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特開2023-150446非水電解質二次電池用複合粒子及び非水電解質二次電池
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  • 特開-非水電解質二次電池用複合粒子及び非水電解質二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150446
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用複合粒子及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20231005BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20231005BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20231005BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/139
H01M10/0566
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059554
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】白 鎭碩
(72)【発明者】
【氏名】深谷 倫行
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ11
5H029DJ08
5H029DJ16
5H029EJ01
5H029EJ04
5H029EJ05
5H029HJ01
5H029HJ07
5H029HJ14
5H029HJ20
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB12
5H050DA09
5H050EA02
5H050EA08
5H050EA12
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA14
5H050HA01
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA17
(57)【要約】
【課題】高温環境下等の内部温度が上昇しやすい環境下においても非水電解質二次電池の内部温度の上昇を十分に抑制し、かつ非水電解質二次電池の電気抵抗を小さく抑えることができる非水電解質二次電池用複合粒子を提供する。
【解決手段】金属水酸化物粒子と導電性粒子とを含有する複合粒子であって、
60MPa加圧時の体積抵抗率が0.10Ωcm以上4×104Ωcm以下であり、
示差走査熱量測定における50℃~250℃の吸熱量が150J/g以上500J/g以下であり、
昇温脱離ガス質量分析計(TDS-MS)による80~1400℃までの脱離P2量(MS1)が300×10-6mol/g以上3000×10-6mol/g以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用複合粒子。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属水酸化物粒子と導電性粒子とを含有する複合粒子であって、
60MPa加圧時の体積抵抗率が0.1Ωcm以上4×104Ωcm以下であり、
示差走査熱量測定における50℃~250℃の吸熱量が150J/g以上500J/g以下であり、
昇温脱離ガス質量分析計(TDS-MS)による80~1400℃までの脱離P量(MS1)が300×10-6mol/g以上3000×10-6mol/g以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用複合粒子。
【請求項2】
昇温脱離ガス質量分析計(TDS-MS)による80~200℃までの脱離HO量(MS2)が100×10-6mol/g以上1500×10-6mol/g以下であり、脱離ガス量比(MS1/MS2)が、以下の式(1)を満たす、請求項1に記載の非水電解質二次電池用複合粒子。
0.5≦(MS1/MS2)≦5.0 (1)
【請求項3】
ラマン分光分析法によって測定される1350cm-1付近のピーク面積(A)と1580cm-1付近のピーク面積(A)の比(A/A)が0.5以上3.5以下であり、
ラマン分光分析法によって測定される2680cm-1付近のピーク半値幅(G’-FWHM)が60cm-1以上150cm-1以下である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用複合粒子。
【請求項4】
水蒸気を吸着させて測定される吸着等温線に基づいて算出される前記複合粒子の比表面積(BET1)が8m2/g以上600m2/g以下であり、
窒素を吸着させて測定される吸着等温線に基づいて算出される前記複合粒子の比表面積(BET2)が8m2/g以上600m2/g以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用複合粒子。
【請求項5】
比表面積比(BET1/BET2)が、以下の式(2)を満たす、請求項4に記載の非水電解質二次電池用複合粒子。
0.2≦(BET1/BET2)≦5.0 (2)
【請求項6】
昇温脱離ガス質量分析計(TDS-MS)による80~1400℃までの脱離CH量(MS3)が30×10-6mol/g以上1000×10-6mol/g以下であり、
TDS-MSによる80~1400℃までの脱離CHOH量(MS4)が10×10-6mol/g以上3000×10-6mol/g以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用複合粒子。
【請求項7】
TDS-MSによる80~1400℃までの脱離C量(MS5)が1×10-6mol/g以上4000×10-6mol/g以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用複合粒子。
【請求項8】
前記金属水酸化物が、水酸化アルミニウム、擬べーマイト、ベーマイト、アルミナおよびカオリナイトからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用複合粒子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の非水電解質電池用複合粒子を0.1重量%以上5.0重量%以下の範囲で含有する非水電解質二次電池用正極。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の非水電解質電池用複合粒子を0.1重量%以上5.0重量%以下の範囲で含有する非水電解質二次電池用負極。
【請求項11】
正極、負極、セパレータ及び非水電解液を備える非水電解質二次電池であって、
前記正極が、請求項9に記載の非水電解質二次電池用正極であることを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項12】
正極、負極、セパレータ及び非水電解液を備える非水電解質二次電池であって、
前記負極が、請求項10に記載の非水電解質二次電池用負極であることを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項13】
金属水酸化物粒子の原料と導電性粒子とを加熱しながら混合して金属水酸化物粒子と導電性粒子との複合粒子を形成する工程と、
処理剤を用いて該複合粒子を改質する工程と、を含む非水電解質電池用複合粒子の製造方法。
【請求項14】
