサンプル基板のデータベースが今回の処理対象となるロットに対して使用可能か否かを判断する(ステップS401)。例えば、制御装置CONTは、サンプル基板のデータベースを作成したときのマスクM(パターン)が、オブジェクト基板への転写工程で使用されるマスクM(パターン)と同一であるか否かを判断する。この場合、サンプル基板のデータベースを作成したときのマスクM(パターン)が、オブジェクト基板への転写工程で使用されるマスクM(パターン)と同一である場合、データベースが使用可能であると判断される。
【0209】
なお、ステップS401において、マスクM(パターン)に含まれる回路パターンと、アライメントマークのパターンとのうち、アライメントマークのパターンが、サンプル基板とオブジェクト基板との間で同一である場合に、データベースが使用可能であると判断してもよい。
【0210】
データベースが使用できない場合(ステップS401/NO)、
図31のステップS417に進み、新たな基板Pが搬入され、ロット内に含まれるすべてのオブジェクト基板についてサンプル処理(
図21参照)が実行される。ステップS418のサンプル処理は、ロットに含まれるすべてのオブジェクト基板の処理が終了するまで繰り返される。
【0211】
一方、データベースが使用可能な場合(ステップS401/YES)、制御装置CONTは、所定のタイミングで基板Pを搬入する(ステップS402)。次に、制御装置CONTは、第n層目のパターンの転写工程で作成されたサンプル処理リストが存在するか否かを判断する(ステップS403)。
【0212】
第n層目のパターンの転写工程で作成されたサンプル処理リストが存在する場合(ステップS403/YES)、制御装置CONTは、オブジェクト基板の基板IDが、サンプル処理リストに存在するか否かを判断する(ステップS413)。
【0213】
オブジェクト基板の基板IDがサンプル処理リストに存在しない場合(ステップS413/NO)、または、第n層目のパターンの転写工程で作成されたサンプル処理リストが存在しない場合(ステップS403/NO)、制御装置CONTは、露光レシピに基づいて露光条件を調整する処理を実行させる。この露光条件調整処理では、アライメントシステム9を用いて、制御装置CONTは、第n層に対応するパターンのパターン情報を計測する(ステップS404)。ステップS404では、制御装置CONTは、アライメントシステム9に、基板Pに設けられる4列のアライメントマークのうち列R1、列R3、列R4のアライメントマークを検出させ、第2パターンMP2のパターン情報を計測する。したがって、ステップS404で計測されたパターン情報には、列R1、列R3、列R4のアライメントマークの位置情報が含まれる(ステップS404)。
【0214】
制御装置CONTは、列R1及び列R4のアライメントマークの位置情報に基づいて、基板Pの位置及び姿勢を補正し(ステップS405)、列R1、列R3、列R4のアライメントマークの補正後位置情報に基づいて、露光領域の形状が類似するサンプル基板が存在するか否かを判断する(ステップS406)。第6実施形態では、代表値が閾値以下のサンプル基板が所定枚数(例えば、5枚)以上存在するか否かを判断するものとする(第4実施形態の変形例3の方法)。
【0215】
代表値が閾値以下のサンプル基板が所定枚数(例えば、5枚)以上存在する場合(ステップS406/YES)、制御装置CONTは、代表値が小さいものから順に所定枚数のサンプル基板を、露光領域の形状が類似するサンプル基板として特定する(ステップS407)。
【0216】
そして、制御装置CONTは、所定枚数のサンプル基板の列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置の平均値(平均補正後位置)を用いて、オブジェクト基板の列R2のアライメントマークの補正後位置を推定する(ステップS408)。
【0217】
制御装置CONTは、位置情報を計測した列R1及びR4のアライメントマークの補正後位置情報と、位置情報を計測していない列R2及び列R3のアライメントマークの推定位置情報と、に基づいて走査ごとの露光条件を決定する(ステップS409)。
【0218】
制御装置CONTは、基板Pに対して、決定した露光条件でパターンMPを転写する(ステップS410)。露光が行われた基板Pは、露光装置EXの外部に搬出される(ステップS411)。
【0219】
ステップS411の後、制御装置CONTは、全てのオブジェクト基板の処理が終了したか否かを判断する(ステップS412)。処理が終わっていないオブジェクト基板が存在する場合(ステップS412/NO)、ステップS402に戻る。
【0220】
ところで、サンプル処理リストにオブジェクト基板の基板IDが存在する場合(ステップS413/YES)、または、露光領域の形状が類似するサンプル基板が存在しない場合(ステップS406/NO)、制御装置CONTは、オブジェクト基板に対してサンプル処理(
図21参照)を実行する(ステップS414)。
【0221】
