(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149700
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】金属微粒子ペーストの製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/00 20060101AFI20231005BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20231005BHJP
B22F 1/0545 20220101ALI20231005BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B22F1/00 L
B22F1/0545
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058426
(22)【出願日】2022-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業「非酸化性と原子拡散強化を実現する銅微微粒子安定分散系による低温焼結実現」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】000225016
【氏名又は名称】プライミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(72)【発明者】
【氏名】米澤 徹
(72)【発明者】
【氏名】塚本 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 唯仁
(72)【発明者】
【氏名】▲杉▼本 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】桑名 紗亜椰
(72)【発明者】
【氏名】春藤 晃人
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017AA08
4K017BA05
4K017CA08
4K017DA07
4K018BA02
4K018BB05
4K018BD04
4K018KA33
(57)【要約】
【課題】高濃度の金属微粒子を含む原料ペーストを分散処理するのに適した金属微粒子ペーストの製造方法を提供する。
【解決手段】円筒状の周壁11を有する攪拌槽1と、攪拌槽1内において周壁11と隙間を介して配置された円筒状の回転羽根4と、回転羽根4を攪拌槽1と同心状にて回転させる駆動源(駆動モータ5および駆動軸3)と、を備えた攪拌装置A1を用いて、金属微粒子を溶媒と混合させた原料ペーストを攪拌して、前記金属微粒子が前記溶媒に分散した金属微粒子ペーストを製造する方法であって、周壁11の内周面111には、複数の凹部111aが設けられており、攪拌槽1に前記原料ペーストを供給し、回転羽根4を回転させることにより、内周面111に前記原料ペーストを薄膜状に押し付けながら攪拌する、攪拌工程を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の周壁を有する攪拌槽と、当該攪拌槽内において前記周壁と隙間を介して配置された円筒状の回転羽根と、前記回転羽根を前記攪拌槽と同心状にて回転させる駆動源と、を備えた攪拌装置を用いて、金属微粒子を溶媒と混合させた原料ペーストを攪拌して、前記金属微粒子が前記溶媒に分散した金属微粒子ペーストを製造する方法であって、
前記周壁の内周面および前記回転羽根の外周面の少なくともいずれか一方には、複数の凹部、複数の凸部、または凹凸形状部が設けられており、
前記攪拌槽に前記原料ペーストを供給し、前記回転羽根を回転させることにより、前記内周面に前記原料ペーストを薄膜状に押し付けながら攪拌する、攪拌工程を備える、金属微粒子ペーストの製造方法。
【請求項2】
前記攪拌装置は、前記攪拌槽内の温度を検出する温度検出部と、前記駆動源の駆動電流を検出する電流検出部と、を有し、
前記攪拌工程は、前記温度検出部による検出温度、および前記回転羽根の周速が定常値を迎えた後における前記電流検出部による検出電流値、の少なくとも1つが最大値を示した後に、終了する、請求項1に記載の金属微粒子ペーストの製造方法。
【請求項3】
前記攪拌工程は、前記検出温度および前記検出電流値の少なくとも1つが、前記最大値の60%以下まで低下したときに、終了する、請求項2に記載の金属微粒子ペーストの製造方法。
【請求項4】
前記溶媒は、第1溶媒および第2溶媒を含み、
前記第2溶媒の蒸気圧が、前記第1溶媒の蒸気圧の1000倍以上である、請求項1ないし3のいずれかに記載の金属微粒子ペーストの製造方法。
【請求項5】
前記金属微粒子は、粒子径が3~400nmの銅粒子である、請求項1ないし4のいずれかに記載の金属微粒子ペーストの製造方法。
【請求項6】
