(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150526
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】表面処理窒化ホウ素、表面処理窒化ホウ素の製造方法、樹脂組成物、放熱基板
(51)【国際特許分類】
C08L 101/02 20060101AFI20231005BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20231005BHJP
C01B 21/064 20060101ALI20231005BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L101/02
C08K9/04
C01B21/064 M
C08K3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059675
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】真川 敦嗣
(72)【発明者】
【氏名】浜坂 剛
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BD121
4J002BG021
4J002CC031
4J002CD001
4J002CD051
4J002CD071
4J002CD141
4J002CF161
4J002CM041
4J002CP031
4J002DF016
4J002DK006
4J002FB086
4J002FD206
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】フィラーとして使用した場合に、樹脂組成物の粘度上昇を抑制できる表面処理窒化ホウ素、該窒化ホウ素の製造方法、該窒化ホウ素と樹脂とを含む樹脂組成物、該樹脂組成物からなる放熱基板、を提供する。
【解決手段】共役ジエン化合物または加熱により共役ジエンを生じる化合物により表面処理された、表面処理窒化ホウ素。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン化合物または加熱により共役ジエンを生じる化合物により表面処理された、表面処理窒化ホウ素。
【請求項2】
充填剤として使用される、請求項1に記載の表面処理窒化ホウ素。
【請求項3】
窒化ホウ素と共役ジエン化合物または加熱により共役ジエンを生じる化合物とを加熱下で反応させる工程を備える、表面処理窒化ホウ素の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の表面処理窒化ホウ素と、樹脂とを含む、樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4の樹脂組成物からなる、放熱基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理窒化ホウ素、表面処理窒化ホウ素の製造方法、樹脂組成物、および、放熱基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、小型化が急速に進んでいる。それに伴い、半導体デバイスのパワー密度上昇により、発生する熱のコントロールが困難になっている。そのため、実装部品・周囲部品に熱伝導性材料が用いられている。
従来から、窒化ホウ素等の高熱伝導化合物が樹脂の添加剤(フィラー)としてよく利用されている。一般的に、熱伝導性フィラーの濃度が高いほど、得られる樹脂組成物の熱伝導率は高くなる。しかしながら、その樹脂組成物の粘度も、フィラー濃度に正比例して増加する。そのため、樹脂組成物中のフィラー配合量が一定値を超えると、材料の加工上の問題を生じる場合がある。
【0003】
そこで、フィラーを表面処理剤で改質(いわゆる表面処理)して樹脂との親和性を向上させ、フィラーを樹脂に充填した際の粘度上昇を抑制する方法が知られている。
窒化ホウ素粒子を表面処理剤で改質する方法としては、例えば、フェニレンジイソシアネートで表面処理する方法(特許文献1)、シランカップリング剤で表面処理する方法(非特許文献1)、アルミネートカップリング剤およびジルコネートカップリング剤等で表面処理する方法(特許文献2)、芳香族酸ハロゲン化物で表面処理する方法(特許文献3)、縮環構造を有する芳香族炭化水素化合物で表面修飾する方法(特許文献4)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-192500号公報
【特許文献2】特開2006-257392号公報
【特許文献3】特開2009-221039号公報
【特許文献4】WO2019/013323
【非特許文献1】花ヶ崎裕洋、他2名“表面処理したBNフィラーの放熱性樹脂用材料としての特性に関する調査研究”、広島県立西部工業技術センター研究報告、49、70-73(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~3、非特許文献1記載の表面処理剤は、粒子表面の-NH-、-NH2、―OH基等の反応基と反応し結合を形成するが、窒化ホウ素粒子表面の反応基は粒子の端面にしか存在せず、比表面積の大部分を占める平面部分には反応基が存在しないため、粒子の表面改質としては効果が不十分であった。
