(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149765
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ポリアミド酸、ポリイミド、金属張積層板及び回路基板
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20231005BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231005BHJP
B32B 15/088 20060101ALI20231005BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08G73/10
B32B15/08 J
B32B15/088
H05K1/03 610P
H05K1/03 630H
H05K1/03 630C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058520
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100226894
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 夏詩子
(72)【発明者】
【氏名】王 宏遠
(72)【発明者】
【氏名】森本 敏弘
【テーマコード(参考)】
4F100
4J043
【Fターム(参考)】
4F100AB01C
4F100AB01D
4F100AB17C
4F100AB17D
4F100AB33C
4F100AB33D
4F100AK49A
4F100AK49B
4F100BA03
4F100BA06
4F100GB43
4F100JA02A
4F100JA02B
4F100JA05A
4F100JA05B
4F100JG04A
4F100JG04B
4F100JJ01A
4F100JJ01B
4F100JK02A
4F100JK02B
4F100JK03A
4F100JK03B
4F100JK07A
4F100JK07B
4F100JK08A
4F100JK08B
4J043PA04
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA06
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA47
4J043SB01
4J043SB03
4J043SB04
4J043TA22
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA131
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4J043UA141
4J043UB121
4J043UB221
4J043XA03
4J043XA16
4J043ZA12
4J043ZA31
4J043ZB50
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放熱性(熱伝導性)と柔軟性・靭性と耐熱性とに優れたポリイミドを提供する。
【解決手段】式(1)の酸無水物成分から誘導される酸無水物残基と、ジアミン成分から誘導されるジアミン残基とを含有し、全酸無水物残基に対し式(1)から誘導される酸無水物残基を50モル%以上含有し、全ジアミン残基に対しベンズアニリド誘導体から誘導されるジアミン残基を50モル%以上含有するポリアミド酸及びポリイミド。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される酸無水物成分から誘導される酸無水物残基と、
一般式(2)で表されるジアミン成分から誘導されるジアミン残基と
を含有し、
全酸無水物残基に対し、下記の一般式(1)で表される酸無水物成分から誘導される酸無水物残基を50モル%以上含有し、
全ジアミン残基に対し、下記の一般式(2)で表わされるジアミン成分から誘導されるジアミン残基を50モル%以上含有することを特徴とするポリアミド酸。
【化1】
【化2】
[式(2)中、Rは独立に、ハロゲン原子であるか、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又は炭素数1~6の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基を示す。m、nはそれぞれ独立して置換数を示し、mは0~4の整数、nは0~4の整数を示す。]
【請求項2】
下記一般式(3)で表されるジアミン成分から誘導されるジアミン残基を10モル%~50モル%を含有することを特徴とする請求項1に記載のポリアミド酸。
【化3】
[式(3)中、Zは-O-を示す。Rは独立に、ハロゲン原子であるか、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又は炭素数1~6の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基を示す。n
1は置換数を示し、0~4の整数である。n
2は0~3の整数を示す。]
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリアミド酸がイミド化されてなる、ポリイミド。
【請求項4】
下記a)及びb);
a)20mm幅で測定した端裂抵抗が30N以上500N以下の範囲内であること、
b)厚み方向における熱伝導率(λz)が、0.20W/m・K以上の範囲内であること、
を満たす請求項3に記載のポリイミド。
【請求項5】
更に、下記の条件c);
c)厚み方向における熱拡散率(α)が、0.100m2/s以上の範囲内であること、
を満たす請求項4に記載のポリイミド。
【請求項6】
更に、下記の条件d);
d)ガラス転移温度が250℃以上であること、
を満たすことを特徴とする請求項4又は5に記載のポリイミド。
【請求項7】
更に、下記の条件e);
e)引き裂き伝播抵抗が1.5kN/mであること、
を満たすことを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載のポリイミド。
【請求項8】
更に、下記の条件f);
f)熱膨張係数が50ppm/K以下であること、
を満たすことを特徴とする請求項4~7のいずれかに記載のポリイミド。
【請求項9】
単層又は複数層からなる絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の片側又は両側に積層されている金属層と、を備えた金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、請求項3~8のいずれか1項に記載のポリイミドの層によって構成されていることを特徴とする金属張積層板。
【請求項10】
