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特開2023-149824ハーネス保護カバー及び保護ハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149824
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ハーネス保護カバー及び保護ハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20231005BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02G3/04
H02G3/04 062
H01B7/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058600
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】樫原 愛
(72)【発明者】
【氏名】飯田 利之
【テーマコード(参考)】
5G309
5G357
【Fターム(参考)】
5G309AA09
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC11
5G357DD01
5G357DD05
5G357DD14
5G357DE10
(57)【要約】
【課題】しっかりとワイヤーハーネスを保持できるとともに、容易にワイヤーハーネスから取り外しできるハーネス保護カバー及び保護ハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】複数の電線である第一幹線2,第二幹線3,第一分岐線4,第二分岐線5を束ねたワイヤーハーネス1を巻き回すシート部材11で構成され、該シート部材11は、裏面11bに設けられ、表面11aに設けたループ片密生部15と当接して剥離可能に接着するフック片密生部13と、ワイヤーハーネス1の長手方向Xと直交する幅方向Yにシート部材11を分離するとともに、分離したシート部材11を再接続するスライドファスナ20とを備え、少なくともフック片密生部13は、長手方向Xの一端11c側から他端11d側に亘って設けられ、スライドファスナ20はフック片密生部13よりも幅方向Yの内側に設けられたことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を束ねたワイヤーハーネスを巻き回すシート部材で構成され、
前記シート部材は、
表面又は裏面の一方に設けられ、他方と当接して剥離可能に接着する接着部と、
前記ワイヤーハーネスの長手方向と直交する幅方向に前記シート部材を分離できるとともに、分離した前記シート部材を再接続できる分離接続体とを備え、
少なくとも前記接着部は、前記長手方向の一端側から他端側に亘って設けられ、
前記分離接続体は、前記接着部よりも前記幅方向の内側に設けられた
ハーネス保護カバー。
【請求項2】
前記接着部は、前記シート部材の裏面に設けられ、
前記分離接続体は、前記接着部と隣接する
請求項1に記載のハーネス保護カバー。
【請求項3】
前記シート部材の表面又は裏面の他方に、前記接着部と接着する被接着部が設けられ、
前記分離接続体は、前記被接着部と接着しない
請求項1又は請求項2に記載のハーネス保護カバー。
【請求項4】
前記分離接続体は、
前記長手方向に沿って一端から他端まで線状に並んだ一対の務歯と、
一対の前記務歯の一方と連結し、前記務歯に沿って移動して一対の前記務歯同士を噛み合わせるスライダとで構成された
請求項3に記載のハーネス保護カバー。
【請求項5】
一対の前記務歯同士を噛み合わせる前記スライダの噛み合わせ方向の先端において、前記幅方向に対して前記務歯を挟んで前記シート部材を係止する係止部が設けられた
請求項4に記載のハーネス保護カバー。
【請求項6】
前記スライダとして、
前記長手方向に沿って並んだ前記務歯の一端から他端に向けて移動して、一対の前記務歯同士を噛み合わせる第一スライダと、
前記長手方向に沿って並んだ前記務歯の他端から一端に向けて移動して、一対の前記務歯同士を噛み合わせる第二スライダとが備えられた
請求項4又は請求項5に記載のハーネス保護カバー。
【請求項7】
前記務歯に沿った前記スライダの移動を規制する移動規制部が設けられた
請求項4乃至請求項6のうちのいずれかに記載のハーネス保護カバー。
【請求項8】
前記分離接続体が、前記長手方向に沿って複数設けられた
請求項1乃至請求項7のうちのいずれかに記載のハーネス保護カバー。
【請求項9】
分離接続体が、樹脂で構成された
請求項1乃至請求項8のうちのいずれかに記載のハーネス保護カバー。
【請求項10】
前記接着部は、前記長手方向に沿って線状に設けられた
請求項1乃至請求項9のうちのいずれかに記載のハーネス保護カバー。
【請求項11】
複数の電線を束ねたワイヤーハーネスと、
請求項1乃至請求項10のうちのいずれかに記載のハーネス保護カバーとで構成され、
前記ワイヤーハーネスの少なくとも一部分を前記シート部材で巻き回した
保護ハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、複数の電線を束ねたワイヤーハーネスを巻き回して保護するハーネス保護カバー、及び、前記ワイヤーハーネスを前記ハーネス保護カバーで巻き回した保護ハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気制御をしている機械類には様々な機能が装備されているため、機械類を搭載する電気機器類には必然的にワイヤーハーネスが増加している。このようなワイヤーハーネスは、幹線から枝線が分岐しているため、運搬や配索の際に枝線が様々な方向に四散して、運搬や配索を阻害するといった不具合があった。
【0003】
