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特開2023-150512時刻タイミング信号を生成する方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150512
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】時刻タイミング信号を生成する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2575 20130101AFI20231005BHJP
【FI】
H04B10/2575
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059655
(22)【出願日】2022-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】木内 等
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA63
5K102AH26
5K102AL11
5K102AL12
5K102KA02
5K102PA01
5K102PB01
5K102PH01
5K102PH31
5K102PH41
5K102RD03
5K102RD04
5K102RD11
5K102RD21
(57)【要約】
【課題】基地局とリモート局と間の伝送遅延を正確に測定する。
【解決手段】時刻タイミング信号により第1基準マイクロ波信号を位相変調して往路マイクロ波位相変調信号を生成し、往路マイクロ波位相変調信号によりレーザ光を光強度変調して生成した往路光強度変調信号を光ファイバ300経由で基地局100からリモート局200に伝送する。往路光強度変調信号を復調した往路マイクロ波位相変調信号の周波数を変更した復路マイクロ波位相変調信号を生成し、復路マイクロ波位相変調信号によりレーザ光を光強度変調して生成した復路光強度変調信号を光ファイバ300経由でリモート局200から基地局100に伝送する。基地局100では、復路光強度変調信号を光電気変換して復路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出し、復路マイクロ波位相変調信号を復調することにより往復時刻タイミング信号を抽出し、時刻タイミング信号と往復時刻タイミング信号との差から伝送遅延を求める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを通して基地局からリモート局に伝送する時刻タイミング信号を生成する方法であって、
前記基地局において、
第1搬送波周波数の第1基準マイクロ波信号を前記時刻タイミング信号により位相変調して往路マイクロ波位相変調信号を生成し、
波長λ1の第1レーザ光を前記往路マイクロ波位相変調信号により光強度変調して往路光強度変調信号を生成し、
前記光ファイバを通して前記基地局から前記往路光強度変調信号を前記リモート局に伝送する、ステップと、
前記リモート局において、
前記基地局から伝送された前記往路光強度変調信号を光電気変換して往路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出し、
前記往路マイクロ波位相変調信号を用いて前記第1搬送波周波数とは異なる第2搬送波周波数の復路マイクロ波位相変調信号を生成し、
前記波長λ1の第2レーザ光を前記復路マイクロ波位相変調信号により光強度変調して復路光強度変調信号を生成し、
前記光ファイバを通して前記リモート局から前記基地局へ前記復路光強度変調信号を伝送する、ステップと、
前記基地局において、
前記復路光強度変調信号を光電気変換して復路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出し、
前記復路マイクロ波位相変調信号を復調して往復時刻タイミング信号を抽出し、
前記時刻タイミング信号と前記往復時刻タイミング信号とのタイミング差から伝送遅延を求め、
前記時刻タイミング信号を前記伝送遅延だけ進めて前記リモート局用の前記時刻タイミング信号を生成する、ステップと、
を備える、
時刻タイミング信号を生成する方法。
【請求項2】
前記リモート局において、
前記往路マイクロ波位相変調信号から前記時刻タイミング信号を抽出すると共に、前記第1搬送波周波数の第1基準マイクロ波信号を再生し、
前記第1基準マイクロ波信号に位相同期するように、前記第2搬送波周波数の第2基準マイクロ波信号を生成し、
前記時刻タイミング信号により、前記第2基準マイクロ波信号を位相変調して、前記復路マイクロ波位相変調信号を生成する、ステップを更に含み、
前記基地局において、
前記第2搬送波周波数の前記第2基準マイクロ波信号を生成し、
前記復路光強度変調信号を光電気変換して抽出した前記復路マイクロ波位相変調信号の位相と前記第2基準マイクロ波信号とを比較し、
比較により得られた往復位相変化量から伝送位相変化量を求め、
前記時刻タイミング信号を、前記伝送遅延及び前記伝送位相変化量分進めて前記時刻タイミング信号を生成する、ステップを更に含む、
請求項1に記載の時刻タイミング信号を生成する方法。
【請求項3】
光ファイバを通して基地局からリモート局に伝送する時刻タイミング信号を生成するシステムであって、
前記基地局は、
前記時刻タイミング信号を生成し、生成した前記時刻タイミング信号をマイクロ波変調器とタイミング比較部とに供給する時刻タイミング信号生成部と、
第1搬送波周波数の第1基準マイクロ波信号を発生し、発生した第1基準マイクロ波信号をマイクロ波変調器に供給するマイクロ波発生器と、
前記時刻タイミング信号により前記第1基準マイクロ波信号を位相変調して往路マイクロ波位相変調信号を生成し、生成した往路マイクロ波位相変調信号を光強度変調器に供給するマイクロ波変調器と、
波長λ1の第1レーザ光を生成し、生成した前記第1レーザ光を前記光強度変調器に供給する第1レーザ光源と、
前記往路マイクロ波位相変調信号により前記第1レーザ光を光強度変調して往路光強度変調信号を生成し、生成した往路光強度変調信号を方向性結合器に供給する光強度変調器と、
前記光ファイバを通して前記往路光強度変調信号を前記リモート局に供給すると共に、前記光ファイバを通して前記リモート局から供給される復路光強度変調信号を前記往路光強度変調信号から分離し、分離した復路光強度変調信号を光電気変換器に供給する方向性結合器と、
前記復路光強度変調信号を光電気変換して復路マイクロ波位相変調信号を抽出し、抽出した復路マイクロ波位相変調信号をマイクロ波復調器に供給する光電気変換器と、
前記復路マイクロ波位相変調信号から往復時刻タイミング信号を抽出し、抽出した往復時刻タイミング信号をタイミング比較部に供給するマイクロ波復調器と、
前記時刻タイミング信号と前記往復時刻タイミング信号とのタイミング差から伝送遅延を求め、求めた伝送遅延を制御部に通知するタイミング比較部と、
前記伝送遅延に基づいて制御を行う制御部と、を備え、
前記リモート局は、
前記光ファイバを通して前記基地局から供給される前記往路光強度変調信号を前記復路光強度変調信号から分離し、分離した前記往路光強度変調信号を光電気変換器に供給すると共に、前記光ファイバを通して前記復路光強度変調信号を前記リモート局に供給する方向性結合器と、
前記往路光強度変調信号を光電気変換して前記往路マイクロ波位相変調信号を抽出し、抽出した前記往路マイクロ波位相変調信号を復路マイクロ波位相変調信号発生部に供給する光電気変換器と、
前記往路マイクロ波位相変調信号を用いて前記第1搬送波周波数とは異なる第2搬送波周波数の復路マイクロ波位相変調信号を生成し、生成した復路マイクロ波位相変調信号を光強度変調器に供給する復路マイクロ波位相変調信号発生部と、
