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特開2023-149924バルーンカテーテルおよび圧力測定処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149924
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】バルーンカテーテルおよび圧力測定処理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0215 20060101AFI20231005BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20231005BHJP
   A61B 17/12 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61B5/0215 D
A61M25/10
A61B17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058744
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤畑 貴史
【テーマコード(参考)】
4C017
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AB04
4C017AB10
4C017AC26
4C017BC11
4C017DD11
4C160DD03
4C160DD54
4C160DD66
4C267AA08
4C267BB48
4C267BB62
4C267CC08
4C267EE01
4C267GG01
4C267GG22
4C267GG24
(57)【要約】
【課題】電気的なノイズの影響およびセンサのドリフトによる影響を低減して、血圧を精度良くかつ安定して測定することが可能なバルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】本発明に係るバルーンカテーテルは、血管を閉塞するために用いるバルーンカテーテル10Aであって、カテーテルチューブ20Aと、少なくとも近位端部が前記カテーテルチューブ20Aに接合されており、拡張および収縮することが可能なバルーン部50と、光を利用して圧力を測定することが可能であり、バルーン部50より遠位側に配置されて、バルーン部50の遠位側における血管内の血圧を測定する第1光センサ110と、光を利用して圧力を測定することが可能であり、バルーン部50より近位側に配置されて、バルーン部50の近位側における血管内の血圧を測定する第2光センサ120と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管を閉塞するために用いるバルーンカテーテルであって、
カテーテルチューブと、
少なくとも近位端部が前記カテーテルチューブに接合されており、拡張および収縮することが可能なバルーン部と、
光を利用して圧力を測定することが可能であり、前記バルーン部より遠位側に配置されて、前記バルーン部の遠位側における血管内の血圧を測定する第1光センサと、
光を利用して圧力を測定することが可能であり、前記バルーン部より近位側に配置されて、前記バルーン部の近位側における血管内の血圧を測定する第2光センサと、
を有することを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
遠位端部に配置され、前記バルーン部の遠位端部が接合された先端チップを有し、
前記カテーテルチューブに、前記バルーン部の内部と連通する連通口を有する流体流通用ルーメンが軸方向に形成されており、
前記第1光センサが、前記先端チップの外周面で開口するように前記先端チップに形成された第1センサ収容部に収容されており、
前記第2光センサが、前記カテーテルチューブの外周面で開口するように前記カテーテルチューブの前記バルーン部より近位側に形成された第2センサ収容部に収容されていることを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記カテーテルチューブの遠位端部が、前記先端チップの近位端部に連結されていることを特徴とする請求項2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記先端チップの遠位端部で開口する先端開口部と前記先端チップの側面部で開口する側面開口部とを有するガイドワイヤ挿通孔が、前記先端チップに形成されていることを特徴とする請求項3に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記カテーテルチューブの前記流体流動用ルーメン内に挿通されており、ガイドワイヤ挿通用ルーメンが軸方向に形成されているガイドワイヤチューブを有し、
前記先端チップの遠位端部で開口する先端開口部と前記先端チップの近位端部で開口する基端開口部とを有するガイドワイヤ挿通孔が、前記先端チップに形成されており、
前記バルーン部の近位端部に連結された前記カテーテルチューブの遠位端部から露出する前記ガイドワイヤチューブの遠位端部が前記基端開口部に接続されて、前記ガイドワイヤ挿通用ルーメンが前記ガイドワイヤ挿通孔と連通していることを特徴とする請求項2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記第2センサ収容部が、前記流体流通用ルーメンから隔離されていることを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記流体流通用ルーメンから隔離されたセンサ用ルーメンが前記カテーテルチューブに軸方向に形成されており、前記センサ用ルーメン内に前記第2センサ収容部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルで測定される圧力値に係る処理を行う圧力測定処理システムであって、
前記第1光センサに接続された第1光ファイバおよび前記第2光センサに接続された第2光ファイバを介してそれぞれ伝達される光に基づいて、前記第1光センサにより測定された第1圧力値および前記第2光センサにより測定された第2圧力値をそれぞれ算出する圧力値算出部を備えた圧力測定処理装置を有することを特徴とする圧力測定処理システム。
【請求項9】
前記圧力測定処理装置が、
前記バルーン部を拡張した際に前記第2圧力値の変動範囲が所定範囲内となるか否かを監視する変動監視部と、
前記バルーン部を拡張する前の前記第1圧力値である第1基準値と、前記第2圧力値の変動範囲が所定範囲内となった際の前記第1圧力値である第2基準値とに基づいて、前記第1光センサで測定される第1圧力値に対応する、血管に対する前記バルーン部の占有率を算出する占有率算出部と、
を有することを特徴とする請求項8に記載の圧力測定処理システム。
【請求項10】
視覚的な情報を表示する表示装置を有し、
前記表示装置が、前記占有率算出部で算出された血管に対する前記バルーン部の占有率を表示することを特徴とする請求項9に記載の圧力測定処理システム。
【請求項11】
前記表示装置が、前記第1圧力値および前記第2圧力値の経時変化グラフを表示することを特徴とする請求項10に記載の圧力測定処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管を閉塞するために用いられるバルーンカテーテルおよび圧力測定処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カテーテルの先端部にバルーン部が設けられており、先端部を血管内に挿入してバルーン部を拡張させることで血管内を閉塞して血流をコントロールすることが可能なバルーンカテーテルが知られている。この種のバルーンカテーテルは、オクルージョンカテーテルまたはオクルージョンバルーンカテーテルとも呼ばれており、例えば大腿動脈から下行大動脈に挿入してその先端部に設けられたバルーン部を膨張させることで、大動脈の血流を遮断して脳や心臓の血流および機能を維持する目的で使用される。
【0003】
バルーンを血管内で拡張する際にバルーン部の拡張具合を正確に把握できない場合には、合併症を引き起こす可能性がある。合併症の例としては、バルーン部の過拡張による血管破裂、長時間の止血による下肢虚血、拡張したバルーン部を一気に収縮することによる虚血再灌流障害等が挙げられる。また、バルーン部の拡張不足により血流を適切に遮断できずに血流漏れを起こす可能性もある。
【0004】
下記の特許文献1には、長手方向軸を画定し、カテーテル遠位端に非外傷性先端部を有する膨張カテーテル部材と、膨張カテーテル部材に取り付けられた膨張および収縮可能な閉塞バルーンと、膨張カテーテル部材に取り付けられた膨張可能スパインとを備えており、閉塞バルーンおよび膨張可能スパインが膨張した形態であるとき、バルーン外表面の一部分がスパイン外表面と接触する閉塞カテーテルシステムが記載されている。特許文献1に記載の閉塞カテーテルシステムは、閉塞バルーンの遠位に電子圧力センサからなる遠位圧力センサ、閉塞バルーンの近位に電子圧力センサからなる近位圧力センサを備え、これにより、遠位血圧および近位血圧を監視することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6408176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の閉塞カテーテルシステムで使用されている電子圧力センサは、電気的なノイズの影響を受けやすいという特性を有している。例えば電気メス等の電気的なエネルギーを利用する医療装置と、特許文献1に記載の閉塞カテーテルシステムとを併用した場合、電子圧力センサは、電気的なノイズより血圧を正確に測定することができなくなる。その結果、バルーン部の拡張具合を正確に把握できなくなるおそれがある。
【0007】
また、特許文献1に記載の閉塞カテーテルシステムで使用されている電子圧力センサは、温度変化や時間経過による変動(ドリフト)が発生しやすいという特性を有している。電子圧力センサにドリフトが発生して電子圧力センサの測定精度が下がると、血圧を正確に測定することができなくなる。その結果、バルーン部の拡張具合を正確に把握できなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、電気的なノイズの影響およびセンサのドリフトによる影響を低減して、血圧を精度良くかつ安定して測定することが可能なバルーンカテーテルおよび圧力測定処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係るバルーンカテーテルは、血管を閉塞するために用いるバルーンカテーテルであって、
カテーテルチューブと、
少なくとも近位端部が前記カテーテルチューブに接合されており、拡張および収縮するバルーン部と、
光を利用して圧力を測定することが可能であり、前記バルーン部より遠位側に配置されて、前記バルーン部の遠位側における血管内の血圧を測定する第1光センサと、
光を利用して圧力を測定することが可能であり、前記バルーン部より近位側に配置されて、前記バルーン部の近位側における血管内の血圧を測定する第2光センサと、
を有することを特徴とする。
【0010】
上記の構成により、バルーン部の遠位側に配置された第1光センサ、およびバルーン部の近位側に配置された第2光センサによって血圧を測定することができ、これにより、測定されたこれらの圧力値に基づいて、バルーン部の拡張具合を確認することができるようになる。また、光を利用して圧力を測定する光センサを用いることで、電気的なノイズの影響を受けにくくなり、電気メス等の電界を発生し得る装置の使用時にも、血圧を精度良くかつ安定して測定することができる。さらに、光センサは温度変化や時間経過による変動(ドリフト)が小さいため、経時的に変化し得る体内環境においても、血圧を精度良くかつ安定して測定することができる。
【0011】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、遠位端部に配置され、前記バルーン部の遠位端部が接合された先端チップを有し、
前記カテーテルチューブに前記バルーン部の内部と連通する連通口を有する流体流通用ルーメンが軸方向に形成されており、
前記第1光センサが、前記先端チップの外周面で開口するように前記先端チップに形成された第1センサ収容部に収容されており、
前記第2光センサが、前記カテーテルチューブの外周面で開口するように前記カテーテルチューブの前記バルーン部より近位側に形成された第2センサ収容部に収容されていてもよい。
【0012】
上記の構成により、バルーン部の遠位側に位置する先端チップおよびバルーン部の近位側に位置するカテーテルチューブに第1光センサおよび第2光センサをそれぞれ配置することができ、バルーン部の拡張・収縮を妨げることなく、バルーン部の遠位側および近位側における血圧を測定することができる。
【0013】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記カテーテルチューブの遠位端部が、前記先端チップの近位端部に連結されていてもよい。
【0014】
上記の構成により、カテーテルチューブの遠位端部が先端チップに固定されているので、カテーテルチューブにより先端チップおよびバルーン部の位置を制御することができる。
【0015】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記先端チップの遠位端部で開口する先端開口部と前記先端チップの側面部で開口する側面開口部とを有するガイドワイヤ挿通孔が、前記先端チップに形成されていてもよい。
【0016】
上記の構成により、側面開口部から挿入して先端開口部から露出させるようにガイドワイヤをガイドワイヤ挿通孔に挿通させることで、ガイドワイヤを利用してバルーンカテーテルの遠位端部を体内の所望位置に案内することができる。
【0017】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記カテーテルチューブの前記流体流動用ルーメン内に挿通されており、ガイドワイヤ挿通用ルーメンが軸方向に形成されているガイドワイヤチューブを有し、
前記先端チップの遠位端部で開口する先端開口部と前記先端チップの近位端部で開口する基端開口部とを有するガイドワイヤ挿通孔が、前記先端チップに形成されており、
前記バルーン部の近位端部に連結された前記カテーテルチューブの遠位端部から露出する前記ガイドワイヤチューブの遠位端部が前記基端開口部に接続されて、前記ガイドワイヤ挿通用ルーメンが前記ガイドワイヤ挿通孔と連通していてもよい。
【0018】
上記の構成により、ガイドワイヤチューブの遠位端部が先端チップに固定されているので、ガイドワイヤチューブにより先端チップおよびバルーン部の位置を制御することができる。また、先端チップの先端開口部から露出させるようにガイドワイヤをガイドワイヤチューブおよびガイドワイヤ挿通孔に挿通させることで、ガイドワイヤを利用してバルーンカテーテルの遠位端部を体内の所望位置に案内することができる。さらに、流体流動用ルーメンに挿通可能な細径のガイドワイヤチューブがバルーン部の内部に配置されるので、収縮時のバルーン部の径を細くすることができ、バルーンカテーテルの遠位端部を体内へ挿入しやすくなるとともに、患者の負担を軽減することができる。
【0019】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記第2センサ収容部が、前記流体流通用ルーメンから隔離されていてもよい。
【0020】
上記の構成により、第2センサ収容部からバルーン部の拡張に必要な流体の流出を防ぐことができ、バルーン部を適切に拡張させることができる。
【0021】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記流体流通用ルーメンから隔離されたセンサ用ルーメンが前記カテーテルチューブに軸方向に形成されており、前記センサ用ルーメン内に前記第2センサ収容部が設けられていてもよい。
【0022】
上記の構成により、カテーテルチューブ内に流体流通用ルーメンおよびセンサ用ルーメンを形成して、センサ用ルーメン内に第2センサ収容部を設けることで、第2センサ収容部からバルーン部の拡張に必要な流体の流出を確実に防ぐことができ、バルーン部を適切に拡張させることができる。
【0023】
また、本発明に係る圧力測定処理システムは、上記のバルーンカテーテルで測定される圧力値に係る処理を行う圧力測定処理システムであって、
前記第1光センサに接続された第1光ファイバおよび前記第2光センサに接続された第2光ファイバを介してそれぞれ伝達される光に基づいて、前記第1光センサにより測定された第1圧力値および前記第2光センサにより測定された第2圧力値をそれぞれ算出する圧力値算出部を備えた圧力測定処理装置を有することを特徴とする。
【0024】
上記の構成により、バルーン部の遠位側に配置された第1光センサ、およびバルーン部の近位側に配置された第2光センサによって測定される血圧を、第1圧力値および第2圧力値として算出することができる。
【0025】
本発明に係る圧力測定処理システムは、上記の構成において、前記圧力測定処理装置が、
前記バルーン部を拡張した際に前記第2圧力値の変動範囲が所定範囲内となるか否かを監視する変動監視部と、
前記バルーン部を拡張する前の前記第1圧力値である第1基準値と、前記第2圧力値の変動範囲が所定範囲内となった際の前記第1圧力値である第2基準値とに基づいて、前記第1光センサで測定される第1圧力値に対応する、血管に対する前記バルーン部の占有率を算出する占有率算出部と、
を有していてもよい。
