(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149638
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ドライフィルム、硬化物、および該硬化物からなる被膜を備えたプリント配線板
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20231005BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231005BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20231005BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20231005BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G03F7/11 501
G03F7/004 512
G03F7/027
H05K3/28 D
H05K3/28 F
B32B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058309
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】種 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】秋山 学
【テーマコード(参考)】
2H225
4F100
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC46
2H225AD02
2H225AE03P
2H225AE06P
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2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA22P
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2H225DA23
4F100AK07C
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5E314AA27
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5E314GG11
(57)【要約】
【課題】基板にラミネートした際に基板との間に気泡が巻き込まれにくく、基板との密着性に優れた硬化被膜を得ることができるドライフィルムを提供する。
【解決手段】第一のフィルムと、前記第一のフィルムの一方の面に設けられた樹脂層と、前記樹脂層の第一のフィルム側と反対面側に、前記樹脂層と接するように設けられた第二のフィルムと、を備えたドライフィルムであって、前記第二のフィルムの前記樹脂層と接する面が、複数の突条部と複数の溝部とから構成される皺様凹凸構造を有し、前記皺様凹凸構造の凹凸平均間隔(RSm)の変動係数が、0.54~0.85である、ドライフィルムとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のフィルムと、前記第一のフィルムの一方の面に設けられた樹脂層と、前記樹脂層の第一のフィルム側と反対面側に、前記樹脂層と接するように設けられた第二のフィルムと、を備えたドライフィルムであって、
前記第二のフィルムの前記樹脂層と接する面が、複数の突条部と複数の溝部とから構成される皺様凹凸構造を有し、
前記皺様凹凸構造の凹凸平均間隔(RSm)の変動係数が、0.54~0.85である、ドライフィルム。
【請求項2】
前記皺様凹凸構造の凹凸平均間隔(RSm)の平均値が、100~300μmである、請求項1に記載のドライフィルム。
【請求項3】
前記第二のフィルムが、10~60μmの厚さを有する、請求項1に記載のドライフィルム。
【請求項4】
前記樹脂層が、5~40μmの厚さを有する、請求項1に記載のドライフィルム。
【請求項5】
前記第二のフィルムが、延伸ポリプロピレン樹脂フィルムである、請求項1に記載のドライフィルム。
【請求項6】
前記樹脂層が、アルカリ可溶性樹脂、光重合性モノマー、および光重合開始剤を少なくとも含む、請求項1に記載のドライフィルム。
【請求項7】
請求項1に記載のドライフィルムを硬化させて得られる硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物からなる被膜を備えたプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライフィルムに関し、より詳細には、例えばプリント配線基板等に使用されるソルダーレジスト層や絶縁膜の形成に使用されるドライフィルム、硬化物、および該硬化物からなる被膜を備えたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
導体回路の保護やはんだ付けが必要な箇所以外へはんだが付着するのを防止して絶縁するために、プリント配線用基板の表面にはソルダーレジスト膜とも呼ばれる絶縁膜を形成することが行われている。絶縁膜を形成するための方法として、回路基材上に感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させた後に露光、現像し、回路基板表面の所望部分にのみ絶縁膜を形成する手法や、いわゆるドライフィルムと呼ばれる感光性樹脂層を備えたフィルムを用いて絶縁膜を形成する手法が主流となっている。
【0003】
ドライフィルムを用いる場合、ドライフィルムの感光性樹脂層を回路基板の表面にラミネートした後、パターニングや硬化処理を施すことによって、上記のような保護膜や絶縁層をプリント配線板に形成することができる。回路基板は、表面に導体により形成された回路部分と非回路部分とが存在するため凹凸があり、このような凹凸表面にドライフィルムの感光性樹脂層をラミネートすると、感光性樹脂層と回路基板との間に気泡が混入する場合がある。気泡が除去されないまま感光性樹脂層を硬化させると、形成した保護膜と回路基板との密着性が損なわれる場合があった。
【0004】