前記攪拌工程は、前記攪拌槽内に不活性ガスを供給しながら行う、請求項1ないし5のいずれかに記載の金属微粒子ペーストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子ペーストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業化学製品、薬品、化粧品、食品等の原料になる液体と液体、または液体と粉体の混合物を処理対象物として、この処理対象物の成分を微細化して分散するための攪拌装置が用いられている。攪拌装置としては、円筒状の攪拌槽と、この攪拌槽に収容された回転羽根とを備えた攪拌装置が知られている(たとえば特許文献1を参照)。この攪拌装置においては、前記回転羽根が、前記攪拌槽と同心の円筒状とされており、前記攪拌槽の内周面と前記回転羽根との間には、比較的狭い隙間が設けられている。前記攪拌装置に処理対象物を収容し、前記攪拌槽に対して前記回転羽根を高速回転させる。これにより、前記攪拌槽と前記回転羽根との隙間において、処理対象物が薄膜状となり強いせん断力が付加され、処理対象物の分散がなされる。この回転羽根を備えた攪拌装置によれば、事前の分散処理を必要とせず、数分から10分程度の短時間の処理で所望の分散状態を得られる利点がある。特許文献1においては、回転羽根を備えた攪拌装置を用いて、所定の処理対象物(原料漆液等)を分散処理する方法が記載されている。
【0003】
半導体装置や電子機器の製造分野では、導電性を必要とする配線や接合材として、たとえば銅などの金属の微粒子を含有する金属微粒子ペーストが用いられる場合がある。金属微粒子ペーストは、用途に応じて金属微粒子が高濃度で含まれる。上述の回転羽根を備えた攪拌装置を用いて高濃度の金属微粒子を含有する原料ペーストを分散処理する場合、強固に凝集した金属微粒子を十分に分散させることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、高濃度の金属微粒子を含む原料ペーストを分散処理するのに適した金属微粒子ペーストの製造方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題について本発明者らが鋭意検討した結果、回転羽根を備えた攪拌装置において、攪拌槽の内周面および回転羽根の外周面の少なくともいずれかに複数の凹部を設け、金属微粒子を含有する原料ペーストに所定の分散処理を行うことで、高濃度の金属微粒子が適切に分散した金属微粒子ペーストを製造することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明によって提供される金属微粒子ペーストの製造方法は、円筒状の周壁を有する攪拌槽と、当該攪拌槽内において前記周壁と隙間を介して配置された円筒状の回転羽根と、前記回転羽根を前記攪拌槽と同心状にて回転させる駆動源と、を備えた攪拌装置を用いて、金属微粒子を溶媒と混合させた原料ペーストを攪拌して、前記金属微粒子が前記溶媒に分散した金属微粒子ペーストを製造する方法であって、前記周壁の内周面および前記回転羽根の外周面の少なくともいずれか一方には、複数の凹部、複数の凸部、または凹凸形状部が設けられており、前記攪拌槽に前記原料ペーストを供給し、前記回転羽根を回転させることにより、前記内周面に前記原料ペーストを薄膜状に押し付けながら攪拌する、攪拌工程を備える。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記攪拌装置は、前記攪拌槽内の温度を検出する温度検出部と、前記駆動源の駆動電流を検出する電流検出部と、を有し、前記攪拌工程は、前記温度検出部による検出温度、および前記回転羽根の周速が定常値を迎えた後における前記電流検出部による検出電流値、の少なくとも1つが最大値を示した後に、終了する。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記攪拌工程は、前記検出温度および前記検出電流値の少なくとも1つが、前記最大値の60%以下まで低下したときに、終了する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記溶媒は、第1溶媒および第2溶媒を含み、前記第2溶媒の蒸気圧が、前記第1溶媒の蒸気圧の1000倍以上である。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記金属微粒子は、粒子径が3~400nmの銅粒子である。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記攪拌工程は、前記攪拌槽内に不活性ガスを供給しながら行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る製造方法によれば、攪拌装置における周壁の内周面および回転羽根の外周面の少なくともいずれか一方に複数の凹部が設けられることで、周壁の内周面と回転羽根の外周面との隙間にある原料ペーストには、飛躍的に強いせん断力が付加される。これにより、金属微粒子の凝集物の解砕を促進させ、ペーストの分散安定性を高めることができる。原料ペーストが高濃度の金属微粒子を含有する場合においても、強固に凝集した金属微粒子の凝集物を十分に解砕し、数分から10分程度の短時間の処理で所望の分散状態を得ることができる。したがって、本発明によれば、高濃度の金属微粒子が適切に分散した金属微粒子ペーストを製造することができる。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る金属微粒子ペーストの製造方法を実行するのに使用可能な攪拌装置の概略構成を表す。
