(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149486
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物及び該組成物を含む食品、医薬品、飼料
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20231005BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20231005BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20231005BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231005BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231005BHJP
A61K 31/688 20060101ALI20231005BHJP
A61K 31/685 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L29/231
A23L2/00 F
A23L2/52
A61P25/28
A61P43/00 121
A61K31/688
A61K31/685
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058086
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高梨 直也
(72)【発明者】
【氏名】中川 久子
(72)【発明者】
【氏名】森田 如一
【テーマコード(参考)】
4B018
4B041
4B117
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB07
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE05
4B018LE06
4B018MD01
4B018MD10
4B018MD28
4B018MD29
4B018MD30
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4B018MD45
4B018ME10
4B018ME14
4B041LC10
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4B041LK05
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4B041LK37
4B041LP01
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4B117LP17
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4B117LT05
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA41
4C086DA42
4C086MA02
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4C086MA52
4C086NA05
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明は、新たなアミロイドβによる神経細胞死を抑制する組成物、該組成物を含む食品、医薬品、及び飼料を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、ホスファチジルセリン及びスフィンゴミエリンを含むアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物を提供する。また、ホスファチジルセリンと、前記スフィンゴミエリンとの合計が1重量%以上100重量%以下であるアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物を提供する。また、ホスファチジルセリンの重量%の値を、前記スフィンゴミエリンの重量%の値で除することで得られる値が0.1以上10以下であるアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物を提供する。さらにまた、これらの組成物を含む食品、医薬品、及び飼料を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスファチジルセリン及びスフィンゴミエリンを有効成分として含むアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物。
【請求項2】
前記ホスファチジルセリンと、前記スフィンゴミエリンとの合計が1重量%以上100重量%以下である請求項1に記載のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物。
【請求項3】
前記ホスファチジルセリンの重量%の値を、前記スフィンゴミエリンの重量%の値で除することで得られる値が0.1以上10以下である請求項1に記載のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物を含む食品。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物を含む医薬品。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物を含む飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物及び該組成物を含む食品、医薬品、飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症は記憶障害や見当識障害、失語等の中核症状に合わせて、徘徊や不安、睡眠障害等の周辺症状も現れる。症状の進行に伴い患者は日常生活を送ることが困難になり、介護する家族にも大きな負担になる。今後日本では高齢化に伴い、認知症の患者数が急増することが予想される。九州大学 二宮教授による「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」では、2012年時点での日本の認知症の罹患者数は462万人とされており、2025年には700万人、2040年には950万人に達すると試算された。
【0003】
アルツハイマー型認知症は認知症の中で最も割合が高く、その原因の1つがアミロイドβ(Aβ)ペプチドである。このペプチドはアミロイド前駆ペプチド(amyloid precursor protein)からタンパク質分解酵素によって生じ、神経細胞死を引き起こし、脳の萎縮や認知能力の低下につながる。