前記処理剤が、リン酸、ホスホン酸及びホスフィン酸からなる群のうち1種以上を含むものである、請求項13記載の非水電解質電池用複合粒子の製造方法。
【請求項15】
噴霧乾燥によって、金属水酸化物粒子の原料と導電性粒子とを加熱しながら混合する、請求項13に記載の非水電解質電池用複合粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用複合粒子及び非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解質二次電池は、スマートフォンやノート型パソコン等の電源として広く用いられており、最近は車載用など大型電池にも使用されている。
一方、リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いという利点の反面、非水電解質を使用するため、安全性に十分な対策が必要であるが、近年電池の大型化に応じて、安全性の確保が更に重要となっている。
【0003】
例えば、リチウムイオン二次電池が高温環境下に置かれた場合には、リチウムイオン二次電池の正極が発熱して、電池の内部温度の上昇が引き起こされる可能性がある。前記内部温度が高温になった際には、リチウムイオン二次電池が備えるセパレータが収縮することによる短絡が発生しやすくなる。その結果、前記内部温度の更なる上昇が引き起こされる恐れがある。
【0004】
そこで、リチウムイオン二次電池の安全性を確保するために、リチウムイオン二次電池に吸熱性を有する金属水酸化物からなる無機粒子である吸熱粒子を含有させて内部温度の上昇を抑えることが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、水蒸気と窒素ガス吸着による比表面積比が0.45以上2.0未満である吸熱性かつ塩基性のケイ酸カルシウム等からなる無機粒子である吸熱粒子をセパレータに配置させ、電池の安全性を向上させることが記載されている。
【0006】
また、引用文献2及び3にはそれぞれ、DSCにおける最大吸熱ピーク温度が270℃以上360℃以下、脱水反応温度帯が200℃以上400℃以下である水酸化アルミニウムの粒子を電解液又はセパレータに含有させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許6925368号公報
【特許文献2】特開2016-162528号公報
【特許文献3】特許4364940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載されている無機粒子によっては非水電解質二次電池の内部温度を十分に抑制できない場合があることが分かった。
【0009】
また、引用文献2及び3に記載されている温度帯では、非水電解質二次電池が備えるセパレータの融解及び充電された正極の分解が生じてしまう。
【0010】
さらに、特許文献1~3に記載されているような無機粒子を、非水電解質二次電池の正極や負極に含有させる場合には、これら無機粒子の体積抵抗率が大きいために、非水電解質二次電池全体としての電気抵抗が大きくなってしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、内部短絡など電池の異常により内部温度が上昇しやすい環境下においても非水電解質二次電池の内部温度の上昇を抑制することができ、さらに非水電解質二次電池の電気抵抗を小さく抑えることができる吸熱粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明に係る非水電解質二次電池用複合粒子は、金属水酸化物粒子と導電性粒子とを含有する複合粒子であって、
60MPa加圧時の体積抵抗率が0.10Ωcm以上4×104Ωcm以下であり、
示差走査熱量測定における50℃~250℃の吸熱量が150J/g以上500J/g以下であり、
昇温脱離ガス質量分析計(TDS-MS)による80~1400℃までの脱離P量(MS1)が300×10-6 mol/g以上3000×10-6 mol/g以下であることを特徴とするものである。
【0013】
このように構成した非水電解質二次電池用複合粒子によれば、Pガスの脱離量によって規定されるホスホン酸による修飾度が適切な範囲に設定されているので、この複合粒子を含有する非水電解質二次電池の内部温度上昇を十分に抑制することができる。
【0014】
また、この複合粒子の60MPa加圧時の体積抵抗率が0.10Ωcm以上4×104Ωcm以下となっているので、この複合粒子を正極及び/又は負極に含有させた場合であっても非水電解質二次電池の電気抵抗を小さく抑えることができる。
【0015】
前記複合粒子の昇温脱離ガス質量分析計(TDS-MS)による80~200℃までの脱離HO量(MS2)が100×10-6 mol/g以上1500×10-6 mol/g以下であり、脱離ガス量比(MS1/MS2)が、以下の式(1)を満たすものであることが好ましい。
0.5≦(MS1/MS2)≦5.0 (1)
【0016】
前記複合粒子のラマン分光分析法によって測定される1350cm-1付近のピーク面積(A)と1580cm-1付近のピーク面積(A)の比(A/A)が0.5以上3.5以下であり、
ラマン分光分析法によって測定される2680cm-1付近のピーク半値幅(G’-FWHM)が60cm-1以上150cm-1以下であることが好ましい。
【0017】
前記複合粒子について、水蒸気を吸着させて測定される吸着等温線に基づいて算出される比表面積(BET1)が8m2/g以上600m2/g以下であり、
窒素を吸着させて測定される吸着等温線に基づいて算出される前記複合粒子の比表面積(BET2)が10m2/g以上600m2/g以下であることが好ましい。
【0018】
前記比表面積の比(BET1/BET2)が、以下の式(2)を満たすことが好ましい。
0.2≦(BET1/BET2)≦5.0 (2)
【0019】
前記複合粒子の昇温脱離ガス質量分析計(TDS-MS)による80~1400℃までの脱離CH量(MS3)が30×10-6mol/g以上1000×10-6mol/g以下であり、
TDS-MSによる80~1400℃までの脱離CHOH量(MS4)が10×10-6mol/g以上3000×10-6mol/g以下であることが好ましい。
【0020】
前記複合粒子のTDS-MSによる80~1400℃までの脱離C量(MS5)が1×10-6mol/g以上4000×10-6mol/g以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の具体的な実施態様としては、前記金属水酸化物が、水酸化アルミニウム、擬べーマイト、ベーマイト、アルミナおよびカオリナイトからなる群から選ばれる1種以上であるものを挙げることができる。
【0022】
本発明は、前述した非水電解質電池用複合粒子を0.1重量%以上5.0重量%以下の範囲で含有する非水電解質二次電池用の正極又は負極、及びこれら正極又は負極を備える非水電解質二次電池をも含むものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る非水電解質二次電池用複合粒子によれば、50℃~250℃の吸熱量が150J/g以上500J/g以下であり、ホスホン酸による修飾度が適切な範囲に設定されている。そのため、この複合粒子を含有する非水電解質二次電池の内部温度の上昇を、例えば内部短絡など電池の異常により内部温度が上昇しやすい環境下においても十分に抑制することができる。
その結果、非水電解質二次電池の内部温度の上昇によって引き起こされる電池の劣化を抑えて、非水電解質二次電池のサイクル寿命を向上させることができる。
さらに、前記複合粒子の体積抵抗率が0.10Ωcm以上4×104Ωcm以下であることによって、前記複合粒子を吸熱性だけでなく導電助剤としての性質をも有する吸熱性導電助剤とすることができる。
