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  • 特開-硫化精鉱の乾燥方法 図1
  • 特開-硫化精鉱の乾燥方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149665
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】硫化精鉱の乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 5/02 20060101AFI20231005BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20231005BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C22B5/02
F27D17/00 104A
C22B15/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058346
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】三浦 修
(72)【発明者】
【氏名】森 勝弘
【テーマコード(参考)】
4K001
4K056
【Fターム(参考)】
4K001AA09
4K001BA03
4K001CA09
4K001DA03
4K001GA04
4K001GA07
4K001GA19
4K001JA01
4K056AA02
4K056CA04
4K056DB00
(57)【要約】
【課題】 乾燥炉に導入する熱風を生成する熱風炉の仕様や、該乾燥炉から排出される排ガスの処理設備の処理能力に制約されることなく、銅精鉱などの原料を乾燥処理することが可能な方法を提供する。
【解決手段】 乾燥炉2において熱風により乾燥処理した硫化精鉱を空気又は酸素富化空気と共に自熔炉4内に吹き込んで酸化燃焼させることで熔融状態のマット層及びスラグ層を生成した後、自熔炉4のスラグ層を錬かん炉5に移送して通電加熱することで該スラグ層に含まれるマットを分離させる製錬方法において、自熔炉4のマット層が錬かん炉5に流入する場合を除いて錬かん炉5内の上部空間から排出される錬かん炉排ガスを上記熱風として利用する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥炉において熱風により乾燥処理した硫化精鉱を空気又は酸素富化空気と共に自熔炉内に吹き込んで酸化燃焼させることで熔融状態のマット層及びスラグ層を生成した後、前記自熔炉のスラグ層を錬かん炉に移送して通電加熱することで該スラグ層に含まれるマットを分離させる製錬設備において、前記自熔炉のマット層が前記錬かん炉に流入する場合を除いて前記錬かん炉内の上部空間から排出される錬かん炉排ガスを前記熱風として利用することを特徴とする硫化精鉱の乾燥方法。
【請求項2】
前記乾燥炉から排出される乾燥炉排ガスのSO濃度が所定の閾値を超えたときに、前記錬かん炉排ガスの前記乾燥炉への導入を自動的に中断することを特徴とする、請求項1に記載の硫化精鉱の乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式の非鉄金属製錬の原料に用いる硫化精鉱の乾燥方法に関し、特に、硫化精鉱を自熔炉で熔融製錬する前に乾燥炉に装入して熱風乾燥する乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾式の非鉄金属製錬では、鉱石原料を加熱して熔融状態で不純物を除去することによって、目的とする非鉄金属を高品位にして回収する熔融製錬が行われている。例えば乾式銅製錬では、浮遊選鉱などの前処理により得た銅品位30%程度の主として黄銅鉱からなる銅精鉱(硫化精鉱)に対して、特許文献1に示すように自熔炉及び錬かん炉で順次加熱処理を施すことで、該銅精鉱に含まれる鉄及びケイ酸分をスラグとして分離除去し、これにより生成される銅品位60~65%程度のマットを転炉及び精製炉で更に処理して銅品位99%程度の粗銅を生成している。このようにして生成した粗銅は、アノードに鋳造して電解精製を行うことで、銅品位99.99%の電気銅として出荷される。
【0003】
