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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149681
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】粒子分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20231005BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20231005BHJP
   G01N 15/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N21/47 Z
G01N15/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058369
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】立脇 康弘
(72)【発明者】
【氏名】伊串 達夫
(72)【発明者】
【氏名】菅澤 央昌
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043CA06
2G043DA02
2G043EA01
2G043EA14
2G043FA01
2G043FA06
2G043GB21
2G043HA01
2G043JA02
2G043LA03
2G059AA01
2G059BB09
2G059BB12
2G059EE02
2G059EE06
2G059EE13
2G059FF01
2G059GG03
2G059KK04
(57)【要約】
【課題】安価な装置構成で種々の蛍光マーカ又は自家蛍光の性質を持つ粒子それぞれに適した励起波長の励起光を照射できるようにする。
【解決手段】粒子に励起光を照射することにより粒子に添加されている蛍光マーカ又は粒子自身が発する蛍光を撮像する蛍光観察モードと、粒子に前記励起光とは別の光を照射することにより生じる散乱光を撮像する散乱光観察モードとを取り得る粒子分析装置100であり、励起光を射出する励起用光源21と、励起用光源21とは別タイプのものであって、励起光とは別の光を射出する散乱用光源20とを備えるようにした。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子に励起光を照射することにより前記粒子に添加されている蛍光マーカ又は前記粒子自身が発する蛍光を撮像する蛍光観察モードと、前記粒子に前記励起光とは別の光を照射することにより生じる散乱光を撮像する散乱光観察モードとを取り得る粒子分析装置であり、
前記励起光を射出する励起用光源と、
前記励起用光源とは別タイプのものであって、前記励起光とは別の光を射出する散乱用光源とを備える、粒子分析装置。
【請求項2】
前記蛍光マーカ又は前記粒子自身が発する蛍光を透過させつつ、前記励起光が前記粒子に照射されることにより生じる散乱光をカットするフィルタと、
前記フィルタを透過した前記蛍光を撮像する撮像部とをさらに備える、請求項1記載の粒子分析装置。
【請求項3】
前記励起用光源がLEDである、請求項1又は2記載の粒子分析装置。
【請求項4】
互いに異なる励起波長の励起光を射出する複数の前記励起用光源を有する、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の粒子分析装置。
【請求項5】
前記励起用光源がランプであり、
前記励起用光源と前記粒子を収容するセルとの間に介在して、前記ランプからの光のうちの前記励起波長の光を通過させるフィルタを有する、請求項1又は2記載の粒子分析装置。
【請求項6】
前記励起用光源から前記粒子に射出される励起光の光路と、前記散乱用光源から前記粒子に射出される光の光路との一部が共通している、請求項1乃至5のうち何れか一項に記載の粒子分析装置。
【請求項7】
前記蛍光観察モードにおいて得られる前記蛍光の画像データから、前記蛍光マーカが添加されている粒子又は蛍光を発している粒子を特定する粒子特定部と、
前記散乱光観察モードにおいて得られる前記散乱光の画像データから、前記粒子特定部により特定された前記粒子のブラウン運動による拡散速度を求めて当該粒子の物性を分析する分析部と、をさらに備える、請求項1乃至6のうち何れか一項に粒子分析装置。
