(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149897
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】分散液、組成物、封止部材、発光装置、照明器具、表示装置および分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/56 20100101AFI20231005BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20231005BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L33/56
C08L101/00
C08K3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058694
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】武田 怜
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智海
(72)【発明者】
【氏名】原田 健司
【テーマコード(参考)】
4J002
5F142
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002CD001
4J002CP031
4J002DE096
4J002DE146
4J002FB096
4J002FD206
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4J002HA08
5F142AA02
5F142BA32
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5F142DA12
5F142GA01
5F142GA11
5F142GA21
(57)【要約】
【課題】メチル系シリコーン樹脂を封止材料として用いた場合であっても、発光装置の明るさを向上させることができる分散液を提供する。
【解決手段】表面修飾材料により表面修飾された金属酸化物粒子と、疎水性溶媒と、を含む分散液であって、前記金属酸化物粒子は屈折率が1.70以上2.00以下であり、前記表面修飾材料はシラン化合物とシリコーン化合物とを含み、前記シラン化合物はメチル基含有シラン化合物を含み、前記分散液と、メチルフェニルシリコーンとを、金属酸化物粒子と表面修飾材料の合計質量と、メチルフェニルシリコーンとの質量比で7:93となるように混合し、1mm厚の硬化物とした場合に、前記硬化物の波長450nmの散乱分が17%以上38%以下であり、前記硬化物の波長450nmの散乱分を、前記硬化物の波長600nmの散乱分で除した値が1.25以上である、分散液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面修飾材料により表面修飾された金属酸化物粒子と、疎水性溶媒と、を含む分散液であって、
前記金属酸化物粒子は屈折率が1.70以上2.00以下であり、
前記表面修飾材料は、シラン化合物と、シリコーン化合物と、を含み、
前記シラン化合物は、メチル基含有シラン化合物を含み、
前記分散液と、メチルフェニルシリコーンとを、金属酸化物粒子と表面修飾材料の合計質量と、メチルフェニルシリコーンとの質量比で7:93となるように混合し、1mm厚の硬化物とした場合に、
前記硬化物の波長450nmの散乱分が17%以上38%以下であり、
前記硬化物の波長450nmの散乱分を、前記硬化物の波長600nmの散乱分で除した値が1.25以上である、分散液。
【請求項2】
前記シラン化合物が、さらに炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分散液と樹脂成分との混合物である、組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の組成物の硬化物である、封止部材。
【請求項5】
請求項4に記載の封止部材と、前記封止部材により封止された発光素子と、を備える発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光装置を備える、照明器具。
【請求項7】
請求項5に記載の発光装置を備える、表示装置。
【請求項8】
請求項2に記載の分散液の製造方法であって、
シラン化合物と金属酸化物粒子とを混合して混合液を得る工程Bと、
前記混合液中において前記金属酸化物粒子を分散し、前記金属酸化物粒子が分散した第1の分散液を得る工程Cと、
前記第1の分散液に疎水性溶媒を加えて、第2の分散液を得る工程Dと、
前記第2の分散液にシリコーン化合物を加えて、第3の分散液を得る工程Eと、を有し、
前記金属酸化物粒子は屈折率が1.70以上2.00以下であり、
前記シラン化合物が、メチル基含有シラン化合物と、炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物とを含み、
前記工程Bにおいて、前記混合液中における前記金属酸化物粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下、前記混合液中における前記シラン化合物と前記金属酸化物粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下であり、
前記工程Dは、前記第1の分散液を加熱した後に、前記疎水性溶媒を前記金属酸化物粒子が凝集しない速度で加える工程d1、前記第1の分散液を加熱しながら、前記疎水性溶媒を前記金属酸化物粒子が凝集しない速度で加える工程d2、または、前記疎水性溶媒を前記金属酸化物粒子が凝集しない速度で加えた後に、前記第1の分散液を加熱する工程d3のいずれかである、分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を封止するための分散液、組成物、封止部材、発光装置、照明器具、表示装置および分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型、長寿命化、低電圧駆動等の長所を有する光源として、発光ダイオード(LED)が広く用いられている。LEDパッケージ中のLEDチップは、一般に、酸素や水分といった外部環境に存在する劣化因子との接触を防止するために、樹脂を含む封止材料で封止されている。したがって、LEDチップにおいて発した光は、封止材料を透過して、外部に向かって放出される。そのため、LEDパッケージから放出される光束を増大させるためには、LEDチップにおいて放出された光を、蛍光体粒子により波長変換した上で、LEDパッケージの外部に、効率よく取り出すことが重要となる。
【0003】
LEDの高寿命化のために、封止材料に用いる封止用樹脂として、耐熱性の高いメチル系シリコーン樹脂の需要が高まっている。メチル系シリコーン樹脂は、従来、一般的に使用されていたフェニルシリコーン樹脂等と比較して、メチル基の含有量が大きく、疎水性の度合いが大きい。そのため、特許文献1に記載されているように、表面が疎水化された金属酸化物粒子であっても、メチル系シリコーン樹脂と混合した時に、金属酸化物粒子同士が凝集して、透明な組成物が得られない、という課題があった。このような課題は、封止材料中の金属酸化物粒子の含有量が大きくなるにつれて顕著になる。
【0004】
特許文献2では、高濃度の表面修飾材料で表面修飾することにより、耐熱性の高いメチル系シリコーン樹脂中でも金属酸化物粒子の凝集が抑制される発光素子を封止するための分散液等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/142992号
【特許文献2】国際公開第2020/203462号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メチル系シリコーン樹脂を用いた発光装置において、光の明るさのより一層の向上が求められている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、メチル系シリコーン樹脂を封止材料として用いた場合であっても、発光装置の明るさを向上させることができる分散液、組成物、該組成物を用いて形成される封止部材、該封止部材を有する発光装置、該発光装置を備えた照明器具および表示装置、並びに分散液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様は、表面修飾材料により表面修飾された金属酸化物粒子と、疎水性溶媒と、を含む分散液であって、前記金属酸化物粒子は屈折率が1.70以上2.00以下であり、前記表面修飾材料は、シラン化合物と、シリコーン化合物と、を含み、前記シラン化合物は、メチル基含有シラン化合物を含み、前記分散液と、メチルフェニルシリコーンとを、金属酸化物粒子と表面修飾材料の合計質量と、メチルフェニルシリコーンとの質量比で7:93となるように混合し、1mm厚の硬化物とした場合に、前記硬化物の波長450nmの散乱分が17%以上38%以下であり、前記硬化物の波長450nmの散乱分を、前記硬化物の波長600nmの散乱分で除した値が1.25以上である、分散液を提供する。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第二の態様は、上記分散液と樹脂成分との混合物である、組成物を提供する。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第三の態様は、上記組成物の硬化物である、封止部材を提供する。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第四の態様は、上記封止部材と、上記封止部材により封止された発光素子と、を備える発光装置を提供する。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第五の態様は、上記発光装置を備える、照明器具を提供する。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第六の態様は、上記発光装置を備える、表示装置を提供する。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第七の態様は、上記分散液の製造方法であって、シラン化合物と金属酸化物粒子とを混合して混合液を得る工程Bと、前記混合液中において前記金属酸化物粒子を分散し、前記金属酸化物粒子が分散した第1の分散液を得る工程Cと、前記第1の分散液に疎水性溶媒を加えて、第2の分散液を得る工程Dと、前記第2の分散液にシリコーン化合物を加えて、第3の分散液を得る工程Eと、を有し、前記金属酸化物粒子は屈折率が1.70以上2.00以下であり、前記シラン化合物が、メチル基含有シラン化合物と、炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物とを含み、前記工程Bにおいて、前記混合液中における前記金属酸化物粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下、前記混合液中における前記シラン化合物と前記金属酸化物粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下であり、前記工程Dは、前記第1の分散液を加熱した後に、前記疎水性溶媒を前記金属酸化物粒子が凝集しない速度で加える工程d1、前記第1の分散液を加熱しながら、前記疎水性溶媒を前記金属酸化物粒子が凝集しない速度で加える工程d2、または、前記疎水性溶媒を前記金属酸化物粒子が凝集しない速度で加えた後に、前記第1の分散液を加熱する工程d3のいずれかである、分散液の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発光装置の明るさを向上させることができる分散液、組成物、該組成物を用いて形成される封止部材、該封止部材を有する発光装置、該発光装置を備えた照明器具および表示装置、並びに、分散液の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発光装置の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る発光装置の他の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る発光装置の他の一例を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る発光装置の他の一例を示す模式図である。
【
図5】実施例1の硬化物の電界放出型透過電子顕微鏡像である。
【
図6】実施例1の硬化物の電界放出型透過電子顕微鏡像である。
【
図7】比較例1の硬化物の電界放出型透過電子顕微鏡像である。
【
図8】比較例1の硬化物の電界放出型透過電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の分散液、組成物、封止部材、発光装置、照明器具、表示装置、分散液の製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、量、数、種類、比率、構成、位置、順番、比率等について、省略、追加、置換、または変更が可能である。
【0018】
まず、本発明の詳細な説明に先立ち、本発明者等による本発明に至るまでの着想について説明する。
従来、LEDチップを用いた発光装置の明るさを向上させるためには、屈折率がより高い金属酸化物粒子を封止部材に含有させることが重要であると本発明者等は考えていた。すなわち、屈折率が高い金属酸化物粒子ほど、発光素子から放出される光をより散乱でき、また、封止部材の屈折率上昇に寄与できる。そのため、LED発光装置の明るさを向上させるためには、屈折率がより高い金属酸化物粒子を用いることが重要であると本発明者等は考えていた。
しかし、驚くべきことに、屈折率が約2.1の酸化ジルコニウム粒子を用いた場合よりも、屈折率が約1.8の酸化アルミニウム粒子を用いた場合の方が、LEDパッケージの明るさが向上することがあった。
【0019】
本現象が起こる仕組みを調べた結果、本発明者等は以下の知見を得た。