上記実情を鑑み、本発明の課題は、フィラーとして使用した場合に、樹脂組成物の粘度上昇を抑制できる表面処理窒化ホウ素、該窒化ホウ素の製造方法、該窒化ホウ素と樹脂とを含む樹脂組成物、該樹脂組成物からなる放熱基板、を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の発明を完成させた。
【0007】
[1] 共役ジエン化合物または加熱により共役ジエンを生じる化合物により表面処理された、表面処理窒化ホウ素。
[2] 充填剤として使用される、[1]に記載の表面処理窒化ホウ素。
[3] 窒化ホウ素と共役ジエン化合物または加熱により共役ジエンを生じる化合物とを加熱下で反応させる工程を備える、表面処理窒化ホウ素の製造方法。
[4] [1]または[2]に記載の表面処理窒化ホウ素と、樹脂とを含む、樹脂組成物。
[5] [4]の樹脂組成物からなる、放熱基板。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表面処理窒化ホウ素によれば、樹脂のフィラーとして用いた場合、フィラーを含む樹脂組成物の粘度上昇を抑制することができる。また、樹脂組成物中におけるフィラーの含有量を高めることが可能となり、該樹脂組成物で形成される放熱基板の放熱性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】h―BNの平面部分と、共役ジエンとが共役付加して結合する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、実施の形態に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【0011】
<表面処理窒化ホウ素>
本発明の表面処理窒化ホウ素は、共役ジエン化合物または加熱により共役ジエンを生じる化合物により、窒化ホウ素を表面処理したものである。
【0012】
(窒化ホウ素)
本発明において、窒化ホウ素とは、常圧安定相である六方晶窒化ホウ素(h-BN)と、高圧安定相である立方晶窒化ホウ素(c-BN)があるが、平面部分の表面処理ができるという効果を最大限に発揮すべく、窒化ホウ素は、六方晶窒化ホウ素(h-BN)であることが好ましい。
窒化ホウ素は、特に限定されず公知の物を制限なく使うことが出来る。例えば、公知の製造方法に基づき製造した窒化ホウ素を使用してもよい。また、フィラー用窒化ホウ素として一般的に市販されているものを使用してもよい。
窒化ホウ素の粒子形状は、特に制限はされず、鱗片状、平板上、球形状、立方体状、不定形状のいずれであってもよく、またこれらの形状の粒子(一次粒子)が凝集して形成された二次粒子であってもよく、その二次粒子の形状は特に制限されない。さらに窒化ホウ素は、一次粒子と二次粒子の混合物であってもよい。
窒化ホウ素の一次粒子または二次粒子の大きさ(メジアン径、D50)は、特に限定されないが、樹脂組成物の加工性の観点から好ましくは0.05~500μm、より好ましくは0.1~300μm、さらに好ましくは0.1~100μmである。
窒化ホウ素の大きさは、レーザー回折/散乱式の粒度分布測定装置で測定して求めることが出来る。
【0013】
(共役ジエン化合物)
共役ジエンとは、1つの単結合によって二重結合が隔てられた共役したジエンであり、共役ジエン化合物とは、この共役ジエン骨格を少なくとも1つ含む化合物である。共役ジエン化合物としては、シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、イソインデン、ソルビン酸、ソルビン酸エチル、α-テルピネン、2,4-ヘキサジエナール、1,3-ブタジエン、1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、イソプレン、ミルセン、ダニシェフスキージエン(1-メトキシ-3-(トリメチルシリルオキシ)-1,3-ブタジエン)、β-カロテン、ビタミンA等がある。
【0014】
(加熱により共役ジエンを生じる化合物)
また、加熱により共役ジエンを生成しうる化合物としては、ジシクロペンタジエン、インデン、3-イソクロマノン、ベンゾシクロブテン等がある。
【0015】
(表面処理された)
「表面処理された」とは、窒化ホウ素の表面の少なくとも一部に、共役ジエンに由来する有機物が結合している状態を意味する。結合は、共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合など、いずれの結合であってもよいが、共有結合であることが好ましい。表面処理は、窒化ホウ素表面と、共役ジエンの重合体が結合している状態でもよい。また、表面処理は、窒化ホウ素表面へ物理・化学吸着した有機物が分子間相互作用によって自発的に集合して薄膜層を形成するようになされてもよい。なお、表面処理は、窒化ホウ素表面の一部のみであっても、全体であってもよい。
