(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150025
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】水系ポリウレタン樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20231005BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20231005BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20231005BHJP
C08G 18/12 20060101ALI20231005BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20231005BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20231005BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20231005BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20231005BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20231005BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20231005BHJP
C09D 5/32 20060101ALI20231005BHJP
C09D 7/48 20180101ALI20231005BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20231005BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20231005BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231005BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20231005BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L75/04
C08G18/00 C
C08G18/08 038
C08G18/12
C08K5/3492
C08G18/42
C08G18/44
C08G18/48
C08G18/75
C09D5/02
C09D5/32
C09D7/48
C09D175/04
B05D7/00 E
B05D7/00 A
B05D7/24 302T
B05D7/24 303E
B05D5/06 Z
B05D3/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058891
(22)【出願日】2022-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】大森 開登
(72)【発明者】
【氏名】金子 純也
(72)【発明者】
【氏名】伊本 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡野 泰士
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】小坂 竜己
【テーマコード(参考)】
4D075
4J002
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC53
4D075BB16X
4D075BB24Z
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4D075BB60Z
4D075CA13
4D075CA47
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4D075EC51
4D075EC54
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4J038PC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の目的は、保存安定性に優れ、形成される塗膜の透明性及び紫外線カット効果に優れた水系ポリウレタン樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、(A)ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び親水性基導入剤を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、(B)紫外線吸収剤とを水系溶媒中に分散させた状態で、前記ウレタンプレポリマーを(C)封鎖剤及び鎖伸長剤から選ばれる少なくとも1種と反応させることによって得られる水系ポリウレタン樹脂組成物であって、(B)成分である紫外線吸収剤が、ビス(エチルヘキシルオキシ)フェノールメトキシフェニルトリアジン(ベモトリジノール)等のトリアジン系紫外線吸収剤を含有する、水系ポリウレタン樹脂組成物及びその製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び親水性基導入剤を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、(B)紫外線吸収剤とを、水系溶媒に分散させた状態で、前記ウレタンプレポリマーを(C)封鎖剤及び鎖伸長剤から選ばれる少なくとも1種と反応させることによって得られる水系ポリウレタン樹脂組成物であって、(B)成分である紫外線吸収剤が、下記式(1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤を含有する、水系ポリウレタン樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
1は、炭素原子数1~5のアルキル基を表し、R
2及びR
3は、それぞれ独立して炭素原子数5~10のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記式(1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤が、下記式(1-1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤である、請求項1に記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【化2】
【請求項3】
前記ポリオール化合物が、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール及びポリエーテルジオールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート化合物が、脂環式ジイソシアネートを含む、請求項1~3の何れか一項に記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分である紫外線吸収剤の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して、10~50質量%である、請求項1~4の何れか一項に記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記式(1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤の配合量が、(B)成分の紫外線吸収剤の総量に対して、40~99.99質量%である、請求項1~5の何れか一項に記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
ガラス用又はフィルム用の紫外線カットコーティング剤に用いられる、請求項1~6の何れか一項に記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~6の何れか一項に記載の水系ポリウレタン樹脂組成物の製造方法であって、
ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び親水性基導入剤を反応させて、ウレタンプレポリマーを生成する工程と、
前記ウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とを混合する工程と、
前記ウレタンプレポリマーと前記紫外線吸収剤とを水系溶媒に分散させた状態で、前記ウレタンプレポリマーを(C)封鎖剤及び鎖伸長剤から選ばれる少なくとも1種と反応させることにより、ポリウレタン樹脂を生成する工程と、を含む、
水系ポリウレタン樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1~6の何れか一項に記載の水系ポリウレタン樹脂組成物の製造方法であって、
紫外線吸収剤の存在下で、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び親水性基導入剤を反応させてウレタンプレポリマーを生成する工程と、
前記ウレタンプレポリマーと前記紫外線吸収剤とを水系溶媒に分散させた状態で、前記ウレタンプレポリマーを(C)封鎖剤及び鎖伸長剤から選ばれる少なくとも1種と反応させることにより、ポリウレタン樹脂を生成する工程と、を含む、
水系ポリウレタン樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~6の何れか一項に記載の水系ポリウレタン樹脂組成物をガラス基材又はフィルム基材に塗布する工程と、塗布した水系ポリウレタン樹脂組成物を乾燥して成膜する工程とを含む、コーティングされたガラス又はフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンプレポリマー及び紫外線吸収剤を水系溶媒に分散させた状態で、ウレタンプレポリマーを封鎖剤及び鎖伸長剤から選ばれる少なくとも1種と反応させて得られる水系ポリウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂組成物は、各種基材への塗料、接着剤、コーティング剤等の広範囲の用途に好適に使用されることが知られている。また、水系ポリウレタン樹脂組成物は、水系であることから溶剤系と比較して環境負荷が低く、さらに塗装者が安全に塗装することができる。このような水系ポリウレタン樹脂組成物をコーティング剤等の用途に用いる場合は、塗膜が透明性に優れる方が、汎用性が高く、好ましい。
【0003】
一方、紫外線(280nm~380nm)及び短波長領域の可視光線(380nm~420nm)が塗膜及び被塗装体の変色を促進する等の悪影響を及ぼすことから、コーティング剤等に用いられる水系ポリウレタン樹脂組成物に、紫外線吸収剤を配合することが知られている。例えば、特許文献1においては、耐変色性に優れたフィルムを形成するために、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の水分散物を、アニオン基を有する末端イソシアネートプレポリマー等と混合してメラミン架橋させてポリウレタン樹脂組成物を製造することが提案されているが、分散性が十分でなく、貯蔵安定性に劣るという欠点を有していた。また、十分な紫外線カット効果を提供するためにベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の配合量を増加した場合には、フィルムの透明性を低下させるという欠点があった。
【0004】
一方、ビス(エチルヘキシルオキシ)フェノールメトキシフェニルトリアジンは、例えば、特許文献2には、皮膚外用剤用の紫外線吸収剤として使用することが記載されているが、これを水系ポリウレタン樹脂組成物に配合することに関しては記載されていない。さらに、特許文献3には、ビス(エチルヘキシルオキシ)フェノールメトキシフェニルトリアジン等の紫外線吸収剤とアニオン性ポリウレタン樹脂とを含む皮膚化粧料が提案されているが、これを特定の方法で製造することに関しては何ら示唆すらされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-113704号公報
【特許文献2】特開2016-056108号公報
【特許文献3】特開2020-200261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、保存安定性に優れ、形成される塗膜の透明性及び紫外線カット効果に優れた、コーティング剤に好適な水系ポリウレタン樹脂組成物を提供することである。
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のトリアジン系紫外線吸収剤をポリウレタン樹脂に内包させることによって、透明性を低下させることなく、紫外線カット効果に優れた水系ポリウレタン樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、(A)ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び親水性基導入剤を反応させて得られるウレタンプレポリマーと、(B)紫外線吸収剤とを、水系溶媒に分散させた状態で、ウレタンプレポリマーを(C)封鎖剤及び鎖伸長剤から選ばれる少なくとも1種と反応させることによって得られる水系ポリウレタン樹脂組成物であって、(B)成分である紫外線吸収剤が、下記式(1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤を含有する水系ポリウレタン樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