単層又は複数層からなる絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の片側又は両側に積層されている導体回路層と、を備えた回路基板であって、
前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、請求項3~8のいずれか1項に記載のポリイミドの層によって構成されている回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド酸、該ポリアミド酸がイミド化されてなるポリイミド並びに該ポリイミドの層を用いた金属張積層板及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、スマートフォン等の電子機器の可動部分の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。FPCの多くは、金属箔などを用いた金属層と、絶縁性を持った樹脂基材(絶縁樹脂層)とを積層した金属張積層板の金属層に回路を形成することで製造される。
【0003】
さらに、最近では、電子機器の小型化や情報処理量の増加などに伴って、回路の集積度が上がってきており、搭載部品から発生する熱の増加が見込まれ、さらには、情報処理の高速化や信頼性の向上を図ろうとするためには、機器内に生じる熱の放熱特性を高めることが要求されている。機器内の放熱性を高めるためには、従来から、熱伝導率が高いアルミニウムの厚板や冷却ファンなどを設置する方法が採用されてきたが、機器の小型化の要求から、そのような設備を設けることができない場合がある。
【0004】
また、放熱性を高めるためには、電子機器それ自体の熱伝導性を高めることが有効と考えられる。例えば、配線基板を構成する絶縁樹脂層中に熱伝導性フィラーを含有させる技術が検討されている。より具体的には、絶縁樹脂層を形成する樹脂中に、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの熱伝導性の高い充填材を分散配合することが検討されており、例えば、耐熱性の高いポリイミドに対して熱伝導性フィラーを配合する技術が報告されている(例えば、特許文献1~7)。さらには、電子機器(絶縁樹脂層)それ自体を薄くするなどによって厚み方向の放熱性を高めることも考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5235211号公報
【特許文献2】特許第5442491号公報
【特許文献3】特許第5297740号公報
【特許文献4】特許第5665449号公報
【特許文献5】特許第5330396号公報
【特許文献6】特許第5665846号公報
【特許文献7】特許第5650084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、樹脂中の熱伝導フィラーの充填率を高めると、相対的に樹脂成分の含有量が低下するために、樹脂硬化物の柔軟性や靭性が低下する傾向がみられ、FPC加工中に回路パターン形成後のフィルム単体部分が破れるおそれがある。また、絶縁樹脂層を薄くした場合はそれがより顕著になることが想定される。
【0007】
他方、絶縁樹脂層における樹脂成分として、柔軟性や靭性が比較的良好である官能基を有するものを使用した場合、耐熱性が低下する傾向が見られる。
【0008】
このように、電子機器内の放熱性の向上の要求があるものの、従来技術においては配線基板を構成する絶縁樹脂層の放熱性(熱伝導性)と柔軟性・靭性と耐熱性とを全て満足させることについて、改善の余地があった。
【0009】
そこで、本願の発明者らが鋭意検討した結果、配線基板を構成する絶縁樹脂層としてポリイミドの層を使用するにあたり、ポリイミドを構成する酸無水物成分及びジアミン成分としてそれぞれ特定の化合物を用いると共に、それらの含有量を所定の範囲に調整することが有効であることを知見して、本発明を完成させた。
【0010】
したがって、本発明の目的は、放熱性(熱伝導性)と柔軟性・靭性と耐熱性とに優れたポリイミドの層を与えるポリアミド酸を提供することである。
また、本発明の他の目的は、該ポリイミドの層を有する絶縁樹脂層が積層されてなる金属張積層板及び回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]下記一般式(1)で表される酸無水物成分から誘導される酸無水物残基と、
一般式(2)で表されるジアミン成分から誘導されるジアミン残基と
を含有し、
全酸無水物残基に対し、下記の一般式(1)で表される酸無水物成分から誘導される酸無水物残基を50モル%以上含有し、
全ジアミン残基に対し、下記の一般式(2)で表わされるジアミン成分から誘導されるジアミン残基を50モル%以上含有することを特徴とするポリアミド酸。
【化1】
【化2】
[式(2)中、Rは独立に、ハロゲン原子であるか、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又は炭素数1~6の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基を示す。m、nはそれぞれ独立して置換数を示し、mは0~4の整数、nは0~4の整数を示す。]
[2]下記一般式(3)で表されるジアミン成分から誘導されるジアミン残基を10モル%~50モル%を含有することを特徴とする[1]に記載のポリアミド酸。
【化3】
[式(3)中、Zは-O-を示す。Rは独立に、ハロゲン原子であるか、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又は炭素数1~6の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基を示す。n
1は置換数を示し、0~4の整数である。n
2は0~3の整数を示す。]
[3][1]又は[2]に記載のポリアミド酸がイミド化されてなる、ポリイミド。
[4]下記a)及びb);
a)20mm幅で測定した端裂抵抗が30N以上500N以下の範囲内であること、
b)厚み方向における熱伝導率(λz)が、0.20W/m・K以上の範囲内であること、
を満たす[3]に記載のポリイミド。
[5]更に、下記の条件c);
c)厚み方向における熱拡散率(α)が、0.100m
2/s以上の範囲内であること、
を満たす[4]に記載のポリイミド。
[6]更に、下記の条件d);
d)ガラス転移温度が250℃以上であること、
を満たすことを特徴とする[4]又は[5]に記載のポリイミド。
[7]更に、下記の条件e);
e)引き裂き伝播抵抗が1.5kN/mであること、
を満たすことを特徴とする[4]~[6]のいずれかに記載のポリイミド。
[8]更に、下記の条件f);
f)熱膨張係数が50ppm/K以下であること、
を満たすことを特徴とする[4]~[7]のいずれかに記載のポリイミド。
