(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150589
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】多孔質凝集体及びその製造方法並びにその用途
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20231005BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20231005BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C01B33/18 E
C09K3/14 550D
H01L21/304 622D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059770
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】胡 ▲はお▼
(72)【発明者】
【氏名】佐土原 万実
(72)【発明者】
【氏名】福田 健太郎
【テーマコード(参考)】
4G072
5F057
【Fターム(参考)】
4G072AA28
4G072BB05
4G072BB07
4G072BB15
4G072CC13
4G072DD03
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4G072TT30
4G072UU30
5F057AA28
5F057BA15
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA07
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、主に研磨砥粒として有用な平均圧壊強度が特定な範囲に制御されたシリカナノ粒子からなる新規多孔質凝集体を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、金属酸化物からなる多孔質凝集体であって、平均圧壊強度Csが0.02~1MPa、平均円形度が0.5以上、円相当径(D50)が1~100μmを満たす。本発明の多孔質凝集体は、細孔径の最頻値が5~50nmであることが好ましい。また、本発明の多孔質凝集体は、細孔容積が0.5~5ml/gであることが好ましい。更に、本発明の多孔質凝集体は、比表面積が50~800m2/gであることが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物からなる多孔質凝集体であって、
下記の(1)~(3)を満たすことを特徴とする多孔質凝集体。
(1)平均圧壊強度Csが0.02~1MPa
(2)平均円形度が0.5以上
(3)円相当径(D50)が1~100μm
【請求項2】
細孔径の最頻値が5~50nmであることを特徴とする請求項1に記載の多孔質凝集体。
【請求項3】
細孔容積が0.5~5ml/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質凝集体。
【請求項4】
比表面積が50~800m2/gであることを特徴とする請求項1~3に記載の多孔質凝集体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の多孔質凝集体を含む研磨剤。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の多孔質凝集体を含む化粧料。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の多孔質凝集体を含む薬物担体。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の多孔質凝集体からなるクロマトグラフィー担体。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載の多孔質凝集体を含む樹脂組成物。
【請求項10】
金属酸化物粒子と疎水性溶媒とを混合して分散液を得る分散工程と、
前記分散液と、pHが12以上であり1~30質量%のアンモニアを含むアンモニア水を、前記疎水性溶媒1重量部に対してアンモニア水0.1~1重量部の割合で混合して、前記金属酸化物粒子を前記疎水性溶媒から前記アンモニア水に抽出し、上層の疎水性溶媒と下層の金属酸化物粒子を含むアンモニア水溶液とからなる混合液を得る抽出工程と、
前記混合液に界面活性剤を添加してW/Oエマルションを調製する乳化工程と、
前記W/Oエマルションを、W/Oエマルション1重量部に対して0.5~5重量部であるとともに、炭素数が4以下のアルコールに供給して、上層のO相と下層のW相とし、該W相中に水に不溶な凝集物を生成せしめる凝集工程と、
固液分離して該凝集物を得る固液分離工程と、
前記凝集物を洗浄して界面活性剤が除去された洗浄物を得る洗浄工程と、
前記洗浄物を乾燥して多孔質凝集体を得る乾燥工程と、
を含むことを特徴とする多孔質凝集体の製造方法。
【請求項11】