上記のような問題に対して、本出願人は、ドライフィルムの感光性樹脂層を保護する目的で設けられている第二のフィルムを粗面化することで、ドライフィルムを凹凸のある回路基板にラミネートした場合であっても気泡が生じにくく、密着性に優れるドライフィルムを提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1において提案されているドライフィルムは、樹脂層に接する第二のフィルムの表面を粗面化することで、樹脂層の表面にも凹凸を付与し、樹脂層が回路基板にラミネートされた際に巻き込んだ気泡を除去し易くしたものである。しかしながら、複雑な回路基板ではラミネート時に気泡が巻き込まれ易く、さらなる改善が求められていた。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板にラミネートした際に基板との間に気泡が巻き込まれにくく、基板との密着性に優れた硬化被膜を得ることができるドライフィルムを提供することである。また、本発明の別の目的は、該ドライフィルムを用いて得られる硬化物、およびその硬化物を備えたプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特許文献1では、ドライフィルムの樹脂層の表面に設ける第二のフィルムとして、表面をサンドブラスト処理などによって粗面化したフィルムを使用することで、樹脂層表面にも凹凸形状を付与するものである。本発明らが、回路基板にドライフィルムをラミネートした際の巻き込まれた気泡の抜けやすさについて検討したところ、サンドブラスト処理などによって形成できる点状の突起が多数ある凹凸形状よりも、特定の皺様凹凸形状を備えたフィルムを用いることで巻き込まれた気泡が抜けやすくなり、回路基板と樹脂層との密着性が向上する、との知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。即ち、本発明の要旨は下記の通りである。
【0009】
[1] 第一のフィルムと、前記第一のフィルムの一方の面に設けられた樹脂層と、前記樹脂層の第一のフィルム側と反対面側に、前記樹脂層と接するように設けられた第二のフィルムと、を備えたドライフィルムであって、
前記第二のフィルムの前記樹脂層と接する面が、複数の突条部と複数の溝部とから構成される皺様凹凸構造を有し、
前記皺様凹凸構造の凹凸平均間隔(RSm)の変動係数が、0.54~0.85である、ドライフィルム。
[2] 前記皺様凹凸構造の凹凸平均間隔(RSm)の平均値が、100~300μmである、[1]に記載のドライフィルム。
[3] 前記第二のフィルムが、10~60μmの厚さを有する、[1]に記載のドライフィルム。
[4] 前記樹脂層が、5~40μmの厚さを有する、[1]に記載のドライフィルム。
[5] 前記第二のフィルムが、延伸ポリプロピレン樹脂フィルムである、[1]に記載のドライフィルム。
[6] 前記樹脂層が、アルカリ可溶性樹脂、光重合性モノマー、および光重合開始剤を少なくとも含む、[1]に記載のドライフィルム。
[7] [1]に記載のドライフィルムを硬化させて得られる硬化物。
[8] [7]に記載の硬化物からなる被膜を備えたプリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂層と接するように設けられた第二のフィルムの表面が、特定の皺様凹凸構造を備えることにより、回路基板にドライフィルムをラミネートした際に巻き込まれた気泡の抜けやすくなり、基板との密着性に優れた硬化被膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ドライフィルムの一実施形態を示す断面概略図である。
【
図2】
図1のドライフィルム1における第二のフィルム30の樹脂層20と接する側の面を拡大した断面模式図である。
【
図3】ドライフィルムから第二のフィルムを剥離した状態を示す断面概略図である。
【
図4】基板にドライフィルムをラミネートする工程を示した概要図である。
【
図5】ドライフィルムのラミネートし、樹脂層を基板に密着させる工程を示した概要図である。
【
図6】樹脂層に露光した後に、第一のフィルムを剥離する工程を示した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ドライフィルム>
本発明のドライフィルムについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のドライフィルムの一実施形態を示す断面概略図である。ドライフィルム1は、第一のフィルム10と、第一のフィルム10の一方の面に設けられた樹脂層20と、樹脂層20の第一のフィルム10側と反対面側に、樹脂層20と接するように設けられた第二のフィルム30とを備えている。本発明の実施形態においては、第一のフィルム10と樹脂層20との間に中間層等(図示せず)が設けられてもよい。ドライフィルム1の使用時には、第二のフィルム30を剥離して樹脂層20を露出させ、回路基板等の被着面にドライフィルム1の樹脂層20の面をラミネートする。すなわち、第二のフィルム30は、樹脂層20の表面に塵等が付着するのを防止するとともに、ドライフィルム1の取扱性を考慮して設けられており、ドライフィルムの使用時に剥離することが予定されていると言える。
【0013】
図2は、
図1のドライフィルム1における第二のフィルム30の樹脂層20と接する側の面を拡大した断面模式図である。第二のフィルム30の樹脂層20と接する面は、
図2に示すように、複数の突条部aと複数の溝部bとから構成される皺様凹凸構造を有しており、この皺様凹凸構造の凹凸平均間隔(RSm)の変動係数が0.54~0.8となっている。ここで、RSmは、JIS B0601:2001に準拠して測定した下記式で表される粗さ曲線要素の平均長さで定義される。式中のXsは、
図2に示すように、基準長さにおける輪郭曲線要素の長さを表す。
【数1】
【0014】
RSmは、第二のフィルム30の樹脂層20と接する面を断面から見たときの横方向のパラメータであり、この数値が大きいことは、単位長さ当たりの表面の凹凸がなだらかであることを意味する。本発明においては、皺様凹凸構造の凹凸平均間隔RSm(平均長さ)の変動係数(標準偏差/平均値)が0.54~0.8であるような第二のフィルムを使用する。このような特定の皺様凹凸構造を備えた表面を有する第二のフィルムは、樹脂層20と接しているため、樹脂層20の第二のフィルム30と接した面の表面も同様の皺様凹凸構造を有することになる。そのため、ドライフィルム1の使用時に第二のフィルム30を剥離すると、露出した樹脂層20の表面にも皺様凹凸構造が賦型される。次いで、ドライフィルム1から第二のフィルム30を剥離した後に、回路基板等のように凹凸のある基板(例えば、導体回路基板)の表面にドライフィルム1の樹脂層20が接するようにラミネートすると、仮に回路基板の凹部または凸部の周囲に気泡が巻き込まれたとしても、樹脂層20の回路基板と接する面の表面が上記のような特定の皺様凹凸構造を有しているため、気泡が抜けやすくなる。その結果、表面が複雑で微細な凹凸形状を有しているような回路基板にドライフィルムをラミネートした場合であっても樹脂層20が基板40に密着するため、得られた硬化被膜の回路基板への密着性が向上する。
【0015】
第二のフィルム表面のRSmの変動係数が0.54未満または0.85を超えると、適切な皺様凹凸構造が形成されなくなり、気泡の抜け性が低下し、基板上に気泡が残りやすくなる。巻き込まれた気泡を除去しやすく、密着性の高い硬化皮膜を得る観点からは、RSmの変動係数は0.6~0.77であることが好ましい。
【0016】
第二のフィルム30の樹脂層20と接する面の凹凸平均間隔RSmの平均値は、100~300μmであることが好ましい。RSmの平均値がこの範囲にあることで、より一層、巻き込まれた気泡が除去しやすくなる。
【0017】