【0026】
上記の構成により、第2圧力値の変動範囲を監視して、前記第2圧力値の変動範囲が所定範囲内となった場合にバルーン部が完全に拡張して血管を塞いだ状態となっていることを確認することができる。特に、患者の大腿動脈から挿入したバルーン部を下行大動脈に留置する場合に有用であり、バルーン部が完全に拡張して血管を塞ぐとバルーン部の近位側で血圧変動が小さくなるため、第2圧力値の変動範囲を監視することでバルーン部の拡張具合を確認することができる。また、例えば、第1光センサによる測定値が第1基準値である場合の血管に対するバルーン部の占有率を0%とし、第1光センサによる測定値が第2基準値である場合の血管に対するバルーン部の占有率を100%とすることで、第1光センサによる測定値に対応するバルーン部の占有率を具体的な数値として算出することができる。
【0027】
本発明に係る圧力測定処理システムは、上記の構成において、視覚的な情報を表示する表示装置を有し、
前記表示装置が、前記占有率算出部で算出された血管に対する前記バルーン部の占有率を表示してもよい。
【0028】
上記の構成により、施術者は、血管に対するバルーン部の占有率を視覚的に確認することができる。これにより、施術者は、バルーン部の拡張具合を把握することができ、血管破裂が起こり得るバルーン部の過拡張や、虚血再灌流障害が起こり得るバルーン部の急激な収縮等が生じないように、バルーン部の拡張・収縮を適切に制御することができる。
【0029】
本発明に係る圧力測定処理システムは、上記の構成において、前記表示装置が、前記第1圧力値および前記第2圧力値の経時変化グラフを表示してもよい。
【0030】
上記の構成により、施術者は、バルーン部の拡張具合の経時変化を視覚的に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係るバルーンカテーテルの遠位端側を患者の体内に挿入した状態を模式的に示す図である。
図2】本発明の第1実施形態におけるバルーンカテーテルの一例を示す概略断面図である。
図3図2に示すバルーンカテーテルの先端チップ近傍の部分拡大断面図である。
図4図2に示すバルーンカテーテルのバルーン部の近位端部近傍の部分拡大断面図である。
図5】本発明の第1実施形態における圧力測定処理システムの構成を示す機能ブロック図である。
図6】本発明の第1実施形態におけるバルーンカテーテルによって測定された第1圧力値および第2圧力値の経時変化グラフである。
図7】本発明の第1実施形態における圧力測定処理システムによってディスプレイに表示される表示画面の一例を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態におけるバルーンカテーテルの一例を示す概略断面図である。
図9図8に示すバルーンカテーテルの先端チップ近傍の部分拡大断面図である。
図10図8に示すバルーンカテーテルのバルーン部の近位端部近傍の部分拡大断面図である。
図11】本発明の第3実施形態におけるバルーンカテーテルの一例を示す概略断面図である。
図12図11に示すバルーンカテーテルのバルーン部の近位端部近傍の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本明細書では、本発明に係るバルーンカテーテルの使用者である施術者を基準として、患者の体内側を遠位側とし、施術者の手元側を近位側とする。本明細書において参照する図面は、実際の寸法に対して必ずしも正確な縮尺を有するものではなく、本発明に係る構成を模式的に示すために一部を誇張または簡略化したものである。
【0033】
本発明に係るバルーンカテーテルは、拡張および収縮が可能なバルーン部が遠位端側に設けられており、血管内にバルーン部を挿入してバルーン部を拡張することで血管を閉塞するために用いられるカテーテルである。
【0034】
一例として図1に示すように、本発明に係るバルーンカテーテル10は、長尺のカテーテルチューブ20の遠位端部にバルーン部50を備えており、当該バルーン部50を大量出血のある患者または大量出血が生じるおそれのある患者の太腿の付け根部分から大腿動脈に挿入して下行大動脈まで運び、下行大動脈内でバルーン部50を拡張させることで下肢側への血流を抑制し、心臓や脳の血流を維持してこれらの機能を維持するために用いることができる。ただし、本発明に係るバルーンカテーテル10を用いて血流を抑制する対象となる血管は、下行大動脈に限定されず、任意の血管に適用してその血流を抑制することができる。また、バルーンカテーテル10の遠位端部が体内に挿入される位置も大腿動脈に限定されず、様々な位置からアプローチして血管内の所望位置にバルーン部50を配置することができる。
【0035】
本発明に係るバルーンカテーテル10は、光を利用して圧力を測定することが可能な第1光センサ110がバルーン部50の遠位側に配置され、光を利用して圧力を測定することが可能な第2光センサ120がバルーン部50の近位側に配置されている。これにより、第1光センサ110がバルーン部50の遠位側における血管内の血圧を、第2光センサ120がバルーン部50の近位側における血管内の血圧を、それぞれ独立して測定することが可能なように構成されている。
【0036】
光を利用して圧力を測定する第1光センサ110および第2光センサ120を用いることで、電気的なノイズの影響を受けにくくなり、電気メス等の電界を発生し得る装置の使用時にも、血圧を精度良くかつ安定して測定することができるようになる。さらに、第1光センサ110および第2光センサ120は温度変化や時間経過による変動(ドリフト)が小さいため、経時的に変化し得る体内環境においても、血圧を精度良くかつ安定して測定することができるようになる。
【0037】
以下に説明する各実施形態は、上記構成を具体的に実現するものであるが、本発明はこれらの各実施形態に限定されるものではない。
【0038】
<第1実施形態>
以下、図2図7を参照しながら、本発明の第1実施形態について説明する。
【0039】
図2は、本発明の第1実施形態におけるバルーンカテーテル10Aの一例を示す概略断面図である。図2に示すように、第1実施形態におけるバルーンカテーテル10Aは、長尺のカテーテルチューブ20Aの遠位端部にバルーン部50が取り付けられ、カテーテルチューブ20Aの近位端部に分岐部80Aが連結されて概略構成されている。第1実施形態におけるバルーンカテーテル10Aは、図1に示すバルーンカテーテル10に対応するものであり、第1実施形態におけるカテーテルチューブ20Aは、図1に示すカテーテルチューブ20に対応するものである。
【0040】
カテーテルチューブ20Aは、その内部に軸方向に沿って内腔が形成された管状構造の長尺部材である。カテーテルチューブ20Aは、1つの内腔が形成されたシングルルーメンタイプのチューブである。
【0041】
カテーテルチューブ20Aの内腔は、バルーン部50の内部で開口する圧力流体導通口21Aを介してバルーン部50の内部に連通しており、バルーン部50の内部に対して圧力流体を流出入させることが可能な圧力流体導通路22Aとして機能する。すなわち、カテーテルチューブ20Aの内部には、バルーン部50の内部への連通口を有し、圧力流体を流通させる流体流通用ルーメンが軸方向に形成されている。第1実施形態における圧力流体導通口21Aは、カテーテルチューブ20Aの遠位端開口部である。また、カテーテルチューブ20Aの圧力流体導通路22Aは、第1光センサ110に接続した光ファイバ111および第2光センサ120に接続する光ファイバ121の挿通経路としての役割も有している。
【0042】
カテーテルチューブ20Aの遠位端部にはバルーン部50の近位端部50bが接合されており、カテーテルチューブ20Aの近位端部には分岐部80Aの遠位端部が連結されている。
【0043】
カテーテルチューブ20Aには、バルーン部50の近位端部50bが接合された接合位置より近位側に、第2光センサ120を収容する第2センサ収容部30Aが設けられている。第2センサ収容部30Aの詳細については後述する。
【0044】
カテーテルチューブ20Aは、特に限定されないが、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等の合成樹脂で構成され、ステンレス鋼線等を埋設してもよい。カテーテルチューブ20Aの内径および肉厚は特に限定されないが、内径は、好ましくは1.5~4.0mmであり、肉厚は、好ましくは0.05~0.4mmである。カテーテルチューブ20Aの長さも特に限定されないが、好ましくは300~800mmである。
【0045】
また、第1実施形態におけるカテーテルチューブ20Aとして、図2に示すように内腔が軸芯から偏って形成されたチューブを使用してもよい。後述するように、第2光センサ120を収容する第2センサ収容部30Aは、カテーテルチューブ20Aの外周面に開口する収容空間31Aを形成する。カテーテルチューブ20Aとして内腔が軸芯から偏って形成されたチューブを使用した場合、内周面(内腔の周壁面)と外周面との距離が相対的に大きい肉厚部に、第2光センサ120の収容が可能な収容空間31Aを形成することができる。
【0046】
カテーテルチューブ20Aの内腔には、ガイドワイヤチューブ40Aが挿通されている。すなわち、カテーテルチューブ20Cの流体流通用ルーメン内にガイドワイヤチューブ40Cが挿通されており、カテーテルチューブ20Aを外管とし、その内側に内管としてガイドワイヤチューブ40Aが挿通された構成となっている。ガイドワイヤチューブ40Aは、カテーテルチューブ20Aおよびバルーン部50の内部を軸方向に延在する管状構造の長尺部材である。
【0047】
カテーテルチューブ20Aの内周面とガイドワイヤチューブ40Aの外周面とは、軸方向の一部または全体にわたって接着剤等により固着されてもよい。カテーテルチューブ20Aとガイドワイヤチューブ40Aとを固着することで、カテーテルチューブ20A内の圧力流体導通路22Aにおける圧力流体の流路抵抗を低くすることができる。固着に用いる接着剤としては、特に限定されず、シアノアクリレート系接着剤、エポキシ系接着剤等の接着剤を用いることができ、シアノアクリレート系接着剤を用いることが特に好ましい。
【0048】
ガイドワイヤチューブ40Aの内部に形成された内腔は、バルーン部50の内部およびカテーテルチューブ20A内の圧力流体導通路22Aとは連通しておらず、バルーン部50を血管内の所定位置まで誘導するために用いられるガイドワイヤ(図示省略)を挿通させることが可能なガイドワイヤ通路41Aとして機能する。すなわち、ガイドワイヤチューブ40Aの内部には、ガイドワイヤ挿通用ルーメンが軸方向に形成されている。ガイドワイヤチューブ40Aの遠位端部は、内部のガイドワイヤ通路41Aと先端チップ60Aのガイドワイヤ挿通孔61Aとが連通するように、熱融着あるいは接着等の手段で先端チップ60Aの近位端部に接続されている。ガイドワイヤチューブ40Aの近位端部は、後述する分岐部80Aの二次ポート82Aに連通するように分岐部80Aに接続されている。
【0049】
ガイドワイヤチューブ40Aの外径は、特に限定されないが、好ましくは、0.5~1.5mmであり、カテーテルチューブ20Aの内径の30~60%が好ましい。ガイドワイヤチューブ40Aの外径は軸方向に沿って略同じである。ガイドワイヤチューブ40Aは、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の合成樹脂チューブ、あるいはニッケルチタン合金細管、ステンレス鋼細管等で構成される。また、ガイドワイヤチューブ40Aを合成樹脂チューブで構成する場合は、ステンレス鋼線等を埋設してもよい。
【0050】
カテーテルチューブ20Aの遠位端部には、バルーン部50が取り付けられている。バルーン部50は、カテーテルチューブ20Aの軸方向に対して垂直な方向に拡張(膨張)および収縮可能なように構成されている。使用時には、バルーン部50は、収縮した状態で挿入されて血管内の所定位置に配置された後、バルーン部50の内部に圧力流体を流入させて拡張することで、バルーン部50の遠位側と近位側との間における血流を抑制できるようになっている。
【0051】
バルーン部50は、膜厚50~500μm程度の薄膜で構成される。バルーン部50を構成する薄膜の材質は、特に限定されないが、伸縮性に優れた材質であることが好ましく、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンエラストマー等により構成される。
【0052】
バルーン部50の外径および長さは、バルーン部50により血流を抑制する血管の内径等に応じて決定される。バルーン部50の外径は、拡張時で12~40mmが好ましく、バルーン部50の長さは、30~90mmが好ましい。
【0053】
バルーン部50の遠位端部50aは、先端チップ60Aの外周面に接合されており、バルーン部50の近位端部50bは、カテーテルチューブ20Aの遠位端部の外周面に接合されている。バルーン部50と先端チップ60Aおよびカテーテルチューブ20Aとの接合は、例えば、熱融着あるいは接着等の手段により行われる。なお、カテーテルチューブ20Aの遠位端部の外周面に放射線不透過性金属リング等からなる造影マーカを配置し、カテーテルチューブ20Aおよび造影マーカの外周面に上からバルーン部50の近位端部50bを接合してもよい。
【0054】
バルーン部50の遠位端部50aおよび近位端部50bは、バルーン部50の内部の圧力流体がバルーン部50の外部に漏れないように、それぞれカテーテルチューブ20Aの外周面および先端チップ60Aの外周面と接合されている。したがって、バルーン部50の内部は、カテーテルチューブ20Aの遠位端の開口である圧力流体導通口21Aを通じて、カテーテルチューブ20Aの内部に形成された圧力流体導通路22Aのみと連通している。これにより、圧力流体が圧力流体導通口21Aを通じてバルーン部50の内部に導入および導出されると、バルーン部50は拡張および収縮できるようになっている。
【0055】
バルーン部50は収縮した状態で血管内に挿入される。バルーン部50は、血管内の所定位置に配置された後、内部に圧力流体が導入されることで拡張される。
【0056】
ガイドワイヤチューブ40Aの遠位端部には、先端チップ60Aの近位端部が接続されている。先端チップ60Aは、バルーンカテーテル10Aの最も遠位側に配置されている部材である。先端チップ60Aは、血管内へ挿入された際に血管壁等を傷つけることがないよう、例えば遠位側が滑らかな曲面または先細テーパ状となった円筒形状を有している。
【0057】
先端チップ60Aの内部には、ガイドワイヤ挿通孔61Aおよび第1センサ収容部70Aが形成されている。ガイドワイヤ挿通孔61Aは、先端チップ60Aの遠位端および近位端で開口し、軸方向に延在する貫通孔である。例えばガイドワイヤ挿通孔61Aの近位端の開口(図3に示す基端開口部63A)は、ガイドワイヤチューブ40Aが嵌入できるように形成されており、熱融着あるいは接着等の手段でガイドワイヤチューブ40Aと先端チップ60Aとが連結できるようになっている。
【0058】
使用時には、ガイドワイヤをガイドワイヤ通路41Aおよびガイドワイヤ挿通孔61Aに挿通させることで、バルーン部50をガイドワイヤに沿って体内の所定位置に搬入することができるようになっている。ガイドワイヤ挿通孔61Aの内径は、ガイドワイヤが挿通可能な大きさであればよい。
【0059】
先端チップ60Aの外周面には、バルーン部50の遠位端部50aが接合されている。バルーン部50と先端チップ60Aとの接続は、熱融着あるいは接着等により行われる。
【0060】
先端チップ60Aには、バルーン部50の遠位端部50aが接合された接合位置より遠位側に、第1光センサ110を収容する第1センサ収容部70Aが設けられている。第1センサ収容部70Aは、ガイドワイヤ挿通孔61Aから離隔するように形成されている。第1センサ収容部70Aの詳細については後述する。
【0061】
先端チップ60Aの長さおよび大きさは特に限定されないが、その長さは、10~30mm程度であり、その外径は、例えばカテーテルチューブ20Aの外径と同程度またはそれより小さく設定される。また、先端チップ60Aの材質および形成方法も特に限定されず、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等の合成樹脂材料を用いて、射出成形法により製造することができる。
【0062】
第1実施形態におけるバルーンカテーテル10Aは、バルーン部50より遠位側に配置された第1光センサ110と、バルーン部50より近位側に配置された第2光センサ120とを有している。
【0063】
第1光センサ110は、先端チップ60Aに設けられた第1センサ収容部70Aに配置されている。第1光センサ110は、光を利用して圧力を測定することが可能な光圧力センサであり、バルーン部50の近位側における血圧を測定することが可能である。
【0064】
第1実施形態で使用する第1光センサ110としては、受圧面(受圧ダイヤフラム)に加わる圧力変化を、光ファイバを通じて伝送する光の強度変化として検出する既存の光圧力センサ等を用いることができる。本技術分野で一般的に用いられる既存の光圧力センサの外径寸法は0.1~0.5mmである。なお、光圧力センサは、一般的に、受圧面を有するセンサ部と、センサ部に一体化して接続されている光ファイバとにより構成されているが、本明細書では、光圧力センサのセンサ部を第1光センサ110と記載する。
【0065】
先端チップ60Aに設けられた第1センサ収容部70Aは、第1光センサ110を収容することが可能な大きさの収容空間71Aを形成するとともに、先端チップ60Aの外周面に開口した採圧開口部72Aを有している。
【0066】