上記の自熔炉では、その反応塔の頂部に設けた精鉱バーナーから吹き込まれる原料の銅精鉱が、空気又は酸素富化空気と気固接触することで燃焼反応が進行し、その際生じる銅精鉱の酸化反応熱を利用して溶融状態のマット及びスラグが生成される。この精鉱バーナーでの燃焼効率を高めるため、銅精鉱は精鉱バーナーからの噴射直後に着火して高温状態が維持されるのが好ましい。しかしながら、銅精鉱が湿潤状態にあると、上記気固接触が妨げられたり、水分の蒸発潜熱により銅精鉱の温度が低下したりすることで燃焼反応速度が低下することがあった。そこで、上記の自熔炉における熔融製錬の前に、湿潤状態の銅精鉱をロータリーキルンに代表される乾燥炉に装入し、ここに熱風炉で生成した燃焼ガスを熱風として吹き込むことにより乾燥処理を施すことが行われている。
【0004】
上記の乾燥処理は多量の熱エネルギーを消費するため、効率化のため様々な技術が提案されている。例えば特許文献2には、自熔炉から排出される高温ガスを廃熱ボイラーに導入して蒸気を発生させ、この蒸気との熱交換により加熱した窒素を乾燥炉に導入することで、該自熔炉に原料として装入される湿潤状態の硫化精鉱を乾燥する技術が開示されている。これにより、該乾燥炉の熱源となる燃焼ガスの量を削減できるので、該燃焼ガスを生成する熱風炉における重油燃料の消費量を削減できるうえ、該重油に含まれる硫黄分の燃焼によって生じる二酸化硫黄による環境汚染の問題を抑えることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-241423号公報
【特許文献2】特開2003-119525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、熱風炉で生成した燃焼ガスを熱風として乾燥炉に吹き込んで銅精鉱などの湿潤原料を乾燥処理する場合は、該乾燥炉に単位時間当たり装入する湿潤原料の量やその含水率などの処理条件から、乾燥処理に適した熱風の温度やその生成量を求めることができる。しかしながら、一般的に熱風炉は、その燃料バーナー近傍における耐火物の耐熱温度等の制約により燃焼ガスの温度やその生成量を十分に高めることができない場合があり、これがボトルネックとなって銅精鉱などの原料の乾燥炉への装入量が制限されることがあった。
【0007】
また、上記の熱風炉の燃料バーナーで燃焼される燃料には硫黄分を含んだ工業用重油が一般的に用いられるため、該熱風炉で生成した燃焼ガスは該硫黄分由来の硫黄酸化物(以下、SOと表現する)を含んでいる。そのため、このSOを含んだ燃焼ガスは、ロータリーキルンなどの乾燥炉で熱風として使用された後は、乾燥処理された固形分と共に乾燥炉を出てサイクロンで気固分離された後、吸引ファンを経て排ガス処理設備に導入され、ここで所定の処理が施された後に大気に放出される。従って、環境保全の観点や該排ガス処理設備での処理能力の制約等により、該熱風炉で単位時間当たり燃焼させる重油の量を増大させるのは困難であった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、乾燥炉に導入する熱風を生成する熱風炉の仕様や、該乾燥炉から排出される排ガスの処理設備の処理能力に特に制約されることなく、該乾燥炉において銅精鉱などの原料を乾燥処理することが可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、湿潤状態の銅精鉱を乾燥炉で乾燥処理した後に自熔炉及び錬かん炉で熔融製錬する乾式銅製錬設備では、該錬かん炉において温度保持のために熱エネルギーを供給しており、この熱エネルギーが該乾燥炉において該銅精鉱を乾燥するための高温の熱源となり得ることに着目した。そこで更に検討を進めたところ、該錬かん炉から大量に排出される錬かん炉排ガスを該乾燥炉に吹き込む熱風として利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る硫化精鉱の乾燥方法は、乾燥炉において熱風により乾燥処理した硫化精鉱を空気又は酸素富化空気と共に自熔炉内に吹き込んで酸化燃焼させることで熔融状態のマット層及びスラグ層を生成した後、前記自熔炉のスラグ層を錬かん炉に移送して通電加熱することで該スラグ層に含まれるマットを分離させる製錬設備において、前記自熔炉のマット層が前記錬かん炉に流入する場合を除いて前記錬かん炉内の上部空間から排出される錬かん炉排ガスを前記熱風として利用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乾燥炉に熱風を供給する熱風炉に特に制約されることなく、銅精鉱などの湿潤原料を乾燥処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の硫化精鉱の乾燥方法が適用される熱風炉、乾燥炉、自熔炉、及び錬かん炉から構成される熔錬設備のプロセスフロー図である。