前記波長λ1の第2レーザ光を生成し、生成した前記第2レーザ光を前記光強度変調器に供給する第2レーザ光源と、
前記復路マイクロ波位相変調信号により前記第2レーザ光を光強度変調して前記復路光強度変調信号を生成し、生成した前記復路光強度変調信号を前記方向性結合器に供給する光強度変調器と、を備え、
前記制御部は、前記時刻タイミング信号生成部を制御し、前記時刻タイミング信号を前記伝送遅延だけ進めて前記リモート局用の前記時刻タイミング信号を生成する、
時刻タイミング信号を生成するシステム。
【請求項4】
前記復路マイクロ波位相変調信号発生部は、
局部発振器と周波数変換器とを備え、
前記局部発振器は、局部発振信号を生成し、生成した前記局部発振信号を前記周波数変換器に供給し、
前記周波数変換器は、前記局部発振信号を用いて周波数変換を行い、前記第1搬送波周波数の前記往路マイクロ波位相変調信号から、前記第1搬送波周波数とは異なる前記第2搬送波周波数の前記復路マイクロ波位相変調信号を生成する、
請求項3に記載の時刻タイミング信号を生成するシステム。
【請求項5】
前記復路マイクロ波位相変調信号発生部は、
マイクロ波復調器と、マイクロ波発生器と、マイクロ波変調器とを備え、
前記マイクロ波復調器は、前記往路マイクロ波位相変調信号から前記時刻タイミング信号を抽出し、抽出した前記時刻タイミング信号を前記マイクロ波変調器に供給し、
前記マイクロ波発生器は、前記第1搬送波周波数とは異なる前記第2搬送波周波数の第2基準マイクロ波信号を生成し、生成した第2基準マイクロ波信号をマイクロ波変調器に供給し、
前記マイクロ波変調器は、前記時刻タイミング信号により、前記第2基準マイクロ波信号を位相変調して、前記第1搬送波周波数とは異なる前記第2搬送波周波数の復路マイクロ波位相変調信号を生成し、生成した復路マイクロ波位相変調信号を前記光強度変調器に供給する、
請求項3に記載の時刻タイミング信号を生成するシステム。
【請求項6】
前記リモート局において、
前記マイクロ波復調器は、前記往路マイクロ波位相変調信号から前記時刻タイミング信号を抽出し、抽出した前記時刻タイミング信号をマイクロ波変調器に供給すると共に、前記往路マイクロ波位相変調信号から前記第1基準マイクロ波信号を再生し、再生した前記第1基準マイクロ波信号を前記マイクロ波発生器に供給し、
前記マイクロ波発生器は、前記第1基準マイクロ波信号を位相同期信号として利用し、前記第2搬送波周波数の第2基準マイクロ波信号を、前記第1基準マイクロ波信号に位相同期した状態で生成し、生成した第2基準マイクロ波信号を前記マイクロ波変調器に供給し、
前記マイクロ波変調器は、第1基準マイクロ波信号に位相同期した前記第2基準マイクロ波信号を、前記時刻タイミング信号により位相変調して、前記復路マイクロ波位相変調信号を生成し、
前記基地局において、
位相比較部が更に設けられ、
前記マイクロ波発生器は、前記第2基準マイクロ波信号を更に発生し、発生した前記第2基準マイクロ波信号を前記位相比較部に供給し、
前記光電気変換器は、前記復路光強度変調信号から光電気変換により抽出した前記復路マイクロ波位相変調信号を更に前記位相比較部に供給し、
前記位相比較部は、前記第2基準マイクロ波信号と前記復路マイクロ波位相変調信号との位相変化量から伝送位相変化量を算出し、算出した前記伝送位相変化量を前記制御部に供給し、
前記制御部は、時刻タイミング信号生成部を制御して時刻タイミング信号を伝送遅延だけ進めると共に、マイクロ波発生器を制御して第1基準マイクロ波信号の位相を伝送位相変化量分進め、リモート局用の時刻タイミング信号を生成する、
請求項5に記載の時刻タイミング信号を生成するシステム。
【請求項7】
前記基地局は、前記光電気変換器と前記マイクロ波復調器との間に、共振周波数を第2搬送波周波数に設定されたフィルタを備え、
前記フィルタは、前記復路光強度変調信号から抽出された前記第2搬送波周波数の前記復路マイクロ波位相変調信号を通過させ、
前記リモート局は、前記光電気変換器と前記マイクロ波復調器との間に、共振周波数を第1搬送波周波数に設定されたフィルタを備え、
前記フィルタは、往路光強度変調信号から抽出された第1搬送波周波数の往路マイクロ波位相変調信号を通過させる、
請求項3~6のいずれか一項に記載の時刻タイミング信号を生成するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、時刻タイミング信号を生成する方法及びシステムに関し、特に、基地局からリモート局に光ファイバを通して伝送するリモート局用の時刻タイミング信号を生成する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速光通信、深宇宙探査、天文精密計測などの分野では、非常に離れた複数の測定地点で時刻を高精度に同期させる必要がある。このような時刻の同期のため、高精度な時刻タイミング信号の生成及び伝送が求められている。
【0003】
非常に離れた基地局とリモート局とが光ファイバにより接続されており、基地局からリモート局にタイミング信号を伝送して同期をとる場合、光ファイバにおいて生じる伝送遅延を予め精密に測定し、測定した伝送遅延分を進めたリモート局用のタイミング信号を基地局からリモート局に伝送することで、時刻同期を行う。この種の技術は、以下の非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】P.Krehlik, L.Sliwczynski, L.Buczek, J.Kolodziej, M.Lipinski, 「ELSTAB.Fiber-Optic Time and Frequency Distribution Technology: A General Characterization and Fundamental Limits,」, IEEE Trans on Ultrasonics, Ferroelectrics, and frequency control, (vol.63, no.7, pp.993-1004, Jul. 2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1に記載された従来の手法では、以下のようにして時刻同期を行う。
1.基地局は、時刻タイミング信号によりレーザ光を振幅変調し、振幅変調された光信号を生成する。
2.基地局は、光信号を光ファイバ経由でリモート局に伝送する。
3.リモート局は、光ファイバ経由で伝送された光信号を光電気変換により電気信号に変換し、時刻タイミング信号を抽出する。
4.リモート局は、抽出した時刻タイミング信号によりレーザ光を振幅変調し、光信号を再生成する。ただし、基地局で生成された光信号とリモート局で再生成された光信号とを、基地局で分離可能なように、リモート局において再生成する光信号の波長は、光フィルタで分離可能なように、基地局で生成された光信号の波長と異なるものにしておく。
5.リモート局は、再生成した光信号を光ファイバ経由で基地局に伝送する。
6.基地局は、リモート局から伝送された光信号を光フィルタにより分離抽出し、分離抽出した光信号を光電気変換により電気信号に変換し、時刻タイミング信号を抽出する。
7.基地局は、元の時刻タイミング信号と、リモート局から伝送された光信号に含まれる時刻タイミング信号とのタイミングを比較し、光信号の往復により生じた遅延(往復遅延)を検出する。
8.基地局は、往復遅延の1/2の伝送遅延に相当する時間を早めたリモート局用の時刻タイミング信号によりレーザ光を振幅変調し、リモート局同期用光信号を生成する。
9.基地局は、リモート局同期用光信号を光ファイバ経由でリモート局に伝送する。
【0006】
従来手法では、基地局からリモート局までの往路の光信号と、リモート局から基地局までの復路の光信号とで、光フィルタにより分離可能なように異なる波長を採用する必要がある。この場合、光ファイバ伝送における波長分散の影響により、往路と復路の光信号の波長の違いに応じて、往路と復路の遅延量が変化する。