第1センサ収容部70Aの収容空間71Aには第1光センサ110が収容され、第1光センサ110に一体化して繋がった光ファイバ111は、先端チップ60Aの近位面を通じてバルーン部50の内部を延伸している。
【0067】
採圧開口部72Aは、第1光センサ110が外部圧力(すなわち、血管内を流れる血液の血圧)を検出できるように開口していればよく、その開口径は特に限定されないが、第1光センサ110が採圧開口部72Aを通過できない程度の大きさまたは形状に形成されていることが好ましい。また、採圧開口部72Aの開口位置は外部圧力を適切に検出できる位置であればよく、採圧開口部72Aは、例えばバルーン部50の遠位端部50aとの接合位置より遠位側に形成されることが好ましい。
【0068】
なお、図3を参照して後述するように、第1センサ収容部70Aの収容空間71Aと先端チップ60Aの近位面との間には、光ファイバ111を通す通孔が形成されているが、この通孔は、光ファイバ111を通した状態で例えば硬化性樹脂131等によって塞がれる。これにより、第1センサ収容部70Aの収容空間71Aは、実質的に採圧開口部72Aのみで開口したものとなる。
【0069】
また、図3を参照して後述するように、第1センサ収容部70Aの収容空間71Aには、第1光センサ110を収容した状態で、第1光センサ110の周辺に圧力伝達物質132が充填されてもよい。収容空間71Aに充填された圧力伝達物質132は、採圧開口部72Aを通じて外部と直接接触し、圧力伝達物質132に加わる外部圧力を第1光センサ110に伝達することができる。
【0070】
先端チップ60Aの近位面を通じてバルーン部50の内部を延伸する光ファイバ111は、さらにカテーテルチューブ20Aの内腔(圧力流体導通路22A)を延伸している。光ファイバ111の近位端部は、後述する分岐部80Aの三次ポート83Aに接続されている。
【0071】
光ファイバ111は、バルーン部50の内部では、ガイドワイヤチューブ40Aの外周面に螺旋状に巻きつけられつつ、ガイドワイヤチューブ40Aの軸方向に向かって延伸している。なお、上述したように、血管内に挿入される際、収縮した状態のバルーン部50はガイドワイヤチューブ40Aの外周面に巻きつけられるが、このとき、バルーン部50は、光ファイバ111が螺旋状に巻きつけられたガイドワイヤチューブ40Aの外周面に巻きつけられた状態となる。
【0072】
光ファイバ111は、カテーテルチューブ20Aの内腔では、カテーテルチューブ20Aの軸方向に延伸している。光ファイバ111は、その外周面の一部または軸方向全体がカテーテルチューブ20Aの内周面やガイドワイヤチューブ40Aの外周面に接着剤等で固定されてもよい。
【0073】
第2光センサ120は、カテーテルチューブ20Aに設けられた第2センサ収容部30Aに配置されている。第2光センサ120は、光を利用して圧力を測定することが可能な光圧力センサであり、バルーン部50の近位側における血圧を測定することが可能である。
【0074】
第1実施形態で使用する第2光センサ120としては、受圧面(受圧ダイヤフラム)に加わる圧力変化を、光ファイバを通じて伝送する光の強度変化として検出する既存の光圧力センサ等を用いることができる。本技術分野で一般的に用いられる既存の光圧力センサの外径寸法は0.1~0.5mmである。第2光センサ120は、上述した第1光センサ110と同種のものであってもよい。なお、第1光センサ110と同様に、本明細書では、光圧力センサのセンサ部を第2光センサ120と記載する。
【0075】
カテーテルチューブ20Aに設けられた第2センサ収容部30Aは、第2光センサ120を収容することが可能な大きさの収容空間31Aを形成するとともに、カテーテルチューブ20Aの外周面に開口した採圧開口部32Aを有している。第2センサ収容部30Aを設ける方法は特に限定されないが、一例として、図2に示すカテーテルチューブ20Aのように内腔が軸芯から偏って形成されたチューブを用いて、内周面(内腔の周壁面)と外周面との距離が相対的に大きい肉厚部に、第2光センサ120が収容可能な収容空間31Aを含む第2センサ収容部30Aを形成することができる。
【0076】
第2センサ収容部30Aの収容空間31Aには第2光センサ120が収容され、第2光センサ120に一体化して繋がった光ファイバ121は、カテーテルチューブ20Aの内周面を通じてカテーテルチューブ20Aの内腔(圧力流体導通路22A)を延伸している。
【0077】
採圧開口部32Aは、第2光センサ120が外部圧力(すなわち、血管内を流れる血液の血圧)を検出できるように開口していればよく、その開口径は特に限定されないが、第2光センサ120のセンサ部が採圧開口部を通過できない程度の大きさまたは形状に形成されることが好ましい。また、採圧開口部32Aの開口位置は外部圧力を検出できる位置であればよく、採圧開口部32Aは、例えばバルーン部50の近位端部50bとの接合位置より近位側に形成されることが好ましい。
【0078】
なお、図4を参照して後述するように、第2センサ収容部30Aの収容空間31Aとカテーテルチューブ20Aの内周面との間には、光ファイバ121を通す通孔が形成されているが、この通孔は光ファイバ121を通した状態で例えば硬化性樹脂141等によって塞がれる。これにより、第2センサ収容部30Aの収容空間31Aは、実質的に採圧開口部32Aのみで開口したものとなる。
【0079】
また、図4を参照して後述するように、第2センサ収容部30Aの収容空間31Aには、第2光センサ120を収容した状態で、第2光センサ120の周辺に圧力伝達物質142が充填されてもよい。収容空間31Aに充填された圧力伝達物質142は、採圧開口部32Aを通じて外部と直接接触し、圧力伝達物質142に加わる外部圧力を第2光センサ120に伝達することができる。
【0080】
カテーテルチューブ20Aの内周面を通じてカテーテルチューブ20Aの内腔に入り込んだ光ファイバ121は、カテーテルチューブ20Aの内腔を軸方向に延伸している。光ファイバ121の近位端部は、後述する分岐部80Aの三次ポート83Aに接続されている。
【0081】
光ファイバ121は、カテーテルチューブ20Aの内腔では、カテーテルチューブ20Aの軸方向に向かって延伸している。光ファイバ121は、その外周面の一部または軸方向全体がカテーテルチューブ20Aの内周面やガイドワイヤチューブ40Aの外周面に接着剤等で固定されてもよい。
【0082】
カテーテルチューブ20Aの近位端部には、分岐部80Aが連結されている。分岐部80Aは、カテーテルチューブ20Aとは別体に成形され、熱融着あるいは接着等の手段でカテーテルチューブ20Aと連結されている。分岐部80Aには、カテーテルチューブ20A内の圧力流体導通路22Aおよび一次ポート81Aに連通する一次通路84A、ガイドワイヤチューブ40A内のガイドワイヤ通路41Aおよび二次ポート82Aに連通する二次通路85A、光ファイバ111、121が延伸する圧力流体導通路22Aおよび三次ポート83Aに連通する三次通路86Aが形成されている。
【0083】
一次ポート81Aは、シリンジ等を接続できるように構成されており、そのシリンジ等により、バルーン部50の内部に圧力流体を導入および導出できるようになっている。一次通路84Aは、分岐部80Aの遠位端部で直線状に延びており、圧力流体導通路22Aに対して真っ直ぐに接続されている。これにより、圧力流体導通路22Aの内部では、一次ポート81Aを介して導入および導出される圧力流体の流路抵抗が低減される。圧力流体としては、特に限定されないが、生理食塩水が好適に用いられる。
【0084】
二次ポート82Aは、図示省略されているガイドワイヤを挿入できるようになっている。二次ポート82Aに連通する二次通路85Aは、分岐部80Aの遠位端部で直線状に延びている。分岐部80Aの遠位端部において、二次通路85Aは、ガイドワイヤ通路41Aと連通するようにガイドワイヤチューブ40Aの近位端部と結合している。二次ポート82Aから挿入されたガイドワイヤは、二次通路85Aおよびガイドワイヤ通路41Aを通って、先端チップ60Aのガイドワイヤ挿通孔61Aから外部に露出できるようになっている。
【0085】
三次ポート83Aには、光ファイバ121を挿通させるための三次通路86Aが連通している。三次通路86Aは一次通路84Aと連通しており、三次ポート83Aから、第1光センサ110に接続する光ファイバ111および第2光センサ120に接続する光ファイバ121のそれぞれの近位端が引き出されるようになっている。光ファイバ111、121は、三次ポート83Aの引き出し口に近接する三次通路86Aの内部に接着固定されている。三次ポート83Aにおける光ファイバ111、121の引き出し口は、一次通路84Aを流れる圧力流体が外部に漏れないようにするためのシール構造を有している。
【0086】
光ファイバ111、121の近位端には光コネクタ150が接続され、光コネクタ150には、後述する圧力測定処理装置200(図5参照)が接続される。圧力測定処理装置200は、後述するように、第1光センサ110および第2光センサ120のそれぞれで検出した圧力に関する処理を行うように構成されている。
【0087】
図3は、図2に示すバルーンカテーテル10Aの先端チップ60A近傍の部分拡大断面図である。
【0088】
図3に示すように、先端チップ60Aの近位端部の外周面には、バルーン部50の遠位端部50aが接合されている。先端チップ60Aの内部に形成されているガイドワイヤ挿通孔61Aは、先端チップ60Aの遠位端で開口する先端開口部62Aと、先端チップ60Aの近位面で開口する基端開口部63Aとの間で軸方向に延在する貫通孔である。基端開口部63Aにはガイドワイヤチューブ40Aの遠位端部が挿入され、ガイドワイヤチューブ40Aと先端チップ60Aとが連結されている。先端チップ60Aのガイドワイヤ挿通孔61Aは、ガイドワイヤチューブ40Aの内腔であるガイドワイヤ通路41Aと連通している。ガイドワイヤ通路41Aに挿通されたガイドワイヤ(図示省略)は、基端開口部63Aからガイドワイヤ挿通孔61Aを通じて先端開口部62Aの外部に露出するように挿通可能となっている。
【0089】
先端チップ60Aには第1光センサ110を収容する第1センサ収容部70Aが形成されている。第1センサ収容部70Aは、ガイドワイヤ挿通孔61Aと連通せずに離隔している。第1センサ収容部70Aは、第1光センサ110を収容する収容空間71A、収容空間71Aを外部へ開口する採圧開口部72Aを有している。
【0090】
採圧開口部72Aの形成位置は特に限定されないが、バルーン部50の遠位端部50aとの接合位置より遠位側に形成されることが好ましく、例えば先端チップ60Aの遠位端側に開口するように形成される。また、採圧開口部72Aの開口径は、第1光センサ110が通り抜けない寸法に設定されることが好ましい。これにより、例えば第1光センサ110に接続されている光ファイバ111が第1光センサ110近傍で折れた場合であっても、第1光センサ110が収容空間71Aの外部へ流出しないようにすることができる。
【0091】
先端チップ60Aには、収容空間71Aに連通する光ファイバ通孔73Aが形成されている。光ファイバ通孔73Aは、バルーン部50の内部に連通するように開口する近位側の通孔開口部74Aを有している。
【0092】
光ファイバ通孔73Aには、先端チップ60Aの側方に向かって延在する硬化性樹脂充填孔が連通している。硬化性樹脂充填孔は、先端チップ60Aの側周面から外部に連通する充填孔開口部75A~77Aを有している。なお、図3では先端チップ60Aの軸方向に沿って3つの硬化性樹脂充填孔が形成されているが、硬化性樹脂充填孔の個数は特に限定されない。
【0093】
収容空間71A内に第1光センサ110を配置する場合には、まず、第1光センサ110に接続する光ファイバ111の近位端を採圧開口部72Aから光ファイバ通孔73Aに挿通して、光ファイバ通孔73Aの近位側の通孔開口部74Aから露出させる。そして、光ファイバ111をそのまま押し進めて光ファイバ111の近位端を分岐部80Aの三次ポート83Aから引き出し、第1光センサ110の遠位端に接続された第1光センサ110を、採圧開口部72Aに通して収容空間71Aに配置する。
【0094】
次いで、充填孔開口部75A~77Aから硬化性樹脂131を流入して、光ファイバ通孔73A内に硬化性樹脂131を充填する。そして、硬化性樹脂131を硬化させ、光ファイバ111を光ファイバ通孔73A内に固定する。硬化性樹脂131の充填量は、光ファイバ通孔73Aを閉塞する量に調整されることが好ましく、収容空間71A内に配置された第1光センサ110に達しない量に調整されることが好ましい。また、硬化性樹脂131を充填した後に、通孔開口部74Aおよび充填孔開口部75A~77Aに樹脂を垂らして樹脂膜を形成してもよい。その後、熱融着あるいは接着等の手段により、先端チップ60Aの外周面にバルーン部50の遠位端部50aを接合する。
【0095】
硬化性樹脂131としては、例えば、シアノアクリレート系接着剤等の湿気硬化型接着剤、エポキシ系一液型接着剤等の加熱硬化型接着剤、エポキシ系二液型接着剤等の二液混合硬化型接着剤を使用することができる。
【0096】
光ファイバ通孔73Aが硬化性樹脂131によって塞がることで、収容空間71Aは実質的に採圧開口部72Aでのみ開口した状態となる。次いで、採圧開口部72Aを通じて収容空間71Aに圧力伝達物質132を流入して、収容空間71Aに収容されている第1光センサ110の周囲に圧力伝達物質132を充填する。
【0097】
圧力伝達物質132としては、例えば、シリコーンゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリエチレンオキサイドゲル等のゲル状物質、シリコーンオイル等のオイル状物質等を使用することができる。
【0098】
収容空間71Aに硬化性樹脂131を充填する際、収容空間71A内(特に、第1光センサ110の周囲)に空気が残らないようにすることが好ましい。例えば、採圧開口部72A以外に収容空間71Aを外部に開口する樹脂充填用孔を設け、樹脂充填用孔から圧力伝達物質132を流入して採圧開口部72Aから収容空間71A内の空気を外部に逃がすようにしてもよい。樹脂充填用孔を設けた場合には、圧力伝達物質132を収容空間71Aに充填した後、樹脂充填用孔の開口部に樹脂を垂らして樹脂膜を形成することで、樹脂充填用孔から圧力伝達物質132が外部に流出するのを防ぐようにしてもよい。
【0099】
なお、上述した構成では、充填孔開口部75A~77Aから硬化性樹脂131を流入して硬化させることで光ファイバ111を固定し、かつ、収容空間71Aが採圧開口部72Aのみで開口するように硬化性樹脂131によって隔壁を形成しているが、光ファイバ111の固定および収容空間71Aの隔壁形成はこの方法に限定されない。例えば、光ファイバ111の挿通および固定が可能であり、かつ、圧力伝達物質132の封止が可能な隔壁材を光ファイバ通孔73A内に配置してもよい。この隔壁材は、ウレタン、アクリル、シリコーン、エポキシ等の樹脂材料で構成することができる。また、硬化性樹脂131および隔壁材の両方を用いて、第1光センサ110を収容する収容空間71Aが実質的に採圧開口部72Aのみで外部に開口するようにしてもよい。
【0100】
図4は、図2に示すバルーンカテーテル10Aのバルーン部50の近位端部50b近傍の部分拡大断面図である。
【0101】
図4に示すように、カテーテルチューブ20Aの遠位端部の外周面には、バルーン部50の近位端部50bが接合されている。カテーテルチューブ20Aの遠位端開口部は、バルーン部50の内部で開口しており、カテーテルチューブ20Aの内腔を圧力流体導通路22Aとして流動する圧力流体をバルーン部50の内部に対して流出入させるための圧力流体導通口21Aとして機能する。
【0102】
カテーテルチューブ20Aの内腔には、ガイドワイヤチューブ40Aが挿通されている。ガイドワイヤチューブ40Aの内腔は、ガイドワイヤ(図示省略)の挿通が可能なガイドワイヤ通路41Aとして機能する。ガイドワイヤチューブ40Aは、カテーテルチューブ20Aの遠位端開口部から露出してバルーン部50の内部に延在し、上述したように先端チップ60Aと連結している。
【0103】
カテーテルチューブ20Aの内腔には、さらに、光ファイバ111、121が挿通されている。光ファイバ111は、カテーテルチューブ20Aの遠位端開口部から露出してバルーン部50の内部に延在し、上述したように先端チップ60Aの第1センサ収容部70Aに収容された第1光センサ110に接続されている。光ファイバ121は、カテーテルチューブ20Aの遠位端部に形成されている第2センサ収容部30Aに収容された第2光センサ120に接続されている。
【0104】
カテーテルチューブ20Aの遠位端部には第2光センサ120を収容する第2センサ収容部30Aが形成されている。第2センサ収容部30Aは、カテーテルチューブ20Aの内腔である圧力流体導通路22Aと連通せずに離隔している。第2センサ収容部30Aは、第2光センサ120を収容する収容空間31A、収容空間31Aを外部へ開口する採圧開口部32Aを有している。
【0105】
採圧開口部32Aの形成位置は特に限定されないが、バルーン部50の近位端部50bとの接合位置より近位側であって当該接合位置の近傍に形成されることが好ましい。また、採圧開口部32Aの開口径は、第2光センサ120が通り抜けない寸法に設定されることが好ましい。これにより、例えば第2光センサ120に接続されている光ファイバ121が第2光センサ120近傍で折れた場合であっても、第2光センサ120が収容空間31Aの外部へ流出しないようにすることができる。
【0106】
カテーテルチューブ20Aには、収容空間31Aに連通する光ファイバ通孔33Aが形成されている。光ファイバ通孔33Aは、カテーテルチューブ20Aの内腔に連通するように開口する通孔開口部34Aを有している。
【0107】
