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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150799
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/147 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H01J37/147 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060084
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 寿昌
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智世
(72)【発明者】
【氏名】水谷 俊介
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101BB08
5C101EE23
5C101EE48
5C101JJ07
(57)【要約】
【課題】ブランキングによる関心領域の帯電や関心領域のダメージを抑制する。
【解決手段】荷電粒子ビーム装置は、ビーム源から放出されたビームを関心領域で走査する偏向器と、関心領域を走査したビームを関心領域外に退避させる第2の偏向器と、記憶媒体に記憶されたプログラムを実行するように構成される1以上のプロセッサを含む1以上のコンピュータシステムと、を備え、1以上のコンピュータシステムは、ビームの関心領域での走査方向に基づいて(ステップS401)、ビームの退避方向又は退避位置を決定する(ステップS402)。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム源から放出されたビームを関心領域で走査する第1の偏向器と、
前記関心領域を走査した前記ビームを前記関心領域外に退避させる第2の偏向器と、
記憶媒体に記憶されたプログラムを実行するように構成される1以上のプロセッサを含む1以上のコンピュータシステムと、を備え、
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記ビームの前記関心領域での走査方向に基づいて、(i)前記ビームの退避方向又は退避位置を決定する、又は(ii)前記ビームの退避方向又は退避位置に関する特性情報を出力する
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記ビームの退避時に前記関心領域の未走査領域を横切らないように、前記ビームの退避方向又は退避位置を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記ビームの退避時に前記関心領域の未走査領域を除く他の領域に前記ビームが照射されるように、前記ビームの退避方向又は退避位置を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記第2の偏向器を制御して、前記ビームを前記退避位置から前記関心領域外を通過して解除位置まで移動させ、前記解除位置から次の走査の開始位置まで移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記第1の偏向器を制御して、前記ビームの前記退避位置から近い順に前記走査方向に沿って前記ビームを複数回走査させる
ことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
ビーム源から放出されたビームを複数の関心領域で走査する第1の偏向器と、
前記関心領域を走査した前記ビームを前記複数の関心領域外に退避させる第2の偏向器と、
記憶媒体に記憶されたプログラムを実行するように構成される1以上のプロセッサを含む1以上のコンピュータシステムと、を備え、
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記複数の関心領域の位置又は前記複数の関心領域に対する前記ビームの照射位置に関する第1の情報、及び前記ビームの退避位置に関する第2の情報に基づいて、(i)前記複数の関心領域の処理順を決定する、又は(ii)前記処理順に関する順番情報を出力する
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記ビームの退避時に前記複数の関心領域の未走査領域を横切らないように、前記複数の関心領域の前記処理順を決定する
ことを特徴とする請求項6に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記ビームの退避時に前記複数の関心領域の未走査領域を除く他の領域に前記ビームが照射されるように、前記複数の関心領域の前記処理順を決定する
ことを特徴とする請求項6に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項9】
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記第1の偏向器及び前記第2の偏向器を制御して、前記複数の関心領域と前記退避位置とを往復しつつ、決定された前記処理順に従って前記複数の関心領域を処理する
ことを特徴とする請求項6に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項10】
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記決定した前記処理順を前記関心領域間の移動距離に基づいて調整する