【0007】
また、従来手法では、リモート局は、基地局からの光信号から時刻タイミング信号を抽出し、抽出した時刻タイミング信号によりレーザ光を振幅変調して光信号を再生成している。この場合、リモート局内の処理に起因して、基地局からリモート局までの光信号の往路とリモート局から基地局までの光信号の復路とで異なる経路を通ることがある。
【0008】
以上のような事情により、光ファイバを介して伝送される光信号に生じる伝送遅延を正確に測定することが困難になり、リモート局用の高精度な時刻タイミング信号を生成することが困難になるという問題があった。
【0009】
この開示は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、基地局とリモート局との間で光ファイバを介して伝送される光信号に生じる伝送遅延を正確に測定し、基地局からリモート局に光ファイバを通して伝送するリモート局用の時刻タイミング信号を生成する方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この開示に係る時刻タイミング信号を生成する方法は、光ファイバを通して基地局からリモート局に伝送する時刻タイミング信号を生成する方法であって、基地局において、第1搬送波周波数f1の第1基準マイクロ波信号を時刻タイミング信号により位相変調して往路マイクロ波位相変調信号を生成し、波長λ1の第1レーザ光を往路マイクロ波位相変調信号により光強度変調して往路光強度変調信号を生成し、光ファイバを通して基地局から往路光強度変調信号をリモート局に伝送する、ステップと、リモート局において、基地局から伝送された往路光強度変調信号を光電気変換して往路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出し、往路マイクロ波位相変調信号を用いて第1搬送波周波数f1とは異なる第2搬送波周波数f2の復路マイクロ波位相変調信号を生成し、波長λ1の第2レーザ光を復路マイクロ波位相変調信号により光強度変調して復路光強度変調信号を生成し、光ファイバを通してリモート局から基地局へ復路光強度変調信号を伝送する、ステップと、基地局において、復路光強度変調信号を光電気変換して復路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出し、復路マイクロ波位相変調信号を復調して往復時刻タイミング信号を抽出し、時刻タイミング信号と往復時刻タイミング信号とのタイミング差から伝送遅延を求め、時刻タイミング信号を伝送遅延だけ進めてリモート局用の時刻タイミング信号を生成する、ステップと、を備える。
【0011】
この開示に係る時刻タイミング信号を生成する方法において、リモート局において、往路マイクロ波位相変調信号から時刻タイミング信号を抽出すると共に、第1搬送波周波数の第1基準マイクロ波信号を再生し、第1基準マイクロ波信号に位相同期するように、第2搬送波周波数の第2基準マイクロ波信号を生成し、時刻タイミング信号により、第2基準マイクロ波信号を位相変調して、復路マイクロ波位相変調信号を生成する、ステップを更に含み、基地局において、第2搬送波周波数の第2基準マイクロ波信号を生成し、復路光強度変調信号を光電気変換して抽出した復路マイクロ波位相変調信号の位相と第2基準マイクロ波信号とを比較し、比較により得られた往復位相変化量から伝送位相変化量を求め、時刻タイミング信号を、伝送遅延及び伝送位相変化量分進めて時刻タイミング信号を生成する、ステップを更に含む。
【0012】
この開示に係る時刻タイミング信号を生成するシステムは、光ファイバを通して基地局からリモート局に伝送する時刻タイミング信号を生成するシステムであって、基地局は、時刻タイミング信号を生成し、生成した時刻タイミング信号をマイクロ波変調器とタイミング比較部とに供給する時刻タイミング信号生成部と、第1搬送波周波数の第1基準マイクロ波信号を発生し、発生した第1基準マイクロ波信号をマイクロ波変調器に供給するマイクロ波発生器と、時刻タイミング信号により第1基準マイクロ波信号を位相変調して往路マイクロ波位相変調信号を生成し、生成した往路マイクロ波位相変調信号を光強度変調器に供給するマイクロ波変調器と、波長λ1の第1レーザ光を生成し、生成した第1レーザ光を光強度変調器に供給する第1レーザ光源と、往路マイクロ波位相変調信号により第1レーザ光を光強度変調して往路光強度変調信号を生成し、生成した往路光強度変調信号を方向性結合器に供給する光強度変調器と、光ファイバを通して往路光強度変調信号をリモート局に供給すると共に、光ファイバを通してリモート局から供給される復路光強度変調信号を往路光強度変調信号から分離し、分離した復路光強度変調信号を光電気変換器に供給する方向性結合器と、復路光強度変調信号を光電気変換して復路マイクロ波位相変調信号を抽出し、抽出した復路マイクロ波位相変調信号をマイクロ波復調器に供給する光電気変換器と、復路マイクロ波位相変調信号から往復時刻タイミング信号を抽出し、抽出した往復時刻タイミング信号をタイミング比較部に供給するマイクロ波復調器と、時刻タイミング信号と往復時刻タイミング信号とのタイミング差から伝送遅延を求め、求めた伝送遅延を制御部に通知するタイミング比較部と、伝送遅延に基づいて制御を行う制御部と、を備え、リモート局は、光ファイバを通して基地局から供給される往路光強度変調信号を復路光強度変調信号から分離し、分離した往路光強度変調信号を光電気変換器に供給すると共に、光ファイバを通して復路光強度変調信号をリモート局に供給する方向性結合器と、往路光強度変調信号を光電気変換して往路マイクロ波位相変調信号を抽出し、抽出した往路マイクロ波位相変調信号を復路マイクロ波位相変調信号発生部に供給する光電気変換器と、往路マイクロ波位相変調信号を用いて第1搬送波周波数とは異なる第2搬送波周波数の復路マイクロ波位相変調信号を生成し、生成した復路マイクロ波位相変調信号を光強度変調器に供給する復路マイクロ波位相変調信号発生部と、波長λ1の第2レーザ光を生成し、生成した第2レーザ光を光強度変調器に供給する第2レーザ光源と、復路マイクロ波位相変調信号により第2レーザ光を光強度変調して復路光強度変調信号を生成し、生成した復路光強度変調信号を方向性結合器に供給する光強度変調器と、を備え、制御部は、時刻タイミング信号生成部を制御し、時刻タイミング信号を伝送遅延だけ進めてリモート局用の時刻タイミング信号を生成する。
【0013】
この開示に係る時刻タイミング信号を生成するシステムにおいて、復路マイクロ波位相変調信号発生部は、局部発振器と周波数変換器とを備え、局部発振器は、局部発振信号を生成し、生成した局部発振信号を周波数変換器に供給し、周波数変換器は、局部発振信号を用いて周波数変換を行い、第1搬送波周波数の往路マイクロ波位相変調信号から、第1搬送波周波数とは異なる第2搬送波周波数の復路マイクロ波位相変調信号を生成する。
【0014】
この開示に係る時刻タイミング信号を生成するシステムにおいて、復路マイクロ波位相変調信号発生部は、マイクロ波復調器と、マイクロ波発生器と、マイクロ波変調器とを備え、マイクロ波復調器は、往路マイクロ波位相変調信号から時刻タイミング信号を抽出し、抽出した時刻タイミング信号をマイクロ波変調器に供給し、マイクロ波発生器は、第1搬送波周波数とは異なる第2搬送波周波数の第2基準マイクロ波信号を生成し、生成した第2基準マイクロ波信号をマイクロ波変調器に供給し、マイクロ波変調器は、時刻タイミング信号により、第2基準マイクロ波信号を位相変調して、第1搬送波周波数とは異なる第2搬送波周波数の復路マイクロ波位相変調信号を生成し、生成した復路マイクロ波位相変調信号を光強度変調器に供給する。
【0015】