【0016】
(窒化ホウ素の表面処理の難しさ)
窒化ホウ素には、常圧安定相である六方晶窒化ホウ素と、高圧安定相である立方晶窒化ホウ素があり、h-BN、c-BNと呼び分けられる。h-BNは,BとNが交互に結合した平面六員環の黒鉛型構造で,平面は層状に重なっている。
h-BNの平面部分には、BとNで構成されたπ共役平面が広がっているため、官能基がない。端面には、平面構造の終点となるので、-OH基、-NH2基、-NH-基がある。表面の大部分は平面部分であるため、h-BNには-OH基、-NH2基、-NH-基が少なく、一般的な表面処理剤で処理するのは難しかった。
【0017】
上記したように、窒化ホウ素をフィラーとして使用する場合、その表面を処理して樹脂との親和性を向上させることが求められている。本発明者らは、窒化ホウ素の樹脂への親和性を向上させるべく鋭意検討し、窒化ホウ素の平面部分に対して表面処理ができれば、窒化ホウ素の表面積の大部分を表面処理でき、これにより、樹脂への親和性を大きく向上できるのではないかと考え、さらに鋭意検討を続け、本発明を完成させた。
【0018】
本発明者らの検討によると、詳細な原理は解明できていないが、窒化ホウ素表面にあるN原子とB原子が共役ジエン部位に共役付加し、結合が生じる(ヘテロ―ディールズアルダー型)ことで、共役ジエンと窒化ホウ素の平面部分との結合が生じていると推察される(
図1に、h―BNの平面部分と、共役ジエンとが共役付加して結合する様子を示す。)。
【0019】
これにより、表面処理されたフィラー界面と樹脂との親和性が向上し、樹脂組成物の粘度が未処理のものと比べ低下する。従来法は、-NH-、-NH2、―OH基等の反応基と反応し結合を形成するが、本方法は、表面処理剤は必ずしもそれら反応基は必要とせず、窒化ホウ素の平面部分とも結合しうるものである。
【0020】
(表面処理窒化ホウ素の用途)
本発明の表面処理窒化ホウ素は、上記したようにその平面部分が表面処理さているので、樹脂との親和性が向上している。よって、樹脂の充填剤(フィラー)として好適に用いることができる。
【0021】
<表面処理窒化ホウ素の製造方法>
表面処理窒化ホウ素の製造方法は、窒化ホウ素と共役ジエン化合物または加熱により共役ジエンを生じる化合物とを加熱下で反応させる工程を備える。
上記工程は、窒化ホウ素と共役ジエン化合物(または加熱により共役ジエンを生じる化合物)とからなるスラリー状の混合物を撹拌して実施されるが、共役ジエン化合物(または加熱により共役ジエンを生じる化合物)が固体である場合等、混合物の流動性が無いため撹拌の操作性が悪くなり、さらに、共役ジエン化合物(または加熱により共役ジエンを生じる化合物)と窒化ホウ素とが均一に分散されず、反応効率が低下する。上記の操作性、反応効率の観点から、有機溶媒(例えば、トルエン、キシレン、デカン等)を加えても良い。また、高価な共役ジエン化合物(または加熱により共役ジエンを生じる化合物)を使用する場合、経済性の観点から上記有機溶媒を加えてもよい。
加熱温度は、好ましくは80℃~250℃であり、より好ましくは90℃~200℃である。80℃以上とすることで、反応を効率的に進めることができ、250℃以下とすることで、各成分の分解を防ぎ、エネルギー効率を向上できる。なお、加熱により共役ジエンを生じる化合物を使用する場合は、加熱温度の下限を120℃以上とすることが好ましく、140℃以上とすることがより好ましい。
【0022】
加熱下での反応時間は、特に限定されないが、30分~10時間とすることが好ましく、1時間~7時間がより好ましく、2時間~5時間がさらに好ましい。反応は、攪拌下で行うことが好ましい。
【0023】
反応後、放冷した後、ろ過(例えば、ブフナー)により単離し、有機溶媒(例えば、へプタン、エタノール等)により、表面処理窒化ホウ素を洗浄することが好ましい。また、80℃~120℃、0.5~3時間にて、減圧乾燥を行うことが好ましい。
【0024】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、上記した本発明の表面処理窒化ホウ素と、樹脂とを含む。窒化ホウ素の平面部分が表面処理されることで、樹脂との親和性が向上されているので、樹脂の充填剤として使用すべく、樹脂と本発明の表面処理窒化ホウ素とを含む樹脂組成物とした場合に、該樹脂組成物の粘度の増加を抑制ことができる。これにより、樹脂組成物が窒化ホウ素を高含有した場合であっても、樹脂組成物の成形性を維持することが可能となる。
【0025】
(樹脂)
本発明の表面処理窒化ホウ素を添加する対象である樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂(メタクリル樹脂)、フェノール樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)が挙げられる。中でも、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうち一つを単独で、あるいは複数を混合して用いればよい。硬化剤はアミン化合物、酸無水物、イミダゾールもしくはその誘導体、フェノール類などを用いることができる。
