(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150170
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】地盤改良材の製造方法及び地盤改良材
(51)【国際特許分類】
C09K 17/44 20060101AFI20231005BHJP
C09K 17/10 20060101ALI20231005BHJP
C09K 17/14 20060101ALI20231005BHJP
C09K 17/48 20060101ALI20231005BHJP
C09K 3/22 20060101ALI20231005BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C09K17/44 P
C09K17/10 P
C09K17/14 P
C09K17/48 P
C09K3/22
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059129
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅彦
【テーマコード(参考)】
2D040
4H026
【Fターム(参考)】
2D040CA01
2D040CA10
4H026CA01
4H026CB08
4H026CC02
4H026CC05
(57)【要約】
【課題】本発明は、グリコール類などの液分の蒸発が原因となる地盤改良時の発塵を十分に抑制できる地盤改良材を製造する地盤改良材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る地盤改良材の製造方法は、セメント系水硬性材料と、グリコール類及びグリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む発塵抑制剤と、を含有する地盤改良材の製造方法であって、前記セメント系水硬性材料のL*a*b*表色系色度における白色度L*
0を測定することと、前記セメント系水硬性材料と前記発塵抑制剤とを混合して、前記地盤改良材を調製することと、前記地盤改良材のL*a*b*表色系色度における白色度L*
1を測定し、下記式(1)で算出される数値が-0.111以下となる前記地盤改良材を出荷することと、を有する。
(L*
1-L*
0)/(100-L*
0)・・・・・(1)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系水硬性材料と、グリコール類及びグリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む発塵抑制剤と、を含有する地盤改良材の製造方法であって、
前記セメント系水硬性材料のL*a*b*表色系色度における白色度L*
0を測定することと、
前記セメント系水硬性材料と前記発塵抑制剤とを混合して、前記地盤改良材を調製することと、
前記地盤改良材のL*a*b*表色系色度における白色度L*
1を測定し、下記式(1)で算出される数値が-0.111以下となる前記地盤改良材を出荷することと、を有する
地盤改良材の製造方法。
(L*
1-L*
0)/(100-L*
0)・・・・・(1)
【請求項2】
前記発塵抑制剤は、50質量%以下の水分をさらに含む
請求項1に記載の地盤改良材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の地盤改良材の製造方法で製造された地盤改良材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良材の製造方法及び地盤改良材に関する。より詳しくは、本発明は、地盤改良材の製造方法、及び、該地盤改良材の製造方法で製造された地盤改良材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱な地盤の変形や沈下、液状化などを抑制する観点から、地表から2m程度の浅層の地盤の強度を高めるべく地盤改良することが知られている。
このような浅層改良は、セメント系水硬性材料を含む地盤改良材と原位置の土壌とを混合して締固めをしたり、前記地盤改良材と、水とを混合して得られるスラリーと原位置の土壌とを混合したりして実施される。