光ファイバ通孔33Aは、カテーテルチューブ20Aの外周面に開口する充填孔開口部35Aと、カテーテルチューブ20Aの遠位端で開口する遠位端開口部36Aとを有している。なお、図4では1つの充填孔開口部35Aが形成されているが、充填孔開口部35Aの個数は特に限定されない。また、遠位端開口部36Aは、第2光センサ120の収容空間31Aへの配置を容易にするために設けられており、光ファイバ通孔33Aは、必ずしも遠位端開口部36Aを有する必要はない。
【0108】
収容空間31A内に第2光センサ120を配置する場合には、まず、第2光センサ120に接続する光ファイバ111の近位端を遠位端開口部36Aまたは採圧開口部32Aから光ファイバ通孔33Aに挿通し、光ファイバ通孔33Aの近位側の通孔開口部34Aからカテーテルチューブ20Aの内腔に挿入する。そして、光ファイバ121をそのまま押し進めて光ファイバ121の近位端を分岐部80Aの三次ポート83Aから引き出し、第2光センサ120の遠位端に接続された第2光センサ120を遠位端開口部36Aまたは採圧開口部32Aに通して収容空間31Aに配置する。
【0109】
次いで、充填孔開口部35Aから硬化性樹脂141を流入して、光ファイバ通孔33A内の近位側に硬化性樹脂141を充填する。そして、硬化性樹脂141を硬化させ、光ファイバ121を光ファイバ通孔33A内に固定する。これにより、光ファイバ通孔33Aの採圧開口部32Aより近位側が硬化性樹脂によって閉塞される。硬化性樹脂141の充填量は、光ファイバ通孔33Aの近位側を閉塞する量に調整されることが好ましく、収容空間31A内に配置された第2光センサ120に達しない量に調整されることが好ましい。
【0110】
また、光ファイバ通孔33Aが遠位端開口部36Aで開口している場合には、遠位端開口部36Aから硬化性樹脂141を流入して、光ファイバ通孔33A内の遠位側に硬化性樹脂141を充填し、硬化性樹脂141を硬化させる。これにより、光ファイバ通孔33Aの採圧開口部32Aより遠位側が硬化性樹脂によって閉塞される。硬化性樹脂141の充填量は、光ファイバ通孔33Aの遠位側を閉塞する量に調整されることが好ましく、収容空間31A内に配置された第2光センサ120に達しない量に調整されることが好ましい。また、硬化性樹脂141を充填した後に、遠位端開口部36Aおよび充填孔開口部35Aに樹脂を垂らして樹脂膜を形成してもよい。その後、熱融着あるいは接着等の手段により、カテーテルチューブ20Aの外周面にバルーン部50の近位端部50bを接合する。
【0111】
硬化性樹脂141としては、例えば、シアノアクリレート系接着剤等の湿気硬化型接着剤、エポキシ系一液型接着剤等の加熱硬化型接着剤、エポキシ系二液型接着剤等の二液混合硬化型接着剤を使用することができる。
【0112】
採圧開口部32Aを挟んで光ファイバ通孔33Aの遠位側および近位側が硬化性樹脂141によって塞がることで、収容空間31Aは実質的に採圧開口部32Aでのみ開口した状態となる。次いで、採圧開口部32Aを通じて収容空間31Aに圧力伝達物質142を流入して、収容空間31Aに収容されている第2光センサ120の周囲に圧力伝達物質142を充填する。
【0113】
圧力伝達物質142としては、例えば、シリコーンゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリエチレンオキサイドゲル等のゲル状物質、シリコーンオイル等のオイル状物質等を使用することができる。
【0114】
収容空間31Aに硬化性樹脂141を充填する際、収容空間31A内(特に、第2光センサ120の周囲)に空気が残らないようにすることが好ましい。例えば、採圧開口部32A以外に収容空間31Aを外部に開口する樹脂充填用孔を設け、樹脂充填用孔から圧力伝達物質142を流入して採圧開口部32Aから収容空間31A内の空気を外部に逃がすようにしてもよい。樹脂充填用孔を設けた場合には、圧力伝達物質142を収容空間31Aに充填した後、樹脂充填用孔の開口部に樹脂を垂らして樹脂膜を形成することで、樹脂充填用孔から圧力伝達物質142が外部に流出するのを防ぐようにしてもよい。
【0115】
なお、上述した構成では、充填孔開口部35Aおよび遠位端開口部36Aから硬化性樹脂141を流入して硬化させることで光ファイバ121を固定し、かつ、収容空間31Aが採圧開口部32Aのみで開口するように硬化性樹脂141によって隔壁を形成しているが、光ファイバ121の固定および収容空間31Aの隔壁形成はこの方法に限定されない。例えば、光ファイバ121の挿通および固定が可能であり、かつ、圧力伝達物質142の封止が可能な隔壁材を光ファイバ通孔33A内に配置してもよい。この隔壁材は、ウレタン、アクリル、シリコーン、エポキシ等の樹脂材料で構成することができる。また、硬化性樹脂141および隔壁材の両方を用いて、第2光センサ120を収容する収容空間31Aが実質的に採圧開口部32Aのみで外部に開口するようにしてもよい。
【0116】
一例として図1に示すように、第1実施形態におけるバルーンカテーテル10Aは、バルーン部50を備えた遠位端部を太腿の付け根部分から大腿動脈に挿入して下行大動脈まで運び、下行大動脈内でバルーン部50を拡張させることで下肢側への血流を抑制し、心臓や脳の血流を維持してこれらの機能を維持するために用いることができる。
【0117】
上述したように、第1実施形態におけるバルーンカテーテル10Aは、光を利用して圧力を測定することが可能な第1光センサ110がバルーン部50の遠位側に配置され、光を利用して圧力を測定することが可能な第2光センサ120がバルーン部50の近位側に配置されている。例えば、図1に示すように大腿動脈アプローチによって下行大動脈にバルーン部50を配置して拡張した場合、バルーン部50の拡張具合に応じて下行大動脈が狭くなるかあるいは完全に閉塞されるため、下行大動脈のバルーン部50より上流側の血圧と下流側の血圧との間に差が生じる。下行大動脈のバルーン部50より上流側の血圧を第1光センサ110で測定し、下行大動脈のバルーン部50より下流側の血圧を第2光センサ120で測定して、第1光センサ110による測定結果と、第2光センサ120による測定結果とを参照することで、バルーン部50の拡張具合およびバルーン部50による血管の閉塞具合を監視することができる。
【0118】
なお、例えば、上腕動脈からバルーンカテーテル10Aの遠位端部を挿入してバルーン部50を下行大動脈に配置する上腕動脈アプローチを行うこともできる。この場合には、大腿動脈アプローチとは逆に、下行大動脈のバルーン部50より上流側の血圧を第2光センサ120で測定し、下行大動脈のバルーン部50より下流側の血圧を第1光センサ110で測定することができ、大腿動脈アプローチと同様に、第1光センサ110による測定結果と、第2光センサ120による測定結果とを参照することで、バルーン部50の拡張具合およびバルーン部50による血管の閉塞具合を監視することができる。
【0119】
図5を参照しながら、本発明の第1実施形態における圧力測定処理システムの構成例について説明する。図5は、本発明の第1実施形態における圧力測定処理システムの構成を示す機能ブロック図である。図5に示す圧力測定処理システムは、圧力測定処理装置200、ディスプレイ(表示装置)250により構成されている。
【0120】
圧力測定処理装置200は、I/F(インタフェース)201、圧力値算出部202、変動監視部203、占有率算出部204、表示出力部205を備えている。圧力測定処理装置200は、プロセッサおよびメモリを搭載したコンピュータによって実現可能である。プロセッサとしては、例えば、CPU(中央演算処理装置:Central Processing Unit)、特定の目的に特化したデータ処理を行うDSP(デジタル信号プロセッサ:Digital Signal Processor)またはGPU(グラフィックスプロセッシングユニット:Graphics Processing Unit)、あるいは、設計自由度の高いFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いることができる。
【0121】
I/F201は、光コネクタ150と接続可能なインタフェースであり、上述したバルーンカテーテル10Aの第1光センサ110および第2光センサ120の測定結果を含む光信号を取り込む機能を有している。第1光センサ110および第2光センサ120から供給される光信号には、例えば光の強度として圧力に関する情報が含まれており、光信号から圧力値を特定することができる。なお、例えば、アナログ/デジタル変換器、光信号の振幅を増幅する増幅器、特定の周波数成分のみを通過させるフィルタ等が介在して、圧力値の算出に適切な信号が圧力測定処理装置200に供給されてもよい。
【0122】
圧力値算出部202は、第1光センサ110および第2光センサ120から伝達される光信号に基づいて、それぞれのセンサによって測定された圧力値を算出する機能を有している。以下、第1光センサ110によって測定された上流側の血圧を第1圧力値、第2光センサ120によって測定された下流側の血圧を第2圧力値と記載する。
【0123】
変動監視部203は、第1光センサ110によって測定された上流側の血圧(第1圧力値)の変動、および第2光センサ120によって測定された下流側の血圧(第2圧力値)の変動を監視する機能を有している。
【0124】
変動監視部203は、例えばバルーン部50が拡張した際に血流が抑制される第2圧力値の変動を監視するように構成されており、第2圧力値の変動範囲が所定範囲内での変動となるか否かを監視するように構成されている。第2圧力値の変動範囲が小さくなって所定範囲内での変動となった場合は、血流がほぼ止まって第2圧力値の変動が脈動による影響を受けなくなったといい得る状態であり、バルーン部50が完全に拡張して血流が堰き止められたことを意味する。つまり、変動監視部203によって第2圧力値の変動範囲を監視することで、第2圧力値の変動範囲が所定範囲内となった場合には、バルーン部50が完全に拡張して血管を塞いでいると判断することができる。特に、大腿動脈アプローチによってバルーン部50を下行大動脈に留置した場合には、バルーン部50が完全に拡張して血管を塞ぐとバルーン部50の近位側で血圧変動が小さくなるため、第2圧力値の変動範囲を監視することでバルーン部50の拡張具合を確認することができる。
【0125】
占有率算出部204は、血管に対するバルーン部50の占有率を算出する機能を有している。例えば、バルーン部50を拡張する前の第1圧力値を第1基準値(バルーン部50が全く拡張していないときの第1圧力値)とし、第2圧力値の変動範囲が所定範囲内となった際の第1圧力値を第2基準値(バルーン部50が完全に拡張したときの第1圧力値)とする。そして、第1圧力値が第1基準値である場合の血管に対するバルーン部50の占有率を0%とし、第1圧力値が第2基準値である場合の血管に対するバルーン部50の占有率を100%として検量線を引くことで、第1圧力値に対応するバルーン部50の占有率を具体的な数値として算出することができる。
【0126】
表示出力部205は、圧力値算出部202で算出した第1圧力値および第2圧力値、占有率算出部204で算出した占有率等を視覚的な情報(画像情報や映像情報)に加工し、ディスプレイ250で表示可能となるよう出力する機能を有している。例えば、圧力値算出部202で算出した第1圧力値および第2圧力値を、経時的な変化を示すグラフによってディスプレイ250に表示してもよい。また、占有率算出部204で算出した占有率を、具体的な数値や画像等によってディスプレイ250に表示してもよい。
【0127】
ここで、図6を参照しながら、第1光センサ110によって測定された上流側の血圧(第1圧力値)、および第2光センサ120によって測定された下流側の血圧(第2圧力値)の変動と、バルーン部50の拡張具合との関係について説明する。図6は、本発明の第1実施形態におけるバルーンカテーテル10Aによって測定された第1圧力値および第2圧力値の経時変化グラフである。図6に示すグラフにおいて、横軸は測定時間[s]、縦軸は圧力値[mmHg]を表している。また、図6には、特定の測定時間における血管内のバルーン部50の大きさ(断面)が模式的に描かれている。
【0128】
測定時間15s以前は、バルーン部50をまだ拡張していない。このとき、第1光センサ110によって測定される第1圧力値、第2光センサ120によって測定される第2圧力値はほぼ同じである。また、第1圧力値および第2圧力値は共に脈動によって変動する。
【0129】
図6に示すグラフでは、第1圧力値の振幅の最大値は20[mmHg]程度である。占有率算出部204は、このときの第1圧力値を第1基準値として記憶する。第1圧力値が第1基準値のとき、血管に対するバルーン部50の占有率を0%とする。
【0130】
測定時間15~20sにおいて、バルーン部50の内部に圧力流体を導入し、バルーン部50を完全に拡張した状態とする。このとき、第1光センサ110によって測定される第1圧力値は急激に上昇する。一方、第2圧力値は、バルーン部50が完全に拡張すると血流が堰き止められて脈動による影響を受けなくなり、第2圧力値の変動はほぼなくなり、所定範囲内に収まるようになる。このように第2圧力値の変動が脈動による影響を受けなくなったといい得る所定範囲内となった場合、バルーン部50が完全に拡張したと判断することができる。
【0131】
測定時間20~40sでは、バルーン部50を完全に拡張したまま維持している。このとき、第1光センサ110によって測定される第1圧力値は相対的に高い圧力値で、脈動により変動する。一方、第2圧力値は、相対的に低い圧力値でほぼ変動しない状態となる。
【0132】
図6に示すグラフでは、第1圧力値の振幅の最大値は150[mmHg]程度まで達するように変動している。一方、第2圧力値は、10[mmHg]程度のままほぼ変動していない。占有率算出部204は、このときの第1圧力値を第2基準値として記憶する。第1圧力値が第2基準値のとき、血管に対するバルーン部50の占有率を100%とする。このように、第1圧力値に関して第1基準値(占有率0%)および第2基準値(占有率100%)を特定して、第1基準値と第2基準値との間に検量線を引くことで、任意の第1圧力値に対応した占有率を具体的な数値として算出することができるようになる。
【0133】
測定時間45~70sでは、バルーン部50を段階的に収縮している。このとき、第1光センサ110によって測定される第1圧力値は、バルーン部50の収縮とともに低くなる。
【0134】
測定時間70s以後は、バルーン部50を完全に収縮した状態にしている。このとき、バルーン部50がまだ拡張していないときと同様に、第1光センサ110によって測定される第1圧力値、第2光センサ120によって測定される第2圧力値はほぼ同じとなり、脈動によって変動する。
【0135】
以下、第1実施形態における圧力測定処理システムによってディスプレイ250に表示される表示画面について説明する。図7は、本発明の第1実施形態における圧力測定処理システムによってディスプレイ250に表示される表示画面の一例を示す図である。
【0136】
図7に示すように、ディスプレイ250に表示される表示画面には、第1圧力値および第2圧力値の経時変化グラフ、血管に対するバルーン部50の占有率が表示される。
【0137】
例えば、表示画面にはグラフ表示領域251、占有率表示領域252および血圧値表示領域253が設定されている。グラフ表示領域251には、図7に示すような経時変化グラフが表示される。経時変化グラフの表示は、所定の更新間隔でリアルタイムに更新されることが好ましい。また、占有率表示領域252には、第1圧力値を基に、占有率算出部254で算出した血管に対するバルーン部50の占有率が具体的な数値で表示される。占有率の表示は、第1圧力値の変化に対応して、所定の更新間隔でリアルタイムに更新されることが好ましい。さらに、図7に示すように、血管に対するバルーン部50の占有率を、例えば血管内のバルーン部50の大きさ(断面)を示す画像で表示してもよい。また、血圧値表示領域253には、図7に示すように、バルーン先端側平均血圧およびバルーン後端側平均血圧が具体的な数値で表示される。バルーン先端側平均血圧は少なくとも1つの脈動周期を含むように設定された直近の所定時間範囲における第1圧力値の平均値であり、バルーン後端側平均血圧は少なくとも1つの脈動周期を含むように設定された直近の所定時間範囲における第2圧力値の平均値である。
【0138】
バルーンカテーテル10Aを用いて施術を行っている施術者は、この表示画面の占有率表示領域252を視認することで、血管に対するバルーン部50の占有率を具体的な数値として視覚的に確認することができる。これにより、施術者は、バルーン部50の拡張具合を把握することができ、血管破裂が起こり得るバルーン部50の過拡張や、虚血再灌流障害が起こり得るバルーン部50の急激な収縮等が生じないように、バルーン部50の拡張・収縮を適切に制御することができるようになる。また、施術者は、経時変化グラフによって、バルーン部50の拡張具合の経時変化を視覚的に確認することができるようになる。
【0139】
<第2実施形態>
以下、図8図10を参照しながら、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下では、上述した第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付すとともに、その説明を省略または簡略化することがある。
【0140】
図8は、本発明の第2実施形態におけるバルーンカテーテル10Bの一例を示す概略断面図である。図8に示すように、第2実施形態におけるバルーンカテーテル10Bは、長尺のカテーテルチューブ20Bの遠位端部にバルーン部50が取り付けられ、カテーテルチューブ20Bの近位端部に分岐部80Bが連結されて概略構成されている。第2実施形態におけるバルーンカテーテル10Bは、図1に示すバルーンカテーテル10に対応するものであり、第2実施形態におけるカテーテルチューブ20Bは、図1に示すカテーテルチューブ20に対応するものである。