その結果、本発明に係る複合粒子を正極や負極に含有させた場合であっても非水電解質二次電池の電気抵抗を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る複合粒子の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池の具体的な構成について説明する。
<1.非水電解質二次電池の基本構成>
本実施形態に係る非水電解質二次電池は、正極と、負極と、セパレータ(separator)と、非水電解質と、を備えるリチウムイオン二次電池である。
リチウムイオン二次電池の形態は、特に限定されないが、例えば、円筒形、角形、ラミネート(laminate)形、またはボタン(button)形等のいずれであってもよい。
【0026】
(1-1.正極)
前記正極は、正極集電体と、該正極集電体上に形成された正極合剤層とを備えている。
前記正極集電体は、導電体であればどのようなものでも良く、例えば、板状又は箔状のものであり、アルミニウム(aluminum)、ステンレス(stainless)鋼、及びニッケルメッキ(nickel coated)鋼等で構成されることが好ましい。
前記正極合剤層は、少なくとも正極活物質を含み、導電剤と、正極用バインダーとをさらに含んでいてもよい。
【0027】
前記正極活物質は、例えば、リチウムを含む遷移金属酸化物または固溶体酸化物であり、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出することができる物質であれば特に制限されない。リチウムを含む遷移金属酸化物としては、例えば、Li1.0Ni0.88Co0.1Al0.01Mg0.01等を挙げることができるが、これ以外にも、LiCoO等のLi・Co系複合酸化物、LiNiCoMn等のLi・Ni・Co・Mn系複合酸化物、LiNiO等のLi・Ni系複合酸化物、またはLiMn等のLi・Mn系複合酸化物等を例示することができる。固溶体酸化物としては、LiMnCoNi(1.150≦a≦1.430、0.45≦x≦0.6、0.10≦y≦0.15、0.20≦z≦0.28)、LiMn1.5Ni0.5等を例示することができる。なお、前記正極活物質の含有量(含有比)は、特に制限されず、非水電解質二次電池の正極合剤層に適用可能な含有量であればよい。また、これらの化合物を単独で用いても良いし、または複数種混合して用いてもよい。
【0028】
前記導電剤は、前記正極の導電性を高めるためのものであれば特に制限されない。前記導電剤の具体例としては、例えば、カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛及び繊維状炭素、シート状炭素の中から選ばれる一種以上を含有するものを挙げることができる。
前記カーボンブラックの例としては、ファーネスブラック(furnace black)、チャネルブラック(channel black)、サーマルブラック(thermal black)、ケッチェンブラック(ketjen black)、アセチレンブラック(acetylene black)等を挙げることができる。
前記繊維状炭素の例としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等を挙げることができ、シート状炭素の例としては、グラフェンなどを挙げることができる。
正極合剤層における前記導電剤の含有量は、特に制限されないが、導電性と電池容量とを両立させるという観点から、正極合剤層全体に対して0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
前記正極用バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)等のフッ素含有樹脂、スチレンブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber)等のエチレン含有樹脂、エチレンプロピレンジエン三元共重合体(ethylene-propylene-diene terpolymer)、アクリロニトリルブタジエンゴム(acrylonitile-butadiene rubber)、フッ素ゴム(fluororubber)、ポリ酢酸ビニル(polyvinyl acetate)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、カルボキシメチルセルロース(carboxy metyl cellulose)若しくはカルボキシメチルセルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースの塩等)、又はニトロセルロース(nitrocellulose)等を挙げることができる。前記正極用バインダーは、前記正極活物質及び前記導電剤を前記正極集電体上に結着させることができるものであればよく、特に制限されない。
【0030】
(1-2.負極)
負極は、負極集電体と、該負極集電体上に形成された負極合剤層とを備えるものである。
前記負極集電体は、導電体であればどのようなものでも良く、例えば、板状又は箔状のものであり、銅、ステンレス鋼、及びニッケルメッキ鋼等で構成されるものであることが好ましい。
【0031】
前記負極合剤層は、少なくとも負極活物質を含み、導電剤と、負極用バインダーとをさらに含んでいても良い。
前記負極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出することが出来るものであれば特に限定されないが、例えば、黒鉛活物質(人造黒鉛、天然黒鉛、人造黒鉛と天然黒鉛との混合物、人造黒鉛を被覆した天然黒鉛等)、Si系活物質又はSn系活物質(例えば、ケイ素(Si)もしくはスズ(Sn)もしくはそれらの酸化物の微粒子と黒鉛活物質との混合物、ケイ素もしくはスズの微粒子、ケイ素もしくはスズを基本材料とした合金)、金属リチウム及びLiTi12等の酸化チタン系化合物、リチウム窒化物等が考えられる。負極活物質としては、以上に挙げたもののうち一種類を用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。なお、ケイ素の酸化物は、SiOx(0≦x≦2)で表される。
【0032】
前記導電剤は、前記負極の導電性を高めるためのものであれば特に制限されず、例えば、前記正極の項で説明したものと同様のものを使用することができる。
負極合剤層における前記導電剤の含有量は、特に制限されないが、導電性と電池容量とを両立させるという観点から、負極合剤層全体に対して0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
前記負極用バインダーとしては、前記負極活物質及び前記導電剤を前記負極集電体上に結着させることができるものであればよく、特に制限されない。前記負極用バインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸(PAA)、スチレンブタジエン系共重合体(SBR)、カルボキシメチルセルロースの金属塩(CMC)などであってもよい。1種のバインダーが単独で使用されても良いし、2種以上を含有するものとしても良い。
【0034】
(1-3.セパレータ)