【0003】
また、前記地盤改良材と原位置の土壌とを混合したりする場合において、前記地盤改良材に含まれる前記セメント系水硬性材料などの粉体が発塵することを抑制する観点から、前記地盤改良材に発塵抑制剤としてグリコール類などの液分を添加することが知られている(例えば、下記特許文献1)。
上記のような、セメント系水硬性材料などの粉体と発塵抑制剤としてのグリコール類などの液分とを含む地盤改良材は、通常、出荷するまで冷暖房設備のないテント倉庫や屋外などで保管される。
【0004】
なお、前記グリコール類は、発塵抑制剤としてセメント系水硬性材料などの粉体と混合される前においては、タンクなどに保管されているものの、前記グリコール類は、引火点が危険物に該当することがあり、取り扱い上の制約がある。
そのため、前記グリコール類をタンクなどに保管するに際しては、取り扱い上の観点から、非危険物とするために、該グリコール類に所定量の水を加えて、引火点が高められることがある。
すなわち、前記発塵抑制剤は、液分として、前記グリコール類に加えて水を含むことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、発塵抑制剤としてグリコール類などの液分を含む地盤改良材を冷暖房設備のないテント倉庫や屋外などで保管していると、該地盤改良材からグリコール類などの液分が蒸発してしまうことがある。
上記のようなグリコール類などの液分の蒸発は、外気温が高い夏場には特に顕著になる。
そして、上記のように、前記地盤改良材からグリコール類などの液分が蒸発してしまうと、前記地盤改良材と原位置の土壌とを混合したりして浅層改良する場合において、前記セメント系水硬性材料などの粉体の発塵を十分に抑制することができなくなる。
【0007】
しかしながら、グリコール類などの液分の蒸発が原因となる浅層改良時の発塵を十分に抑制できる地盤改良材を製造する方法について、未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
【0008】
そこで、本発明は、グリコール類などの液分の蒸発が原因となる浅層改良時の発塵を十分に抑制できる地盤改良材を製造する地盤改良材の製造方法、及び、該地盤改良材の製造方法で製造された地盤改良材を提供することを課題とする。
【0009】
本発明者らが鋭意検討したところ、セメント系水硬性材料のL*a*b*表色系色度における白色度L*
0と、地盤改良材のL*a*b*表色系色度における白色度L*
1とを用いて所定の相関式を立て、該相関式によって算出される数値が所定の閾値を満たすような、前記地盤改良材を出荷することにより、グリコール類などの液分の蒸発が原因となる浅層改良時の発塵を十分に抑制できる地盤改良材を製造できることを見出した。
そして、本発明を想到するに至った。
【0010】
即ち、本発明に係る地盤改良材の製造方法は、
セメント系水硬性材料と、グリコール類及びグリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む発塵抑制剤と、を含有する地盤改良材の製造方法であって、
前記セメント系水硬性材料のL*a*b*表色系色度における白色度L*
0を測定することと、
前記セメント系水硬性材料と前記発塵抑制剤とを混合して、前記地盤改良材を調製することと、
前記地盤改良材のL*a*b*表色系色度における白色度L*
1を測定し、下記式(1)で算出される数値が-0.111以下となる前記地盤改良材を出荷することと、を有する。
(L*
1-L*
0)/(100-L*
0)・・・・・(1)
【0011】
斯かる構成によれば、グリコール類などの液分の蒸発が原因となる浅層改良時の発塵を十分に抑制できる地盤改良材を製造することができる。
なお、本明細書において、「蒸発」とは、グリコール類などの液分が沸点を超えて蒸発することを意味するのではなく、蒸気圧との関係で蒸発することを意味する。
【0012】
また、本発明に係る地盤改良材の製造方法においては、
前記発塵抑制剤は、50質量%以下の水分をさらに含む、ことが好ましい。
【0013】
斯かる構成によれば、前記発塵抑制剤に含まれる液分を前記グリコール類や前記グリコールエーテル類と水との混合物とすることができる。
これにより、前記発塵抑制剤の引火点を高めて、前記発塵抑制剤を非危険物とすることができる。
