(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150007
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】水処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20231005BHJP
【FI】
C02F1/00 S
C02F1/00 V
C02F1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058869
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】立花 翔平
(57)【要約】
【課題】顧客設備の稼働状況を推定して純水装置を自動発停し、ランニングコストを削減する。
【解決手段】水処理システムは、一次純水装置12と、サブタンク30と、サブタンク30の水位を測定する水位計34と、一次純水ライン20と、一次純水装置12の上流側へ一次純水を還流する循環ライン22と、水位調整弁と、サブタンク30の水位が一定となるように水位調整弁の開度を調整する制御部50と、を備える。制御部50は、水位調整弁の開度が所定値以下となる状態が所定時間継続した場合に、一次純水装置12を停止するか、又は循環ライン22で一次純水の少なくとも一部を還流させるように水位調整弁の開度を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を処理して一次純水を製造する一次純水装置と、
前記一次純水を貯留するサブタンクと、
前記サブタンクの水位を測定する水位計と、
前記一次純水装置と前記サブタンクとをつなぐ一次純水ラインと、
前記一次純水ラインから前記一次純水装置の上流側へ前記一次純水を還流する循環ラインと、
前記一次純水ラインに設けられた水位調整弁と、
前記水位計の測定結果を取得し、前記サブタンクの水位が一定となるように前記水位調整弁の開度を調整して、前記サブタンクへの送水量及び前記循環ラインの流量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記水位調整弁の開度が所定値以下となる状態が所定時間継続した場合に、前記一次純水装置を停止するか、又は前記循環ラインで前記一次純水の少なくとも一部を還流させるように前記水位調整弁の開度を調整することを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記水位調整弁の開度が所定値以下となる状態が所定時間継続した後、前記サブタンクの水位が所定値以下となった場合、前記一次純水装置を再稼働させるか、又は前記サブタンクへの一次純水の送水が再開されるように前記水位調整弁の開度を調整することを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記一次純水装置の再稼働後、又は前記サブタンクへの送水再開後、前記一次純水装置を所定時間継続して運転した後に、前記水位調整弁の開度が所定値以下であるか否かの判定を再開することを特徴とする請求項2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記水位調整弁は三方弁であり、該三方弁の導入口と前記一次純水装置との間、及び該三方弁の第1流出口と前記サブタンクとの間に前記一次純水ラインが設けられ、該三方弁の第2流出口に前記循環ラインが接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項5】
前記水位調整弁は、前記一次純水ラインに設けられた第1の弁、及び前記循環ラインに設けられた第2の弁を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜装置や電気脱イオン装置等を備えた純水装置で原水を処理して純水を製造し、製造した純水をサブタンク(純水タンク)に貯留し、ユースポイントへ供給することが行われている。
【0003】
純水タンクはタンク内の水位が一定となるように制御されており、例えば特許文献1には、純水タンクの貯水量が一定量を下回ったときに、純水製造装置を運転して純水タンクに純水を補給することが記載されている。また、特許文献2には、純水タンクの気相部で消費される窒素を低減するために、水位計などを用いて水位を一定に保つことが記載されている。
【0004】
サブタンクへの純水補給用設備としての純水装置は、サブタンク入口の水位調節三方弁にて通水量・循環量を変動させながら、常時循環運転している。サブタンク内の純水は、工場稼働時は定常的に使用されるが、工場休業時には使用されない。しかし、純水装置は、サブタンクへ補給不要な時も常時循環運転しているため、不要な電力ランニングコストが掛かっていた。
