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  • 特開-ストリッピング装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150325
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ストリッピング装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20231005BHJP
   C02F 1/20 20230101ALI20231005BHJP
【FI】
B01D19/00 F
C02F1/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059381
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】勝林 浩行
【テーマコード(参考)】
4D011
4D037
【Fターム(参考)】
4D011AA15
4D011AB03
4D011AD01
4D037AA11
4D037AB12
4D037BA23
4D037BB05
4D037CA11
(57)【要約】
【課題】ストリッピング塔の高さを小さくすることができるストリッピング装置を提供する。
【解決手段】アンモニア含有排水が第1ストリッピングモジュール1A、第2ストリッピングモジュール1B、第3ストリッピングモジュール1Cの順に通水される。ガス放散用気体がストリッピングモジュール1C,1B,1Aの順に通気される。処理水は、循環配管6から配管7によって取り出される。ストリッピングモジュール1A~1C内に充填層3が1段のみ配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス含有水が充填層においてガス放散用気体と接触してガス放散処理が行われる第1ないし第n(nは2以上)のストリッピングモジュールを有するストリッピング装置であって、
被処理原水が第1ストリッピングモジュールに供給され、
ガス放散用原気体が第nストリッピングモジュールに供給され、
第j(jは1以上n未満)ストリッピングモジュールの塔底液が第(j+1)ストリッピングモジュールに被処理水として供給され、
第k(kは1超n以下)ストリッピングモジュールの塔頂からのガスが第(k-1)ストリッピングモジュールにガス放散用気体として供給され、
第nストリッピングモジュールの塔底液から処理水が取り出されるストリッピング装置。
【請求項2】
前記nは2~5である請求項1のストリッピング装置。
【請求項3】
前記第nストリッピングモジュールの塔底液を前記第1ストリッピングモジュールに循環させる循環ラインが設けられており、該循環ラインから処理水が取り出される請求項1又は2のストリッピング装置。
【請求項4】
各ストリッピングモジュールの槽は、水平断面が方形の角筒形である請求項1~3のいずれかのストリッピング装置。
【請求項5】
各ストリッピングモジュール内には充填層が1段のみ設けられている請求項1~4のいずれかのストリッピング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア含有水などのガス含有水をストリッピング処理するストリッピング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア含有排水の処理方法として、放散処理(ストリッピング)がある。ストリッピングガス(又はキャリアガス)としては、通常、空気またはスチームが使用されている。空気を使用するか、スチームを使用するかは、個々の条件に応じて適宜選択されるが、一般的に小型の放散塔(ストリッパー)では簡便な空気が使用され、大型の放散塔では効率の良いスチームが使用される傾向がある。
【0003】
放散塔から排出されたアンモニア含有ガスは、(1)触媒による酸化分解処理、(2)硫安の製造原料としての利用、(3)濃厚アンモニア水としての回収などに供されるが、硫安やアンモニア水の流通マーケットが無い場合は、(1)触媒による酸化分解処理に供される。
【0004】
図3に従来のストリッピング装置の構成を示す。被処理水(アンモニアを含有した排水)がストリッピング塔1の上部の散水器2aに被処理水供給配管2を介して供給され、該散水器2aから散水される。散水された水は、充填層3においてガスと接触しながら流下し、アンモニアが放散された塔底液Lとなる。この従来例では、充填層3が上下に2段に設けられているが、3段以上とされることもある。
【0005】
この塔底液Lは、配管4、循環ポンプ5、配管6を介して配管2へ循環される。なお、塔底液の一部は処理水として、配管6に連なる配管7から取り出される。
【0006】
充填層3の下側の塔内に気体を吹き込むようにノズル11が設置されている。このノズル11から吹き込まれた気体が充填層3を上昇して排水と接触し、排水中のアンモニアがガスとなって放散する。放散したガス及び水の蒸発により発生した水蒸気は、空気と共に塔内を上昇し、デミスタ(ミスト分離器)12を通過して水滴が除去される。