ことを特徴とする請求項6に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項11】
ビーム源から放出されたビームを関心領域で走査する第1の偏向器と、
前記関心領域を走査した前記ビームを前記関心領域外に退避させる第2の偏向器と、
記憶媒体に記憶されたプログラムを実行するように構成される1以上のプロセッサを含む1以上のコンピュータシステムと、を備え、
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記関心領域の位置又は前記関心領域に対する前記ビームの照射位置に関する第1の情報、及び前記関心領域の前に走査される事前照射領域の位置に関する第2の情報に基づいて、(i)前記事前照射領域での走査中における前記ビームの退避方向又は退避位置を決定する、又は(ii)前記事前照射領域での走査中における前記ビームの退避方向又は退避位置に関する特性情報を出力する
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項12】
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記ビームの退避時に前記関心領域の未走査領域を横切らないように、前記ビームの退避方向又は退避位置を決定する
ことを特徴とする請求項11に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項13】
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記ビームの退避時に前記関心領域の未走査領域を横切るように、前記ビームの退避方向又は退避位置を決定する
ことを特徴とする請求項11に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項14】
ビーム源から放出されたビームを関心領域で走査する第1の偏向器と、
前記関心領域を走査した前記ビームを前記関心領域外に退避させる第2の偏向器と、
記憶媒体に記憶されたプログラムを実行するように構成される1以上のプロセッサを含む1以上のコンピュータシステムと、を備え、
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記関心領域の位置又は前記関心領域に対する前記ビームの照射位置に関する第1の情報、及び前記関心領域の前に走査される事前照射領域での走査中における前記ビームの退避方向又は退避位置に関する第2の情報に基づいて、(i)前記事前照射領域の位置を決定する、又は(ii)前記事前照射領域の位置に関する特性情報を出力する
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項15】
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記ビームの退避時に前記関心領域の未走査領域を横切らないように、前記事前照射領域の位置を決定する
ことを特徴とする請求項14に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項16】
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記ビームの退避時に前記関心領域の未走査領域を横切るように、前記事前照射領域の位置を決定する
ことを特徴とする請求項14に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項17】
ビーム源から放出されたビームを関心領域及び事前照射領域で走査する第1の偏向器と、
前記関心領域を走査した前記ビームを前記関心領域外に退避させる第2の偏向器と、
記憶媒体に記憶されたプログラムを実行するように構成される1以上のプロセッサを含む1以上のコンピュータシステムと、を備え、
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記第1の偏向器を制御して、前記事前照射領域を走査し、前記事前照射領域の走査後に、前記関心領域を走査し、
前記事前照射領域の走査中は、前記ビームを前記関心領域外に退避させず、
前記関心領域の走査中は、前記第2の偏向器を制御して、前記ビームを前記関心領域外に退避させる
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項18】
前記1以上のコンピュータシステムは、
前記事前照射領域の走査中は、前記第2の偏向器をオフにし、前記関心領域の走査中は、前記第2の偏向器をオンにする
ことを特徴とする請求項17に記載の荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷電粒子ビーム装置に関し、荷電粒子ビームを退避領域に退避可能な荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビームを試料表面上で走査することによって試料の観察、測長、検査、分析などを行うシステムが知られている。このようなシステムでは、不必要に荷電粒子ビームが試料に照射されることを抑制するために、電場もしくは磁場で荷電粒子ビームを大きく偏向し、絞り板等に荷電粒子ビームを照射することで試料から電子ビームを退避させる。この機能は、ブランキングと呼ばれる。
【0003】
