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  • 特開-脱血用カニューレ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150088
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】脱血用カニューレ
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20231005BHJP
   A61M 60/113 20210101ALI20231005BHJP
   A61M 60/38 20210101ALI20231005BHJP
【FI】
A61M1/36 141
A61M60/113
A61M60/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058993
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(71)【出願人】
【識別番号】522129638
【氏名又は名称】有吉 洸希
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】有吉 洸紀
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】池田 拓士
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA03
4C077BB06
4C077CC02
4C077DD20
4C077EE01
4C077FF01
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】血管挿入部の径を大きくしても血管に挿入しにくくならない脱血用カニューレを提供する。
【解決手段】脱血用カニューレ10は、外筒11と、外筒11内に径を圧縮されて収納されている血管挿入部12と、を備える。血管への挿入後に外筒11が引き抜かれることで血管挿入部12が血管内において拡径する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱血用カニューレであって、
外筒と、
前記外筒内に径を圧縮されて収納されている血管挿入部と、
を備え、
血管内への挿入後に前記外筒が引き抜かれることで前記血管挿入部が前記血管内において拡径する、脱血用カニューレ。
【請求項2】
自然な状態で、前記血管挿入部の外径は、挿入先の血管の内径より大きい、
請求項1に記載の脱血用カニューレ。
【請求項3】
前記血管内における前記血管挿入部の拡径は、前記血管の内周面から受ける反力により、外周面の少なくとも一部が内側に凹んでいる形状で止まるようになっている、
請求項2に記載の脱血用カニューレ。
【請求項4】
前記血管挿入部は、前記血管内において前記血管の内周面を押し広げることで、断面視で円形状となるまで拡径するようになっている、
請求項2に記載の脱血用カニューレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱血用カニューレに関する。
【背景技術】
【0002】
血液ポンプを備える人工心肺装置(ECMO(extracorporeal membrane oxygenation;体外式膜型人工肺)、PCPS(extracorporeal membrane oxygenation;経皮的心肺補助装置)、など)等において脱血用カニューレが使用される(非特許文献1参照)。
【0003】
たとえば、人工心肺装置等を使用する場合、脱血用カニューレとして、挿入先の血管の内径に対し、同等あるいは一回り小さい外径のカニューレが選定され、血液ポンプはこのカニューレを介して脱血(吸込)し、人工肺へと駆出(送血)する。挿入先の血管の内径より大きい外径を有する脱血用カニューレは使用されない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】”経皮的心肺補助装置(PCPS)”, [online], ウィキペディア, [2021年12月17日検索], インターネット<URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E5%BF%83%E8%82%BA%E8%A3%85%E7%BD%AE#%E7%B5%8C%E7%9A%AE%E7%9A%84%E5%BF%83%E8%82%BA%E8%A3%9C%E5%8A%A9%E8%A3%85%E7%BD%AE%EF%BC%88PCPS%EF%BC%89>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脱血用カニューレの径が小さいことで以下の課題がある。すなわち、(1)血液ポンプの吸込み口の径を大きくできず、流量が出にくいため、血液循環が十分でないことがある。また(2)吸込み流速が上がる(陰圧が高まる)ため、溶血の要因になる。他方、脱血用カニューレの径を大きくすると、血管に挿入しにくいという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものである。本発明の目的は、血管挿入部の径を大きくしても血管に挿入しにくくならない脱血用カニューレを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る脱血用カニューレは、