この開示に係る時刻タイミング信号を生成するシステムにおいて、リモート局において、マイクロ波復調器は、往路マイクロ波位相変調信号から時刻タイミング信号を抽出し、抽出した時刻タイミング信号をマイクロ波変調器に供給すると共に、往路マイクロ波位相変調信号から第1基準マイクロ波信号を再生し、再生した第1基準マイクロ波信号をマイクロ波発生器に供給し、マイクロ波発生器は、第1基準マイクロ波信号を位相同期信号として利用し、第2搬送波周波数の第2基準マイクロ波信号を、第1基準マイクロ波信号に位相同期した状態で生成し、生成した第2基準マイクロ波信号をマイクロ波変調器に供給し、マイクロ波変調器は、第1基準マイクロ波信号に位相同期した第2基準マイクロ波信号を、時刻タイミング信号により位相変調して、復路マイクロ波位相変調信号を生成し、基地局において、位相比較部が更に設けられ、マイクロ波発生器は、第2基準マイクロ波信号を更に発生し、発生した第2基準マイクロ波信号を位相比較部に供給し、光電気変換器は、復路光強度変調信号から光電気変換により抽出した復路マイクロ波位相変調信号を更に位相比較部に供給し、位相比較部は、第2基準マイクロ波信号と復路マイクロ波位相変調信号との位相変化量から伝送位相変化量を算出し、算出した伝送位相変化量を制御部に供給し、制御部は、時刻タイミング信号生成部を制御して時刻タイミング信号を伝送遅延だけ進めると共に、マイクロ波発生器を制御して第1基準マイクロ波信号の位相を伝送位相変化量分進め、リモート局用の時刻タイミング信号を生成する。
【0016】
この開示に係る時刻タイミング信号を生成するシステムにおいて、基地局は、光電気変換器とマイクロ波復調器との間に、共振周波数を第2搬送波周波数に設定されたフィルタを備え、フィルタは、復路光強度変調信号から抽出された第2搬送波周波数の復路マイクロ波位相変調信号を通過させ、リモート局は、光電気変換器とマイクロ波復調器との間に、共振周波数を第1搬送波周波数に設定されたフィルタを備え、フィルタは、往路光強度変調信号から抽出された第1搬送波周波数の往路マイクロ波位相変調信号を通過させる。
【発明の効果】
【0017】
この開示に係る時刻タイミング信号を生成する方法及びシステムによれば、基地局とリモート局との間で光ファイバを介して伝送される光信号に生じる伝送遅延を正確に測定し、基地局からリモート局に光ファイバを通して伝送するリモート局用の時刻タイミング信号を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1に係るシステムの構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1におけるマイクロ波位相変調信号の生成の様子を示すタイミングチャートである。
図3】実施の形態1における伝送遅延の算出の様子を示すタイミングチャートである。
図4】実施の形態1に係るシステムにおける各部の処理手順を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2に係るシステムの構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態3に係るシステムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の時刻タイミング信号を生成する方法及びシステムの実施の形態につき、図面を用いて説明する。
実施の形態1.
はじめに、本開示の実施の形態1におけるシステム1Aの構成について、図1を参照して説明する。図1は、実施の形態1に係るシステム1Aの構成を示すブロック図である。
【0020】
[システム1Aの構成]
システム1Aは、主に、基地局100と、リモート局200と、光ファイバ300とにより構成されている。
【0021】
基地局100には、制御部101と、時刻タイミング信号生成部110と、マイクロ波発生器120と、マイクロ波変調器130と、第1レーザ光源140と、光強度変調器150と、方向性結合器160と、光電気変換器170と、フィルタ175と、マイクロ波復調器180と、タイミング比較部190とが設けられている。
【0022】
リモート局200には、局部発振器225と、周波数変換器235と、第2レーザ光源240と、光強度変調器250と、方向性結合器260と、光電気変換器270と、フィルタ275と、フィルタ295とが設けられている。ここで、局部発振器225と、周波数変換器235とは、復路マイクロ波位相変調信号発生部を構成している。
【0023】
光ファイバ300は、高速光通信、深宇宙探査、または天文精密計測などを行うため、非常に離れた測定地点に設けられている基地局100とリモート局200とを、光通信可能に接続している。なお、リモート局200は、1つである必要は無く、複数存在していてもよい。
【0024】
[システム1Aの各部の動作]
基地局100において、制御部101は、基地局100とリモート局200との時刻同期の制御を行う。システム1Aの各部は、制御部101の制御に基づいて、高精度な時刻タイミング信号を生成する方法の各ステップを実行する。
すなわち、制御部101は、以下に述べるようにして伝送遅延を算出した後、時刻同期の制御として、伝送遅延だけ進めた時刻タイミング信号によりレーザ光を変調してリモート局同期用光信号を生成し、光ファイバ300を通してリモート局同期用光信号をリモート局200に供給するように、基地局100の各部を制御する。
【0025】
時刻タイミング信号生成部110は、1秒信号(1PPS信号)または1/10秒信号(10PPS信号)などの特定の周期の精密な時刻タイミング信号を生成し、生成した時刻タイミング信号をマイクロ波変調器130とタイミング比較部190とに供給する。
【0026】
マイクロ波発生器120は、第1搬送波周波数f1の第1基準マイクロ波信号を発生し、発生した第1基準マイクロ波信号をマイクロ波変調器130に供給する。実施の形態1において、「マイクロ波」とは、一般にマイクロ波と呼ばれる300MHz~300GHzの周波数範囲に限定されず、短波(3MHz~30MHz)、超短波(30MHz~300MHz)などの周波数範囲をも含むものとする。実施の形態1において、第1基準マイクロ波信号は、例えば、10MHz等の単一周波数の基準信号とすることができる。
【0027】
マイクロ波変調器130は、時刻タイミング信号生成部110において生成されたベースバンド信号としての時刻タイミング信号により、第1搬送波周波数f1の第1基準マイクロ波信号を位相変調し、マイクロ波位相変調信号(以下、「往路マイクロ波位相変調信号」と呼ぶ)を生成する。マイクロ波変調器130は、生成した往路マイクロ波位相変調信号を光強度変調器150に供給する。
【0028】
第1レーザ光源140は、波長λ1の第1レーザ光を光搬送波として生成し、生成した第1レーザ光を光強度変調器150に供給する。実施の形態1において、伝送遅延を測定する際にレーザ光の位相を用いないため、レーザ光の波長安定性は重要でない。基地局100からの第1レーザ光と後述するリモート局200からの第2レーザ光とを干渉させる必要はないため、第1レーザ光及び第2レーザ光は狭線幅である必要はない。
【0029】
光強度変調器150は、往路マイクロ波位相変調信号により第1レーザ光を光強度変調することで光強度変調信号(以下、「往路光強度変調信号」と呼ぶ)を生成し、生成した往路光強度変調信号を方向性結合器160の端子aに入力する。光強度変調とは、変調したい信号を光のパワーの強弱に変換する変調方式である。この光強度変調において、強度は振幅の2乗に比例する点が、振幅変調と異なる。
【0030】
方向性結合器160は、往路光強度変調信号と、リモート局200からの光強度変調信号(以下、「復路光強度変調信号」と呼ぶ)とを、進行方向の違いにより分離し、振り分けを行う。
【0031】