【請求項8】
前記フィルタを透過した前記蛍光を撮像する撮像手段をさらに備え、
前記蛍光観察モードにおいて前記撮像手段の手前に前記フィルタが配置され、前記散乱光撮像モードにおいて前記撮像手段の手前から前記フィルタが取り除かれる、請求項1乃至7のうち何れか一項に記載の粒子分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の粒子分析装置としては、粒子軌跡解析法(PTA法)を用いたものがあり、具体的にこのものは、粒子にレーザ光を照射することにより生じる散乱光を撮像し、これにより得られる撮像データに基づいて、粒子のブラウン運動による拡散速度を算出することで粒子径分布等の物性を分析するように構成されている。
【0003】
この種の粒子分析装置として、特許文献1には、測定対象とする粒子に蛍光マーカを添加して、その蛍光マーカに対応した励起波長のレーザ光を照射するように構成されたものがある。
【0004】
そして、この粒子分析装置は、粒子にレーザ光を照射することにより生じる散乱光をカットしつつ、蛍光マーカが発する蛍光を透過させるフィルタを備えており、このフィルタを透過した蛍光を撮像部で観察することにより、蛍光マーカが添加された粒子をその他の粒子と切り分けて分析できるように構成されている。
【0005】
ところが、粒子によって添加することのできる蛍光マーカはまちまちであることから、種々の蛍光マーカそれぞれに適した励起波長のレーザ光を照射しようとすると、レーザ光源をいくつも準備する必要があり、レーザ光源が高価であるために、装置の高コスト化を招来する。
なお、上述した問題は、粒子に蛍光マーカを添加して分析する場合に限らず、自家蛍光の性質を持つ粒子を分析する場合においても共通して生じ得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020―204604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題を解決するものであり、安価な装置構成で種々の蛍光マーカ又は自家蛍光の性質を持つ粒子それぞれに適した励起波長の励起光を照射できるようにすることを課題するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る粒子分析装置は、粒子に励起光を照射することにより前記粒子に添加されている蛍光マーカ又は前記粒子自身が発する蛍光を撮像する蛍光観察モードと、前記粒子に前記励起光とは別の光を照射することにより生じる散乱光を撮像する散乱光観察モードとを取り得る粒子分析装置であり、前記励起光を射出する励起用光源と、前記励起用光源とは別タイプのものであって、前記励起光とは別の光を射出する散乱用光源とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
このように構成された粒子分析装置によれば、励起用光源と散乱用光源とを別タイプのものとしているので、散乱光観察モードで用いられる散乱用光源としてレーザ光源等を用いることでPTA法による分析を担保しつつ、蛍光観察モードで用いられる励起用光源としてLED等の比較的安価なものを用いることで、安価な装置構成で種々の蛍光マーカ又は自家蛍光の性質を持つ粒子それぞれに適した励起波長の励起光を照射することが可能となる。
【0010】
前記蛍光マーカ又は前記粒子自身が発する蛍光を透過させつつ、前記励起光が前記粒子に照射されることにより生じる散乱光をカットするフィルタと、前記フィルタを透過した前記蛍光を撮像する撮像部とをさらに備えることが好ましい。
これならば、励起光が粒子に照射されることにより生じる散乱光の影響を受けずに蛍光を撮像することができ、例えば蛍光マーカが添加されている粒子又は蛍光を発している粒子をより確実に特定することができる。
【0011】
製造コストを安価に抑えるためには、前記励起用光源がLEDであることが好ましい。
【0012】
種々の蛍光マーカそれぞれに適した励起波長の励起光を照射できるようにするためには、互いに異なる励起波長の励起光を射出する複数の前記励起用光源を有することが好ましい。
【0013】
製造コストを安価に抑えるための別の態様としては、前記励起用光源がランプであり、前記励起用光源と前記粒子を収容するセルとの間に介在して、前記ランプからの光のうちの前記励起波長の光を通過させるフィルタを有する態様を挙げることができる。
【0014】