その結果、前記セメント系水硬性材料と混合される前において、前記発塵抑制剤をタンクなどに非危険物として保管することができる。
【0014】
本発明に係る地盤改良材は、
上記いずれかの地盤改良材の製造方法で製造された地盤改良材である。
【0015】
斯かる構成によれば、前記地盤改良材は、前記発塵抑制剤を十分に含有するものとなる。
これにより、前記地盤改良材は、地盤改良時の発塵が十分に抑制されたものとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、グリコール類などの液分の蒸発が原因となる地盤改良時の発塵を十分に抑制できる地盤改良材を製造する地盤改良材の製造方法を提供することができる。
また、前記地盤改良材の製造方法で製造された地盤改良材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0018】
[地盤改良材の製造方法]
本実施形態に係る地盤改良材の製造方法は、セメント系水硬性材料と、グリコール類及びグリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む発塵抑制剤と、を含有する地盤改良材の製造方法である。
本実施形態に係る地盤改良材の製造方法は、前記セメント系水硬性材料のL*a*b*表色系色度における白色度L*
0を測定すること(S1)と、
前記セメント系水硬性材料と前記発塵抑制剤とを混合して、前記地盤改良材を調製すること(S2)と、
前記地盤改良材のL*a*b*表色系色度における白色度L*
1を測定し、下記式(1)で算出される数値が-0.111以下となる前記地盤改良材を出荷すること(S3)と、を有する。
(L*
1-L*
0)/(100-L*
0)・・・・・(1)
【0019】
L*a*b*表色系色度において、L*値は0~100の範囲の数値で明るさの程度を示すものであり、L*値が大きくなるほど、すなわち、L*値が100に近付くほど明るくなることを意味し、L*値が小さくなるほど、すなわち、L*値が0に近付くほど暗くなることを意味している。
そして、L*値が100のときは白色が呈されることを意味し、L*値が0のときは黒色が呈されることを意味する。
ここで、上記式(1)において、分母である(100-L*
0)は、白色が呈されていることを意味する数値100から前記セメント系水硬性材料の明るさの程度、すなわち、白色が呈される程度を示すL*
0を減じている。
すなわち、上記式(1)の分母においては、前記セメント系水硬性材料の表面における白色の程度が減じられていることから、この分母は、前記セメント系水硬性材料の表面が黒色に呈される程度を示しているといえる。
【0020】
また、前記地盤改良材は、調製直後においては前記発塵抑制剤が然程蒸発していない状態であることから、該発塵抑制剤によって前記セメント系水硬性材料の表面が十分に湿った状態となっていて、前記セメント系水硬性材料の表面で光が乱反射され難くなっているため、前記表面はやや黒色を帯びている。
そのため、L*
1値は低くなり、前記セメント系水硬性材料が黒色に呈される程度が大きくなっている。
しかしながら、調製直後から時間が経過するにつれて、前記地盤改良材から前記発塵抑制剤に含まれるグリコール類やグリコールエーテル類などの液分が蒸発されるようになるので、この液分の蒸発により、前記セメント系水硬性材料の表面の湿潤の程度が小さくなって、前記表面が黒色を帯びる程度が小さくなる。
そのため、L*
1の値は高くなる。
すなわち、前記地盤改良材において、前記セメント系水硬性材料が白色に呈される程度が大きくなる。
そして、上記式(1)の分子は、L*
1の値とL*
0の値との差分であることから、前記地盤改良材から前記発塵抑制剤に含まれるグリコール類やグリコールエーテル類が蒸発されて、前記地盤改良材に含まれる前記セメント系水硬性材料の表面が白色を呈する程度が大きくなると、L*
1-L*
0による算出値は、0に近付くようになる。
これらのことから、L*
1-L*
0による算出値が0から離れて-の値を取るようになるほど、前記地盤改良材に含まれる前記セメント系水硬性材料の表面が十分に湿った状態となっていて、前記地盤改良材に含まれる前記セメント系水硬性材料の表面が黒色に呈される程度が大きくなっているといえる。