屈折率が2.01以上金属酸化物粒子であっても、封止部材中における金属酸化物粒子同士の凝集粒子径が大きいものが多いと、屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子を用いたLED発光装置の明るさよりも小さくなる場合がある。
一方、屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子を用いても、封止部材中における金属酸化物粒子同士の凝集粒子径が大きいものが少なければ、屈折率が2.01以上の金属酸化物粒子を用いたLED発光装置よりも明るくなる場合がある。
【0020】
この現象から以下が推測される。
LED発光装置においては、発光素子から放出された青色光はより多く散乱させて蛍光体粒子と接触させるべきである。しかし、蛍光体粒子と接触して長波長側に波長変換された後の光を散乱させすぎると、LED発光装置から放出される光の量が減り、結果としてLED発光装置の明るさが不充分となる。
この推測を基に試行錯誤した結果、LED発光装置の明るさを向上できる分散液は、蛍光体粒子を含まない硬化物の状態で、波長450nmの光は散乱しやすく、波長600nmの光は散乱しにくいことを見出した。すなわち、波長450nmと波長600nmの光の散乱のバランスが重要であることを見出した。
【0021】
封止部材中において、LEDチップから放出される青色光を散乱させるためには、封止部材中で金属酸化物粒子がある一定以上の大きさを有することが必要となる。しかし、金属酸化物粒子の屈折率が大きすぎると、蛍光体粒子により波長変換された光も散乱されやすくなる。その結果、屈折率が高い金属酸化物粒子は、LEDチップから放出される青色光の散乱効率がよいものの、蛍光体粒子により波長変換された後の光の透過を阻害しやすい。その結果、LEDチップから放出された光が、LED発光装置の外部に効率よく取り出すことが困難となる。
【0022】
一方、屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子を用いると、青色光の散乱効果は、屈折率が2.01以上の金属酸化物粒子には劣るが、波長変換された後の光の透過を阻害しにくい。その結果、LEDチップから放出された光が、LED発光装置の外部に効率よく取り出すことができる。
【0023】
以上の着想から本発明者等は、屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子を用いて、波長450nmと波長600nmにおいて所望の光特性を得ることができる本発明の分散液を完成するに至った。
【0024】
(分散液)
本実施形態の分散液は、表面修飾材料により表面修飾された金属酸化物粒子と、疎水性溶媒と、を含み、前記金属酸化物粒子は屈折率が1.70以上2.00以下であり、前記表面修飾材料は、シラン化合物と、シリコーン化合物と、を含み、前記シラン化合物は、メチル基含有シラン化合物を含み、前記分散液と、メチルフェニルシリコーンとを、金属酸化物粒子と表面修飾材料の合計質量と、メチルフェニルシリコーンとの質量比で7:93となるように混合し、1mm厚の硬化物とした場合に、前記硬化物の波長450nmの散乱分が17%以上38%以下であり、前記硬化物の波長450nmの散乱分を、前記硬化物の波長600nmの散乱分で除した値が1.25以上である。
本実施形態の分散液は、発光素子を封止するためのものである。
【0025】
上記シラン化合物は、メチル基含有シラン化合物の他に、炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物を含んでもよい。
シラン化合物が、上記炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物を含む場合、上記メチル基含有シラン化合物と上記炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物の質量比は99:1~35:65の範囲であることが好ましい。
【0026】
本実施形態において「散乱分」とは、積分透過率(%)の値から直線透過率(%)の値を引いた値を意味する。積分透過率とは、分光光度計で積分球を用いて測定した透過率を意味する。直線透過率とは、分光光度計で積分球を用いずに測定した透過率を意味する。
【0027】
上記分散液と、メチルフェニルシリコーンとを、金属酸化物粒子と表面修飾材料の合計質量と、メチルフェニルシリコーンとの質量比で7:93となるように混合し、1mm厚の硬化物とした場合に、前記硬化物の波長450nmの散乱分は17%以上38%以下であり、20%以上35%以下であることがより好ましい。上記硬化物の波長450nmの散乱分が17%以上であることにより、発光素子から放出された光を充分に散乱させることができる。そして、上記硬化物の波長450nmの散乱分が38%以下であることにより、波長450nmの光と波長600nmの光の散乱のバランスがよい封止部材を得ることができる。
【0028】
上記硬化物の波長450nmの散乱分を、上記硬化物の波長600nmの散乱分で除した値は1.25以上であり、1.27以上であることが好ましく、1.29以上であることがより好ましい。上記硬化物の波長450nmの散乱分を、上記硬化物の波長600nmの散乱分で除した値の上限値は特に限定されず、2.00以下であってもよく、1.80以下であってもよく、1.60以下であってもよい。
上記硬化物の波長450nmの散乱分を、上記硬化物の波長600nmの散乱分で除した値が1.25以上であることにより、低波長側の光は散乱させる一方で、高波長側の光の散乱は抑制されるので、発光装置の光の明るさを向上させることができる。
【0029】
上記硬化物の波長600nmにおける散乱分は、13%以上29%以下であることが好ましく、14%以上28%以下であることが好ましい。上記硬化物の波長600nmmにおける散乱分が上記範囲であることにより、上記硬化物の波長450nmにおける散乱分を、上記硬化物の波長600nmの散乱分で除した値を1.25以上に制御することが容易となる。
【0030】
本実施形態において、「金属酸化物粒子と表面修飾材料の合計質量と、メチルフェニルシリコーンとの質量比で7:93となるように混合し、1mm厚の硬化物とした場合」とは、金属酸化物粒子と、表面修飾材料と、メチルフェニルシリコーンと、前記メチルフェニルシリコーンを硬化させるために必要な硬化剤のみを用いて、1mm厚の硬化物を形成することを意味する。すなわち、蛍光体粒子等、一般的に封止部材に含まれる材料は上記硬化物に含まないことを意味する。
蛍光体粒子等は、硬化物の光特性に影響を及ぼすため、金属酸化物粒子の散乱特性の測定が阻害される。そのため、上記硬化物は、金属酸化物粒子と、表面修飾材料と、メチルフェニルシリコーンの他は、メチルフェニルシリコーンを硬化させるために必要な材料のみから形成される。金属酸化物粒子の散乱特性を阻害しない材料であれば、上記硬化物に含まれていてもよい。
上記1mm厚の硬化物を形成する場合に、メチルフェニルシリコーンを用いる理由は、従来のフェニル系シリコーンと比較して、硬化物中で過剰に凝集した粒子が発生しやすく、所望の散乱特性を得るのが困難だからである。耐熱性に優れるメチルフェニルシリコーンを用いた硬化物で、所望の散乱特性が得られる分散液であれば、樹脂成分の種類によらず、発光装置の明るさを向上することができる。
【0031】
本実施形態の分散液は、後述する製造方法により、屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子を、メチル基含有シラン化合物とシリコーン化合物を含む表面修飾材料で緻密に表面修飾した金属酸化物粒子(以下、「表面修飾金属酸化物粒子」と略記する場合がある。)を含んでいる。本実施形態の分散液は、本実施形態の表面修飾金属酸化物粒子を、封止部材中で波長450nmの光を一定以上散乱する一方で、波長600nmの光の散乱は抑制できる程度の大きさに制御して分散させることができる。そのため、本実施形態の分散液を用いれば、発光装置の明るさを向上することができる。
【0032】
本実施形態の組成物では、後述する製造方法で得られた表面修飾金属酸化物粒子を用いるため、封止部材中における表面修飾金属酸化物粒子の凝集状態を所望の大きさに制御できると考えられる。すなわち、メチル基含有シラン化合物に金属酸化物粒子を直接分散させることによって、樹脂成分がメチル系シリコーン樹脂であっても、均一に混合することができるようになった。本実施形態における表面修飾金属酸化物粒子は、従来の表面修飾金属酸化物粒子より、シラン化合物が金属酸化物粒子に多く付着し、かつ、緻密な被覆がなされていると推測される。
【0033】
なお、金属酸化物粒子の表面がどのような状態になっているために、上記硬化物の波長450nmの散乱分と上記硬化物の波長600nmの散乱分を所望の値にできているかは不明である。そのため、本実施形態の分散液の特徴を、メチル基含有シラン化合物およびシリコーン化合物によって修飾された金属酸化物粒子の表面の状態により、直接特定することは難しい。
さらに、本実施形態における表面修飾金属酸化物粒子を、所望の散乱特性が得られるように、硬化物中に分散できるようにするための表面の状態を、文言により一概に特定することは、簡単ではない。表面修飾金属酸化物粒子を封止部材中に所望の散乱特性が得られるように分散できるということは、表面修飾材料の構造、表面修飾材料の重合度、金属酸化物粒子の特徴、封止樹脂の特徴等、多数の要因の複雑な絡み合いによって、発現していると推察されるからである。
【0034】
しかしながら、本発明によって、表面修飾金属酸化物粒子の分散具合を、上記硬化物の波長450nmの散乱分と上記硬化物の波長600nmの散乱分で評価して調整することにより、発光装置の明るさを向上できる封止部材を容易に提供することが可能となった。
本発明では、青色LEDの影響を考慮して、上記硬化物の波長450nmの散乱特性と上記硬化物の波長600nmの散乱特性を制御したが、発光素子から放出される色が青色以外である場合は、その放出される色の波長と、波長600nmの散乱特性が所望の範囲となるように、分散液中における表面修飾金属酸化物粒子の分散具合を制御すればよい。
そして、分散液中の表面修飾金属酸化物粒子の分散具合だけで上記硬化物の波長450nmの散乱特性と上記硬化物の波長600nmの散乱特性を制御することが困難であるときは、金属酸化物粒子の屈折率を調整して、上記硬化物の波長450nmの散乱特性と上記硬化物の波長600nmの散乱特性を所望の範囲に制御すればよい。
屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子を用いれば、封止部材中において表面修飾金属酸化物粒子の粒子径が多少大きくなったとしても、屈折率が2.01以上の金属酸化物粒子よりも光の散乱効果が小さい。そのため、屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子を、封止部材中に凝集しすぎない程度に分散させることにより、波長450nmの光と波長600nmの光の散乱バランスに優れる封止部材を得ることができる。そして、このような分散液を用いて作製した封止部材を備えた発光装置は光の明るさが向上する。
【0035】
発光素子封止用の樹脂成分の種類が変わるたびに、金属酸化物粒子、表面修飾材料の種類、これらの含有量、分散条件を調整するのは煩雑である。しかし、本発明によれば、上記硬化物の波長450nmの散乱特性と上記硬化物の波長600nmの散乱特性が所望の範囲となるように分散液中における表面修飾金属酸化物粒子の分散状態を制御すればLED発光装置の明るさを向上できることが判明した。
【0036】
以下、本実施形態に含まれる各成分について説明する。
(金属酸化物粒子)
金属酸化物粒子は、後述する封止部材中において、発光素子から放出される光を散乱させる。また、金属酸化物粒子は、その種類によっては、封止部材の屈折率を向上させる。これらにより、金属酸化物粒子は、発光装置において光の明るさの向上に寄与する。
【0037】
上記金属酸化物粒子は、屈折率が1.70以上2.00以下であり、1.80以上1.98以下であることがより好ましい。本実施形態における金属酸化物粒子としては、例えば、酸化アルミニウム粒子、酸化イットリウム粒子、酸化ハフニウム粒子を用いることができる。分散液作製時に分散具合の制御が容易な点で、酸化アルミニウム粒子が好ましい。
【0038】
なお、金属酸化物粒子は、分散液中において一次粒子として分散していてもよいし、一次粒子が凝集した二次粒子として分散していてもよい。通常、金属酸化物粒子は、二次粒子として分散している。
【0039】
本実施形態の分散液中において、上記金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、封止部材中における分散粒子径(凝集粒子径)が60nm以上1000nm以下となる値であれば、特に限定されない。上記金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、例えば、30nm以上1000nm以下であってもよく、50nm以上800nm以下であってもよく、60nm以上700nm以下であってもよい。
金属酸化物粒子、表面修飾材料、樹脂成分、蛍光体粒子の組み合わせや、組成物の硬化条件により、硬化物中での金属酸化物粒子の凝集状態は変わるため、上記1mm厚の硬化物における波長450nmの散乱特性と波長600nmの散乱特性を確認しながら、分散液中における金属酸化物粒子の平均分散粒子径を調整すればよい。
金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、例えば、粒度分布装置を用いて測定することができる。
【0040】
なお、金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、金属酸化物粒子が一次粒子または二次粒子のいずれの状態で分散しているかに関わらず、分散している状態の金属酸化物粒子の径に基づいて測定、算出される。また、本実施形態において、金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、表面修飾材料が付着した金属酸化物粒子の平均分散粒子径として測定されてもよい。分散液中には、表面修飾材料が付着した金属酸化物粒子と、表面修飾材料が付着していない金属酸化物粒子とが存在し得る。このため、通常、金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、これらの混合状態における値として測定される。