セパレータは、特に制限されず、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用されるものであれば、どのようなものであってもよい。セパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。セパレータを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)等に代表されるポリオレフィン(polyolefin)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)等に代表されるポリエステル(polyester)系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene difluoride)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-hexafluoropropylene copolymer)、フッ化ビニリデン-パーフルオロビニルエーテル共重合体(vinylidene difluoride-perfluoroninylether copolymer)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-tetrafluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-trifluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-フルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-fluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロアセトン共重合体(vinylidene difluoride-hexafluoroacetone copolymer)、フッ化ビニリデン-エチレン共重合体(vinylidene difluoride-ethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-プロピレン共重合体(vinylidene difluoride-propylene copolymer)、フッ化ビニリデン-トリフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-trifluoro propylene copolymer)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-tetrafluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-ethylene-tetrafluoroethylene copolymer)等を挙げることができる。なお、セパレータの気孔率は、特に制限されず、従来のリチウムイオン二次電池のセパレータが有する気孔率を任意に適用することが可能である。
【0035】
セパレータは、前述した多孔膜や不織布の表面を覆う表面層をさらに備えるものとしても良い。前記表面層は、電極と接着して電池素子を固定化するための接着剤を含むものであっても良い。接着剤としてはフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン重合体の酸変性物、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0036】
(1-4.非水電解液)
非水電解液は、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。非水電解液は、電解液用溶媒である非水溶媒に電解質塩を含有させた組成を有する。前記非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(propylene carbonate)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate)、クロロエチレンカーボネート(chloroethylene carbonate)、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate)等の環状炭酸エステル類、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、γ-バレロラクトン(γ-valerolactone)等の環状エステル類、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル(methylformate)、酢酸メチル(methylacetate)、酪酸メチル(methylbutyrate)、プロピオン酸エチル(ethyl propionate)、プロピオン酸プロピル(propyl propionate)等の鎖状エステル類、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)またはその誘導体、1,3-ジオキサン(1,3-dioxane)、1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-dimethoxyethane)、1,4-ジブトキシエタン(1,4-dibutoxyethane)、またはメチルジグライム(methyldiglyme)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(ethylene glycol monopropyl ether)、プロピレンレングリコールモノプロピルエーテル(propylene glycol monopropyl ether)等のエーテル類、アセトニトリル(acetonitrile)、ベンゾニトリル(benzonitrile)等のニトリル類、ジオキソラン(dioxolane)またはその誘導体、エチレンスルフィド(ethylene sulfide)、スルホラン(sulfolane)、スルトン(sultone)またはその誘導体等を、単独で、またはそれら2種以上を混合して使用することができる。なお、前記非水溶媒を2種以上混合して使用する場合、各非水溶媒の混合比は、従来のリチウムイオン二次電池で用いられる混合比が適用可能である。
【0037】
電解質塩としては、例えば、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LIPF-x(C2n+1)x[但し、1<x<6、n=1or2]、LiSCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10Cl10、NaClO、NaI、NaSCN、NaBr、KClO、KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSO、(CHNBF、(CHNBr、(CNClO、(CNI、(CNBr、(n-CNClO、(n-CNI、(CN-maleate、(CN-benzoate、(CN-phtalate、ステアリルスルホン酸リチウム(stearyl sulfonic acid lithium)、オクチルスルホン酸リチウム(octyl sulfonic acid lithium)、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム(dodecyl benzeneulfonic acid lithium)等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。なお、電解質塩の濃度は、従来のリチウムイオン二次電池で使用される非水電解液と同様でよく、特に制限はない。本実施形態では、前述したようなリチウム化合物(電解質塩)を0.8mol/l以上1.5mol/l以下程度の濃度で含有させた非水電解液を使用することが好ましい。
【0038】