【
図3】
図2のIII-III線に沿う要部拡大断面図である。
【
図8】実施例1における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
【
図9】実施例1におけるペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真である。
【
図10】実施例2における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
【
図11】実施例2におけるペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真である。
【
図12】実施例3における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
【
図13】実施例3におけるペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真である。
【
図14】実施例4における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
【
図15】実施例4におけるペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真である。
【
図16】実施例5における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
【
図17】実施例5におけるペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真である。
【
図18】実施例6における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
【
図19】実施例6におけるペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真である。
【
図20】比較例1における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
【
図21】比較例1におけるペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真である。
【
図22】比較例2におけるペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真である。
【
図23】比較例3におけるペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る金属微粒子ペーストの製造方法を実行するのに使用可能な攪拌装置の概略構成を表している。
図2は、攪拌装置の一例を示す要部縦断面図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿う要部拡大断面図である。
図1、
図2に示すように、本実施形態の攪拌装置A1は、攪拌槽1、ジャケット2、駆動軸3、回転羽根4、駆動モータ5、温度検出部6、電流検出部7および電源部8を備えている。
【0018】
攪拌槽1は、駆動軸3の一部および回転羽根4を収容する槽である。攪拌槽1は、周壁11、底壁12および上蓋13を有する。周壁11は、中心軸が鉛直方向に延びる円筒状である。なお、図示した例では、周壁11の中心軸が鉛直方向に延びているが、攪拌装置A1の使用状態によっては、周壁11の中心軸が鉛直方向とは異なる方向に延びていてもよい。
【0019】
図2、
図3に示すように、周壁11の内周面111には、複数の溝111aが形成されている。各溝111aは、鉛直方向に沿って一様に延びている。溝111aは、周壁11の内周面111全体に設けられており、周壁11の円周方向に略等ピッチで配置されている。溝111aの形状は、特に限定されず、図示した例では溝111aの断面形状がV字状とされているが、半円形などの他の断面形状であってもよい。また、複数の溝111aは、鉛直方向に対して傾斜して延びたスパイラル状であってもよい。溝111aの幅や深さ、配列ピッチ等は、特に限定されないが、後述する回転羽根4による原料ペーストの攪拌処理を行うのに適した寸法に設定される。また、複数の溝111aに代えて、複数の凹み(ディンプル)を形成してもよい。この場合、複数の凹みは、内周面111全体に満遍なく設けられる。上記の複数の溝111a、および複数の凹み(ディンプル)は、それぞれ本発明の「複数の凹部」の一例である。さらに、複数の溝111aに代えて、内周面111に複数の突起や複数の帯状凸部を形成してもよい。上記複数の突起、および複数の帯状凸部は、それぞれ本発明の「複数の凸部」の一例である。また、内周面111を凸部と凹部とが混在する凹凸形状としてもよく、この場合、内周面111に形成された当該凹凸形状部分は本発明の「凹凸形状部」の一例である。