したがって、上記式(1)の分子は、前記地盤改良材に含まれる前記セメント系水硬性材料の表面が黒色に呈される程度を示しているといえる。
【0021】
上記のことから、上記式(1)で算出される値は、前記地盤改良材に含ませる前の前記セメント系水硬性材料の表面が黒色を呈している程度に対する、前記地盤改良材に含ませた後の前記セメント系水硬性材料の表面が黒色を呈している程度の比率を意味しているといえる。
そして、上記式(1)で算出される値が-0.111以下であることは、前記地盤改良材に含ませた後において前記セメント系水硬性材料の表面が黒色に呈される程度を十分に維持できていることを示している。
すなわち、上記式(1)で算出される値が-0.111以下であることにより、前記地盤改良材にグリコール類やグリコールエーテル類などの液分が十分に含まれるようになって、前記地盤改良材に含まれる前記セメント系水硬性材料の表面は、十分に湿った状態となっている。
このことから、上記式(1)で算出される値が-0.111以下である場合には、前記地盤改良材は、浅層改良に用いられるときに、前記地盤改良材に含まれる前記セメント系水硬性材料などの粉体が発塵することを十分に抑制できる。
【0022】
以下、各ステップS1~S3について説明する。
なお、以下では、ステップS1を“白色度L*
0測定ステップS1”と称し、ステップS2を“地盤改良材調製ステップS2”と称し、ステップS3を“地盤改良材出荷ステップS3”と称することがある。
【0023】
(白色度L*
0測定ステップS1)
ステップS1では、前記地盤改良材に含まれることとなる前記セメント系水硬性材料のL*a*b*表色系色度における白色度L*
0を測定する。
前記セメント系水硬性材料のL*a*b*表色系色度における白色度L*
0は、色彩色差計を用いて測定することができる。
前記色彩色差計としては、コニカミノルタ社製の商品名「CR-20」を用いることができる。
前記白色度L*
0の測定は、以下のようにして実施することができる。
(1)内径31mm、高さ5mmの塩化ビニル製リング内に、前記セメント系水硬性材料を充填する。
前記セメント系水硬性材料は、前記塩ビ製リングの上端面から前記セメント系水硬性材料の一部が盛り上がるように充填する。
(2)前記塩ビ製リング内に充填した前記セメント系水硬性材料を、前記塩ビ製リングの上端面側から20tの圧力でプレスして、白色度L*
0測定用の試験体を得る。
(3)色彩色差計(例えば、コニカミノルタ社製の商品名「CR-20」)を用いて、前記白色度L*
0測定用の試験体の任意の5箇所について、白色度L*
0の値を測定する。
具体的には、前記白色度L*
0測定用の試験体の端面(例えば、上端面)の上方に前記色彩色差計を配して、前記白色度L*
0測定用の試験体の任意の5箇所について白色度L*
0の値を測定する。
(4)5個の測定値を平均して、前記セメント系水硬性材料の前記白色度L*
0を求める。
【0024】
前記セメント系水硬性材料としては、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどの各種公知のセメントや、特殊土用固化材、一般軟弱土用固化材、高有機質土用固化材や、特殊粘性土用固化材などの各種公知のセメント系固化材が挙げられる。
前記ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントなどが挙げられる。
【0025】
(地盤改良材調製ステップS2)
地盤改良材調製ステップS2では、前記セメント系水硬性材料と前記発塵抑制剤とを混合して、前記地盤改良材を調製する。
前記セメント系水硬性材料と前記発塵抑制剤との混合は、撹拌槽と撹拌機とを備える各種公知の粉体混合装置を用いて実施することができる。
上記のごとき、粉体混合装置では、前記撹拌機は、撹拌棒と、該撹拌棒から外方に向けて延出する複数の撹拌翼と、前記撹拌棒を回転駆動させるための動力を発生させるモータと、を備えている。
また、前記粉体混合装置は、ロータリキルン式の粉体混合装置であってもよい。
前記ロータリキルン式の粉体混合装置とは、筒体と、該筒体を回転駆動させるための動力を発生させるモータと、を備えるものである。
【0026】
前記発塵抑制剤は、上記したように、グリコール類及びグリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