具体的には、方向性結合器160は、往路光強度変調信号を端子aから端子bに向けて通過させて光ファイバ300を通してリモート局200に供給すると共に、リモート局200からの復路光強度変調信号を端子bから端子cに向けて通過させて光電気変換器170に供給する。
【0032】
光電気変換器170は、リモート局200からの復路光強度変調信号を光電気変換し、復路光強度変調信号に含まれる復路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出し、抽出した復路マイクロ波位相変調信号を、フィルタ175を通してマイクロ波復調器180に供給する。なお、光電気変換器170は、基地局100からリモート局200に向かいつつも光ファイバ300の途中で反射し、方向性結合器160を通過した往路光強度変調信号の後方散乱成分をも光電気変換し、往路光強度変調信号に含まれる往路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出することがある。
【0033】
フィルタ175は、共振周波数fo=f2に設定されており、光電気変換器170とマイクロ波復調器180との間に配置されている。f2は、リモート局200において生成される復路マイクロ波位相変調信号の第2搬送波周波数である。フィルタ175は、基地局100からリモート局200に向かいつつも光ファイバ300の途中で反射した往路光強度変調信号の後方散乱成分に含まれている第1搬送波周波数f1の往路マイクロ波位相変調信号を除去すると共に、復路光強度変調信号から抽出された第2搬送波周波数f2の復路マイクロ波位相変調信号を通過させる。フィルタ175は、通過させた復路マイクロ波位相変調信号をマイクロ波復調器180に供給する。
【0034】
マイクロ波復調器180は、リモート局200から光ファイバ300を通り基地局100に到達した復路マイクロ波位相変調信号を復調することにより、基地局100~光ファイバ300~リモート局200~光ファイバ300~基地局100と往復した時刻タイミング信号(以下、「往復時刻タイミング信号」と呼ぶ)を抽出し、抽出した往復時刻タイミング信号をタイミング比較部190に供給する。
【0035】
タイミング比較部190は、時刻タイミング信号生成部110で生成された時刻タイミング信号と、マイクロ波復調器180において抽出された往復時刻タイミング信号とを比較し、往復遅延に相当するタイミング差Δtを求める。タイミング比較部190は、更にΔtの1/2を伝送遅延として算出し、伝送遅延を制御部101に供給する。
【0036】
リモート局200において、光ファイバ300を通して基地局100から供給された往路光強度変調信号は、方向性結合器260の端子bに入る。
方向性結合器260は、基地局100からの往路光強度変調信号と、リモート局200から基地局100に向かう復路光強度変調信号とを、進行方向の違いにより分離し、振り分けを行う。
具体的には、方向性結合器260は、基地局100からの往路光強度変調信号を端子bから端子cに向けて通過させ光電気変換器270に供給すると共に、リモート局200で生成された復路光強度位相変調信号を端子aから端子bに向けて通過させ基地局100に供給する。
【0037】
光電気変換器270は、往路光強度変調信号を光電気変換し、往路光強度変調信号に含まれる往路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出し、抽出した往路マイクロ波位相変調信号をフィルタ275に供給する。なお、光電気変換器270は、光ファイバ300の途中で反射し、方向性結合器260を通過した復路光強度変調信号の後方散乱成分をも光電気変換し、復路光強度変調信号に含まれる復路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出することがある。
【0038】
フィルタ275は、共振周波数fo=f1に設定されており、光電気変換器270とマイクロ波復調器280との間に配置されている。f1は、基地局100において生成される往路マイクロ波位相変調信号の第1搬送波周波数である。
フィルタ275は、リモート局200から基地局100に向かいつつも光ファイバ300の途中で反射した復路光強度変調信号の後方散乱成分に含まれている第2搬送波周波数f2の復路マイクロ波位相変調信号を除去すると共に、往路光強度変調信号から抽出された第1搬送波周波数f1の往路マイクロ波位相変調信号を通過させる。フィルタ275は、通過させた往路マイクロ波位相変調信号を周波数変換器235に供給する。
【0039】
局部発振器225は、周波数Δfの局部発振信号を生成し、周波数変換器235に供給する。周波数Δfは、第1搬送波周波数f1を第2搬送波周波数f2に変換するのに必要な局部発振信号の周波数である。
周波数変換器235は、周波数Δfの局部発振信号を用いて周波数変換を行い、第1搬送波周波数f1の往路マイクロ波位相変調信号から、第2搬送波周波数f2の復路マイクロ波位相変調信号を生成する。周波数変換器235は、生成した復路マイクロ波位相変調信号をフィルタ295に供給する。ここで、局部発振器225と周波数変換器235とが、復路マイクロ波位相変調信号発生部を構成している。
【0040】
フィルタ295は、共振周波数fo=f2に設定されており、第2搬送波周波数f2以外の周波数の成分を除去すると共に、第2搬送波周波数f2の復路マイクロ波位相変調信号を通過させる。フィルタ295は、復路マイクロ波位相変調信号を光強度変調器250に供給する。
【0041】
第2レーザ光源240は、第1レーザ光と同じ波長λ1の第2レーザ光を光搬送波として生成し、生成した第2レーザ光を光強度変調器250に供給する。実施の形態1において、伝送遅延を測定する際にレーザ光の位相を用いないため、レーザ光の波長安定性は重要でない。
【0042】
光強度変調器250は、第2搬送波周波数f2の復路マイクロ波位相変調信号により第2レーザ光を光強度変調することで、復路光強度変調信号を生成する。光強度変調器250は、生成した復路光強度変調信号を方向性結合器260の端子aに入力する。
【0043】
方向性結合器260は、復路光強度変調信号と往路光強度変調信号とを進行方向の違いにより分離しており、復路光強度変調信号を図1中の端子aから端子bに向けて通過させ、光ファイバ300を通して基地局100に供給する。
【0044】
以下、マイクロ波変調器130よる往路マイクロ波位相変調信号の生成について、図2を参照して説明する。図2は、実施の形態1における往路マイクロ波位相変調信号の生成の様子を示すタイミングチャートである。
【0045】
図2の(a)は、時刻タイミング信号生成部110において生成される1秒信号などの時刻タイミング信号の波形を示している。図2の(b)は、マイクロ波発生器120が生成する第1基準マイクロ波信号の波形を示している。図2の(c)は、マイクロ波変調器130において、時刻タイミング信号により第1基準マイクロ波信号を位相変調して生成される往路マイクロ波位相変調信号の波形を示している。
図2の(c)に示す往路マイクロ波位相変調信号は、図2の(b)に示す第1基準マイクロ波信号を搬送波として、図2の(a)に示す時刻タイミング信号の波形変化タイミングで第1基準マイクロ波信号の位相が変化する状態になっており、振幅に変化は生じていないことがわかる。
【0046】
以下、同期検波により往復時刻タイミング信号を抽出し、伝送遅延を算出する様子を図3により説明する。図3は、実施の形態1における伝送遅延の算出の様子を示すタイミングチャートである。
【0047】
図3の(a)は、復路光強度変調信号が光電気変換器170において光電気変換されて生成された復路マイクロ波位相変調信号の波形を示している。図3の(b)は、第1基準マイクロ波信号の波形を示している。図3の(c)は、第1基準マイクロ波信号(図3の(b))を基準搬送波として使用し、復路マイクロ波位相変調信号(図3の(a))を同期検波することにより抽出された往復時刻タイミング信号の波形を示している。図3の(d)は、時刻タイミング信号生成部110からの時刻タイミング信号の波形を示している。