このような不具合に対して、ワイヤーハーネスを巻き回すハーネス保護カバーが特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示されているハーネス保護カバーは、伸縮自在な弾性材のシート部材で構成され、シート部材の幅方向の一端縁部に帯状の粘着部を備えているため、シート部材を幅方向に引っ張りながらワイヤーハーネスを巻き回して、粘着部をシート部材に接着させることで、ワイヤーハーネスを巻き回した状態で固定できる。これにより、幹線に対して枝線が四散することを防止できるとされている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているハーネス保護カバーでは、ワイヤーハーネスの運搬後や配索後にハーネス保護カバーを取り外す際に、粘着部がワイヤーハーネスなどの他の箇所に接着することや、ハーネス保護カバーに再接着することがあり、取り外し作業が煩雑になるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-107614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上述の問題に鑑み、しっかりとワイヤーハーネスを保持できるとともに、容易にワイヤーハーネスから取り外しできるハーネス保護カバー及び保護ハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、複数の電線を束ねたワイヤーハーネスを巻き回すシート部材で構成され、前記シート部材は、表面又は裏面の一方に設けられ、他方と当接して剥離可能に接着する接着部と、前記ワイヤーハーネスの長手方向と直交する幅方向に前記シート部材を分離できるとともに、分離した前記シート部材を再接続できる分離接続体とを備え、少なくとも前記接着部は、前記長手方向の一端側から他端側に亘って設けられ、前記分離接続体は、前記接着部よりも前記幅方向の内側に設けられたハーネス保護カバーである。
【0008】
またこの発明は、複数の電線を束ねたワイヤーハーネスと、上述のハーネス保護カバーとで構成され、前記ワイヤーハーネスの少なくとも一部分を前記シート部材で巻き回した保護ハーネスである。
【0009】
前記裏面とは、巻き回したワイヤーハーネスと対向する面をさす。すなわち、ワイヤーハーネスを巻き回したシート部材において、外側に配置される面を表面とし、内側に配置される面を裏面とする。
【0010】
前記接着部とは、前記ワイヤーハーネスを巻き回して、前記シート部材の表面と裏面とを剥離可能に接着できればどのような構成でもよく、例えば、粘性を有するゲル剤などの粘着剤や、繰り返し接着できる接着部材、面ファスナなどを含む。
【0011】
前記分離接続体は、前記シート部材と一体又は別体である場合を含む。例えば、前記分離接続体として、前記シート部材の幅方向の一方側と他方側とを分離可能に係止固定するボタンやフックなどのような係止構造や、線ファスナなどを含む。また、前記分離接続体は、分離箇所におけるシート部材の表面にフック形状又はループ形状の少なくとも一方を有し、別体で構成された帯状体にフック形状又はループ形状の少なくとも他方が設けれ、帯状体を介してシート部材の前記幅方向に対する分離及び再接続できるように構成されている場合なども含む。
【0012】
この発明によると、ワイヤーハーネスを巻き回した状態で、シート部材の表面と裏面とを接着部を介して接着できるため、ワイヤーハーネスの外周にシート部材を巻き回してワイヤーハーネスを固定できる。また、ワイヤーハーネスの外周に巻き回した状態で、分離接続体によりシート部材を幅方向に分離させることができる。すなわち、接着部が他の箇所と接着することなく、シート部材を分離してワイヤーハーネスからハーネス保護カバーを取り外すことができる。
【0013】
また、ワイヤーハーネスから取り外したハーネス保護カバーにおいて、幅方向に分離したシート部材を分離接続体により再接続できるため、例えば、ワイヤーハーネスを取り外した状態で、シート部材を再接続するとともに、接着部を剥すことでシート状に戻すことができる。これにより、ハーネス保護カバーを再利用することができる。
【0014】
この発明の態様として、前記接着部は、前記シート部材の裏面に設けられ、前記分離接続体は、前記接着部と隣接してもよい。
この発明により、シート部材で巻き回すワイヤーハーネスの外径が小さい場合であっても、シート部材の重複箇所に分離接続体が覆われることを防止できるため、確実にシート部材を分離接続体で幅方向に分離することができる。したがって、ワイヤーハーネスを巻き回したハーネス保護カバーを容易かつ確実に取り外すことができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記シート部材の表面又は裏面の他方に、前記接着部と接着する被接着部が設けられ、前記分離接続体は、前記被接着部と接着しなくてもよい。
前記被接着部は、前記シート部材の表面又は裏面の他方における一面に設けられている場合や、一部分に設けられている場合を含む。
【0016】
前記被接着部は、前記接着部と対となって前記シート部材を接着できる構成であればどのような構成でもよく、例えば、接着部又は被接着部の一方がフック形状で形成され、他方がループ形状で形成された、いわゆる面ファスナや、ボタンとボタンホールなどの係止構造で構成されている場合を含む。
【0017】
この発明によると、接着部と被接着部は互いに対となって接着することから、幅方向に沿って分離させた分離接続体の一部が意図せずに被接着部と当接したとしても、分離接続体と被接着部とが接着することを防止できる。このため、ハーネス保護カバーの取り外し作業において、作業性をより向上させることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記分離接続体は、前記長手方向に沿って一端から他端まで線状に並んだ一対の務歯と、一対の前記務歯の一方と連結し、前記務歯に沿って移動して一対の前記務歯同士を噛み合わせるスライダとで構成されてもよい。
【0019】
この発明によると、務歯同士が互いに噛み合って接続されているため、シート部材を分離させる方向に意図しない外力が作用した場合であっても、ハーネス保護カバーが意図せずに分離することを防止できる。一方で、ハーネス保護カバーを幅方向に分離したい場合には、スライダを噛み合わせ方向と反対方向である開放方向に移動させるだけで、ハーネス保護カバーを容易に分離することができる。
【0020】