【0026】
(フィラーの含有量)
樹脂組成物中のフィラーの含有量としては、フィラーの効果である放熱性を効果的に付与するべく、5Vol%以上が好ましく、10Vol%以上がより好ましく、15Vol%以上がさらに好ましい。また、上限は、樹脂組成物の成形性が過度に損なわれることを防ぐべく、90Vol%以下が好ましく、80Vol%以下がより好ましく、70Vol%以下がさらに好ましい。
【0027】
<放熱基板>
本発明の放熱基板は、上記樹脂組成物からなる。上記したように、本発明の表面処理窒化ホウ素をフィラーとして高含有率で含んでいたとしても、樹脂組成物の成形性を確保することができるので、放熱基板の製造工程において、成形不良が生じるのを防止できる。また、従来の放熱基板よりも、フィラーの含有量を多くすることができるので、従来よりも放熱性能の高い放熱基板とすることができる。
【実施例0028】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
<表面処理過程>
(実施例1)
ジムロートを備え付けた反応容器(300mL)に、窒化ホウ素(トクヤマ社製六方晶窒化ホウ素S03、メジアン径(D50):7μm)を30g、ジシクロペンタジエン(70g)入れ、オイルバス温度150℃で3時間加熱撹拌した。反応後のスラリーをろ過し、ヘプタンで洗浄(100mL×3回)し、得られたケーキを100℃で1時間減圧乾燥して、表面処理窒化ホウ素粒子Aを得た。
なお、実施例1で使用したジシクロペンタジエンは、以下のように、加熱によりシクロペンタジエンを生じる。
【0030】
【0031】
(実施例2、3)
表1に示した仕込み量および反応温度とした以外は、実施例1で記載した方法と同様にして、表面処理窒化ホウ素粒子B(実施例2)、および、表面処理窒化ホウ素粒子C(実施例3)を得た。
【0032】
なお、実施例2の処理剤としては、インデンを使用した。インデンは以下のように、加熱によりイソインデンを生じる。
【0033】
【0034】
また、実施例3の処理剤としては、下記のソルビン酸エチルを用いた。
【0035】
【0036】
【0037】
(比較例2)
密閉容器に窒化ホウ素を80g、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-403)を0.19g入れ密閉した。密閉容器を室温でよく振り、内容物を混合した。14日間室温で静置した後、50℃で12時間減圧乾燥し、表面処理窒化ホウ素粒子Dを得た。
【0038】
処理剤である、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの構造を下記に示す。3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランは、無機粉体を樹脂に混合する際、表面処理剤として一般的によく用いられている(非特許文献1参照)。
【0039】
【0040】
(比較例3)
ナス型フラスコ(100mL)に窒化ホウ素を80g、イソプロピルアルコールを100g、1-ピレンカルボキシアルデヒド(富士フィルム和光純薬株式会社製)を0.06g入れ、5分間撹拌した。得られたスラリー溶液をろ過した後、イソプロピルアルコールで洗浄し、100℃で12時間減圧乾燥し、表面処理窒化ホウ素Eを得た。
【0041】
<樹脂粘度測定>
乳鉢に上記で得られた表面処理窒化ホウ素A~Eをそれぞれ1g、エポキシ樹脂(YDF8170D、1.45g)、および、アミン硬化剤(KAYAHARD A-A、0.58g)を入れ、乳棒で混錬した。得られた組成物について粘度測定した。
【0042】
比較例1として、表面処理された窒化ホウ素の代わりに、表面処理を施していない窒化ホウ素を用いて、同様に樹脂組成物を調製し粘度測定した。
【0043】
樹脂組成物の粘度測定は、せん断速度0.2s-1で行った。
測定条件は、以下の通りである。
・使用機器:レオメータ(Thermo Fisher Scientific社製、HAAKE MARS40)
・測定温度:25℃、
・使用センサー:C35/1(コーンプレート型 直径35mm、角度1°、材質チタン)
【0044】
【0045】
表2より、共役ジエンまたは加熱により共役ジエンを生じる化合物により表面処理された本発明の表面処理窒化ホウ素を用いた場合、得られる樹脂組成物の粘度が、表面未処理の窒化ホウ素(比較例1)や、従来の処理剤を使用した場合(比較例2,3)に比べて、低くなっていることが分かる。
【0046】
なお、比較例3の1-ピレンカルボキシアルデヒドは、特許文献4の表1に記載され、実施例44で使用されている表面修飾剤(C-36)である。また、段落[0015]には表面処理剤の推定の作用が記載されており、端面の官能基との相互作用がなくとも表面処理剤が無機窒化物に吸着できるとされているが、上記のように効果は低かった。それに対し、本発明の表面処理窒化ホウ素では、表面処理剤と窒化ホウ素表面とが強い共有結合で結合していると考えられ、これにより樹脂組成物の粘度低下の効果が高くなったと思われる。