【0041】
上記金属酸化物粒子の平均一次粒子径は任意に選択できるが、例えば、3nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上170nm以下であることがより好ましく、10nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、必要に応じて、5nm以上20nm以下であってもよく、5nm以上25nm以下であってもよく、50nm以上120nm以下や、50nm以上150nm以下であってもよい。金属酸化物粒子の平均一次粒子径が上記範囲であることにより、上記硬化物の波長450nmの散乱特性と上記硬化物の波長600nmの散乱特性の制御が容易となるため好ましい。
【0042】
金属酸化物粒子の平均一次粒子径の測定は、任意に選択される方法で測定できる。例えば、透過型電子顕微鏡での観察により行うことができる。例えば、透過型電子顕微鏡により、透過型電子顕微鏡画像中の金属酸化物粒子を所定数、例えば、100個を選び出す。そして、これらの金属酸化物粒子各々の最長の直線分(最大長径)を測定し、これらの測定値を算術平均して、金属酸化物粒子の平均一次粒子径を求める。
【0043】
ここで、金属酸化物粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している金属酸化物粒子の粒子(一次粒子)の最大長径を所定数測定し、平均一次粒子径とする。
【0044】
分散液中の金属酸化物粒子の含有量は、後述する樹脂成分と混合できれば、特に限定されない。分散液中の金属酸化物粒子の含有量は任意に選択できるが、例えば、1質量%以上70質量%以下であることが好ましく、5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。必要に応じて、20質量%以上40質量%以下や、25質量%以上35質量%以下であってもよい。
【0045】
このような量により、分散液の粘度が過剰に大きくなることを抑制できる。このため、後述する樹脂成分との混合が容易になる。また、樹脂成分と混合後に溶媒(分散媒)量が過剰となることを抑制でき、溶媒の除去が容易となる。
【0046】
以上説明した金属酸化物粒子の表面には、以下に説明する表面修飾材料が付着している。この付着により、金属酸化物粒子を樹脂成分に所望の粒子径で分散させることができる。
【0047】
(表面修飾材料)
本実施形態の分散液は、表面修飾材料として、シラン化合物とシリコーン化合物を含み、シラン化合物はメチル基含有シラン化合物を含む。本実施形態の表面修飾材料は、シラン化合物とシリコーン化合物のみを用いてもよい。
上記表面修飾材料は、本実施形態の分散液中において、少なくともその一部が金属酸化物粒子の表面に付着して、前記表面を修飾することにより、金属酸化物粒子の凝集を防止する。さらに、上記付着によって、樹脂成分との相溶性を向上させる。
【0048】
ここで、表面修飾材料が金属酸化物粒子に「付着する」とは、表面修飾材料が金属酸化物粒子に対し、互いの間の相互作用や反応により、接触または結合することをいう。接触としては、例えば、物理吸着が挙げられる。また、結合としては、例えば、イオン結合、水素結合、共有結合等が挙げられる。
本実施形態において、金属酸化物粒子は、少なくともシラン化合物およびシリコーン化合物により表面修飾されていてもよい。
【0049】
シラン化合物は、金属酸化物粒子の表面付近に付着しやすい。一方、シリコーン化合物は、比較的大きな分子量を有し、主に分散媒や樹脂成分との親和性の向上に寄与する。このようなシラン化合物を用いることにより、金属酸化物粒子の樹脂成分中における分散安定性が向上する。
シラン化合物とシリコーン化合物とを併用することにより、金属酸化物粒子の樹脂成分における分散安定性がより向上するため好ましい。
本発明の目的を阻害しなければ、表面修飾材料としてシラン化合物およびシリコーン化合物以外の成分を含んでもよい。このような成分としては、例えば、炭素-炭素不飽和結合含有脂肪酸、具体的には、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0050】
(シラン化合物)
本実施形態におけるシラン化合物は、メチル基含有シラン化合物を含む。メチル基含有シラン化合物を後述する製造方法で上記金属酸化物粒子に表面修飾することにより、メチル系シリコーン樹脂であっても、封止部材中における金属酸化物粒子同士の過剰な凝集を抑制することができる。
粘度が低く、後述する分散工程における金属酸化物粒子の分散が容易となる観点から、メチル基含有シラン化合物は、好ましくは、さらにアルコキシ基を含む。
このようなメチル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物中のアルコキシ基の数は1以上3以下であることが好ましく、アルコキシ基の数は3であることがより好ましい。必要に応じて、アルコキシ基の数は1や2であってもよい。アルコキシ基の炭素数は任意に選択できるが、1以上5以下であることが好ましい。前記炭素数は、1以上3以下や、2以上4以下であってもよい。
【0051】
このようなメチル基含有シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジエトキシモノメチルシラン、モノエトキシジメチルシラン、ジメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン等が挙げられる。上記メチル基含有シラン化合物は、上記化合物からなる群から選択される少なくとも1種を好ましく含むことができる。金属酸化物粒子表面に付着しやすい点において、メチルトリメトキシシランとメチルトリエトキシシランを用いることが好ましい。上記表面修飾金属酸化物粒子の分散安定性向上の点において、メチルトリエトキシシランを用いることが好ましい。
【0052】
シラン化合物は、メチル基含有シラン化合物と炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物を用いてもよい。
金属酸化物粒子の表面を緻密に処理する観点においては、メチル基含有シラン化合物のみを用いるのが好ましい。しかし、封止部材中において表面修飾金属酸化物粒子が過剰に凝集しているようであれば、樹脂成分との相溶性を高めるために、メチル基含有シラン化合物と炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物を併用するのが好ましい。
【0053】
粘度が低く、後述する分散工程における金属酸化物粒子の分散が容易となる観点から、炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物は、好ましくは、さらにアルコキシ基を含む。
上記炭化水素基およびアルコキシ基を含むシラン化合物中のアルコキシ基の数は1以上3以下であることが好ましく、アルコキシ基の数は3であることがより好ましい。必要に応じて、アルコキシ基の数は1や2であってもよい。アルコキシ基の炭素数は任意に選択できるが、1以上5以下であることが好ましい。前記アルコキシ基の炭素数は、1以上3以下や、2以上4以下であってもよい。
【0054】
炭素数が2以上5以下の炭化水素基としては、樹脂成分と相溶しやすいものであれば特に限定されない。金属酸化物粒子表面への表面修飾のしやすさを考慮すれば、炭素数は2以上4以下であることがより好ましい。
炭素数が2以上5以下の炭化水素基としては、鎖式の脂肪族炭化水素基あってもよく、環式の脂肪族炭化水素基であってもよい。
【0055】
炭素数が2以上5以下の炭化水素基としては、アルキル基であってもよく、アルケニル基であってもよく、アルキニル基であってもよい。
アルキル基としては、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基を用いることができる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等を用いることができる。アルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等を用いることができる。
【0056】
このような炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物としては、例えば、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジエチルクロロシラン、エチルジクロロシラン等が挙げられる。これらの炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、アルコキシ基、特にメトキシ基を有するシラン化合物は、金属酸化物粒子に付着しやすいため好ましい。これらの中でも、エトキシ基を有するシラン化合物は、表面修飾金属酸化物粒子の分散安定性向上の点で好ましい。
【0057】
シラン化合物として、上記メチル基含有シラン化合物と、上記炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物を用いる場合は、上記メチル基含有シラン化合物と、上記炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物とは、質量比で99:1~35:65の範囲であることが好ましい。メチル基含有シラン化合物と炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物との質量比が上記範囲であることにより、金属酸化物粒子は緻密に表面修飾され、メチル系シリコーン樹脂と混合した場合であっても、表面修飾金属酸化物粒子の過剰な凝集が抑制される。
【0058】
分散液中におけるシラン化合物の含有量は任意に選択でき、特に限定されないが、金属酸化物粒子100質量部に対して、例えば、50質量部以上500質量部以下であることが好ましく、70質量部以上400質量部以下であることがより好ましく、90質量部以上300質量部以下であることがさらに好ましい。必要に応じて、分散液中におけるシラン化合物の含有量は、80質量部以上350質量部以下、150質量部以上250質量部以下であってもよい。これにより、金属酸化物粒子の表面に、シラン化合物を介して充分な量のシリコーン化合物を付着させることができる。そのため、金属酸化物粒子の分散安定性を向上させるとともに、樹脂成分がメチル系シリコーン樹脂であっても、金属酸化物粒子の樹脂成分への分散性を向上させることができる。
【0059】
(シリコーン化合物)
シリコーン化合物としては任意に選択でき、例えば、アルコキシ基含有フェニルシリコーン、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルハイドロジェンシリコーン、ジフェニルハイドロジェンシリコーン、アルコキシ両末端フェニルシリコーン、アルコキシ両末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有ジメチルシリコーン、アルコキシ片末端トリメチル片末端(メチル基片末端)ジメチルシリコーンおよびアルコキシ基含有フェニルシリコーン等が挙げられる。これらのシリコーン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリコーン化合物は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、レジン(ポリマー)であってもよい。表面修飾が容易であることより、モノマーかオリゴマーを用いることが好ましい。
【0060】
上述した中でも、反応のし易さと疎水性の高さの観点から、シリコーン化合物は、好ましくはアルコキシ基含有フェニルシリコーン、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルコキシ両末端フェニルシリコーン、アルコキシ両末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有ジメチルシリコーン、アルコキシ片末端トリメチル片末端(メチル基片末端)ジメチルシリコーンおよびアルコキシ基含有フェニルシリコーンが挙げられる。これら化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。より好ましくは、シリコーン化合物は、メトキシ基含有フェニルシリコーン、ジメチルシリコーン、メトキシ基含有ジメチルシリコーンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0061】
分散液中におけるシリコーン化合物の含有量は任意に選択でき、特に限定されない。例えば、金属酸化物粒子100質量部に対して、例えば、50質量部以上500質量部以下であることが好ましく、80質量部以上400質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上300質量部以下であることがさらに好ましい。必要に応じて、分散液中におけるシリコーン化合物の含有量は、50質量部以上200質量部以下、50質量部以上150質量部以下であってもよい。これにより、金属酸化物粒子の表面に、充分な量のシリコーン化合物を付着させることができ、金属酸化物粒子の分散安定性を向上させるとともに、樹脂成分への分散性を向上させることができる。さらに、遊離したシリコーン化合物の量を減らすことができ、樹脂成分中における金属酸化物粒子の不本意な凝集を抑制することができる。
【0062】
(シラン化合物とシリコーン化合物の合計の含有量)
シラン化合物とシリコーン化合物の合計の含有量は、特に限定されず、任意に選択できる。シラン化合物とシリコーン化合物の合計の含有量は、金属酸化物粒子100質量部に対して、例えば、100質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、150質量部以上800質量部以下であることがより好ましく、190質量部以上600質量部以下であることがさらに好ましい。シラン化合物とシリコーン化合物の合計の含有量は、200質量部以上900質量部以下や、250質量部以上850質量部以下であってもよい。シラン化合物とシリコーン化合物の合計の含有量が上述した範囲内であると、遊離する表面修飾材料の量を低減しつつ、金属酸化物粒子の分散性を充分に向上させることができる。