図2】本発明の実施形態の硫化精鉱の乾燥方法を実施するために設けられた錬かん炉から排出される排ガスを熱風炉に送る配管系の一具体例を示す概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の硫化精鉱の乾燥方法について、硫化精鉱が銅精鉱の場合を例に挙げて図1を参照しながら説明する。一般的に採掘現場で前処理された含水率(水分率とも称する)7~10%程度の湿潤状態の銅精鉱は、専用船で運搬された後、陸揚げされて貯鉱舎1に一旦貯蔵される。この貯鉱舎1内の銅精鉱は、必要に応じて他のロットの銅精鉱と調合された後、ロータリーキルン方式(フラッシュドライヤーとも称する)の乾燥炉2に装入される。
【0014】
ロータリーキルンは、円筒状の本体をその中心軸が真横からわずかに傾くように回転可能に据付けられた回転型乾燥装置であり、その上側端部からスクリューフィーダー等の定量供給機で本体内に装入された銅精鉱は、該本体の回転に伴ってその内部に設けられている羽根状のリフターで撹拌されながら下側端部に向かって徐々に移動する。銅精鉱はこの撹拌を伴う移動の間に、該本体の上側端部から導入される熱風によって効率的に乾燥処理される。なお、スチームを熱源として乾燥する回転型乾燥装置を、上記のロータリーキルンと区別するためロータリースチームドライヤーと称することがある。
【0015】
上記の乾燥炉2に導入する熱風は、乾燥炉2に隣接して設けられた熱風炉3で生成される。熱風炉3は、燃料バーナーを具備する燃焼室と、該燃焼室に隣接する混合室とから構成されている。該燃焼室の該燃料バーナーによって重油などの化石燃料の燃焼により生成した高温の燃焼ガスは、該混合室において系外から取り込まれる外気及び後述する錬かん炉から排出される錬かん炉排ガスと混合される。これにより温度400~600℃程度の熱風が生成される。
【0016】
上記のようにして乾燥炉2で含水率0.2~0.4%程度まで乾燥された銅精鉱は、次に自熔炉4に装入される。自熔炉4は、銅精鉱自身の酸化反応熱を利用して熔融製錬を行う装置であり、反射炉や電気炉に比べて燃料の消費を抑えることが可能になる。また、前述したように銅精鉱は前段の乾燥炉2での乾燥処理により水分の蒸発に要する熱量が減らされているので、自熔炉4での燃料の消費をより一層抑えることが可能になる。
【0017】
自熔炉4は、銅精鉱を燃焼させる精鉱バーナーを頂部に具備する筒状の反応塔(リアクションシャフト)と、上記銅精鉱の燃焼により生じたマット及びスラグを層分離させる貯留部の役割を担うセトラーと、該セトラーにおいて上記反応塔の下端部が接続する一端部とは反対側の他端部に接続する排煙用流路の役割を担うアップテイクとから主に構成される。乾燥炉2で乾燥処理された上記銅精鉱は、空気又は酸素富化空気、及び必要に応じて添加される補助燃料やフラックスと称される珪酸と共に上記の精鉱バーナーを介して自熔炉4内に吹き込まれる。これにより、銅精鉱は瞬時に酸化燃焼することで熔融製錬が行われ、銅品位60~65%程度の硫化物からなるマット(カワ)と、酸化鉄や珪酸の酸化物等からなるスラグ(カラミ)とが生成される。
【0018】
上記のようにして生成されたマット及びスラグは、上記セトラーにおいてそれぞれ下層側のマット層及び上層側のスラグ層に層分離される。これらのうち、マット層は自熔炉4から抜き出されて転炉6に装入され、ここで酸素富化空気が吹き込まれることで酸化されると共に、鉄や硫黄が除去されて銅品位98~99%程度の粗銅が生成される。一方、スラグ層は、銅の化学的溶解や粒子状マットの懸垂(浮遊)のため、自熔炉4において該スラグ層の銅品位を下げるのには限度がある。従って、自熔炉4から抜き出したスラグ層をそのままコンクリート用骨材等として用いると経済的損失が大きくなる。
【0019】
そこで、自熔炉4のスラグ層は錬かん炉5に移送され、ここで該スラグ層に含まれる銅の回収が行われる。錬かん炉5は一般的に耐熱性れんがで内張りされた炉内に黒鉛製の棒状の電極棒が複数本差し込まれた構造を有しており、これら電極棒に通電することにより、自熔炉4から移送されたスラグ層はジュール熱で加熱され、該スラグ層に含まれるマットが分離して該スラグ層の下層に新たなマット層を形成する。この下層側のマット層は、錬かん炉5から抜き出された後、自熔炉4から抜き出されるマットと同様に転炉6で処理される。一方、1200~1300℃程度の熔融状態(または半流動状態)にある上層側のスラグ層は、錬かん炉5から抜き出されて水砕器などで水砕処理される。