なお、RSmおよびその変動係数の測定は、第二のフィルムの樹脂層と接する面を、レーザー顕微鏡(レーザーマイクロスコープ VK-X-100、キーエンス株式会社製)を用いて倍率20倍(画像サイズ:500μm×697μm)にて観察し、任意の20箇所において、基準長を800μmとして粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を算出し、算出された各Rsmの値の平均値を算出し、各RSmの標準偏差の値と平均値とから変動係数を算出することができる。
以下、本発明のドライフィルムを構成する各構成要素について詳述する。
【0018】
[第一のフィルム]
本発明のドライフィルムを構成する第一のフィルムとは、基板等の基材上にドライフィルム上に形成された上記硬化性樹脂層からなる樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際には少なくとも樹脂層に接着しているものをいう。第一のフィルムはラミネート後の工程において、樹脂層から剥離しても良い。特に本発明においては露光後の工程において、樹脂層から剥離することが好ましい。
【0019】
第一のフィルムとしては、公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、これらフィルムの積層体を第一のフィルムとして使用することもできる。
【0020】
また、凹凸表面を有する第一のフィルムを使用する場合は、表面が粗面化されたものを使用してもよい。粗面化されたフィルムとしては、フィルムを成膜する際の樹脂中にフィラーを添加したり、フィルム表面をブラスト処理したり、あるいはヘアライン加工、マットコーティング、またはケミカルエッチング等の処理が施されたものを挙げることができる。
【0021】
第一のフィルムの樹脂層設ける面には、離型処理が施されていてもよい。例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン系樹脂等の離型剤を適当な溶剤に溶解または分散して調製した塗工液を、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の手段により、第一のフィルム表面に塗布、乾燥することにより、離型処理を施すことができる。
【0022】
第一のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0023】
[樹脂層]
第一のフィルムの一方の面に設けられる樹脂層は硬化性樹脂組成物からなる。硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂としては、光硬化性または熱硬化性樹脂を使用することができる。このような硬化性樹脂としては、熱硬化性や光硬化性の官能基を有するエポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性または光硬化性樹脂、水酸基やカルボキシル基の親水性官能基を有するエポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリヒドロキシアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等のアルカリ可溶性樹脂等が挙げられる。これら樹脂は1種単独で使用してもよいし2種以上を併用して用いてもよい。
【0024】
上記した硬化性樹脂のなかでも、露光、現像することによってパターニング可能な感光性樹脂であることが好ましい。感光性樹脂層を露光、現像することによってパターニングし、基板上に所望パターンの樹脂硬化膜を形成することができる。このような感光性樹脂層の形成には、感光性樹脂組成物、例えば、従来公知のソルダーレジストインキ等を制限なく使用できるが、本発明の方法において好ましく使用できる感光性樹脂組成物の一例を説明する。
【0025】
本発明において、感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、光重合性モノマー、および光重合開始剤を少なくとも含むことが好ましい。以下、感光性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0026】
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ可溶される樹脂であれば何れでもよく、公知慣用のものが使用される。アルカリ可溶性樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例示としては、カルボキシル基含有樹脂や、フェノール性水酸基含有樹脂のような水溶性樹脂等が挙げられる。なかでも現像性に優れることより、カルボキシル基含有樹脂やフェノール性水酸基含有樹脂が好ましく、カルボキシル基含有樹脂がより好ましい。カルボキシル基含有樹脂が、カルボキシル基を含むことにより、アルカリ現像性とすることができる。また、感光性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを使用してもよい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、組成物を光硬化性とするためには、後述する分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物、即ち光重合性モノマーを併用する必要がある。カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で他の類似の表現についても同様である。
【0027】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0028】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0029】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物との反応物の部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0030】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0031】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0032】
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0033】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0034】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0035】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0036】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0037】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0038】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0039】