【0063】
(疎水性溶媒)
本実施形態の分散液は、表面修飾金属酸化物粒子を分散する疎水性溶媒を分散媒として含む。この疎水性溶媒は、表面修飾材料が付着した金属酸化物粒子を分散させることができ、後述する樹脂成分と混合することができるものであれば、特に限定されない。
このような疎水性溶媒としては、例えば、芳香族類、飽和炭化水素類、および、不飽和炭化水素類等が、挙げられる。これらの疎水性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような疎水性溶媒としては、例えば、芳香族類、飽和炭化水素類、および、不飽和炭化水素類等が、挙げられる。これらの疎水性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
上述した中でも、疎水性溶媒は、芳香族類、特に芳香族炭化水素が好ましい。芳香族類は、樹脂成分との相溶性に優れ、これにより得られる組成物の粘度特性の向上および形成される封止部材の品質(透明性、形状等)の向上に資する。
【0065】
このような芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、1-フェニルプロパン、イソプロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレンまたはp-キシレン、2-エチルトルエン、3-エチルトルエンまたは4-エチルトルエン等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
上述した中でも、分散液の安定性や、後述する組成物製造時における疎水性溶媒の除去等における取り扱い性の容易性の観点からは、疎水性溶媒は、トルエン、o-キシレン、m-キシレンまたはp-キシレン、ベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種が特に好ましく用いられる。
【0067】
分散液に含まれる疎水性溶媒の含有量は任意に選択できるが、所望の固形分濃度となるように適宜調整すればよい。疎水性溶媒の含有量は、例えば、40質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、分散液と後述する樹脂成分、特にメチル系シリコーン樹脂との混合がより容易となる。必要に応じて、疎水性溶媒の含有量は、60質量%以上90質量%以下や、65質量%以上85質量%以下や、70質量%以上80質量%以下であってもよい。
本実施形態において固形分とは、揮発可能な成分を除去した際の残留物をいう。例えば、分散液1.2gを磁性るつぼに入れて、ホットプレートで、150℃で1時間加熱した場合に、揮発せずに残留する成分(金属酸化物粒子や表面修飾材料等)を固形分とすることができる。
【0068】
(親水性溶媒)
本実施形態の分散液は、親水性溶媒を含んでいてもよい。親水性溶媒は、例えば、後述する方法に起因して、分散液中に含まれ得る。このような親水性溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒等が挙げられる。これらの親水性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
アルコール系溶媒としては、例えば、炭素数1~4の分岐または直鎖状アルコール化合物およびそのエーテル縮合物が挙げられる。これらのアルコール系溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、第1級アルコール、第2級アルコールおよび第3級アルコールのいずれであってもよい。また、アルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、一価アルコール、二価アルコールおよび三価アルコールのいずれであってもよい。より具体的には、アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、メタンジオール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブチンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、3-メトキシ-1,2-プロパンジオール等が挙げられる。
【0070】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
ニトリル系溶媒としては、例えば、アセトニトリル等が挙げられる。
【0071】
水と疎水性溶媒との親和性に優れ、これらの混和を促進させる観点から、親水性溶媒は、好ましくはアルコール系溶媒を含む。この場合において、アルコール系溶媒を構成するアルコール化合物の炭素数は、1以上3以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましい。
親水性溶媒の中でも、メタノールおよびエタノール、特にメタノールは、上記のアルコール系溶媒の効果を充分に発現することができるために好適に用いることができる。
【0072】
また、分散液中における親水性溶媒の含有量は、例えば、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。親水性溶媒の含有量は0質量%であってもよい。
【0073】
(その他の成分)
本実施形態の分散液は、上述した以外の成分を含んでもよい。例えば、本実施形態の分散液は、必要に応じて上述した以外の成分、例えば、分散剤、分散助剤、酸化防止剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤等の一般的な添加剤等を含んでいてもよい。
また、本実施形態の分散液は、後述する方法に起因して含まれ得る成分、例えば、酸、水、アルコール等を含んでもよい。
【0074】
なお、本明細書において、本実施形態の分散液は、樹脂成分を含み、硬化により封止部材を形成可能な本実施形態の組成物とは、区別される。すなわち、本実施形態の分散液は、後述する樹脂成分を含む場合であっても、単純に硬化させた場合、封止部材を形成可能な程度の量では、後述する樹脂成分を含まない。より具体的には、本実施形態の分散液における、樹脂成分と金属酸化物粒子との質量比率は、樹脂成分:金属酸化物粒子で、0:100~40:60の範囲にあることが好ましく、0:100~30:70の範囲にあることがより好ましく、0:100~20:80の範囲にあることがさらに好ましい。本実施形態の分散液は、特に好ましくは後述する樹脂成分を本質的に含まず、最も好ましくは、後述する樹脂成分を完全に含まない。
【0075】
本実施形態の分散液は、後述する製造方法により、屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子の表面が表面修飾材料により充分に修飾されている。そして、このように修飾された金属酸化物粒子は、メチル系シリコーン樹脂であっても親和性に優れ、メチル系シリコーン樹脂中においても、散乱特性に優れる所望の分散具合で分散することができる。
メチル系シリコーン樹脂は、従来のフェニル系シリコーン樹脂と比較すると、表面修飾金属酸化物粒子が凝集しやすい。しかし、屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子であれば、その凝集のしやすさにより、かえって、上記硬化物の波長450nmの散乱特性と上記硬化物の波長600nmの散乱特性が所望の範囲となる。その結果、本実施形態の分散液を用いて形成された封止部材は、発光装置の明るさを向上することができる。
【0076】
(分散液の製造方法)
本実施形態の分散液の製造方法は、シラン化合物と金属酸化物粒子とを混合して混合液を得る工程Bと、
前記混合液中において前記金属酸化物粒子を分散し、前記金属酸化物粒子が分散した第1の分散液を得る工程Cと、
前記第1の分散液に疎水性溶媒を加えて、第2の分散液を得る工程Dと、
前記第2の分散液にシリコーン化合物を加えて、第3の分散液を得る工程Eと、を有し、
前記金属酸化物粒子は屈折率が1.70以上2.00以下であり、
前記シラン化合物が、メチル基含有シラン化合物を含み、
前記工程Bにおいて、前記混合液中における前記金属酸化物粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下、前記混合液中における前記シラン化合物と前記金属酸化物粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下であり、
前記工程Dは、前記第1の分散液を加熱した後に、前記疎水性溶媒を前記金属酸化物粒子が凝集しない速度で加える工程d1、前記第1の分散液を加熱しながら、前記疎水性溶媒を前記金属酸化物粒子が凝集しない速度で加える工程d2、または、前記疎水性溶媒を前記金属酸化物粒子が凝集しない速度で加えた後に、前記第1の分散液を加熱する工程d3のいずれかである。
【0077】
上記シラン化合物は、メチル基含有シラン化合物の他に、炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物を含有していてもよい。
上記シラン化合物が、炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物を含有する場合、上記メチル基含有シラン化合物と上記炭素数が2以上5以下の炭化水素基含有シラン化合物は、質量比で99:1~35:65の範囲であることが好ましい。
【0078】
なお、上記シラン化合物と上記金属酸化物粒子の合計の含有量は、固形分により評価することもできる。
【0079】
上記シラン化合物と上記金属酸化物粒子との合計含有量には、後述するシラン化合物の加水分解で発生するアルコールは含まない。すなわち、上記シラン化合物と上記金属酸化物粒子との合計含有量とは、シラン化合物と、加水分解されたシラン化合物と、金属酸化物粒子との合計含有量を意味する。なお、上記合計含有量が上記シラン化合物に付着された金属酸化物粒子の含有量を含めた値であることは言うまでもない。
【0080】
また、本実施形態においては、上記の各工程に先立ち、シラン化合物と水とを混合して、加水分解されたシラン化合物を含む加水分解液を得る工程A(加水分解工程)を有してもよい。
以下、本実施形態の分散液を得るための各工程について詳細に説明する。
【0081】
(工程A(加水分解工程))
加水分解工程では、少なくともシラン化合物と水とを混合して、加水分解されたシラン化合物を含む加水分解液を得る。このように予めシラン化合物の少なくとも一部が加水分解した混合液を用いることにより、後述する分散工程において金属酸化物粒子にシラン化合物が付着し易くなる。
【0082】
シラン化合物としては、上述したシラン化合物のうち、メチル基含有シラン化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、加水分解液中におけるシラン化合物の含有量は、特に限定されない。加水分解液中から他の成分を除いた残部とすることができるが、例えば、60質量%以上99質量%以下であることが好ましく、70質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。加水分解液中におけるシラン化合物の含有量は、必要に応じて、85質量%以上95質量%以下や、87質量%以上93質量%以下であってもよい。
シラン化合物を2種以上組み合わせて用いる場合は、それぞれ単独で加水分解してもよく、2種以上のシラン化合物を混合した状態で加水分解してもよい。
【0083】
なお、加水分解工程において、シラン化合物以外の表面修飾材料を加水分解液に含有させてもよい。
【0084】
また、加水分解工程において、加水分解液は水を含む。水は、シラン化合物等の表面修飾材料の加水分解反応の基質となる。
加水分解液中における水の含有量は、特に限定されず、任意に選択できる。例えば、水の含有量は、シラン化合物の量に対応して適宜設定できる。例えば、加水分解液に添加される水の量は、前記シラン化合物1molに対して、0.5mol以上5mol以下であることが好ましく、0.6mol以上3mol以下であることがより好ましく、0.7mol以上2mol以下であることがさらに好ましい。これにより、シラン化合物の加水分解反応を充分に進行させつつ、過剰量の水により製造される分散液において金属酸化物粒子の凝集が生じることをより確実に防止することができる。
【0085】
あるいは、加水分解液中における水の含有量は、例えば、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0086】
また、加水分解液には、シラン化合物および水とともに触媒が添加されてもよい。触媒としては、例えば、酸または塩基を用いることができる。
酸は、加水分解液中において、シラン化合物の加水分解反応を触媒する。一方、塩基は、加水分解されたシラン化合物と金属酸化物粒子表面の官能基、例えば、水酸基やシラノール基との、縮合反応を触媒する。これら反応により、後述する分散工程(工程C)において、シラン化合物を初めとしたシラン化合物が金属酸化物粒子に付着し易くなり、金属酸化物粒子の分散安定性が向上する。
【0087】
ここで、上記の「酸」とは、いわゆるブレンステッド-ローリの定義に基づく酸をいい、シラン化合物等の表面修飾材料の加水分解反応においてプロトンを与える物質をいう。また、上記の「塩基」とは、いわゆるブレンステッド-ローリの定義に基づく塩基をいい、ここでは、シラン化合物等の表面修飾材料の加水分解反応およびその後の縮合反応においてプロトンを受容する物質をいう。
【0088】
酸としては、シラン化合物の加水分解反応においてプロトンを供給可能であれば特に限定されず、任意に選択できる。前記酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸等の無機酸や酢酸、クエン酸、ギ酸等の有機酸が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