【0010】
(式中、R1は、炭素原子数1~5のアルキル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立して炭素原子数5~10のアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、保存安定性に優れ、形成される塗膜の透明性及び紫外線カット効果に優れることから、ガラスコーティング剤、フィルムコーティング剤用途として好適な水系ポリウレタン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物について詳述する。
ここで、本発明の「水系ポリウレタン樹脂組成物」とは、ポリウレタン樹脂が水系溶媒に分散されている状態の組成物を指す。この場合の「分散」にはエマルションのように水系溶媒中にポリウレタン樹脂が乳化している状態も含まれることとする。
また、本発明において「水系溶媒」とは、水、又は水と有機溶剤との混合溶媒を指し、混合溶媒の場合、水を主成分とする混合溶媒を指す。
【0013】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、(A)成分のウレタンプレポリマーと、(B)成分の紫外線吸収剤とを、水系溶媒に分散させた状態で、ウレタンプレポリマーを(C)封鎖剤及び鎖伸長剤から選ばれる少なくとも1種と反応させることによって得られる。
【0014】
本発明における(A)成分のウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物と、親水性基導入剤とを、反応させて得られる。本発明においては、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び親水性基導入剤として、後述するように、多種多様な化合物を用いることができる。このため、上記ウレタンプレポリマーの構造は、該ウレタンプレポリマーの製造に用いられる原料の構造によって大きく異なることから、上記ウレタンプレポリマーの構造を一律にある種の一般式で表すことは到底できないのが現状であり、このことは当業者の技術常識である。そして、構造が特定されなければそれに応じて決まるその物質の特性も容易にはわからないことから、特性で表現することも到底できない。したがって、本発明では、水系ポリウレタン樹脂組成物に含まれるウレタンプレポリマーを、「ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び親水性基導入剤を反応させて得られるウレタンプレポリマー」という表現で定義せざるを得ない。また、同様に、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物についても、「ウレタンプレポリマーを(C)封鎖剤及び鎖伸長剤から選ばれる少なくとも1種と反応させることによって得られる」という表現で定義せざるを得ない。つまり、本発明におけるウレタンプレポリマー及び水系ポリウレタン樹脂組成物に関し、「出願時においてその構造又は特性により直接特定すること」が不可能又はおよそ非実際的である事情が存在する。
【0015】
(A)成分を得るための上記ポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルポリオール、数平均分子量200未満の低分子量ポリオール等が挙げられる。
【0016】
上記ポリエステルポリオールとしては、ポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られる化合物、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られる化合物、及びそれらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0017】
ポリエステルポリオールを得るためのポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の脂肪族ジオールや、グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂肪族環式構造含有ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物及びそのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。ポリエステルポリオールに使用されるポリオールとしては、光透過性及び柔軟性の点から、脂肪族ポリオール、脂肪族環式構造含有ポリオールが好ましく、脂肪族ジオールがより好ましく、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが更に好ましい。上記ポリオールは、1種のみでも用いることも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0018】
ポリエステルポリオールを得るためのポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ポリカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族ポリカルボン酸;オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸等が挙げられ、ポリカルボン酸は、無水物又はエステル誘導体であっても使用できる。ポリエステルポリオールに使用されるポリカルボン酸としては、光透過性及び柔軟性の点から、脂肪族ポリカルボン酸が好ましく、脂肪族ジカルボン酸がより好ましく、アジピン酸、セバシン酸が更に好ましい。ポリカルボン酸は、1種のみで用いることも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0019】
上記ポリカーボネートジオールとしては、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、ポリオールとを反応させて得られるものが挙げられる。上記炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、フェニルナフチルカーボネート等が挙げられる。
【0020】
ポリカーボネートジオールを得るためのポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂肪族環式構造含有ジオール;ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’-ビフェノール等の芳香族ジヒドロキシ化合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール;ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等が挙げられる。ポリカーボネートジオールに使用されるポリオールとしては、光透過性及び柔軟性の点から、脂肪族ジオールが好ましく、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールがより好ましく、1,6-ヘキサンジオールが更に好ましい。
【0021】
上記ポリエーテルポリオールとしては、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0022】
ポリエーテルポリオールの開始剤としては、例えば、エチレングリコ-ル、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2‘-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオ-ル、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、サッカロース、エチレンジアミン、N-エチルジエチレントリアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、ジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0023】
ポリエーテルポリオールを得るためのアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0024】
上記数平均分子量200未満の低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上のポリオール等が挙げられる。
【0025】
上記ポリオール化合物の選択肢である、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルポリオールの分子量は、数平均分子量で500~5000が好ましく、600~3000であることが更に好ましく、700~2000であることが最も好ましい。尚、ポリオール化合物としては、数平均分子量の異なる2種以上のポリオール化合物を組み合わせて用いることもできる。ポリオール化合物の数平均分子量は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0026】
これらポリオール化合物の中でも、得られる水系ポリウレタン樹脂組成物をガラス基材へのコーティング剤として使用する場合には、塗膜の基材との密着性及び透明性に優れることからポリエステルポリオールが好ましく、フィルム基材へのコーティング剤として使用する場合には、塗膜の耐熱性及び耐湿熱性に優れることからポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0027】
(A)成分を得るためのポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)、トランス-1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,8-オクタメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2,2-ジメチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,11-ウンデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4-ジメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート、5-メチル-1,9-ノナメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、リシンメチルエステルジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
ポリイソシアネート化合物としては、更に、上記ジイソシアネートのイソシアヌレート三量化物、上記ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト化物、上記ジイソシアネートのビウレット三量化物、上記ジイソシアネートのアロファネート化物、トリフェニルメタントリイソシアネート、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、1,5,11-ウンデカメチレントリジイソシアネート、2,4,6-トルエントアネート等の三官能以上のイソシアネート等;ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート三量化物のモノステアリル化物も挙げられる。
【0029】
上記ポリイソシアネート化合物としては、得られる水系ポリウレタン樹脂組成物から形成される塗膜の光透過性、耐熱性及び接着性の点から、脂環式ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートが好ましく、上記塗膜の耐水性及び耐光性に優れるという点から、脂環式ジイソシアネートがより好ましく、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが更に好ましく、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートが最も好ましい。
【0030】
(A)成分を得るための親水性基導入剤としては、アニオン性基導入剤、カチオン性基導入剤又はノニオン性基導入剤が挙げられる。
【0031】
上記アニオン性基導入剤は、ウレタンプレポリマーにカルボキシル基及びスルホン酸基のアニオン性基を導入する。また、アニオン性基導入剤はポリオール化合物又はポリイソシアネート化合物と反応し得る官能基を有することが好ましい。そのような官能基としては、例えば、水酸基が挙げられる。(A)成分に使用されるアニオン性基導入剤としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を含有するポリオール類;1,4-ブタンジオール-2-スルホン酸等のスルホン酸基を含有するポリオール類が挙げられる。得られる水系ポリウレタン樹脂組成物から形成される塗膜の耐熱性及び工業的な入手の容易さの点から、カルボキシル基を含有するポリオール類が好ましく、ジメチロールプロピオン酸がより好ましい。