本発明に使用できるアルカリ可溶性樹脂は、上記列挙したものに限られない。また。上記列挙したアルカリ可溶性樹脂は1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0040】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000の範囲であり、5,000~100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000以上のアルカリ可溶性樹脂を用いることにより、解像性やタックフリー性能を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下のアルカリ可溶性樹脂を用いることにより現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。
【0041】
感光性樹脂組成物中のアルカリ可溶性樹脂の配合量は、全組成物中に、20~60質量%であることが好ましい。20質量%以上とすることにより塗膜強度を向上させることができる。また60質量%以下とすることで粘性が適当となり加工性が向上する。より好ましくは、30~50質量%である。
【0042】
感光性樹脂組成物に含まれる光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。このような光重合性モノマーとしては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε-カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類のいずれか少なくとも1種から適宜選択して用いることができる。このような光重合性モノマーは、反応性希釈剤としても用いることができる。
【0043】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などを光重合性モノマーとして用いてもよい。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0044】
光重合性モノマーの配合量は、固形分換算で、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.2~60質量部、より好ましくは0.5~50質量部である。光重合性モノマーの配合量を0.2質量部以上とすることにより、感光性樹脂組成物の光硬化性が向上する。また、配合量を60質量部以下とすることにより、硬化塗膜硬度を向上させることができる。
【0045】
感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤は、上記したアルカリ可溶性樹脂や光重合性モノマーを露光により反応させるためのものである。光重合開始剤としては、公知のものをいずれも用いることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
光重合開始剤としては、具体的には例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸エチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0047】
α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 907、369、369E、379等が挙げられる。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 819等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤の市販品としては、BASFジャパン株式会社製のIrgacure OXE01、OXE02、株式会社ADEKA製N-1919、アデカアークルズ NCI-831、NCI-831E、常州強力電子新材料社製TR-PBG-304などが挙げられる。
【0048】
その他、特開2004-359639号公報、特開2005-097141号公報、特開2005-220097号公報、特開2006-160634号公報、特開2008-094770号公報、特表2008-509967号公報、特表2009-040762号公報、特開2011-80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
【0049】
光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~18質量部であることがより好ましく、1~15質量部がさらに好ましい。0.01質量部以上の場合、樹脂組成物の光硬化性が良好となり、耐薬品性等の被膜特性も良好となる。一方、20質量部以下の場合、レジスト膜(硬化被膜)表面での光吸収が良好となり、深部硬化性が低下しにくい。
【0050】
上記した光重合開始剤と併用して、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。特に、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物を用いることが好ましい。チオキサントン化合物が含まれることにより、深部硬化性を向上させることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として機能することがある。しかしながら、これらは樹脂組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストパターンのライン形状および開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の精度を向上させることができる。
【0052】
本発明において、感光性樹脂組成物には、上記した成分に加えて熱硬化性成分が含まれていてもよい。感光性樹脂組成物に熱硬化性成分が含まれることにより、硬化被膜の耐熱性を向上させることができる。熱硬化性成分としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性成分を使用できる。特に好ましいのは、分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する熱硬化性成分である。熱硬化性成分は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
上記の分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状(チオ)エーテル基を複数有する化合物であり、例えば、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0054】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0055】
市販されるエポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER 828、806、807、YX8000、YX8034、834、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYD-128、YDF-170、ZX-1059、ST-3000、DIC株式会社製のEPICLON 830、835、840、850、N-730A、N-695、および日本化薬株式会社製のRE-306等が挙げられる。