前記凝集工程と前記固液分離工程との間に、前記W相を10~90℃に加熱して前記凝集物を熟成する熟成工程とを含む請求項10に記載の多孔質凝集体の製造方法。
【請求項12】
前記疎水性溶媒は、20℃の水に対する溶解度が20g/L以下である請求項10または11に記載の多孔質凝集体の製造方法。
【請求項13】
前記抽出工程において、前記混合液中の金属酸化物の濃度は、2~10質量%であることを特徴する請求項10~12のいずれか1項に記載の多孔質凝集体の製造方法。
【請求項14】
前記抽出工程において、疎水性溶媒中の金属酸化物粒子の濃度が2質量%以下となるまで撹拌して混合する請求項10~13のいずれか1項に記載の多孔質凝集体の製造方法。
【請求項15】
前記洗浄工程において、水、疎水性溶媒および炭素数が4以下であるアルコールから選ばれる少なくとも一つの洗浄液によって洗浄する請求項10~14のいずれか1項に記載の多孔質凝集体の製造方法。
【請求項16】
前記固液分離工程おいて、固液分離はろ過又は遠心分離によって行う請求項10~15のいずれか1に記載の多孔質凝集体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超精密研磨砥石や化粧品添加剤等の用途に適合する新規易崩壊性の多孔質凝集体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハのウェハーメイキングにおける研磨において、遊離砥粒方式のラッピング加工の場合、加工状態を常時安定に維持させるため、定常的にラップ剤(砥粒と加工液との混合スラリー)を供給する必要がある。通常の場合、粘性の高い油性液を使用し、使用済みラップ剤の廃棄処理や装置清掃に時間やコストがかかるため、自動化が難しい。
【0003】
比較的短時間で周辺環境を汚染せずに鏡面研磨を行うとともに、前後の工程で使用される装置との間での自動化を可能として生産性を向上させるため特許文献1、2のような固定砥粒加工工具が挙げられる。
【0004】
その研磨方法に欠かせない研磨砥石は、超微細砥粒を凝集した凝集体を樹脂により固めた砥石が硬質基台に保持された構造となっており、適宜の研磨装置に装着可能であるため、遊離砥粒(ラップ剤)を使用することなく研磨を行うことができる(特許文献1)。
【0005】
特に、最近では、ナノメーターオーダーの表面粗さにまで仕上げる超精密加工が求められる。それらの研磨砥石に用いられる砥粒では、直径数ナノから数十ナノの無機酸化物一次粒子である。しかしながら、砥石成形加工時一次粒子同士の凝集が起き、その凝集力の制御が不可能のため、凝集力が強いと、研磨加工面にスクラッチが発生することを避けることは不可能となる(特許文献2)。
【0006】
従って、粒径の制御が容易い、樹脂中の分散性が良好な凝集体を用いることが提唱される。そして、研磨・研削時、その凝集体がせん断力により素早く崩壊し、砥粒となるナノメーターオーダーの一次粒子をまんべんなく供給することが重要である。
【0007】
一方、ラッピング工程においての研磨圧力(基板荷重)について、複数の文献情報(特許文献3~5)により、0.02MPa以下の圧力を用いるのは加工能率と高品位化を両立させるために好適である。
【0008】
以上の背景を踏まえ、上記砥石に適合する凝集体の特徴として、製造、運搬、パット成形の際に凝集体が崩れない限り、凝集力がなるべく弱い方が良い。さらに、0.02MPa以下の圧力により破壊してミクロンオーダーの破片が発生することなく、適度な変形を起こし、基板との密着性が高まることが好ましい。
【0009】
特許文献6によると、球形を保った上で平均圧壊強度1.8MPaの多孔質凝集粒子が得られるが、その平均圧壊強度は十分に低くない。
【0010】
平均圧壊強度を低減できない原因は、製造方法にあると推定される。
【0011】
金属酸化物ナノ粒子を原料とした多孔質凝集体の造粒方法において、噴霧乾燥法は公知で最も主流の方法である(特許文献7)。
【0012】
しかしながら、噴霧液の粒子径分布をなるべく単分散にしなければならないため、強遠心力による凝集粗大粒子の分離、或いは高せん断力による凝集粗大粒子の分散が必要となる。いわゆる物理方法での前処理が要る。そこでの高いエネルギー消費と生産工程数増加による品質安定性が懸念される。
【0013】
また、噴霧乾燥の場合、微粒子同士の結合安定性を高めるため、150℃~600℃の温度範囲での加熱処理をするのは一般的である。それによって凝集体の平均圧壊強度が増すことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000-198073
【特許文献2】特開2000-190228
【特許文献3】特開2007-208220
【特許文献4】特開2016-092045
【特許文献5】特開2018-145225
【特許文献6】WO2019/131873