塩基としては、シラン化合物の加水分解反応においてプロトンを受容可能であれば特に限定されず、任意に選択できる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、アミン等が挙げられる。これらの塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
上述した中でも、触媒としては、酸を用いることが好ましい。酸としては、酸性度の観点から、無機酸が好ましく、また、塩酸がより好ましい。
【0091】
加水分解液中における触媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、10ppm以上1000ppm以下であることが好ましく、20ppm以上800ppm以下であることがより好ましく、30ppm以上600ppm以下であることがさらに好ましい。これにより、シラン化合物の加水分解を充分に促進させつつ、シラン化合物の副反応を抑制することができる。なお、必要に応じて、加水分解液中における触媒の含有量は、0.1ppm以上100ppm以下や、1ppm以上10ppm以下であってもよい。また、例えば、塩酸(1N)等の酸を触媒として使用する時、上記酸の量は、加水分解液中100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下であってもよく、0.001質量部以上3質量部以下であってもよく、0.005質量部以上1質量部以下であってもよく、0.005質量部以上0.1質量部以下であってもよい。
【0092】
また、加水分解液は、必要に応じて、親水性溶媒を含んでいてもよい。親水性溶媒は、加水分解液中において、水とシラン化合物の混和を促進させ、シラン化合物の加水分解反応をより一層促進させることができる。
【0093】
このような親水性溶媒としては、例えば、上述した分散液に含まれ得る各種親水性溶媒が挙げられる。加水分解液における親水性溶媒の含有量は、0質量%以上85質量%以下であってもよく、10質量%以上70質量%以下であってもよい。
【0094】
上述した中でも、水と疎水性溶媒との親和性に優れ、これらの混和を促進させる観点から、親水性溶媒は、好ましくはアルコール系溶媒からなる群から選択される少なくとも1種を含み、より好ましくはメタノール、エタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0095】
また、加水分解液中における親水性溶媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、加水分解液中におけるシラン化合物および水の含有量を充分に大きくすることができる。
加水分解液中における親水性溶媒の含有量は、40質量%以下や、20質量%以下であってもよい。また、加水分解液中における親水性溶媒の含有量は、例えば、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。この範囲であると、シラン化合物と水との混和をより一層促進することができ、その結果、シラン化合物の加水分解反応を効率よく進行させることができる。なお、加水分解液中において、加水分解反応由来の化合物を除く親水性溶媒が含まれなくてもよい。すなわち、加水分解反応由来の化合物である親水性溶媒のみが含まれてもよい。
【0096】
本実施形態では、シラン化合物としてアルコキシ基を有するシラン化合物を用いる場合、これが加水分解するため、アルコキシ基由来のアルコール化合物が混合液中に含まれることとなる。加水分解反応は、金属酸化物粒子の吸着水でも進行するため、工程A~工程Eのいずれでも起こり得る。そのため、この場合、アルコール化合物を除去する工程がない限りは、得られる分散液にはアルコール化合物が含まれることとなる。そのため、エバポレータ等で、これらのアルコール化合物を除去する工程を適宜設けてもよい。
【0097】
加水分解工程では、加水分解液を調製後、任意に選択される一定の温度で所定の時間保持してもよい。これにより、シラン化合物の加水分解をより一層促進させることができる。
この処理において、加水分解液の温度は、特に限定されず任意に選択でき、シラン化合物の種類によって適宜変更できる。例えば、5℃以上65℃以下であることが好ましく、20℃以上65℃以下であることがより好ましく、さらに30℃以上60℃以下であることが好ましい。必要に応じて、40℃以上75℃以下や、50℃以上70℃以下であってもよい。
【0098】
また、上記温度での保持時間は、特に限定されないが、例えば、10分以上180分以下であることが好ましく、30分以上120分以下であることがより好ましい。必要に応じて、15分以上60分以下や、20分以上40分以下であってもよい。
なお、上記の加水分解液の保持において、加水分解液を適宜撹拌してもよい。
【0099】
(工程B(混合工程))
混合工程では、シラン化合物と金属酸化物粒子とを混合して混合液を得る。混合工程では、シラン化合物と金属酸化物粒子の他に、水や触媒を混合してもよい。なお、上述した加水分解工程により加水分解液を得ている場合、加水分解液と金属酸化物粒子とを混合することにより、混合液が得られる。
【0100】
そして、混合液中における金属酸化物粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、シラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下であるようにして、混合が行われる。
【0101】
このように、本実施形態においては、混合液中のシラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量が、非常に大きい。そして、従来、必須であると考えられていた有機溶媒や、水等の分散媒は、混合液中に含まれないか、あるいは従来と比較して非常に少量のみが混合される。あるいは、加水分解により、不可避的なアルコール化合物が、少量含まれる程度である。このような場合であっても、分散工程を経ることにより、混合液中において、金属酸化物粒子の均一な分散が可能であるとともに、シラン化合物の金属酸化物粒子への均一な付着(表面修飾)が達成される。
【0102】
詳しく説明すると、一般に金属酸化物粒子を液相中にてシラン化合物により表面修飾する場合には、金属酸化物粒子とシラン化合物のみならず分散媒も混合して混合液を得て、この混合液について分散機を用いて分散処理することが一般的である。なお、このような方法で表面修飾された金属酸化物粒子は、メチル系シリコーン樹脂と混合した際に、充分にメチル系シリコーン樹脂中に分散できず凝集してしまい、結果として、メチル系シリコーン樹脂に白濁等の濁りが生じる問題があった。このような場合、添加される金属酸化物粒子は、所期の性能が充分に発揮されない。
【0103】
分散媒は、通常、混合液の粘度を低くし、金属酸化物粒子を均一に分散させ、シラン化合物に金属酸化物粒子の表面を均一に修飾させることを目的として添加される。従来、分散媒を用いない場合は、分散液の粘度が上昇する結果、シラン化合物が金属酸化物粒子の表面に充分に付着しないと考えられていた。本発明者等は、驚くべきことに、このような従来、必須であると考えられてきた分散媒を使用しないか、あるいは少量のみ使用し、金属酸化物粒子を高濃度のシラン化合物中に直接分散させることにより、得られる分散液中において、金属酸化物粒子の均一な分散が達成されるとともに、金属酸化物粒子へのシラン化合物の均一な修飾が可能であることを見出した。
【0104】
シラン化合物は、低分子であり、粘度が比較的小さい。さらに、上述した加水分解工程において加水分解されていることにより、金属酸化物粒子への付着性が良好である。このため、シラン化合物は、高濃度の表面修飾材料中での金属酸化物粒子の分散に極めて好適である。
【0105】
シラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量が65質量%未満である場合、上記2成分以外の成分、例えば、分散媒が多くなり過ぎ、そのため、後述する分散工程(工程C)においてシラン化合物を充分に金属酸化物粒子の表面に付着させることができない。その結果、金属酸化物粒子表面に水酸基が多く残存してしまい、その後に得られる分散液を、疎水性の材料と混合した際に、金属酸化物粒子が凝集してしまい、疎水性の材料に濁りが生じてしまう。シラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量は、65質量%以上であればよいが、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。シラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量は、必要に応じて、80質量%以上や、85質量%以上や、90質量%以上や、92質量%以上であってもよい。
【0106】
これに対して、シラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量が98質量%を超えると、混合液の粘度が高くなりすぎて、後述する分散工程(工程C)において、シラン化合物を充分に金属酸化物粒子の表面に付着させることができない。シラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量は、98質量%以下であればよいが、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。シラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量は、必要に応じて、90質量%以下や、85質量%以下や、80質量%以下や、75質量%以下であってもよい。
【0107】
また、上述したように、混合液中における金属酸化物粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下である。この範囲により、金属酸化物粒子に対するシラン化合物の量を適切な範囲内とすることができ、金属酸化物粒子の表面に均一にシラン化合物を付着させることができるとともに、混合液の粘度の上昇を抑制することができる。
【0108】
一方、混合液中における金属酸化物粒子の含有量が10質量%未満である場合、金属酸化物粒子に対してシラン化合物の量が過剰となり、得られる分散液において過剰のシラン化合物が金属酸化物粒子の凝集を誘発する。混合液中における金属酸化物粒子の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは23質量%以上であり、さらに好ましくは26質量%以上であり、特に好ましくは30質量%以上である。
【0109】
また、金属酸化物粒子の含有量が49質量%を超えると、金属酸化物粒子に対してシラン化合物の量が不足し、金属酸化物粒子に充分な量のシラン化合物が付着しない。また、金属酸化物粒子の含有量が多くなり過ぎる結果、混合液の粘度が大きくなり過ぎ、後述する分散工程(工程C)において、金属酸化物粒子を充分に分散できない。混合液中における金属酸化物粒子の含有量は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。混合液中における金属酸化物粒子の含有量は、さらに好ましくは38質量%以下であり、特に好ましくは36質量%以下である。混合液中における金属酸化物粒子の含有量は、34質量%以下であってもよい。
【0110】
混合液中における金属酸化物粒子の含有量に対するシラン化合物の含有量は、特に限定されないが、金属酸化物粒子の量に対して、例えば、100質量%以上800質量%以下であることが好ましく、140質量%以上600質量%以下であることがより好ましく、180質量%以上400質量%以下であることがさらに好ましく、200質量%以上270質量%以下であることが特に好ましい。これにより、金属酸化物粒子に対するシラン化合物の量を適切な範囲内とすることができ、金属酸化物粒子の表面に均一にシラン化合物を付着させることができる。
【0111】
また、混合工程では、混合液にさらに有機溶媒を混合してもよい。混合液に有機溶媒を混合することにより、表面修飾材料の反応性を制御することが可能となり、金属酸化物粒子の表面への表面修飾材料の付着の程度を制御することが可能となる。さらに、有機溶媒により、混合液の粘度の調節が可能となる。
【0112】
このような有機溶媒としては、上述した本実施形態の組成物の分散媒として挙げた疎水性溶媒や親水性溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
混合液中における有機溶媒の含有量は、上述した金属酸化物粒子およびシラン化合物の含有量を満足するものであれば特に限定されない。なお、混合液中に有機溶媒が含まれなくてもよいことはいうまでもない。
混合工程における混合時間や混合温度は任意に選択できるが、例えば、室温(25℃)で混合を行ってもよく、材料を一緒にした後は、0~600秒ほど攪拌を行ってもよい。
【0114】
(工程C(分散工程))
分散工程では、混合液中において金属酸化物粒子を分散して、金属酸化物粒子が分散した第1の分散液を得る。本実施形態において、金属酸化物粒子は、加水分解された高濃度のシラン化合物中において分散される。したがって、得られる第1の分散液においては、金属酸化物粒子の表面に比較的均一にシラン化合物が付着しており、かつ、金属酸化物粒子が比較的均一に分散する。
【0115】
金属酸化物粒子の分散は、公知の分散方法、例えば、分散機を用いることにより行うことができる。分散機としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー、ディスパー、撹拌機等が好適に用いられる。工程Cは、好ましくは、工程Bで得られた混合物のみを分散処理する工程である。
【0116】
ここで、分散工程では、分散液中における金属酸化物粒子の粒子径(分散粒子径)がほぼ均一となるように、過剰なエネルギーは付与せず、必要最低限のエネルギーを付与して、混合液中において金属酸化物粒子を分散させることが好ましい。