【0032】
上記カチオン性基導入剤は、ウレタンプレポリマーにカチオン性基を導入する。カチオン性基導入剤としては、例えば、N,N-ジアルキルアルカノールアミン類;N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、N-ブチル-N,N-ジエタノールアミン等のN-アルキル-N,N-ジアルカノールアミン類;及び、トリアルカノールアミン類等が挙げられる。
【0033】
上記ノニオン性基導入剤は、ウレタンプレポリマーにノニオン性基を導入する。ノニオン性基導入剤としては、ポリアルキレンオキシドポリエーテル基を有し、かつ、ポリオール化合物又はポリイソシアネート化合物と反応し得る官能基を有することが好ましい。そのような官能基としては、例えば、水酸基又はイソシアネート基が挙げられる。
よって、ノニオン性基導入剤としては、分子中にポリオキシエチレン鎖と水酸基及び/又はイソシアネート基を有する化合物であることが好ましい。より具体的には、例えば、下記の式(2)で表されるイソシアネート化合物、式(3)で表される化合物等が挙げられる。
【0034】
【0035】
(式中、R4は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、R5は、-N=C=O又は-NH-CO-(CH2CH2)n-R6を表し、Aはジイソシアネートから2個のNCO基を除いた残基を表し、R6は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、nは5~100の数を表す。)
【0036】
式(2)中、R4及びR6で表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、それぞれ独立して、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基が挙げられる。
【0037】
【0038】
(式中、X1及びX2は各々独立にOH又はCOORを表し、Rは水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、R7はアルカントリイル基、アレーントリイル基又はシクロアルカントリイル基を表し、YはO、NH、COO又はSO2から選ばれる結合基を表し、R8は炭素原子数1~4のアルキル基又はフェニル基を表し、pは0又は1の数を表し、mは5~100の数を表す。)
【0039】
式(3)中、R及びR8で表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、それぞれ独立して、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基を表し、R7で表されるアルカントリイル基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン等から3個の水素原子を除いた残基が挙げられ、アレーントリイルとしては、例えば、ベンゼン、ナフチレン等から3個の水素原子を除いた残基が挙げられ、シクロアルカントリイル基としては、例えば、シクロブタン、シクロヘキサン等から3個の水素原子を除いた残基が挙げられる。
【0040】
また、ノニオン性基導入剤の市販品としては、例えば、TegomerD3403(Evonik Industries AG製;ポリエチレン基含有ジオール)、Ymer N120(Perstorp AG製;ポリエーテル基含有ジオール)等が挙げられる。
【0041】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物においては、親水性基導入剤として、アニオン性基導入剤を使用することが、原料の入手が工業的に容易なことから好ましく、ノニオン性親水性基導入剤を使用することが、ウレタンプレポリマーの乳化分散性の面から好ましい。
【0042】
上記親水性基導入剤の配合量は、(A)成分のウレタンプレポリマーを構成するポリオール化合物と親水性基導入剤との質量比が99.9:0.1~20:80の範囲内で配合されることが好ましく、95:5~30:70の範囲であることがより好ましい。
親水性基導入剤の質量比が上記範囲内であることにより、ウレタンプレポリマーの水分散性、水系ポリウレタン樹脂組成物の保存安定性、形成される塗膜の耐水性の点で好ましい。
【0043】
本発明では、水酸基に対するイソシアネート基のモル比をNCOインデックスという。本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物における(A)成分では、水酸基は、ポリオール化合物及び親水性基導入剤に由来し、イソシアネート基はポリイソシアネート化合物及び親水性基導入剤に由来する。一般に、ウレタンプレポリマーの末端基は、ウレタンプレポリマーを製造する場合のNCOインデックスが1よりも大きい場合にはイソシアネート基となり、1よりも小さい場合には水酸基となる。ウレタンプレポリマーの末端基は、水への分散性が高くなり、鎖伸長による高分子化も容易になることから、水酸基よりイソシアネート基の方が好ましく、したがってNCOインデックスが1より大きいことが好ましい。
【0044】
ただし、NCOインデックスが1より大きい場合であっても、1に非常に近い場合には、比較的高分子量であるが、水への分散性が劣るウレタンプレポリマーが得られやすく、NCOインデックスがあまりに大きい場合には、水に分散する工程で、残存イソシアネート基と水との反応による二酸化炭素が多量に発生して急激な発泡を引き起こし、製造上の問題を引き起こす恐れがあり、得られる水系ポリウレタン組成物の透明性が低下する恐れがある。(A)成分を製造する場合のNCOインデックスは、1.1~2.5であることが好ましく、1.2~2.0であることが更に好ましく、1.3~1.8であることが最も好ましい。ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び親水性基導入剤の反応比は、(A)成分中の親水性基の含量及びNCOインデックスを考慮して決定すればよい。
【0045】
また、ウレタンプレポリマーに架橋構造を導入するために、ウレタンプレポリマーの形成材料として、架橋剤を配合してもよい。架橋剤を配合することにより、得られる水系ポリウレタン樹脂組成物から形成される塗膜の耐久性を向上させることができる。
上記架橋剤としては、尿素、メラミン化合物、ベンゾグアナミン等とホルムアルデヒドとの付加物、上記付加物と炭素原子数が1~6のアルコール単位を含むアルキルエーテル化合物等からなるアミノ樹脂、多官能性エポキシ化合物;多官能性イソシアネート化合物;多官能性アジリジン化合物等が挙げられ、反応性に優れることから、メラミン化合物が好ましい。メラミン化合物としては、例えば、メラミン、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミン、メラミン樹脂等が挙げられ、安価であり水への分散性が優れることからメラミンが好ましい。
【0046】
架橋剤の使用量は任意であるが、ポリオール成分の水酸基(活性水素基)の0.1~40%を置き換えて使用することで水分散性、乾燥硬化時の塗膜物性に優れた水系ポリウレタン樹脂組成物が得られるため好ましい。
【0047】
さらに、ウレタンプレポリマーを形成する際に、カップリング剤を配合してもよい。カップリング剤を配合することで、得られる水系ポリウレタン樹脂組成物から得られる塗膜の基材に対する密着性を特に強固にすることができる。
上記カップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ-n-ドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジ-トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリロイルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラキス(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラステアリルチタネート、テトラメチルチタネート、ジエトキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロピルビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、イソプロポキシ(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)チタン、ジ(2-エチルヘキソキシ)ビス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)チタン、ジ-n-ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、テトラアセチルアセトネートチタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタン、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタンカップリング剤;ジルコニウムトリブトキシステアレート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル)ブチルジ(ジトリデシル)ホスフィトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリネオデカノイルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ドデシル)ベンゼン-スルホニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ジオクチル)ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ジオクチル)ピロ-ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(N-エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(m-アミノ)フェニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリメタクリルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリアクリルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシジパラアミノベンゾイルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシジ(3-メルカプト)プロピルジルコネート、テトラノルマルプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、ジルコニウム2,2-ビス(2-プロペノラトメチル)ブチラート,ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のジルコニウム系カップリング剤を挙げることができる。
【0048】
前記カップリング剤の配合量は特に制限されるものではないが、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び親水性基導入剤の総量に対し、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%である。
【0049】
さらに、ウレタンプレポリマーを形成する際に、上記カップリング剤以外の密着促進剤を配合してもよい。上記カップリング剤以外の密着促進剤としては、例えば、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズオキサゾール、2-メルカプトベンズチアゾール、3-モルホリノメチル-1-フェニル-トリアゾール-2-チオン、5-アミノ-3-モルホリノメチル-チアゾール-2-チオン、2-メルカプト-5-メチルチオ-チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、アミノ基含有ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらの中では、好ましくはベンゾトリアゾールが使用される。
【0050】
上記密着促進剤の配合量は、特に制限されないが、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び親水性基導入剤の総量に対して、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%である。
【0051】