【0048】
基地局100からリモート局200に向けた往路マイクロ波位相変調信号が、復路マイクロ波位相変調信号としてリモート局200から基地局100に返送されてくるため、図3の(c)と(d)とにおけるタイミング差Δtは、光ファイバ300を往復したことによる往復遅延に相当する。
よって、タイミング比較部190は、マイクロ波変調器130において光強度変調に使用した時刻タイミング信号と、マイクロ波復調器180において抽出された往復時刻タイミング信号とを比較し、往復遅延に相当するタイミング差Δtを求める。更に、タイミング比較部190は、このΔtの半分のΔt/2を、光ファイバ300を通して基地局100からリモート局200までに生じる伝送遅延として算出して、制御部101に通知する。
【0049】
[システム1Aにおける各部の処理手順]
以下、図4のフローチャートを参照して、システム1Aにおける各部の処理手順、すなわち、時刻タイミング信号を生成する方法の手順を説明する。図4は、実施の形態1に係るシステム1Aにおける各部の処理手順を示すフローチャートである。
このフローチャートにおいて、基地局100はステップS100~S109の処理を行い、リモート局200はステップS201~S207の処理を行う。
なお、図4のフローチャートは、各種の信号を生成または処理する際の信号の因果関係または関連を示したものであり、処理の時刻または順番を厳密に示したものではない。また、幾つかの処理を同時または重複したタイミング、あるいは順番を入れ替えて実行することが可能である。
【0050】
まず、ステップS100において、時刻タイミング信号生成部110は時刻タイミング信号を生成し、生成した時刻タイミング信号をマイクロ波変調器130とタイミング比較部190とに供給する。マイクロ波発生器120は第1搬送波周波数f1の第1基準マイクロ波信号を発生し、発生した第1基準マイクロ波信号をマイクロ波変調器130に供給する。第1レーザ光源140は波長λ1の第1レーザ光を生成し、生成した第1レーザ光を光強度変調器150に供給する。この後、処理はステップS101へと進む。
【0051】
ステップS101において、マイクロ波変調器130は、第1搬送波周波数f1の第1基準マイクロ波信号を時刻タイミング信号により位相変調して往路マイクロ波位相変調信号を生成し、生成した往路マイクロ波位相変調信号を光強度変調器150に供給する。この後、処理はステップS102へと進む。
【0052】
ステップS102において、光強度変調器150は、往路マイクロ波位相変調信号により、第1レーザ光を光強度変調し、往路光強度変調信号を生成する。光強度変調器150は、生成した往路光強度変調信号を方向性結合器160の端子aに入力する。この後、処理はステップS103へと進む。
【0053】
ステップS103において、方向性結合器160は、端子aに入力された往路光強度変調信号を端子bに向けて通過させ、光ファイバ300を通してリモート局200に供給する。この後、処理は、リモート局200におけるステップS201に移る。
【0054】
ステップS201において、リモート局200は、光ファイバ300を通して基地局100から往路光強度変調信号の供給を受ける。この後、処理はステップS202へと進む。
【0055】
ステップS202において、方向性結合器260は、基地局100からの往路光強度変調信号を、信号の進行方向の違いにより他の信号から分離し、往路光強度変調信号を光電気変換器270に供給する。方向性結合器260を通る他の信号としては、後述する復路光強度変調信号が存在する。この後、処理はステップS203へと進む。
【0056】
ステップS203において、光電気変換器270は、往路光強度変調信号を光電気変換し、往路マイクロ波位相変調信号を抽出し、抽出した往路マイクロ波位相変調信号をフィルタ275に供給する。なお、光電気変換器270は、光ファイバ300の途中で反射する復路光強度変調信号の後方散乱成分をも光電気変換することがあり、復路光強度変調信号に含まれる復路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出することがある。
このため、共振周波数fo=f1に設定されたフィルタ275が、復路光強度変調信号の後方散乱成分に含まれている第2搬送波周波数f2の復路マイクロ波位相変調信号を除去し、往路光強度変調信号から抽出された第1搬送波周波数f1の往路マイクロ波位相変調信号を通過させる。この後、処理はステップS204へと進む。
【0057】
ステップS204において、周波数変換器235は、周波数Δfの局部発振信号を用いて、第1搬送波周波数f1の往路マイクロ波位相変調信号を周波数変換し、第2搬送波周波数f2の復路マイクロ波位相変調信号を生成する。周波数変換器235は、生成した復路マイクロ波位相変調信号をフィルタ295に供給する。
なお、局部発振器225は、局部発振信号の周波数Δfを保っていればよく、位相についての同期は必要ない。
フィルタ295は、共振周波数fo=f2に設定されており、周波数f2以外の周波数の成分を除去すると共に、第2搬送波周波数f2の復路マイクロ波位相変調信号を通過させ、復路マイクロ波位相変調信号を光強度変調器250に供給する。この後、処理はステップS205へと進む。
【0058】
ステップS205において、光強度変調器250は、復路マイクロ波位相変調信号により波長λ1の第2レーザ光を光強度変調することで、復路光強度変調信号を生成する。光強度変調器250は、生成した復路光強度変調信号を方向性結合器260の端子aに入力する。この後、処理はステップS206へと進む。
【0059】
ステップS206において、方向性結合器260は、端子aに入力された復路光強度変調信号を端子bに向けて通過させ、光ファイバ300を通して基地局100に供給する。この後、処理は、基地局100におけるステップS104に移る。
【0060】
ステップS104において、方向性結合器160は、信号の進行方向の違いによりそれぞれの信号を分離し、リモート局200からの復路光強度変調信号を端子bから端子cに向けて通過させ、光電気変換器170に供給する。この後、処理はステップS105へと進む。
【0061】
ステップS105において、光電気変換器170は、復路光強度変調信号を光電気変換し、復路光強度変調信号に含まれる復路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出する。なお、光電気変換器170は、基地局100からリモート局200に向かいつつも光ファイバ300の途中で反射し、方向性結合器160を通過した往路光強度変調信号の後方散乱成分をも光電気変換し、往路光強度変調信号に含まれる往路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出することがある。
このため、共振周波数fo=f2に設定されたフィルタ175が、往路光強度変調信号の後方散乱成分に含まれている第1搬送波周波数f1の往路マイクロ波位相変調信号を除去し、復路光強度変調信号から抽出された第2搬送波周波数f2の復路マイクロ波位相変調信号を通過させる。フィルタ175は、復路マイクロ波位相変調信号をマイクロ波復調器180に供給する。この後、処理はステップS106へと進む。
【0062】
ステップS106において、マイクロ波復調器180は、復路マイクロ波位相変調信号を復調し、基地局100~光ファイバ300~リモート局200~光ファイバ300~基地局100と往復した往復時刻タイミング信号を抽出し、タイミング比較部190に供給する。この後、処理はステップS107へと進む。
【0063】