【0141】
カテーテルチューブ20Bは、その内部に軸方向に沿って内腔が形成された管状構造の長尺部材である。カテーテルチューブ20Bは、2つの内腔が形成されたダブルルーメンタイプのチューブである。
【0142】
カテーテルチューブ20Bに形成された2つの内腔のうちの一方(第1内腔)は、バルーン部50の内部で開口する圧力流体導通口21Bを介してバルーン部50の内部に連通しており、バルーン部50の内部に対して圧力流体を流出入させることが可能な圧力流体導通路22Bとして機能する。すなわち、カテーテルチューブ20Bの内部には、バルーン部50の内部への連通口を有し、圧力流体を流通させる流体流通用ルーメンが軸方向に形成されている。圧力流体導通口21Bは、バルーン部50の内部において圧力流体導通路22Bを開口するように形成されている。
【0143】
カテーテルチューブ20Bの圧力流体導通路22Bとして機能する第1内腔の遠位端開口部は任意の手段で塞がれており、圧力流体が当該遠位端開口部から流出せずに、圧力流体導通口21Bのみを通ってバルーン部50の内部に流入できるように構成されている。
【0144】
第2実施形態では、カテーテルチューブ20Bはバルーン部50の内部を延伸し、その遠位端は、先端チップ60Bに連結されている。後述するように、カテーテルチューブ20Bの圧力流体導通路22Bとして機能する第1内腔の遠位端開口部は、先端チップ60Bに連結されて塞がれている。また、カテーテルチューブ20Bの第1内腔は、先端チップ60B内に配置された第1光センサ110に接続する光ファイバ111の挿通経路としての役割も有している。
【0145】
カテーテルチューブ20Bの第2内腔は、第2光センサ120を配置する第2センサ収容部30Bを設けるために使用されるセンサ収容腔23Bであり、また、第2光センサ120に接続する光ファイバ121の挿通経路としての役割も有している。カテーテルチューブ20Bの第2内腔には、バルーン部50の近位端部50bが接合された接合位置より近位側に、第2センサ収容部30Bが設けられている。第2センサ収容部30Bの詳細については後述する。
【0146】
カテーテルチューブ20Bは、特に限定されないが、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等の合成樹脂で構成され、ステンレス鋼線等を埋設してもよい。カテーテルチューブ20Bの第1内腔および第2内腔の内径ならびに肉厚は特に限定されないが、第2内腔の内径は、第2光センサ120を挿通して収容することが可能な大きさであることが好ましい。また、圧力流体導通路22Bとして機能する第1内腔において圧力流体の流量を確保することが好ましく、第1内腔の内径は第2内腔の内径より大きいことが好ましい。カテーテルチューブ20Bの長さも特に限定されないが、好ましくは300~800mmである。
【0147】
カテーテルチューブ20Bの遠位端部には、バルーン部50が取り付けられている。バルーン部50は、カテーテルチューブ20Bの軸方向に対して垂直な方向に拡張(膨張)および収縮可能なように構成されている。使用時には、バルーン部50は、収縮した状態で挿入されて血管内の所定位置に配置された後、バルーン部50の内部に圧力流体を流入させて拡張することで、バルーン部50の遠位側と近位側との間における血流を抑制できるようになっている。
【0148】
バルーン部50は、膜厚50~500μm程度の薄膜で構成される。バルーン部50を構成する薄膜の材質は、特に限定されないが、伸縮性に優れた材質であることが好ましく、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンエラストマー等により構成される。
【0149】
バルーン部50の外径および長さは、バルーン部50により血流を抑制する血管の内径等に応じて決定される。バルーン部50の外径は、拡張時で12~40mmが好ましく、バルーン部50の長さは、30~90mmが好ましい。
【0150】
バルーン部50の遠位端部50aは、先端チップ60Bの外周面に接合されており、バルーン部50の近位端部50bは、カテーテルチューブ20Bの遠位端部の外周面に接合されている。バルーン部50と先端チップ60Bおよびカテーテルチューブ20Bとの接合は、例えば、熱融着あるいは接着等の手段により行われる。なお、カテーテルチューブ20Bの遠位端部の外周面に放射線不透過性金属リング等からなる造影マーカを配置し、カテーテルチューブ20Bおよび造影マーカの外周面に上からバルーン部50の近位端部50bを接合してもよい。
【0151】
バルーン部50の遠位端部50aおよび近位端部50bは、バルーン部50の内部の圧力流体がバルーン部50の外部に漏れないように、それぞれカテーテルチューブ20Bの外周面および先端チップ60Bの外周面と接合されている。したがって、バルーン部50の内部は、カテーテルチューブ20Bの圧力流体導通口21Bを通じて、カテーテルチューブ20Bの内部に形成された圧力流体導通路22Bのみと連通している。これにより、圧力流体が圧力流体導通口21Bを通じてバルーン部50の内部に導入および導出されると、バルーン部50は拡張および収縮できるようになっている。
【0152】
バルーン部50は収縮した状態で血管内に挿入される。バルーン部50は、血管内の所定位置に配置された後、内部に圧力流体が導入されることで拡張される。
【0153】
カテーテルチューブ20Bの遠位端部には、先端チップ60Bの近位端部が接続されている。先端チップ60Bは、バルーンカテーテル10Bの最も遠位側に配置されている部材である。先端チップ60Bは、血管内へ挿入された際に血管壁等を傷つけることがないよう、例えば遠位側が滑らかな曲面または先細テーパ状となった円筒形状を有している。
【0154】
なお、第2実施形態のバルーンカテーテル10Bは、第1実施形態のバルーンカテーテル10Bとは異なり、ガイドワイヤチューブが設けられていない。第1実施形態では、先端チップ60Aがガイドワイヤチューブ40Aと連結された構成となっているのに対し、第2実施形態では、先端チップ60Bがカテーテルチューブ20Bと連結された構成となっている。
【0155】
先端チップ60Bの近位端部は、例えばカテーテルチューブ20Bの第1内腔内に嵌入できるように形成されており、熱融着あるいは接着等の手段でカテーテルチューブ20Bと先端チップ60Bとが連結できるようになっている。
【0156】
先端チップ60Bの内部には、ガイドワイヤ挿通孔61Bおよび第1センサ収容部70Bが形成されている。
【0157】
ガイドワイヤ挿通孔61Bは、先端チップ60Bの遠位端および側周面で開口する貫通孔である。使用時には、ガイドワイヤ(図示省略)をガイドワイヤ挿通孔61Bに挿通させることで、バルーン部50をガイドワイヤに沿って体内の所定位置に搬入することができるようになっている。ガイドワイヤ挿通孔61Bの内径は、ガイドワイヤが挿通可能な大きさであればよい。
【0158】
先端チップ60Bの外周面には、バルーン部50の遠位端部50aが接合されている。バルーン部50と先端チップ60Bとの接続は、熱融着あるいは接着等により行われる。
【0159】
先端チップ60Bには、バルーン部50の遠位端部50aが接合された接合位置より遠位側に、第1光センサ110を収容する第1センサ収容部70Bが設けられている。第1センサ収容部70Bは、ガイドワイヤ挿通孔61Bから離隔するように形成されている。第1センサ収容部70Bの詳細については後述する。
【0160】
先端チップ60Bの長さおよび大きさは特に限定されないが、その長さは、10~30mm程度であり、その外径は、カテーテルチューブ20Bの外径と同程度またはそれより小さいことが好ましい。また、先端チップ60Bの材質および形成方法も特に限定されず、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等の合成樹脂材料を用いて、射出成形法により製造することができる。
【0161】
第2実施形態におけるバルーンカテーテル10Bは、バルーン部50より遠位側に配置された第1光センサ110と、バルーン部50より近位側に配置された第2光センサ120とを有している。第1光センサ110および第2光センサ120は、上述した第1実施形態と同様のものを用いることができる。
【0162】
第1光センサ110は、先端チップ60Bに設けられた第1センサ収容部70Bに配置されている。第1光センサ110は、光を利用して圧力を測定することが可能な光圧力センサであり、バルーン部50の近位側における血圧を測定することが可能である。
【0163】
先端チップ60Bに設けられた第1センサ収容部70Bは、第1光センサ110を収容することが可能な大きさの収容空間71Bを形成するとともに、先端チップ60Bの外周面に開口した採圧開口部72Bを有している。
【0164】
第1センサ収容部70Bの収容空間71Bには第1光センサ110が収容され、第1光センサ110に一体化して繋がった光ファイバ111は、先端チップ60Bの近位面を通じてカテーテルチューブ20Bの第1内腔(圧力流体導通路22B)内を延伸している。
【0165】
採圧開口部72Bは、第1光センサ110が外部圧力(すなわち、血管内を流れる血液の血圧)を検出できるように開口していればよく、その開口径は特に限定されないが、第1光センサ110が採圧開口部72Bを通過できない程度の大きさまたは形状に形成されていることが好ましい。また、採圧開口部72Bの開口位置は外部圧力を適切に検出できる位置であればよく、採圧開口部72Bは、例えばバルーン部50の遠位端部50aとの接合位置より遠位側に形成されることが好ましい。
【0166】
なお、図9を参照して後述するように、第1センサ収容部70Bの収容空間71Bと先端チップ60Bの近位面との間には、光ファイバ111を通す通孔が形成されているが、この通孔は、光ファイバ111を通した状態で例えば硬化性樹脂131等によって塞がれる。これにより、第1センサ収容部70Bの収容空間71Bは、実質的に採圧開口部72Bのみで開口したものとなる。
【0167】
また、図9を参照して後述するように、第1センサ収容部70Bの収容空間71Bは、第1光センサ110を収容した状態で、第1光センサ110の周辺に圧力伝達物質132が充填されてもよい。収容空間71Bに充填された圧力伝達物質132は、採圧開口部72Bを通じて外部と直接接触し、圧力伝達物質132に加わる外部圧力を第1光センサ110に伝達することができる。
【0168】
先端チップ60Bの近位面を通じてカテーテルチューブ20Bの第1内腔(圧力流体導通路22B)を軸方向に延伸する光ファイバ111の近位端部は、後述する分岐部80Bの二次ポート82Bに接続されている。
【0169】
光ファイバ111は、カテーテルチューブ20Bの第1内腔では、カテーテルチューブ20Bの軸方向に延伸している。光ファイバ111は、その外周面の一部または軸方向全体がカテーテルチューブ20Bの内周面に接着剤等で固定されてもよい。
【0170】
第2光センサ120は、カテーテルチューブ20Bに設けられた第2センサ収容部30Bに配置されている。第2光センサ120は、光を利用して圧力を測定することが可能な光圧力センサであり、バルーン部50の近位側における血圧を測定することが可能である。
【0171】
カテーテルチューブ20Bに設けられた第2センサ収容部30Bは、第2光センサ120を収容することが可能な大きさの収容空間31Bを形成するとともに、カテーテルチューブ20Bの外周面に開口した採圧開口部32Bを有している。第2実施形態では、第2センサ収容部30Bはカテーテルチューブ20Bの第2内腔の一部を利用して形成される。
【0172】
第2センサ収容部30Bの収容空間31Bには第2光センサ120が収容され、第2光センサ120に一体化して繋がった光ファイバ121は、カテーテルチューブ20Bの第2内腔を延伸している。
【0173】
採圧開口部32Bは、第2光センサ120が外部圧力(すなわち、血管内を流れる血液の血圧)を検出できるように開口していればよく、その開口径は特に限定されないが、第2光センサ120のセンサ部が採圧開口部を通過できない程度の大きさまたは形状に形成されることが好ましい。また、採圧開口部32Bの開口位置は外部圧力を検出できる位置であればよく、採圧開口部32Bは、例えばバルーン部50の近位端部50bとの接合位置より近位側に形成されることが好ましい。
【0174】
なお、図10を参照して後述するように、カテーテルチューブ20Bの第2内腔が光ファイバ121の通孔として利用されるが、この通孔は光ファイバ121を通した状態で例えば硬化性樹脂141等によって塞がれる。これにより、第2センサ収容部30Bの収容空間31Bは、実質的に採圧開口部32Bのみで開口したものとなる。
【0175】
また、図10を参照して後述するように、第2センサ収容部30Bの収容空間31Bには、第2光センサ120を収容した状態で、第2光センサ120の周辺に圧力伝達物質142が充填されてもよい。収容空間31Bに充填された圧力伝達物質142は、採圧開口部32Bを通じて外部と直接接触し、圧力伝達物質142に加わる外部圧力を第2光センサ120に伝達することができる。
【0176】
カテーテルチューブ20Bの第2内腔を軸方向に延伸する光ファイバ121の近位端部は、後述する分岐部80Bの二次ポート82Bに接続されている。
【0177】
光ファイバ121は、カテーテルチューブ20Bの第2内腔では、カテーテルチューブ20Bの軸方向に延伸している。光ファイバ121は、その外周面の一部または軸方向全体がカテーテルチューブ20Bの内周面に接着剤等で固定されてもよい。
【0178】
カテーテルチューブ20Bの近位端部には、分岐部80Bが連結されている。分岐部80Bは、カテーテルチューブ20Bとは別体に成形され、熱融着あるいは接着等の手段でカテーテルチューブ20Bと連結されている。分岐部80Bには、カテーテルチューブ20B内の圧力流体導通路22Bおよび一次ポート81Bに連通する一次通路84B、光ファイバ111、121が延伸する圧力流体導通路22Bおよび二次ポート82Bに連通する二次通路85Bが形成されている。
【0179】
一次ポート81Bは、シリンジ等を接続できるように構成されており、そのシリンジ等により、バルーン部50の内部に圧力流体を導入および導出できるようになっている。一次通路84Bは、分岐部80Bの遠位端部で直線状に延びており、圧力流体導通路22Bに対して真っ直ぐに接続されている。これにより、圧力流体導通路22Bの内部では、一次ポート81Bを介して導入および導出される圧力流体の流路抵抗が低減される。
【0180】
なお、カテーテルチューブ20Bの第2内腔は、圧力流体が第2内腔内を流動しないように、カテーテルチューブ20Bの近位端近傍において光ファイバ121を通した状態で塞がれていてもよい。圧力流体としては、特に限定されないが、生理食塩水が好適に用いられる。
【0181】
二次ポート82Bには、光ファイバ121を挿通させるための二次通路85Bが連通している。二次通路85Bは一次通路84Bと連通しており、二次ポート82Bから、第1光センサ110に接続する光ファイバ111および第2光センサ120に接続する光ファイバ121のそれぞれの近位端が引き出されるようになっている。光ファイバ111、121は、二次ポート82Bの引き出し口に近接する二次通路85Bの内部に接着固定されている。二次ポート82Bにおける光ファイバ111、121の引き出し口は、一次通路84Bを流れる圧力流体が外部に漏れないようにするためのシール構造を有している。
【0182】
光ファイバ111、121の近位端には光コネクタ150が接続され、光コネクタ150には、上述した圧力測定処理装置200(図5参照)が接続される。圧力測定処理装置200は、上述したように、第1光センサ110および第2光センサ120のそれぞれで検出した圧力に関する処理を行うように構成されている。
【0183】
図9は、図8に示すバルーンカテーテル10Bの先端チップ60B近傍の部分拡大断面図である。
【0184】
図9に示すように、先端チップ60Bの近位端部の外周面には、バルーン部50の遠位端部50aが接合されている。一例として図9に示すように、先端チップ60Bの近位端部には、カテーテルチューブ20Bの第1内腔に嵌入可能な嵌入突部65Bが設けられており、カテーテルチューブ20Bの第1内腔に嵌入突部65Bを嵌入して連結可能となっている。なお、先端チップ60Bの近位端部は、さらにカテーテルチューブ20Bの第2内腔に嵌入可能なように成形されていてもよい。また、カテーテルチューブ20Bの第2内腔は、その遠位端が樹脂等によって塞がれていてもよい。
【0185】
先端チップ60Bには、ガイドワイヤ挿通孔61Bが形成されている。ガイドワイヤ挿通孔61Bは、先端チップ60Bの遠位端で開口する先端開口部62Bと、先端チップ60Bの側面で開口する側面開口部63Bとの間に延在する貫通孔である。ガイドワイヤ(図示省略)は、側面開口部63Bからガイドワイヤ挿通孔61Bを通じて先端開口部62Bの外部に露出するように挿通可能となっている。
【0186】
先端チップ60Bには第1光センサ110を収容する第1センサ収容部70Bが形成されている。第1センサ収容部70Bは、ガイドワイヤ挿通孔61Bと連通せずに離隔している。第1センサ収容部70Bは、第1光センサ110を収容する収容空間71B、収容空間71Bを外部へ開口する採圧開口部72Bを有している。
【0187】