サンプル処理の実行後、制御装置CONTは、X枚連続でサンプル処理を実行しているか否かを判断する(ステップS415)。X枚連続でサンプル処理を実行していない場合(ステップS415/NO)、ステップS402に戻る。
【0222】
一方、X枚連続でサンプル処理を実行している場合(ステップS415/YES)、制御装置CONTは、全てのオブジェクト基板の処理が終了したか否かを判断する(ステップS416)。そして、処理が終わっていないオブジェクト基板が存在する場合(ステップS416/NO)、同一ロット内の残りのオブジェクト基板すべてに対してサンプル処理(
図21参照)を行うため、基板Pを搬入する(ステップS417)。制御装置CONTは、搬入された基板Pに対してサンプル処理を行う(ステップS418)。
【0223】
サンプル処理がX枚連続で行われるということは、データベース内のサンプル基板のデータが、今回のロットに対して不適切である可能性が高く、今後の処理においても露光領域の形状が類似するサンプル基板が存在しない可能性が高いということである。そこで、第6実施形態では、X枚連続でサンプル処理を実行している場合、露光領域の形状が類似するサンプル基板を特定する処理を行わず、データベースにサンプル基板を追加する処理を行うようにしている。
【0224】
ステップS417の処理は、同一ロット内の全てのオブジェクト基板の処理が終了するまで繰り返される。
【0225】
上記第5および第6実施形態では、第n層に対応するパターンの転写工程では、第n-1層に対応するパターンのパターン情報を計測したサンプル基板のデータベースを使用し、第n+1層に対応するパターンの転写工程では、第n層に対応するパターンのパターン情報を計測したサンプル基板のデータベースを使用するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、第n+1層に対応するパターンの転写工程において、第n-1層に対応するパターンのパターン情報を計測したサンプル基板のデータベースを用いて、第n+1層に対応するパターンの露光条件を決定してもよい。すなわち、第n-1層に対応するパターンのパターン情報から、第n+1層のパターンの転写工程において位置情報を計測していないアライメントマークの補正後位置を推定し、第n+1層のパターンの露光条件を決定してもよい。
【0226】
なお、上記第1実施形態~第6実施形態及び変形例において、第n層に対応するパターンの転写と、第n+1層に対応するパターンの転写とは、同一の露光装置で行ってもよいし、異なる露光装置で行ってもよい。
【0227】
また、上記第1実施形態~第6実施形態及び変形例において、制御装置CONTが、計測していない列R2及び列R3のアライメントマークの補正後位置を推定していたが、これに限られるものではない。たとえば、露光装置EXとネットワークを介して接続されたサーバにより各種処理を実行してもよい。
【0228】
なお、露光装置EXの用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを露光する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば、半導体製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッドを製造するための露光装置にも広く適用できる。
【0229】
本実施形態の露光装置EXの光源は、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)のみならず、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、F2レーザ(157nm)を用いることができる。
【0230】
投影光学系PL1~PL7の各倍率は等倍系のみならず、縮小系及び拡大系のいずれでもよい。
【0231】
また、前述した実施形態においては、液晶表示素子を製造する場合を例に挙げて説明したが、もちろん、液晶表示素子の製造に用いられる露光装置だけではなく、半導体素子等を含むディスプレイの製造に用いられてデバイスパターンを半導体基板上へ転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられてデバイスパターンをセラミックウェハ上へ転写する露光装置、及びCCD等の撮像素子の製造に用いられる露光装置等にも本発明を適用することができる。
【0232】
また、上述の実施形態では、各投影光学系PL1~PL7が一対の反射屈折型光学系31,32を有するマルチ走査型投影露光装置について本発明を適用しているが、各投影光学系が1つ又は3つ以上の結像光学系を有する型式のマルチ走査型投影露光装置に対しても本発明を適用することができる。また、上記実施形態では、投影光学系PL1~PL5がマルチ型に構成された場合を例に挙げて説明したが、本発明はマルチ型以外の投影光学系、つまり鏡筒が1つの投影光学系にも適用することができる。
【0233】
次に本発明の一実施形態による露光装置をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