なお、非水電解液には、各種の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、負極作用添加剤、正極作用添加剤、エステル系の添加剤、炭酸エステル系の添加剤、硫酸エステル系の添加剤、リン酸エステル系の添加剤、ホウ酸エステル系の添加剤、酸無水物系の添加剤、及び電解質系の添加剤等が挙げられる。これらのうちいずれか1種を非水電解液に添加しても良いし、複数種類の添加剤を非水電解液に添加してもよい。
【0039】
<2.本実施形態に係る非水電解質二次電池の特徴構成>
以下に、本実施形態に係る非水電解質二次電池の特徴構成について説明する。
本実施形態に係る非水電解質二次電池の正極合剤層は、前述した成分の他に、非水電解質二次電池用吸熱性導電助剤として機能する複合粒子を含有するものである。
【0040】
この複合粒子は、吸熱反応によって吸熱可能な金属水酸化物粒子と導電性を有する導電性粒子とが複合した複合粒子である。この複合粒子は、図1に示すように、前記金属水酸化物粒子と前記導電性粒子とができるだけ均一に混合された状態で複合したものである。ここで複合とは、例えば、各粒子が有している官能基(例えばカルボキシル基と水酸基)を介して互いに化学結合して複数の粒子が一つの塊になっている状態である。ここでの化学結合とは、前述したような共有結合だけでなく、イオン結合、配位結合、金属結合などの様々な結合を含むものである。なお、粒子間の結合状態については、例えば、X線光電子分光法などによって確認することができる。
【0041】
前記金属水酸化物粒子は、吸熱反応を起こすことができるものであれば良く特に限定されない。前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、擬べーマイト、ベーマイト、アルミナおよびカオリナイト等を挙げることができる。これらは単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0042】
前記金属水酸化物粒子の平均一次粒径は、10nm以上20μm以下であることが好ましく、50nm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0043】
前記導電性粒子は、導電性を有するものであれば良く特に限定されない。前記導電性粒子を構成する素材の具体例としては、例えば、炭素材料、金属ナノ粒子等を挙げることができる。
前記金属ナノ粒子としては、例えば金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子等を上げることができる。
前記炭素材料としては、カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、繊維状炭素、シート状炭素の中から選ばれる一種以上を含有するものを挙げることができる。
前記カーボンブラックの例としては、ファーネスブラック(furnace black)、チャネルブラック(channel black)、サーマルブラック(thermal black)、ケッチェンブラック(ketjen black)、アセチレンブラック(acetylene black)等を挙げることができる。
前記繊維状炭素の例としては、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等を挙げることができ、シート状炭素の例としては、グラフェンなどを挙げることができる。
【0044】
前記複合粒子は、前述したような導電性粒子を含有することによって、ラマン分光分析法によって測定される1350cm-1付近のピーク面積(A)と1580cm-1付近のピーク面積(A)の比(A/A)が0.5以上3.5以下であり、ラマン分光分析法によって測定される2680cm-1付近のピーク半値幅(G’-FWHM)が60cm-1以上150cm-1以下の範囲となっているものであることが好ましい。
【0045】
前記導電性粒子の平均一次粒径または繊維長は、1nm以上10μm以下であることが好ましく、10nm以上1μm以下であることがより好ましい。前記導電性粒子として金属ナノ粒子を使用する場合には、その平均一次粒径がnmオーダーのものであればどのような粒径のものでも使用できるが、例えば、その平均一次粒径が1nm以上500nm以下のものであることが好ましい。
【0046】
前記複合粒子中の水酸化物粒子の含有量は、複合粒子全体に対して1質量%以上60質量%以下の範囲であることが好ましく、5質量%以上50質量%以下の範囲であることがより好ましく、10質量%以上40質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0047】
前記複合粒子中の導電性粒子の含有量は、複合粒子全体に対して0.1質量%以上25質量%以下の範囲であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下の範囲であることがより好ましく、1質量%以上15質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0048】
前記複合粒子は、比表面積及び各種修飾基による修飾度が以下の範囲内のものである。
【0049】
前記複合粒子に水蒸気を吸着させて測定される吸着等温線に基づいて算出される比表面積(BET1)は8m2/g以上600m2/g以下であり、かつ前記複合粒子に窒素を吸着させて測定される吸着等温線によって算出される前記複合粒子の比表面積(BET2)は8m2/g以上600m2/g以下である。
【0050】
BET1は、10m/g以上300m/g以下であることが好ましく、12m/g以上100m/g以下であることがより好ましい。
BET2は、9m/g以上300m/g以下であることが好ましく、10m/g以上100m/g以下であることがより好ましい。
また、これらBET1とBET2との比である比表面積比(BET1/BET2)は、0.2以上5.0以下であることが好ましく、0.5以上4.0以下であることがより好ましく、1.0以上3.0以下であることが特に好ましい。
【0051】
また、前記複合粒子を80℃から1400℃まで加熱した際に該複合粒子から脱離するPガスの量をTDS-MSによって測定した脱離P量(MS1とする。)が300×10-6mol/g以上3000×10-6mol/g以下である。なお、この離脱P量(M1)は、前記複合粒子のホスホン酸による修飾度合を示す指標である。
前記複合粒子を80℃から1400℃まで加熱した際に該複合粒子から脱離するHOガスの量をTDS-MSによって測定した脱離HO量(MS2とする。)が30×10-6mol/g以上1500×10-6mol/g以下であることが好ましい。この脱離HO量は、前記複合粒子の修飾度合の基準値となるものであり、これらガス離脱量の比(M1/M2)が、0.5以上5.0以下であることが好ましく、1.0以上4.0以下であることがより好ましく、1.5以上3.0以下であることが特に好ましい。
【0052】
前記複合粒子による吸熱効果をさらに向上させるためには、前記複合粒子がCH基、CHOH基等の官能基によって修飾されていることが好ましい。これら官能基による修飾度合いは、ホスホン酸による修飾度合と同様にこれら官能基に由来する以下の各種ガスの脱離量によって評価することでき、各種ガスの離脱量が以下の範囲を満たすものであることが好ましい。
前記複合粒子を80℃から1400℃まで加熱した際に該複合粒子から脱離するCH4ガスの量をTDS-MSによって測定した脱離CH4量(MS3とする。)が、30×10-6mol/g以上1000×10-6mol/g以下であり、同様に測定した脱離CH3OH量(MS4とする。)が10×10-6mol/g以上1000×10-6mol/g以下であることが好ましい。
【0053】