前記グリコール類としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコールなどが挙げられる。
また、前記グリコールエーテル類としては、前記各種グリコール類のモノメチルエーテル化合物などが挙げられる。
上記グリコール類の中でも、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールを用いることが好ましく、前記グリコールエーテル類としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、オクタエチレングリコールモノメチルエーテルを用いることが好ましい。
前記発塵抑制剤は、前記グリコール類及び前記グリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種に加えて、50質量%以下の水分をさらに含んでいてもよい。
前記発塵抑制剤は、25質量%以下の水分を含んでいることが好ましく、10質量%以下の水分を含んでいることがより好ましい。
前記発塵抑制剤が50質量%以下の水分を含むことにより、前記発塵抑制剤に含まれる液分を前記グリコール類や前記グリコールエーテル類と水との混合物とすることができる。
これにより、前記発塵抑制剤の引火点を高めて、前記発塵抑制剤を非危険物とすることができる。
その結果、前記セメント系水硬性材料と混合される前において、前記発塵抑制剤をタンクなどに非危険物として保管することができる。
なお、前記発塵抑制剤が50質量%以下の水分を含んでいる場合には、前記発塵抑制剤中に占める前記グリコール類及び前記グリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の質量比率は、50質量%以上となり、前記発塵抑制剤が25質量%以下の水分を含んでいる場合には、前記発塵抑制剤中に占める前記グリコール類及び前記グリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の質量比率は、75質量%以上となり、前記発塵抑制剤が10質量%以下の水分を含んでいる場合には、前記発塵抑制剤中に占める前記グリコール類及び前記グリコールエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の質量比率は90質量%以上となる。
【0027】
前記地盤改良材は、前記発塵抑制剤を1質量%以上4質量%以下含んでいることが好ましく、前記セメント系水硬性材料を96質量%以上99質量%以下含んでいることが好ましい。すなわち、前記地盤改良材は、前記地盤改良材中に占める前記発塵抑制剤の質量比率が1質量%以上4質量%以下となり、前記地盤改良材中に占める前記セメント系水硬性材料の質量比率が96質量%以上99質量%以下となるように混合されて得られることが好ましい。
【0028】
(地盤改良材出荷ステップS3)
地盤改良材出荷ステップS3では、前記地盤改良材のL*a*b*表色系色度における白色度L*
1を測定し、上記式(1)で算出される数値が-0.111以下となる前記地盤改良材を出荷する。
地盤改良材出荷ステップS3は、出荷前であれば、どのようなタイミングで実施してもよい。
一方で、地盤改良材に含まれる発塵抑制剤由来の液分(グリコール類、グリコールエーテル類や、水分など)は、時間の経過とともに、大気中へとより多く蒸発するようになることから、地盤改良材出荷ステップS3は、出荷前から所定時間以内に実施することが好ましい。
地盤改良材出荷ステップS3は、出荷前から、12時間以内に実施することが好ましく、6時間以内に実施することがより好ましく、1時間以内に実施することがさらに好ましい。
前記地盤改良材のL*a*b*表色系色度における白色度L*
1は、色彩色差計を用いて測定することができる。
前記色彩色差計としては、コニカミノルタ社製の商品名「CR-20」を用いることができる。
前記白色度L*
1の測定は、以下のようにして実施することができる。
(1)内径31mm、高さ5mmの塩化ビニル製リング内に、前記地盤改良材を充填する。
前記地盤改良材は、前記塩ビ製リングの上端面から前記地盤改良材の一部が盛り上がるように充填する。
(2)前記塩ビ製リング内に充填した前記地盤改良材を、前記塩ビ製リングの上端面側から20tの圧力でプレスして、白色度L*