図32は、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを製造する際の製造工程の一部を示すフローチャートである。まず、
図32のステップS501において、1ロットのウエハ上に金属膜が蒸着される。次のステップS502において、その1ロットのウエハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップS503において、
図1に示す露光装置EXを用いて、マスクM上のパターンの像がその投影光学系(投影システム)を介して、その1ロットのウエハ上の各ショット領域に順次露光転写される。
【0234】
その後、ステップS504において、その1ロットのウエハ上のフォトレジストの現像(現像工程)が行われた後、ステップS505において、その1ロットのウエハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウエハ上の各ショット領域に形成される。その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。
【0235】
また、上記各露光装置では、基板P上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、
図33のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。
図33は、マイクロデバイスとしての液晶表示素子の製造する際の製造工程の一部を示すフローチャートである。
【0236】
図33中のパターン形成工程S520では、本実施形態の露光装置EX等を用いてマスクMのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィ工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レチクル剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルタ形成工程S522へ移行する。
【0237】
次に、カラーフィルタ形成工程S522では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、又はR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を複数水平走査線方向に配列したカラーフィルタを形成する。そして、カラーフィルタ形成工程S522の後に、セル組み立て工程S524が実行される。セル組み立て工程S524では、パターン形成工程S520にて得られた所定パターンを有する基板、及びカラーフィルタ形成工程S522にて得られたカラーフィルタ等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。
【0238】
セル組み立て工程S524では、例えば、パターン形成工程S520にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルタ形成工程S522にて得られたカラーフィルタとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。その後、モジュール組立工程S526にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
【0239】
また、半導体素子あるいは液晶表示素子を製造する際に用いられるマスクMは
図34のようなマスクM1を用いてもよい。
図34は、液晶表示素子を製造する際に用いられるフォトマスクを示す。マスクM1は、複数のパターン領域MPA10を有し、1枚のマスクM1のパターン領域MPA10には、同一製品の複数レイヤのパターンを有する。より具体的には、第1パターンMP1のパターンを有する第1パターン領域MPA11、第2パターンMP2のパターンを有する第2パターン領域MPA12、第3パターンMP3のパターンを有する第3パターン領域MPA13を有する。従来であれば、同一製品の異なるレイヤを露光する際はマスクMの交換が必要だが、マスクM1は1枚のマスクに複数のレイヤのパターンを有しているので、製造の際に必要なマスクMの枚数を減らすことや、マスクMの交換時間を短縮することができる。マスクM1は同一製品の複数レイヤを有すると述べたが、複数製品の複数レイヤのパターンを有していてもよい。
【0240】
また、マスクM1はパターンを有するパターン領域MPA10のほかに、照明光を透過させない遮光部Sh(ハッチングで示す)を有する。遮光部Shはパターン領域MPA10の周囲に設けられる。