【特許文献7】特開2010-138021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上の背景を踏まえ、本発明の目的は、主に研磨砥粒として有用な平均圧壊強度が特定な範囲に制御されたシリカナノ粒子からなる新規多孔質凝集体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた。その結果、シリカナノ粒子からなる多孔質凝集体製造工程において、以下幾つの独創手法を使用することによって、平均圧壊強度が特定の範囲に制御されたシリカナノ粒子からなる多孔質凝集体粒子を調製することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、金属酸化物からなる多孔質凝集体であって、平均圧壊強度Csが0.02~1MPa、円形度が0.5以上、円相当径(D50)が1~100μmを満たすことを特徴とする多孔質凝集体、を提供する。
【0018】
また別の側面から、本発明は、本発明による多孔質凝集体の製造に適した方法として、
金属酸化物粒子と疎水性溶媒とを混合して分散液を得る分散工程と、
前記分散液と、pHが12以上であり1~30質量%のアンモニアを含むアンモニア水を、前記疎水性溶媒1重量部に対してアンモニア水0.1~1重量部の割合で混合して、前記金属酸化物粒子を前記疎水性溶媒から前記アンモニア水に抽出し、上層の疎水性溶媒と下層の金属酸化物粒子を含むアンモニア水溶液とからなる混合液を得る抽出工程と、
前記混合液に界面活性剤を添加してW/Oエマルションを調製する乳化工程と、
前記W/Oエマルションを、W/Oエマルション1重量部に対して0.5~5重量部であるとともに、炭素数が4以下のアルコールに供給して、上層のO相と下層のW相とし、該W相中に水に不溶な凝集物を生成せしめる凝集工程と、
固液分離して該凝集物を得る固液分離工程と、
前記凝集物を洗浄して界面活性剤が除去された洗浄物を得る洗浄工程と、
前記洗浄物を乾燥して多孔質凝集体を得る乾燥工程と、
を含むことを特徴とする多孔質凝集体の製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の多孔質凝集体は、樹脂に分散して固めて砥石とした場合、平均圧壊強度が弱い領域であり、且つ制御可能であるため、超高精密研磨・研削時に、当該多孔質凝集体がせん断力により素早く崩壊し、砥粒となるナノメーターオーダー(nmサイズ)の一次粒子を満遍なく供給することができると見込まれる。
【0020】
また、原料のフュームドシリカが網目状構造を形成しているため、多孔質凝集体がフュームドシリカの高い比表面積を保った上で、高い内部細孔容積を得ることが可能となる。そのため、化粧品の添加剤、薬物の有効成分の担体、クロマトグラフィー充填物など、様々な担体として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<多孔質凝集体>
本発明の多孔質凝集体は、金属酸化物からなる多孔質凝集体であって、平均圧壊強度Csが0.02~1MPa、円形度が0.5以上、円相当径(D50)が1~100μmを満たすことを特徴とする多孔質凝集体である。
そのため、平均圧壊強度が弱い領域である且つ制御可能であるため、超高精密研磨・研削時、その凝集体がせん断力により素早く崩壊し、砥粒となるナノメーター(nm)オーダーの一次粒子をまんべんなく供給することができると考える。
【0022】
(平均圧壊強度)
本発明の多孔質凝集体は、JIS Z8844:2019に規定される方法に従って求めた「試料の破壊が認められたときの圧力」の算術平均値(「平均圧壊強度Cs」)が0.02~1.0MPaである。平均圧壊強度がこの範囲にあると、加圧崩壊性に優れた粒子となる。即ち、粒子に特定の負荷がかかると崩壊し、特に工業製品等の研磨剤として使用する場合には、研磨対象に傷がつきにくく、化粧品材料のスクラブ材として使用する場合には、肌への負担を軽減することが可能となる。平均圧壊強度が0.02MPa未満では、垂直方向の研磨圧力(基板荷重)によって崩壊し、研磨パットと基板間の密着性が悪く、加工能率が低下する。また、担体としての内部空間を保つことができなくなる。1.0MPa以上では、所望の崩壊性が得られない。平均圧壊強度は0.02~1.0MPaが好ましく、0.2~1.0MPaがより好ましい。
【0023】
(平均円形度)
「平均円形度」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、観察したSEM像より、個々の粒子について下記式(10)によって定義される値C(円形度)を求め(画像解析)、この円形度Cを、例えば、1500~2000個の粒子について相加平均値として出した値である(画像解析法)。なおこの際、一個の凝集粒子を形成している粒子群は1粒子として計数する。
C=4πS/L2 (1)
[式(1)において、Sは当該粒子が画像中に占める面積(投影面積)を表す。Lは画像中における当該粒子の外周部の長さ(周囲長)を表す。]
平均円形度が0.8より大きくなって1に近くなるほど、当該金属酸化物を構成する個々の粒子は真球に近い形状となり、凝集粒子も少なくなる。よって平均円形度が高ければ、フィラーとして利用したときにローリング性が良くなり、優れた充填性が得られる。本発明の多孔質凝集体の円形度が0.5未満では、流動性、充填密度、分散性が悪く実用的でない。さらに、研磨時水平方向の引っかき痕が生じやすい。円形度は0.5~1.0が好ましく、0.8~1.0がより好ましい。