[9]単層又は複数層からなる絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の片側又は両側に積層されている金属層と、を備えた金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、[3]~[8]のいずれか1項に記載のポリイミドの層によって構成されていることを特徴とする金属張積層板。
[10]単層又は複数層からなる絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の片側又は両側に積層されている導体回路層と、を備えた回路基板であって、
前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、[3]~[8]のいずれか1項に記載のポリイミドの層によって構成されている回路基板。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放熱性(熱伝導性)と柔軟性・靭性と耐熱性とに優れたポリイミドを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
<ポリアミド酸、ポリイミド>
本発明のポリアミド酸は、ポリイミドの前駆体であり、テトラカルボン酸二無水物(以下、単に「酸無水物」ということがある)成分から誘導される4価の基である酸無水物残基と、ジアミン化合物(以下、単に「ジアミン」ということがある)成分から誘導される2価の基であるジアミン残基とを有して構成され、これらの構成成分が連結したものを1つの繰り返し単位としてみた場合に、その繰り返し単位の重合物から構成される。酸無水物成分とジアミン成分との仕込み量(モル比)を調整することで構成を制御することが可能である。
【0015】
例えば、通常ポリアミド酸は、所定の酸無水物成分とジアミン成分とをほぼ等モルで有機溶剤中に溶解させ、通常0~100℃の範囲の温度で30分から24時間攪拌して重合反応させることで得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~30重量%の範囲内、好ましくは10~20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、γ‐プチロラクトン等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。
【0016】
ポリアミド酸及びポリイミドの合成において、酸無水物成分及びジアミン成分はそれぞれ、その1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することもできる。酸無水物成分及びジアミン成分の種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、例えば、熱伝導性、熱膨張性、接着性、ガラス転移温度、引き裂き伝播抵抗、端裂抵抗、引張伸度等の物性を制御することができる。
【0017】
また、本発明のポリアミド酸及びポリイミドは、末端封止剤を用いてもよい。末端封止剤としてはモノアミン類あるいはジカルボン酸類が好ましい。導入される末端封止剤の仕込み量としては、酸無水物成分1モルに対して0.0001モル以上0.1モル以下の範囲内が好ましく、特に0.001モル以上0.05モル以下の範囲内が好ましい。モノアミン類末端封止剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、4-メチルベンジルアミン、4-エチルベンジルアミン、4-ドデシルベンジルアミン、3-メチルベンジルアミン、アニリン、4-メチルアニリン等が推奨される。これらのうち、ベンジルアミン、アニリンが好適に使用できる。ジカルボン酸類末端封止剤としては、ジカルボン酸類が好ましく、その一部を閉環していてもよい。例えば、フタル酸、無水フタル酸、4-クロロフタル酸、テトラフルオロフタル酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等が推奨される。これらのうち、フタル酸、無水フタル酸が好適に使用できる。
【0018】
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80℃以上400℃以下の範囲内の温度条件で1時間乃至24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0019】
また、ポリアミド酸は、制限されないが、濃度や重量平均分子量Mwの調整により粘度が1,000~200,000cPの範囲とすることが好ましい。粘度が高い場合は、溶剤を加えて希釈すればよい。ポリアミド酸の重量平均分子量Mwは、例えば10,000以上500,000以下の範囲内が好ましく、50,000以上500,000以下の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が500,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
【0020】
(酸無水物成分)
ここで、本発明のポリアミド酸及びポリイミドに用いられる酸無水物成分としては、以下の一般式(1)で表される酸無水物を必須とする。
【化4】
【0021】
この式(1)で表される酸無水物は、芳香環が直接結合(単結合)で結ばれた剛直な構造を有し、ビフェニル構造を有することから、高耐熱性と高熱伝導性を付与することが可能となる。この酸無水物成分としては、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができるが、その限りではない。好ましくはBPDAである。
【0022】
本発明のポリアミド酸及びポリイミドにおいては、当該式(1)で表される酸無水物を、全酸無水物成分の合計100モル%に対して、50モル%以上含有するようにする。すなわち、この酸無水物から誘導される酸無水物残基が、合成されるポリアミド酸及びポリイミドの全酸無水物残基100モル%に対して、50モル%以上となるようにする。この式(1)の酸無水物成分(酸無水物残基)が50モル%未満であると、これを用いて合成されるポリイミドにおいて十分な耐熱性と熱伝導性が得られないおそれがある。好ましくは、75モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0023】