【0005】
工場休業時にオペレータが手動でマスタースイッチ「停止」操作を行い、純水装置を停止することも行われている。しかし、手動操作では、工場稼働時にマスタースイッチ「運転」操作の忘れによる純水供給トラブルが発生し得るという問題があった。そのため、自動で純水装置を停止/再起動させる仕組みが求められている。
【0006】
しかし、サブタンクは水位計及び水位調節三方弁による水位一定制御を行っているため、水位変動から純水の使用量を測定できず、工場の稼働状況が把握できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許5785000号公報
【特許文献2】特許4978592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、顧客設備の稼働状況を推定して純水装置を自動発停し、ランニングコストを削減する水処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による水処理システムは、被処理水を処理して一次純水を製造する一次純水装置と、前記一次純水を貯留するサブタンクと、前記サブタンクの水位を測定する水位計と、前記一次純水装置と前記サブタンクとをつなぐ一次純水ラインと、前記一次純水ラインから前記一次純水装置の上流側へ前記一次純水を還流する循環ラインと、前記一次純水ラインに設けられた水位調整弁と、前記水位計の測定結果を取得し、前記サブタンクの水位が一定となるように前記水位調整弁の開度を調整して、前記サブタンクへの送水量及び前記循環ラインの流量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記水位調整弁の開度が所定値以下となる状態が所定時間継続した場合に、前記一次純水装置を停止するか、又は前記循環ラインで前記一次純水の少なくとも一部を還流させるように前記水位調整弁の開度を調整するものである。
【0010】
本発明の一態様では、前記制御部は、前記水位調整弁の開度が所定値以下となる状態が所定時間継続した後、前記サブタンクの水位が所定値以下となった場合、前記一次純水装置を再稼働させるか、又は前記サブタンクへの一次純水の送水が再開されるように前記水位調整弁の開度を調整する。
【0011】
本発明の一態様では、前記制御部は、前記一次純水装置の再稼働後、又は前記サブタンクへの送水再開後、前記一次純水装置を所定時間継続して運転した後に、前記水位調整弁の開度が所定値以下であるか否かの判定を再開する。
【0012】
本発明の一態様では、前記水位調整弁は三方弁であり、該三方弁の導入口と前記一次純水装置との間、及び該三方弁の第1流出口と前記サブタンクとの間に前記一次純水ラインが設けられ、該三方弁の第2流出口に前記循環ラインが接続されている。
【0013】
本発明の一態様では、前記水位調整弁は、前記一次純水ラインに設けられた第1の弁、及び前記循環ラインに設けられた第2の弁を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、顧客設備の稼働状況を、サブタンクへの純水補給量から推定して純水装置を自動発停し、ランニングコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
【
図2】水位調節弁の開度変化の例を示すグラフである。
【
図3】別の実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る水処理システムは、一次純水装置12及びサブシステム32を備える。一次純水装置12は、逆浸透膜(RO)装置や電気脱イオン装置等を有し、ポンプ11によりタンク10から送水される被処理水(原水)を処理し、一次純水を製造する。一次純水装置12は、制御部50により運転/停止の切り替えが制御可能になっている。
【0018】
一次純水装置12で製造された一次純水は、一次純水ライン20(20a、20b)を介してサブタンク30へ送水され、貯留される。また、一次純水は、水位調整弁としての三方弁V1で分流され、循環ライン22によりタンク10に還流可能になっている。
【0019】
具体的には、一次純水ライン20aの一端が一次純水装置12に接続され、他端が三方弁V1の導入口に接続されている。一次純水ライン20bの一端が三方弁V1の第1流出口に接続され、他端がサブタンク30に接続されている。循環ライン22の一端が三方弁V1の第2流出口に接続され、他端がタンク10に接続されている。
【0020】