【0024】
(円相当径)
「円相当径」とは、上記SEM像より、例えば、1500~2000個の粒子個々が画像中に占める面積S(投影面積)と同等の円の直径に換算した値である(画像解析法)。得られた粒度分布から、個数基準の累積50%径を円相当径とする。本発明の多孔質凝集体の円相当径が100μmを超えると、充填密度が悪く実用的でない。一方、1μm未満だと、粉体の流動性が低くなり、作業性が悪くなる。円相当径は1~100μmが好ましく、5~30μmがより好ましい。このような粒子は、研磨パット用砥粒や化粧品用材料として使用する場合に特に適している。
【0025】
平均円形度と円相当径において、測定精度と計算効率を両立するために用いる粒子は、500~5000個が好ましく、1500~2000個がより好ましい。
【0026】
(比表面積、細孔容積、細孔径の最頻値の測定)
比表面積、細孔容積、及び細孔径の最頻値(ピーク)の測定は、比表面積/細孔分布測定装置により行うことができる。
(細孔径の最頻値)
細孔径の最頻値は、細孔径の対数による累積細孔容積(体積分布曲線)が最頻のピーク値をとる細孔径の値である。
本発明の多孔質凝集体は、細孔径の最頻値が5~50nmであることが好ましく、15~50nmであることがより好ましい。細孔径の最頻値が上記範囲内であると、粒子自身の易崩壊性、粒子と樹脂の結合強度、粒子内部の担持能力がともに最適である。細孔径の最頻値が、5nm未満では、粒子が所望の崩壊性が得られない虞があり、また樹脂が粒子内部浸入し難く、粒子と樹脂の噛みあいが悪くなる。一方、50nmを超えると、担体としての保持能力が悪くなる傾向にある。
【0027】
(細孔容積)
本発明の多孔質凝集体は、BJH法による細孔容積が0.5~5ml/gであることが好ましく、1.0~4.0ml/gであることがより好ましい。細孔容積が上記範囲内であると、所望の圧壊強度が得られやすい。
(比表面積)
本発明の多孔質凝集体は、BET法による比表面積が50~800m2/gであることが好ましく、100~400m2/gであることがより好ましい。比表面積が上記範囲内であると、易崩壊性と表面吸着能力を両立した粒子が得られやすい。比表面積が、800m2/g以上を得るのは難しくなり、50m2/g以下だと強度が高まり、表面吸付性も悪くなる傾向にある。
【0028】
<多孔質凝集体の製造方法>
本発明の製造方法によれば、多孔質凝集体を製造する工程において、分散液の機械的な前処理工程(ノズルの目詰まりを防ぐための濾過、分級など)が不要となる。また、凝集体に対する高温加熱により不溶化させる、すなわち焼成工程も不要となる。多孔質凝集体を容易に製造することができる。
【0029】
以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明がこれらの形態に限定されるものではない。また、特に断らない限り、数値範囲について「A~B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。以下本発明の製造方法について、工程毎に説明を行う。
【0030】
(分散工程)
分散工程では、金属酸化物粒子と疎水性溶媒とを混合して分散液を得る。
【0031】
上記金属酸化物粒子は、気相法により製造した超微粒子であり、平均粒子径は数ナノメーター(数nm)ないし数十ナノメーター(数十nm)のものが好適に使用される。例えば、関東化学株式会社製の金属酸化物ナノ粒子SiO2、TiO2、ZnO、Al2O3、株式会社トクヤマ製のレオロシールの各種親水性グレード、日本アエロジル社製のアエロジルの各種親水性グレード、旭化成ワッカーシリコーン社製の乾式シリカHDKの各種親水性グレード、株式会社アイテック製のジルコニア粉末Zirconeo-Cp、Zirconeo-Rp、株式会社希少金属材料研究所製の酸化ガリウムナノ粒子などが使用できる。
【0032】
また、フュームドシリカは高純度でアルカリ金属などの不純物をほとんど含まないため、製造した多孔質凝集体のアルカリ金属含有量も極めて少なくできるので好ましい。
【0033】
上記の分散液作成の疎水性溶媒としては、20℃の水に対する溶解度が20g/L以下であることが好ましいく、5g/L以下であることがより好ましい。アルカリ性水溶液とエマルションを形成できる程度の疎水性を有した溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、直鎖や環状骨格を有する飽和或いは不飽和炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などの有機溶媒を使用することが可能である。より具体的にはペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロポロパン、流動パラフィン、トルエン、キシレン、メシチレンが挙げられる。これらの中でも、適宜な粘度を有するヘキサン、ヘプタン、デカンを好適に用いることができる。なお必要に応じて、複数の溶媒を混合して用いてもよい。