(A)成分のウレタンプレポリマーの製造では、ウレタン化反応を円滑に進行させるため、公知の触媒を用いることが好ましい。このような触媒としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N'',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N'',N''-ペンタメチル-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N'',N''-ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルグアニジン、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルラウリルアミン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ジメチルアミノプロピルイミダゾール等の第3級アミン;テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類等の第4級アンモニウム塩;スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等の有機金属触媒等が挙げられる。これらの触媒の中でも、反応性が良好で、得られる水系ポリウレタン樹脂から形成される塗膜の黄変性が少ないことから、有機金属触媒が好ましく、ジブチル錫ジラウレート又はジオクチル錫ジラウレートがより好ましい。これらの触媒は、単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。触媒の使用量は、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び親水性基導入剤の総量に対して、0.001~1質量%が好ましく、0.01~0.1質量%であることが更に好ましい。
【0052】
(A)成分のウレタンプレポリマー中にアニオン性基を有する場合には、ウレタンプレポリマーの水分散性が向上することから、アニオン性基は、アニオン性基中和剤で中和されていることが好ましい。アニオン性基中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン類;アンモニア、トリメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の塩基性化合物等が挙げられる。アニオン性基中和剤としては、塗膜に塩基性化合物が残存することによる悪影響を防ぐため、熱によって容易に解離し揮発する化合物が好ましく、トリメチルアミン、トリエチルアミンが好ましい。
また、(A)成分中にカチオン性基を有する場合には、カチオン性基中和剤で中和されていることが好ましい。カチオン性基中和剤としては、例えば、蟻酸、酢酸、乳酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸等の有機カルボン酸;パラトルエンスルホン酸、スルホン酸アルキル等の有機スルホン酸;塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸等の無機酸;エピハロヒドリン等エポキシ化合物等の他、ジアルキル硫酸、ハロゲン化アルキル等の4級化剤が挙げられる。
【0053】
アニオン性基中和剤あるいはカチオン性基中和剤の配合量は、アニオン性基あるいはカチオン性基それぞれ1当量に対して、0.5~2.0当量が好ましく、0.8~1.5当量がより好ましい。0.5当量未満の使用では、ウレタンプレポリマーの水分散性が十分に向上せず、2.0当量を超えて使用した場合には、得られる水系ポリウレタン組成物から形成される塗膜の耐候性に悪影響が出るおそれがある。
【0054】
さらに、末端がイソシアネート基であるウレタンプレポリマーを製造する際には、分子量調整の目的で、一官能のアルコールを入れてイソシアネート基の量を調整することもできる。該一官能アルコールとしては、炭素原子数が12~24の一級又は二級脂肪族アルコールであり、例えば、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エライドリノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エライドリノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘニコシルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルテトラデシルアルコール等が挙げられる。
【0055】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物における(B)成分は、下記式(1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤であり、この化合物を配合することによって、水系ポリウレタン樹脂組成物により形成される塗膜の耐候性及び紫外線カット効果が向上する。
【0056】
【0057】
(式中、R1は、炭素原子数1~5のアルキル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立して炭素原子数5~10のアルキル基を表す。)
【0058】
式(1)中、R1で表される炭素原子数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、第二ペンチル基、第三ペンチル基を表し、R2及びR3で表される炭素原子数5~10のアルキル基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0059】
式(1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤の中でも、R1がメチルであり、R2及びR3が2-エチルヘキシルである下記式(1-1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤(ベモトリジノール)が、得られる水系ポリウレタン樹脂組成物をコーティング剤として用いた場合に、透明性に優れた塗膜が得られるため好ましい。
【0060】
【0061】
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、市販品として、チノソーブS(BASFジャパン(株)製)が挙げられる。
【0062】
本願発明に使用される(B)成分としては、上記式(1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤とともにその他の紫外線吸収剤を併用することができる。その他の紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ第3ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-第3ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-第3オクチル-6-ベンゾトリアゾリルフェノール)、2-(2-ヒドロキシ-3-第3ブチル-5-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2-[2-ヒドロキシ-3-(2-アクリロイルオキシエチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-第3ブチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-第3オクチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-第3ブチルフェニル]-5-クロロベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3-第3ブチル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3-第3アミル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3-第3ブチル-5-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-5-クロロベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシメチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]ベンゾトリアゾール等の2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシロキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-ヒドロキシ-4-(3-C12~C13混合アルコキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]-4,6-ビス(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシ-3-アリルフェニル)‐4,6‐ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ヘキシロキシフェニル)-1,3,5‐トリアジン等の2-(2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ジアリール-1,3,5-トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ第3ブチルフェニル-3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;及び各種の金属又は金属キレート、例えばニッケル又はクロムの塩又はキレート類等が挙げられる。
【0063】
これらのその他の紫外線吸収剤は求められる吸収波長に応じて選択可能であり、上記その他の紫外線吸収剤の中でも、波長300nm以上に吸収域を有するトリアジン系紫外線吸収剤を組み合わせることが、紫外線カット効果が向上するため好ましく、とりわけ2,4,6-トリス〔4-(ヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル〕-1,3,5-トリアジン(アデカスタブLA-F70:(株)ADEKA製)を組み合わせることによって、より一層紫外線カット効果が向上するため特に好ましい。
【0064】
上記(B)成分である紫外線吸収剤の配合量は、特に限定されるものではないが、(A)成分及び(B)成分の総量に対し、1質量%未満の使用では水系ポリウレタン樹脂組成物から形成される塗膜の紫外線カット効果が不十分であるおそれがあり、50質量%を超えて使用した場合には、塗膜の透明性を低下させるおそれがあることから、1~50質量%が好ましく、5~35質量%がより好ましく、8~30質量%がさらにより好ましい。
また、(B)成分として上記その他の紫外線吸収剤を含む場合の(B)成分の紫外線吸収剤の総量に対する上記式(1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤の配合量は、保存安定性、並びに形成される塗膜の透明性及び紫外線カット効果の点から、40~99.99質量%が好ましく、60~99質量%がより好ましい。
【0065】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物において、(A)成分及び(B)成分は水系溶媒中に分散される。この水系溶媒の量は、少ない方が相対的に有効成分量が多くなり好ましいが、少なすぎる場合には、ポリウレタン及び紫外線吸収剤の分散安定性が低下することから、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物の(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、60~1000質量部が好ましく、80~400質量部がより好ましく、100~250質量部が最も好ましい。
【0066】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分を水系溶媒に分散させた状態で、ウレタンプレポリマーを封鎖又は鎖伸長させて得られる。
ここで、ウレタンプレポリマーは、水系溶媒中の水と反応することにより鎖伸長するため、鎖伸長剤を特に添加しなくても、ウレタンプレポリマーからポリウレタン樹脂を生成させることは可能である。ただし、水とイソシアネート基との反応は速やかではないことから、(A)成分及び(B)成分が分散した状態の水系溶媒中に、(C)成分として水以外の鎖伸長剤を添加して鎖伸長反応を進めてもよい。また、(C)成分として封鎖剤を添加し、鎖伸長反応を止めてポリウレタン樹脂を生成してもよく、(C)成分として、封鎖剤と鎖伸長剤の両方を、添加してもよい。
【0067】
(C)成分である封鎖剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジドデシルアミン、ジステアリルアミン等のジアルキルアミン類;ジフェニルアミン等のジアリールアミン類;モルホリン、ピペリジン、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール等の2級アミノ基含有複素環化合物等が挙げられる。
(C)封鎖剤の配合量は、(A)ウレタンプレポリマーと(C)封鎖剤の総量に対して、0.01~50質量%が好ましく、0.5~40質量%がより好ましい。
【0068】