採圧開口部72Bの形成位置は特に限定されないが、バルーン部50の遠位端部50aとの接合位置より遠位側に形成されることが好ましく、例えば先端チップ60Bの遠位端側に開口するように形成される。また、採圧開口部72Bの開口径は、第1光センサ110が通り抜けない寸法に設定されることが好ましい。これにより、例えば第1光センサ110に接続されている光ファイバ111が第1光センサ110近傍で折れた場合であっても、第1光センサ110が収容空間71Bの外部へ流出しないようにすることができる。
【0188】
先端チップ60Bには、収容空間71Bに連通する光ファイバ通孔73Bが形成されている。光ファイバ通孔73Bは、バルーン部50の内部に連通するように開口する近位側の通孔開口部74Bを有している。
【0189】
光ファイバ通孔73Bには、先端チップ60Bの側方に向かって延在する硬化性樹脂充填孔が連通している。硬化性樹脂充填孔は、先端チップ60Bの側周面から外部に連通する充填孔開口部75B、76Bを有している。なお、図9では先端チップ60Bの軸方向に沿って2つの硬化性樹脂充填孔が形成されているが、硬化性樹脂充填孔の個数は特に限定されない。
【0190】
収容空間71B内に第1光センサ110を配置する場合には、まず、第1光センサ110に接続する光ファイバ111の近位端を採圧開口部72Bから光ファイバ通孔73Bに挿通して、光ファイバ通孔73Bの近位側の通孔開口部74Bから露出させる。そして、光ファイバ111をそのまま押し進めて光ファイバ111の近位端を分岐部80Bの二次ポート82Bから引き出し、第1光センサ110の遠位端に接続された第1光センサ110を、採圧開口部72Bに通して収容空間71Bに配置する。
【0191】
次いで、充填孔開口部75B、76Bから硬化性樹脂131を流入して、光ファイバ通孔73B内に硬化性樹脂131を充填する。そして、硬化性樹脂131を硬化させ、光ファイバ111を光ファイバ通孔73B内に固定する。硬化性樹脂131の充填量は、光ファイバ通孔73Bを閉塞する量に調整されることが好ましく、収容空間71B内に配置された第1光センサ110に達しない量に調整されることが好ましい。また、硬化性樹脂131を充填した後に、通孔開口部74Bおよび充填孔開口部75B、76Bに樹脂を垂らして樹脂膜を形成してもよい。その後、熱融着あるいは接着等の手段により、先端チップ60Bの外周面にバルーン部50の遠位端部50aを接合する。
【0192】
硬化性樹脂131としては、例えば、シアノアクリレート系接着剤等の湿気硬化型接着剤、エポキシ系一液型接着剤等の加熱硬化型接着剤、エポキシ系二液型接着剤等の二液混合硬化型接着剤を使用することができる。
【0193】
光ファイバ通孔73Bが硬化性樹脂131によって塞がることで、収容空間71Bは実質的に採圧開口部72Bでのみ開口した状態となる。次いで、採圧開口部72Bを通じて収容空間71Bに圧力伝達物質132を流入して、収容空間71Bに収容されている第1光センサ110の周囲に圧力伝達物質132を充填する。
【0194】
圧力伝達物質132としては、例えば、シリコーンゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリエチレンオキサイドゲル等のゲル状物質、シリコーンオイル等のオイル状物質等を使用することができる。
【0195】
収容空間71Bに硬化性樹脂131を充填する際、収容空間71B内(特に、第1光センサ110の周囲)に空気が残らないようにすることが好ましい。例えば、採圧開口部72B以外に収容空間71Bを外部に開口する樹脂充填用孔を設け、樹脂充填用孔から圧力伝達物質132を流入して採圧開口部72Bから収容空間71B内の空気を外部に逃がすようにしてもよい。樹脂充填用孔を設けた場合には、圧力伝達物質132を収容空間71Bに充填した後、樹脂充填用孔の開口部に樹脂を垂らして樹脂膜を形成することで、樹脂充填用孔から圧力伝達物質132が外部に流出するのを防ぐようにしてもよい。
【0196】
なお、上述した構成では、充填孔開口部75B、76Bから硬化性樹脂131を流入して硬化させることで光ファイバ111を固定し、かつ、収容空間71Bが採圧開口部72Bのみで開口するように硬化性樹脂131によって隔壁を形成しているが、光ファイバ111の固定および収容空間71Bの隔壁形成はこの方法に限定されない。例えば、光ファイバ111の挿通および固定が可能であり、かつ、圧力伝達物質132の封止が可能な隔壁材を光ファイバ通孔73B内に配置してもよい。この隔壁材は、ウレタン、アクリル、シリコーン、エポキシ等の樹脂材料で構成することができる。また、硬化性樹脂131および隔壁材の両方を用いて、第1光センサ110を収容する収容空間71Bが実質的に採圧開口部72Bのみで外部に開口するようにしてもよい。
【0197】
図10は、図8に示すバルーンカテーテル10Bのバルーン部50の近位端部50b近傍の部分拡大断面図である。
【0198】
図10に示すように、カテーテルチューブ20Bの遠位端部の外周面には、バルーン部50の近位端部50bが接合されている。カテーテルチューブ20Bは、バルーン部50の内部を延在している。上述したように、カテーテルチューブ20Bの遠位端は先端チップ60Bに連結しており、圧力流体導通路22Bとして機能する第1内腔は、バルーン部50の内部に位置する圧力流体導通口21Bで開口している。
【0199】
カテーテルチューブ20Bの第1内腔には、さらに、光ファイバ111が挿通されている。光ファイバ111は、カテーテルチューブ20Bの第1内腔を延在し、カテーテルチューブ20Bの遠位端部に接続されている先端チップ60B内の光ファイバ通孔73Bを通じて、上述したように先端チップ60Bの第1センサ収容部70Bに収容された第1光センサ110に接続されている。
【0200】
カテーテルチューブ20Bの第2内腔には、光ファイバ121が挿通されている。光ファイバ121は、カテーテルチューブ20Bの遠位端部に形成されている第2センサ収容部30Bに収容された第2光センサ120に接続されている。
【0201】
カテーテルチューブ20Bの遠位端部には第2光センサ120を収容する第2センサ収容部30Bが形成されている。第2センサ収容部30Bは、センサ収容腔23Bである第2内腔に設けられており、カテーテルチューブ20Bの第1内腔である圧力流体導通路22Bと連通せずに離隔している。第2センサ収容部30Bは、第2光センサ120を収容する収容空間31B、収容空間31Bを外部へ開口する採圧開口部32Bを有している。
【0202】
採圧開口部32Bの形成位置は特に限定されないが、バルーン部50の近位端部50bとの接合位置より近位側であって当該接合位置の近傍に形成されることが好ましい。また、採圧開口部32Bの開口径は、第2光センサ120が通り抜けない寸法に設定されることが好ましい。これにより、例えば第2光センサ120に接続されている光ファイバ121が第2光センサ120近傍で折れた場合であっても、第2光センサ120が収容空間31Bの外部へ流出しないようにすることができる。
【0203】
また、カテーテルチューブ20Bの第2内腔は、収容空間31Bの近傍において、カテーテルチューブ20Bの外周面に開口する充填孔開口部35B、36Bを有している。充填孔開口部35B、36Bは、採圧開口部32Bを挟んで軸方向の遠位側および近位側に形成されている。なお、図10では2つの充填孔開口部35B、36Bが形成されているが、充填孔開口部35B、36Bの個数は特に限定されない。
【0204】
収容空間31B内に第2光センサ120を配置する場合には、まず、第2光センサ120に接続する光ファイバ111の近位端を先端チップ60Bと連結する前のカテーテルチューブ20Bの遠位端開口部または採圧開口部32Bから、センサ収容腔23Bである第2内腔に挿通する。そして、光ファイバ121をそのまま押し進めて光ファイバ121の近位端を分岐部80Bの二次ポート82Bから引き出し、第2光センサ120の遠位端に接続された第2光センサ120をカテーテルチューブ20Bの遠位端開口部または採圧開口部32Bに通して収容空間31Bに配置する。
【0205】
次いで、充填孔開口部35B、36Bから硬化性樹脂141を流入して、採圧開口部32Bの遠位側および近位側の第2内腔内に硬化性樹脂141を充填する。そして、硬化性樹脂141を硬化させる。これにより、光ファイバ121は、充填孔開口部36Bから流入した硬化性樹脂によって第2内腔内に固定される。また、採圧開口部32Bを挟んで第2内腔の遠位側および近位側が硬化性樹脂によって閉塞される。硬化性樹脂141の充填量は、第2内腔の遠位側および近位側を閉塞する量に調整されることが好ましく、収容空間31B内に配置された第2光センサ120に達しない量に調整されることが好ましい。硬化性樹脂141を充填した後に、充填孔開口部35B、36Bに樹脂を垂らして樹脂膜を形成してもよい。その後、熱融着あるいは接着等の手段により、カテーテルチューブ20Bの外周面にバルーン部50の近位端部50bを接合する。
【0206】
硬化性樹脂141としては、例えば、シアノアクリレート系接着剤等の湿気硬化型接着剤、エポキシ系一液型接着剤等の加熱硬化型接着剤、エポキシ系二液型接着剤等の二液混合硬化型接着剤を使用することができる。
【0207】
採圧開口部32Bを挟んだ第2内腔の遠位側および近位側が硬化性樹脂141によって塞がることで、収容空間31Bは実質的に採圧開口部32Bでのみ開口した状態となる。次いで、採圧開口部32Bを通じて収容空間31Bに圧力伝達物質142を流入して、収容空間31Bに収容されている第2光センサ120の周囲に圧力伝達物質142を充填する。
【0208】
圧力伝達物質142としては、例えば、シリコーンゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリエチレンオキサイドゲル等のゲル状物質、シリコーンオイル等のオイル状物質等を使用することができる。
【0209】
収容空間31Bに硬化性樹脂141を充填する際、収容空間31B内(特に、第2光センサ120の周囲)に空気が残らないようにすることが好ましい。例えば、採圧開口部32B以外に収容空間31Bを外部に開口する樹脂充填用孔を設け、樹脂充填用孔から圧力伝達物質142を流入して採圧開口部32Bから収容空間31B内の空気を外部に逃がすようにしてもよい。樹脂充填用孔を設けた場合には、圧力伝達物質142を収容空間31Bに充填した後、樹脂充填用孔の開口部に樹脂を垂らして樹脂膜を形成することで、樹脂充填用孔から圧力伝達物質142が外部に流出するのを防ぐようにしてもよい。
【0210】
なお、上述した構成では、充填孔開口部35B、36Bから硬化性樹脂141を流入して硬化させることで光ファイバ121を固定し、かつ、収容空間31Bが採圧開口部32Bのみで開口するように硬化性樹脂141によって隔壁を形成しているが、光ファイバ121の固定および収容空間31Bの隔壁形成はこの方法に限定されない。例えば、光ファイバ121の挿通および固定が可能であり、かつ、圧力伝達物質142の封止が可能な隔壁材を第2内腔内に配置してもよい。この隔壁材は、ウレタン、アクリル、シリコーン、エポキシ等の樹脂材料で構成することができる。また、硬化性樹脂141および隔壁材の両方を用いて、第2光センサ120を収容する収容空間31Bが実質的に採圧開口部32Bのみで外部に開口するようにしてもよい。
【0211】
第2実施形態におけるバルーンカテーテル10Bの使用方法は、上述した第1実施形態におけるバルーンカテーテル10Aの使用方法と同様である。また、第1実施形態と同様に、第1光センサ110および第2光センサ120により検出された圧力値を圧力測定処理装置200(図5参照)で処理し、バルーン部50の拡張具合や血管に対するバルーン部50の占有率等をディスプレイ(表示装置)250に表示することも可能である。
【0212】
<第3実施形態>
以下、図11図12を参照しながら、本発明の第3実施形態について説明する。なお、以下では、上述した第1および第2実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付すとともに、その説明を省略または簡略化することがある。
【0213】
図11は、本発明の第3実施形態におけるバルーンカテーテル10Cの一例を示す概略断面図である。図11に示すように、第3実施形態におけるバルーンカテーテル10Cは、長尺のカテーテルチューブ20Cの遠位端部にバルーン部50が取り付けられ、カテーテルチューブ20Cの近位端部に分岐部80Cが連結されて概略構成されている。第3実施形態におけるバルーンカテーテル10Cは、図1に示すバルーンカテーテル10に対応するものであり、第3実施形態におけるカテーテルチューブ20Cは、図1に示すカテーテルチューブ20に対応するものである。
【0214】
カテーテルチューブ20Cは、その内部に軸方向に沿って内腔が形成された管状構造の長尺部材である。カテーテルチューブ20Cは、2つの内腔が形成されたダブルルーメンタイプのチューブである。
【0215】
カテーテルチューブ20Cに形成された2つの内腔のうちの一方(第1内腔)は、バルーン部50の内部で開口する圧力流体導通口21Cを介してバルーン部50の内部に連通しており、バルーン部50の内部に対して圧力流体を流出入させることが可能な圧力流体導通路22Cとして機能する。すなわち、カテーテルチューブ20Cの内部には、バルーン部50の内部への連通口を有し、圧力流体を流通させる流体流通用ルーメンが軸方向に形成されている。第3実施形態における圧力流体導通口21Cは、カテーテルチューブ20Cの遠位端開口部である。また、カテーテルチューブ20Cの圧力流体導通路22Cとして機能する第1内腔は、第1光センサ110に接続した光ファイバ111の挿通経路としての役割も有している。
【0216】
カテーテルチューブ20Cの遠位端部にはバルーン部50の近位端部50bが接合されている。
【0217】
カテーテルチューブ20Cの第2内腔は、第2光センサ120を配置する第2センサ収容部30Cを設けるために使用されるセンサ収容腔23Cであり、また、第2光センサ120に接続する光ファイバ121の挿通経路としての役割も有している。カテーテルチューブ20Cの第2内腔には、バルーン部50の近位端部50bが接合された接合位置より近位側に、第2センサ収容部30Cが設けられている。第2センサ収容部30Cの詳細については後述する。
【0218】
なお、ここでは、カテーテルチューブ20Cの第1内腔を第1光センサ110に接続した光ファイバ111の挿通経路として使用しているが、カテーテルチューブ20Cの第2内腔を光ファイバ111の挿通経路として使用してもよい。
【0219】
カテーテルチューブ20Cには、バルーン部50の近位端部50bが接合された接合位置より近位側に、第2光センサ120を収容する第2センサ収容部30Cが設けられている。第2センサ収容部30Cの詳細については後述する。
【0220】
カテーテルチューブ20Cは、特に限定されないが、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等の合成樹脂で構成され、ステンレス鋼線等を埋設してもよい。カテーテルチューブ20Cの第1内腔および第2内腔の内径ならびに肉厚は特に限定されないが、第2内腔の内径は、第2光センサ120を挿通して収容することが可能な大きさであることが好ましい。また、圧力流体導通路22Cとして機能する第1内腔において圧力流体の流量を確保することが好ましく、第1内腔の内径は第2内腔の内径より大きいことが好ましい。カテーテルチューブ20Cの長さも特に限定されないが、好ましくは300~800mmである。
【0221】
カテーテルチューブ20Cの第1内腔には、ガイドワイヤチューブ40Cが挿通されている。すなわち、カテーテルチューブ20Cの流体流通用ルーメン内にガイドワイヤチューブ40Cが挿通されており、カテーテルチューブ20Cを外管とし、その内側に内管としてガイドワイヤチューブ40Cが挿通された構成となっている。ガイドワイヤチューブ40Cは、カテーテルチューブ20Cおよびバルーン部50の内部を軸方向に延在する管状構造の長尺部材である。
【0222】
カテーテルチューブ20Cの第1内腔の内周面とガイドワイヤチューブ40Cの外周面とは、軸方向の一部または全体にわたって接着剤等により固着されてもよい。カテーテルチューブ20Cとガイドワイヤチューブ40Cとを固着することで、カテーテルチューブ20C内の圧力流体導通路22Cにおける圧力流体の流路抵抗が低くなる。固着に用いる接着剤としては、特に限定されず、シアノアクリレート系接着剤、エポキシ系接着剤等の接着剤を用いることができ、シアノアクリレート系接着剤を用いることが特に好ましい。
【0223】
ガイドワイヤチューブ40Cの内部に形成された内腔は、バルーン部50の内部およびカテーテルチューブ20C内の圧力流体導通路22Cとは連通しておらず、バルーン部50を血管内の所定位置まで誘導するために用いられるガイドワイヤ(図示省略)を挿通させることが可能なガイドワイヤ通路41Cとして機能する。すなわち、ガイドワイヤチューブ40Cの内部には、ガイドワイヤ挿通用ルーメンが軸方向に形成されている。ガイドワイヤチューブ40Cの遠位端部は、内部のガイドワイヤ通路41Cと先端チップ60Cのガイドワイヤ挿通孔61Cとが連通するように、熱融着あるいは接着等の手段で先端チップ60Cの近位端部に接続されている。ガイドワイヤチューブ40Cの近位端部は、後述する分岐部80Cの二次ポート82Cに連通するように分岐部80Cに接続されている。
【0224】
ガイドワイヤチューブ40Cの外径は、特に限定されないが、好ましくは、0.5~1.5mmであり、カテーテルチューブ20Cの第1内径の30~60%が好ましい。ガイドワイヤチューブ40Cの外径は軸方向に沿って略同じである。ガイドワイヤチューブ40Cは、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の合成樹脂チューブ、あるいはニッケルチタン合金細管、ステンレス鋼細管等で構成される。また、ガイドワイヤチューブ40Cを合成樹脂チューブで構成する場合は、ステンレス鋼線等を埋設してもよい。