【0034】
当該分散液の調製方法は、特に限定されず、粒子と溶媒の投入前後を問わず(粒子に対して液、液に粒子、同時投入)、適度な撹拌や振動で粉状態の粒子が残ってなければよい。また、市販の粉体・液体混合機、分散機を使用することもできる。用いる疎水性溶媒の量は、金属酸化物粒子1重量部に対して、4.5~45重量部であることが好ましいく、8~25重量部であることがより好ましい。4.5重量部以下になると、分散液の流動性が失われ、後続の工程へ進まないことが考えられ、45質量部以上使用すると、製造効率が悪い。
【0035】
(抽出工程)
抽出工程では、前記分散液に、pH12以上であり1~30質量%のアンモニアを含むアンモニア水溶液を、前記疎水性溶媒1重量部に対して0.1~1重量部を添加して、金属酸化物粒子を疎水性溶媒からアンモニア水に抽出し、上層の疎水性溶媒と下層の金属酸化物粒子を含むアンモニア水溶液とからなる混合液を得る。
【0036】
上記混合液中の金属酸化物粒子の濃度は、2~10質量%であることが好ましく、3~7質量%であることがより好ましい。2質量%以下になると粒子濃度が低いため、前述溶解・析出平衡濃度が低く、後述する凝集工程において、凝集体が得られないことがある。10質量%以上になると溶解・析出平衡濃度が高く、後述する乳化工程において、W/OエマルションのW相が早く増粘してしまい、するとW相とO相の表面張力の差が大きく生じ、界面活性剤を添加してもW/Oエマルションが形成できないことがある。
【0037】
抽出工程においては、疎水性溶媒中の金属酸化物粒子の濃度が2質量%以下となるまで撹拌して混合することが好ましい。金属酸化物粒子の濃度が2質量%以上であると、抽出が不十分であり、未溶解分の金属酸化物が多く、以降の工程に支障が出ることがある。
【0038】
上記混合液を調製する方法としては、前記分散液にアンモニア水溶液を添加して、撹拌機、分散機ないしスタティックミキサーなどの特に限定しない混合方法が用いられる。アンモニア水溶液の量は、前記疎水性溶媒1重量部に対して0.1~1重量部を使用するのは好ましく、0.3~0.6重量部を使用することがより好ましい。0.1重量部以下になると、金属酸化物粒子が容易に固結し、混合液の流動性が失われ、後続の工程へ進まないことが考えられ、1質量部以上使用すると、製造効率は悪い。
【0039】
上記混合液を調製するアンモニア水溶液の溶質としては、アルカリ金属水酸化物やアンモニアなど疎水性有機溶媒により抽出されないものから選ばれる少なくとも一つであればよい。また安水(アンモニア水溶液)のように市販品である場合にはそれをそのまま、或いは希釈して使用すればよい。
【0040】
上記混合は、アンモニア水溶液を添加して撹拌により行い、撹拌を停止した際に、上層(疎水性溶媒)が透明であり、下層がスラリー(色が均一で流動性あり、スポイトで吸い上げることができる状態)となるまで行うと、疎水性溶媒中の金属酸化物粒子の濃度が2質量%以下となっているので、これを抽出工程の終点を判断することができる。
【0041】
ここで、本工程の機構と利点について述べる。金属酸化物のコロイダル溶液からスプレードライ、又は凝集させた後、焼成により凝集体を製造する方法のいずれにおいても、金属酸化物のコロイダル溶液が不可欠な出発原料となる。しかしながら、コロイダル溶液の安定性(凝集安定性)の懸念が知られており、市販品はそれの凝集を防ぐため、アルカリを添加した上で、シリカ濃度も低い範囲に限られているが、保存期間によって品質のムラが生じることが懸念される。
【0042】
一方、金属酸化物粒子を出発原料から調製する金属酸化物粒子の分散液では、金属酸化物粒子が製造、保管過程中凝集が起きている。従って、凝集体製品の品質管理のため、分散液を製造した後、分級工程を行われなければならない。さらに、金属酸化物粒子の一次粒子径がより小さいと嵩密度がより低いため、分散液に対して粒子の体積ボリュームが巨大であり、分散液を撹拌しながら、粒子を少しずつ投入する長時間分散液製造工程がやむを得ない。
【0043】
本発明の製造方法は、溶媒抽出法(液液抽出)、すなわち水と油のように互いに混じり合わない二液間における溶質の分配(どちらに溶けやすいか)という現象を利用した分散方法である。具体的に言うと、上記分散工程によって、疎水性溶媒(油相)に分散していた金属酸化物粒子が、本工程に添加するpH12以上であるアルカリ性水溶液(水相)との親和性(溶けやすさ)が圧倒的に高いため、自ら水相へ移動することを利用した。その効果として、粒子の移動は液と液間で行うため、工程所要時間が粒子(溶質)の体積ボリュームによらず、極めて速い。
【0044】
上記混合液を調製するアンモニア水溶液のpHが12以上であることが必要な理由は、pH12以上のアルカリ環境下では、電位―pH図から、前記した使用する金属酸化物の元素、例えば、前述で列挙したSi、Ti、Zr、Zn、Al、Gaなどの金属はそれらの水酸化物又はイオン状態となると考えられる。すなわち、強アルカリ環境下では、上記金属らの酸化物が溶解・析出の平衡を保つことができると考えられる。pHが12より低いと上記金属の一部がイオン解離状態ではなくその酸化物或いは酸化物の水和物が安定であることから、pH12未満の水分散液を調製後まもなくその酸化物或いは酸化物の水和物への変化(ゲル化)が開始すると考えられる。そうすると溶液全体が一つの塊になり、後続の工程へ進むことが不可能となる。