分散時間は、条件に応じて任意に選択できるが、例えば、3時間~20時間であってもよく、好ましくは4時間~18時間であり、より好ましくは6時間~16時間であり、さらに好ましくは8時間~14時間である。ただし、分散時間は、これらに限定されない。
分散温度は、任意に選択できるが、例えば、10℃~50℃であってもよく、好ましくは20℃~40℃であり、より好ましくは30℃~40℃である。ただし、分散温度は、これらに限定されない。
なお、分散工程Cが、混合工程Bと異なる点としては、分散が一定時間にわたって連続して行われることを意味してよい。
【0117】
上記硬化物の波長450nmの散乱特性と上記硬化物の波長600nmの散乱特性は、分散条件で比較的容易に制御できる。上記硬化物の波長450nmにおける散乱分が小さい場合には、分散時間を短くすればよい。一方、上記硬化物の波長450nmにおける散乱分が大きい場合には、分散時間を長くすればよい。分散時間だけで調整ができない場合には、上記硬化物の波長450nmの散乱分と上記硬化物の波長600nmの散乱分が適正となるように金属酸化物粒子や表面修飾材料の種類や比率を調整すればよい。特に、金属酸化物粒子の屈折率で調整することが好ましい。
【0118】
(工程D(添加工程(第1の添加工程)))
添加工程では、工程C(分散工程)で得られた、上記の第1の分散液に、疎水性溶媒を添加し、第1の分散液を、所望の固形分濃度に調整する。
分散工程で得られた第1の分散液は、固形分濃度が高い。このため、粘度が高く、ハンドリング性が悪い。しかしながら、固形分濃度を低くするために、単純に、得られた第1の分散液に疎水性溶媒を添加すると、粒子表面の疎水性が低いため、粒子が凝集してしまい、均一な分散液が得られない。
【0119】
そこで、本発明者等は、検討した結果、得られた第1の分散液を加熱し、一方、疎水性溶媒を徐々に添加することで、固形分濃度の低い分散液に調整できることを、見出した。この作業を行うことにより、非常に優れた効果を得られる。
【0120】
上記のメカニズムは、以下のように推測される。
第1の分散液を加熱することにより、金属酸化物粒子に付着したシラン化合物の重合が進行して、粒子表面の疎水性が向上する。なお、シラン化合物の重合反応が進行し過ぎても金属酸化物粒子は凝集する。このため、前記重合反応が進行中の第1の分散液に、疎水性溶媒を徐々に添加する。このような添加を行うことにより、過剰な重合反応を抑制しつつ、表面が徐々に疎水化され、疎水性の溶媒を徐々に混合することができる。
【0121】
すなわち、金属酸化物粒子が凝集しない程度の量の疎水性溶媒を添加し、かつ、添加した量の疎水性溶媒と相溶できる程度に、シラン化合物の重合反応を進行させる。このことにより、所望の固形分濃度に調整された、分散液を得ることができる。
【0122】
上述の通り、疎水性溶媒は、金属酸化物粒子が凝集しないように、徐々に添加すればよい。そのため、上記分散工程で得た第1の分散液を加熱してから疎水性溶媒を添加してもよく、疎水性溶媒を添加してから第1の分散液を加熱してもよく、あるいは、第1の分散液の加熱と疎水性溶媒の添加を同時に行ってもよい。
すなわち、より具体的に説明すると、添加工程は、上記の第1の分散液を加熱した後に、上記の疎水性溶媒を上記の金属酸化物粒子が凝集しない速度で加える工程d1であってもよく、上記の第1の分散液を加熱しながら、上記の疎水性溶媒を上記の金属酸化物粒子が凝集しない速度で加える工程d2であってもよく、または、上記の疎水性溶媒を上記の金属酸化物粒子が凝集しない速度で加えた後に、上記の第1の分散液を加熱する工程d3であってもよい。
【0123】
なお、工程d1では、金属酸化物粒子を加える際に、分散液の加熱を継続してもよいし、加熱を中止してもよい。分散液の温度は一定であってもよいし、分散液の温度が変化していてもよい。分散液の温度は一定に維持することが好ましい。工程d2では、金属酸化物粒子を加える際には、分散液の温度は一定であってもよいし、分散液の温度が変化していてもよい。
上記の疎水性溶媒は、連続して加えてもよく、2回以上に分けて断続的に加えてもよい。断続的に加える場合、回数の限定はないが、例えば、2回~6回や、3回~5回に分けて、加えることができる。複数回に分けて疎水性溶媒を加える場合、疎水性溶媒の量は同じでもよいし、変化させてもよい。
【0124】
金属酸化物粒子が凝集しない速度は、特に限定されない。疎水性溶媒の添加の速度や割合は、任意に選択できる。例えば、1時間で3質量%以上20質量%以下の範囲で固形分濃度が低くなるような添加の速度で、連続的に疎水性溶媒を添加すればよい。言い換えると、疎水性溶媒を連続的に1時間添加した後には、添加前と添加後の分散液中の固形分濃度の差が、3質量%以上20質量%以下の範囲であってもよい。加熱温度が高い場合には疎水性溶媒の添加量を多くし、加熱温度が低い場合には疎水性溶媒の添加量を少なくするように、疎水性溶媒の添加量を適宜調整すればよい。
【0125】
上述したように、疎水性溶媒の添加の速度や割合は、任意に選択できる。例えば、30分毎、1時間毎、または2時間毎に、3質量%以上20質量%以下の範囲で固形分濃度が低くなるように、疎水性溶媒を段階的に添加すればよい。加熱温度が高い場合には一度に添加する疎水性溶媒の添加量を多めにし、加熱温度が低い場合には一度に添加する疎水性溶媒の添加量を少なくするように、疎水性溶媒の添加量を適宜調整すればよい。この場合、疎水性溶媒の添加時間や添加回数も好ましく調整してよい。
【0126】
加熱温度は、シラン化合物の重合反応が進行する温度であれば特に限定されない。加熱温度は、例えば、35℃以上80℃以下であることが好ましい。前記加熱温度は、40℃以上75℃以下や、45℃以上70℃以下や、50℃以上65℃以下であってもよい。加熱温度が35℃以上であることにより、シラン化合物の重合反応を進行させることができる。一方、加熱温度が80℃以下であることにより、シラン化合物の急激な反応による金属酸化物粒子の凝集を抑制することができる。
【0127】
加熱時間は、固形分濃度の調整が終わるまで適宜実施すればよい。加熱時間は、例えば、4時間以上12時間以下であることが好ましい。加熱時間が4時間以上であることにより、シラン化合物の重合反応が進行し、疎水性溶媒と混合することが可能となる。一方、加熱時間が12時間以下であることにより、シラン化合物の重合反応の進行し過ぎによる金属酸化物粒子の凝集を抑制することができる。
【0128】
疎水性溶媒は、本実施形態の分散液と混合したい材料と相溶できるものであれば特に限定されない。疎水性溶媒としては、例えば、芳香族類、飽和炭化水素類、不飽和炭化水素類等が挙げられる。これらの疎水性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、芳香族類、特に芳香族炭化水素が好ましい。芳香族類は、メチル系シリコーン樹脂との相溶性に優れ、これにより得られる組成物の粘度特性の向上および形成される封止部材の品質(透明性、形状等)の向上に資する。
【0129】
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、1-フェニルプロパン、イソプロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、2-エチルトルエン、3-エチルトルエン、4-エチルトルエン等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
これらの中でも、分散液の安定性や、後述する組成物製造時における分散媒の除去等における取り扱い性の容易性の観点から、芳香族炭化水素としては、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレンおよびベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種が特に好ましく用いられる。
【0131】
最終的な分散液に含まれる疎水性溶媒の含有量は、所望の固形分濃度となるように適宜調整すればよい。疎水性溶媒の含有量は、例えば、40質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。
第1の添加工程により、所望の固形分濃度に調整された第2の分散液が得られる。第2の分散液を用いることにより、以下の工程における分散液のハンドリング性が向上する。
【0132】
(工程F(除去工程))
本実施形態では、工程Dと、工程Eの間に、加水分解により生じたアルコールを除去する工程Fを設けてもよい。
除去工程を設けることにより、以下に説明する工程の生産効率が向上すると推測される。
除去する方法としては、特に限定されないが、例えば、エバポレータを用いることができる。除去工程は、アルコールが完全に除去されるまで行ってもよく、5質量%程度残存していてもよい。
【0133】
(工程E(第2の添加工程))
次に、金属酸化物粒子をシリコーン化合物により処理して、第3の分散液を得る。上述したように、分散工程では、シラン化合物が金属酸化物粒子の表面に比較的均一に付着している。したがって、シリコーン化合物は、シラン化合物を介して金属酸化物粒子の表面に比較的均一に付着することができる。
【0134】
第2の添加工程では、まず、第2の分散液とシリコーン化合物とを混合し、処理液を得る。次いで、処理液を一定の温度で所定の時間保持してもよい。これにより、シリコーン化合物の金属酸化物粒子への付着をより一層促進させることができる。
【0135】
シリコーン化合物としては、上述したシリコーン化合物が挙げられる。これらのシリコーン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
シリコーン化合物は、第3の分散液中におけるシリコーン化合物の含有量が、金属酸化物粒子に対して、例えば、好ましくは50質量%以上500質量%以下、より好ましくは80質量%以上400質量%以下、さらに好ましくは100質量%以上300質量%以下となるように第2の分散液と混合することができる。これにより、金属酸化物粒子の表面に、充分な量のシリコーン化合物を付着させることができ、金属酸化物粒子の分散安定性を向上させるとともに、メチル系シリコーン樹脂への分散性を向上させることができる。さらに、遊離したシリコーン化合物の量を減らすことができ、メチル系シリコーン樹脂中における金属酸化物粒子の不本意な凝集を抑制することができる。
【0137】
第2の添加工程では、保持温度は、特に限定されず、シリコーン化合物の種類によって適宜変更できるが、例えば、40℃以上130℃以下であることが好ましく、50℃以上120℃以下であることがより好ましい。
【0138】
また、保持時間は、特に限定されないが、例えば、1時間以上24時間以下であることが好ましく、2時間以上20時間以下であることがより好ましい。
なお、上記の保持において、第2の分散液を適宜撹拌してもよい。
【0139】
また、第2の添加工程では、複数回、シリコーン化合物による処理を行ってもよい。例えば、異なる種類のシリコーン化合物を用い、シリコーン化合物による処理を複数回行うことにより、メチル系シリコーン樹脂の種類に合わせた金属酸化物粒子の表面状態の制御がより容易となる。
また、第2の添加工程では、シリコーン化合物による処理後に固形分濃度を測定し、所望の固形分濃度となるように疎水性溶媒を添加してもよい。固形分濃度を低くすることにより、後述する樹脂成分との混合が容易となる。
【0140】
以上により、金属酸化物粒子をシリコーン化合物により処理し、第3の分散液を得ることができる。
【0141】
上記製造方法を用いて製造された分散液は、金属酸化物粒子が均一に分散するとともに、金属酸化物粒子の表面が上記シラン化合物およびシリコーン化合物により均一かつ充分に修飾されている。そして、このように修飾された屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子は、メチル系シリコーン樹脂との親和性に優れ、メチル系シリコーン樹脂中において所望の散乱特性が得られる大きさで比較的均一に分散することができる。したがって、メチル系シリコーン樹脂中に金属酸化物粒子を分散させた場合であっても、封止部材として用いた場合に発光装置の明るさを向上することができる。
【0142】
なお、本実施形態の分散液には、必要に応じて上述した以外の成分、例えば、分散剤、分散助剤、酸化防止剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤等の一般的な添加剤等が混合されてもよい。これらは、必要に応じて、任意の工程において添加される。
【0143】
(組成物)
本実施形態の組成物は、上述した分散液と樹脂成分との混合物である。したがって、本実施形態の組成物は、上述したシラン化合物とシリコーン化合物とにより表面修飾された屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子に加え、樹脂成分、すなわち、樹脂およびその前駆体の少なくとも一方を含む。
【0144】
本実施形態の組成物は、後述するように硬化させて発光素子の封止部材として用いられる。本実施形態の組成物は、上述した屈折率と透明性の向上に寄与する金属酸化物粒子を含むことにより、封止部材に用いた場合に発光装置の光の明るさを向上させることができる。
【0145】
さらに、本実施形態の組成物は、上述したシラン化合物とシリコーン化合物とにより表面修飾された屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子を含む。このため、樹脂成分としてメチル系シリコーン樹脂が含まれる場合であっても、金属酸化物粒子の過剰な凝集が抑制され、透明性の低下が抑制されている。このため、本実施形態の組成物を封止部材に用いた際に発光装置の光の明るさを向上させることができる。
【0146】
本実施形態の組成物における、金属酸化物粒子の含有量は、上記硬化物の波長450nmの散乱分と上記硬化物の波長600nmの散乱分が所望の値になる量であれば特に限定されない。例えば、上記表面修飾金属酸化物粒子の含有量は、上記表面修飾金属酸化物粒子と樹脂成分の合計含有量に対して、2質量%以上11質量%以下であることが好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0147】
また、本実施形態の組成物における、シラン化合物、シリコーン化合物等の表面修飾材料の含有量は、本実施形態の分散液における含有量に対応することができる。