【0020】
上記の錬かん炉5の内部には上部空間が形成されており、この上部空間に存在する気体は上記の熔融状態の高温のスラグ層と接触状態にあるため、約500℃程度まで熱せられた状態にある。しかしながら、この錬かん炉5の上部空間に存在する気体は、スラグ層やマット層から放出される硫黄成分をわずかに含んでいるため、従来はこの錬かん炉の上部空間の気体は、錬かん炉排ガスとして排出されて環集設備に送られ、例えば環集設備の充填塔において、苛性ソーダ水溶液等のアルカリで該硫黄成分を吸収させることで無害化処理された後、煙突を介して大気放出されていた。
【0021】
本発明の実施形態の硫化精鉱の乾燥方法は、上記の錬かん炉5内において熔融状態で安定的に貯留されている高温のスラグ層を銅精鉱の乾燥処理の熱源として利用するものであり、その媒体として錬かん炉5の上部空間の気体を利用する。具体的には、図1の点線で示すように、錬かん炉5の上部空間から排出される錬かん炉排ガスの環集設備への移送用の煙道8から分岐する分岐管9を設け、この分岐管9の先端部を熱風炉3に接続する。これにより、錬かん炉5の上部空間から排出される錬かん炉排ガスの一部をこの分岐管9を介して抜き出して熱媒ガスとして熱風炉3に送ることができるので、熱風炉3において被加熱ガスとして利用される空気の少なくとも一部を、上記の錬かん炉5から排出される錬かん炉排ガスで代替することが可能になる。なお、図1の1点鎖線で示すように、煙道8から分岐した分岐管9の接続先を、熱風炉3ではなく熱風炉3で生成した熱風を乾燥炉2に送る供給配管に接続してもよい。
【0022】
錬かん炉5の上部空間から排出される上記錬かん炉排ガスは、煙道8に設けた環集設備向け吸引ファン7によって昇圧された後に環集設備に送られているため、一般的に負圧で運転されている熱風炉3及び乾燥炉2の運転圧力は、煙道8のうち環集設備向け吸引ファン7の吐出側に位置する上記の分岐管9の分岐点の圧力よりも低い場合がある。この場合は、図2に示すように、分岐管9に分岐側ダンパー10を設けてその開度を調整することで、錬かん炉5から排出される排ガスのうち熱風炉3に供給される量を調整することが可能となる。あるいは設備構成によっては、環集設備の運転圧力の方が熱風炉3や乾燥炉2の運転圧力よりも低い場合があり、この場合は分岐側ダンパー10に代えて、煙道8において分岐管9の分岐点の下流側に煙道側ダンパー11を設けてもよい。
【0023】
また、分岐側ダンパー10及び煙道側ダンパー11の両方を設けて、これら両ダンパー10、11の開度を調整することで熱風炉3に供給するガスの量を調整してもよい。この場合は、熱風炉3に供給するガス量を増やすときは、分岐側ダンパー10の開度を開く方向に調整すると共に煙道側ダンパー11の開度を閉じる方向に調整し、熱風炉3に供給するガス量を減らすときは、これらダンパー10、11を上記とは逆方向に調整することになる。なお、分岐管9において、分岐側ダンパー10の一次側(上流側)に手動弁12を設けるのが好ましい。また、分岐管9には温度計13及び流量計14を設けるのが好ましい。
【0024】
錬かん炉5には通常は自熔炉4にて層分離した揮発成分をほとんど含まない上層側のスラグ層のみが装入されるため、錬かん炉5内の上部空間から排出される錬かん炉排ガスは、もともと錬かん炉5内の上部空間にあった気体と、環集設備向け吸引ファン7による吸引により錬かん炉5の外部から侵入する外気との混合ガスである。そのため、前述したように硫黄成分が含まれることがあってもわずかであり、重油や銅精鉱に含まれる硫黄と一緒に取り扱うことができるから、そのまま熱風として乾燥炉2に導入しても特に問題にはならない。ただし、乾燥炉2に酸素が導入されるのを抑制したい場合は、予め錬かん炉5内の上部空間に熱媒ガスとなる気体として例えば窒素などの不活性ガスを導入してもよい。
【0025】
乾燥炉2で乾燥処理に使用された熱風は、上記のように硫黄成分はほとんど含んでいないものの、サイクロンで除去しきれない微細な粒子を含んでいるため、乾燥炉排ガス吸引ファン21で吸引されることで乾燥炉排ガスとして乾燥炉2から排出された後、好適にはバグフィルターや電気集塵機などの乾燥炉排ガス処理設備22で処理されてから煙突23を介して大気に放出される。上記の排ガス処理設備の出口側にはSO濃度計24が設けられており、大気放出される直前の乾燥炉排ガスのSO濃度が常時モニタされている。なお、乾燥炉排ガス吸引ファン20の吸引側には乾燥炉排ガスダンパー25を設けるのが好ましい。