【0225】
カテーテルチューブ20Cの遠位端部には、バルーン部50が取り付けられている。バルーン部50は、カテーテルチューブ20Cの軸方向に対して垂直な方向に拡張(膨張)および収縮可能なように構成されている。使用時には、バルーン部50は、収縮した状態で挿入されて血管内の所定位置に配置された後、バルーン部50の内部に圧力流体を流入させて拡張することで、バルーン部50の遠位側と近位側との間における血流を抑制できるようになっている。
【0226】
バルーン部50は、膜厚50~500μm程度の薄膜で構成される。バルーン部50を構成する薄膜の材質は、特に限定されないが、伸縮性に優れた材質であることが好ましく、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンエラストマー等により構成される。
【0227】
バルーン部50の外径および長さは、バルーン部50により血流を抑制する血管の内径等に応じて決定される。バルーン部50の外径は、拡張時で12~40mmが好ましく、バルーン部50の長さは、30~90mmが好ましい。
【0228】
バルーン部50の遠位端部50aは、先端チップ60Cの外周面に接合されており、バルーン部50の近位端部50bは、カテーテルチューブ20Cの遠位端部の外周面に接合されている。バルーン部50と先端チップ60Cおよびカテーテルチューブ20Cとの接合は、例えば、熱融着あるいは接着等の手段により行われる。なお、カテーテルチューブ20Cの遠位端部の外周面に放射線不透過性金属リング等からなる造影マーカを配置し、カテーテルチューブ20Cおよび造影マーカの外周面に上からバルーン部50の近位端部50bを接合してもよい。
【0229】
バルーン部50の遠位端部50aおよび近位端部50bは、バルーン部50の内部の圧力流体がバルーン部50の外部に漏れないように、それぞれカテーテルチューブ20Cの外周面および先端チップ60Cの外周面と接合されている。したがって、バルーン部50の内部は、カテーテルチューブ20Cの遠位端の開口である圧力流体導通口21Cを通じて、カテーテルチューブ20Cの内部に形成された圧力流体導通路22Cのみと連通している。これにより、圧力流体が圧力流体導通口21Cを通じてバルーン部50の内部に導入および導出されると、バルーン部50は拡張および収縮できるようになっている。
【0230】
バルーン部50は収縮した状態で血管内に挿入される。バルーン部50は、血管内の所定位置に配置された後、内部に圧力流体が導入されることで拡張される。
【0231】
ガイドワイヤチューブ40Cの遠位端部には、先端チップ60Cの近位端部が接続されている。先端チップ60Cは、バルーンカテーテル10Cの最も遠位側に配置されている部材である。先端チップ60Cは、血管内へ挿入された際に血管壁等を傷つけることがないよう、例えば遠位側が滑らかな曲面または先細テーパ状となった円筒形状を有している。
【0232】
先端チップ60Cは、上述した第1実施形態の先端チップ60Aと同様のものを用いることができる。先端チップ60Cの内部には、ガイドワイヤ挿通孔61Cおよび第1センサ収容部70Cが形成されている。ガイドワイヤ挿通孔61Cは、第1実施形態における先端チップ60Aのガイドワイヤ挿通孔61Aと同様、ガイドワイヤチューブ40Cが嵌入できるように形成されており、熱融着あるいは接着等の手段でガイドワイヤチューブ40Cと先端チップ60Cとが連結できるようになっている。
【0233】
先端チップ60Cの外周面には、バルーン部50の遠位端部50aが接合されている。バルーン部50と先端チップ60Cとの接続は、熱融着あるいは接着等により行われる。
【0234】
先端チップ60Cには、バルーン部50の遠位端部50aが接合された接合位置より遠位側に、第1光センサ110を収容する第1センサ収容部70Cが設けられている。第1センサ収容部70Cも、第1実施形態における先端チップ60Aの第1センサ収容部70Aと同様の構成となっている。また、第1光センサ110の周辺に圧力伝達物質132が充填されてもよい点も同様である。
【0235】
第3実施形態におけるバルーンカテーテル10Cは、バルーン部50より遠位側に配置された第1光センサ110と、バルーン部50より近位側に配置された第2光センサ120とを有している。第1光センサ110および第2光センサ120は、上述した第1実施形態と同様のものを用いることができる。
【0236】
第1光センサ110は、先端チップ60Cに設けられた第1センサ収容部70Cに配置されている。第1光センサ110は、光を利用して圧力を測定することが可能な光圧力センサであり、バルーン部50の近位側における血圧を測定することが可能である。
【0237】
先端チップ60Cに設けられた第1センサ収容部70Cは、第1実施形態における先端チップ60Aの第1センサ収容部70Cと同様、第1光センサ110を収容することが可能な大きさの収容空間71Cを形成するとともに、先端チップ60Cの外周面に開口した採圧開口部72Cを有している。
【0238】
第1センサ収容部70Cの収容空間71Cには第1光センサ110が収容され、第1光センサ110に一体化して繋がった光ファイバ111は、先端チップ60Cの近位面を通じてバルーン部50の内部を延伸している。
【0239】
採圧開口部72Cは、第1光センサ110が外部圧力(すなわち、血管内を流れる血液の血圧)を検出できるように開口していればよく、その開口径は特に限定されないが、第1光センサ110が採圧開口部72Cを通過できない程度の大きさまたは形状に形成されていることが好ましい。また、採圧開口部72Cの開口位置は外部圧力を適切に検出できる位置であればよく、採圧開口部72Cは、例えばバルーン部50の遠位端部50aとの接合位置より遠位側に形成されることが好ましい。第1センサ収容部70Cの収容空間71Cは、実質的に採圧開口部72Cのみで開口したものとなっている。
【0240】
先端チップ60Cの近位面を通じてバルーン部50の内部を延伸する光ファイバ111は、さらにカテーテルチューブ20Cの内腔(圧力流体導通路22C)を延伸している。光ファイバ111の近位端部は、後述する分岐部80Cの三次ポート83Cに接続されている。
【0241】
光ファイバ111は、バルーン部50の内部では、ガイドワイヤチューブ40Cの外周面に螺旋状に巻きつけられつつ、ガイドワイヤチューブ40Cの軸方向に向かって延伸している。なお、上述したように、血管内に挿入される際、収縮した状態のバルーン部50はガイドワイヤチューブ40Cの外周面に巻きつけられるが、このとき、バルーン部50は、光ファイバ111が螺旋状に巻きつけられたガイドワイヤチューブ40Cの外周面に巻きつけられた状態となる。
【0242】
光ファイバ111は、カテーテルチューブ20Cの第1内腔では、カテーテルチューブ20Cの軸方向に延伸している。光ファイバ111は、その外周面の一部または軸方向全体がカテーテルチューブ20Cの内周面やガイドワイヤチューブ40Cの外周面に接着剤等で固定されてもよい。
【0243】
第2光センサ120は、カテーテルチューブ20Cに設けられた第2センサ収容部30Cに配置されている。第2光センサ120は、光を利用して圧力を測定することが可能な光圧力センサであり、バルーン部50の近位側における血圧を測定することが可能である。
【0244】
カテーテルチューブ20Cに設けられた第2センサ収容部30Cは、第2光センサ120を収容することが可能な大きさの収容空間31Cを形成するとともに、カテーテルチューブ20Cの外周面に開口した採圧開口部32Cを有している。第3実施形態では、第2センサ収容部30Cはカテーテルチューブ20Cの第2内腔の一部を利用して形成される。
【0245】
第2センサ収容部30Cの収容空間31Cには第2光センサ120が収容され、第2光センサ120に一体化して繋がった光ファイバ121は、カテーテルチューブ20Cの第2内腔を延伸している。
【0246】
採圧開口部32Cは、第2光センサ120が外部圧力(すなわち、血管内を流れる血液の血圧)を検出できるように開口していればよく、その開口径は特に限定されないが、第2光センサ120のセンサ部が採圧開口部を通過できない程度の大きさまたは形状に形成されることが好ましい。また、採圧開口部32Cの開口位置は外部圧力を検出できる位置であればよく、採圧開口部32Cは、例えばバルーン部50の近位端部50bとの接合位置より近位側に形成されることが好ましい。
【0247】
なお、図12を参照して後述するように、カテーテルチューブ20Cの第2内腔が光ファイバ121の通孔として利用されるが、この通孔は光ファイバ121を通した状態で例えば硬化性樹脂141等によって塞がれる。これにより、第2センサ収容部30Cの収容空間31Cは、実質的に採圧開口部32Cのみで開口したものとなる。
【0248】
また、図12を参照して後述するように、第2センサ収容部30Cの収容空間31Cには、第2光センサ120を収容した状態で、第2光センサ120の周辺に圧力伝達物質142が充填されてもよい。収容空間31Cに充填された圧力伝達物質142は、採圧開口部32Cを通じて外部と直接接触し、圧力伝達物質142に加わる外部圧力を第2光センサ120に伝達することができる。
【0249】
カテーテルチューブ20Cの第2内腔を軸方向に延伸する光ファイバ121の近位端部は、後述する分岐部80Cの三次ポート83Cに接続されている。
【0250】
光ファイバ121は、カテーテルチューブ20Cの第2内腔では、カテーテルチューブ20Cの軸方向に延伸している。光ファイバ121は、その外周面の一部または軸方向全体がカテーテルチューブ20Cの内周面に接着剤等で固定されてもよい。
【0251】
カテーテルチューブ20Cの近位端部には、分岐部80Cが連結されている。分岐部80Cは、カテーテルチューブ20Cとは別体に成形され、熱融着あるいは接着等の手段でカテーテルチューブ20Cと連結されている。分岐部80Cには、カテーテルチューブ20C内の第1内腔(圧力流体導通路22C)および一次ポート81Cに連通する一次通路84C、ガイドワイヤチューブ40C内のガイドワイヤ通路41Cおよび二次ポート82Cに連通する二次通路85C、光ファイバ111、121が延伸するカテーテルチューブ20Cの第1内腔(圧力流体導通路22C)、第2内腔(センサ収容腔23C)および三次ポート83Cに連通する三次通路86Cが形成されている。
【0252】
一次ポート81Cは、シリンジ等を接続できるように構成されており、そのシリンジ等により、バルーン部50の内部に圧力流体を導入および導出できるようになっている。一次通路84Cは、分岐部80Cの遠位端部で直線状に延びており、圧力流体導通路22Cに対して真っ直ぐに接続されている。これにより、圧力流体導通路22Cの内部では、一次ポート81Cを介して導入および導出される圧力流体の流路抵抗が低減される。
【0253】
なお、カテーテルチューブ20Cの第2内腔は、圧力流体が第2内腔内を流動しないように、カテーテルチューブ20Cの近位端近傍において光ファイバ121を通した状態で塞がれていてもよい。圧力流体としては、特に限定されないが、生理食塩水が好適に用いられる。
【0254】
二次ポート82Cは、図示省略されているガイドワイヤを挿入できるようになっている。二次ポート82Cに連通する二次通路85Cは、分岐部80Cの遠位端部で直線状に延びている。分岐部80Cの遠位端部において、二次通路85Cは、ガイドワイヤ通路41Cと連通するようにガイドワイヤチューブ40Cの近位端部と結合している。二次ポート82Cから挿入されたガイドワイヤは、二次通路85Cおよびガイドワイヤ通路41Cを通って、先端チップ60Cのガイドワイヤ挿通孔61Cから外部に露出できるようになっている。
【0255】
三次ポート83Cには、光ファイバ121を挿通させるための三次通路86Cが連通している。三次通路86Cは一次通路84Cと連通しており、三次ポート83Cから、第1光センサ110に接続する光ファイバ111および第2光センサ120に接続する光ファイバ121のそれぞれの近位端が引き出されるようになっている。光ファイバ111、121は、三次ポート83Cの引き出し口に近接する三次通路86Cの内部に接着固定されている。三次ポート83Cにおける光ファイバ111、121の引き出し口は、一次通路84Cを流れる圧力流体が外部に漏れないようにするためのシール構造を有している。
【0256】
光ファイバ111、121の近位端には光コネクタ150が接続され、光コネクタ150には、上述した圧力測定処理装置200(図5参照)が接続される。圧力測定処理装置200は、上述したように、第1光センサ110および第2光センサ120のそれぞれで検出した圧力に関する処理を行うように構成されている。
【0257】
上述したように、先端チップ60Cは、第1実施形態の先端チップ60Aと同様のものを用いることができ、図3に示す先端チップ60Aと同様の構成を有している。
【0258】
図12は、図11に示すバルーンカテーテル10Cのバルーン部50の近位端部50b近傍の部分拡大断面図である。
【0259】
図12に示すように、カテーテルチューブ20Cの遠位端部の外周面には、バルーン部50の近位端部50bが接合されている。カテーテルチューブ20Cの圧力流体導通路22Cとして機能する第1内腔は、カテーテルチューブ20Cの遠位端開口部である圧力流体導通口21Cにおいて、バルーン部50の内部で開口している。
【0260】
カテーテルチューブ20Cの第1内腔には、ガイドワイヤチューブ40Cが挿通されている。ガイドワイヤチューブ40Cの内腔は、ガイドワイヤ(図示省略)の挿通が可能なガイドワイヤ通路41Cとして機能する。ガイドワイヤチューブ40Cは、カテーテルチューブ20Cの遠位端開口部から露出してバルーン部50の内部に延在し、上述したように先端チップ60Cと連結している。
【0261】
カテーテルチューブ20Cの第1内腔には、さらに、光ファイバ111が挿通されている。光ファイバ111は、カテーテルチューブ20Cの遠位端開口部から露出してバルーン部50の内部に延在し、上述したように先端チップ60Cの第1センサ収容部70Cに収容された第1光センサ110に接続されている。
【0262】
カテーテルチューブ20Cの第2内腔には、光ファイバ121が挿通されている。光ファイバ121は、カテーテルチューブ20Cの遠位端部に形成されている第2センサ収容部30Cに収容された第2光センサ120に接続されている。
【0263】
カテーテルチューブ20Cの遠位端部には第2光センサ120を収容する第2センサ収容部30Cが形成されている。第2センサ収容部30Cは、センサ収容腔23Cである第2内腔に設けられており、カテーテルチューブ20Cの第1内腔である圧力流体導通路22Cと連通せずに離隔している。第2センサ収容部30Cは、第2光センサ120を収容する収容空間31C、収容空間31Cを外部へ開口する採圧開口部32Cを有している。
【0264】
採圧開口部32Cの形成位置は特に限定されないが、バルーン部50の近位端部50bとの接合位置より近位側であって当該接合位置の近傍に形成されることが好ましい。また、採圧開口部32Cの開口径は、第2光センサ120が通り抜けない寸法に設定されることが好ましい。これにより、例えば第2光センサ120に接続されている光ファイバ121が第2光センサ120近傍で折れた場合であっても、第2光センサ120が収容空間31Cの外部へ流出しないようにすることができる。
【0265】
また、カテーテルチューブ20Cの第2内腔は、収容空間31Cの近傍において、カテーテルチューブ20Cの外周面に開口する充填孔開口部35Cと、遠位端で開口する遠位端開口部36Cを有している。充填孔開口部35Cは、採圧開口部32Cより軸方向近位側に形成されている。なお、図12では1つの充填孔開口部35Cが形成されているが、充填孔開口部35Cの個数は特に限定されない。
【0266】
収容空間31C内に第2光センサ120を配置する場合には、まず、第2光センサ120に接続する光ファイバ111の近位端を遠位端開口部36Cまたは採圧開口部32Cから、センサ収容腔23Cである第2内腔に挿通する。そして、光ファイバ121をそのまま押し進めて光ファイバ121の近位端を分岐部80Cの三次ポート83Cから引き出し、第2光センサ120の遠位端に接続された第2光センサ120をカテーテルチューブ20Cの遠位端開口部36Cまたは採圧開口部32Cに通して収容空間31Cに配置する。
【0267】
次いで、充填孔開口部35Cから硬化性樹脂141を流入して、第2内腔内に硬化性樹脂141を充填する。そして、硬化性樹脂141を硬化させる。これにより、光ファイバ121は、充填孔開口部35Cから流入した硬化性樹脂によって第2内腔内に固定される。また、第2内腔の充填孔開口部35C近傍が硬化性樹脂によって閉塞される。硬化性樹脂141の充填量は、充填孔開口部35Cを閉塞して光ファイバ121を固定できる量に調整されることが好ましく、収容空間31C内に配置された第2光センサ120に達しない量に調整されることが好ましい。
【0268】
さらに、遠位端開口部36Cから硬化性樹脂141を流入して、第2内腔の遠位側に硬化性樹脂141を充填し、硬化性樹脂141を硬化させる。これにより、第2内腔の採圧開口部32Cより遠位側が硬化性樹脂によって閉塞される。硬化性樹脂141の充填量は、第2内腔の遠位側を閉塞する量に調整されることが好ましく、収容空間31C内に配置された第2光センサ120に達しない量に調整されることが好ましい。また、硬化性樹脂141を充填した後に、充填孔開口部35Cおよび遠位端開口部36Cに樹脂を垂らして樹脂膜を形成してもよい。その後、熱融着あるいは接着等の手段により、カテーテルチューブ20Cの外周面にバルーン部50の近位端部50bを接合する。
【0269】