1測定用の試験体を得る。
(3)色彩色差計(例えば、コニカミノルタ社製の商品名「CR-20」)を用いて、前記白色度L*
1測定用の試験体の任意の5箇所について、白色度L*
1の値を測定する。
具体的には、前記白色度L*
1測定用の試験体の端面(例えば、上端面)の上方に前記色彩色差計を配して、前記白色度L*
1測定用の試験体の任意の5箇所について白色度L*
1の値を測定する。
(4)5個の測定値を平均して、前記地盤改良材の前記白色度L*
1を求める。
【0029】
上記の地盤改良材出荷ステップS3で上記式(1)を満たすものと判断された地盤改良材は、フレキシブルコンテナバッグに充填された状態で出荷される。
以上のようにして、本実施形態に係る地盤改良材の製造方法によって、地盤改良材が製造される。
なお、上記の地盤改良材出荷ステップS3で上記式(1)を満たさないものと判断された地盤改良材は、出荷されずに回収される。
回収された地盤改良材には、前記発塵抑制剤が再度添加される。
そして、上記式(1)を満たした段階で、回収された前記地盤改良材はフレキシブルコンテナバッグに充填されて出荷される。
【0030】
[地盤改良材]
本実施形態に係る地盤改良材は、上で説明した本実施形態に係る地盤改良材の製造方法によって製造されたものである。
すなわち、本実施形態に係る地盤改良材は、上記式(1)を満たすと判断することにより製造された地盤改良材である。
そのため、本実施形態に係る地盤改良材は、前記発塵抑制剤を十分に含有するものとなる。
これにより、本実施形態に係る地盤改良材は、浅層改良時の発塵が十分に抑制されたものとなる。
【0031】
なお、本発明に係る地盤改良材の製造方法及び地盤改良材は、前記実施形態に限定されるものではない。
また、本発明に係る地盤改良材の製造方法及び地盤改良材は、前記した作用効果によって限定されるものでもない。
本発明に係る地盤改良材の製造方法及び地盤改良材は、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【実施例0032】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0033】
<地盤改良材の作製>
以下の表1に示したセメント系水硬性材料A~Cと、以下の表2に示した発塵抑制剤A~Dとを用いて、以下の表3に示した、地盤改良材A1~A17、地盤改良材B1~B17、及び、地盤改良材C1~C17を作製した。
なお、表1には、セメント系水硬性材料A~Cの白色度L*
0の測定値についても示している。
セメント系水硬性材料A~Cの白色度L*
0は、(白色度L*
0測定ステップS1)の項で説明したのと同様にして測定した。
【0034】
表3に示されているように、地盤改良材A1は、セメント系水硬性材料Aのみで構成されているものであり、地盤改良材B1は、セメント系水硬性材料Bのみで構成されているものであり、地盤改良材C1は、セメント系水硬性材料Cのみで構成されているものである。
なお、地盤改良材A2~A17、地盤改良材B2~B17、及び、地盤改良材C2~C17は、ホバートミキサーを用いて、以下の表1に示したいずれかのセメント系水硬性材料と以下の表2に示したいずれかの発塵抑制剤とを所定の質量比率で混合することにより作製した。
前記セメント系水硬性材料と発塵抑制剤との質量比率は、セメント系水硬性材料:発塵抑制剤=96質量%:4質量%~100質量%:0質量%とした。
また、ホバートミキサーによる混合は、回転数160rpm、5分の条件で実施した。
地盤改良材A1~C17について、作製に用いたセメント系水硬性材料、作製に用いた発塵抑制剤、及び、各種地盤改良材における発塵抑制剤の質量比率を、以下の表3にまとめた。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
なお、表1に示したセメント系水硬性材料Aである「タフロック3E型」及びセメント系水硬性材料Bである「タフロック4型」は、いずれも、六価クロム溶出低減型のセメント系固化材である。
そして、「タフロック3E型」は、上の実施形態の項で例示した特殊土用固化材に分類されるものであり、「タフロック4型」は、上の実施形態の項で例示した高有機質土用固化材に分類されるものである。
また、表2示した発塵抑制剤C及び発塵抑制剤Dは、共に、10質量%の水分を含むものである。