【0026】
本発明の実施形態の乾燥方法は、このSO濃度計24で測定した乾燥炉排ガスのSO濃度が所定の閾値を超えたとき、上記の錬かん炉排ガスの煙道8からの抜き出しを中断することで、該錬かん炉排ガスが乾燥炉2に導入されないようにする。これにより、例えば自熔炉4のマット層が誤操作などにより錬かん炉5に流入し、この流入したマット層が錬かん炉5内で加熱されることでスラグ層に比べて多量のSOを発生させ、その結果、錬かん炉排ガスのSO濃度が通常運転時に比べて顕著に高くなっても、この高SO濃度の錬かん炉排ガスが乾燥炉2を経て大気に放出されるのを防ぐことができる。
【0027】
具体的には、自熔炉4のスラグ層が錬かん炉5に移送される状態の通常運転時においては、錬かん炉排ガスのSO濃度は1000~2600体積ppm程度であるため、この錬かん炉排ガスの一部を煙道8から抜き出して熱媒ガスとして乾燥炉2に導入する流量が約3000Nm/h以下であれば、SO濃度に係る排出基準値に関して特に問題が生じることはない。一方、上記したように自熔炉4のマット層が錬かん炉5に流入した場合は、錬かん炉排ガスのSO濃度は1000~2600体積ppmから4500~6500体積ppm程度まで上昇する。この場合は、この高SO濃度の錬かん炉排ガスをそのまま乾燥炉2に導入し続けると、上記のSO濃度に係る排出基準値を超えるおそれがある。そこで、自熔炉4から錬かん炉5にマット層が流入する事態が生じたときは、煙道8からの錬かん炉排ガスの抜き出しを中断し、錬かん炉5から排出される錬かん炉排ガスは全て環境集煙設備(環集設備とも称する)へ送るようにする。
【0028】
この煙道8からの錬かん炉排ガスの抜き出しの中断は自動的に行うのが好ましく、これは例えば前述したSO濃度計24で測定した乾燥炉排ガスのSO濃度値をPLC(プログラムロジックコントローラ)やDCS(分散制御システム)などの制御手段30に入力し、このSO濃度値が予め定めておいた閾値を超えたときに自熔炉4のマット層が錬かん炉5に流入したと判断し、分岐管9に設けた分岐側ダンパー10を全閉すると共に、煙道8に設けた煙道側ダンパー11を全開する信号を出力するように制御手段30をプログラムしておけばよい。
【0029】
以上説明したように、本発明の実施形態の硫化精鉱の乾燥方法であれば、熱風炉3に燃料バーナーを増設する等の多大なコストがかかる設備投資を行なったり熱風生成の原料となる重油の消費量を増やしたりすることなく、乾燥炉2により多くの熱量を供給できるので、重油由来のSOを含む排ガスの処理コストを増やすことなく、より大量の銅精鉱を低コストで乾燥処理することが可能になる。
【実施例0030】
(実施例1)
図1に示すような設備構成の硫化精鉱の製錬設備において、原料に用いる湿潤状態の硫化精鉱を乾燥処理するロータリーキルン方式の乾燥炉2に導入する熱風として、熱風炉3で重油燃焼により製造した熱風に錬かん炉5から排出される錬かん炉排ガスを合流させたものを用いた。その際、図2に示すように、煙突23に入る直前の配管に設けたSO濃度計24において、乾燥炉2から排出される乾燥炉排ガスのSO値を監視したところ、SO濃度に係る排出基準値を超えることなく安定的に操業することができた。
【0031】
(実施例2)
SO濃度計24で測定したSO濃度値を制御手段30としてのDCSに入力し、その1秒毎のSO値が管理目安値よりも70体積ppm低く設定した閾値以上となったときに、自動的に分岐管9に設けた分岐側ダンパー10を閉止すると共に煙道側ダンパー11を全開する信号を出力するようにDCSをプログラムしておいた。これ以外は上記の実施例1と同様にして操業した。この実施例2の操業の際、誤って自熔炉4のマット層を錬かん炉5に流入するトラブルが生じたが、SO濃度計24で測定したSO濃度が管理目安値を超えることは、瞬間的な場合を含めて一度もなかった。
【符号の説明】
【0032】
1 貯鉱舎
2 乾燥炉
3 熱風炉
4 自熔炉
5 錬かん炉
6 転炉
7 環集設備向け吸引ファン
8 煙道
9 分岐管
10 分岐側ダンパー
11 煙道側ダンパー
12 手動弁
13 温度計
14 流量計
21 乾燥炉排ガス吸引ファン
22 乾燥炉排ガス処理設備
23 煙突
24 SO濃度計
25 乾燥炉排ガスダンパー
30 制御手段
図1
図2