また、上記以外の酸無水物成分としては、ポリアミド酸及びポリイミドの製造に使用される公知のものを制限なく用いることができるが、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。また、脂肪族骨格を有するテトラカルボン酸の無水物を用いてもよく、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族鎖状テトラカルボン酸二無水物や、脂環式テトラカルボン酸の無水物を用いてもよく、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、フルオレニリデンビス無水フタル酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸ニ無水物、シクロペンタノンビススピロノルボルナンテトラカルボン酸二無水物などの脂環式テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(パラフェニレンジカルボニル)ジフタル酸無水物、4,4’-(メタフェニレンジカルボニル)ジフタル酸無水物、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、4,4’-オキシジフタル酸ニ無水物(ODPA)、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ジフェニルエーテル二無水物、ビス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ベンゼン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}、ビス(ジカルボキシフェノキシ)トリフルオロメチルベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、2,2-ビス{(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、3,3’’,4,4’’-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’’,3,3’’-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’’,4’’-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-4,5,10,11-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-5,6,11,12-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物、ペンタフルオロエチルピロメリット酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシビフェニル二無水物、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシビフェニル二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物、トリフルオロメチルベンゼン二無水物等が挙げられる。
【0024】
(ジアミン成分)
本発明のポリアミド酸及びポリイミドに用いられるジアミン成分としては、以下の一般式(2)で表されるジアミンを必須とする。
【化5】
[式(2)中、Rは独立に、ハロゲン原子であるか、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又は炭素数1~6の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基を示す。m、nはそれぞれ独立して置換数を示し、mは0~4の整数、nは0~4の整数を示す。なお、m=0又はn=0は、それぞれRを有さない(無置換、側鎖を有さない)ことを意味する。]
【0025】
この式(2)で表されるジアミンは、芳香環がアミド結合で結ばれた剛直な構造を有し、酸素原子(O)と水素原子(H)とによる分子間の相互作用(水素結合など)をもたらすことから、高耐熱性と高熱伝導性を付与することが可能となる。このジアミン成分としては、例えば、4、4’-ジアミノベンズアニリド(DABA)、4、4’-ジアミノ-2’-メトキシベンズアニリド(MABA)、3,5-ジアミノ-3’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5-ジアミノ-4’-トリフルオロメチルベンズアニリドなどを挙げることができる。高耐熱性と高熱伝導性のために、好ましくはDABAである。
【0026】
本発明のポリアミド酸及びポリイミドにおいては、当該式(2)で表されるジアミンを、全ジアミン成分の合計100モル%に対して、50モル%以上含有するようにする。すなわち、このジアミンから誘導されるジアミン残基が、合成されるポリアミド酸及びポリイミドの全ジアミン残基100モル%に対して、50モル%以上となるようにする。この式(2)のジアミン成分(ジアミン残基)が50モル%未満であると、これを用いて合成されるポリイミドにおいて十分な耐熱性と熱伝導性が得られないおそれがある。耐熱性及び熱伝導性のためには、好ましくは、75モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0027】
また、本発明のポリアミド酸及びポリイミドにおいては、上記式(2)のジアミン成分(ジアミン残基)に加えて、下記一般式(3)で表されるジアミン成分を用いることが好ましい。
【化6】
[式(3)中、Zは-O-を示す。Rは独立に、ハロゲン原子であるか、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~6のアルキル基若しくはアルコキシ基であるか、又は炭素数1~6の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基若しくはフェノキシ基を示す。n
1は置換数を示し、0~4の整数である。n
2は0~3の整数を示す。なお、n
1=0又はn
2=0は、それぞれRを有さない(無置換、側鎖を有さない)ことを意味する。]
【0028】
上記式(3)で表される芳香族ジアミン化合物は2つ以上の芳香環を有し、2価の連結基Zであるエーテル結合があることで、これを用いて合成されるポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して屈曲性を付与することができ、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与し、高靭性化を促すと考えられる。上記式(2)のジアミン成分(ジアミン残基)とともにこの式(3)のジアミン成分(ジアミン残基)を用いることにより、式(2)にかかる剛直な分子鎖と、式(3)にかかる柔軟な分子鎖との構造的な絡み合いの効果が生まれ、また、酸素原子(O)と水素原子(H)とによる分子間相互作用(水素結合など)の発生も強くなると推測されて、耐熱性・熱伝導性を比較的高く維持しながらも、靭性(引き裂き伝播抵抗、端裂抵抗)も向上することができ、これらの特性を両立できるようになるため好ましい。
【0029】