また、スライダが一対の務歯の一方と連結されていることから、分離した状態において、シート部材が複数の部品に分離されることがなく、さらにまた、スライダを一対の務歯に組み付けて、噛み合わせ方向に移動させるだけで、容易に分離接続体を再接続することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、一対の前記務歯同士を噛み合わせる前記スライダの噛み合わせ方向の先端において、前記幅方向に対して前記務歯を挟んで前記シート部材を係止する係止部が設けられてもよい。
【0022】
この発明により、シート部材における噛み合わせ方向の先端部分が幅方向の外側に向けて開くことにより、スライダが意図せずに噛み合わせ方向と反対方向である開放方向に向けて移動することを防止できる。これにより、意図せずシート部材が分離することを防止できる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記スライダとして、前記長手方向に沿って並んだ前記務歯の一端から他端に向けて移動して、一対の前記務歯同士を噛み合わせる第一スライダと、前記長手方向に沿って並んだ前記務歯の他端から一端に向けて移動して、一対の前記務歯同士を噛み合わせる第二スライダとが備えられてもよい。
【0024】
この発明により、ワイヤーハーネスからハーネス保護カバーを取り外す作業の効率を向上させることができる。
例えば、長手方向に沿って長いハーネス保護カバーであっても、長手方向の両端側から第一スライダ及び第二スライダを一端側及び他端側に向けて移動させ、ハーネス保護カバーを分離することができる。このように、長手方向の両端に向けて第一スライダ及び第二スライダをそれぞれ移動させることで、長手方向の両端側からハーネス保護カバーを分離できるため、取り外し作業の作業性を向上させることができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記務歯に沿った前記スライダの移動を規制する移動規制部が設けられてもよい。
前記移動規制部は、前記務歯同士を噛み合わせた状態において、スライダの移動を規制できればどのような構成でもよく、例えば、スライダを所定の位置に固定することで、直接スライダの移動を防止する構成や、スライダの移動経路を遮ることで、間接的にスライダの移動を規制する構成を含む。
【0026】
この発明により、務歯同士が噛み合った状態において、一対の務歯同士に沿ったスライダの移動を規制できる。このため、スライダの意図しない移動に基づいたシート部材の分離を防止できる。したがって、ワイヤーハーネスをシート部材で巻き回した状態でワイヤーハーネスを確実に保持できる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記分離接続体が、前記長手方向に沿って複数設けられてもよい。
複数設けられた前記分離接続体は、同じ構成で分離及び再接続できる場合のみならず、異なる構成で分離及び再接続できる場合を含む。
【0028】
この発明により、ワイヤーハーネスからハーネス保護カバーを取り外す場合に、複数ある分離接続体のうち作業者にとって近くにある分離接続体でシート部材を分離することができる。すなわち、分離接続体を探す手間を省けるため、取り外し作業を効率よく行うことができる。また、複数ある分離接続体同士が、同じ構成で分離及び再接続できる場合には、例えば、ワイヤーハーネスの外径に応じて、分離接続体の組み付けを変更し、シート部材の幅方向の長さを変更することができる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記分離接続体が、樹脂で構成されてもよい。
この発明により、ワイヤーハーネスと分離接続体とが干渉することにより、ワイヤーハーネスが損傷することを防止できる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記接着部は、前記長手方向に沿って線状に設けられてもよい。
この発明により、ワイヤーハーネスを巻き回した状態で、長手方向に沿って接着部でシート部材を接着できるため、接着部が意図せずに外れてハーネス保護カバーが開放されることを防止できる。
【発明の効果】
【0031】
この発明により、しっかりとワイヤーハーネスを保持できるとともに、容易にワイヤーハーネスから取り外しできるハーネス保護カバー及び保護ハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】ワイヤーハーネスの概略斜視図。
図2】保護ハーネスの概略斜視図。
図3】展開したハーネス保護カバーの概略平面図。
図4】幅方向に分離したハーネス保護カバーの概略平面図。
図5】面ファスナの説明図。
図6】スライドファスナを示す概略平面図。
図7】係止部を備えたハーネス保護カバーの説明図
図8】移動規制部を備えたハーネス保護カバーの説明図。
図9】第一スライダ、第二スライダを有するハーネス保護カバーを示す概略平面図。
図10】複数の分離接続体を備えたハーネス保護カバーを示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
図面はハーネス保護カバー10、及び、保護ハーネス100を示し、図1はワイヤーハーネス1の概略斜視図を示し、図2は保護ハーネス100の概略斜視図を示し、図3は展開したハーネス保護カバー10をシート部材11の表面側から見た状態の概略平面図を示す。
【0034】
また、図4は展開したシート部材11を幅方向Yに分離した状態の概略平面図を示し、図5は面ファスナ12の説明図を示し、図6はスライドファスナ20の説明図を示す。
ここで、図3中において、展開したハーネス保護カバー10におけるスライドファスナ20の延びる方向を長手方向Xとし、長手方向Xと直交する方向を幅方向Yとしている。
【0035】
図1に示すように、ワイヤーハーネス1は複数の電線である第一幹線2,第二幹線3,第一分岐線4,第二分岐線5を束ねて構成されている。
第一幹線2は内部の導体を絶縁被覆で囲繞した主幹線である。第二幹線3は内部の導体を絶縁被覆で囲繞した副幹線である。また、第一分岐線4は内部の導体を絶縁被覆で囲繞した分岐線であり、この第一分岐線4の先端には第一コネクタ6が接続されている。さらに、第二分岐線5は内部の導体を絶縁被覆で囲繞した分岐線であり、この第二分岐線5の先端にも第二コネクタ7が接続されている。
【0036】