【0020】
図2に示すように、底壁12は、周壁11の下端につながり、周壁11の内側を塞いでいる。周壁11および底壁12は、有底円筒容器状とされている。上蓋13は、周壁11の上端を塞いでいる。攪拌槽1は、周壁11、底壁12および上蓋13により、密閉構造とされている。攪拌槽1のサイズや材質は特に限定されないが、好ましい材質としてたとえばステンレスが挙げられる。
【0021】
本実施形態において、攪拌槽1には、ガス流入口14およびガス流出口15が設けられている。ガス流入口14およびガス流出口15は、上蓋13に隣接して設けられている。ガス流入口14を通じて所定のガスを攪拌槽1内に供給することが可能である。ガス流出口15を通じて攪拌槽1内のガスを槽外に排出することが可能である。
【0022】
ジャケット2は、攪拌槽1の周壁11および底壁12を取り囲むように設けられている。ジャケット2は、たとえば当該ジャケット2と攪拌槽1との間の空間に冷却水(冷媒)を流すことにより攪拌槽1の内部を冷却するためのものである。ジャケット2には、流入配管21および流出配管22が設けられており、流入配管21および流出配管22を介して冷媒を循環して供給することが可能である。
【0023】
駆動軸3は、回転羽根4を回転させる駆動力を回転羽根4に伝達するものであり、駆動モータ5に連結されている。駆動軸3は、攪拌槽1の中心軸に一致または略一致するように配置されている。攪拌槽1の上蓋13には、駆動軸3を気密状態で挿通させうる貫通孔が設けられており、シール部材16によって気密状態が維持されている。
【0024】
回転羽根4は、攪拌槽1内において処理対象物を攪拌するためのものである。回転羽根4は、連結部49を介して駆動軸3に取り付けられている。回転羽根4は、攪拌槽1と同心の円筒状であり、本実施形態においては、上下方向のいずれにも開口している。回転羽根4は、攪拌槽1の周壁11との間に隙間を介して配置されている。本実施形態において、回転羽根4の外周面41と周壁11の内周面111との間には、略一定の隙間が設けられている。回転羽根4の外周面41と周壁11の内周面111との隙間は、特に限定されないが、後述する回転羽根4による原料ペーストの攪拌処理を行うのに適した寸法に設定される。
【0025】
本実施形態においては、回転羽根4は、複数の貫通孔42を有する。複数の貫通孔42は、各々が回転羽根4を径方向に貫通している。複数の貫通孔42のサイズや形状および配置は特に限定されず、後述する本発明が意図する効果を奏しうる構成であればよい。また、本実施形態においては、複数の貫通孔42が中心軸方向に複数列(たとえば6列)をなす配置とされている。各列においては、複数の貫通孔42が回転羽根4の円周方向に略等ピッチで配置されている。
【0026】
駆動モータ5は、駆動軸3に回転駆動力を与えるものである。駆動モータ5の駆動により駆動軸3が回転すると、回転羽根4は、攪拌槽1と同心状に回転させられる。駆動軸3および駆動モータ5は、本発明の「駆動源」の構成要素の一例である。
【0027】
温度検出部6は、攪拌槽1内の温度を検出するものである。本実施形態においては、温度検出部6は、底壁12に設けられており、攪拌槽1の内部に導入された測温部によって攪拌槽1内の温度を検出する。
【0028】
電流検出部7は、駆動モータ5の駆動電流を検出するものである。電流検出部7は、駆動モータ5および電源部8に接続されている。
【0029】
電源部8は、駆動モータ5に駆動電力を供給するものである。また、電源部8は、温度検出部6による検出結果、および電流検出部7による検出結果に基づき、駆動モータ5の駆動を停止する制御を行う。
【0030】
攪拌装置A1を用いた処理対象物(原料ペースト)の処理方式は特に限定されないが、本実施形態においては、攪拌処理を所定量の処理対象物(原料ペースト)に対して行う、いわゆるバッチ処理方式である。本方式以外に、攪拌中において処理対象物(原料ペースト)を供給する連続処理方式を採用してもよい。
【0031】
上記のような構成を有する攪拌装置A1を用いて、本発明に係る金属微粒子ペーストの製造方法を実行することができる。攪拌装置A1を用いて行う金属微粒子ペーストの製造においては、処理対象物として金属微粒子を溶媒と混合させた原料ペーストが用いられ、当該原料を攪拌槽1内に供給する。回転羽根4を高速回転させて、原料ペーストを攪拌する(攪拌工程)。攪拌工程では、攪拌槽1内の原料ペーストには、回転羽根4を高速回転させることで発生する遠心力により、周方向に回転する強い旋回流が生じる。原料ペーストは、攪拌槽1(周壁11)の内周面111に押し付けられて薄膜円筒状になる。周壁11の内周面111と回転羽根4の外周面41との隙間においては、原料ペーストに強いせん断力が付加され、原料ペーストの分散がなされる。また、回転羽根4には複数の貫通孔42が形成されている。このため、回転羽根4の内周面に付着した原料ペーストもまた、周壁11の内周面111と回転羽根4の外周面41との隙間にスムーズに導入される。