【0045】
また、上記溶解と析出の平衡は一次粒子の表面で行われているため、金属酸化物粒子固体が貯蔵中の弱い凝集が溶解により解消することが考えられる。しかも溶解の度合い、いわゆる溶解と析出平衡の偏りはpHと濃度に依存するので、pHと粒子濃度を管理することによって、品質管理が簡単となる。以上のことで、本発明の工程を採用すれば、分散、分級工程の機械的な力は必要なく、工程の簡素化と異物混入リスクの低減がともにできると考える。
【0046】
(乳化工程)
前記混合液に界面活性剤を添加してW/Oエマルションを調製する。
本発明の製造方法においては、上記のW/Oエマルションを形成する際に、界面活性剤が添加される。使用する界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤のいずれも使用することが可能である。これらの中でも、W/Oエマルションを形成しやすい点で、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0047】
界面活性剤の使用量は、W/Oエマルションを形成させる際の一般的な量と変わるところがない。具体的には、疎水性溶媒100gに対して0.025g以上10g以下の範囲を好適に採用することができる。当該界面活性剤の使用量が多いと、W/Oエマルションの液滴がより微細になり易く、逆に界面活性剤の使用量が少ないと、W/Oエマルションの液滴がより大きくなり易い。したがって界面活性剤の使用量を増減することにより、多孔質凝集体の平均粒子径を調整することが可能である。
【0048】
W/Oエマルションを形成する際に、金属酸化物粒子が分散したアルカリ水を疎水性溶媒中に分散させる方法としては、W/Oエマルションの公知の形成方法を採用することができる。工業的な製造の容易性などの観点からは、機械乳化によるエマルション形成が好ましく、具体的には、ミキサー、ホモジナイザー等を使用する方法を例示できる。好適には、ホモジナイザーを用いることができる。分散している金属酸化物ゾル液滴の粒子径が、多孔質凝集体の粒径と関係するため、目的の粒径になるように、ゾルの液滴の粒子径を調整することが好ましい。
【0049】
上記製造方法において、得られる多孔質凝集体の粒径は、乳化工程で調製するW/Oエマルションにおける分散液の液滴(W相)径にほぼ一致する。従って、目的とする径の範囲となるように分散条件を設定する必要がある。W/Oエマルションにおける液滴径の制御方法は種々知られており、それら技術を適宜選択、適用すればよい。
【0050】
乳化工程の目的は、上述した混合液の中にある疎水性溶媒をそのまま分散媒とし、金属酸化物粒子が分散したアルカリ水をそのままW/OエマルションのW相として、エマルション形成させる。このようなW/Oエマルションを形成することにより、分散質は表面張力等により球状になるので、該球状形状でゲル化させることにより、球状のゲル化体を得ることができる。このように、W/Oエマルションを形成するW/Oエマルション調製工程を経ることにより、高い円形度を有する多孔質凝集体を製造することが可能になる。
【0051】
(凝集工程)
前記W/Oエマルションを、W/Oエマルション1重量部に対して0.5~5重量部であるとともに、炭素数が4以下のアルコールに供給して、上層のO相と下層のW相とし、該W相中に水に不溶な凝集物を生成(析出)せしめる。
【0052】
本工程に用いる炭素数が4以下のアルコールとしては、金属酸化物粒子が不溶であればよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールがある。これらの中でも、取り扱いやすい点で、2-プロパノールが好ましい。
【0053】
本工程に用いるアルコールの使用量としては、W/Oエマルション1重量部に対して0.5~5重量部であることが好ましい。0.5重量部以下になると十分な希釈ができず、球状凝集物が得られない可能性がある。5重量部以上使用しても溶媒の無駄使いと後続工程の負担になる。
【0054】
本工程の実施形態について、特に限定されず、アルコールを撹拌しながら前記W/Oエマルションを滴下ないし注ぐという形で添加すればよい、撹拌機ないしスタティックミキサーなどの特に限定しない混合方法が用いられる。
【0055】
以下本工程の機構を述べる。前述のように、pH12以上の強アルカリ環境下、金属酸化物が溶解・析出の平衡状態になる。その平衡状態を破れば、すなわちW/OエマルションのW相中の水を除去すれば、水溶液中に存在するイオン解離状態の金属種がその酸化物として析出し、一次粒子間に新たな架橋構造を作り、凝集体が得ると考えられる。
【0056】
従って本工程では、希釈という手法に着目した。前記W/Oエマルションをアルコールに供給すると、W/Oエマルションの解乳と伴い、ミクロンオーダーのW相ミセル中の水がアルコールにより急激に希釈されることができる。この水含有量の低下を利用し、イオン解離状態の金属種がその酸化物として析出し、一次粒子間に新たな架橋構造を作り、凝集体が得ると考えられる。