なお、この実施形態では、ワイヤーハーネス1が合計4本の第一幹線2,第二幹線3,第一分岐線4,第二分岐線5を備えているが、電線の本数は4本未満でも、4本以上であってもよく、また第一分岐線4及び第二分岐線5の先端の第一コネクタ6及び第二コネクタ7に代えて、第一分岐線4及び第二分岐線5の先端に圧着端子から成る接続端子を備えていてもよい。
【0037】
ハーネス保護カバー10は、図1乃至図3に示すように、複数の電線である第一幹線2,第二幹線3,第一分岐線4,第二分岐線5を束ねたワイヤーハーネス1を巻き回すシート部材11で構成されている。
【0038】
また、保護ハーネス100は、図2に示すように、複数の電線である第一幹線2,第二幹線3,第一分岐線4,第二分岐線5を束ねたワイヤーハーネス1と、ハーネス保護カバー10とで構成され、ワイヤーハーネス1の長手方向Xの少なくとも一部分をハーネス保護カバー10で巻き回して構成されている。
【0039】
展開状態においてシート部材11は、図3に示すように、平面視において略矩形状をしており、柔軟性を有する薄い素材で構成されている。そのため、ハーネス保護カバー10の外周に巻き回すことで、ワイヤーハーネス1に沿った形状に変形することができる。このシート部材11は、ワイヤーハーネス1の外周に巻き回した状態で形状を固定する面ファスナ12が設けられている(図2参照)。
【0040】
面ファスナ12は、図3に示すように、シート部材11の裏面11bに設けられたフック片密生部13と、シート部材11の表面11aに設けられたループ片密生部15とを備えている。なお、図2乃至図4においては、ループ片密生部15を、多点を施すことにより概略的に図示している。
【0041】
接着部に対応するフック片密生部13は、図5に示すように、多数のフック片14を密生させたものであり、被接着部に対応するループ片密生部15は、多数のループ片16を密生させたものである。
フック片14は、図5(a)に示すように、可撓性を有する部材で構成されており、裏面11bから立設するとともに、先端が折り返された鉤状に形成されている。
【0042】
裏面11b(図2参照)において、フック片14を密生させたフック片密生部13は、図3に示すように、シート部材11の長手方向Xの一端11c側から他端11d側に亘って設けられている。
より詳しくは、フック片密生部13は、シート部材11の幅方向Yの一端11eと隣接する位置において、シート部材11の長手方向Xに沿って一端11c側から他端11d側にかけて連続する直線状に設けられている。
【0043】
なお、フック片密生部13をシート部材11の長手方向Xに沿って連続する直線状に設ける構成に代えて、当該フック片密生部13をシート部材11の長手方向Xに沿って不連続、すなわち、間欠的かつ、列状に並ぶように設ける構成を採用してもよい。
【0044】
ループ片16は、図5(b)に示すように、フック片14と同様に、可撓性を有する部材で構成されており、表面11aから一端が立設するとともに、他端が折り返されて表面11aに接近する略環状に形成されている。
【0045】
ループ片密生部15は、図3に示すように、シート部材11の幅方向Yの一端11eからシート部材11の幅方向Yの他端11f側に所定距離だけ離間した箇所と、長手方向Xの一端11cと、長手方向Xの他端11dと、幅方向Yの他端11fとで囲繞された広い範囲の全面に亘って設けられている。
【0046】
このように構成されたフック片密生部13とループ片密生部15とは、互いに当接することで、フック片14の先端部分がループ片16に係止するため、フック片密生部13とループ片密生部15とを係止することができる。
【0047】
また、フック片密生部13とループ片密生部15とが当接された状態において、表面11aと裏面11bとを離間させることで、フック片14が直線状に変形してループ片16から分離することができる。すなわち、フック片密生部13とループ片密生部15とは互いに当接することで、剥離可能に接着することができる。
【0048】
一方で、フック片密生部13は、裏面11bにおける、シート部材11の幅方向Yの一端11eと隣接する位置に、長手方向Xに沿って直線状に設けられていることから、フック片密生部13が設けられていない箇所が表面11aと当接したとしても、表面11aと裏面11bとは接着しない。
【0049】
フック片密生部13よりも幅方向Yの内側、詳しくは、フック片密生部13と、ループ片密生部15における幅方向Yの一端11e側の端部との間には、図3に示すように、分離接続体に対応するスライドファスナ20を設けている。
【0050】
スライドファスナ20は、長手方向Xと直交する幅方向Yにシート部材11を分離できるとともに(図4参照)、分離したシート部材11を再接続できるように構成されている(図3参照)。なお、スライドファスナ20は図2乃至図4においては図示の便宜上、概略的に示したが、具体的には図6に示すように構成されている。
【0051】
すなわち、図3図4及び図6に示すように、スライドファスナ20は、フック片密生部13に近接する側(以下、単に一方側と略記する)に設けられた務歯に対応する第一ファスナエレメント21と、ループ片密生部15における幅方向Yの一端11e側の端部に近い側(以下、単に他方側と略記する)に設けられた務歯に対応する第二ファスナエレメント22とを備えている。前述の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22は、シート部材11を幅方向Yに分離する分離位置に設けられている。
【0052】
一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22は、合成樹脂で構成され、シート部材11の長手方向Xに沿って一端11cから他端11dまで直線状に並んでいる。
スライドファスナ20は、図6に示すように、一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の一方(第一ファスナエレメント21)と連結され、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22に沿って移動して一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22同士を噛み合わせるスライダ23を備えている。
【0053】