【0007】
このアンモニア及び水蒸気含有ガスは、塔頂から配管13へ流出し、熱交換器14にて露点以上、好ましくは280~380℃特に320~350℃程度に加熱された後、配管15を通り、触媒反応器16に導入される。なお、配管15の途中に触媒反応器入口ヒーターが設けられることがある。
【0008】
ガス中のアンモニアは、触媒反応器16内の触媒16aと接触することにより、酸化される。この酸化反応は発熱反応であり、ガス温度が上昇する。触媒反応器16から流出したガスは、配管17から熱交換器14に導入され、放散塔流出ガスと熱交換して降温する。このガスは、次いで配管18からブロワ19及び配管20を介してノズル11に供給される。ブロワ19から送り出されたガスの一部は、配管20から分岐した配管21を介して煙突22へ送られ系外に排出される。配管21の分岐部よりも下流側(ノズル11側)に、空気(大気)がブロワ23及び配管24を介して添加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-144445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の通り、アンモニアストリッピング設備では、ストリッピング塔にてアンモニア排水を気液接触させ、水中のアンモニア成分をガス側に放散させ、ガス側に移行したアンモニア成分を触媒酸化などの方法により処理し、無害化させる。
【0011】
このストリッピング塔は、充填層で気液接触させるため、アンモニア成分を十分に放散させるには、非常に総高の高いストリッピング塔が必要であり、ストリッピング塔を支持し操作するための大型で高架型の架台が必要となっている。
【0012】
このようなことから、従来の設備では以下の問題が生じていた。
(1)総高の高い塔が必要であり、強固な基礎の製作、塔を支持し操作を行う大型で高架型の操作架台が必要となり、広い設置スペースを占有、基礎や架台の製作費用が掛かる。
(2)入口アンモニア濃度により、塔の充填層高さを設計する必要があり、現場毎の条件に応じて設計することが必要となる。
(3)塔自体の熱損失を防止するために全体を保温する必要があるが、円筒胴であり、総高が高いため保温施工が非常に困難であり、施工費用も高額であった。
(4)特に電子産業排水では排水中の不純物により充填層に結晶物が生成し閉塞する可能性があるが、その除去のために設備全体を停止し、化学洗浄又は充填材の交換を行う必要があった。
【0013】
本発明の一態様は、ストリッピング塔の高さを小さくすることができるストリッピング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様のストリッピング装置は、ガス含有水が充填層においてガス放散用気体と接触してガス放散処理が行われる第1ないし第n(nは2以上)のストリッピングモジュールを有するストリッピング装置であって、被処理原水が第1ストリッピングモジュールに供給され、ガス放散用原気体が第nストリッピングモジュールに供給され、第j(jは1以上n未満)ストリッピングモジュールの塔底液が第(j+1)ストリッピングモジュールに被処理水として供給され、第k(kは1超n以下)ストリッピングモジュールの塔頂からのガスが第(k-1)ストリッピングモジュールにガス放散用気体として供給され、第nストリッピングモジュールの塔底液から処理水が取り出される。
【0015】
本発明の一態様では、前記nは2~5である。
【0016】
本発明の一態様では、前記第nストリッピングモジュールの塔底液を前記第1ストリッピングモジュールに循環させる循環ラインが設けられており、該循環ラインから処理水が取り出される。
【0017】
本発明の一態様では、各ストリッピングモジュールの槽は、水平断面が方形の角筒形である。
【0018】
本発明の一態様では、各ストリッピングモジュール内には充填層が1段のみ設けられている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様では、アンモニアストリッピング塔部分を分割し、モジュール化したことで、塔の総高を低くし、高架型操作架台を不要とすることができる。
【0020】
本発明の一態様では、モジュール型標準設計により、原水濃度に応じ接続する塔数を容易に変更でき、容易な設備設計を実現することができる。また、モジュール型ストリッピング塔は、塔内圧が低く圧力容器では無いため、角形の塔が実現でき、スペース効率に優れ、モジュール化しやすい塔を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態に係るストリッピング装置の構成図である。
図2】ストリッピングモジュールの概略的な斜視図である。
図3】従来のストリッピング装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態に係るストリッピング装置を示している。