【0004】
アルツハイマー型を含めた認知症の治療剤には、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンなどがある。しかし、これらの投与は対症療法であり、認知症を根治するものではない。また、治療薬であるため、健常者が予防を目的として摂取することはできない。したがって、日常的に摂取できる食品等でアミロイドβによる神経細胞死を抑制し、認知症を予防することは重要である。
【0005】
ホスファチジルセリンは細胞膜を構成する成分の1つで、脳や神経細胞に多く含まれている。ホスファチジルセリンの摂取が、アルツハイマー型認知症患者や高齢者の認知機能の低下を抑制することが報告されている(非特許文献1、2)また、ホスファチジルセリンが海馬の神経細胞死を抑制することも示唆されている(非特許文献3)。
【0006】
スフィンゴミエリンは神経細胞のミエリン鞘の主要成分である。これまでに、加齢に伴って脳内のスフィンゴミエリン量が減少すること、また、認知の処理速度がミエリン鞘の健常性と相関することが報告されている(非特許文献4)。スフィンゴミエリンの摂取が学習能力の向上にも有効であることが示唆されている(特許文献1)
【0007】
しかし、ホスファチジルセリンとスフィンゴミエリンを組み合わせることでアミロイドβによる神経細胞死に対する有効性が増強するとする文献等はない。さらに該組成物を含む食品、医薬品、飼料を開示した文献等もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Rolf R.E, et al, Eur Neuropsychopharmacol., 2, 2, 149-55, 1992
【非特許文献2】T. Cenacchi, et al, Aging Clin. Exp. Res., 5, 2, 123-133, 1993
【非特許文献3】S. Suzuki, et al, Jpn. J. Pharmacol. 81, 237-289, 1999
【非特許文献4】Po H. Lu, et al, J Clin Exp Neuropsychol., 33, 10, 1059-1068, 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、アミロイドβによる神経細胞死(本明細書において、「アミロイドβ誘発性神経細胞死」と言うことがある)を抑制する新たな組成物、該組成物を含む食品、医薬品、及び飼料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明者らは、アミロイドβによる神経細胞死を抑制する有用な方法について検討を進めた結果、ホスファチジルセリンとスフィンゴミエリンを組み合せることで神経細胞死を相乗的に抑制することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には以下の構成が含まれる。
(1)ホスファチジルセリン及びスフィンゴミエリンを有効成分として含むアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物。
(2)前記ホスファチジルセリンと、前記スフィンゴミエリンとの合計が1重量%以上100重量%以下である(1)に記載のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物
(3)前記ホスファチジルセリンの重量%の値を、前記スフィンゴミエリンの重量%の値で除することで得られる値が0.1以上10以下である(1)に記載のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物。
(4)(1)から(3)のいずれかに記載したアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物を含む飲食品。
(5)(1)から(3)のいずれかに記載したアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物を含む医薬品。
(6)(1)から(3)のいずれかに記載したアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物を含む飼料。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、アミロイドβによる神経細胞死を抑制する組成物として、ホスファチジルセリンとスフィンゴミエリンとを含む組成物と該組成物を含む食品、医薬品、及び飼料を提供することを提供するものである。本発明の組成物の摂取によりアミロイドβによる神経細胞死を安全かつ簡易に抑制することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】アミロイドβを加えた各培地でヒト神経芽細胞腫(SH-SY5Y)を処理した場合の細胞生存率亢進効果(%)(=(アミロイドβと試料を添加した群の細胞生存率)-(アミロイドβを添加した群の生存率))を示すグラフである。左からホスファチジルセリン(80μg/ml)(SPM 0/PS 80)、スフィンゴミエリン(40μg/ml)(SPM 40/PS 0)、スフィンゴミエリン(40μg/ml)+ホスファチジルセリン(80μg/ml)(SPM 40/PS 80)、スフィンゴミエリン(80μg/ml)(SPM 80/PS 0)、スフィンゴミエリン(80μg/ml)+ホスファチジルセリン(80μg/ml)(SPM 80/PS 80)、スフィンゴミエリン(160μg/ml)(SPM 160/PS 0)、スフィンゴミエリン(160μg/ml)+ホスファチジルセリン(80μg/ml)(SPM 160/PS 80)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死用組成物について以下に詳細に説明する。
【0015】
(アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物)