三方弁V1の弁開度(分流の比率)は制御部50により制御可能になっている。本実施形態では、弁開度が大きい程、サブタンク30への分流比が大きくなるものとする。弁開度が100%の場合、一次純水の全量がサブタンク30へ送水される全量通水となる。弁開度が0%の場合、一次純水の全量がタンク10へ還流される全量循環となる。
【0021】
サブシステム32は、紫外線酸化装置(UV装置)、イオン交換装置、限外濾過膜(UF膜)装置等を有し、ポンプ31によりサブタンク30から送水される被処理水(一次純水)を処理し、超純水を製造する。
【0022】
サブシステム32で製造された超純水は、配管40を介してユースポイント33(顧客設備)に送られ、未使用の超純水は配管41を介してサブタンク30へ戻される。
【0023】
サブタンク30には、水位計(水位センサ)34が設けられており、サブタンク30内の水位が測定される。制御部50は、水位計34の測定結果を取得し、サブタンク30内の水位が一定(一定範囲内)となるようにPID制御により三方弁V1の開度を調節する。
【0024】
例えば、制御部50は、水位計34の測定値が所定値(所定範囲)より低くなった場合、三方弁V1の開度を大きくし、サブタンク30への一次純水の送水量を増やす。制御部50は、水位計34の測定値が所定値(所定範囲)より高くなった場合、三方弁V1の開度を小さくし、サブタンク30への一次純水の送水量を減らす。
【0025】
顧客設備が稼働していない場合、超純水の使用量が減り(超純水が使用されなくなり)、サブタンク30内の水位は徐々に上昇する。制御部50は、水位の上昇に伴い、三方弁V1の開度を小さくし、サブタンク30への一次純水の送水量を減らす。顧客設備が稼働していない場合、三方弁V1の開度が小さい状態が続くことになる。このような特徴を利用し、制御部50は、三方弁V1の開度(三方弁V1へ出力する操作量信号の値)が所定値以下となる状態が一定時間続いた場合、顧客設備が稼働していないと判定し、一次純水装置12の運転を停止する。
【0026】
一例として、三方弁V1の開度が
図2に示すような変化をする場合を考える。制御部50は、三方弁V1の開度が所定値Mを下回った時刻t1にカウントを開始し、開度がM以下の状態が所定時間T継続すると、時刻t2(=t1+T)に一次純水装置12の運転を停止する。
【0027】
顧客設備が稼働すると、超純水の使用に伴い、サブタンク30内の水位は徐々に低下する。制御部50は、水位が所定値以下になると、顧客設備が稼働していると判定し、一次純水装置12の運転を開始する。一次純水装置12の運転再開により一次純水が製造され、制御部50は、サブタンク30内の水位が一定になるように三方弁V1の開度を調整する。
【0028】
一次純水装置12の再稼働後、制御部50は、一次純水装置12の運転を一定時間継続した後に、三方弁V1の開度が所定値M以下であるか否かの判定を再開する。これにより、一次純水装置12の運転/停止の切り替えが頻繁に行われることを防止し、一次純水装置12を保護できる。
【0029】
このように、本実施形態では、顧客設備の稼働状況を直接把握することができない場合であっても、三方弁V1の開度から顧客設備の稼働状況を推定し、一次純水装置12を自動発停するため、顧客設備に超純水を安定して供給するとともに、電力ランニングコストを削減できる。
【0030】
上記実施形態では、水位調整弁として分流機構を担う三方弁V1(分流三方弁)を使用する例について説明したが、
図3に示すように、一次純水ライン20から循環ライン22を分岐させ、一次純水ライン20の分岐点とサブタンク30との間に弁V2を設け、循環ライン22に弁V3を設けてもよい。制御部50は、水位調整弁としての弁V2及び弁V3の開度を調整し、分流比を制御する。
【0031】
制御部50は、弁V2の開度が所定値以下となる状態が一定時間続いた場合、顧客設備が稼働していないと判定し、一次純水装置12の運転を停止する。
【0032】
上記実施形態では、三方弁V1や弁V2の開度が所定値以下となる状態が一定時間続いた場合に、一次純水装置12の運転を停止する例について説明したが、一次純水装置12の運転停止に代えて、三方弁V1や弁V2の開度を0%にし、一次純水の流路を循環ライン22に切り替え、全量循環となるようにしてもよい。その後、サブタンク30の水位が所定値以下になると、制御部50は、三方弁V1や弁V2の開度を大きくし、サブタンク30への一次純水の送水を再開する。サブタンク30への送水再開後、一次純水装置12の運転を一定時間継続した後に、三方弁V1の開度が所定値M以下であるか否かの判定を再開する。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0034】
12 一次純水装置
30 サブタンク
32 サブシステム
34 水位計
V1 三方弁