ステップS107において、タイミング比較部190は、時刻タイミング信号生成部110からの時刻タイミング信号と、マイクロ波復調器180において抽出された往復時刻タイミング信号とを比較し、往復遅延に相当するタイミング差Δtを求める。タイミング比較部190は、更に、Δtの1/2を伝送遅延として算出する。この結果、基地局100とリモート局200との間において光ファイバ300で伝送される光信号に生じる伝送遅延を正確に測定することが可能になる。この後、処理はステップS108へと進む。
【0064】
ステップS108において、制御部101は、伝送遅延分だけ時刻を進めた時刻タイミング信号(以下、「リモート局用の時刻タイミング信号」と呼ぶ)を生成するよう、時刻タイミング信号生成部110を制御する。
なお、具体的には、時刻タイミング信号生成部110は、伝送遅延分だけ時刻を進めた時刻タイミング信号を生成する場合、((時刻タイミング信号の1パルス分の時間)-(伝送遅延))に相当する遅延を時刻タイミング信号に与えるようにする。実際には、図示しない外部の原子時計からの1PPS信号や基準信号を時刻タイミング信号生成部110に入力し、時刻タイミング信号生成部110において伝送遅延を補正した時刻タイミング信号を生成する。この場合、時刻タイミング信号生成部110は、制御部101により遅延量を制御される遅延回路として作用する。この後、処理はステップS109へと進む。
【0065】
ステップS109において、制御部101は、光ファイバ300を通してリモート局同期用光信号をリモート局200に供給するよう制御する。このリモート局同期用光信号については、マイクロ波位相変調と光強度変調以外の変調であってもよい。この後、処理は、リモート局200のステップS207に移る。
【0066】
ステップS207において、リモート局200は、光ファイバ300を通して受信したリモート局同期用光信号からリモート局用の時刻タイミング信号を抽出し、リモート局用の時刻タイミング信号によってリモート局200内の各部のタイミングを制御する。
【0067】
以上の一連の処理により、基地局100とリモート局200との間において光ファイバ300を介して伝送される光信号に生じる伝送遅延を正確に測定したうえで、基地局100とリモート局200との間において時刻を高精度に同期させた状態にすることができる。
【0068】
[システム1Aの特徴]
実施の形態1のシステム1Aにおいて、基地局100では、第1搬送波周波数f1の往路マイクロ波位相変調信号により波長λ1の第1レーザ光を光強度変調して往路光強度変調信号を生成し、この往路光強度変調信号をリモート局200に供給する。
一方、リモート局200では、往路マイクロ波位相変調信号の第1搬送波周波数f1を第2搬送波周波数f2にシフトすることで復路マイクロ波位相変調信号を生成し、復路マイクロ波位相変調信号により波長λ1の第2レーザ光を光強度変調して復路光強度変調信号を生成し、この復路光強度変調信号を基地局100に供給する。
【0069】
往路マイクロ波位相変調信号と復路マイクロ波位相変調信号とを異なる第1搬送波周波数f1及びf2に設定しているため、基地局100において、復路マイクロ波位相変調信号を、往路マイクロ波位相変調信号とその後方散乱成分とから分離することができる。同様に、リモート局200において、往路マイクロ波位相変調信号を、復路マイクロ波位相変調信号とその後方散乱成分とから分離することができる。
【0070】
往路マイクロ波位相変調信号と復路マイクロ波位相変調信号とを第1搬送波周波数f1及びf2の違いにより分離することができるため、往路光強度変調信号と復路光強度変調信号とで同一波長λ1のレーザ光を用いることが可能になる。この結果、光ファイバ300において波長分散の影響を受けることがなく、伝送遅延を正確に求めたうえで正確な時刻を伝送することができる。
【0071】
実施の形態1のシステム1Aにおいて、レーザ光の位相をパラメータとして用いていないため、第1レーザ光源140及び第2レーザ光源240において生成されるレーザ光の波長安定性は重要でない。よって、波長安定性及び狭線幅発振特性等に特別に配慮された高価なレーザ光源を用いる必要はない。
【0072】
実施の形態1のシステム1Aにおいて、光信号として往路光強度変調信号と復路光強度変調信号とを使用しているため、光電気変換器170及び270により光信号の強度を単純に電気信号に変換するだけで、往路マイクロ波位相変調信号と復路マイクロ波位相変調信号とを抽出することができる。このため、実施の形態1のシステム1Aでは、光位相変調の場合のような複雑な回路構成及び厳密な温度補償等が不要であり、高精度な処理を容易に実現することができる。
【0073】
実施の形態1のシステム1Aにおいて、基地局100からリモート局200に対して時刻タイミング信号の伝送のみでよい場合、リモート局200の局部発振器225は、基地局100から送られた往路マイクロ波位相変調信号の搬送波に位相同期している必要はなく、自走状態で発振していればよい。
一方、リモート局200において、局部発振器225の局部発振信号を、基地局100から送られた往路マイクロ波位相変調信号の搬送波に位相同期させた場合、基地局100からリモート局200に対して時刻タイミング信号の伝送と周波数情報の伝送とを行うことが可能である。
【0074】
実施の形態1では、周波数変換器235において、往路マイクロ波位相変調信号の第1搬送波周波数f1を第2搬送波周波数f2にシフトすることで復路マイクロ波位相変調信号を生成しており、システム1Aを簡素に構成することができる。
【0075】
実施の形態2.
次に、本開示の実施の形態2におけるシステム1Bの構成について、図5を参照して説明する。図5は、実施の形態2に係るシステム1Bの構成を示すブロック図である。
図5に示すシステム1Bにおいて、図1に示した実施の形態1に係るシステム1Aと同一物には同一番号を付している。
【0076】
ここで、実施の形態2におけるシステム1Bの構成及び処理について、実施の形態1におけるシステム1Aと異なる部分を中心にして説明する。
【0077】
システム1Bには、システム1Aの局部発振器225及び周波数変換器235の代わりに、マイクロ波発生器220と、マイクロ波変調器230と、マイクロ波復調器280とが設けられている。ここで、マイクロ波発生器220とマイクロ波変調器230と、マイクロ波復調器280とが、復路マイクロ波位相変調信号発生部を構成している。
【0078】
マイクロ波復調器280は、基地局100からリモート局200に供給された往路マイクロ波位相変調信号を復調し、時刻タイミング信号を抽出する。マイクロ波復調器280は、抽出した時刻タイミング信号をマイクロ波変調器230に供給する。
マイクロ波発生器220は、第2搬送波周波数f2の第2基準マイクロ波信号を生成し、生成した第2基準マイクロ波信号をマイクロ波変調器230に供給する。
マイクロ波変調器230は、マイクロ波復調器280で抽出された時刻タイミング信号により、第2搬送波周波数f2の第2基準マイクロ波信号を位相変調して、復路マイクロ波位相変調信号を生成する。マイクロ波変調器230は、復路マイクロ波位相変調信号を光強度変調器250に供給する。
【0079】
システム1Bにおいて、基地局100からリモート局200に対して時刻タイミング信号の伝送のみでよい場合、リモート局200のマイクロ波発生器220は、基地局100から送られた往路マイクロ波位相変調信号の搬送波に位相同期している必要はなく、自走状態で発振していればよい。
【0080】
システム1Bでは、往路マイクロ波位相変調信号から時刻タイミング信号を抽出し、抽出した時刻タイミング信号と、新たに生成した第2基準マイクロ波信号とから復路マイクロ波位相変調信号を新たに生成しているため、復路マイクロ波位相変調信号に含まれる余分な周波数成分、すなわちスプリアス成分を極限まで抑えることが可能になる。
【0081】
実施の形態3.