【0032】
攪拌槽1(周壁11)の内周面111には、複数の溝111a(凹部)が形成されている。複数の溝111aは、回転羽根4の回転方向と直交する鉛直方向に延びている。このように複数の溝111a(凹部)が設けられることで、周壁11の内周面111と回転羽根4の外周面41との隙間にある原料ペーストには、飛躍的に強いせん断力が付加される。これにより、金属微粒子の凝集物の解砕を促進させ、ペーストの分散安定性を高めることができる。原料ペーストが高濃度の金属微粒子を含有する場合においても、強固に凝集した金属微粒子の凝集物を十分に解砕し、数分から10分程度の短時間の処理で所望の分散状態を得ることができる。したがって、本製造方法によれば、高濃度の金属微粒子が適切に分散した金属微粒子ペーストを製造することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、周壁11の内周面111に複数の溝111aを形成したが、これに代えて、回転羽根4の外周面41に複数の溝を形成してもよい。この場合、原料ペーストに高いせん断力が付加されることが期待できる。また、周壁11の内周面111および回転羽根4の外周面41の双方に、複数ずつの溝を形成してもよい。さらに、回転羽根4の外周面41に、複数の溝に代えて複数の凹み(ディンプル)、複数の凸部や複数の帯状突起を形成してもよく、また、外周面41を凸部と凹部が混在する凹凸形状としてもよい。回転羽根4の外周面41に設ける複数の溝、複数の凹み(ディンプル)、複数の凸部、複数の帯状突起、凸部と凹部が混在する凹凸形状は、それぞれ本発明の「複数の凹部、複数の凸部、または凹凸形状部」の一例である。
【0034】
原料ペーストにおいて、溶媒と混合させる金属微粒子としては、特に限定されず、たとえば銅粒子、銀粒子および金粒子を挙げることができる。金属微粒子を構成する金属材料は、用途に応じて適宜選択すればよいが、銅粒子の場合にはコスト削減効果が見込める。溶媒に混合させる金属微粒子として銅粒子を採用する場合、当該銅粒子の粒子径は、たとえば3~400nmの範囲であり、好ましくは20~400nmの範囲である。
【0035】
また、原料ペーストに含まれる金属微粒子が銅粒子である場合、攪拌工程は、攪拌槽1内にたとえば窒素などの不活性ガスを供給しながら行うのが好ましい。この場合、不活性ガスはガス流入口14を通じて攪拌槽1内に供給され、攪拌槽1内のガスが、ガス流出口15を通じて槽外に排出される。銅粒子は空気中で酸化しやすいところ、不活性ガス(窒素)フロー下で攪拌することにより、銅粒子の酸化防止を図りつつ、高いせん断力をかけることができる。したがって、ダメージの少ない良質な金属微粒子ペーストを得ることができる。
【0036】
攪拌工程は、たとえば、攪拌槽1に設けられた温度検出部6による検出温度、および回転羽根4の周速が定常値を迎えた後における電流検出部7による検出電流値の少なくとも1つが最大値を示した後に、終了する。ここで、駆動モータ5の始動時に生ずる過大な起動電流を検出対象から除外するため、電流検出部7による検出電流値については、回転羽根4の周速が定常値を迎えた後を検出対象とした。原料ペーストは、溶媒中に金属微粒子の凝集物が漂っている状態のため、低粘性を示す。攪拌処理により凝集物が解砕されるにつれて、溶媒と接する金属微粒子の表面積が増え、粘性が上がることで温度、駆動電流が上昇する。さらに解砕が進むと、金属粒子表面の溶媒量が相対的に減少し、ペーストはある時点を境に粘弾性挙動から塑性挙動へと変化する。温度、駆動電流の少なくともどちらか一方が最大値を示した以降において、徐々に塑性挙動が表れ始めていると考えられる。ペーストが塑性挙動を示し始めた段階では、金属粒子の表面積は極めて大きくなり、十分に解砕されていると考えることができる。ここで回転羽根4の回転を停止し、攪拌工程を終了する。これにより、粘弾性領域の流動性あるペーストが得られる。当該ペーストは、スクリーン印刷等の流動性を必要とする印刷手法に、好適に用いられる。
【0037】
攪拌工程は、たとえば、攪拌槽1に設けられた温度検出部6による検出温度、および電流検出部7による検出電流値の少なくとも1つが最大値を示した後に、当該最大値よりも低い所定の閾値を下回ったときに、終了する。当該所定の閾値は、拡散処理後のペーストに求められる性質に応じて、予め設定されている。上記所定の閾値は、たとえば上記最大値の50~80%に設定される。上記の温度、駆動電流の少なくともどちらか一方が最大値を示した以降において、温度、駆動電流が十分に低下した段階では、塑性挙動が極めて強い状態と考えられる。上記所定の閾値を60~70%に設定した場合、塑性挙動の強い流動性の少ないペーストが得られる。当該ペーストは、メタルマスク等の流動性を嫌う印刷手法に、好適に用いることができる。