また、(C)成分である鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、ピペラジン、2-メチルピペラジン等の低分子ジアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール等のアルカノールアミン類;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリエーテルジアミン類;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、アミノエチルアミノエタノール、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ジアミン類;m-キシレンジアミン、α-(m/p-アミノフェニル)エチルアミン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン等の芳香族ジアミン類のポリアミン;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、1,6-ヘキサメチレンビス(N,N-ジメチルセミカルバジド)、1,1,1’,1’-テトラメチル-4,4’-(メチレン-ジ-パラ-フェニレン)ジセミカルバジド等のヒドラジド類;水和ヒドラジン等が挙げられる。
上記鎖伸長剤としては、反応が容易であり、工業的な入手も容易であることから、低分子ジアミン類、アルカノールアミン類、ポリアルキレンアミン類、ヒドラジド類、水和ヒドラジンが好ましく、エチレンジアミン、モノエタノールアミンが更に好ましい。鎖伸長剤の使用量は、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対して、鎖伸長剤のイソシアネート基と反応可能な基の量が、モル比で0.01~1.0であることが好ましい。
【0069】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、架橋剤、ヒンダードアミン系光安定剤、各種酸化防止剤(リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤)、基材に対する密着性を特に強固にするシランカップリング剤、コロイダルシリカ又はコロイダルアルミナ等の無機質コロイドゾル、テトラアルコキシシラン及びその縮重合物、キレート剤、エポキシ化合物、顔料、染料、造膜助剤、硬化剤、外部架橋剤、粘度調整剤、レベリング剤、消泡剤、凝固防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機又は有機の充填剤、可塑剤、滑剤、フッ素系又はシロキサン系等の帯電防止剤、補強剤、触媒、揺変剤、ワックス類、防曇剤、抗菌剤、防カビ剤、防腐食剤、及び防錆剤等を添加することができる。
【0070】
上記他の添加剤を配合する場合、水溶性又は水分散性の添加剤は、(A)成分と(B)成分を水に分散した後に配合することが好ましく、非水溶性で非水分散性の添加剤は、(A)成分のウレタンプレポリマーと混合してから、水に分散することが好ましい。
【0071】
次に、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物の製造方法について説明する。
まず、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、及び親水性基導入剤を、任意に触媒、架橋剤、及びカップリング剤等を加えて反応させ、(A)成分のウレタンプレポリマーを製造する。ウレタンプレポリマーの製造は常法により行うことができ、反応温度は、通常のウレタン化の反応温度、例えば常温~150℃とすることができ、反応を円滑に進めるために、イソシアネート基と反応しない不活性溶媒を使用することもできる。製造に使用する不活性溶媒は、ウレタンプレポリマーの水分散性を阻害しないことから、水との親和性の大きい有機溶剤が好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)等が好ましい。不活性溶媒の配合量は、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、及び親水性基導入剤の合計量100質量部に対して3~200質量部が好ましい。
【0072】
次に、(A)成分のウレタンプレポリマーと(B)成分の紫外線吸収剤とを混合する。
(A)成分と(B)成分を混合するタイミングは、(A)成分が水と共存するより前であれば特に制限されるものではなく、ウレタンプレポリマーにアニオン性基中和剤を添加し混合する際に、(B)成分とともにアニオン性基中和剤を添加し混合するか、ウレタンプレポリマーにアニオン性基中和剤を添加して混合した後、(B)成分を添加して混合するか、又はウレタンプレポリマーの形成材料とともに(B)成分を添加し、混合することが好ましい。
(B)成分に含まれる式(1)で表される紫外線吸収剤は、水に分散し難い化合物であるが、(A)成分と(B)成分を混合してから水に分散させることにより、(B)成分の水への分散性が向上する。これは、(A)成分のウレタンプレポリマーは自己乳化性があることから、(A)成分が(B)成分の乳化剤として機能することにより、ウレタンプレポリマー中に紫外線吸収剤が内包され、(B)成分の水への分散が可能になるものと考えられる。
尚、(B)成分の紫外線吸収剤に含まれる上記式(1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤は2つの水酸基を有するが、嵩高な化合物でありフェノール基のOHであるため、イソシアネート化合物と混合した場合であっても、イソシアネート基との反応性は極めて低いことが加熱混合試験によって確認されている。
【0073】
次いで、(A)成分と(B)成分の混合物を水に分散する。
ここでの水とは、特に限定されるものではないが、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、RO水(逆浸透水)等を指すものとする。これらの中でも、蒸留水、イオン交換水、純水または超純水を用いることが好ましい。
(A)成分と(B)成分の混合物を水に分散する方法としては、水への分散性が良好なことから、プレポリマーミキシング法及び転相法が好ましい。プレポリマーミキシング法では、(A)成分のウレタンプレポリマーに親水性基中和剤を添加し混合後、混合物を水中に投入して水に分散させ、転相法では、(A)成分のウレタンプレポリマーにアニオン性基中和剤を含有する水を添加するか、(A)成分のウレタンプレポリマーにアニオン性基中和剤を添加し混合後、混合物に水を添加して水に分散させる。
【0074】
(A)成分と(B)成分の混合物を水に分散する際、水の温度が高すぎるとウレタンプレポリマーのイソシアネート基と水との急激な反応により二酸化炭素の発生に伴う発泡現象が生じることがあることから、水の温度は75℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましい。尚、ここでの水は、ウレタンプレポリマーの鎖伸長剤としても作用する。
【0075】
また、(C)成分として、封鎖剤、又は水以外の鎖伸長剤を使用する場合には、(A)成分と(B)成分とを分散させた状態の水系溶媒に添加する。封鎖剤及び/又は鎖伸長剤を添加する場合、水の温度が低いと反応に長時間を要するため生産効率が低下し、高すぎると前述したようにイソシアネート基と水との急激な反応により二酸化炭素の発生に伴う発泡現象が生じることがあることから、封鎖剤及び/又は鎖伸長剤を使用する場合の水の温度は、20~75℃が好ましく、30~65℃がより好ましい。尚、鎖伸長における反応の終点を見極める方法としては、IR(赤外分光光度計)を用いてイソシアネート基の消失を確認する方法が、簡便であるので好ましい。
このようにして、ウレタンプレポリマーを封鎖剤又は鎖伸長剤と反応させることで、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物が製造される。本発明では、上述のように、紫外線吸収剤存在下でウレタンプレポリマーを鎖伸長させるため、紫外線吸収剤をポリウレタン樹脂が内包した状態となる。このため、水系ポリウレタン樹脂組成物の分離が抑制され、保存安定性に優れた水系ポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【0076】
尚、(A)成分の製造に有機溶剤を使用した場合は、水系ポリウレタン樹脂組成物が有機溶剤を含有することになるが、環境汚染や労働衛生等の安全性の観点から、水系ポリウレタン樹脂組成物中の有機溶剤は、減圧留去等の方法により、除去することが好ましい。しかしながら、本願発明の水系ポリウレタン樹脂組成物においては、有機溶剤が存在していることによって塗膜の透明性を良好にすることができるため(A)成分100質量部に対して100質量部を超えない範囲において含有していてもよい。有機溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドが挙げられ、とりわけN-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトンが好ましい。
【0077】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、保存安定性に優れ、形成される塗膜の透明性及び紫外線カット効果に優れていることから、ガラス、木、樹脂フィルム等の各種基材への種々の塗料、接着剤、コーティング剤として利用可能であるが、紫外線カット効果に優れ、かつ、透明性に優れることから、紫外線カットコーティング剤として好適に使用することができる。
【0078】
ここで、紫外線カットコーティング剤とは、ガラス、フィルム等の透明な基材にコーティングした際に可視光線は透過するが紫外線は遮蔽する材料である。その用途として建築材、自動車、サングラス等のコーティング剤としての使用が挙げられる。
【0079】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物の各種基材への塗布方法としては、特に限定されるものではないが、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、フローコート法等の一般的な塗布方法を採用することができ、水系ポリウレタン樹脂組成物が塗布された後の基材を40~300℃で乾燥して成膜することで、基材上に塗膜を形成する。
【実施例0080】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
尚、以下の実施例等において、配合割合(%)は、特に記載がない限り質量基準の割合を意味する。
【0081】
〔実施例1〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ポリオール化合物として、アデカニューエースYG-215((株)ADEKA製;数平均分子量2000ポリエステルポリオール)60.0gと、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物25.5g、架橋剤として、メラミン4.9g、アニオン性基導入剤として、ジメチロールプロピオン酸20.6g、ポリイソシアネート化合物として、デスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)136.5g、紫外線吸収剤として、ベモトリジノール81.3g、不活性溶媒として、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)99.6g、シランカップリング剤として、Z-6011(東レ・ダウコーニング社製)14.4g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)15.4gを入れて、115℃まで昇温して2時間撹拌及び混合することで、紫外線吸収剤とウレタンプレポリマーとが混在するウレタンプレポリマー組成物を調製し、70℃まで冷却した。
2Lのディスポカップに、蒸留水を437.2g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.5g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを2.4g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物中298.2gを徐々に添加した。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)14g、アジピン酸ジヒドラジド(25%水溶液)7.6g加え、さらに撹拌を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物U-1を得た。
【0082】
〔実施例2〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ポリオール化合物として、アデカニューエースYG-215((株)ADEKA製;数平均分子量2000ポリエステルポリオール)60.0gと、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物25.5g、架橋剤として、メラミン4.9g、アニオン性基導入剤として、ジメチロールプロピオン酸20.6g、ポリイソシアネート化合物として、デスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)136.5g、不活性溶媒として、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)99.6g、シランカップリング剤として、Z-6011(東レ・ダウコーニング社製)14.4g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)15.4gを入れて、115℃まで昇温して2時間撹拌及び混合した後、80℃まで冷却し、紫外線吸収剤として、ベモトリジノール81.3gを投入してさらに30分撹拌混合することで、紫外線吸収剤とウレタンプレポリマーとが混在するウレタンプレポリマー組成物を調製した。