次に、本開示の実施の形態3におけるシステム1Cの構成について、図6を参照して説明する。図6は、実施の形態3に係るシステム1Cの構成を示すブロック図である。なお、図6に示すシステム1Cにおいて、図1に示した実施の形態1に係るシステム1A及び図5に示した実施の形態2に係るシステム1Bと同一物には同一番号を付している。
【0082】
システム1Cは、実施の形態2のシステム1Bを改良することで、基地局100からリモート局200に対して時刻タイミング信号に加えて周波数情報も伝送することが可能に構成されている。ここで、実施の形態3におけるシステム1Cの構成及び処理について、実施の形態1におけるシステム1Aまたは実施の形態2におけるシステム1Bと異なる部分を中心にして説明する。
【0083】
システム1Cにおいて、基地局100には、位相比較部195が更に設けられている。リモート局200には、システム1Bと同様に、マイクロ波発生器220と、マイクロ波変調器230と、マイクロ波復調器280とが設けられている。
【0084】
マイクロ波復調器280は、基地局100からリモート局200に供給された往路マイクロ波位相変調信号を復調して時刻タイミング信号を抽出するのに加え、往路マイクロ波位相変調信号の搬送波である第1基準マイクロ波信号を再生してマイクロ波発生器220に供給する。
【0085】
マイクロ波発生器220は、マイクロ波復調器280で再生された第1基準マイクロ波信号を位相同期信号として利用し、第2搬送波周波数f2の第2基準マイクロ波信号を、第1基準マイクロ波信号に位相同期した状態で生成する。
【0086】
マイクロ波変調器230は、マイクロ波復調器280で抽出された時刻タイミング信号により、第2基準マイクロ波信号を位相変調して、復路マイクロ波位相変調信号を生成する。マイクロ波変調器230は、復路マイクロ波位相変調信号を光強度変調器250に供給する。
ここで、マイクロ波発生器220からの第2基準マイクロ波信号がリモート局200での第1基準マイクロ波信号に位相同期した状態であるため、マイクロ波変調器230で得られる復路マイクロ波位相変調信号も、リモート局200での第1基準マイクロ波信号に位相同期した状態になっている。
【0087】
光強度変調器250は、リモート局200での第1基準マイクロ波信号に位相同期した状態の復路マイクロ波位相変調信号により第2レーザ光を光強度変調することで、復路光強度変調信号を生成する。光強度変調器250は、生成した復路光強度変調信号を方向性結合器260の端子aに入力する。
方向性結合器260は、復路光強度変調信号を図1中の端子aから端子bに向けて通過させ、光ファイバ300を通して基地局100に供給する。
【0088】
マイクロ波発生器120は、第1搬送波周波数f1の第1基準マイクロ波信号を発生するのに加え、第2搬送波周波数f2の第2基準マイクロ波信号を発生する。マイクロ波発生器120は、第1基準マイクロ波信号をマイクロ波変調器130に供給し、第2基準マイクロ波信号を位相比較部195に供給する。ここで、第2基準マイクロ波信号は、マイクロ波発生器220が発生する第2搬送波周波数f2の第2基準マイクロ波信号と同じである。
【0089】
位相比較部195は、フィルタ175を通過したリモート局200からの第2搬送波周波数f2の復路マイクロ波位相変調信号と、マイクロ波発生器120からの第2搬送波周波数f2の第2基準マイクロ波信号との位相を比較する。
復路マイクロ波位相変調信号は、リモート局200において往路マイクロ波位相変調信号から再生された第1基準マイクロ波信号に位相同期するように生成されている。
このため、位相比較部195は、基地局100~光ファイバ300~リモート局200~光ファイバ300~基地局100と往復したことによる位相変化量(往復位相変化量)Δθを検出することができる。
位相比較部195は、更にΔθの1/2を、光ファイバ300を通して基地局100からリモート局200までに生じる伝送位相変化量として算出し、伝送位相変化量を制御部101に供給する。
【0090】
制御部101は、時刻同期の制御として、伝送遅延分を進めた時刻タイミング信号を時刻タイミング信号生成部110で生成し、伝送位相変化量分の位相を進めた第1基準マイクロ波信号をマイクロ波発生器120で生成し、伝送遅延分を進めた時刻タイミング信号と伝送位相変化量分の位相を進めた第1基準マイクロ波信号とを用いてマイクロ波変調器130で生成したマイクロ波位相変調信号によりレーザ光を変調してリモート局同期用光信号を生成し、光ファイバ300を通してリモート局同期用光信号をリモート局200に供給するように、基地局100の各部を制御する。
なお、具体的には、時刻タイミング信号生成部110は、伝送遅延分だけ時刻を進めた時刻タイミング信号を生成する場合、制御部101の制御に基づいて、((時刻タイミング信号の1パルス分の時間)-(伝送遅延))に相当する遅延を時刻タイミング信号に与えるようにする。また、マイクロ波発生器120は、伝送位相変化量だけ位相を進めた第1基準マイクロ波信号を生成する場合、制御部101の制御に基づいて、(360°-伝送位相変化量)または(-伝送位相変化量)の位相とした第1基準マイクロ波信号を生成する。
【0091】
以上の一連の処理により、基地局100とリモート局200との間において光ファイバ300を介して伝送される光信号に生じる伝送遅延と伝送位相変化量とを正確に測定することにより、基地局100からリモート局200に対して時刻タイミング信号に加えて周波数情報も伝送することが可能になる。
【0092】
[実施の形態により得られる効果]
基地局100からリモート局200に光ファイバ300を通して伝送する時刻タイミング信号を生成する方法及びシステムの実施の形態により得られる効果は以下の通りである。
【0093】
この開示では、基地局100において、第1搬送波周波数f1の第1基準マイクロ波信号を時刻タイミング信号により位相変調して往路マイクロ波位相変調信号を生成し、波長λ1の第1レーザ光を往路マイクロ波位相変調信号により光強度変調して往路光強度変調信号を生成し、光ファイバ300を通して基地局100から往路光強度変調信号をリモート局200に伝送し、リモート局200において、基地局100から伝送された往路光強度変調信号を光電気変換して往路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出し、往路マイクロ波位相変調信号を用いて第1搬送波周波数f1とは異なる第2搬送波周波数f2の復路マイクロ波位相変調信号を生成し、波長λ1の第2レーザ光を復路マイクロ波位相変調信号により光強度変調して復路光強度変調信号を生成し、光ファイバ300を通してリモート局200から基地局100へ復路光強度変調信号を伝送し、基地局100において、復路光強度変調信号を光電気変換して復路マイクロ波位相変調信号を電気的に抽出し、復路マイクロ波位相変調信号を復調して往復時刻タイミング信号を抽出し、時刻タイミング信号と往復時刻タイミング信号とのタイミング差から伝送遅延を求め、時刻タイミング信号を伝送遅延だけ進めてリモート局200用の時刻タイミング信号を生成する。
これにより、以上の方法を用いて生成された高精度な時刻タイミング信号を含むリモート局同期用光信号を、基地局100からリモート局200に伝送することができるため、離れた局同士において時刻を高精度に同期させることができる。
【0094】
この開示において、リモート局200において、復路マイクロ波位相変調信号を、往路マイクロ波位相変調信号から再生された第1基準マイクロ波信号に位相同期するように生成することで、基地局100~光ファイバ300~リモート局200~光ファイバ300~基地局100と往復したことによる位相変化量(往復位相変化量)Δθを基地局100の位相比較部195が検出できるようになる。このように基地局100とリモート局200との間において光ファイバ300を介して伝送される光信号に生じる伝送遅延と伝送位相変化量とを正確に測定することにより、基地局100からリモート局200に対して時刻タイミング信号に加えて周波数情報も伝送することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示は、たとえば、離れた複数の局間において時刻を高精度に同期させた状態にすることができる。このため、超高速光通信、深宇宙探査、宇宙・天文精密計測、及び各種精密計測分野への本開示の応用が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1A 実施の形態1のシステム、1B 実施の形態2のシステム、1C 実施の形態3のシステム、100 基地局、101 制御部、110 時刻タイミング信号生成部、120 マイクロ波発生器、130 マイクロ波変調器、140 第1レーザ光源、150 光強度変調器、160 方向性結合器、170 光電気変換器、175 フィルタ、180 マイクロ波復調器、190 タイミング比較部、195 位相比較部、200 リモート局、220 マイクロ波発生器、225 局部発振器、230 マイクロ波変調器、235 周波数変換器、240 第2レーザ光源、250 光強度変調器、260 方向性結合器、270 光電気変換器、275 フィルタ、280 マイクロ波復調器、295 フィルタ、300 光ファイバ、f1 第1搬送波周波数、f2 第2搬送波周波数、λ1 第1レーザ光及び第2レーザ光の波長。
図1
図2
図3
図4
図5
図6