【0056】
多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0057】
分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0058】
メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂としては、メチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物等が挙げられる。
【0059】
イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物を配合することができる。ポリイソシアネート化合物としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;並びに先に挙げたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0060】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物を用いることができる。イソシアネートブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤;ラクタム系ブロック剤;活性メチレン系ブロック剤;アルコール系ブロック剤;オキシム系ブロック剤;メルカプタン系ブロック剤;酸アミド系ブロック剤;イミド系ブロック剤;アミン系ブロック剤;イミダゾール系ブロック剤;イミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0061】
熱硬化性成分の配合量は、固形分換算で、アルカリ可溶性樹脂に含有されるカルボキシル基1molあたりに対し、反応する熱硬化性成分の官能基数が0.5~2.5molが好ましく、より好ましくは0.8~2.0molである。
【0062】
また、感光性樹脂組成物には、上記した熱硬化性成分に加えて熱硬化触媒を配合することができる。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT 3513N(ジメチルアミン系化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CAT SA 102(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基およびオキセタニル基の少なくとも何れか1種とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0063】
さらに、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。熱硬化触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
熱硬化触媒の配合量は、固形分換算で、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは0.1~10質量部である。0.1質量部以上の場合、耐熱性に優れる。30質量部以下の場合、経時安定性向上につながる。
【0065】
本発明においては、ドライフィルムを用いて形成される樹脂硬化膜の物理的強度を向上させたり表面のマット感を調整する観点から、感光性樹脂組成物には必要に応じてフィラーを配合することができる。フィラーとしては、公知の無機または有機フィラーが使用できるが、特に、硫酸バリウム、球状シリカ、ハイドロタルサイトおよびタルクが好ましく用いられる。また、難燃性を得るために金属酸化物や水酸化アルミ等の金属水酸化物を体質顔料フィラーとして使用することができる。
【0066】
フィラーの配合量は特に限定されるものではないが、粘度、塗布性、成形性等の観点から、固形分換算で、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して300質量部以下が好ましい。より好ましくは50~200質量部である。
【0067】
また、上記したフィラーは、感光性樹脂組成物中での分散性を高めるために表面処理されたものであってもよい。表面処理がされているフィラーを使用することで、凝集を抑制することができる。表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理することが好ましい。
【0068】
カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。これらのシラン系カップリング剤は、あらかじめフィラーの表面に吸着あるいは反応により固定化されていることが好ましい。ここで、球状シリカ100質量部に対するカップリング剤の処理量は、0.5~10質量部であることが好ましい。
【0069】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、赤、青、緑、黄等の公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよいが、環境負荷の低減や人体への影響が少ない観点からハロゲンを含有しない着色剤であることが好ましい。
【0070】
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系等があり、具体的には以下のようなカラ-インデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyersand Colourists)発行)番号が付されているものが挙げられる。
【0071】
モノアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,266,267,268,269等が挙げられる。また、ジスアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 37,38,41等が挙げられる。また、モノアゾレーキ系赤色着色剤としては、Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:2,57:1,58:4,63:1,63:2,64:1,68等が挙げられる。また、ベンズイミダゾロン系赤色着色剤としては、Pigment Red 171,175,176、185、208等が挙げられる。また、ぺリレン系赤色着色剤としては、Solvent Red 135,179,Pigment Red 123,149,166,178,179,190,194,224等が挙げられる。また、ジケトピロロピロール系赤色着色剤としては、Pigment Red 254,255,264,270,272等が挙げられる。また、縮合アゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 220,144,166,214,220,221,242等が挙げられる。また、アントラキノン系赤色着色剤としては、Pigment Red 168,177,216、Solvent Red 149,150,52,207等が挙げられる。また、キナクリドン系赤色着色剤としては、Pigment Red 122,202,206,207,209等が挙げられる。