図34の場合では、マスクM1はX軸方向にパターン領域MPA11、MPA12、MPA13を有し、各パターン領域の両端に幅W(W1~W4)の遮光部Shが設けられる。また、マスクM1のX軸方向における遮光部Shの幅W1を任意に設定することができる。遮光部Shの幅W1を短く設定した場合は、マスクM1におけるパターン領域MPA10が占める面積の割合を増やすことができる。走査露光を行うときは、遮光部Shの幅W1を短く調整する前と比べて、基板ステージ2の走査速度を遅くさせて走査露光を行えばよい。また、遮光部Shの幅W1に限らず、遮光部Shの幅W2~W4の幅も任意に設定できる。遮光部Shの幅W2~W4を短くする場合は、幅W1の時と同様に、基板ステージ2の走査速度を遅くさせて走査露光を行えばよい。
【0241】
図35(A)及び
図35(B)は、重ね露光について説明するための図である。重ね露光を行うにあたって、例えば、
図35(A)のように、第1層~第6層を重ねて露光する場合に、第1層~第3層との間で重ね精度が求められ、第4層~第6層との間での重ね精度が求められることがある。このような場合、アライメントの基準となるアライメントマークは第4層で再び露光される。そこで、第5層~第6層を露光する場合、第4層のアライメントマークを計測し、計測結果から第5層の露光条件(補正条件等)を計算し、第5層のパターンを露光することとなる。第6層以降についても同様の処理が行われる。このような処理を行うと、次の層を露光する際に時間を要してしまうが、次の方法によって補正条件の算出時間を短縮することができる。
【0242】
まず、レイヤ管理リストを作成する。レイヤ管理リストとは、製造する製品の各層(第1層~第6層)と露光装置上のレシピとを紐づけたリストである。レイヤ管理リストには、製造する製品名のレイヤ番号や、各レイヤで露光する露光装置のマシンIDなど、露光を行うにあたって必要な情報がまとめられている。
【0243】
次に、第3層上に第4層のパターンMP4とアライメントマークm411~m416(列R1)、m421~R426(列R2)、m431~436(列R3)、m441~446(列R4)を露光する。この時、第4層で露光されるパターンMP4は
図35(B)に示すように歪んでいる場合がある。この場合、第5層以降を露光する際は、歪んだ第4層に基づいて第5層以降のパターンが露光される必要があるため、維持補正値を算出する。維持補正値は、以下のように算出される。
【0244】
制御装置CONTは、第4層の歪んだ状態(
図35(B))を好ましい(歪んでいない)状態(
図35(A))に補正する形状補正値を算出する。制御装置CONTは、第5層を露光する際に、好ましい状態に露光するために、形状補正値を使用して露光するが、第5層が第4層に対して、回転誤差、シフト誤差、直交度誤差、スケーリング誤差などが生ずる場合がある。制御装置CONTは、このような誤差を補正する維持補正値を算出する。
【0245】
次に、算出した形状補正値及び維持補正値と、レイヤ管理リストに紐付いている各レイヤのレシピとに基づいて、第5層~第6層で露光を行うときの補正値を一括で算出する。この手順により、第5層~第6層に関する補正値を算出する時間を短縮することができる。
【0246】
また、上述した制御装置CONTの機能に加えて、制御装置CONTは、基板Pの露光対象レイヤの好ましい走査順序及び走査方向を算出することができる。
【0247】
図36(A)及び
図36(B)は、基板Pに第1レイヤと第2レイヤとを、走査露光するときの走査方向と走査順序とをそれぞれ示す図である。
図36(A)は、第1レイヤの各ショットの走査方向と走査順序とを示す。
図36(B)は、第2レイヤの各ショットの走査方向と走査順序とを示す。
【0248】
図36(A)と
図36(B)とを比較すると、各ショットにおいて、矢印で示す走査方向が同じショットもあれば、走査方向が異なるショットもある。例えば、露光領域PA1~PA4を順に露光する場合において、露光領域PA1を露光するショットは、第1レイヤ(
図36(A))と第2レイヤ(
図36(B))とで、走査方向が異なっている。また、例えば、露光領域PA4を露光するショットは、第1レイヤ(
図36(A))と第2レイヤ(
図36(B))とで、走査方向が同一である。
【0249】
これは、第1レイヤの露光時には、第1レイヤの露光前には、投影光学系が基板Pの―X側にあり、その位置を起点にパターンが露光されていない基板Pを露光する所要時間が最速になるように走査露光される。第2レイヤの露光時には、基板Pに第1レイヤとともに露光されたアライメントマークを測定してから第2レイヤを露光するため、投影光学系は基板Pの+X側にある。そのため、第1レイヤの露光開始位置と第2レイヤの露光開始位置とが異なる。第2レイヤを露光する場合は、露光開始位置から基板P1枚を走査露光するための所要時間が最速になるように露光される。そのため、第1レイヤと第2レイヤと、で走査方向と走査順序とが異なる。
【0250】
ここで、同一ショット内で走査方向が第1レイヤと第2レイヤとで異なることにより、マスクステージとプレートステージの各々の制御に伴うプレートステージに対するマスクステージの相対的な位置ズレ(ステージ同期誤差)が発生し、露光形状に誤差が生じる。これによって、第2レイヤのパターンを露光したときに、第1レイヤのパターン位置に対して第2レイヤのパターンの位置の重ね合わせ誤差が生じる。この場合、従来は以下のように、レイヤごと、ショットごとに露光形状の補正を行っていた。