【0057】
(固液分離工程)
上層のO相と下層の凝集物を含むW相を固液分離して該凝集物を得る。
前記固液分離は、凝集体が破壊しにくい観点から、ろ過又は遠心分離によって行うことが好ましい。
【0058】
(熟成工程)
ここで、凝集工程と固液分離工程との間に、W相を10~90℃に加熱して、W相中の凝集物を熟成することもできる。熟成することによって、最終の多孔質凝集体の平均圧壊強度が低下する傾向がみられる。温度が高いほど、熟成時間が長いほどその効果が顕著となる。所望の平均圧壊強度を得るために、熟成時間は0~180分が好ましく、0~60分がより好ましい。熟成温度は10~90℃が好ましく、30~80℃がより好ましい。但し、少なくとも数日間の熟成に渡っても凝集体が溶けて消失することがない。
【0059】
上記熟成とは、析出した凝集体(二次粒子)を構成する一次粒子であるシリカの表面に、シリカと水酸化物イオンの化学平衡が存在する。熟成温度が高いほど平衡までの到達時間が短い。一方、水酸化物イオン濃度が高いほど平衡が反応進行方向に有利となる。従って本発明の場合、熟成が進むほど反応してイオンになるシリカが多く、一次粒子が構成する骨格が細くなり、平均圧壊強度が低下すると考えられる。
【0060】
(洗浄工程)
前記凝集物を洗浄して非イオン性界面活性剤が除去された洗浄物を得る。
上記の凝集物が得られた後に、凝集物に含まれる塩分や界面活性剤等を除去するために、当該凝集物を水、疎水性溶媒および炭素数が4以下であるアルコールから選ばれる少なくとも一つにより行うことが好ましい。この洗浄操作は、公知の方法で行うことができる。洗浄効率を上げる上では、上記疎水化溶媒で洗浄した後、数十質量%程度のイソプロピルアルコールの水溶液を用いることが好ましい。また、疎水性有機溶媒の沸点を超えない範囲で、高温にすることが洗浄効率を高めることがある。通常は、30~70℃の範囲で行うことができる。
【0061】
(乾燥工程)
前記洗浄物を乾燥して多孔質凝集体を得る。
本発明の製造方法において、上記の洗浄工程を行った場合には、引き続き本工程を行うことができる。すなわち、数十質量%程度のイソプロピルアルコールの水溶液に分散している洗浄物を濾別し、溶媒を除去(乾燥)する。乾燥する際の温度は、溶媒の沸点以上で、150℃以下であることが好ましく、圧力は常圧ないし減圧下で行うことが好ましい。
【実施例0062】
以下に、本発明を具体的に説明するための実施例を示す。ただし本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。
【0063】
<評価方法>
製造した多孔質凝集体に対して、以下の項目について評価を行った。
【0064】
(SEM画像解析による平均円形度、円相当径の測定)
まず、走査型電子顕微鏡(SEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、SU-3500)を用いて、二次電子検出、低加速電圧(20kV)、倍率270倍で観察したSEM像を得る。得られたSEMに対して、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製、WINROOF2018)を用いて画像解析を行い、平均円形度、円相当径を算出する。
平均円形度は、1500~2000個の粒子について、下記式(1)によって定義される値C(円形度)を求め、相加平均値として出した値である。
C=4πS/L2 (1)
[式(1)において、Sは当該粒子が画像中に占める面積(投影面積)を表す。Lは画像中における当該粒子の外周部の長さ(周囲長)を表す。]
円相当径は、1500~2000個の粒子個々が画像中に占める面積S(投影面積)と同等の円の直径を評価した粒度分布から、個数基準の累積50%径とする。なおこの際、一個の凝集粒子を形成している粒子群は1粒子として計数する。
【0065】
(比表面積、細孔容積、細孔径の最頻値の測定)
比表面積、細孔容積、及び細孔径の最頻値の測定は、比表面積/細孔分布測定装置(日本ベル株式会社製、BELSORP-mini)により行った。測定の前処理として、測定対象となるサンプルを、1kPa以下の真空下において、150℃の温度で2時間以上乾燥させた。その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を取得した。その後、BET法、BJH法により解析を行った。細孔径の最頻値は、細孔径の対数による累積細孔容積(体積分布曲線)が最頻のピーク値をとる細孔径の値である。
【0066】
(平均圧壊強度)
平均圧壊強度の測定は前述の定義に従って、微小圧縮試験機(島津製作所製、MCT-W510-J)により行った。なお、測定は、試験力9.81mN、負荷速度9.81mN/sec、負荷保持時間0secの条件で行った。また、測定には直径200μmの圧子を使用した。
【0067】
<実施例1>
(分散工程)