前記励起用光源から前記粒子に射出される励起光の光路と、前記散乱用光源から前記粒子に射出される光の光路との一部が共通していることが好ましい。
これならば、光学系などの部品点数を削減することができ、製造コストをより安価に抑えることができる。
【0015】
前記蛍光観察モードにおいて得られる前記蛍光の画像データから、前記蛍光マーカが添加されている粒子又は蛍光を発している粒子を特定する粒子特定部と、前記散乱光観察モードにおいて得られる前記散乱光の画像データから、前記粒子特定部により特定された前記粒子のブラウン運動による拡散速度を求めて当該粒子の物性を分析する分析部と、をさらに備えることが好ましい。
これならば、蛍光マーカが添加された粒子又は蛍光を発している粒子をその他の粒子と切り分けて分析することができる。
【0016】
前記フィルタを透過した前記蛍光を撮像する撮像手段をさらに備え、前記蛍光観察モードにおいて前記撮像手段の手前に前記フィルタが配置され、前記散乱光撮像モードにおいて前記撮像手段の手前から前記フィルタが取り除かれることが好ましい。
このように、散乱光撮像モードにおいて撮像手段の手前からフィルタを取り除くことで、蛍光観察モードと散乱光観察モードとにおいて共通の撮像手段を用いることができ、部品点数及び製造コストの削減や装置のコンパクト化などを図れる。
【発明の効果】
【0017】
以上に述べた本発明によれば、安価な装置構成で種々の蛍光マーカそれぞれに適した励起波長の励起光を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る粒子分析装置の蛍光観察モードを示す模式図。
図2】同実施形態の粒子分析装置の散乱光観察モードを示す模式図。
図3】同実施形態に用いられる蛍光マーカの一例を示す表。
図4】同実施形態の情報処理装置の機能を示す機能ブロック図。
図5】同実施形態の粒子分析装置の動作を示すフローチャート。
図6】同実施形態の撮像部により得られる画像を示す模式図。
図7】その他の実施形態における粒子分析装置を示す模式図。
図8】その他の実施形態における粒子分析装置を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る粒子分析装置の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
<装置構成>
本実施形態の粒子分析装置100は、図1及び図2に示すように、セル1内のサンプルに含まれる粒子の物性を分析するものであり、例えば血液や尿等の体液試料に含まれるエクソソーム、又は、ワクチンに関するウイルス様粒子、リポソーム、或いはタンパク質などを分析するものである。
【0021】
この粒子分析装置100は、多重染色法とともに用いられるものであり、具体的には、粒子に複数種類の蛍光マーカを添加してなるサンプルに光を照射し、それらの蛍光マーカが発する蛍光を検出して、粒子の物性を分析するものである。
【0022】
ただし、本粒子分析装置100を用いた分析において、例えばサンプルに含まれる粒子が自家蛍光を性質に持つものなど、粒子自身が蛍光発光する場合であれば、必ずしも蛍光マーカを用いる必要はなく、粒子自身が発する蛍光を検出しても良い。かかる粒子としては、例えば蛍光ビーズなどの無機材料を挙げることができる。
【0023】
本実施形態では、図3に示すように、3種類の蛍光マーカを用いており、これにより、測定対象たる粒子を8種類に種別し得る。なお、8種類の種別とは、3種類全ての蛍光マーカが添加されない1つの種別、1種類のみ添加される3つ種別、2種類のみ添加される3つの種別、及び、3種類全てが添加される1つの種別である。
ただし、粒子分析装置100としては、必ずしも多重染色法とともに用いられる必要はなく、単一種類の蛍光マーカとともに用いられるものであっても良い。
【0024】
本実施形態の粒子分析装置100は、粒子に添加されている蛍光マーカに励起光を照射することにより生じる蛍光を撮像する図1記載の蛍光観察モードと、粒子に励起光とは別の光を照射することにより生じる散乱光を撮像する図2記載の散乱光観察モードとを取り得るものである。
【0025】
具体的にこの粒子分析装置100は、図1及び図2に示すように、分析対象たる粒子を含むサンプルに光を照射する光照射部2と、その光の照射により生じる光を撮像する撮像部3と、撮像部3により得られた撮像データを用いて粒子の物性を分析する情報処理装置4とを備える。
【0026】