すなわち、発塵抑制剤Cにおいては、テトラエチレングリコールと水分との質量比率は、テトラエチレングリコール:水分=90質量%:10質量%となっており、発塵抑制剤Dにおいては、オクタエチレングリコールモノメチルエーテルと水分との質量比率は、オクタエチレングリコールモノメチルエーテル:水分=90質量%:10質量%となっている。
【0039】
<地盤改良材の養生>
上の表3に示した地盤改良材A1~C17の500gを500mLのプラスチック製のカップ(以下、プラカップともいう)に入れて、以下の第1養生条件で養生した第1養生後の地盤改良材A1’~C17’を得るとともに、以下の第2養生条件で養生した第2養生後の地盤改良材A1’’~C17’’を得た。
・第1養生条件
外気温20±2℃の環境下でプラカップに入れた各種地盤改良材を、封をした状態で24時間養生する。
・第2養生条件
外気温20±2℃の環境下でプラカップに入れた各種地盤改良材を、封をした状態で24時間養生した後、さらに、前記プラカップに入れた各種地盤改良材を、封をしない状態で60℃の恒温槽内で24時間養生する。
【0040】
<第1養生後の地盤改良材及び第2養生後の地盤改良材の白色度L*の測定>
第1養生後の地盤改良材A1’~C17’及び第2養生後の地盤改良材A1’’~C17’’について、(地盤改良材出荷ステップS3)の項で説明したのと同様にして、白色度L*を測定した。
なお、以下では、第1養生後の地盤改良材A1’~C17’の白色度L*を白色度L*
1-1と表記し、第2養生後の地盤改良材A1’’~C17’’の白色度L*を白色度L*
1-2と表記することがある。
第1養生後の地盤改良材A1’~C17’の白色度L*
1-1の測定結果を以下の表4に示し、第2養生後の地盤改良材A1’’~C17’’の白色度L*
1-2の測定結果を以下の表5に示した。
また、第1養生後の地盤改良材A1’~C17’及び第2養生後の地盤改良材A1’’~C17’’について、下記式(1)を用いて算出した数値についても、以下の表4及び5に示した。
(L*
1-L*
0)/(100-L*
0)・・・・・(1)
【0041】
<第1養生後の地盤改良材及び第2養生後の地盤改良材の発塵量>
第1養生後の地盤改良材A1’~C17’及び第2養生後の地盤改良材A1’’~C17’’について、発塵量を測定した。
発塵量は、舗装・試験法便覧(平成31年版)の「土質安定材の発塵試験方法」の記載に準じて測定した。
その測定結果を以下の表4及び5に示した。
また、発塵量については、以下の段階尺度で評価した。
・A:1CPM以上10CPM以下
・B:10CPMを超えて50CPM以下
・C:50CPMを超えて200CPM以下
・D:200CPMを超えて500CPM以下
・E:500CPMを超えて1000CPM以下
・F:1000CPM超え
なお、段階尺度Aは、清浄な室内の状態に相当し、段階尺度Bは、比較的に混雑した電車の中の状態に相当し、段階尺度Cは、施工現場での作業において殆どほこり気を感じない状態に相当し、段階尺度Dは、畑作業時に土ぼこりが生じている状態に相当し、段階尺度Eは、ほこり気が激しくその場にいられない状態に相当し、段階尺度Fは、地盤改良の安定処理工事において粉塵で前方が透視困難となっている状態に相当する。
発塵量を上記の段階尺度で評価した結果について、以下の表4及び5に示した。
【0042】
【0043】
【0044】
表4及び5より、各実施例に係る地盤改良材においては、発塵量の段階尺度が、いずれもA~Cとなっていることが分かる。
ここで、先に説明したように、段階尺度Cは、施工現場の作業において殆どほこり気を感じない状態に相当し、段階尺度Bは、比較的に混雑した電車の中の状態に相当し、段階尺度Aは、清浄な室内の状態に相当することから、発塵量の段階尺度が、A~Cに相当することは、発塵量を十分に抑制できているといえる。
そして、各実施例に係る地盤改良材について、上記式(1)の算出値を見ると、いずれも、-0.111以下となっていることが分かる。
この結果から、上記式(1)の算出値が、-0.111以下となると判断された地盤改良材では、発塵抑制剤を十分に含有させることができ、その結果、前記地盤改良材と原位置の土壌とを混合したりして浅層改良する場合において、セメント系水硬性材料などの粉体の発塵を十分に抑制できると考えられる。