本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物は、ホスファチジルセリンとスフィンゴミエリンとを含むものである。アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物におけるホスファチジルセリンとスフィンゴミエリンの含量は、ホスファチジルセリンとスフィンゴミエリンとの合計がアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物の1重量%以上100重量%以下であればよく、10重量%以上100重量%以下が好ましく、20重量%以上100重量%以下がさらに好ましく、30重量%以上100重量%以下が最も好ましい。また、アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物に含まれるホスファチジルセリンとスフィンゴミエリンとの重量比は、アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物中のホスファチジルセリンの重量%をアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物中のスフィンゴミエリンの重量%で除した値が0.1以上10以下であればよく、0.2以上2以下が好ましく、0.5以上2以下が最も好ましい。本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物は、後述するホスファチジルセリンを含む素材とスフィンゴミエリンを含む素材を用いて上記した組成物を調製することができる。また、乳などから上記した組成となるよう調製した組成物をそのまま用いてもよい。
【0016】
(ホスファチジルセリン)
本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物に用いるホスファチジルセリンについて説明する。本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物に用いるホスファチジルセリンは不純物の少ない試薬グレードのホスファチジルセリンだけでなく、ホスファチジルセリンを含む素材をそのまま用いることもできる。本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物に用いるホスファチジルセリンは、大豆由来のものが好ましく、獣乳由来のホスファチジルセリンがさらに好ましい。
【0017】
(スフィンゴミエリン)
本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物に用いるスフィンゴミエリンは試薬グレードのものだけでなく、鶏卵、乳等から調製したスフィンゴミエリンをそのまま用いることもできる。本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物に用いるスフィンゴミエリンは、鶏卵由来のものが好ましく、獣乳由来のスフィンゴミエリンがさらに好ましい。
【0018】
(アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物の摂取量)
本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物の有効摂取量は、ホスファチジルセリンとスフィンゴミエリンの合計量として摂取量が2mg/日以上となるように摂取すればよい。また、本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物は、以下に記載のとおり、飲食品、医薬品、飼料に添加することができるが、その際のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物の添加量は前記した有効量が摂取できるよう適宜調製すればよい。
【0019】
(アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物を含む飲食品、医薬品、及び飼料)
本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物はそのまま使用してもよいが、食品、医薬品、及び飼料に通常含まれる他の原材料とともに使用できることから、常法に従い、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤等に用いることも出来る。また、ヨーグルト、乳飲料、ウエハース等の飲食品、及び飼料に配合することも可能である。
【0020】
(アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物中のホスファチジルセリンとスフィンゴミエリンの定量方法)
本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物中のスフィンゴミエリン含量は、春田らの方法(Bioscience, Biotechnology, & Biochemistry(2008)72、8、2151-2157)により測定することができる。
【0021】
(アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用組成物のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制作用の評価)
本発明組成物のアミロイドβによる神経細胞死の抑制作用は、例えば、動物脳内や培養細胞にアミロイドβを投与あるいは添加した場合において、本発明組成物を付与した場合と付与しなかった場合における神経細胞死を比較することにより評価できる。神経細胞死の評価指標は、細胞生存率、アミロイドβ誘発性神経細胞死応答関連遺伝子やタンパク質の発現などが挙げられる。より具体的には、実施例に示したin vitroにおける方法で評価することができる。
【実施例0022】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔試験例1〕アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制効果確認試験
培養した神経細胞にアミロイドβ添加を負荷した場合に、ホスファチジルセリンあるいはスフィンゴミエリン単独添加よりも、それらを混合することで、アミロイドβによる細胞生存率の低下がより強く抑制されることを確認するための試験を行った。
【0023】
1.試験方法
ヒト神経芽細胞腫(SH―SY5Y)を1×10
4cells/wellの密度で96ウェルプレートに播種し、37℃で24時間培養後、
(i)アミロイドβ(ペプチド研究所、10μM)を混合した血清10%添加培地(Control)、
(ii)アミロイドβ(10μM)およびホスファチジルセリン(長良サイエンス;80μg/ml)を混合した血清10%添加培地、
(iii)アミロイドβ(10μM)およびホスファチジルセリン(0、80μg/ml)およびスフィンゴミエリン(長良サイエンス;40、80、160、800μg/ml)を混合した血清10%添加培地、
にそれぞれ培地交換した。
その後、37℃で24時間培養し、Cell Titer 96(登録商標) Non-Radioactive Cell Proliferation Assay (Promega)に供し、細胞生存率(%)を測定した。
細胞生存亢進率(%)はアミロイドβと試料を添加した群の細胞生存率(%)(iiあるいはiii)からアミロイドβのみを添加した群(i)を引いて算出した(各群N=3)。