【0148】
本実施形態の組成物中における上記表面修飾金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、所望の散乱特性が得られれば特に限定されず、例えば、30nm以上1000nm以下であってもよく、50nm以上800nm以下であってもよく、60nm以上700nm以下であってもよい。
また、表面修飾金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、封止部材として硬化された時の粒子径が60nm以上1000nm以下となるような値であれば、特に限定されない。なお、組成物が硬化された時の平均分散粒子径とは、金属酸化物粒子同士が凝集している場合、すなわち、二次粒子を形成している場合には、二次粒子径(凝集粒子径)を意味する。
金属酸化物粒子、表面修飾材料、樹脂成分、蛍光体粒子の組み合わせや、組成物の硬化条件により、硬化物中での表面修飾金属酸化物粒子の凝集状態は変わる。そのため、硬化物にした場合の波長450nmの散乱特性と波長600nmの散乱特性を確認しながら、組成物中における金属酸化物粒子の平均分散粒子径を調整すればよい。組成物中における金属酸化物粒子の平均分散粒子径を調整する方法としては、分散液中における金属酸化物粒子の平均分散粒子径を調整する方法が挙げられる。
組成物中における表面修飾金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、例えば、粒度分布装置を用いて測定することができる。
【0149】
(樹脂成分)
樹脂成分は、本実施形態の組成物における主成分である。樹脂成分は、本実施形態の組成物を封止材料として用いた際において硬化して発光素子を封止する。その結果、発光素子に水分、酸素等の外部環境からの劣化因子が到達することを防止する。また、本実施形態において、樹脂成分より得られる硬化物は、基本的に透明であり、発光素子から放出される光を透過させることができる。
【0150】
このような樹脂成分としては、封止材料として用いることができれば特に限定されない。例えば、シリコーン樹脂や、エポキシ樹脂等の樹脂を、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリコーン樹脂としては、フェニル系シリコーン樹脂やメチル系シリコーン樹脂を用いることができる。耐久性の観点から、特にメチル系シリコーン樹脂が好ましい。
【0151】
上記メチル系シリコーン樹脂としては、例えば、主骨格としてケイ素と酸素が交互に結びついたシロキサン結合を有し、Si原子に結合する官能基の多く、例えば、60%以上、好ましくは80%以上、がメチル基であるものを、意味してもよい。ただし、上記メチル系シリコーン樹脂は、この例のみに限定されない。
メチル系シリコーン樹脂としては、例えば、ジメチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂等を用いることができる。
【0152】
樹脂成分中に占めるメチル系シリコーン樹脂の含有量は、所望の特性により調整すればよく、特に限定されない。例えば、100質量%であってもよいし、20質量%以上80質量%以下であってもよく、30質量%以上70質量%以下であってもよく、40質量%以上60質量%以下であってもよい。従来、メチル系シリコーン樹脂中に金属酸化物粒子を含有させると、金属酸化物粒子が凝集し、透明性が低下するとともに、屈折率が充分に向上しなかった。また、メチル系シリコーン樹脂中に金属酸化物粒子が分散したとしても、金属酸化物粒子の過剰な凝集の発生を完全に抑制することは困難であった。これらに対し、本実施形態の組成物は、上述したシラン化合物とシリコーン化合物とにより表面修飾された屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子を含む。そのため、樹脂成分としてメチル系シリコーン樹脂がこのように多量に含まれる場合であっても、金属酸化物粒子の凝集が抑制され、多少凝集しても、金属酸化物粒子の屈折率が1.70以上2.00以下であるため、透明性の低下が抑制されている。また、メチル系シリコーン樹脂を採用することが可能となることから、組成物を用いて形成される封止部材の耐久性が向上する。
【0153】
樹脂成分の構造としては、二次元の鎖状の構造であってもよく、三次元網状構造であってもよく、かご型構造であってもよい。
樹脂成分は、封止部材として用いた際に硬化したポリマー状となっていればよい。組成物中において、樹脂成分は、硬化前の状態、すなわち、前駆体であってもよい。したがって、組成物中に存在する樹脂成分は、例えば、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、ポリマーであってもよい。
【0154】
樹脂成分は、付加反応型のものを用いてもよく、縮合反応型のものを用いてもよく、ラジカル重合反応型のものを用いてもよい。
JIS Z 8803:2011に準拠して測定される25℃における樹脂成分の粘度は、例えば、10mPa・s以上100,000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以上10,000mPa・s以下であることがより好ましく、1,000mPa・s以上7,000mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0155】
また、本実施形態の組成物中における樹脂成分の含有量は、他の成分の残部とすることができるが、例えば、10質量%以上98質量%以下であることが好ましく、15質量%以上97質量%以下であることがより好ましい。樹脂成分の含有量は、30質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよく、60質量%以上であってもよい。樹脂成分の含有量は、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
【0156】
本実施形態の組成物は、本実施形態に係る分散液由来の分散媒を含んでいてもよく、除去されていてもよい。すなわち、分散液由来の分散媒を完全に除去してもよい。分散媒は、組成物中に1質量%以上10質量%以下程度残存していてもよく、2質量%以上5質量%以下程度残存していてもよい。
【0157】
また、本実施形態の組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、蛍光体粒子を含んでいてもよい。蛍光体粒子は、発光素子から放出される特定の波長の光を吸収し、所定の波長の光を放出する。すなわち、蛍光体粒子により光の波長の変換、ひいては色調の調整が可能となる。
【0158】
蛍光体粒子は、後述するような発光装置に使用できるものであれば、特に限定されず、任意に選択でき、発光装置の発光色が所望の色となるように、適宜選択して用いることができる。
本実施形態の組成物中における蛍光体粒子の含有量は、所望の明るさが得られるように、適宜調整して用いることができる。
【0159】
また、本実施形態の組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、防腐剤、重合開始剤、重合禁止剤、硬化触媒、光拡散剤等の、一般的に用いられる添加剤が含有されていてもよい。光拡散剤としては、平均粒子径が1μm~30μmのシリカ粒子を用いることが好ましい。
【0160】
本実施形態の組成物は、本実施形態の分散液と樹脂成分とを混合することにより製造することができる。また、混合後、必要に応じて、分散液に含有されていた分散媒をエバポレータ等で除去してもよい。
【0161】
本実施形態の組成物は、上述したシラン化合物とシリコーン化合物とにより表面修飾された屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子を含む。その結果、樹脂成分としてメチル系シリコーン樹脂が含まれる場合であっても、金属酸化物粒子の凝集が抑制され、凝集したとしても、透明性の低下が抑制されている。このため、本実施形態の組成物を用いて、発光装置の光の明るさを向上させる封止部材を形成することができる。
【0162】
本実施形態の組成物によれば、上記表面修飾材料により緻密に表面修飾された上記金属酸化物粒子が、上記硬化物の波長450nmの散乱分と上記硬化物の波長600nmの散乱分が所望の値となるように上記樹脂成分中に分散されている。そのため、本実施形態の組成物を硬化させて発光素子の封止部材として用いれば、発光装置の明るさを向上することができる。
【0163】
(組成物の製造方法)
本実施形態の組成物の製造方法は、上記工程で得られた分散液と、樹脂成分とを混合できれば特に限定されない。
また、得られた組成物から上記疎水性溶媒をエバポレータ等で除去する工程を設けてもよい。
また、蛍光体粒子等、封止部材に一般的に含まれる材料を適宜混合させてもよい。
【0164】
(封止部材)
本実施形態の封止部材は、本実施形態の組成物の硬化物である。本実施形態の封止部材は、通常、発光素子上に配置される封止部材またはその一部として用いられる。
本実施形態の封止部材の厚みや形状は、所望の用途や特性に応じて適宜調整することができ、特に限定されるものではない。
【0165】
本実施形態の封止部材は、上述したように本実施形態の組成物を硬化することにより製造することができる。組成物の硬化方法は、本実施形態の組成物中の樹脂成分の特性に応じて選択することができる。組成物の硬化方法としては、例えば、熱硬化や電子線硬化等が挙げられる。より具体的に述べると、本実施形態の組成物中の樹脂成分を付加反応や重合反応により硬化することにより、本実施形態の封止部材が得られる。
【0166】
封止部材中における上記表面修飾金属酸化物粒子の分散粒子径は、上記硬化物の波長450nmの散乱分と上記硬化物の波長600nmの散乱分が所望の値となれば特に限定されない。封止部材中における上記表面修飾金属酸化物粒子の分散粒子径は、例えば、30nm以上1000nm以下であってもよく、40nm以上900nm以下であってもよく、50nm以上800nm以下であってもよく、60nm以上700nm以下であってもよい。ここでの表面修飾金属酸化物粒子の分散粒子径とは、粒子同士が凝集している場合には、二次粒子径(凝集粒子径)を意味する。
封止部材中の表面修飾金属酸化物粒子の分散粒子径は、硬化物を薄片状にカットした試料を電子顕微鏡で観察することで測定することができる。しかし、封止部材中の全ての表面修飾金属酸化物粒子を観察することは困難であるため、封止部材中の表面修飾金属酸化物粒子の粒子径を一義的に定義することは困難である。また、粒子径が同程度であっても、粒子同士の凝集具合が異なれば光の透過性は異なる。そのため、封止部材中における表面修飾金属酸化物粒子の分散粒子径を正確に測定することは困難である。そのため、本実施形態の封止部材の特徴を、表面修飾金属酸化物粒子の分散粒子径により特定することは困難である。
【0167】
本実施形態の封止部材は、本実施形態の組成物の硬化物であるので、光散乱性と透明性とに優れている。そのため、本実施形態によれば、発光装置の光の明るさを向上させる封止部材を得ることができる。
【0168】
(発光装置)
本実施形態の発光装置は、上述した封止部材と、前記封止部材に封止された発光素子とを備える。
【0169】
発光素子としては、例えば、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)等が挙げられる。特に、本実施形態の封止部材は、発光ダイオードの封止に適している。本実施形態の発光装置は、青色のLEDチップを用いて、白色LED発光装置であることが好ましい。
【0170】
以下、発光素子が、チップ上の発光ダイオード、すなわちLEDチップであり、発光装置がLEDパッケージである例を挙げて、本実施形態の発光装置を説明する。
図1~
図4は、それぞれ、本実施形態の発光装置の一例を示す模式図(断面図)である。
なお、図中の各部材の大きさは、説明を容易とするため適宜強調されており、実際の寸法、部材間の比率を示すものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0171】
図1に示す発光装置(LEDパッケージ)1Aは、凹部21を有する基板2と、基板2の凹部21の底面上に配置される発光素子(LEDチップ)3と、凹部21において発光素子3を覆うように封止する封止部材4Aとを備えている。
封止部材4Aは、上述した本実施形態の封止部材により構成されている。したがって、封止部材4A中においては、上述した本実施形態の組成物由来の金属酸化物粒子が分散されており、この結果、発光装置1Aにおける光の取出し効率が向上している。また、封止部材4A内においては、蛍光体粒子5が分散している。蛍光体粒子5は、発光素子3より放出される光の少なくとも一部の波長を変換する。
【0172】
図2に示す発光装置1Bは、封止部材4Bが2層となっている点で発光装置1Aと異なる。すなわち、封止部材4Bは、発光素子3を直接覆う第1の層41Bと、第1の層41Bを覆う第2の層43Bとを有している。第1の層41Bと第2の層43Bとは、共に本実施形態の封止部材である。第1の層41B内においては、蛍光体粒子5が分散している。一方、第2の層43Bは、蛍光体粒子5を含まない。発光装置1Bは、封止部材4Bを構成する第1の層41Bおよび第2の層43B内において、上述した本実施形態の組成物由来の金属酸化物粒子が分散されていることにより、光の明るさが向上している。
【0173】
図3に示す発光装置1Cも、封止部材4Cの構成が封止部材4Aのものと異なる点で、発光装置1Aと異なっている。封止部材4Cは、発光素子3を直接覆う第1の層41Cと、第1の層41Cを覆う第2の層43Cとを有している。第1の層41Cは、本実施形態の封止部材ではなく、上述した金属酸化物粒子を含まない樹脂の封止部材であり、封止部材に用いることのできる樹脂等により構成されている。また、第1の層41C内においては、蛍光体粒子5が分散している。一方、第2の層43Cは、本実施形態の封止部材である。発光装置1Cは、封止部材4Cを構成する第2の層43C内において、上述した本実施形態の組成物由来の金属酸化物粒子が分散されていることにより、光の取出し効率が向上している。