【0072】
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられ、例えば、Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,60。染料系としては、Solvent Blue 35,63,68,70,83,87,94,97,122,136,67,70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0073】
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられ、例えば、アントラキノン系黄色着色剤としては、Solvent Yellow 163,Pigment Yellow 24,108,193,147,199,202等が挙げられる。イソインドリノン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 110,109,139,179,185等が挙げられる。縮合アゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow
93,94,95,128,155,166,180等が挙げられる。ベンズイミダゾロン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 120,151,154,156,175,181等が挙げられる。また、モノアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,104,105,111,116,167,168,169,182,183等が挙げられる。また、ジスアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,198等が挙げられる。
【0074】
その他、紫、オレンジ、茶色、黒、白等の着色剤を加えてもよい。具体的には、Pigment Black 1,6,7,8,9,10,11,12,13,18,20,25,26,28,29,30,31,32、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet13,36、C.I.Pigment Orange 1,5,13,14,16,17,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73、PigmentBrown 23,25,カーボンブラック、酸化チタン等が挙げられる。
【0075】
感光性樹脂組成物中の着色剤の配合量は特に限定されるものではないが、固形分換算で、感光性樹脂組成物全体量の0.1~5質量%であることが好ましい。
【0076】
感光性樹脂組成物には、樹脂層を形成する際の調製のし易さや塗布性の観点から有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
感光性樹脂組成物における有機溶剤の配合量は、感光性樹脂組成物を構成する材料に応じ適宜変更することができ、例えば、固形分換算で、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して30~300質量部とすることができる。
【0078】
感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じてエラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0079】
樹脂層は、上記した感光性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、第一のフィルムの表面に、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で第一のフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、後述する第二のフィルムが有する特定の表面形態を樹脂層に賦形する観点からは、乾燥後の膜厚で、5~40μm、好ましくは10~35μmの範囲で適宜選択される。
【0080】
[第二のフィルム]
本発明において、樹脂層と接するように設けられた第二のフィルムとは、基板等の基材上に感光性フィルム積層体の樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際、ラミネート前に硬化性樹脂層から剥離するものをいう。上記したような特定の皺様凹凸構造は、フィルムに微粒子を添加したり、表面をサンドブラスト加工して形成される凹凸形状のように、点状の突起が多数ある凹凸形状とは異なる形状である。皺様凹凸構造は、
図2に示すように、複数の突条部aと複数の溝部bとから構成されている。突条部aおよび溝部bは、それぞれ直線、曲線またはこれらを組み合わせた形状を有している。突条部aは、不規則に形成される。突条部aは、連続的に形成されてもよいし、不連続に形成されてもよい。これらの突条部aと溝部bとはうねりとして構成され、皺様凹凸構造となる。RSmの変動係数が0.54~0.8の範囲であるような凹凸構造は、突条部aと溝部bとからなるうねりを構成する。
【0081】
上記のような皺様凹凸構造をフィルム表面に付与する手段は特に制限されるものではなく、賦型ロールを用いてロール表面の形状をフィルムに転写(賦型)したり、製膜したフィルムを二軸延伸処理することにより、上記したような第二のフィルムを得ることができる。
【0082】
第二のフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができるが、これらのなかでも、ポリプロピレンフィルムを好ましく使用することができる。
【0083】
また、特に樹脂フィルムを用いる場合は、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムを使用することが好ましい。
【0084】
第二のフィルムと樹脂層との接着力が、第一のフィルムと樹脂層との接着力よりも小さくなるような材料を選定することが好ましい。また、ドライフィルムの使用時に、第二のフィルムを剥離し易くするため、第二のフィルムの樹脂層と接する面に上記したような離型処理を施してもよい。
【0085】
第二のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、概ね10~60μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。
【0086】
<硬化物およびプリント配線板>
上記したドライフィルムを用いて、回路基板上に硬化物からなる硬化皮膜が形成されたプリント配線板を製造することができる。以下、導体回路パターンが形成された基板上に、本発明のドライフィルムを用いて硬化物(硬化皮膜)を形成してプリント配線板とする方法を説明する。