実験結果を
図1に示す。
【0024】
2.試験結果
図1では、細胞生存亢進率はホスファチジルセリン80μg/mlのみでは8.4%、スフィンゴミエリン40μg/mlのみでは 2.7%であるが、ホスファチジルセリン80μg/mlとスフィンゴミエリン40μg/ml(ホスファチジルセリン/スフィンゴミエリン=2)を共添加すると23.1%であり、各リン脂質単体よりも相乗的に効果が強くなった。
スフィンゴミエリン80μg/mlのみでは14.6%であるが、ホスファチジルセリン80μg/mlとスフィンゴミエリン80μg/ml(ホスファチジルセリン/スフィンゴミエリン=1)を共添加すると40.7%であり、各リン脂質単体よりも相乗的に効果が強くなった。
スフィンゴミエリン160μg/mlのみでは11.5%であるが、ホスファチジルセリン80μg/mlとスフィンゴミエリン160μg/ml(ホスファチジルセリン/スフィンゴミエリン=0.5)を共添加すると40%であり、各リン脂質単体よりも相乗的に効果が強くなった。
また、ホスファチジルセリン80μg/mlとスフィンゴミエリン800μg/ml(ホスファチジルセリン/スフィンゴミエリン=0.1)を共添加した場合にも、同様の効果が認められた。
【0025】
〔実施例品1〕スフィンゴミエリン濃縮物の調製方法
特開平5-132490の方法を用いて、バターミルク粉(雪印メグミルク社製)より抽出、精製した。その結果、98.1%純度のスフィンゴミエリンを得た。
【0026】
〔実施例品2〕ホスファチジルセリン濃縮物の調製方法
特開平5-132490の方法を用いて、バターミルク粉(雪印メグミルク社製)より抽出、精製した。その結果、97.5%純度のホスファチジルセリンを得た。
【0027】
〔実施例品3〕アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用カプセル剤の調製
表1に示す配合で原材料を混合後、常法により造粒し、カプセルに充填して、本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用カプセル剤を製造した。
【0028】
【0029】
〔実施例品4〕
(アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用錠剤の調製)
表2に示す配合で原材料を混合後、常法により1gに成型、打錠して本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用錠剤を製造した。
【0030】
【0031】
〔実施例品5〕アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用ゲル状食品の調製
スフィンゴミエリン濃縮物(実施例品1)2.5gとホスファチジルセリン濃縮物(実施例品2)7.5gを700gの脱イオン水に溶解し、50℃まで加熱後、ウルトラディスパーサー(ULTRA-TURRAX T-25;IKAジャパン社製)にて、9500rpmで30分間撹拌混合した。この溶液に、ソルビトール40g、酸味料2g、香料2g、ペクチン5g、乳清タンパク質濃縮物5g、乳酸カルシウム1g、脱イオン水235gを添加して、撹拌混合した後、200mlのチアパックに充填し、85℃、20分間殺菌後、密栓し、本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用ゲル状食品5袋(200g入り)を調製した。このようにして得られたアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用ゲル状食品は、すべて沈殿等は認められず、風味に異常は感じられなかった。
なお、このアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用ゲル状食品には、100gあたりスフィンゴミエリンが245.3mgとホスファチジルセリンが731.3mg含まれていた。
【0032】
〔実施例品6〕アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用飲料の調製
酸味料2gを700gの脱イオン水に溶解した後、スフィンゴミエリン濃縮物(実施例品1)1.0gとホスファチジルセリン濃縮物(実施例品2)9.0gを溶解し、50℃まで加熱後、ウルトラディスパーサー(ULTRA-TURRAX T-25;IKAジャパン社製)にて、9500rpmで30分間撹拌混合した。マルチトール100g、還元水飴20g、香料2g、脱イオン水166gを添加した後、100mlのガラス瓶に充填し、90℃、15分間殺菌後、密栓し、アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用飲料10本(100ml入り)を調製した。このようにして得られたアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用飲料は、すべて沈殿は認められず、風味に異常は感じられなかった。
なお、このアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用飲料には、100gあたりスフィンゴミエリンが98.1mgとホスファチジルセリンが877.5mg含まれていた。
【0033】
〔実施例品7〕アミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用飼料の調製
スフィンゴミエリン濃縮物(実施例品1)1.8kgとホスファチジルセリン濃縮物(実施例品2)0.2kgを98kgの脱イオン水に溶解し、50℃まで加熱後、TKホモミクサー(MARKII 160型;特殊機化工業社製)にて、3600rpmで40分間撹拌混合してスフィンゴミエリン1757mg/100g、ホスファチジルセリン200mg/mlの混合溶液を得た。この溶液10kgに大豆粕12kg、大豆タンパク質14kg、大豆油4kg、コーン油2kg、パーム油23.2kg、トウモロコシ澱粉14kg、小麦粉9kg、ふすま2kg、ビタミン混合物5kg、セルロース2.8kg、ミネラル混合物2kgを配合し、120℃、4分間殺菌して、本発明のアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用イヌ飼育飼料100kgを製造した。
なお、このアミロイドβ誘発性神経細胞死抑制用イヌ飼育飼料には、100gあたりスフィンゴミエリンが176.6mgとホスファチジルセリンが19.5mg含まれていた。
本発明は、アミロイドβによる神経細胞死を抑制する新たな組成物として、ホスファチジルセリンおよびスフィンゴミエリンを含む組成物と、該組成物を含む食品、医薬品、及び飼料を提供する。本発明の組成物等を摂取することによりアミロイドβによる神経細胞死を安全かつ簡易に抑制することが期待できる。