MS3は50×10-6mol/g以上であり300×10-6mol/g以下であることがより好ましく、60×10-6mol/g以上であり250×10-6mol/g以下であることが特に好ましい。
MS4は20×10-6mol/g以上であり2000×10-6mol/g以下であることが好ましく、25×10-6mol/g以上であり1900×10-6mol/g以下であることが特に好ましい。
【0054】
前記複合粒子がフェニル基を含有する官能基によって修飾されている場合には、正極合剤スラリーなどのスラリーを作製する際に溶媒中に金属水酸化物粒子を分散させやすい。
そこで、前記金属水酸化物粒子のTDS-MSによる80℃~1400℃までの脱離C6H6量(MS5とする。)が1×10-6mol/g以上4000×10-6mol/g以下であることが好ましく、2×10-6mol/g以上2000×10-6mol/g以下であることがより好ましく、3×10-6mol/g以上1600×10-6mol/g以下であることが特に好ましい。
【0055】
前記複合粒子中の修飾分子の合計含有量は、複合粒子全体を100質量%に対して10質量%以上90質量%以下の範囲であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下の範囲であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0056】
以上に説明したような表面積及び各種修飾基による修飾度によって実現される前記複合粒子による吸熱性は、示差走査熱量測定における50℃~250℃の吸熱量が150J/g以上500J/g以下であることが好ましく、170J/g以上5400J/g以下であることがより好ましく、180J/g以上300J/g以下であることが特に好ましい。
【0057】
前記複合粒子を正極合剤層や負極合剤層に含有させた場合であっても導電性をできるだけ低下させないために、前記複合粒子の60MPa加圧時の体積抵抗率は0.1Ωcm以上4×104Ωcm以下となるようにしてある。前記体積抵抗率は、0.3Ωcm以上3.8×104Ωcm以下であることが好ましく、0.5Ωcm以上3.6×104Ωcm以下であることがより好ましい。
【0058】
正極合剤層における複合粒子の含有量は、正極合剤層全体に対して0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることが特に好ましい。
また、前記非水電解質二次電池用複合粒子の非水電解質二次電池全体に対する含有量は、非水電解質二次電池の用途によっても異なるために以下の範囲に限定されるものではないが、例えば、非水電解質二次電池全体の質量を100質量%とした場合の、該非水電解質二次電池に含まれる非水電解質二次電池用複合粒子の含有量は0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0059】
<3.本実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法>
次に、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。
(3-1.複合粒子の作製方法)
本実施系に係る非水電解質二次電池用複合粒子は、まず金属水酸化物粒子と導電性粒子との複合粒子1を作製し、これを改質することによって作製することができる。
複合粒子は、まず金属水酸化物の原料となる金属硝酸化物と導電性粒子とを加熱しながら混合して乾燥させることにより、金属水酸化物粒子を作製すると同時に金属水酸化物粒子と導電性粒子とが複合した複合粒子を形成することにより得ることができる。
加熱温度は、80℃以上200℃以下であることが好ましく、120℃以上180℃以下であることがより好ましい。
【0060】
金属水酸化物の原料と導電性粒子とを加熱混合する方法としては、例えば、噴霧乾燥機を用いる方法を挙げることができる。この噴霧乾燥機を用いることにより、金属水酸化物粒子と導電性粒子とができるだけ均一に複合した状態の複合粒子を得ることができるために、複合粒子の作製には噴霧乾燥機を用いることが好ましい。
前記複合粒子を改質する方法としては、例えば、複合粒子を改質処理剤に所定時間浸漬する方法等を挙げることができる。
【0061】
前記改質処理剤としては、例えば、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等を挙げることができる。
複合粒子を改質するための処理時間は、処理剤の種類や濃度に応じて適宜変更可能であるが、30分以上48時間以内であることが好ましく、1時間以上30時間以内であることがより好ましい。
処理温度についても、処理剤の種類や濃度によって適宜選択可能であるが、30℃以上90℃以下であることが好ましく、40℃以上80℃以下であることがより好ましい。
【0062】
(3-2.正極の作製方法)
正極は、以下のように作製される。まず、正極活物質、導電剤、正極用バインダー及び前記複合粒子を所望の割合で混合したものを、正極スラリー用溶媒に分散させることで正極スラリーを形成する。次いで、この正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥させることで、正極合剤層を形成する。なお、塗布の方法は、特に限定されない。塗布の方法としては、例えば、ナイフコーター(knife coater)法、グラビアコーター(gravure coater)法、リバースロールコーター(reverse roll coater)、スリットダイコーター(slit die coater)等が考えられる。以下の各塗布工程も同様の方法により行われる。次いで、プレス(press)機により正極合剤層を所望の密度となるようにプレスする。これにより、正極が作製される。
【0063】
(3-3.負極の作製方法)
負極も、正極と同様に作製される。まず、負極合剤層を構成する材料を混合したものを、負極スラリー用溶媒に分散させることで、負極スラリーを作製する。次いで、負極スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥させることで、負極合剤層を形成する。次いで、プレス機により負極合剤層を所望の密度となるようにプレスする。これにより、負極が作製される。
【0064】
(3-4.非水電解質二次電池の製造方法)
次いで、セパレータを正極及び負極で挟むことで、電極構造体を作製する。次いで、電極構造体を所望の形態(例えば、円筒形、角形、ラミネート形、ボタン形等)に加工し、当該形態の容器に挿入する。次いで、当該容器内に非水電解液を注入することで、セパレータ内の各気孔や正極及び負極の空隙に電解液を含浸させる。これにより、リチウムイオン二次電池が作製される。
【0065】
<4.本実施形態による効果>
以上のように構成した非水電解質二次電池によれば、内部短絡等の電池異常により内部温度が上昇しやすい環境下においても非水電解質二次電池の内部温度の上昇を十分に抑制することができ、さらに非水電解質二次電池の電気抵抗を小さく抑えることができる。
【0066】
<5.本発明に係る他の実施形態>
本発明は、前述した実施形態に限られるものではない。
前述した実施形態では、本発明に係る複合粒子を正極が含有する場合について説明したが、複合粒子を負極が含有するものとしてもよい。負極に複合粒子を含有させる場合には、正極に含有させる場合と同等の含有量とすることが好ましい。
また、電解液に複合粒子を含有させるようにしても良いし、正極、負極及び電解液のうちの複数個所に含有させるものとしても良い。
前記非水電解質二次電池用複合粒子を負極が含有する場合には、負極全体に対する前記非水電解質二次電池用複合粒子の含有量は正極の場合と同様の範囲であることが好ましい。前記非水電解質二次電池用複合粒子を電解液が含有する場合には、電解液全体の質量を100質量%とした場合の前記非水電解質二次電池用複合粒子の含有量が0.1重量%以上10.0重量%以下の範囲であることが好ましい。