スライダ23には、合成樹脂で構成された取付け部24を介して合成樹脂製の引手部25が取り付けられている。図4に示すように、第一ファスナエレメント21のシート部材11の他端11d側には箱体26が設けられ、第一ファスナエレメント21の一端11c側にはストッパ27が設けられている。
【0054】
また、第二ファスナエレメント22のシート部材11の他端11d側には、箱体26に対して着脱可能な蝶棒28が設けられ、第二ファスナエレメント22の一端11c側にはストッパ29が設けられている。
つまり、この実施形態のスライドファスナ20は、オープンファスナ構造に構成されている。
【0055】
一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22が接続されたスライドファスナ20を、図4に示すように分離させるには、一端11c側に位置するスライダ23を他端11d側に移動、つまり、開放方向に移動させることで、一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の噛合状態が解除される。そして、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22が解除された状態において、蝶棒28を箱体26から引き抜くことで、図4に示すように、シート部材11を分離することができる。
【0056】
逆に、スライドファスナ20により分離されたシート部材11を、図3に示すように接続するには、蝶棒28を箱体26に挿入した後に、他端11d側に位置するスライダ23を一端11c側に移動、つまり噛み合わせ方向に移動させる。これにより、一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22が噛み合って、図3に示すように、シート部材11を接続することができる。
【0057】
このように構成されたハーネス保護カバー10は、複数の電線である第一幹線2,第二幹線3,第一分岐線4,第二分岐線5を束ねたワイヤーハーネス1を巻き回すシート部材11で構成され、該シート部材11は、裏面11bに設けられ、表面11aに設けたループ片密生部15と当接して剥離可能に接着するフック片密生部13と、ワイヤーハーネス1の長手方向Xと直交する幅方向Yにシート部材11を分離するとともに、分離したシート部材11を再接続するスライドファスナ20とを備え、少なくともフック片密生部13は、長手方向Xの一端11c側から他端11d側に亘って設けられ、スライドファスナ20はフック片密生部13よりも幅方向Yの内側に設けられたものである。
そして、保護ハーネス100はワイヤーハーネス1をハーネス保護カバー10とで構成され、ワイヤーハーネス1の少なくとも一部分をハーネス保護カバー10で巻き回したものである。
【0058】
これにより、ワイヤーハーネス1を巻き回した状態で、シート部材11の表面11aと裏面11bとをフック片密生部13を介して接着でき、ワイヤーハーネス1の外周に巻き回してワイヤーハーネス1を固定できる。また、ワイヤーハーネス1の外周に巻き回した状態で、スライドファスナ20によりシート部材11を分離できる。すなわち、フック片密生部13が他の箇所と接着することなく、シート部材11を分離してワイヤーハーネス1からハーネス保護カバー10を取り外すことができる。
【0059】
また、ワイヤーハーネス1から取り外したハーネス保護カバー10において、幅方向Yに分離したシート部材11をスライドファスナ20により再接続でき、例えば、ワイヤーハーネス1を取り外した状態で、シート部材11を再接続するとともに、フック片密生部13を剥すとシート状になる。これにより、ハーネス保護カバー10を再利用することができる。
【0060】
また、図3に示すように、接着部としてのフック片密生部13は、シート部材11の裏面11bに設けられており、スライドファスナ20はフック片密生部13と隣接して設けられている。このため、シート部材11で巻き回すワイヤーハーネス1の外径が小さい場合であっても、シート部材11の重複箇所にスライドファスナ20が覆われることを防止でき、確実にシート部材11をスライドファスナ20で幅方向Yに分離できる。したがって、ワイヤーハーネス1を巻き回したハーネス保護カバー10を容易かつ確実に取り外すことができる。
【0061】
さらには、シート部材11の表面11aに、フック片密生部13と接着するループ片密生部15が設けられており、スライドファスナ20はフック片密生部13及びループ片密生部15と接着しないように構成されている。
【0062】
詳述すると、ループ片密生部15はフック片密生部13と対となって接着し、スライドファスナ20はフック片密生部13及びループ片密生部15と接着しないことから、幅方向Yに沿って分離させたスライドファスナ20の一部が意図せずにループ片密生部15と当接したとしても、スライドファスナ20とループ片密生部15とが接着することを防止でき、ハーネス保護カバー10の取り外し作業において、作業性をより向上させるように構成している。
【0063】
また、スライドファスナ20は、シート部材11の長手方向Xに沿って一端11cから他端11dまで直線状に並んだ一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22と、これら一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の一方(第一ファスナエレメント21)と連結され、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22に沿って移動し、一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22を噛み合わせるスライダ23とで構成されている。
【0064】
これにより、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22が互いに噛み合って接続されているため、ハーネス保護カバー10を分離させる幅方向Yに意図しない外力が作用した場合であっても、ハーネス保護カバー10が意図せずに分離することを防止できる。一方で、スライダ23を噛み合わせ方向と反対方向である開放方向に移動させるだけで、ハーネス保護カバー10を容易に分離するように構成している。
【0065】