2Lのディスポカップに、蒸留水を437.2g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.5g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを2.4g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物中298.2gを徐々に添加した。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)14g、アジピン酸ジヒドラジド(25%水溶液)7.6gを加え、さらに撹拌を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物U-2を得た。
【0083】
〔実施例3〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート三量化物48.4g、ステアリルアルコール22.7g、N-メチルピロリドン(NMP)70.7gを加え、撹拌及び混合することでステアリル基含有ポリイソシアネート化合物の50%溶液141.8gを得た。
続いてポリオール化合物として、アデカニューエースYG-108((株)ADEKA製;数平均分子量1000ポリエステルポリオール)51.5gと、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物40.6g、架橋剤としてメラミン8.1g、アニオン性基導入剤としてジメチロールプロピオン酸34.0g、もう1種のポリイソシアネート化合物としてデスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)203.6g、紫外線吸収剤として、ベモトリジノール101.4g、アデカスタブLA-F70((株)ADEKA製;トリアジン系紫外線吸収剤)40.6g、不活性溶媒として、NMP170.1g、密着促進剤として、ベンゾトリアゾール1.4g、シランカップリング剤として、Z-6011(東レ・ダウコーニング社製)24.0g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)25.7gを加えて、115℃まで昇温して2時間撹拌及び混合することで、ウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とが混在するウレタンプレポリマー組成物を調製した。
2Lのディスポカップに、蒸留水を728.4g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.9g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを4g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物中662.0gを徐々に添加した。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)29.0gと、アジピン酸ジヒドラジド(25%水溶液)14.9gを加え、さらに撹拌を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物U-3を得た。
【0084】
〔実施例4〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ポリオール化合物として、アデカニューエースYG-215((株)ADEKA製;数平均分子量2000ポリエステルポリオール)60.0gと、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物25.5g、架橋剤として、メラミン4.9g、アニオン性基導入剤としてジメチロールプロピオン酸20.6g、ポリイソシアネート化合物として、デスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)136.5g、紫外線吸収剤として、ベモトリジノール150.0g、不活性溶媒として、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)203.0g、シランカップリング剤として、Z-6011(東レ・ダウコーニング社製)14.4g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)15.4gを加えて、115℃まで昇温して2時間撹拌及び混合することで、ウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とが混在するウレタンプレポリマー組成物を調製し、70℃まで冷却した。
2Lのディスポカップに、蒸留水を437.7g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.5g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを2.4g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物中480.8gを徐々に添加した。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)16.7g、アジピン酸ジヒドラジド(25%水溶液)8.9gを加え、さらに撹拌を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物U-4を得た。
【0085】
〔実施例5〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート三量化物48.4g、ステアリルアルコール22.7g、N-メチルピロリドン(NMP)70.8gを加え、撹拌及び混合することでステアリル基含有イソシアネート化合物の50%溶液141.9gを得た。
続いてポリオール化合物として、アデカニューエースYG-108((株)ADEKA製;数平均分子量1000ポリエステルポリオール)51.7gと、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物40.6g、架橋剤として、メラミン8.1g、アニオン性基導入剤として、ジメチロールプロピオン酸34.0g、イソシアネート系化合物としてデスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)203.8g、ベモトリジノール42.4g、アデカスタブLA-F70((株)ADEKA製;トリアジン系紫外線吸収剤)16.9g、NMP(170.8g)、密着促進剤として、ベンゾトリアゾール1.4g、シランカップリング剤として、Z-6011(東レ・ダウコーニング社製)24.0g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)25.7gを入れて、115℃まで昇温し、2時間撹拌及び混合することで、ウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とが混在するウレタンプレポリマー組成物を製造し、70℃まで冷却した。
2Lのディスポカップに、蒸留水を728.4g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.9g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを4g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物中623.0gを徐々に添加した。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)29.0g、アジピン酸ジヒドラジド(25%水溶液)14.9gを加え、さらに撹拌を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物U-5を得た。
【0086】
〔実施例6〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ポリオール化合物として、アデカニューエースYG-108((株)ADEKA製;数平均分子量1000ポリエステルポリオール)12.0gと、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物34.2g、架橋剤として、メラミン3.0g、ノニオン性基導入剤として、YMER N120(Perstorp AG製;ポリエチレン基含有ジオール)52.2g、イソシアネート系化合物としてデスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)84.0g、紫外線吸収剤として、ベモトリジノール65.4g、不活性溶媒として、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)154.2g、分子量調整剤として、ステアリルアルコール32.5g、シランカップリング剤として、Z-6011(東レ・ダウコーニング社製)8.4gを加えて、115℃まで昇温して2時間撹拌及び混合することで、ウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とが混在するウレタンプレポリマー組成物を調製し、70℃まで冷却した。
2Lのディスポカップに、蒸留水を372.0g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.33g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物中344.3gを徐々に添加し、さらに撹拌を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物U-6を得た。
尚、この実施例では、蒸留水が鎖伸長剤として作用し、ポリウレタン樹脂が生成される。
【0087】
〔比較例1〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体48.4g、ステアリルアルコール22.7g、N-メチルピロリドン(NMP)70.7gを加え、撹拌及び混合することでステアリル基含有ポリイソシアネート化合物の50%溶液141.8gを得た。
続いてポリオール化合物として、アデカニューエースYG-108((株)ADEKA製;数平均分子量1000ポリエステルポリオール)51.5gと、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物40.6g、架橋剤として、メラミン8.1g、アニオン性基導入剤として、ジメチロールプロピオン酸34.0g、もう1種のポリイソシアネート化合物としてデスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)203.6g、紫外線吸収剤として、アデカスタブLA-F70((株)ADEKA製;トリアジン系紫外線吸収剤)16.9g、NMP170.1g、密着促進剤として、ベンゾトリアゾール1.4g、シランカップリング剤として、Z-6011(東レ・ダウコーニング社製)24.0g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)25.7gを加えて、115℃まで昇温して2時間撹拌及び混合することで、ウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とが混在するウレタンプレポリマー組成物を調製し、70℃まで冷却した。
2Lのディスポカップに、蒸留水を728.4g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.9g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを4g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物中591.6gを徐々に添加した。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)29.0g、アジピン酸ジヒドラジド(25%水溶液)14.9gを加え、さらに撹拌を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物HU-1を得た。
【0088】
〔比較例2〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、イソシアネート系化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体48.4g、ステアリルアルコール22.7g、N-メチルピロリドン(NMP)70.7gを加え、撹拌及び混合することでアルキル基含有イソシアネート化合物の50%溶液141.8gを得た。