レオロシールQS-30(株式会社トクヤマ製、比表面積300±30m2/g、平均一次粒子径7nm、SiO2純度>99.9%、Cl<50ppm、Fe<20ppm、Al<20ppm)2.0gにデカン40gを添加し、粉状態の粒子がなくなるまで薬匙で撹拌してクリーム状の分散液を得た。
(抽出工程)
上記分散液に9.38質量%、pH13.0のアンモニア水(富士フィルム和光純薬社製の25質量%アンモニア水から希釈して作ったもの)16.0gを添加した後、ホモジナイザー(IKA製、T25BS1)を用いて、7000回転/分の条件で30秒撹拌することにより、混合液を得た。
(乳化工程)
ソルビタンモノオレート(花王株式会社製、レオドールSP-010V)0.3gを分散した3gのデカンを一気に添加し、前工程のままホモジナイザーを用いて、7000回転/分の条件で15秒撹拌することにより、W/Oエマルションを得た。
(凝集工程)
2-プロパノール(富士フィルム和光純薬社製)40gに前工程で得たW/Oエマルションを直ちに添加しながら磁力撹拌子で攪拌した。その後、静置することによりO相を上層、凝集物を含むW相を下層とする2層に分離した。
(固液分離、洗浄工程)
得られた凝集物を吸引濾過機によりW相から濾別し、そのまま吸引しながらデカン、水、2-プロパノールを用いてそれぞれ洗浄し、洗浄物を得た。
(乾燥工程)
得られた洗浄物をビーカーに移し、120℃の条件で3時間、真空乾燥器により乾燥した。このようにして得られた多孔質凝集体の物性を表1に示す。
【0068】
<実施例2>
分散工程において、レオロシールQS-30を3.0g用いた。また、凝集工程の次、固液分離工程の前に、上層がO相、下層が凝集物を含むW相の二層液を70℃下において20分間静置した。それ以外は、実施例1と同様に操作を行った。得られた多孔質凝集体の物性を表1に示す(以下同様)。
【0069】
<実施例3>
凝集工程の次、固液分離工程の前に、上層がO相、下層が凝集物を含むW相の二層液を70℃下において75分静置した。それ以外は、実施例3と同様に操作を行った。
【0070】
<実施例4>
分散工程において、レオロシールQS-102(株式会社トクヤマ製、比表面積200±20m2/g、平均一次粒子径12nm、SiO2純度>99.9%、Cl<50ppm、Fe<20ppm、Al<20ppm)を4.0g用いた。それ以外は、実施例1と同様に操作を行った。
【0071】
<比較例1>
(分散工程)
レオロシールQS-304.0gにデカン40gを添加し、粉状態の粒子がなくなるまで薬匙で撹拌してクリーム状の分散液を得た。
(抽出工程)
上記分散液に9.38質量%、pH13.0のアンモニア水16.0gを添加した後、ホモジナイザーを用いて、7000回転/分の条件で30秒撹拌することにより、混合液を得た。
(乳化工程)
ソルビタンモノオレート0.3gを分散した3gのデカンを一気に添加し、前工程のままホモジナイザーを用いて、7000回転/分の条件で15秒撹拌することにより、W/Oエマルションを得た。
(凝集工程)
得られたW/Oエマルションを浅いトレーに移し、150℃の条件で2時間、真空乾燥器により乾燥した凝集物を得た。
(固液分離、洗浄工程)
得られた凝集物を2-プロパノール40gに攪拌しながら30分間分散した。その後、吸引濾過機により溶媒から濾別し、そのまま吸引しながらデカン、水、2-プロパノールを用いてそれぞれ洗浄し、洗浄物を得た。
(乾燥工程)
得られた洗浄物をビーカーに移し、150℃の条件で3時間、真空乾燥器により乾燥した。
【0072】
<比較例2>
分散工程、抽出工程は実施例2と同様に操作を行い、抽出工程において、0.12質量%、pH11.8のアンモニア水21.2gを用いた。W相が早く増粘し、混合液が得られなかった。それ以降は実施不可となった。
【0073】
<比較例3>
(分散液調製工程)
尿素6.65gを溶解させたイオン交換水200mlに、レオロシールQS-30をホモジナイザーで攪拌しながら66g添加し、フュームドシリカを予備分散した後に、超音波ホモジナイザー(BRANSON製、Sonifier SFX250)を使用して微分散することで、フュームドシリカ分散液を得た。なお、分散液調製工程は、10℃に冷却したチラー中で行った。
(W/Oエマルション調製工程)
上記方法で調整したフュームドシリカ分散液から65.5gを分取し、ソルビタンモノオレート0.75gを分散した129gのデカンを添加した後、ホモジナイザーを用いて、8600回転/分の条件で3分間攪拌することにより、W/Oエマルションを得た。
(ゲル化工程)
得られたW/Oエマルションを翼径60mm、翼幅20mm、斜角45度の4枚パドル翼を用い、300rpmの条件で撹拌しながら、80℃のウォーターバスで3時間保持することにより、ゲル化を行った。
(ゲル化体回収工程)
イソプロピルアルコール77gと水52gを加えて70℃で30分間保持しながら攪拌羽で攪拌した。その後、静置することによりO相を上層、W相を下層とする2層に分離した。
ついでデカンテーションにより、O相とW相を分離し、W相を回収した。
得られたゲル化体を吸引濾過機によりW相から濾別した。回収したゲル化体を150℃の条件で12時間、真空乾燥器により乾燥した。
【0074】