光照射部2は、蛍光マーカに励起光を照射して蛍光を励起させる励起用光源21、22、23と、粒子に励起光とは別の光を照射してその別の光を散乱させる散乱用光源20とを有している。
【0027】
励起用光源21、22、23は、後述する散乱用光源20よりも光強度の低い光を射出するものであり、例えばLEDである。本実施形態は、3種類の蛍光マーカを用いていることから、3つの励起用光源21、22、23を有している。なお、1つの励起用光源21において、3つの励起波長を含む光を照射するものであっても良い。また、励起用光源21、22、23の数は、使用している蛍光マーカの種類の数に応じて適宜変更して構わない。
【0028】
第1の励起用光源21は、第1の蛍光マーカの励起波長λ1の励起光を照射するものであり、第2の励起用光源22は、第2の蛍光マーカの励起波長λ2の励起光を照射するものであり、第3の励起用光源23は、第3の蛍光マーカの励起波長λ3の励起光を照射するものである。ここで、励起波長λ1、λ2、λ3は、3種類の蛍光マーカがそれぞれ発する蛍光の蛍光波長λ1’、λ2’、λ3’とは異なる。また、これら各励起用光源21、22、23から射出された光は、反射ミラ241、242、ハーフミラ243、244、集光レンズ245等の照射光学系24を介して、セル1に導光される。
【0029】
散乱用光源20は、励起用光源21、22、23とは別タイプのものであって、上述した励起波長λ1、λ2、λ3とは異なる波長の光を粒子に照射するものであり、この実施形態ではレーザ光を射出するレーザ光源である。
なお、ここでは単一の散乱用光源20を設けてあるが、複数の散乱用光源20を設けても構わない。
【0030】
本実施形態では、励起用光源21、22、23から粒子に射出される励起光の光路L1(図1参照)と、散乱用光源20から粒子に射出されるレーザ光の光路L2(図2参照)との一部が共通している。言い換えれば、蛍光観察モードと散乱光観察モードとのそれぞれにおいて、光路L1、L2を構成する光学系の一部が兼用されており、ここではハーフミラ244及び反射ミラ242が、励起光の光路L1及びレーザ光の光路L2に兼用されている。
【0031】
撮像部3は、蛍光観察モードにおいて蛍光マーカが発する蛍光を撮像することで、その蛍光マーカが添加されている粒子を撮像し、散乱光観察モードにおいて散乱光を撮像することで、蛍光マーカが添加されているか否かによらず、サンプルに含まれる種々の粒子を撮像するものであり、撮像データとして例えば画像データを出力する。
【0032】
この撮像部3は、色の識別能力を有するものであり、この実施形態ではカラーCCDを有する撮像カメラである。なお、図1では、光照射部2の光照射方向と撮像部3の撮像方向とが互いに直交して設けられているが、これに限られない。
【0033】
ここで、蛍光観察モードにおいて、セル1内の粒子に励起光を照射すると、その励起光が粒子により散乱して、その散乱光が撮像部3により検出されてしまい、蛍光観察を阻害する恐れがある。
【0034】
そこで、蛍光観察モードにおいて上述した散乱光が撮像部3で検出されないようにするべく、本実施形態の粒子分析装置100は、図1に示すように、励起光が粒子に照射されることにより生じる散乱光をカットしつつ、上述した複数種類の蛍光マーカが発する複数の色の蛍光を透過させる1又は複数枚のフィルタ5を備えている。なお、粒子自身が蛍光を発する場合、フィルタ5は、散乱光をカットしつつ、粒子が発する蛍光を透過させるものとなる。
【0035】
本実施形態では、複数枚のフィルタが重ねられてなるフィルタ群5(以下、単にフィルタ5という)が、セル1と撮像部3との間に設けられている。ただし、必ずしも複数枚のフィルタを用いる必要はなく、例えば使用する蛍光マーカが一種類であれば、フィルタも1枚で使用すれば良い。
【0036】
ここでのフィルタ5は、少なくとも複数枚のノッチフィルタを重ね合わせたものであり、最も短い励起波長λ1よりも長波長領域を透過させる第1フィルタと、次に短い励起波長λ2をカットする第2フィルタと、最も長い励起波長λ3をカットする第3フィルタとを重ねてなるものである。
【0037】
これにより、蛍光観察モードにおいて、フィルタ5は、少なくとも励起波長λ1、λ2、λ3をカットしつつ、種々の波長(種々の色)の蛍光を透過させるものとなる。
【0038】
一方、散乱光観察モードにおいては、粒子で散乱した散乱光を撮像部3に導く必要があることから、本実施形態の粒子分析装置100は、図1及び図2に示すように、蛍光観察モードにおいて撮像部3の手前にフィルタ5が配置され、散乱光観察モードにおいて撮像部3の手前からフィルタ5が取り除かれるように構成されている。