続いてポリオール化合物として、アデカニューエースYG-108((株)ADEKA製;数平均分子量1000ポリエステルポリオール)51.5g、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物40.6g、架橋剤として、メラミン8.1g、アニオン性基導入剤としてジメチロールプロピオン酸34.0g、ポリイソシアネート化合物としてデスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)203.6g、アデカスタブLA-31((株)ADEKA製;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)42.4g、不活性溶媒として、NMP170.1g、密着促進剤として、ベンゾトリアゾール1.4g、シランカップリング剤として、Z-6011(東レ・ダウコーニング社製;)24.0g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)25.7gを加えて、115℃まで昇温して2時間撹拌及び混合することで、ウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とが混在するウレタンプレポリマー組成物を製造し、70℃まで冷却した。
2Lのディスポカップに、蒸留水(DSW)を728.4g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.9g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを4g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物中632.0gを徐々に添加し、さらに撹拌を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物HU-2を得た。
尚、この実施例では、蒸留水が鎖伸長剤として作用し、ポリウレタン樹脂が生成される。
【0089】
〔比較例3〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ポリオール化合物として、アデカニューエースYG-215(株式会社ADEKA製;数平均分子量2000ポリエステルポリオール)60.0g、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物25.5g、メラミン4.9g、親水性基導入剤としてジメチロールプロピオン酸20.6g、イソシアネート系化合物としてデスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)136.1g、不活性溶媒として、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)145.5g、密着促進剤として、ベンゾトリアゾール0.82g、シランカップリング剤として、Z-6011(東レ・ダウコーニング社製)14.4g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)15.4gを加えて、115℃まで昇温して2時間撹拌及び混合することで、ウレタンプレポリマー組成物を製造し、70℃まで冷却した。
2Lのディスポカップに、蒸留水を437.1g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.52g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを2.4g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物中327.9gを徐々に添加した。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)17.4g、アジピン酸ジヒドラジド(25%水溶液)9.0gを加え、さらに撹拌を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物HU-3を得た。
【0090】
〔比較例4〕
水系ポリウレタン樹脂組成物HU-3 50.0gに対し、ベモトリジノール3.9gを添加後、ディスパー(1000rpm)で10分間撹拌を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物HU-4を得た。
【0091】
実施例1~6及び比較例1~4の水系ポリウレタン樹脂組成物について、保存安定性、紫外線カット率、短波長領域の可視光線カット率、可視光透過率(透明性)、ヘイズ値をそれぞれ下記の方法で測定した。さらに、ブランクとして評価に用いたガラス板についても同様に測定し、評価した(参考例)。尚、紫外線カット率、短波長領域の可視光線カット率、可視光透過率及びヘイズ値の測定は、厚さ2mmガラス板にバーコーター(第一理化(株)製)により水系ポリウレタン樹脂組成物を塗布し、コーティング膜の乾燥膜厚が7μmのものを使用した。
【0092】
その結果を表1に示す。この表では、(A)成分のウレタンプレポリマーの量をポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、アニオン性基導入剤及び架橋剤の合計量とし、(B)成分の紫外線吸収剤の量を、ベモトリジノールを含む紫外線吸収剤の総量として、「(A)成分及び(B)成分の合計量に対する(B)成分の質量%」を算出した。
【0093】
<保存安定性試験方法>
水系ポリウレタン樹脂組成物を密閉容器に入れ、40℃で24時間保存した後、分離の有無から、下記評価基準に基づいて保存安定性を評価した。尚、保存安定性が不良なものは、以降の試験を行わなかった。
(評価基準)
○:分離が確認されず、保存安定性が良好
×:分離が確認され、保存安定性が不良
【0094】
<紫外線カット率>
分光光度計(日本分光株式会社製:V-770)を用いて、規格:建築用ガラス-可視光透過率、日射透過率、日射熱取得率、紫外線透過率及び関連グレージングファクターの測定方法(ISO 9050:2003)に準拠して、分光透過率曲線を求め、280~380nmの光(紫外線)についてのカット率(不透過率)を求めた。
(評価基準)
◎:紫外線カット率99%以上
○:紫外線カット率90%以上、99%未満
△:紫外線カット率80%以上、90%未満
×:紫外線カット率80%未満
【0095】
<420nmカット率>
分光透過率曲線を紫外線カット率の測定に用いた装置及び規格に準拠して求め、420nmの光(短波長領域可視光線)についてのカット率を求めた。
(評価基準)
◎:420nmカット率40%以上
○:420nmカット率30%以上、40%未満
△:420nmカット率20%以上、30%未満
×:420nmカット率20%未満
【0096】
<可視光線透過率(透明性)>
上述した紫外線カット率を測定した際と同一の装置及び規格に準拠して、分光透過率曲線を求め、380~780nmの光(可視光線)についての透過率を求めた。
(評価基準)
◎:可視光線透過率85%以上
○:可視光線透過率75%以上、85%未満
△:可視光線透過率65%以上、75%未満
×:可視光線透過率65%未満
【0097】
<ヘイズ値>
日本電色製ヘイズメーターNDH2000を使用して、ヘイズ値を求めた。ヘイズ値が低い程、塗膜の透明性が高いことを示す。
【0098】
【0099】
〔実施例7〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ポリオール化合物として、ETERNACOLL UH-200(宇部興産(株)製;数平均分子量2000ポリカーボネートポリオール)400g、アニオン性基導入剤として、ジメチロールプロピオン酸41.7g、ポリイソシアネート化合物として、デスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)198.2g、紫外線吸収剤として、ベモトリジノール28.9g、不活性溶媒として、メチルエチルケトン(MEK)277.3g、アニオン性基中和剤としてトリエチルアミン(TEA)31.4gを加えて、80℃まで昇温し、6時間撹拌してウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とが混在するウレタンプレポリマー組成物を調製した。
2Lのディスポカップに、40℃の蒸留水を895.0g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.09g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを3.6g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物559.4gを、2分間かけて加え、30分間撹拌を行った。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)20.3gを加え、さらに1時間撹拌を行った。その後、40℃に加温し、減圧条件下でMEKを除去し、水系ポリウレタン樹脂組成物U-7を得た。
【0100】
〔実施例8〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ポリオール化合物として、ETERNACOLL UH-200(宇部興産(株)製;数平均分子量2000ポリカーボネートポリオール)400g、アニオン性基導入剤として、ジメチロールプロピオン酸41.7g、ポリイソシアネート化合物として、デスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)198.2g、紫外線吸収剤として、ベモトリジノール131.1g、不活性溶媒として、メチルエチルケトン(MEK)277.3g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)31.4gを加えて、80℃まで昇温し、6時間撹拌してウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とが混在するウレタンプレポリマー組成物を調製した。
2Lのディスポカップに、40℃の蒸留水を1045.0g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.09g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを3.6g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物618.0gを、2分間かけて加え、30分間撹拌を行った。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)20.3gを加え、さらに1時間撹拌を行った。その後、40℃に加温し、減圧条件下でMEKを除去し、水系ポリウレタン樹脂組成物U-8を得た。
【0101】
〔実施例9〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ポリオール化合物として、ETERNACOLL UH-200(宇部興産(株)製;数平均分子量2000ポリカーボネートポリオール)400g、アニオン性基導入剤として、ジメチロールプロピオン酸41.7g、ポリイソシアネート化合物として、デスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)198.2g、紫外線吸収剤として、ベモトリジノール217.0g、不活性溶媒として、メチルエチルケトン(MEK)277.3g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)31.4gを加えて、80℃まで昇温し、6時間撹拌してウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とが混在するウレタンプレポリマー組成物を調製した。
2Lのディスポカップに、40℃の蒸留水を1175.0g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.09g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを3.6g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物667.0gを、2分間かけて加え、30分間撹拌を行った。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)20.3gを加え、さらに1時間撹拌を行った。その後、40℃に加温し、減圧条件下でMEKを除去し、水系ポリウレタン樹脂組成物U-9を得た。
【0102】
〔実施例10〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ポリオール化合物として、ETERNACOLL UH-200(宇部興産(株)製;数平均分子量2000ポリカーボネートポリオール)400g、アニオン性基導入剤として、ジメチロールプロピオン酸41.7g、ポリイソシアネート化合物として、デスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)198.2g、紫外線吸収剤として、ベモトリジノール386.0g、不活性溶媒として、メチルエチルケトン(MEK)277.3g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)31.4gを加えて、80℃まで昇温し、6時間撹拌してウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とが混在するウレタンプレポリマー組成物を調製した。