【0038】
また、攪拌工程の好ましい一例としては、攪拌槽1に設けられた温度検出部6による検出温度、および電流検出部7による検出電流値の少なくとも1つが最大値を示した後に、当該最大値の60%以下まで低下したときに、終了する。この場合、塑性挙動の強いペーストがより確実に得られ、金属微粒子の凝集物をほぼ単粒子まで解砕することができる。
【0039】
攪拌工程においては、回転羽根4を連続的に回転駆動させても良いし、攪拌槽1内の過度な温度上昇を防止するため、回転羽根4を断続的に回転駆動させても良い。
【0040】
原料ペーストの調製においては、溶媒について蒸気圧が1000倍以上異なる2種類の溶媒を用いてもよい。当該2種類の溶媒は、低蒸気圧の第1溶媒と、蒸気圧がこの第1溶媒の1000倍以上である、高蒸気圧の第2溶媒である。分散前に粉末化しないほうが良い場合には、金属微粒子を高蒸気圧の第2溶媒を用いて予備攪拌してスラリーにする。その後、当該スラリーと低蒸気圧の第1溶媒を混合し、原料ペーストを調製する。このようにして得られた原料ペーストを攪拌工程において攪拌処理を行うと、発熱による温度上昇で高蒸気圧の第2溶媒が揮発することで除去される。高濃度の金属微粒子を含有する原料ペーストでは、強い塑性挙動から空回りして攪拌できない場合もある。上記第1溶媒および第2溶媒を用いた場合、このような強い塑性挙動を示すペーストを攪拌する上で、有効な手法である。上記第1溶媒(低蒸気圧の溶媒)および第2溶媒(高蒸気圧の溶媒)は、特に限定されない。上記第1溶媒として、たとえばN-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、ジエタノールアミン、グリセロール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールを挙げることができる。上記第2溶媒として、2-プロパノール、1-プロパノール、アセトン、エタノール、メタノールを挙げることができる。
【0041】
そして、上述の金属微粒子ペーストの製造方法によれば、溶媒や金属微粒子の選択によっては、最高で約95wt%の高濃度の金属微粒子を含む原料ペーストを分散処理する場合でも、凝集物が十分に解砕された良好な分散状態のペーストを得ることができる。
【実施例0042】
次に、本発明の有用性を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
<金属微粒子>
本実施例等においては、以下の2水準の銅粒子を用いた。
〔銅粒子1〕(メディアン径127nm)
液相還元法により銅粒子1を作製した。原料として酸化銅(日進ケムコ製NB-2)1mol、溶媒としてエチルカルビトール(三協化学製)1L、保護剤としてヘキサン酸(純正化学製)60mmol、錯形成剤としてアンモニア水(純正化学製)60mLを投入し、常温にて半日攪拌した後、70℃に昇温し、ヒドラジン一水和物(関東化学製)2molを添加して1時間反応させた。反応液を冷却させた後、アセトンおよび2-プロパノール(第2溶媒)にて2回ずつ精製を行い、銅粒子/2-プロパノールスラリーを得た。
図4は、銅粒子1のSEM像の写真である。
図5は、銅粒子1の粒度分布を示すグラフである。
図5において、棒グラフは粒子径毎の度数を表し、折れ線グラフは累積度数を表す。SEM観察像から計数した粒度分布により、メディアン径127nm、変動係数0.6の幅広い粒子径分布の銅粒子であることを確認した。
【0044】
〔銅粒子2〕(メディアン径60nm)
液相還元法により銅粒子2を作製した。原料として酸化銅(日進ケムコ製NB-2)1mol、溶媒としてエチルカルビトール(三協化学製)1L、保護剤としてヘキサン酸(純正化学製)60mmolを投入し、70℃に昇温した後、ヒドラジン一水和物(関東化学製)2molを添加して1時間反応させた。反応液を冷却させた後、アセトンおよび2-プロパノール(第2溶媒)にて2回ずつ精製を行い、銅粒子/2-プロパノールスラリーを得た。
図6は、銅粒子2のSEM像の写真である。
図7は、銅粒子2の粒度分布を示すグラフである。
図7において、棒グラフは粒子径毎の度数を表し、折れ線グラフは累積度数を表す。SEM観察像から計数した粒度分布により、メディアン径が60nm、変動係数0.35のシャープな粒子径分布の銅粒子であることを確認した。
【0045】
<原料ペーストの調製>
上述の2水準の銅粒子(銅粒子1および銅粒子2)を用いて、以下の6水準の原料ペーストを調製の上、分散実験を実施した。
〔原料ペースト1〕(銅粒子1:80wt%)
銅粒子1のスラリーを遠心分離(400G、3分)し、上澄みを除去したウェットケーキ中の銅粒子80wt%に対して、第1溶媒としてのN-メチルジエタノールアミン(関東化学製)を20wt%投入した後、手でよく振り混ぜて原料ペースト1を得た。スラリー中の銅粒子の重量は、予め、以下の計算式により算出した。