【0039】
本実施形態の粒子分析装置100は、モードの切り替えを自動化するべく、蛍光観察モードの開始時点に撮像部3の手前に配置されているフィルタ5を、その開始時点から所定時間の経過後に撮像部3の手前から取り除くモード切替機構6を備えている。
【0040】
モード切替機構6の一例としては、例えばモータなどを利用して構成されたものであり、撮像部3とセル1との間に対してフィルタ5を進退移動させる態様を挙げることができる。
【0041】
なお、例えば所望のタイミングでモードを切り替えられるようにするべく、ユーザが手作業でフィルタ5をセル1と撮像部3の間に配置することができ、そのフィルタ5をユーザがセル1と撮像部3と間から手作業で取り除けるようにしても良い。
【0042】
上述した構成により、蛍光観察モードにおいて、励起用光源21、22、23を用いて生じさせた蛍光を観察することができ、散乱光観察モードにおいて、散乱用光源20を用いて生じさせた散乱光を観察することができる。
【0043】
情報処理装置4は、CPU、メモリ、ディスプレイ、各種入出力機器等を備えたコンピュータであり、撮像部3と有線又は無線でつながれている。
【0044】
この情報処理装置4は、前記メモリに格納されている粒子分析用プログラムが実行されることにより、図4に示すように、粒子特定部41、分析部42、及び表示部43としての機能を備えている。
【0045】
以下、本実施形態の粒子分析装置100の動作の説明を兼ねて、図5のフローチャートを参照しながら、情報処理装置4の各部の機能を説明する。
【0046】
まず、セル1内のサンプルに複数種類の蛍光マーカを添加することにより、サンプルに含まれる測定対象たる粒子を多重染色する(S1)。なお、上述した通り、必ずしも多重染色する必要はなく、サンプルに単一種類の蛍光マーカを添加しても良い。また、蛍光マーカを添加する前にサンプルを撹拌する工程を設けても良い。
【0047】
次に、モード切替機構6を例えば制御又は操作して、フィルタ5を撮像部3の手前に配置することにより、粒子分析装置100を図1に示す蛍光観察モードにする(S2)。
【0048】
続いて、励起用光源21、22、23からセル1内のサンプルに、複数種類の蛍光マーカそれぞれに対応する励起波長λ1、λ2、λ3の励起光を照射するとともに、これにより生じる蛍光を撮像部3により撮像する(S3)。
【0049】
本実施形態では、上述したように、励起波長λ1、λ2、λ3の励起光を順番に照射する。そして、この励起光の切替タイミングと撮像部3のフレーム長さとを適宜設定することにより、蛍光観察モードにおける撮像部3により得られた画像データのうち、1フレーム目を第1の励起波長λ1の励起光を照射して得られるもの、2フレーム目を第2の励起波長λ2の励起光を照射して得られるもの、3フレーム目を第3の励起波長λ3の励起光を照射して得られるものとなるようにしてある。
【0050】
ただし、励起光の切替タイミングや撮像部3のフレームの長さは上述した態様に限定されるものではなく、例えば複数フレームからなる第1群の画像データが、第1の励起波長λ1の励起光を照射して得られるもの、それに続く複数フレームからなる第2群の画像データが、第2の励起波長λ2の励起光を照射して得られるもの、それにさらに続く複数フレームからなる第3群の画像データが、第3の励起波長λ3の励起光を照射して得られるものとなるようにしても良い。
【0051】
サンプルに励起波長λ1、λ2、λ3の励起光が順番に照射されると、粒子特定部41が、撮像部3により得られる蛍光の画像データから、蛍光マーカが添加されている粒子を特定する(S4)。なお、粒子自身が蛍光を発する場合、粒子特定部41は、蛍光を発している粒子を特定する。
【0052】
ここで、図6(a)において斜線で示されているものは、第1の励起波長λ1の励起光を照射して得られる画像(すなわち、1フレーム目の画像)に写されている粒子である。すなわち、この画像には、第1の励起波長λ1の励起光により発光する発光マーカが添加されている粒子が4つ写されており、それ以外の粒子は写されていない。
【0053】
本実施形態の粒子特定部41は、この蛍光の画像データに写されている粒子の位置、大きさ、又は範囲を特定するものである。
【0054】