また、スライダ23が第一ファスナエレメント21と連結されていることから、図4に示すように、シート部材11が分離した状態において、当該シート部材11が複数の部品に分離されることがなく、さらにまた、スライダ23を一対の第一ファスナエレメント21と第二ファスナエレメント22に組み付けて、噛み合わせ方向に移動させるだけで、容易にスライドファスナ20を再接続することができる。
【0066】
さらに、スライドファスナ20は合成樹脂で構成されているため、ワイヤーハーネス1とスライドファスナ20とが干渉することにより、ワイヤーハーネス1が損傷することを防止できる。
【0067】
さらにまた、図3に示すように、フック片密生部13は、シート部材11の長手方向Xに沿って直線状に設けられていることにより、ワイヤーハーネス1を巻き回した状態で、長手方向Xに沿ってフック片密生部13でシート部材11を接着でき、フック片密生部13が意図せずに外れてハーネス保護カバー10が開放されるのを防止できる。
【0068】
また、本実施形態におけるハーネス保護カバー10は、スライドファスナ20を長手方向Xに沿って移動させることができるが、意図せずにスライドファスナ20が開放方向に移動することを規制する構成を備えてもよい。以下、スライドファスナ20の意図しない移動を規制する構成を有するハーネス保護カバー10x及びハーネス保護カバー10yについて、図7及び図8に基づいて説明する。
【0069】
図7は展開した状態におけるハーネス保護カバー10xを説明する説明図であり、図7(a)は係止部30を備えたハーネス保護カバー10xの平面図を示し、図7(b)は図7(a)のA-A線に沿う要部拡大断面図を示す。
【0070】
同様に、図8は展開した状態におけるハーネス保護カバー10yを説明する説明図であり、図8(a)は移動規制部40を備えたハーネス保護カバー10yの平面図を示し、図8(b)は図8
(a)のB-B線に沿う要部拡大平面図を示す。
なお、図7及び図8に示す実施形態において、ハーネス保護カバー10と同様の構成については同じ符号を付してその説明は省略し、特徴的な構成について詳細に説明する。
【0071】
ハーネス保護カバー10xは、図7に示すように、スライドファスナ20の先端部分であるストッパ27及びストッパ29は、一端11cよりも他端11d側に配置されている。このハーネス保護カバー10xのストッパ27及びストッパ29よりも先端部分は、幅方向Yに分離している。
【0072】
また、ハーネス保護カバー10xは、一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22を噛み合わせるスライダ23の噛み合わせ方向の先端側において、より具体的には、ストッパ27及びストッパ29の先端において、幅方向Yに対して第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22を挟んでシート部材11を係止する係止部30が設けられている。
【0073】
この係止部30は、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の一端11e側に設けられ、一端11e側から第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の他端11f側に延びるフック31と、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の他端11f側に設けられ、フック31を着脱可能に係合するフック係合部32とを備えている。
【0074】
フック31は、長手方向Xの一端11c側から見て、幅方向Yの一端11e側が開放したU字形状に形成されており、フック係合部32は、幅方向Yの他端11f側から見て逆向きのU字状に形成されている。
【0075】
このように構成されたフック31とフック係合部32とは、図7(b)に示すように、互いに係合させることで、幅方向Yに対して第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22を挟んでシート部材11を係止するように構成している。
【0076】
このようにハーネス保護カバー10xは、一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22を噛み合わせるスライダ23の噛み合わせ方向の先端において、幅方向Yに対して第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22を挟んでシート部材11を係止する係止部30が設けられている。
【0077】
これにより、上述の効果に加え、シート部材11における噛み合わせ方向の先端部分が幅方向Yの外側に向けて開くことにより、スライダ23が意図せずに噛み合わせ方向と反対方向である開放方向に向けて移動するのを防止し、意図せずシート部材11が分離するのを防止できる。
【0078】
また、スライドファスナ20の移動を規制するのに例えば、ハーネス保護カバー10yとすることもできる。ハーネス保護カバー10yは、図9に示すように、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22に沿ったスライダ23の移動を規制する移動規制部40が設けられたものである。
【0079】
すなわち、箱体26とストッパ27,29との間、換言すれば第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の一端11cと他端11dとの間において、幅方向Yに対して第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22を挟んでスライダ23の移動を規制する移動規制部40が設けられている。
【0080】
この移動規制部40は、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の一端11e側に設けられ、当該一端11e側から第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の他端11f側に延びるフック41と、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の他端11f側に設けられ、フック41を着脱可能に係合するフック係合部42とを備えている。