【0251】
制御装置CONTは、ショット位置ごとにレシピの補正パラメータを使って露光することによって、重ね合わせ誤差が小さくなるように制御することが可能になる。ただしこの方法を使っても、この重ね合わせ誤差は経時的に変化するため、定期的に補正を実施して、レシピの補正パラメータを更新する必要があった。このような重ね合わせ精度の管理が必要になるため、同一ショット内で、走査方向の違いによるステージ同期誤差の差が小さいほうが、重ね合わせ精度の管理に有利なため、
図37(A)及び
図37(B)に示すように、第1レイヤと第2レイヤとで、走査順序と走査方向とをそろえることが好ましい。なお、
図37(A)は、第1レイヤの各ショットの走査方向と走査順序とを示す。
図37(B)は、第2レイヤの各ショットの走査方向と走査順序とを示す。
【0252】
また、第2レイヤの走査方向に第1レイヤの走査方向を合わせる場合、投影光学系の位置を基板Pの+X側にするために、基板Pを移動させる必要がある。そのため、第1レイヤのタクト時間は
図36(A)及び
図36(B)のように露光する場合よりも長くなる。そのため、制御装置CONTは、使用者が使用するモニターMNTの表示部D(
図38参照)に第1レイヤ及び第2レイヤの走査方向と走査順序とをそろえて露光する精度優先モードあるいは、第1レイヤと第2レイヤとがそれぞれ最速で露光できるタクト優先モードのいずれかを選択することができるよう表示する。これにより、精度優先かタクト優先かを選べるので、レイヤ・製品に応じて好ましい露光を行うことができる。
【0253】
使用者が精度優先モードあるいはタクト優先モードのいずれかを選択しようとする際に、制御装置CONTは使用者が使用するモニターMNTの表示部Dに確認メッセージを表示することができる。確認メッセージを表示することで、誤操作を防ぐことができる。また、制御装置CONTはすでに設定された条件(走査順序・走査方向など)を変えることを防ぐために、設定された条件をロックするロック機能を有する。制御装置CONTは、使用者がロック機能を解除しようとするときに表示部Dに確認メッセージが表示させることもできる。
【0254】
さらに、制御装置CONTで算出された走査順序・走査方向以外に、使用者が任意に設定する走査順序及び走査方向がある場合、制御装置CONTは使用者が任意に設定した走査順序・走査方向をテンプレート(
図39)として記憶部STRGに保存する。
【0255】
図39は、テンプレートを格納するテーブルの一例を示す図である。
図39に示すように、テーブルは、テンプレートを識別するテンプレート番号、基板Pに露光されるスキャン数、及びアライメント手法などの情報を格納する。使用者は、露光対象レイヤを露光する際、記憶部STRGに保存されているテンプレートの中から1つのテンプレートを選択する。これにより、モニターMNTへの走査順序及び走査方向の入力の手間を削減したり、誤入力を防ぐことができる。記憶部STRGは、使用者が任意に設定する走査順序及び走査方向の情報だけではなく、制御装置CONTが算出した走査順序及び走査方向の情報を記憶してもよい。
【0256】
なお、
図38では、制御装置CONTとモニターMNTとを含む構成を用いて説明しているが、複数の制御装置CONTとネットワークで接続したレシピ管理サーバの記憶部に、テンプレートを保存してもよい。レシピ管理サーバでオペレータは、スキャン数が同じテンプレートを使って、作成済のレシピまたは新規作成のレシピに対し走査順序・走査方向を決定することができる。これによって、装置ごとにテンプレートをばらばらに管理するのではなく、一括で管理することができるため、管理するテンプレートを減らすことができ、効率よくレシピを編集することができる。
【0257】
図39のテンプレートでは、同じショット数のレイアウトに対してショットの走査順序・走査方向を決定することを説明したが、下記のようなパラメータとの組み合わせを決定することもできる。組合せ例としては、レシピのショット数
、ショットの走査順序・走査方向、アライメントの計測有無、ショットごとに適用されるアライメント手法やアライメントマーク、アライメントマークの配置位置、アライメントマークの計測順序などがある。これらのパラメータの組み合わせでレシピを編集するとき、複数の画面で入力と入力の確認を行うため、時間を要していたが、このようなテンプレートを用いることで入力の手間を削減し、誤入力を抑制し、レシピを短時間で作成することができる。
【符号の説明】
【0258】
EX 露光装置
CONT 制御装置
9 アライメントシステム
P 基板
MP1 第1パターン
MP2 第2パターン
MP3 第3パターン
V11~V16、V41~V41 ベクトル
m111~m116、M211~M216、M311~M316 アライメントマーク
m121~m126、M221~M226、M321~M326 アライメントマーク
m131~m136、M231~M236、M331~M336 アライメントマーク
m141~m146、M241~M246、M341~M346 アライメントマーク