硬化性樹脂141としては、例えば、シアノアクリレート系接着剤等の湿気硬化型接着剤、エポキシ系一液型接着剤等の加熱硬化型接着剤、エポキシ系二液型接着剤等の二液混合硬化型接着剤を使用することができる。
【0270】
採圧開口部32Cを挟んだ第2内腔の遠位側および近位側が硬化性樹脂141によって塞がることで、収容空間31Cは実質的に採圧開口部32Cでのみ開口した状態となる。次いで、採圧開口部32Cを通じて収容空間31Cに圧力伝達物質142を流入して、収容空間31Cに収容されている第2光センサ120の周囲に圧力伝達物質142を充填する。
【0271】
圧力伝達物質142としては、例えば、シリコーンゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリエチレンオキサイドゲル等のゲル状物質、シリコーンオイル等のオイル状物質等を使用することができる。
【0272】
収容空間31Cに硬化性樹脂141を充填する際、収容空間31C内(特に、第2光センサ120の周囲)に空気が残らないようにすることが好ましい。例えば、採圧開口部32C以外に収容空間31Cを外部に開口する樹脂充填用孔を設け、樹脂充填用孔から圧力伝達物質142を流入して採圧開口部32Cから収容空間31C内の空気を外部に逃がすようにしてもよい。樹脂充填用孔を設けた場合には、圧力伝達物質142を収容空間31Cに充填した後、樹脂充填用孔の開口部に樹脂を垂らして樹脂膜を形成することで、樹脂充填用孔から圧力伝達物質142が外部に流出するのを防ぐようにしてもよい。
【0273】
なお、上述した構成では、充填孔開口部35Cおよび遠位端開口部36Cから硬化性樹脂141を流入して硬化させることで光ファイバ121を固定し、かつ、収容空間31Cが採圧開口部32Cのみで開口するように硬化性樹脂141によって隔壁を形成しているが、光ファイバ121の固定および収容空間31Cの隔壁形成はこの方法に限定されない。例えば、光ファイバ121の挿通および固定が可能であり、かつ、圧力伝達物質142の封止が可能な隔壁材を第2内腔内に配置してもよい。この隔壁材は、ウレタン、アクリル、シリコーン、エポキシ等の樹脂材料で構成することができる。また、硬化性樹脂141および隔壁材の両方を用いて、第2光センサ120を収容する収容空間31Cが実質的に採圧開口部32Cのみで外部に開口するようにしてもよい。
【0274】
第3実施形態におけるバルーンカテーテル10Cの使用方法は、上述した第1実施形態におけるバルーンカテーテル10Aの使用方法と同様である。また、第1実施形態と同様に、第1光センサ110および第2光センサ120により検出された圧力値を圧力測定処理装置200(図5参照)で処理し、バルーン部50の拡張具合や血管に対するバルーン部50の占有率等をディスプレイ(表示装置)250に表示することも可能である。
【0275】
本発明に係るバルーンカテーテル10は、第1実施形態のようにシングルルーメンタイプのカテーテルチューブ10に第2センサ収容部30Aを設けた構成、第2および第3実施形態のようにダブルルーメンタイプのカテーテルチューブ10の内腔(第2内腔)に第2センサ収容部30B、30Cを設けた構成の両方を包含する。
【0276】
また、本発明に係るバルーンカテーテル10は、第1および第3実施形態のようにガイドワイヤチューブ40A、40Cを設けた構成、および第2実施形態のように先端チップ60Bのみにガイドワイヤを通すためのガイドワイヤ挿通孔61Bを設けた構成の両方を包含する。さらに、本発明に係るバルーンカテーテル10は、ガイドワイヤチューブを設けた構成とする場合において、第1および第3実施形態のようにガイドワイヤの近位端部を体外においてガイドワイヤチューブ40A、40Cから導出する構成(オーバーザワイヤタイプとも呼ばれる)、および流体流通用ルーメンの気密を損なわないようにガイドワイヤチューブに側孔を設けて、ガイドワイヤの近位端部を体内(血管内)においてガイドワイヤチューブから導出する構成(モノレールタイプとも呼ばれる)の両方を包含する。
【0277】
また、本発明に係るバルーンカテーテル10は、第1および第3実施形態のようにガイドワイヤチューブ40A、40Cと先端チップ60A、60Cとが連結した構成、第2実施形態のようにカテーテルチューブ20Bと先端チップ60Bとが連結した構成の両方を包含する。
【0278】
また、本発明に係るバルーンカテーテル10は、第1および第3実施形態のようにカテーテルチューブ20A、20Cの遠位端がバルーン部50の近位端部50b近傍に位置し、カテーテルチューブ20A、20Cがバルーン部50の内部に延在していない構成、第2実施形態のようにカテーテルチューブ20Bの遠位端がバルーン部50の遠位端部50a近傍に位置し、カテーテルチューブ20Bがバルーン部50の内部に延在している構成の両方を包含する。
【0279】
本発明に係るバルーンカテーテル10は、バルーン部50より遠位側に第1光センサ110を配置し、バルーン部50より近位側に第2光センサ120を配置することができれば、上述した第1~第3実施形態における構成のみならず、様々な構成を組み合わせて実現され得るものを包含する。例えば、カテーテルチューブ10に関してシングルルーメンタイプおよびダブルルーメンタイプのいずれかを選択し、かつ、ガイドワイヤに関してオーバーザワイヤタイプおよびモノレールタイプのいずれかを選択して、これらを組み合わせることで本発明に係るバルーンカテーテル10を実現してもよい。
【0280】
以下、本発明に係る作用について説明する。
【0281】
本発明に係るバルーンカテーテル10、10A、10B、10Cは、血管を閉塞するために用いるものであって、カテーテルチューブ20、20A、20B、20Cと、少なくとも近位端部50bがカテーテルチューブ20、20A、20B、20Cに接合されており、拡張および収縮するバルーン部50と、光を利用して圧力を測定することが可能であり、バルーン部50より遠位側に配置されて、バルーン部50の遠位側における血管内の血圧を測定する第1光センサ110と、光を利用して圧力を測定することが可能であり、バルーン部50より近位側に配置されて、バルーン部50の近位側における血管内の血圧を測定する第2光センサ120と、を有している。
【0282】
上記の構成により、バルーン部50の遠位側に配置された第1光センサ110、およびバルーン部50の近位側に配置された第2光センサ120によって血圧を測定することができ、これにより、測定されたこれらの圧力値に基づいて、バルーン部50の拡張具合を確認することができるようになる。また、光を利用して圧力を測定する光センサを用いることで、電気的なノイズの影響を受けにくくなり、電気メス等の電界を発生し得る装置の使用時にも、血圧を精度良くかつ安定して測定することができる。さらに、光センサは温度変化や時間経過による変動(ドリフト)が小さいため、経時的に変化し得る体内環境においても、血圧を精度良くかつ安定して測定することができる。
【0283】
本発明に係るバルーンカテーテル10、10A、10B、10Cは、上記の構成において、遠位端部に配置され、バルーン部50の遠位端部50aが接合された先端チップ60A,60B、60Cを有し、カテーテルチューブ20、20A、20B、20Cにバルーン部50の内部と連通する連通口を有する流体流通用ルーメン(圧力流体導通路22A、22B、22C)が軸方向に形成されており、第1光センサ110が、先端チップ60A、60B、60Cの外周面で開口するように先端チップ60A、60B、60Cに形成された第1センサ収容部70A、70B、70Cに収容されており、第2光センサ120が、カテーテルチューブ20、20A、20B、20Cの外周面で開口するようにカテーテルチューブ20、20A、20B、20Cのバルーン部50より近位側に形成された第2センサ収容部30A、30B、30Cに収容されていてもよい。
【0284】
上記の構成により、バルーン部50の遠位側に位置する先端チップ60A、60B、60Cおよびバルーン部50の近位側に位置するカテーテルチューブ20、20A、20B、20Cに第1光センサ110および第2光センサ120をそれぞれ配置することができ、バルーン部50の拡張・収縮を妨げることなく、バルーン部50の遠位側および近位側における血圧を測定することができる。
【0285】
本発明に係るバルーンカテーテル10、10Bは、上記の構成において、カテーテルチューブ20、20Bの遠位端部が、先端チップ60Bの近位端部に連結されていてもよい。
【0286】
上記の構成により、カテーテルチューブ20、20Bの遠位端部が先端チップ60Bに固定されているので、カテーテルチューブ20、20Bにより先端チップ60Bおよびバルーン部50の位置を制御することができる。
【0287】
本発明に係るバルーンカテーテル10Bは、上記の構成において、先端チップ60Bの遠位端部で開口する先端開口部62Bと先端チップ60Bの側面部で開口する側面開口部63Bとを有するガイドワイヤ挿通孔61Bが、先端チップ60Bに形成されていてもよい。
【0288】
上記の構成により、側面開口部63Bから挿入して先端開口部62Bから露出させるようにガイドワイヤをガイドワイヤ挿通孔61Bに挿通させることで、ガイドワイヤを利用してバルーンカテーテル10Bの遠位端部を体内の所望位置に案内することができる。
【0289】
本発明に係るバルーンカテーテル10、10A、10Cは、上記の構成において、カテーテルチューブ20、20A、20Cの流体流動用ルーメン(圧力流体挿通路21A、21C)内に挿通されており、ガイドワイヤ挿通用ルーメン(ガイドワイヤ挿通路41A、41C)が軸方向に形成されているガイドワイヤチューブ40A,40Cを有し、先端チップ60A、60Cの遠位端部で開口する先端開口部62Aと先端チップ60A、60Cの近位端部で開口する基端開口部63Aとを有するガイドワイヤ挿通孔61A,61Cが、先端チップ60A、60Cに形成されており、バルーン部50の近位端部50bに連結されたカテーテルチューブ20、20A、20Cの遠位端部から露出するガイドワイヤチューブ40A、40Cの遠位端部が基端開口部63Aに接続されて、ガイドワイヤ挿通用ルーメン(ガイドワイヤ挿通路41A、41C)がガイドワイヤ挿通孔61A、61Cと連通していてもよい。
【0290】
上記の構成により、ガイドワイヤチューブ40A、40Cの遠位端部が先端チップ60A、60Cに固定されているので、ガイドワイヤチューブ40A、40Cにより先端チップ60A、60Cおよびバルーン部50の位置を制御することができる。また、先端チップ40A、40Cの先端開口部62Aから露出させるようにガイドワイヤをガイドワイヤチューブ40A、40Cおよびガイドワイヤ挿通孔61A、61Cに挿通させることで、ガイドワイヤを利用してバルーンカテーテル10A、10Cの遠位端部を体内の所望位置に案内することができる。さらに、流体流動用ルーメン(圧力流体挿通路21A、21C)に挿通可能な細径のガイドワイヤチューブ40A、40Cがバルーン部50の内部に配置されるので、収縮時のバルーン部50の径を細くすることができ、バルーンカテーテル10A、10Cの遠位端部を体内へ挿入しやすくなるとともに、患者の負担を軽減することができる。
【0291】
本発明に係るバルーンカテーテル10、10A、10B、10Cは、上記の構成において、第2センサ収容部30A、30A、30Cが、流体流通用ルーメン(圧力流体導通路22A、22B、22C)から隔離されていてもよい。
【0292】
上記の構成により、第2センサ収容部30A、30B、30Cからバルーン部50の拡張に必要な流体の流出を防ぐことができ、バルーン部50を適切に拡張させることができる。
【0293】
本発明に係るバルーンカテーテル10、10B、10Cは、上記の構成において、流体流通用ルーメン(圧力流体導通路22B、22C)から隔離されたセンサ用ルーメン(センサ収容腔23B、23C)がカテーテルチューブ20、20B、20Cに軸方向に形成されており、センサ用ルーメン(センサ収容腔23B、23C)内に第2センサ収容部30B、30Cが設けられていてもよい。
【0294】
上記の構成により、カテーテルチューブ20、20B、20C内に流体流通用ルーメン(圧力流体導通路22B、22C)およびセンサ用ルーメン(センサ収容腔23B、23C)を形成して、センサ用ルーメン(センサ収容腔23B、23C)内に第2センサ収容部30B、30Cを設けることで、第2センサ収容部30B,30Cからバルーン部50の拡張に必要な流体の流出を確実に防ぐことができ、バルーン部50を適切に拡張させることができる。
【0295】
また、本発明に係る圧力測定処理システムは、上記のバルーンカテーテル10、10A、10B、10Cで測定される圧力値に係る処理を行う圧力測定処理システムであって、第1光センサ110に接続された第1光ファイバ111および第2光センサ120に接続された第2光ファイバ121を介してそれぞれ伝達される光に基づいて、第1光センサ110により測定された第1圧力値および第2光センサにより測定された第2圧力値をそれぞれ算出する圧力値算出部202を備えた圧力測定処理装置200を有することを特徴とする。
【0296】
上記の構成により、バルーン部50の遠位側に配置された第1光センサ110、およびバルーン部50の近位側に配置された第2光センサ120によって測定される血圧を、第1圧力値および第2圧力値として算出することができる。
【0297】
本発明に係る圧力測定処理システムは、上記の構成において、圧力測定処理装置200が、バルーン部50を拡張した際に第2圧力値の変動範囲が所定範囲内となるか否かを監視する変動監視部203と、バルーン部50を拡張する前の第1圧力値である第1基準値と、第2圧力値の変動範囲が所定範囲内となった際の第1圧力値である第2基準値とに基づいて、第1光センサ110で測定される第1圧力値に対応する、血管に対するバルーン部50の占有率を算出する占有率算出部204と、を有していてもよい。
【0298】
上記の構成により、第2圧力値の変動範囲を監視して、第2圧力値の変動範囲が所定範囲内となった場合にバルーン部50が完全に拡張して血管を塞いだ状態となっていることを確認することができる。特に、患者の大腿動脈から挿入したバルーン部50を下行大動脈に留置する場合に有用であり、バルーン部50が完全に拡張して血管を塞ぐとバルーン部50の近位側で血圧変動が小さくなるため、第2圧力値の変動範囲を監視することでバルーン部の拡張具合を確認することができる。また、例えば、第1光センサ110による測定値が第1基準値である場合の血管に対するバルーン部50の占有率を0%とし、第1光センサ110による測定値が第2基準値である場合の血管に対するバルーン部50の占有率を100%とすることで、第1光センサ110による測定値に対応するバルーン部50の占有率を具体的な数値として算出することができる。
【0299】
本発明に係る圧力測定処理システムは、上記の構成において、視覚的な情報を表示する表示装置250を有し、表示装置250が、占有率算出部204で算出されたバルーン部50の占有率を表示してもよい。
【0300】
上記の構成により、施術者は、血管に対するバルーン部50の占有率を視覚的に確認することができる。これにより、施術者は、バルーン部50の拡張具合を把握することができ、血管破裂が起こり得るバルーン部50の過拡張や、虚血再灌流障害が起こり得るバルーン部50の急激な収縮等が生じないように、バルーン部50の拡張・収縮を適切に制御することができる。
【0301】
本発明に係る圧力測定処理システムは、上記の構成において、表示装置250が、第1圧力値および前記第2圧力値の経時変化グラフを表示してもよい。
【0302】
上記の構成により、施術者は、バルーン部50の拡張具合の経時変化を視覚的に確認することができる。
【0303】
なお、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0304】
10、10A、10B、10C バルーンカテーテル
20、20A、20B、20C カテーテルチューブ
21A、21B、21C 圧力流体導通口
22A 圧力流体導通路
22B、22C 圧力流体導通路(第1内腔、流体流通用ルーメン)
23B、23C センサ収容腔(第2内腔、センサ用ルーメン)
30A、30A、30C 第2センサ収容部
31A、31B、31C 収容空間
32A、32B、32C 採圧開口部
33A 光ファイバ通孔
34A 通孔開口部
35A、35B、35C 充填孔開口部
36A、36B、36C 遠位端開口部
40A、40C ガイドワイヤチューブ
41A、41C ガイドワイヤ通路
50 バルーン部
50a 遠位端部
50b 近位端部
60A、60B、60C 先端チップ
61A、61B、61C ガイドワイヤ挿通孔
62A、62B 先端開口部
63A 基端開口部
63B 側面開口部
65B 嵌入突部
70A、70B、70C 第1センサ収容部
71A、71B、71C 収容空間
72A、72B、72C 採圧開口部
73A、73B 光ファイバ通孔
74A、74B 通孔開口部
75A、75B、76A、76B、77A 充填孔開口部
80A、80B、80C 分岐部
81A、81B、81C 一次ポート
82A、82B、82C 二次ポート
83A、83C 三次ポート
84A、84B、84C 一次通路
85A、85B、85C 二次通路
86A、86C 三次通路
110 第1光センサ
111、121 光ファイバ
120 第2光センサ
131、141 硬化性樹脂
132、142 圧力伝達物質
150 光コネクタ
200 圧力測定処理装置
201 I/F(インタフェース)
202 圧力値算出部
203 変動監視部
204 占有率算出部
205 表示出力部
250 ディスプレイ(表示装置)
251 グラフ表示領域
252 占有率表示領域
253 血圧値表示領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図12