【0046】
【0047】
〔原料ペースト2〕(銅粒子1:80wt%)
第1溶媒をトリエタノールアミン(関東化学製)に変えた以外は、原料ペースト1と同じ手法で調製した。
【0048】
〔原料ペースト3〕(銅粒子1:90wt%)
銅粒子1を90wt%、第1溶媒としてのN-メチルジエタノールアミンを10wt%とした以外は原料ペースト1と同じ手法で調製した。
【0049】
〔原料ペースト4〕(銅粒子1:90wt%)
第1溶媒をN-エチルジエタノールアミン(関東化学製)に変えた以外、原料ペースト3と同じ手法で調製した。
【0050】
〔原料ペースト5〕(銅粒子2:80wt%)
銅粒子2のスラリーを遠心分離(400G、3分)し、上澄みを除去した銅ウェットケーキ80wt%に対して、第1溶媒としての2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(東京化成製)を20wt%投入した後、手でよく振り混ぜて原料ペースト5を得た。
【0051】
〔原料ペースト6〕(銅粒子2:80wt%)
銅粒子2のスラリーを遠心分離(400G、3分)し、上澄みを除去したウェットケーキ中の銅粒子80wt%に対して、第1溶媒としてのトリエタノールアミン(関東化学製)を20wt%投入した後、自転公転ミキサー(シンキー製AR-100)にて1分攪拌して原料ペースト6を得た。スラリー中の銅粒子の重量は、予め原料ペースト1と同じ計算式により算出した。
【0052】
〔実施例1〕(原料ペースト1、溝付撹拌槽、周速30m/s)
攪拌装置として薄膜旋回型高速ミキサー(プライミクス製フィルミックス56型)を使用し、分散処理を行った。本実施例では、攪拌槽の内周面に複数の溝が形成された溝付攪拌槽を用いた。溝付攪拌槽に90mLの原料ペースト1を投入し、銅粒子の酸化防止のため窒素フロー下で、回転羽根の周速30m/sにて、断続的に7分の処理を実施した。運転中の攪拌槽内の検出温度はジャケットで冷却しているにも関わらず90℃まで上昇し、大きなせん断エネルギーがペーストに掛かったことを示唆した。ナノパーコレーター(日本電子製)によりペースト中の粒子の状態を観察した結果、処理時間2分ほどで粗大な凝集物が見られなくなることを確認した。
図8は、本実施例における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
図9は、本実施例のペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真である。(a)は処理前を表し、(b)は処理時間1分を表し、(c)は処理時間2分を表し、(d)は処理時間3分を表し、(e)は処理時間5分を表し、(f)は処理時間7分を表す。
【0053】
〔実施例2〕(原料ペースト2、溝付撹拌槽、周速30m/s)
処理対象物を原料ペースト2に変更した以外は実施例1と同じ条件にて、断続的に5分の分散処理を実施した。運転中の攪拌槽内の検出温度は92℃まで上昇し、大きなせん断エネルギーがペーストに掛かったことを示唆した。ナノパーコレーターによりペースト中の粒子の状態を観察した結果、処理時間5分で粗大な凝集物が見られなくなることを確認した。
図10は、本実施例における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
図11は、本実施例のペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真であり、処理時間5分を表す。第1溶媒としてN-メチルジエタノールアミン(粘度57mPa・s、30℃)よりも粘性が十分に高いトリエタノールアミン(粘度406mPa・s、30℃)を用いても、良好に解砕できることが確認された。
【0054】
〔実施例3〕(原料ペースト3、溝付撹拌槽、周速30m/s)
処理対象物を原料ペースト3に変更した以外は実施例1と同じ条件にて、断続的に3分の分散処理を実施した。運転中の攪拌槽内の検出温度は79℃まで上昇し、大きなせん断エネルギーがペーストに掛かったことを示唆した。ナノパーコレーターによりペースト中の粒子の状態を観察した結果、処理時間90秒で粗大な凝集物が見られなくなることを確認した。
図12は、本実施例における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
図13は、本実施例のペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真である。(a)は処理前を表し、(b)は処理時間30秒を表し、(c)は処理時間1分を表し、(d)は処理時間90秒を表し、(e)は処理時間3分を表す。銅粒子をより高濃度(90wt%)で含む原料ペーストにおいても、良好に解砕できることが確認された。
【0055】
〔実施例4〕(原料ペースト4、溝付撹拌槽、周速30m/s)