外筒と、
前記外筒内に径を圧縮されて収納されている血管挿入部と、
を備え、
血管内への挿入後に前記外筒が引き抜かれることで前記血管挿入部が前記血管内において拡径する。
【0008】
このような態様によれば、血管挿入部が外筒内に径を圧縮されて収納されており、血管挿入部の径を大きくしても、外筒の径は変わらないため、血管への挿入がしにくくならない。そのため、脱血用カニューレとして、従来のものより大きい径のカニューレを選定することが可能となる。これにより、(1)血液ポンプの吸込み口の径を大きくできるため、吸い込み性能を改善でき、十分な血流量を確保できる。また(2)血球が壊れるほどの過度の陰圧になりにくくなるため、溶血防止につながる。したがって、人工心肺装置等における血液循環性能があがり、治療効果、生命維持、予後改善の期待を高めることができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る脱血用カニューレは、第1の態様に係る脱血用カニューレであって、
自然な状態で、前記血管挿入部の外径は、挿入先の血管の内径より大きい。
【0010】
本発明の第3の態様に係る脱血用カニューレは、第2の態様に係る脱血用カニューレであって、
前記血管内における前記血管挿入部の拡径は、前記血管の内周面から受ける反力により、外周面の少なくとも一部が内側に凹んでいる形状で止まるようになっている。
【0011】
このような態様によれば、血管挿入部の外周面のうち内側に凹んでいる部分と血管の内周面との間に流路が形成されるため、挿入位置より下流側(たとえば下肢)への血流を保つことができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る脱血用カニューレは、第2の態様に係る脱血用カニューレであって、
前記血管挿入部は、前記血管内において前記血管の内周面を押し広げることで、断面視で円形状となるまで拡径するようになっている。
【0013】
このような態様によれば、人工心肺装置を循環する血流量を最大限に確保できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、血管挿入部の径を大きくしても血管に挿入しにくくならない脱血用カニューレを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施の形態に係る人工心肺装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、一実施の形態に係る脱血用カニューレの側面図である。
図3図3は、図2に示す脱血用カニューレのA-A線で切断した断面を示す図である。
図4図4は、血管挿入部が外筒内に収納される前の脱血用カニューレの側面図である。
図5図5は、図4に示す脱血用カニューレのB-B線で切断した断面を示す図である。
図6図6は、血管内への挿入後に外筒が引き抜かれることで血管挿入部が血管内において拡径した状態の一例を示す断面図である。
図7図7は、血管内への挿入後に外筒が引き抜かれることで血管挿入部が血管内において拡径した状態の別例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明および以下の説明で用いる図面では、同一に構成され得る部分について、同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、一実施の形態に係る人工心肺装置1の概略構成を示す図である。
【0018】
図1に示すように、人工心肺装置1は、脱血用カニューレ10と、血液ポンプ20と、膜型人工肺30と、送血用カニューレ40とを有している。
【0019】
このうち脱血用カニューレ10は、先端部が患者Pの血管(たとえば大腿静脈)に挿入され、基端部が血液ポンプ20の吸込み口に送血用チューブを介して接続される。血液ポンプ20の吐出し口は、膜型人工肺30の入口に送血用チューブを介して接続される。膜型人工肺30の出口は、送血用カニューレ40の基端部に送血用チューブを介して接続され、送血用カニューレ40の先端部は、患者Pの血管(たとえば大腿動脈)に挿入される。
【0020】
血液ポンプ20および膜型人工肺30を動作させると、患者Pの血管から脱血用カニューレ10を介して取り出される血液は、血液ポンプ20の吸込み口から吸い込まれ、吐出し口から膜型人工肺30へと駆出される。膜型人工肺30において酸素を加えられた血液は、送血用カニューレ40を介して患者Pの血管へと戻される。このようにして、人工心肺装置1を介して血液の循環が行われる。
【0021】