前記のような特性の両立の観点から、式(3)で表されるジアミン成分(ジアミン残基)は、全ジアミン成分(ジアミン残基)の合計100モル%に対して、10~50モル%で含有されることが好ましく、高靭性の付与のためには、より好ましくは30~50モル%、さらに好ましくは40~50モル%とすることがよい。耐熱性、熱伝導性、靭性などの特性のバランスを考慮して、上記式(2)のジアミン成分(ジアミン残基)とこの式(3)のジアミン成分(ジアミン残基)の含有量を適宜変更することができる。
【0030】
この式(3)で表されるジアミンとしては、例えば、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン又は1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
上記以外のジアミン成分としては、ポリアミド酸及びポリイミドの製造に使用される公知のものを制限なく用いることができるが、ポリアミド酸及びポリイミドの製造に使用される公知のものを制限なく用いることができるが、芳香族ジアミン化合物が好ましい。また、脂肪族骨格を有するジアミン化合物を用いてもよい。例えば、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)、ビス[4-(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,5,3',5'-テトラメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、3,3'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシベンジジン、4,4"-ジアミノ-p-ターフェニル、3,3"-ジアミノ-p-ターフェニル、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、4-(1H,1H,11H-エイコサフルオロウンデカノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H-パーフルオロ-1-ブタノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H-パーフルオロ-1-ヘプタノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H-パーフルオロ-1-オクタノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-ペンタフルオロフェノキシ-1,3-ジアミノベンゼン、4-(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(4-フルオロフェノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-ヘキサノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、4-(1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-ドデカノキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、(2,5)-ジアミノベンゾトリフルオライド、ジアミノテトラ(トリフルオロメチル)ベンゼン、ジアミノ(ペンタフルオロエチル)ベンゼン、2,5-ジアミノ(パーフルオロヘキシル)ベンゼン、2,5-ジアミノ(パーフルオロブチル)ベンゼン、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、オクタフルオロベンジジン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(アニリノ)オクタフルオロブタン、1,5-ビス(アニリノ)デカフルオロペンタン、1,7-ビス(アニリノ)テトラデカフルオロヘプタン、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3',5,5'-テトラキス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノ-p-テルフェニル、1,4-ビス(p-アミノフェニル)ベンゼン、p-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス{4-(3-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス{4-(2-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)-3.5-ジトリフルオロメチルフェニル}ヘキサフルオロプロパン、4,4'-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4'-ビス(3-アミノ-5-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2-ビス{4-(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、ビス{(トリフルオロメチル)アミノフェノキシ}ビフェニル、ビス〔{(トリフルオロメチル)アミノフェノキシ}フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、ビス{2-〔(アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロイソプロピル}ベンゼン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)オクタフルオロビフェニルから誘導される芳香族ジアミンなどが挙げられる。また、ダイマージアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。
【0032】
(その他の成分)
本発明のポリアミド酸及びポリイミドは、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、必要に応じて、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、有機ホスフィン酸の金属塩などのフィラーやその他の成分を含有してもよい。これらの成分は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
(ポリイミドの層の形成方法)