2Lのディスポカップに、40℃の蒸留水を1425.0g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.09g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを3.6g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物764.0gを、2分間かけて加え、30分間撹拌を行った。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)20.3gを加え、さらに1時間撹拌を行った。その後、40℃に加温し、減圧条件下でMEKを除去し、水系ポリウレタン樹脂組成物U-10を得た。
【0103】
〔実施例11〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ポリオール化合物として、ETERNACOLL UH-200(宇部興産(株)製;数平均分子量2000ポリカーボネートポリオール)280g、アニオン性基導入剤として、ジメチロールプロピオン酸29.2g、ポリイソシアネート化合物として、デスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)138.7g、紫外線吸収剤として、ベモトリジノール151.9g、不活性溶媒として、メチルエチルケトン(MEK)194.1g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)22.0gを加えて、80℃まで昇温し、6時間撹拌してウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とが混在するウレタンプレポリマー組成物を調製した。
2Lのディスポカップに、40℃の蒸留水を895.0g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.09g、トリエチルアミンを3.6g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物667.0gを、2分間かけて加え、30分間撹拌を行った。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)20.3gを加え、さらに1時間撹拌を行った。その後、40℃に加温し、減圧条件下でMEKを除去し、水系ポリウレタン樹脂組成物U-11を得た。
【0104】
〔比較例5〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ポリオール化合物として、ETERNACOLL UH-200(宇部興産(株)製;数平均分子量2000ポリカーボネートポリオール)400g、アニオン性基導入剤として、ジメチロールプロピオン酸41.7g、ポリイソシアネート化合物として、デスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)198.2g、アデカスタブLA-F70((株)ADEKA製;トリアジン系紫外線吸収剤)217.0g、不活性溶媒として、メチルエチルケトン(MEK)277.3g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)31.4gを加えて、80℃まで昇温し、6時間撹拌してウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とが混在するウレタンプレポリマー組成物を調製した。
2Lのディスポカップに、40℃の蒸留水を1175.0g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.09g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを3.6g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物667.0gを、2分間かけて加え、30分間撹拌を行った。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)20.3gを加え、さらに1時間撹拌を行った。その後、40℃に加温し、減圧条件下でMEKを除去し、水系ポリウレタン樹脂組成物HU-5を得た。
【0105】
〔比較例6〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ポリオール化合物として、ETERNACOLL UH-200(宇部興産(株)製;数平均分子量2000ポリカーボネートポリオール)400g、アニオン性基導入剤として、ジメチロールプロピオン酸41.7g、ポリイソシアネート化合物として、デスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)198.2g、アデカスタブLA-31((株)ADEKA製;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)217.0g、不活性溶媒として、メチルエチルケトン(MEK)277.3g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)31.4gを加えて、80℃まで昇温し、6時間撹拌してウレタンプレポリマーと紫外線吸収剤とが混在するウレタンプレポリマー組成物を調製した。
2Lのディスポカップに、40℃の蒸留水を1175.0g、消泡剤として、アデカネートB-1016((株)ADEKA製)を0.09g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを3.6g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物667.0gを、2分間かけて加え、30分間撹拌を行った。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)20.3gを加え、さらに1時間撹拌を行った。その後、40℃に加温し、減圧条件下でMEKを除去し、水系ポリウレタン樹脂組成物HU-6を得た。
【0106】
〔比較例7〕
ジムロート、撹拌羽、窒素ラインを装着した4つ口セパラブル丸底フラスコに、ポリオール化合物として、ETERNACOLL UH-200(宇部興産(株)製;数平均分子量2000ポリカーボネートポリオール)400g、アニオン性基導入剤として、ジメチロールプロピオン酸41.7g、ポリイソシアネート化合物として、デスモジュールW(コベストロ社製;メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)ジイソシアナート)198.2g、不活性溶媒として、メチルエチルケトン(MEK)277.3g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミン(TEA)31.4gを加えて、80℃まで昇温し、6時間撹拌してウレタンプレポリマーを製造した。
2Lのディスポカップに、40℃の蒸留水を895.0g、アデカネートB-1016(消泡剤、(株)ADEKA製)を0.09g、アニオン性基中和剤として、トリエチルアミンを3.6g加え、ディスパーで5分間撹拌した後、上記の調製したウレタンプレポリマー組成物543.0gを、2分間かけて加え、30分間撹拌を行った。その後、鎖伸長剤として、エチレンジアミン(25%水溶液)20.3gを加え、さらに1時間撹拌を行った。その後、40℃に加温し、減圧条件下でMEKを除去し、水系ポリウレタン樹脂組成物HU-7を得た。
【0107】
〔比較例8〕
水系ポリウレタン樹脂組成物HU-7 50.0gに対し、紫外線吸収剤として、ベモトリジノール4.74g添加後、ディスパー(1000rpm)で10分間撹拌を行い、水系ポリウレタン樹脂組成物HU-8を得た。
【0108】
実施例7~11及び比較例5~8の水系ポリウレタン樹脂組成物について、保存安定性、紫外線カット率、ヘイズ値、密着性をそれぞれ下記の方法で試験した。尚、密着性の評価には下記の試験片A~Bを用い、紫外線カット率、ヘイズ値の評価には下記の試験片Aを用いた。
その結果を表2に示す。この表では、(A)成分のウレタンプレポリマーの量をポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、アニオン性基導入剤の合計量とし、(B)成分の紫外線吸収剤の量を、ベモトリジノールを含む紫外線吸収剤の総量として、「(A)成分及び(B)成分の合計量に対する(B)成分の質量%」を算出した。
【0109】
試験片A:市販PETフィルム(厚さ20μm、コロナ未処理、表面の平均水接触角70°)に、バーコート法により、乾燥後の塗膜の厚さが約1μmとなるように水系ポリウレタン樹脂組成物を塗布し、25℃で風乾した後、180℃で10分間加熱して試験片Aを作製した。
試験片B:市販PETフィルムをコロナ処理装置で、表面の平均水接触角が28~32°になるまでコロナ処理した後、バーコート法により、このフィルムに乾燥後の塗膜の厚さが約1μmになるように水系ポリウレタン樹脂組成物を塗布し、25℃で風乾した後、180℃で10分間加熱して試験片Bを作製した。
【0110】
<保存安定性試験方法>
水系ポリウレタン樹脂組成物を密閉容器に入れ、40℃で24時間保存した後、分離の有無から、下記評価基準に基づいて保存安定性を評価した。尚、保存安定性が不良なものは、以降の試験を行わなかった。
(評価基準)
○:分離が確認されず、保存安定性が良好
×:分離が確認され、保存安定性が不良
【0111】
<紫外線カット率試験方法>
試験片Aを用い、分光光度計(日本分光株式会社製:V-770)を用いて、規格:建築用ガラス-可視光透過率、日射透過率、日射熱取得率、紫外線透過率及び関連グレージングファクターの測定方法(ISO9050:2003)に準拠して、分光透過率曲線を求め、380nmの光(紫外線)についてのカット率(遮光率)を求めた。
(評価基準)
◎:紫外線カット率90%以上
○:紫外線カット率70%以上、90%未満
△:紫外線カット率20%以上、70%未満
×:紫外線カット率20%未満
【0112】
<ヘイズ値試験方法>
試験片Aを用いて、日本電色製ヘイズメーターNDH5000を使用してヘイズ値を測定した。ヘイズ値が低いほど塗膜(ウレタン系硬化膜)の透明性が高いことを示す。
【0113】
<密着性試験方法>
JIS K5600-5-6(塗料一般試験方法―第5部:塗膜の機械的性質―第6節:付着性(クロスカット法))に準拠し、隙間間隔1mmのカッターガイドを用いて、試験片のウレタン系硬化膜を100マスにカットした。このカットした硬化膜に付着テープを付着させた後、引き剥がし方向に対して約60°の角度で付着テープを引き剥がした。同一の試験片に対して、付着テープの付着及び引き剥がしの操作を3回行った後、剥がれが起きていないマスの数を数えた。剥がれが起きていないマスの数が多いほど、密着性が高いことを示す。
【0114】
【0115】
上記実施例から明らかなように、上記式(1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤(ベモトリジノール)と、特定のウレタンプレポリマーとを水系溶媒に分散させた状態で、ウレタンプレポリマーを鎖伸長剤と反応させて得られた水系ポリウレタン樹脂組成物は、保存安定性に優れており、ガラス基材及びフィルム基材に塗布した場合に、形成された塗膜の紫外線カット効果及び透明性に優れていることが確認された。
これに対して、上記式(1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤を含まない比較例1~3及び5~7の水系ポリウレタン樹脂組成物は、分散安定性が十分でなく、保存安定性に優れた水系ポリウレタン樹脂組成物を得ることができないことが確認された。また、比較例4及び8に示すように、ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを反応させてポリウレタン樹脂を生成した後に、上記式(1)で表されるトリアジン系紫外線吸収剤を添加して得られた水系ポリウレタン樹脂組成物は保存安定性が悪いことが確認された。
本発明によれば、透明性に優れていながら紫外線カット効果に優れた性能を有することから、遮光フィルム、塗料等の用途に好適な水系ポリウレタン樹脂組成物を提供することができる。
前記ポリオール化合物が、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール及びポリエーテルジオールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。
(B)成分である紫外線吸収剤の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して、10~50質量%である、請求項1~4の何れか一項に記載の水系ポリウレタン樹脂組成物。