【0174】
図4に示す発光装置1Dでは、封止部材4Dは、発光素子3を直接覆う第1の層41Dと、第1の層41Dを覆う第2の層43Dと、第2の層43Dをさらに覆う第3の層45Dとを有している。第1の層41Dおよび第2の層43Dは、本実施形態の封止部材ではなく、上述した金属酸化物粒子を含まない樹脂の封止部材であり、封止部材に用いることのできる樹脂等により構成されている。また、第2の層43D内においては、蛍光体粒子5が分散している。一方、第3の層45Dは、本実施形態の封止部材である。発光装置1Dは、封止部材4Dを構成する第3の層45D内において、上述した本実施形態の組成物由来の金属酸化物粒子が分散されていることにより、光の明るさが向上している。
【0175】
なお、本実施形態の発光装置は、図示の態様に限定されるものではない。例えば、本実施形態の発光装置は、封止部材中に蛍光体粒子を含まなくてもよい。また、本実施形態の封止部材は、封止部材中の任意の位置に存在することができる。
【0176】
以上、本実施形態の発光装置は、発光素子が本実施形態の封止部材により封止されているため、光の明るさが向上している。
【0177】
また、本実施形態の発光装置は、上述したような本実施形態の組成物により発光素子が封止される。したがって、本発明は、一側面において、本実施形態の組成物を用いて発光素子を封止する工程を有する発光装置の製造方法にも関する。同側面において、上記製造方法は、本実施形態の分散液と樹脂成分とを混合して上記組成物を得る工程を有していてもよい。
【0178】
なお、発光素子の封止は、例えば、ディスペンサー等により、本実施形態の組成物を発光素子上に付与し、その後前記組成物を硬化させることにより行うことができる。
【0179】
(照明器具、表示装置)
上述したような本実施形態の発光装置は、例えば、照明器具および表示装置に用いることができる。したがって、本発明は、一側面において、本実施形態の発光装置を備える照明器具または表示装置に関する。
照明器具としては、例えば、室内灯、室外灯等の一般照明装置、携帯電話やOA機器等の、電子機器のスイッチ部の照明等が挙げられる。
本実施形態の照明器具は、本実施形態の発光装置を備えるため、同一の発光素子を使用しても従来と比較して放出される光束が大きくなり、周囲環境をより明るくすることができる。
【0180】
表示装置としては、例えば、携帯電話、携帯情報端末、電子辞書、デジタルカメラ、コンピュータ、テレビ、およびこれらの周辺機器等が挙げられる。
本実施形態の表示装置は、本実施形態の発光装置を備えるため、同一の発光素子を使用しても従来と比較して放出される光束が大きくなり、例えばより鮮明かつ明度の高い表示を行うことができる。
【実施例0181】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、あくまでも本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
【0182】
[実施例1]
(分散液の作製)
(i)加水分解工程
メチルトリエトキシシラン(商品名:KBE-13、信越化学工業社製)90.78質量部と、水9.21質量部と、塩酸(1N)0.01質量部とを用意した。これらを容器に添加して混合し、加水分解液を得た。次いで、この加水分解液を60℃で30分撹拌し、メチルトリエトキシシランの加水分解処理を行い、加水分解液を得た。
【0183】
(ii)混合工程(工程B)
平均一次粒子径が9nmの酸化アルミニウム(Al2O3)粒子(住友化学株式会社製)30質量部、上記加水分解液70質量部を混合して、混合液を得た。
【0184】
(iii)分散工程(工程C)
この混合液をビーズミルで11時間分散処理した後、ビーズを除去し、第1の分散液を得た。
【0185】
(iv)第1の添加工程(工程D)
得られた第1の分散液を60℃で2時間加熱した。次いで、固形分濃度が40質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で2時間加熱した。
次いで、固形分濃度が30質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で1時間加熱した。
次いで、固形分濃度が20質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で1時間加熱することで、第2の分散液を得た。
【0186】
(v)第2の添加工程(工程E)
トルエンで固形分濃度が20質量%に調整された第2の分散液88.1質量部と、メトキシ基含有フェニルシリコーンレジン(商品名:KR217、信越化学工業社製)11.9質量部とを混合して処理液を得た後、この処理液を110℃で1時間加熱し、分散液(第3の分散液)を得た。
次いで、得られた分散液にトルエンを混合して、固形分濃度を30質量%に調整した実施例1の分散液を得た。
【0187】
(組成物の作製)
実施例1の分散液3.8gと、メチルフェニルシリコーン(商品名:KER-2500-B、信越化学工業社製)15.0gとを混合した。すなわち、酸化アルミニウム粒子および表面修飾材料の合計質量と、メチルフェニルシリコーンとが、質量比で7:93となるように混合した。
次いで、この混合液をエバポレータによりトルエンを除去することで、実施例1の組成物を得た。
【0188】
(硬化物の作製)
実施例1の組成物を、テフロン(登録商標)コートされた1mm厚のSUS容器に、膜厚が1mm厚となるように充填した。次いで、100℃で2時間加熱した後、150℃で4時間加熱することで、実施例1の硬化物を得た。容器から取り出した硬化物の厚みは1mmであった。
【0189】
(光透過率)
容器から取り出した実施例1の硬化物の波長450nmと波長600nmにおける直線透過率と積分透過率を、分光光度計(日本分光社製、型番:V-770)を用いて測定した。積分透過率とは、積分球を用いて測定した結果を意味する。積分透過率と直線透過率の差から散乱分を算出した。結果を表1に示す。
【0190】
(電子顕微鏡観察)
実施例1の硬化物を薄片化したものを試料とし、電界放出型透過電子顕微鏡(商品名:JEM-2100F、日本電子社製)で観察した。結果を
図5、
図6に示す。
図5、
図6から、実施例1の硬化物では、400nm程度の凝集粒子が観察されたが、凝集粒子径は200nm~600nm程度であった。
【0191】
(LEDパッケージの作製と明るさの評価)
実施例1の組成物で封止する前のLEDパッケージの明るさを、全光束測定システム(大塚電子社製)にて、LEDパッケージに電圧3V、電流150mAを印加し測光することにより測定した。すなわち、光学素子そのものの明るさAを測定した。
【0192】
実施例1の組成物1質量部と、蛍光体粒子(イットリウム・アルミニウム・ガーネット:YAG)を0.38質量部混合した組成物(表面修飾酸化アルミニウム粒子と樹脂の合計量:蛍光体粒子=100:38)を、リードフレーム内に300μmの厚みで充填した。その後、室温で3時間保持した。次いで、ゆっくりと組成物を加熱硬化させて実施例1の封止部材を形成し、実施例1の白色LEDパッケージを作製した。
【0193】
得られた実施例1の白色LEDパッケージについて、全光束測定システム(大塚電子社製)にて、LEDパッケージに電圧3V、電流150mAを印加し測光することにより明るさBを測定した。
光学素子そのものの明るさA(lm)に対して、実施例1の白色LEDパッケージの明るさB(lm)の向上率を算出した。結果を表1に示す。
【0194】
[実施例2]
(i)加水分解工程
メチルトリエトキシシラン(商品名:KBE-13、信越化学工業社製)90.78質量部と、水9.21質量部と、塩酸(1N)0.01質量部とを用意した。これらを容器に添加して混合し、加水分解液を得た。次いで、この加水分解液を60℃で30分撹拌し、メチルトリエトキシシランの加水分解処理を行い、加水分解液を得た。
プロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE-3033、信越化学工業社製)47.92質量部と、水4.15質量部と、塩酸(1N)0.02質量部と、メタノール47.92質量部とを用意した。これらを容器に添加して混合し、加水分解液を得た。この加水分解液を60℃で1時間撹拌し、プロピルトリエトキシシランの加水分解処理を行い、加水分解液を得た。
【0195】
(ii)混合工程(工程B)
平均一次粒子径が9nmの酸化アルミニウム(Al2O3)粒子(住友化学株式会社製)30g、メチルトリエトキシシランの加水分解液77.1g、およびプロピルトリエトキシシランの加水分解液32.6gを混合して、混合液を得た。すなわち、酸化アルミニウム粒子とメチルトリエトキシシランとプロピルトリエトキシシランを質量比で、30:49:21の割合で混合した。
【0196】
実施例1の分散工程(工程C)で、実施例1の工程Bで得られた混合物を用いる替わりに、実施例2の工程Bで得られた混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、工程C、工程D、工程Eを行い、固形分濃度を30質量%に調整した実施例2の分散液を得た。
【0197】
実施例1の分散液を用いる替わりに、実施例2の分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の組成物、実施例2の硬化物を得た。
【0198】
実施例1と同様にして、実施例2の硬化物の光透過率を測定した。結果を表1に示す。
実施例1と同様にして、実施例2の硬化物を薄片化した試料を電子顕微鏡で観察した。その結果、実施例2の硬化物では、400nm程度の凝集粒子が観察されたが、凝集粒子径は200nm~600nm程度であった。実施例2硬化物は、実施例1の硬化物よりは凝集粒子径が小さいものが多く観察された。
【0199】
実施例1の組成物を用いる替わりに、実施例2の組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のLEDパッケージを作製した。
実施例1と同様にして、実施例2の組成物で封止する前のLEDパッケージと、実施例2のLEDパッケージの明るさをそれぞれ測定し、LEDパッケージの明るさの向上率を算出した。結果を表1に示す。
【0200】
[比較例1]
実施例1において、平均一次粒子径が9nmの酸化アルミニウム粒子を用いる替わりに、平均一次粒子径が12nmの酸化ジルコニウム粒子を用い、ビーズミルでの分散時間を11時間の替わりに6時間にしたこと以外は実施例1と同様にして、固形分濃度が30質量%に調整された比較例1の分散液を得た。
【0201】
実施例1の組成物の作製において、実施例1の分散液を用いる替わりに、比較例1の分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例1の組成物を得た。次いで、実施例1と同様にトルエンを除去することで、比較例1の組成物を得た。
【0202】
実施例1の組成物を用いる替わりに、比較例1の組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の硬化物を得て、実施例1と同様に光透過率を観察した。結果を表1に示す。
実施例1と同様にして、比較例1の硬化物を薄片化した試料を電子顕微鏡で観察した。結果を
図7、
図8に示す。
図7、
図8から、比較例1の硬化物では、500nm以上の凝集粒子が多く形成されていることが確認された。
【0203】
実施例1の組成物を用いる替わりに、比較例1の組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のLEDパッケージを作製した。
実施例1と同様にして、比較例1の組成物で封止する前のLEDパッケージと、比較例1のLEDパッケージの明るさをそれぞれ測定し、LEDパッケージの明るさの向上率を算出した。結果を表1に示す。比較例1のLEDパッケージは、比較例1の封止部材で封止する前のLEDパッケージよりも明るさが低下した。
【0204】
[比較例2]
実施例1において、分散工程におけるビーズミルでの分散処理を11時間の替わりに22時間としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の組成物を得た。
実施例1の組成物を用いる替わりに、比較例2の組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の硬化物を得て、実施例1同様に光透過率を観察した。結果を表1に示す。
実施例1と同様にして、比較例2の硬化物を薄片化した試料を電子顕微鏡で観察した。その結果、実施例1同様に、凝集粒子径は200nm~600nm程度であった。
【0205】
実施例1の組成物を用いる替わりに、比較例2の組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のLEDパッケージを作製した。
実施例1と同様にして、比較例2の組成物で封止する前のLEDパッケージと、比較例2のLEDパッケージの明るさをそれぞれ測定し、LEDパッケージの明るさの向上率を算出した。結果を表1に示す。比較例2のLEDパッケージは、比較例2の封止部材で封止する前のLEDパッケージよりも明るさが低下した。
【0206】
実施例1、2と、比較例1、2とを比較することにより、屈折率が1.70以上2.00以下の金属酸化物粒子を、メチル基含有シラン化合物で緻密に処理した表面修飾金属酸化物粒子を用いて、所定の条件で硬化物としたときに、波長450nmの散乱分が17%以上38%以下であり、波長450nmの散乱分を波長600nmの散乱分で除した値が1.25以上となる分散液を用いて形成されたLEDパッケージは、LEDパッケージの明るさが向上することが確認された。
実施例1と比較例2の硬化物は、顕微鏡観察では区別ができなかったが、波長450nmの散乱分や、波長450nmの散乱と波長600nmの散乱のバランスが悪いために、LEDパッケージの明るさが向上しなかった。
この結果より、波長450nmの散乱分と波長600nmの散乱分に着目して、分散条件を調整することにより、LEDパッケージの明るさを向上させる硬化物の条件を最適化できることが示唆された。
【0207】
【0208】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。