ポリイミドの層の形成方法としては、例えば、[1]支持基材(例えば、金属層)に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、イミド化して樹脂フィルムを製造する方法(以下、キャスト法)、[2]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、ポリアミド酸のゲルフィルムを支持基材から剥がし、イミド化して樹脂フィルムを製造する方法などで形成されたものが挙げられる。また、複数のポリイミドの層からなる場合、その製造方法の態様としては、例えば、[3]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥することを複数回繰り返した後、イミド化を行う方法(以下、逐次塗工法)、[4]支持基材に、多層押出により、同時にポリアミド酸の積層構造体を塗布・乾燥した後、イミド化を行う方法(以下、多層押出法)などにより形成されたものが挙げられる。
寸法安定性や、金属層との接着性などの制御の観点から、キャスト法・逐次塗工法によりポリイミドの層(ポリイミドフィルム、及びこれを用いた後述の絶縁樹脂層、金属張積層板)を形成することが好ましい。
【0034】
ポリアミド酸溶液(又はポリイミド溶液)を基材上に塗布する方法としては特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。多層のポリイミド層の形成に際しては、ポリアミド酸溶液(又はポリイミド溶液)を基材に塗布、乾燥する操作を繰り返す方法が好ましい。本発明における絶縁樹脂層(後述)は、単層の上記ポリイミドの層のみから形成されてもよく、複数のポリイミドの層から形成されてもよい。
【0035】
本発明のポリイミド(の層)は、前述のとおり、放熱性(熱伝導性)と柔軟性・靭性と耐熱性とに優れる。とくに、a)端裂抵抗と、b)厚み方向における熱伝導率(λz)を同時に満足することが好ましい。さらには、c)厚み方向における熱拡散率(α)、d)ガラス転移温度(Tg)、e)引き裂き伝播抵抗、f)熱膨張係数のうちの1又は2以上の特性も所定の範囲であることが好ましい。
【0036】
本発明のポリイミド(の層)は、a)20mm幅(JIS規格に準拠)で測定された端裂抵抗が.30N以上500N以下の範囲内であることが好ましい。より好ましい下限値は60N以上であり、さらに好ましい下限値は75N以上であり、さらにより好ましい下限値は100N以上である。他方、好ましい上限値については特に制限されない。このような範囲であることで、加工時・使用時の破れなどの不具合を防止することができる。
【0037】
本発明のポリイミド(の層)は、b)厚み方向における熱伝導率(λz)が、0.20W/m・K以上であることが好ましい。より好ましくは、0.22W/m・K以上であることがよい。熱伝導率λzが0.20W/m・Kに満たないと、樹脂単独で放熱用途への適用において、熱を十分に逃がせなく放熱効果が薄いため、目的を達することができないおそれがある。
【0038】
また、本発明のポリイミド(の層)は、c)厚み方向における熱拡散率(α)が、0.100m2/s以上であることが好ましい。より好ましくは、0.120以上であることがよい。熱拡散率(α)が0.100m2/sに満たないと、樹脂単独で放熱用途への適用において、熱を十分に逃がせなく放熱効果は薄いため、目的を達することができないおそれがある。
なお、前記熱伝導率(λz)と熱拡散率(α)は、ポリイミドの層の厚みには依存しない特性であることから、測定装置などの制約・都合などによって、測定する厚み条件を適宜変更・設定することができる。
【0039】
また、本発明のポリイミド(の層)は、d)ガラス転移温度(Tg)は250℃以上の耐熱性を有することが好ましい。より好ましくは270℃以上、さらに好ましくは3000℃以上である。
【0040】
また、本発明のポリイミド(の層)は、e)引き裂き伝播抵抗が1.5kN/m以上であることが好ましい。より好ましくは3.0kN/m以上、より好ましくは4.0kN/m以上がよい。上限値は特に限定されない。このような範囲であることで、加工時・使用時の破れなどの不具合を防止することができる。
【0041】
また、本発明のポリイミド(の層)は、f)熱膨張係数(CTE)が好ましくは50ppm/K以下、より好ましくは1ppm/K以上45ppm/K以下の範囲内であることがよい。
【0042】
また、本発明のポリイミド(の層)は、熱分解試験において、1%重量減少温度が(Td1)は450℃以上であることが好ましく、より好ましくは470℃以上、さらに好ましくは490℃以上が好ましい。このような範囲に制御することで、FPCの主要構成成分などに適用しても十分な耐熱性を有する。
【0043】
本発明のポリイミド(の層)は、絶縁樹脂層・樹脂フィルム全体としての厚さは、例えば2~100μmの範囲内であることが好ましく、4~50μmの範囲内がより好ましい。厚みが2μmに満たないと、金属張積層板の製造時の搬送工程で金属箔にシワが入るなどの不具合が生じやすくなる。反対に、厚みが100μmを超えると高い熱伝導性の発現や、靭性・柔軟性等の点で不利になる傾向となる。
【0044】
<金属張積層板>
(金属層)
金属層の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、銅、鉄又はニッケルの金属元素、または酸化インジウムスズ(ITO)が好ましく、銅(銅箔)であることがより好ましい。銅箔としては、電解銅箔及び圧延銅箔のいずれも使用することができる。なお、これら金属層の選定にあっては、金属層の導電性やポリイミド層の光透過性、ポリイミド層との接着性など使用目的で必要とされる特性を発現するように選択することになる。金属層の形状に特に制限はないが、用途に応じて適宜加工などが施されてよい。長尺状に形成されたロール状のものが好適に用いられる。
【0045】
金属層の厚みは特に限定されるものではないが、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは0.1~70μmの範囲内、さらに好ましくは1~50μmの範囲内がよい。放熱用途では、車載関連など大電流を通すことが多いため、大電流に耐えられるために厚めの金属層(例えば、銅箔)が好ましい。一方、金属層が厚すぎると、積層基板としてのフレキシブル性と加工性が低下となる傾向があり、一方、重量が増えてしまう傾向となる。
【0046】
(絶縁樹脂層)
本発明の金属張積層板は、単層又は複数層からなる絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の片側(片面)又は両側(両面)に積層された金属層とを備えており、絶縁樹脂層の少なくとも1層が上記のポリイミドの層によって構成されている。
【0047】