その他、本発明はこれら実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【実施例0067】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいてより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、あくまでも本発明の一例であり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
[吸熱粒子の作製]
<吸熱粒子の作製>
(実施例1~4、比較例4)
硝酸アルミニウム九水和物50.0gとアセチレンブラック5.0gとをエタノール250ccに分散させた。この分散液を株式会社GF社製噴霧乾燥機にて150℃で噴霧乾燥を実施し、水酸化アルミニウム粒子とアセチレンブラック粒子とが結合した改質前の複合粒子A´(BET1:344m/g、BET2:1.2m/g)を得た。
【0069】
(実施例5、7)
硝酸アルミニウム九水和物50.0gとアセチレンブラック25.0gとをエタノール250ccに分散させた。この分散液を株式会社GF社製噴霧乾燥機にて150℃で噴霧乾燥を実施し、水酸化アルミニウム粒子とアセチレンブラック粒子とが結合した改質前の複合粒子B´(BET1:344m/g、BET2:1.2m/g)を得た。
【0070】
(実施例6)
硝酸アルミニウム九水和物50.0gとアセチレンブラック1.0gとをエタノール250ccに分散させた。この分散液を株式会社GF社製噴霧乾燥機にて150℃で噴霧乾燥を実施し、水酸化アルミニウム粒子とアセチレンブラック粒子とが結合した改質前の複合粒子C´(BET1:344m/g、BET2:1.2m/g)を得た。
【0071】
<吸熱粒子の改質処理>
(実施例1)
1.0gの改質前複合粒子A´とリン酸3.0gとを、エタノールと精製水との混合溶液(混合比1:1)50ccに分散させた。この分散液を80℃にて4時間加熱した後、真空乾燥させて改質された複合粒子Aを得た。
【0072】
(実施例2)
1.0gの改質前複合粒子A´とエチルホスホン酸3.0gとを、エタノールと精製水との混合溶液(混合比1:1)50ccに分散させた以外は、実施例1と同様の手順で作製し、改質された複合粒子Bを得た。
【0073】
(実施例3)
1.0gの改質前複合粒子A´とフェニルホスホン酸3.0gとを、エタノールと精製水の混合溶液(混合比1:1)50ccに分散させた以外は、実施例1と同様の手順で作製し、改質された複合粒子Cを得た。
【0074】
(実施例4)
1.0gの改質前複合粒子A´とジフェニルホスフィン酸3.0gとを、エタノールとトルエンの混合溶液(混合比1:1)50ccに分散させた以外は、実施例1と同様の手順で作製し、改質された複合粒子Dを得た。
【0075】
(実施例5)
1.0gの改質前複合粒子B´とフェニルホスホン酸3.0gとを、エタノールと精製水の混合溶液(混合比1:1)50ccに分散させた以外は、実施例1と同様の手順で作製し、改質された複合粒子Eを得た。
【0076】
(実施例6)
1.0gの改質前複合粒子C´とフェニルホスホン酸5.0gとを、エタノールと精製水の混合溶液(混合比1:1)50ccに分散させた以外は、実施例1と同様の手順で作製し、改質された複合粒子Fを得た。
【0077】
(比較例6)
擬べーマイト(BET1:407m/g、BET2:377m/g)1.0gとフェニルホスホン酸3.0gとを、エタノールと精製水の混合溶液(混合比1:1)50ccに分散させた以外は、実施例1と同様の手順で作製し、改質擬べーマイト粒子を得た。
【0078】
<吸熱粒子と導電性粒子との混合物の作製>
(比較例7)
比較例6の改質擬べーマイト粒子10.0gとアセチレンブラック10.0gとを(株)ダルトン社製V型混合機にて10分間混合させ、粒子混合物aを得た。
【0079】
(比較例8)
比較例6の改質擬べーマイト粒子20.0gとアセチレンブラック10.0gとを(株)ダルトン社製V型混合機にて10分間混合させ、粒子混合物bを得た。
【0080】
(比較例9)
比較例6の改質擬べーマイト粒子10.0gとアセチレンブラック30.0gとを(株)ダルトン社製V型混合機にて10分間混合させ、粒子混合物cを得た。
【0081】
(比較例10)
擬べーマイト粒子(BET1:407m/g、BET2:377m/g)10.0gとアセチレンブラック10.0gをと(株)ダルトン社製V型混合機にて10分間混合させ、粒子混合物dを得た。
【0082】
[正極作製]
(実施例1-6、比較例2-10)
LiCoO、アセチレンブラック、ボリフッ化ビニリデン、吸熱粒子をそれぞれ乾燥粉体としての質量比97.0:1.0:1.3:0.7でN-メチル-2-ピロリドン溶媒中に分散させて混合することで、正極合剤スラリーを作製した。次いで、乾燥後の合剤塗布量(面密度)が片面20.0mg/cm2になるようにスラリーをアルミニウム集電箔上の片面に塗工乾燥させた後、ロールプレス機で合剤層密度が4.15g/ccとなるようにプレスし、正極を作製した。
【0083】
(比較例1、実施例7)
LiCoO、アセチレンブラック、ボリフッ化ビニリデンを乾燥粉体としての質量比97.7:1.0:1.3でN-メチル-2-ピロリドン溶媒中に分散させて混合することで、正極合剤スラリーを作製した以外は、実施例1と同様の手順で正極を作製した。
【0084】
[負極作製]
(実施例1-6、比較例1-10)
人造黒鉛、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)、スチレンブタジエン系水分散体をそれぞれ乾燥粉体としての質量比97.5:1.0:1.5で水溶媒中に溶解分散させることで、負極合剤スラリーを作製した。次いで、乾燥後の合剤塗布量(面密度)が10.5mg/cm2になるように負極合剤スラリーを銅箔上の片面に塗工乾燥させた後、ロールプレス機で合剤層密度が1.65g/ccとなるようにプレスし、負極を作製した。
【0085】
(実施例7)
人造黒鉛、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)、スチレンブタジエン系水分散体、実施例5の複合粒子Eをそれぞれ乾燥粉体としての質量比96.5:1.0:1.5:1.0で水溶媒中に溶解分散させることで、負極合剤スラリーを作製した以外は、実施例1と同様の手順で負極を作製した。
【0086】
[二次電池セル作製]
(実施例1-7、比較例1-10)
ポリプロピレン製多孔質セパレータを介して、電池設計容量が300mAhになるように複数枚の正極と負極とを積層して電極積層体を作製した。次いで、アルミラミネートフィルム内に上述の電極積層体の負極電極、正極電極にそれぞれニッケル及びアルミリード線を溶接した後、リード線を外部に引き出した状態で収納し、電解液を注液して減圧封止することで初期充電前二次電池セルを作製した。電解液には、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/フルオロエチレンカーボネートを15/80/5(体積比)で混合した溶媒に1.3MのLiPF6および1%質量%のビニレンカーボネートを溶解させたものを使用した。
【0087】
[吸熱粒子の評価]
実施例及び比較例に用いた吸熱粒子の評価を以下のとおり行った。
<吸熱粒子の比表面積(BET)>
無機粒子または複合粒子の比表面積(水蒸気を吸着させて測定される吸着等温線に基づいて算出される比表面積であるBET)は、ガス吸着量測定装置(マイクロトラック・ベル社製 BELSORP)を用い、JIS K6217-2にて測定した。
【0088】