この粒子特定部41は、蛍光観察モードにおいて得られる蛍光の画像データのうち、例えば1フレーム目から10フレーム目までの画像データの少なくとも1つから、蛍光マーカが添加されている粒子を特定することが好ましく、より好ましい態様として、少なくとも1フレーム目の画像データから、蛍光マーカが添加されている粒子を特定する態様を挙げることができる。
【0055】
具体的に粒子特定部41は、画像データを画像処理することにより、蛍光を発している蛍光マーカが添加されている粒子と、それ以外の領域とを区別して、粒子の位置等を特定するものであり、ここでは蛍光マーカが添加されている粒子それぞれの重心位置を算出する。
【0056】
そして、粒子特定部41は、1フレーム目の画像データから粒子を特定したのと同様に、2フレーム目及び3フレーム目の画像データから、それぞれの画像データに写されている粒子の位置等(ここでは、重心位置)を算出する。
【0057】
本実施形態の粒子特定部41は、それぞれの画像データに基づいて、粒子の位置等のみならず、粒子の種類をも特定するように構成されている。
【0058】
以下では、理解の容易のため、1フレーム目に写されている粒子を第1種の粒子、2フレーム目に写されている粒子を第2種の粒子、3フレーム目に写されている粒子を第3種の粒子と呼ぶ。
【0059】
続いて、モード切替機構6を例えば制御又は操作して、フィルタ5を撮像部3の手前から取り除くことにより、粒子分析装置100を図1に示す蛍光観察モードから図2に示す散乱光観察モードに切り替える(S5)。
【0060】
次いで、散乱用光源20からレーザ光をセル1内の粒子に照射するとともに、これにより粒子で散乱する散乱光を撮像部3により撮像する(S6)。
【0061】
この散乱光観察モードは、蛍光観察モードよりもフレーム数が多く設定されたモードであり、言い換えれば、この散乱光観察モードにおいて撮像部3により得られるフレーム数(すなわち、画像データのデータ数)は、蛍光観察モードにおいて撮像部3により得られるフレーム数(すなわち、画像データのデータ数)よりも多い。また、この実施形態において、散乱光観察モードにおける散乱光の観察時間は、蛍光観察モードにおける蛍光の観察時間よりも長い。
【0062】
そして、分析部42が、散乱光観察モードにおいて撮像部3により撮像された散乱光の画像データを取得するとともに、この画像データに基づいて粒子の物性を分析する。なお、分析部42としては、散乱光観察モードにおいて得られた画像データに加えて、蛍光観察モードにおいて得られた画像データをも用いて粒子の物性を分析するものであっても良い。
【0063】
具体的にこの分析部42は、PTA法により粒子径分布を算出するものであり、粒子特定部41により特定された粒子のブラウン運動による拡散速度を求めて当該粒子の粒子径分布を算出する。なお、分析部42としては、必ずしも粒子径分布を算出する必要はなく、例えば粒子の粒子径を物性として算出するものであっても良い。
【0064】
ところで、上述した蛍光観察モードが開始されてから散乱光観察モードに切り替わるまでの時間は、例えば3フレームの画像データを取得する程度であり、ごく僅かな時間であることから、蛍光観察モード中における粒子の動きは殆どないはずである。
【0065】
このことから、蛍光観察モードから散乱光観察モードに切り替わった時点では、図6(b)に示すように、観察される粒子数は増えるものの、蛍光観察モードにおいて粒子特定部41により特定された粒子の位置と、その粒子が散乱光観察モードにおいて観察される位置とは殆ど変わらないはずである。
【0066】
そこで、本実施形態の分析部42は、散乱光の画像データに写されている粒子のうち、上述した粒子特定部41により特定された粒子を推定して(S7)、その推定した粒子を、粒子特定部41により特定された粒子とみなして分析する(S8)。
【0067】
具体的に分析部42は、上述した粒子特定部41が蛍光の画像データに基づき算出した粒子それぞれの重心位置を取得するとともに、散乱光の画像データに写されている粒子のうち、取得した重心位置から最も近い位置に写されている粒子を、粒子特定部41により特定された粒子として推定する。
【0068】
本実施形態の分析部42は、粒子特定部41により特定された第1種の粒子、第2種の粒子、及び第3種の粒子それぞれを、散乱光の画像データに写されている粒子の中から推定するように構成されている。
【0069】
かかる構成において、本実施形態の分析部42は、サンプルに含まれる粒子の物性を、粒子の種類ごとに切り分けて物性を分析するように構成されており、具体的には、第1種の粒子、第2種の粒子、及び、第3種の粒子それぞれの粒子径分布を算出する。