絶縁樹脂層が複数のポリイミドの層からなる場合は、金属層(後述)に直接積層するポリイミド層(P1)と金属層と直接積層しないポリイミド層(P2)との二層構造でもよい。下に例示する構成1~4のように特に制限はされないが、好ましくは三層であり、より好ましくは、第三のポリイミド層(P3)が(P1)/(P2)/(P3)の順に積層していることが好ましい。M1、M2は金属層を表し、M1とM2が同じであっても異なってもよい。金属層に直接積層するポリイミド層(P1)と第三のポリイミド層(P3)は同一組成であってもよい。例えば、複数のポリイミド層をキャスト法によって形成する場合では、キャスト面側から金属層に直接積層するポリイミド層(P1)及び導体層と直接積層しないポリイミド層(P2)がこの順序で積層された二層構造とすることでもよいし、キャスト面側から導体層に直接積層するポリイミド層(P1)及び導体層と直接積層しないポリイミド層(P2)、第三のポリイミド層(P3)がこの順序で積層された三層構造とすることでもよい。ここで言う「キャスト面」とはポリイミドの層を形成する際における、支持体側の面のことを示す。支持体は、本発明の金属張積層板の金属層(後述)であってもよいし、ガラス等でもよいし、ゲルフィルム等を形成する際の支持体であってもよい。なお、複数のポリイミド層においてキャスト面と反対側の面は「ラミネート面」と記述するが、特に記述が無い場合、ラミネート面に金属層が積層されていてもされていなくてもよい。
【0048】
構成1;M1/P1/P2
構成2;M1/P1/P2/P1(又はP3)
構成3;M1/P1/P2/P1(又はP3)/M2(又はM1)
構成4;M1/P1/P2/P1(又はP3)/P2/P1(又はP3)/M2(又はM1)
【0049】
ポリイミド層(P1)とポリイミド層(P3)を構成するポリイミドは熱可塑性ポリイミドとすることが好ましく、絶縁樹脂層としての接着性を向上させ、金属層との接着層としての適用が好適となる。
【0050】
絶縁樹脂層の好ましい実施形態は、熱可塑性のポリイミド層(P1)と、非熱可塑性ポリイミドから構成される非熱可塑性ポリイミド層(P2)とを有し、この非熱可塑性ポリイミド層(P2)の少なくとも一方に熱可塑性ポリイミド層となるポリイミド層(P1)を有するものがよい。すなわち、ポリイミド層(P1)は、非熱可塑性ポリイミド層の片面又は両面に設けるとよい。
【0051】
また非熱可塑性ポリイミド層は低熱膨張性のポリイミド層を構成し、熱可塑性ポリイミド層は高熱膨張性のポリイミド層を構成する。ここで、低熱膨張性のポリイミド層は、熱膨張係数(CTE)が好ましくは1ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内、より好ましくは3ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内のポリイミド層をいう。また、高熱膨張性のポリイミド層は、CTEが好ましくは35ppm/K以上、より好ましくは35ppm/K以上80ppm/K以下の範囲内、更に好ましくは35ppm/K以上70ppm/K以下の範囲内のポリイミド層をいう。ポリイミド層は、使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望のCTEを有するポリイミド層とすることができる。
【0052】
絶縁樹脂層全体の熱膨張係数(CTE)としては、10~30ppm/Kの範囲内であることが好ましい。このような範囲に制御することで、カール等の変形を抑制でき、また高い寸法安定性を担保できる。ここで、CTEは、絶縁樹脂層のMD方向及びTD方向の熱膨張係数の平均値である。
【0053】
ここで、非熱可塑性ポリイミドとは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明においては、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、350℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であるポリイミドをいう。また、熱可塑性ポリイミド(「TPI」ともいう。)とは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本実施の形態では、DMAを用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が1.0×108Pa未満であるポリイミドをいう。
【0054】
絶縁樹脂層のうち、金属層に接するポリイミド層(P1)の厚みをT1、主たるポリイミド層の厚みをT2とした際に、T1の厚みは1μm以上4μm以下の範囲内が好ましく、T2の厚みは4μm以上30μm以下の範囲内が好ましい。別の観点から、T1の厚みは、絶縁樹脂層の厚みに対して20%以下とすることが好ましい。ここで、「主たる」とは、絶縁樹脂層を構成する複数のポリイミド層において最も大きな厚みを有することを意味し、好ましくは、絶縁樹脂層の厚みに対して60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上の厚みを有することをいう。主たるポリイミド層は、非熱可塑性ポリイミドで構成することが好ましい。
【0055】
なお、絶縁樹脂層全体としても、前述のポリイミドの層の特性値を全て満足するものであることが好ましい。
【0056】
<金属張積層板の製造方法>
本発明の金属張積層板は、前述のとおり、支持基材としての金属層に対して、キャスト法又は逐次塗工法で、単層又は複数層のポリイミドの層からなる絶縁樹脂層を形成することが、寸法安定性などの観点から好適であるが、特に限定されない。例えば、本発明のポリイミドの層を含んで構成される絶縁樹脂層(樹脂フィルム)を用意し、これに金属をスパッタリングしてシード層を形成した後、例えばメッキによって金属層を形成することによって調製してもよい。
【0057】
また、本発明のポリイミドを含んで構成される絶縁樹脂層(樹脂フィルム)を用意し、これに金属箔を熱圧着などの方法でラミネートすることによって調製してもよい。
【0058】
それらの場合、樹脂フィルムと金属層の接着性を高めるために、樹脂フィルムの表面を例えばプラズマ処理などの改質処理を施してもよい。
【0059】
また、両面に金属層を有する金属張積層板を製造する場合は、例えば上記方法により得られた片面金属張積層板のポリイミドの層の上に、直接、あるいは必要に応じて絶縁樹脂層の透明性などの特性を阻害しない接着層を形成した後、金属層を加熱圧着等の手段で積層することにより得ることができる。金属層を加熱圧着の場合の熱プレス温度については、特に限定されるものではないが、使用される金属層に隣接するポリイミド層のガラス転移温度以上であることが望ましい。また、熱プレス圧力については、使用するプレス機器の種類にもよるが、1~500kg/m2の範囲であることが望ましい。
【0060】
(ピール強度)
本発明の金属張積層板における絶縁樹脂層と金属層との180°ピール強度は0.3kN/m以上であることが好ましく、0.5kN/mであることがより好ましい。
なお、本明細書において、物性・特性値の評価は実施例に記載した条件で測定したものであり、特に記載がないものは、室温(23℃)での測定値である。
【0061】
<回路基板>