【0087】
図3は、ドライフィルム1から第二のフィルム30を剥離した状態を示す断面概略図である。まず、ドライフィルム1から第二のフィルム30を剥離して樹脂層20を露出させる。樹脂層20の第二のフィルム30と接した面は、第二のフィルム30の皺様凹凸構造が賦型されており、第二のフィルム20と同様の表面形態を有している。
【0088】
次いで、
図4に示すように、導体回路パターン50が形成された基板40に、ドライフィルム1の樹脂層20の皺様凹凸構造が賦型された面をラミネートする。導体回路パターン50が形成された基板40としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR-4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウェハ板等を挙げることができる。
【0089】
ドライフィルム1の樹脂層20を基板40上にラミネートするには、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下でラミネートすることが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、
図5に示すように、樹脂層20が基板40に密着するため、基板表面に凹凸形状を有していても気泡を巻き込みにくく、また基板表面への穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
【0090】
続いて、ドライフィルム1の第一のフィルム上から露光(活性エネルギー線の照射)を行う。この工程により、露光された樹脂層20のみが硬化する。露光工程は特に限定されるものではなく、例えば、接触式(または非接触方式)により、所望のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光してもよいが、直接描画装置により所望パターンを活性エネルギー線により露光してもよい。
【0091】
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、LED等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350~410nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20~800mJ/cm2、好ましくは20~600mJ/cm2の範囲内とすることができる。また、露光は散乱光であっても平行光であってもよい。
【0092】
露光後、
図6に示すように、樹脂層20から第一のフィルム10を剥離して現像を行うことにより、基板上にパターニングされた樹脂層を形成する。なお、特性を損なわなければ、基板40上に樹脂層20をラミネートした後、樹脂層20から第一のフィルム10を剥離した後に露光を行っても良い。
【0093】
現像工程は特に限定されるものではなく、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法などを用いることができる。また、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類、水酸化テトラメチルアンモニウム等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0094】
次いで、パターニングされた樹脂層20を、活性エネルギー線(光)照射ないし熱により硬化させて、硬化物(硬化被膜)を形成することもできる。この工程は本硬化または追加硬化と呼ばれるものであり、露光した樹脂層中の未反応モノマーの重合を促進させ、さらには、カルボキシル基含有感光性樹脂とエポキシ樹脂とを熱硬化させて、残存するカルボキシル基の量を低減することができる。活性エネルギー線照射は、上記した露光と同様にして行うことができるが、露光時の照射エネルギーよりも強い条件で行うことが好ましい。例えば、500~3000mJ/cm2とすることができる。また、熱硬化は、100~200℃で20~90分間程度の加熱条件で行うことができる。なお、本硬化は、光硬化させた後に熱硬化を行うことが好ましい。また、第一のフィルム10は硬化の前後のいずれかにおいて剥離するが、樹脂層の硬化後に剥離するのが好ましい。
【0095】
[プリント配線板]
ドライフィルムを用いて形成される硬化物は、ソルダーレジストやカバーレイ、層間絶縁層等のプリント配線板の永久被膜として有用であり、特にソルダーレジスト硬化被膜として有用である。また、パターニングされた硬化被膜を必要とする用途だけでなく、パターニングを必要としない用途、例えばモールド用途(封止用途)にも用いることができる。またICパッケージ用のソルダーレジスト層形成としても好適に使用できる。
【実施例0096】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0097】
[実施例1]
<第一のフィルムの準備>
厚さ25μmの透明なポリエステルフィルム(ルミラー#25-T60、東レ株式会社製)を準備した。
【0098】
<第二のフィルムの準備>
冷却ローラーと賦形ローラーとが対向して設けられている製膜装置に、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製)を60mm溶融押出機から250℃にて押出し、第二のフィルムを得た。なお、賦形ローラーには、表面に複数の突条部と複数の溝部とから構成される皺様凹凸構造を有するものを用いた。得られたフィルムを30℃の冷却ロールで冷却固化した後、130℃で縦方向(MD)に4倍に延伸し、次いでフィルム幅方向両端をクリップで挟み、170℃で予熱後、150℃で幅方向(TD)に8倍に延伸し、幅方向(TD)に6.0%緩和させながら160℃で熱固定することで、厚さ15μmの第二のフィルムを得た。
【0099】
得られた第二のフィルムの樹脂層と貼り合わせる面を光学顕微鏡にて観察したところ、直線ないし曲線状に伸びる突条部および溝部が不規則に偏在した皺様の凹凸構造を有していることを確認した。
また、第二のフィルムの樹脂層と貼り合わせる面を、レーザー顕微鏡(レーザーマイクロスコープ VK-X-100、キーエンス株式会社製)を用いて倍率20倍(画像サイズ:500μm×697μm)にて観察した。任意の20箇所において、基準長を800μmとして粗さ曲線要素の凹凸平均間隔(RSm)を算出した。変動係数は0.77であり、RSmの平均値は192μmであった。
【0100】
<樹脂層形成用の組成物の準備>
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON N-695、エポキシ当量:220)220部を撹拌機および還流冷却器の付いた四つ口フラスコに入れ、カルビトールアセテート214部を加え、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1部と、反応触媒としてジメチルベンジルアミン2.0部を加えた。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を80~90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物106部を加え、8時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたアルカリ可溶性樹脂ワニスは、不揮発分65%、固形物の酸価100mgKOH/g、重量平均分子量Mw約3,500であった。なお、得られた樹脂の重量平均分子量の測定は、GPCにより測定した。