【0081】
フック41は、長手方向Xの一端11c側から見て、幅方向Yの一端11e側が開放したU字形状に形成されており、フック係合部42は、幅方向Yの他端11f側から見て逆向きのU字状に形成されている。
【0082】
そして、フック41とフック係合部42は、図8(b)に示すように、互いに係合させることで、幅方向Yに対して第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22を挟んでスライダ23の移動を規制することができる。
【0083】
このようにハーネス保護カバー10yは、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22に沿ったスライダ23の移動を規制する移動規制部40が設けられているため、ハーネス保護カバー10の効果に加え、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22同士が噛み合った状態において、一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22同士に沿ったスライダ23の移動を規制して、スライダ23の意図しない移動に基づくシート部材11の分離を防止できる。
【0084】
また、ハーネス保護カバー10では、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22に対してスライダ23を一つとしているが、例えば、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22に対してスライダ23を二つ設けてもよい。以下、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22に対して二つのスライダ23(第一スライダ23A及び第二スライダ23B)を設けたハーネス保護カバー10zについて、図9に基づき簡単に説明する。
【0085】
図9は二つの第一スライダ23A及び第二スライダ23Bを有するハーネス保護カバー10の平面図を示す。なお、図9に示すハーネス保護カバー10zにおいて、ハーネス保護カバー10と同様の構成については同じ符号を付してその説明は省略し、特徴的な構成について詳細に説明する。
【0086】
ハーネス保護カバー10zは、図9に示すように、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の長手方向X両側に第一スライダ23A及び第二スライダ23Bをそれぞれ設けたものである。
【0087】
第一スライダ23Aは、長手方向Xに沿って並んだ第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の一端11c側から他端11d側に向けて移動して、一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22を噛み合わせる。
【0088】
第二スライダ23Bは、長手方向Xに沿って並んだ第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の他端11d側から一端11c側に向けて移動して、一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22を噛み合わせる。
【0089】
すなわち、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の長手方向X両側に設けた第一スライダ23A及び第二スライダ23Bを、互いに接近する方向に移動させることとで、一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22を噛合わせることができる。一方で、互いに遠ざかる方向に第一スライダ23A及び第二スライダ23Bを移動させることで、一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の噛合状態を解除することができる。
【0090】
このようにハーネス保護カバー10zは、スライダ23として、長手方向Xに沿って並んだ第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の一端から他端に向けて移動して、一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22同士を噛み合わせる第一スライダ23Aと、長手方向Xに沿って並んだ第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22の他端から一端に向けて移動して、一対の第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22同士を噛み合わせる第二スライダ23Bとが備えられている。これにより、ハーネス保護カバー10の効果に加えて、ワイヤーハーネス1からハーネス保護カバー10を取り外す作業の効率を向上させることができる。
【0091】
詳述すると、仮にハーネス保護カバー10zが長手方向Xに沿って長くても、長手方向Xの両端側から第一スライダ23A及び第二スライダ23Bを一端11c側及び他端11d側に向けて移動させ、ハーネス保護カバー10が分離される。このように、長手方向Xに沿って第一スライダ23A及び第二スライダ23Bをそれぞれ移動させることで、長手方向Xの両端側からハーネス保護カバー10を分離でき、作業性の向上を図ることができる。
【0092】
また、ハーネス保護カバー10において、一つのスライドファスナ20が長手方向Xに沿って直線状に設けられているが、例えば図10に示すように、複数(二つ)のスライドファスナ20(第一スライドファスナ20A及び第二スライドファスナ20B)を設けることもできる。以下、第一スライドファスナ20A及び第二スライドファスナ20Bを設けた実施形態について図10に基づき簡単に説明する。
【0093】
図10は第一スライドファスナ20A及び第二スライドファスナ20Bを備えたハーネス保護カバー10の平面図を示す。なお、図10に示す実施形態において、ハーネス保護カバー10と同様の構成については同じ符号を付してその説明は省略し、特徴的な構成について詳細に説明する。
【0094】