【0023】
この実施の形態では、ストリッピング塔1の代わりに、充填層3を1段のみ備えたストリッピングモジュール1A,1B,1Cが設置されている。なお、ストリッピングモジュールは2基又は4基以上例えば5基設置されてもよい。ストリッピングモジュール1A~1Cの構成は、充填層3が1段のみ設けられていること以外はストリッピング塔1と同じである。
【0024】
図1では、被処理水(アンモニアを含有した排水)が第1ストリッピングモジュール1Aの上部の散水器2aに被処理水供給配管2を介して供給され、該散水器2aから散水される。散水された水は、充填層3においてガスと接触しながら流下し、アンモニアが放散された塔底液Lとなる。
【0025】
この塔底液Lは、配管4A、ポンプ5A及び配管2Aを介して第2ストリッピングモジュール1Bの上部の散水器2aに供給され、該散水器2aから散水される。散水された水は、充填層3においてガスと接触しながら流下し、アンモニアが放散された塔底液Lとなる。この塔底液Lは、配管4B、ポンプ5B及び配管2Bを介して第3ストリッピングモジュール1Cの上部の散水器2aに供給され、該散水器2aから散水される。散水された水は、充填層3においてガスと接触しながら流下し、アンモニアが放散された塔底液Lとなる。
【0026】
第3ストリッピングモジュール1Cの塔底液Lは、配管4、循環ポンプ5C、配管6を介して配管2へ循環される。なお、塔底液の一部は処理水として、配管6に連なる配管7から取り出される。
【0027】
各ストリッピングモジュール1A~1Cにあっては、充填層3の下側の塔内に気体を吹き込むようにノズル11が設置されている。このノズル11から吹き込まれた気体が充填層3を上昇して排水と接触し、排水中のアンモニアがガスとなって放散する。放散したガス及び水の蒸発により発生した水蒸気は、空気と共に塔内を上昇し、デミスタ(ミスト分離器)12を通過して水滴が除去される。このアンモニア及び水蒸気含有ガスは、塔頂から配管13A,13B又は13Cへ流出する。
【0028】
なお、第3ストリッピングモジュール1Cの塔頂からのアンモニア及び水蒸気含有ガスが、配管13Cを介して第2ストリッピングモジュール1Bのノズル11に供給される。第2ストリッピングモジュール1Bの塔頂からのアンモニア及び水蒸気含有ガスが、配管13Bを介して第1ストリッピングモジュール1Aのノズル11に供給される。
【0029】
第1ストリッピングモジュール1Aから配管13Aへ流出したガスは、熱交換器14にて露点以上、好ましくは280~380℃特に320~350℃程度に加熱された後、配管15を通り、触媒反応器16に導入される。なお、配管15の途中に触媒反応器入口ヒーターが設けられてもよい。
【0030】
ガス中のアンモニアは、触媒反応器16内の触媒16aと接触することにより、酸化される。この酸化反応は発熱反応であり、ガス温度が上昇する。触媒反応器16から流出したガスは、配管17から熱交換器14に導入され、第1ストリッピングモジュール1Aの流出ガスと熱交換して降温する。このガスは、次いで配管18からブロワ19及び配管20を介して第3ストリッピングモジュール1Cのノズル11に供給される。ブロワ19から送り出されたガスの一部は、配管20から分岐した配管21を介して煙突22へ送られ系外に排出される。配管21の分岐部よりも下流側(ノズル11側)に、空気(大気)がブロワ23及び配管24を介して添加される。
【0031】
図2は、ストリッピングモジュール1A,1B,1Cを並列配置した場合の一例を示している。この実施の形態では、各ストリッピングモジュール1A~1Cは角筒形(水平断面が略正方形の筒形)となっている。
【0032】
この実施の形態に係るストリッピング装置は、充填層を上下多段に設置した従来のストリッピング塔を複数に分割してモジュール式塔構造を採用したものであり、以下の長所を有する。
(ア)多段ストリッピング塔を分割したモジュール構造としたことにより、各ストリッピングモジュール1A~1Cの総高を著しく小さくすることができ、従来例で必要であった高架型操作架台などの構造体が不要となる。また、塔高が低くなることで、強固な基礎が不要となり、基礎や架台の製作費用が大幅に削減できる。
(イ)モジュール型としたことにより、原水水質に応じた段数の増減が容易に可能となり、設備コスト削減に寄与する。また標準化が容易である。
(ウ)角形槽としたことにより、設置エリアに対する断面積が広く確保でき、省スペースに寄与する。また、槽自体の保温施工も容易である。
(エ)(各ストリッピングモジュールをバイパス接続するガス配管及び塔底液配管を設置し、各バイパス配管に開閉バルブを設置しておくことにより、)各ストリッピングモジュールを単独で停止することが可能となり、充填層閉塞時の洗浄などのメンテナンスが、装置全体を停止せずに可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1 ストリッピング塔
1A,1B,1C ストリッピングモジュール
3 充填層
16 触媒反応器
22 煙突
図1
図2
図3