【0070】
その後、表示部43は、分析部42の分析結果をディスプレイD等に表示するものであり、具体的には粒子の粒子径分布又は粒子径などを、例えば粒子の種類ごとに識別可能に表示する。
【0071】
<本実施形態の効果>
このように構成された本実施形態の粒子分析装置100によれば、励起用光源21、22、23と散乱用光源20とを別タイプのものとしおり、散乱光観察モードで用いられる散乱用光源としてレーザ光源を用いることでPTA法による分析を担保しつつ、蛍光観察モードで用いられる励起用光源として比較的安価なLEDを用いることで、安価な装置構成で種々の蛍光マーカそれぞれに適した励起波長の励起光を照射することが可能となる。
【0072】
また、互いに異なる励起波長の励起光を射出する複数の励起用光源21、22、23を有するので、種々の蛍光マーカそれぞれに適した励起波長の励起光を照射できる。これにより、粒子分析装置100を、安価な構成で多重染色法に資するものとすることができる。
【0073】
さらに、蛍光マーカが添加されている粒子を蛍光観察モードで特定し、その特定した粒子を散乱光観察モードで観察して分析するので、蛍光観察モードとして必要な時間を僅かで済ませることができ、その後の散乱光観察モードにおいては、蛍光マーカの褪色に影響されることなく、PTA法による十分な観察時間を確保することが可能となる。
【0074】
加えて、蛍光観察モードにおいて撮像部3の手前にフィルタ5が配置され、散乱光撮像モードにおいて撮像部3の手前からフィルタ5が取り除かれるので、蛍光観察モードと散乱光観察モードとにおいて共通の撮像部3を用いることができ、部品点数や製造コストの削減及び装置のコンパクト化などを図れる。
【0075】
さらに加えて、モード切替部によりフィルタ5を移動させることにより、装置が蛍光観察モード又は散乱光観察モードに切り替わるので、モード切替が可能となり、ひいては分析の自動化を図れる。
【0076】
そのうえ、粒子特定部41が、蛍光観察モードにおいて得られる蛍光の少なくとも1フレーム目の画像データから、蛍光マーカが添加されている粒子を特定するので、蛍光観察モードとして必要な時間を可及的に短くすることができる。
【0077】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0078】
例えば、蛍光観察モードにおいて用いられる励起用光源21、22、23として、前記実施形態ではLEDを用いていたが、例えば白色光等を照射するランプなどLEDよりもブロードな波長の光を射出するものであっても良い。
かかる構成において複数種類の蛍光マーカを用いる場合、光源から射出されるブロードな光のうち、蛍光マーカそれぞれの励起波長を取り出すべく、この光源からセル1までの光路上に蛍光マーカの励起波長を透過させるフィルタを設けておくことが好ましい。
【0079】
また、前記実施形態では、蛍光マーカが添加されている粒子を特定するために励起用光源21、22、23が用いられていたが、励起用光源21、22、23の用途はこれに限られるものではなく、例えば単に蛍光マーカが添加されているか否かを確認するためなどに用いられても良い。すなわち、粒子分析装置100としては、前記実施形態における粒子特定部41としての機能を必ずしも備えている必要はない。
【0080】
さらに、褪色が起こるまでの時間を少しでも長くするべく、蛍光観察モードと散乱光観察モードとで分析条件を互いに異ならせることが好ましく、例えば励起光の強度、撮像部3のゲイン或いは露光時間、又は、フィルタの位置の少なくとも1つが異なることが好ましい。
【0081】
より具体的な実施態様としては、蛍光観察モードの方が散乱光観察モードに比べて、例えば励起光の強度(レーザ光源の出力)を低くする、撮像部3のゲインを大きくする、撮像部3の露光時間を長くする、或いは、蛍光観察モードにおいてセル1と励起用光源21、22、23の間に減光フィルタを配置するなどの態様を挙げることができ、これらの複数の態様を組み合わせることがより望ましい。なお、減光フィルタは、散乱光観察モードにおいては、セル1と励起用光源21、22、23の間から取り除かれることが望ましい。
【0082】
そのうえ、蛍光観察モードから散乱光観察モードに切り替える場合、撮像部3の手前からフィルタ5が取り除かれることで、散乱光観察モードにおいて観察される光量が増大して、白飛びなどが生じる恐れがあるところ、散乱光観察モードにおいては、セル1と撮像部3との間に減光フィルタを配置しても良い。