図10に示す実施形態においては、スライドファスナ20と同じ構成をした第一スライドファスナ20A及び第二スライドファスナ20Bが設けられている。詳しくは、これらの第一スライドファスナ20A及び第二スライドファスナ20Bは、長手方向Xに沿って一端11cから他端11dまで直線状に延びており、第一スライドファスナ20A及び第二スライドファスナ20Bは、幅方向Yに間隔を隔てて互いに平行に設けられている。
【0095】
このように、第一スライドファスナ20A及び第二スライドファスナ20Bが長手方向Xに沿って複数設けられていることにより、ワイヤーハーネス1からハーネス保護カバー10を取り外す場合に、第一スライドファスナ20A又は第二スライドファスナ20Bのうち、作業者にとって近くにある方を用いてシート部材11を分離することができる。
【0096】
すなわち、ハーネス保護カバー10のようにスライドファスナ20が一つの場合のように、周方向に配置されている一つのスライドファスナ20を探す手間を省くことができる。このため、取り外し作業を効率よく行うように構成している。
【0097】
また、第一スライドファスナ20A及び第二スライドファスナ20Bが同じ構成であり、互いに分離及び再接続できるため、ワイヤーハーネス1の外径に応じて、第一スライドファスナ20A及び第二スライドファスナ20Bの組み付けを変更し、幅方向Yの長さを変更することもできる。
【0098】
なお、上述の実施形態では、第一スライドファスナ20A又は第二スライドファスナ20Bを同じ構成としているが、異なる構成としてもよい。この場合であっても、第一スライドファスナ20A又は第二スライドファスナ20Bのうち、作業者にとって近くにある方を用いてシート部材11を分離することができるため、取り外し作業を効率よく行うように構成している。
【0099】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のワイヤーハーネスは、実施形態のワイヤーハーネス1に対応し、
以下同様に、
電線は、第一幹線2、第二幹線3、第一分岐線4、第二分岐線5に対応し、
ハーネス保護カバーは、ハーネス保護カバー10、ハーネス保護カバー10x、ハーネス保護カバー10y、ハーネス保護カバー10zに対応し、
シート部材は、シート部材11に対応し、
接着部は、フック片密生部13に対応し、
被接着部は、ループ片密生部15に対応し、
分離接続体は、スライドファスナ20、第一スライドファスナ20A及び第二スライドファスナ20Bに対応し、
務歯は、第一ファスナエレメント21及び第二ファスナエレメント22に対応し、
スライダは、スライダ23に対応し、
第一スライダは、第一スライダ23Aに対応し、
第二スライダは、第二スライダ23Bに対応し、
係止部は、係止部30に対応し、
移動規制部は、移動規制部40に対応し、
保護ハーネスは、保護ハーネス100に対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0100】
例えば、実施形態においては、接着部をフック片密生部13で形成し、被接着部をループ片密生部15で形成したが、この逆の構成、すなわち、接着部をループ片密生部15で形成し、被接着部をフック片密生部13で形成してもよい。
【0101】
また、接着部は、実施形態で開示した面ファスナ12の一方に代えて、粘性を有するゲル剤などの粘着剤や、繰り返し接着できる接着部材で形成してもよい。
また、接着部と被接着部とのいずれか一方を、シート状に加工したマグネットシートで構成し、いずれか他方を、偏平なシート状又は帯状に加工した鉄製部材で構成してもよい。
【0102】
さらに、分離接続体は、スライドファスナ20、第一スライドファスナ20A、第二スライドファスナ20Bに代えて、ボタンとボタンホール、又はフックとアイから成るホック、あるいは、フックとフック係止孔とから成る他の分離接続体で構成してもよい。
【0103】
さらにまた、実施形態においては被接着部としてのループ片密生部15を、シート部材11における大部分の範囲に形成しているが、ループ片密生部15はシート部材11の表面11a又は裏面11bにおける一部分に形成してもよい。
【0104】
また、図7で示した係止部30はスライドファスナ20の幅方向Y外側にフック31を設け、スライドファスナ20の幅方向Y内側にフック係合部32を設けたが、フック31を幅方向Yの内側に設け、フック係合部32を幅方向Yの外側に設けてもよい。
【0105】
さらに、係止部30はフック31とフック係合部32とで構成されているが、これに代えて、ボタンとボタンホール、あるいは、フック片と、シート部材11に直接開口形成されたフック係止孔とで構成されてもよい。
【0106】
さらにまた、図8で示した実施形態においては、スライドファスナ20の長手方向中間部に単一の移動規制部40を設けたが、この移動規制部40はスライドファスナ20の長手方向中央部において第一ファスナエレメント21と第二ファスナエレメント22とを跨ぐように隣接して複数設けてもよい。
【0107】
さらにまた、前述のシート部材11を合成樹脂で構成する場合には、スライドファスナ20をシート部材11と一体形成してもよく、前述のシート部材11を布で構成する場合には、合成樹脂製のスライドファスナ20を、帯状のファスナテープを介して布製のシート部材11に連結してもよい。
なお、スライドファスナ20は必ずしも樹脂で構成されている必要はなく、例えば金属で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 ワイヤーハーネス
2 第一幹線2
3 第二幹線3
4 第一分岐線4
5 第二分岐線5
10 ハーネス保護カバー
10x ハーネス保護カバー
10y ハーネス保護カバー
10z ハーネス保護カバー
11 シート部材
11a 表面
11b 裏面
13 フック片密生部
15 ループ片密生部
20 スライドファスナ
20A 第一スライドファスナ20A
20B 第二スライドファスナ20B
21 第一ファスナエレメント21
22 第二ファスナエレメント22
23 スライダ
23A 第一スライダ
23B 第二スライダ
30 係止部
40 移動規制部
100 保護ハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10