処理対象物を原料ペースト4に変更した以外は実施例1と同じ条件にて、断続的に5分の分散処理を実施した。運転中の攪拌槽内の検出温度は76℃まで上昇し、大きなせん断エネルギーがペーストに掛かったことを示唆した。ナノパーコレーターによりペースト中の粒子の状態を観察した結果、処理時間5分で粗大な凝集物が見られなくなることを確認した。
図14は、本実施例における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
図15は、本実施例のペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真であり、処理時間5分を表す。
【0056】
〔実施例5〕(原料ペースト5、溝付撹拌槽、周速30m/s)
後述の比較例2および比較例3で処理したものを混合した90mLのペーストを溝付攪拌槽に投入して、実施例1と同じ条件にて、断続的に15分の分散処理を実施した。運転中の攪拌槽内の検出温度は59℃まで上昇し、大きなせん断エネルギーがペーストに掛かったことを示唆した。ナノパーコレーターによりペースト中の粒子の状態を観察した結果、処理時間1分で粗大な凝集物が見られなくなり、処理時間5分で凝集物は数百nm程度まで解砕されることを確認した。また、処理時間を15分まで延長するとことで、単粒子まで解砕されることを確認した。
図16は、本実施例における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
図17は、本実施例のペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真である。(a)は処理前を表し、(b)は処理時間1分を表し、(c)は処理時間2分を表し、(d)は処理時間5分を表し、(e)は処理時間10分を表し、(f)は処理時間15分を表す。
【0057】
〔実施例6〕(原料ペースト6、溝付撹拌槽、周速30m/s)
処理対象物を原料ペースト6に変更した以外は実施例1と同じ条件にて、断続的に12分の分散処理を実施した。運転中の攪拌槽内の検出温度は73℃まで上昇し、大きなせん断エネルギーがペーストに掛かったことを示唆した。また運転中に駆動電流が14.5Aから8.2Aまで急激に減少する現象が見られ、ペーストが粘弾性挙動から塑性挙動へと変化した様子が捉えられた。ナノパーコレーターによりペースト中の粒子の状態を観察した結果、塑性挙動が見られた処理時間12分では、粗大な凝集物が見られなくなり、ほぼ単粒子まで解砕されることを確認した。
図18は、本実施例における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
図19は、本実施例のペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真であり、処理時間12分を表す。
【0058】
〔比較例1〕(原料ペースト1、溝なし撹拌槽、周速30m/s)
攪拌装置として薄膜旋回型高速ミキサー(プライミクス製フィルミックス56型)を使用し、分散処理を行った。本実施例では、攪拌槽の内周面に溝が形成されていない従来の溝なし攪拌槽を用いた。溝なし攪拌槽に90mLの原料ペースト1を投入し、銅粒子の酸化防止のため窒素フロー下で、回転羽根の周速30m/sにて、断続的に10分の処理を実施した。運転中の攪拌槽内の検出温度は36~39℃で大きな温度上昇は見られなかった。ナノパーコレーターによりペースト中の粒子の状態を観察した結果、処理時間10分後も粗大な凝集物が見られ、殆ど解砕されていないことが確認された。
図20は、本比較例における攪拌装置の運転ログを示すグラフである。
図21は、本比較例のペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真であり、処理時間10分を表す。
【0059】
〔比較例2〕(原料ペースト5、溝なし撹拌槽、周速30m/s)
処理対象物を60mLの原料ペースト5に変更した以外は比較例1と同じ条件にて、1分の分散処理を実施した。運転中の攪拌槽内の検出温度は28℃で大きな温度上昇は見られなかった。ナノパーコレーターによりペースト中の粒子の状態を観察した結果、処理後も数μmの凝集物が見られ、あまり解砕されていないことが確認された。
図22は、本比較例のペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真であり、処理時間1分を表す。
【0060】
〔比較例3〕(原料ペースト5、溝なし撹拌槽、周速30m/s)
回転羽根の周速を40m/sに変更した以外は比較例2と同じ条件にて、1分の分散処理を実施した。運転中の攪拌槽内の検出温度は50℃近くまで上昇したが、ナノパーコレーターによりペースト中の粒子の状態を観察した結果、処理後も数μmの凝集物が見られ、あまり解砕されていないことが確認された。
図23は、本比較例のペースト中の粒子状態を示すSEM像の写真であり、処理時間1分を表す。