【0083】
ところで、これまではフィルタ5を移動させることにより蛍光観察モードと散乱光観察モードとを切り替える態様を説明したが、図7及び図8に示すように、フィルタ5を据え置きながら、粒子分析装置100が蛍光観察モードと散乱光観察モードとを取り得るように構成されていても良い。
【0084】
かかる粒子分析装置100としては、図7に示すように、セル1を通過した蛍光と散乱光とからなる光束を第1光路La及び第2光路Lbに分割するビームスプリッタをさらに備え、第1光路Laには、前記実施形態と同様に蛍光を観察する撮像部3及びフィルタ5が配置されており、第2光路Lbには、撮像部3とは別に散乱光を観察する第2の撮像部31が配置されている構成を挙げることができる。
【0085】
すなわち、第1光路Laは、励起用光源21たるLEDから射出された光の光路であって、蛍光を観察する蛍光観察用光路であり、第2光路Lbは、散乱用光源20たるレーザ光源から射出されたレーザ光の光路であって、散乱光を観察する散乱光観察用光路であり、これらの光路を互いに独立して形成することにより、蛍光と散乱光とを同時に観察することができるようにしてある。
【0086】
そして、分析初期時の蛍光観察モードにおいて、粒子特定部41が、撮像部3により得られた画像データから、蛍光マーカが添加されている粒子を特定し、その後の分析主用時に装置を蛍光観察モードから散乱光観察モードに切り替えることで、分析部42が、第2の撮像部31により得られた画像データから、粒子特定部41により特定された粒子の物性を分析する。
【0087】
このような構成であっても、励起用光源21と散乱用光源20とを別タイプのものとしおり、散乱光観察モードで用いられる散乱用光源としてレーザ光源を用いることでPTA法による分析を担保しつつ、蛍光観察モードで用いられる励起用光源として比較的安価なLEDを用いることで、安価な装置構成で種々の蛍光マーカそれぞれに適した励起波長の励起光を照射することが可能となる。
【0088】
さらに、例えば蛍光マーカの励起光の励起波長と、蛍光の波長とが離れており、撮像部3及び第2の撮像部31が色の識別機能を有する例えばカラーCCDを有するものであれば、粒子分析装置100としては、図8に示すように、必ずしも蛍光を透過させるフィルタ5を備えている必要はなく、撮像部3により蛍光を観察するとともに、第2の撮像部31により散乱光を観察することができる。
【0089】
撮像部3としては、色の識別能力を有していれば良く、例えば、ある色の蛍光を透過させるフィルタ5とCCDカメラとの組み合わせを複数組備える構成であっても良い。
また、撮像部3としては、色の識別能力を有していない例えばモノクロのCCDカメラを利用したものであっても構わない。
【0090】
さらに、前記実施形態では3つの励起用光源21、22、23からの励起光を順番に照射していたが、上述したように撮像部3が色の識別機能を有している場合、複数の励起用光源からの励起光を例えば1フレーム目に同時に照射しても良い。
このような構成であれば、粒子特定部41は、例えば1フレーム目など共通の画像データを用いて、複数種類の粒子それぞれを特定することができ、蛍光観察モードをより短時間にすることができる。
【0091】
そのうえ、本発明に係る粒子分析装置100としては、蛍光観察モードにおける粒子の特定、及び、散乱光観察モードにおける物性の分析をした後、セル1内の粒子を自動又は手動で撹拌して、再び、蛍光観察モードにおける粒子の特定、及び、散乱光観察モードにおける物性の分析を行うように構成されていても良い。
【0092】
また、分析部42としては、粒子径分布又は粒子径を測定するものに限らず、例えば粒子の個数濃度や、自己相関関数からゲルの平均格子間隔などのゲル特性など、粒子の種々の特性を分析するものとして構わない。
【0093】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0094】
100・・・粒子分析装置
1 ・・・セル
2 ・・・光照射部
3 ・・・撮像部
4 ・・・情報処理装置
41 ・・・粒子特定部
42 ・・・分析部
43 ・・・表示部
5 ・・・フィルタ
6 ・・・モード切替機構

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8