本発明の金属張積層板は、主にFPCなどの回路基板材料として有用である。金属張積層板の金属層を常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって、本発明の回路基板を製造できる。すなわち、本発明の回路基板は、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている配線層と、を備えており、絶縁樹脂層の一部分又は全部が、上記のポリイミドの層(ポリイミドフィルム)。また、絶縁樹脂層と配線層との接着性を高めるために、絶縁樹脂層における配線層に接する層は、熱可塑性ポリイミドの層であることがよい。
【実施例0062】
以下、実施例に基づいて本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0063】
本実施例に用いた略号は以下の化合物を示す。
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
DAPE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
BAPP:2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン
m-TB:2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
DABA:4,4’-ジアミノベンズアニリド
MABA:4,4’-ジアミノ-2’-メトキシベンズアニリド
3,4’-DAPE:3,4’-ジアミノジフェニルエーテル
TPE-Q:1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
【0064】
また、実施例において評価した各特性については、下記評価方法に従った。
【0065】
[粘度の測定]
ポリアミド酸溶液の粘度は、恒温水槽付のコーンプレート式粘度計(トキメック社製)
にて、25℃で測定した。
【0066】
[重量平均分子量(Mw)]
ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製、商品名;HLC-8220GPC)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にはN,N-ジメチルアセトアミドを用いた。
【0067】
[厚み方向熱拡散率(α)、厚み方向熱伝導率(λz)]
ポリイミド樹脂フィルムを20mm×20mmのサイズに切り出し、レーザーフラッシュ法による厚み方向の熱拡散率α(NETZSCH社製、商品名;キセノンフラッシュアナライザーLFA447 Nanoflash装置)、示差走査熱量測定(DSC)による比熱、水中置換法による密度をそれぞれ測定し、これらの結果をもとに熱伝導率(W/m・K)を算出した。測定装置の都合上、この時の測定においては、80μm厚みのフィルムを使用した。
【0068】
[引き裂き伝播抵抗]
63.5mm×50mmのポリイミド樹脂フィルムを試験片とし、試験片に長さ12.7mmの切り込みを入れ、(株)東洋精機製の軽荷重引裂き試験機を用いて引裂き伝播抵抗を測定した。
【0069】
[端裂抵抗]
JIS C2151(2019)のB法に従い、幅20mm×長さ200mmのポリイミドフィルムを試験片として、東洋精機社製、商品名;ストログラフR1を用いて端裂抵抗を測定した。
【0070】
[引張弾性率、引張強度、引張伸度]
ポリイミドフィルム(10mm×15mm)の試験片を準備し、テンシロン万能試験機(オリエンテック株式会社製、RTA-250)を用い、引張速度10mm/minでIPC-TM-650, 2.4.19に準じて引張試験を行い、引張弾性率、引張強度、引張伸度を算出した。
【0071】
[熱膨張係数(CTE)]
ポリイミドフィルム(3mm×15mm)を、熱機械分析(TMA)装置にて5.0gの荷重を加えながら10℃/minの昇温速度で30℃から280℃まで昇温し、次いで、250℃から100℃までの降温し、降温時におけるポリイミドフィルムの伸び量(線膨張)から熱膨張係数を測定した。
【0072】
[熱分解温度(Td1)]
窒素雰囲気下で10~20mgの重さのポリイミドフィルムを、SEIKO社製の熱重量分析(TG)装置TG/DTA6200にて一定の速度で30℃から550℃まで昇温させたときの重量変化を測定し、200℃での重量をゼロとし、重量減少率が1%の時の温度を熱分解温度(Td1)とした。
【0073】
[ピール強度]
ピール強度を測定するために、得られた金属張積層板について金属層を25μmにメッキアップして積層体を調製後、1mmのパターンに回路加工した。テンションテスターを用い、積層体から得られた幅1mmの回路を有するサンプルのポリイミドフィルム側を両面テープによりアルミ板に固定し、銅箔を180°方向に50mm/minの速度で剥離して、ピール強度を求めた。
【0074】
合成例1~13
ポリアミド酸溶液A~Nを合成するため、窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコの中に、表1で示した固形分濃度となるように溶剤のDMAcを加え、表1に示したジアミン成分及び酸無水物成分(モル部)を添加し、室温で36時間攪拌し、重合反応を行い、ポリアミド酸の粘稠な溶液A~Nを調製した。
【0075】
[実施例1]
銅箔1(電解銅箔、福田金属箔粉工業社製、商品名;CF-T4MDS-HD-12、厚み;12μm、Rz=1.4μm)上に、合成例1で得たポリアミド酸溶液Aを硬化後の厚みが21μmとなるように塗布し、90~140℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。その後、130~360℃の温度範囲で、段階的に30分かけて昇温加熱して、銅箔1上にポリイミド層からなる絶縁樹脂層を積層した金属張積層板(CCL)1Aを作製した。金属張積層板1Aにおけるポリイミド層の特性を評価するために銅箔1をエッチング除去してフィルム1aを作製し、引き裂き伝播抵抗、端裂抵抗、ガラス転移温度(Tg)、CTE、Td1、引張弾性率、引張強度、引張伸度、ピール強度をそれぞれ評価した。
なお、熱拡散率(α)と熱伝導率(λz)の測定サンプルは、上記の手順において、硬化後の樹脂厚みが80μmになるように作製した以外は、同様とした。
【0076】
(実施例2~9、比較例1~4)
使用するポリアミド酸溶液の種類と厚みを変更し、実施例1と同様にして、ポリアミド酸溶液B、C、D、E、K、L、M又はNを用いた実施例2~9にかかる金属張積層板2B~9N及びフィルム2b~9n、並びにポリアミド酸溶液G、H、I又はJを用いた比較例1~4にかかる金属張積層板1G~4J及びフィルム1g~4jを得て、同様に評価した。
評価結果を表2~4に示す。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】