上記のようにして得られたアルカリ可溶性樹脂ワニスを100質量部(固形分換算)、感光性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、日本化薬株式会社製)を20質量部、光重合開始剤として2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン(IGM Resins株式会社製、Omnirad 907)を10質量部、熱硬化剤としてメラミンを5重量部、DICY(ジシアンジアミド)を0.5重量部、熱硬化性成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON 840-S)を25質量部、1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(高融点タイプ、日産化学株式会社製、TEPIC-HP)を25質量部、フィラーとして硫酸バリウム(平均粒子径5~8μm、屈折率1.64)を50質量部、および着色剤として青色着色剤(C.I.Pigment Blue 15:3)を2質量部、黄色着色剤(C.I.Pigment Yellow 147)を1質量部を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練して、感光性樹脂組成物を調製した。
【0101】
<ドライフィルムの作製>
上記のようにして得られた感光性樹脂組成物100質量部に対してPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を70質量部の割合で加えて希釈し、攪拌機で15分間撹拌して塗工液を得た。塗工液を、第一のフィルムの一方の面に塗布し、90℃の温度で15分間乾燥し、厚み20μmの樹脂層を形成した。次いで、樹脂層上に、第二のフィルムの賦形面をロールラミネーター(大成ラミネーター株式会社製、VA-770型ラミネーター)を用いて、ラミネート温度50℃、ロール加圧力0.1MPa、ラミネート速度2.5m/minの条件で貼り合わせてドライフィルムを作製した。
【0102】
[実施例2]
実施例1で用いた延伸ポリプロピレンフィルムに代えて、同様に賦形した厚さ30μmの延伸ポリプロピレンフィルムを第二のフィルムとして使用した以外は実施例1と同様にしてドライフィルムを得た。
得られた第二のフィルムの樹脂層と貼り合わせる面を光学顕微鏡にて観察したところ、直線ないし曲線状に伸びる突条部および溝部が不規則に偏在した皺様の凹凸構造を有していることを確認した。
また、第二のフィルムの樹脂層と貼り合わせる面を実施例1と同様にしてレーザー顕微鏡観察してRsmおよび変動係数を算出したところ、変動係数は0.65であり、RSmの平均値は224μmであった。
【0103】
[実施例3]
厚さが40μmとなるように樹脂層を形成した以外は実施例1と同様にしてドライフィルムを得た。
【0104】
[比較例1]
第二のフィルムとして、厚さ15μmの市販の延伸ポリプロピレンフィルム(MA-430、王子エフテックス株式会社製)を使用した以外は実施例1と同様にしてドライフィルムを作製した。
使用した第二のフィルムの樹脂層と貼り合わせる面を光学顕微鏡にて観察したところ、点状の突起(ドット)が多数ある凹凸形状構造を有していることを確認した。
また、第二のフィルムの樹脂層と貼り合わせる面を実施例1と同様にしてレーザー顕微鏡観察してRsmおよび変動係数を算出したところ、変動係数は0.26であり、RSmの平均値は0.26μmあった。
図8に、倍率20倍で観察したフィルム表面画像を示す。
【0105】
[比較例2]
第二のフィルムとして、厚さ15μmの市販の延伸ポリプロピレンフィルム(MA-431、王子エフテックス株式会社製)を使用した以外は実施例1と同様にしてドライフィルムを作製した。
使用した第二のフィルムの樹脂層と貼り合わせる面を光学顕微鏡にて観察したところ、点状の突起(ドット)が多数ある凹凸形状構造を有していることを確認した。
また、第二のフィルムの樹脂層と貼り合わせる面を実施例1と同様にしてレーザー顕微鏡観察してRsmおよび変動係数を算出したところ、変動係数は0.44であり、RSmnの平均値は188μmであった。
【0106】
<ドライフィルムの評価(埋込み性)>
銅厚18μm、L(ライン:配線幅)/S(スペース:間隔幅)=200/200μmの直線パターンの回路が形成されている両面プリント配線基板に前処理として、メック社製CZ-8101処理にて1.0μm相当のエッチング処理を行った。
次いで、上記方法で作製したドライフィルムから第二のフィルムを剥離し、上記基板のエッチング処理面に、真空ラミネーター(CVP-300:ニッコーマテリアル株式会社製)を用いて80℃の第一チャンバーにて真空圧4hPa、バキューム時間30秒の条件下でラミネートした後、プレス圧0.5MPa、プレス時間30秒の条件でプレスを行い評価基板を得た。ラミネート後の評価基板のラインとスペースの境界部分に空気が入り込み、樹脂層中に気泡(ボイド)が発生しているか否か光学顕微鏡を用いて確認した。埋込み性の評価基準は以下のとおりとした。
〇:ボイドが確認されなかった。
×:ボイドが1個以上確認された
評価結果は下記表1に示すとおりであった。
【0107】
<ドライフィルムの評価(密着性)>
上記基板の銅上に上記と同様にしてドライフィルムをラミネートし、株式会社オーク製作所HMW680GW(メタルハライドランプ、散乱光)により、ステップタブレット(41段)11段が得られる露光量で全面露光を行った。
次いで、ドライフィルムから第一のフィルムを剥離した後、30℃、0.2MPa、1.0wt%炭酸ナトリウム水溶液で60秒現像し、更に、その後積算露光量を1000mJとして紫外線を照射し、150℃で1時間加熱して、樹脂層を硬化させて硬化被膜を形成した。
上記のようにして硬化被膜が形成された基板を用いてクロスカットテープピール試験を実施した。形成した100マスをセロハンテープ(25mmの幅当たり10±1Nの付着強さ)で引きはがし、残ったマスの数を数えた。評価基準は以下のとおりとした。
〇:残ったマスの数が100/100であった。
×:残ったマスの数が99/100以下であった
評価結果は下記表1に示すとおりであった。
【0108】
【0109】
評価結果からも明らかなように、変動係数が0.54~0.85の範囲にある特定の皺様凹凸構造を有するフィルムを第二のフィルムとして用いたドライフィルム(実施例1~3)では、基板とのラミネート時に気泡の巻き込みが少なく、得られた硬化被膜の密着性も良好であることがわかる。
一方、変動係数が0.54未満の凹凸構造を有するフィルムを第二のフィルムとして用いたドライフィルム(比較例1および2)では、基板とのラミネート時に気泡が巻き込まれており、硬化被膜の密着性も不十分であることがわかる。