<脱離ガス質量>
昇温脱離ガス質量分析(TDS-MS)は、電子科学製昇温脱離ガス分析装置TDS-1200型を用いて、脱離するメタン分子、メタノール分子、ベンゼン分子、ニ燐分子および水分子の量の測定と解析を次の要領で行なった。
TDSにおいて、試料としての負極活物質をセットする試料ステージは石英製、試料皿はSiC製である。また、昇温速度は60℃/minとした。昇温は試料表面温度をモニターすることにより制御した。また、試料重量は1mgとし、実測重量で補正した。検出には四重極質量分析計を用い、印加電圧は1000Vとした。
TDSにより、80℃から1400℃までの温度上昇において無機粒子または複合粒子から脱離した各ガス量(μmol/g)を測定した。測定値の解析に用いた質量数[M/z]は、CHが15、HOが18、CHOHが31、Pが62、Cは78とし、上記質量数に対応するガスは、それぞれ全て上記の各物質であるとした。ここで、HOのガス量に関しては、全温度範囲の結果のうち、80℃から200℃までの積算値のみと使用し脱離HO量(MS2)とした。
【0089】
<最大吸熱ピーク温度>
吸熱粒子の最大吸熱ピーク温度は、示差走査熱量測定装置であるDSC(日立ハイテクサイエンス社製)を用い、JISK7121の規定に準じて、昇温速度5K/minで昇温し、吸熱分解温度のピークを確認した。
【0090】
<吸熱粒子と電解液共存下150℃以下発熱有無確認>
吸熱粒子2.0mgと二次電池セルを作製する際に用いたものと同じ電解液0.5mgを専用密閉容器にいれカシメした後、前述と同様に吸熱ピーク測定をし、150℃以下で発熱ピークの有無を確認したところ、比較例1~10においては、100℃付近に明らかな発熱ピークが観察されたものの、実施例1~7においてはこの発熱ピークが観察されなかった。
【0091】
<60MPa加圧時の体積密度及び粉体抵抗>
日東精工アナリテック株式会社MCP-PD51を用い、円柱状シリンダーに充填した吸熱粒子を油圧プレス機にて加圧成形された粉末した際の体積密度、及び加圧成形された粉体の体積抵抗率の測定を行った。測定条件は以下の通りである。
荷重:18.85kN
電極間隔:3.0mm
電極半径:0.7mm
試料半径:10.0mm
使用プローブ:4探針プローブ
【0092】
<ラマン分光分析>
各吸熱粒子について顕微レーザーラマン分光装置として日本分光株式会社NRS-5100を用い、励起波長532.36nmで測定を行った。測定条件は以下の通りである。
露出時間:10秒
積算回数:20回
回折格子:300本/mm(600nm)
測定された全領域のラマンスペクトルのうち、800cm-1~3500cm-1でのスペクトルにおいてカーブフィッティングを実施し、1350cm-1付近のピーク面積(A) と1580cm-1付近のピーク面積(A)の比(A/A)、2680cm-1付近のピーク半値幅(G’-FWHM)を得た。
【0093】
[二次電池の評価]
<サイクル特性>
実施例1~7および比較例1~10で作製した二次電池セルを、25℃の恒温槽内で設計容量の0.1CAで4.3Vまで定電流充電を行い、引き続き4.3Vで0.05CAになるまで定電圧充電を行った。その後0.1CAで3.0Vまで定電流放電を行った。さらに、25℃の恒温槽内で、充電終止電圧4.3V、放電終止電圧3.0Vの条件で0.2CAで定電流充電、0.05CAで定電圧充電、0.2CAで定電流放電を1サイクル行い、初期放電容量を測定した。この二次電池セルを、45℃の温度下、充電終止電圧4.3V、放電終止電圧3.0Vの条件で0.5CAで定電流充電、0.05CAで定電圧充電、0.5CAで定電流放電する寿命試験を100サイクル実施した。そして、100サイクル後、定電流充電0.2CA、定電圧充電0.05CA、放電0.2CAでの放電容量を計測し、初期放電容量で除算することで、100サイクル後の容量維持率を測定した。
【0094】
<加熱試験>
実施例1~7および比較例1~10で作製した二次電池セルを、25℃の恒温槽内で設計容量の0.1CAで4.42Vまで定電流充電を行い、引き続き4.42Vで0.05CAになるまで定電圧充電を行った。その後0.1CAで3.0Vまで定電流放電を行った。さらに、25℃の恒温槽内で、充電終止電圧4.42V、放電終止電圧3.0Vの条件で0.2CAで定電流充電、0.05CAで定電圧充電、0.2CAで定電流放電を1サイクル行ったあと、再び4.3Vまで定電流/定電圧充電を行ったセルを初期セルとした。この二次電池セルを165℃に加熱した恒温槽中に1時間放置し、電池の電圧が4.3V以下になった場合を「異常発生」とし、10個の電池試験の異常発生率を評価した。
【0095】
<釘差し試験>
上述の初期セルにおいて、セル中央部に、直径3mm(ステンレス鋼又は軟鉄)の釘を50mm/sの速度で、釘刺し試験が実施された。釘が刺されてから、5秒後の電池外部温度が50℃以上になった場合を「異常発生」とし、10個の電池試験の異常発生率を評価した。
【0096】
<過充電試験>
上述の初期セルをさらに、12Vまで、3CAでの定電流充電を行い、12V到達後10分間定電圧充電した後の電池外部温度が50℃以上になった場合を「異常発生」とし、10個の電池試験の異常発生率を評価した。
【0097】
<評価結果>
以上に説明した実施例及び比較例で使用した無機粒子または複合粒子の種類、物性及び含有箇所を表1に示す。また、実施例1~7及び比較例1~10の二次電池セルについての評価結果を表2にまとめた。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
<実施例及び比較例についての考察>
表2の結果から、実施例1~7においては、比較例1~10に比べて、高温条件下や、釘差しによる外部からの衝撃、過充電など電池の内部温度が上昇しやすい条件下においても、電池内部の温度上昇によって引き起こされる異常の発生率を十分に小さく抑えることができた。これらの結果から、本発明に係る吸熱粒子である複合粒子によれば、この複合粒子を含有する非水電解質二次電池の内部温度を十分に小さく抑えることができたことが分かる。
また、これら実施例1~7においては、本発明にかかる複合粒子を正極又は負極に含有させているにもかかわらずセル抵抗が1.5以下と複合粒子を含有しない比較例1と同等又はそれ以下に抑えられていることが分かる。
さらに、各実施例の結果から、ホスホン酸による修飾に使用する原料の種類や量を変えた場合や、複合粒子を含有させる場所を変えた場合であっても、同様の効果が発揮されることが確認できた。
【0101】
これに対して、アセチレンブラック粒子のみを含有する比較例2において、セル抵抗は小さくなるが、異常発生率を下げる効果は発揮できていない。
改質処理をしていない金属水酸化物を使用した比較例3又は比較例5おいては、異常発生率の抑制が十分でなく、さらにセル抵抗も大きくなってしまった。
【0102】
また、改質処理をしていない複合粒子を使用した比較例4の場合には、セル抵抗は小さく抑えられるものの、異常発生率が高くなっており、改質処理による複合粒子への修飾度が重要であることが分かる結果となっている。
また、改質処理により修飾度が最適な範囲に調整された擬ベーマイトを用いた比較例6の場合には、異常発生率は十分に小さく抑えられるものの、セル抵抗が高くなってしまうことが分かる。
【0103】
改質処理をした後の金属水酸化物粒子を導電性粒子と混合した粒子混合物を用いた比較例7~10の場合には、セル抵抗と異常発生率の低減効果との両方において、実施例1~7よりも劣る結果となった。このことから単に金属水酸化物粒子と導電性粒子とを混合しただけではなく、これらを粒子同士が互いに結合している複合粒子とすることによってはじめてセル抵抗の増大を抑え、かつ内部温度の上昇を十分に抑制するという本願発明の効果が発揮されることが分かる。

図1