次に、図2図4を参照して、脱血用カニューレ10の構成について説明する。図2は、血管挿入部12が外筒11内に収納された状態の脱血用カニューレ10の側面図であり、図3は、図2に示す脱血用カニューレ10のA-A線で切断した断面を示す図である。図4は、血管挿入部12が外筒11内に収納される前の脱血用カニューレの側面図であり、図5は、図4に示す脱血用カニューレのB-B線で切断した断面を示す図である。
【0022】
図2図5に示すように、脱血用カニューレ10は、血液ポンプ20の吸込み口から延びるチューブに接続される接続部13と、血管に挿入される血管挿入部12と、外筒11とを有している。
【0023】
自然な状態で、血管挿入部12の外径D0(図5参照)は、外筒11の内径より大きく形成されており、図2および図3に示すように、血管挿入部12は、外筒11内に径を圧縮されて(たとえば、折り畳むように潰された状態で)収納されている。なお、本明細書において、「径を圧縮されて収納」とは、図3を参照し、外筒11内に収納されている血管挿入部12に少なくとも3点で接する円Rを描いた時に、その円Rの径D1が、自然な状態での血管挿入部12の外径D0(図5参照)より小さくなっていることを意味する。血管挿入部10の材質としては、弾性を有し、かつ生体適合材料である、樹脂、もしくは金属、またはその両方が用いられる。が用いられる。
【0024】
外筒11は、全体として筒形状を呈しており、内部に収納される血管挿入部12を、径が圧縮された状態(たとえば、図3に示すように、折り畳むように潰されている状態)で維持できるものであれば、その具体的な構成は特に限定されるものではなく、たとえば外周面がメッシュ形状となっていてもよいし、全体としてコイル形状となっていてもよい。外筒11の材質としては、生体適合材料であればよく、たとえば樹脂が用いられる。
【0025】
人工心肺装置1を使用する場合、脱血用カニューレ10の血管挿入部12は、図2および図3に示すように、外筒11内に径を圧縮されて収納された状態で、患者Pの血管(たとえば大腿静脈)内へ挿入される。ここで、血管挿入部12は外筒11内に径を圧縮されて収納されており、血管挿入部12の径を大きくしても、外筒11の径は変わらないため、血管への挿入がしにくくはならない。そのため、脱血用カニューレ10として、従来のものより大きい径のカニューレを選定することが可能となる。
【0026】
血管内への挿入後に外筒11が引き抜かれることで、血管挿入部12の弾性回復力により、血管挿入部12が血管内において拡径する(折り畳むように潰れた状態から元の円形状に戻ろうとして拡がる)。
【0027】
自然な状態で、血管挿入部10の外径D0(図5参照)は、挿入先の血管Vの内径より大きく形成されていてもよい。
【0028】
一例として、血管挿入部12の弾性回復力が、血管Vの内周面から受ける反力より小さく、図6に示すように、血管V内における血管挿入部11の拡径は、血管Vの内周面から受ける反力により、外周面の少なくとも一部が内側に凹んでいる形状で止まるようになっていてもよい。この場合、血管挿入部12の外周面のうち内側に凹んでいる部分と血管Vの内周面との間に流路Cが形成されるため、血管挿入部12の挿入位置より下流側(たとえば下肢)の血管への血流を保つことができる。
【0029】
別例として、血管挿入部12の弾性回復力が、血管Vの内周面から受ける反力より大きく、図7に示すように、血管挿入部12は、血管V内において血管Vの内周面を押し広げることで、断面視で円形状となるまで拡径するようになっていてもよい。この場合、血管挿入部12の挿入位置より下流側(たとえば下肢)の血管への血流は途絶えるものの、人工心肺装置1を循環する血流量を最大限に確保できる。
【0030】
以上のような本実施の形態によれば、脱血用カニューレ10の血管挿入部12が、外筒11内に径を圧縮されて収納されており、血管挿入部12の径を大きくしても、外筒11の径は変わらないため、患者Pの血管への挿入がしにくくならない。そのため、脱血用カニューレ10として、従来のものより大きい径のカニューレを選定することが可能となる。これにより、(1)血液ポンプ20の吸込み口の径を大きくできるため、吸い込み性能を改善でき、十分な血流量を確保できる。また(2)血球が壊れるほどの過度の陰圧になりにくくなるため、溶血防止につながる。したがって、人工心肺装置1等における血液循環性能があがり、治療効果、生命維持、予後改善の期待を高めることができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態および変形例を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。例えば、脱血用カニューレを挿入する血管は大腿静脈に限定されることはなく、鎖骨下動脈を始めとした他の血管でも使用し得る。また、各実施の形態および変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 人工心肺装置
10 脱血用カニューレ
11 外筒
12 血管挿入部
13 接続部
20 血液ポンプ
30 膜型人工肺
40 送血用カニューレ
C 流路
P 患者
V 血管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7