特許文献1には、ブランキングを行う荷電粒子線装置が開示されている。特許文献1に記載の荷電粒子線装置では、荷電粒子線の走査ライン毎にブランキング方向を変えることによって、複数方向の帯電のバランスをとることによって、軸ずれ等の発生を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-254673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、ブランキング方向と走査領域との関係について言及されていない。つまり、特許文献1では、ブランキング方向に走査領域が存在する場合、ブランキング時の荷電粒子線が測長点を横切り、走査領域が帯電してしまう。その結果、走査領域の帯電に起因して、測長点の正確な測定が困難となる。特に、低加速電圧(例えば、100V)で加速された1次ビームは、ブランキングによる帯電によって大きな影響を受ける。
【0006】
また、ブランキング時の荷電粒子線が走査領域を横切ることによって、走査領域にダメージ(シュリンク)が発生する。特に、EUVによる微細加工技術で製造された半導体デバイスの微細パターンの計測においては、走査領域のダメージ(シュリンク)を最小限にする必要がある。
【0007】
そこで、本開示は、ブランキングによる走査領域(関心領域)の帯電や関心領域のダメージを抑制することが可能な荷電粒子ビーム装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の荷電粒子ビーム装置は、ビーム源から放出されたビームを関心領域で走査する第1の偏向器と、関心領域を走査したビームを関心領域外に退避させる第2の偏向器と、記憶媒体に記憶されたプログラムを実行するように構成される1以上のプロセッサを含む1以上のコンピュータシステムと、を備え、1以上のコンピュータシステムは、ビームの関心領域での走査方向に基づいて、(i)ビームの退避方向又は退避位置を決定する、(ii)又はビームの退避方向又は退避位置に関する特性情報を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ブランキングによる関心領域の帯電や関心領域のダメージを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】実施例1の荷電粒子ビーム装置の概略構成図である。
図1B】実施例1のコンピュータシステムのハードウェアブロック図である。
図2】実施例1のブランキング方向と荷電粒子ビームの照射軌跡とを示した図である。
図3】実施例1の荷電粒子ビームの走査方向とブランキング方向との関係を示す図である。
図4】実施例1のブランキング方向の決定処理を示すフローチャートである。
図5】実施例2の荷電粒子ビームの走査方向とブランキング方向との関係を示す図である。
図6】実施例3の荷電粒子ビームの走査方向とブランキング方向との関係を示す図である。
図7】実施例3のブランキング方向の最適化処理を示すフローチャートである。
図8】実施例4の複数の走査領域A1~A12の処理順を示した図である。
図9】実施例4の複数の走査領域の処理順の決定処理を示すフローチャートである。
図10】実施例5の複数の走査領域の処理順を示した図である。
図11】実施例5の複数の走査領域の処理順の最適化処理を示すフローチャートである。
図12】実施例6の複数の走査領域の処理順を示した図である。
図13】実施例6のウェハ上の複数の走査領域の処理順を示した図である。
図14】実施例6の複数の走査領域の処理順の調整処理を示すフローチャートである。
図15】実施例7の事前照射領域と走査領域との位置関係を示した図である。
図16】実施例7のブランキング方向の決定処理を示すフローチャートである。
図17】実施例8の事前照射領域と走査領域との位置関係を示した図である。
図18】実施例8のブランキング方向の最適化処理を示すフローチャートである。
図19】実施例9の事前照射領域と走査領域との位置関係を示した図である。
図20】実施例9の事前照射領域の決定処理を示すフローチャートである。
図21】実施例10の事前照射領域と走査領域との位置関係を示した図である。
図22】実施例10の事前照射領域の最適化処理を示すフローチャートである。
図23】実施例11のブランキングの実施有無判定処理を示すフローチャートである。
図24】実施例12の試料に対する荷電粒子ビームの照射時間と試料の帯電量との関係を示した図である。
図25】実施例12のブランキング方向の最適化処理を示すフローチャートである。
図26】実施例12の事前照射領域の最適化処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0012】
<実施例1>
(荷電粒子ビーム装置100)
図1Aは、実施例1の荷電粒子ビーム装置の概略構成図である。実施例1では、荷電粒子ビームを走査ライン単位で退避又は遮断(以下、適宜「ブランキング」とする)する荷電粒子ビーム装置について説明する。なお、ブランキングは、フレーム単位で行ってもよいし、ピクセル単位で行ってもよい。
【0013】
図1Aに示すように、荷電粒子ビーム装置100は、荷電粒子ビーム2のビーム源である電子銃1と、収束レンズ3と、ブランキング偏向器(第2の偏向器)4と、絞り板5と、イメージシフト偏向器(第1の偏向器)6と、対物レンズ7と、ステージ9と、検出器11と、ブランキング電圧印加装置12と、ブランキング電圧制御装置13と、収束レンズ制御装置14と、コンピュータシステム15と、を備える。
【0014】
電子銃1から放出された荷電粒子ビーム(一次ビーム)2は、収束レンズ3の磁場による収束作用によって、絞り板5の絞り穴5aを通過する。絞り穴5aを通過した荷電粒子ビーム2は、イメージシフト偏向器6の電場又は磁場によって、ステージ9に載置された試料8上を走査され、対物レンズ7の磁場による収束作用によって、試料8上で収束される。荷電粒子ビーム2の照射によって試料8から発生した二次電子10は、検出器11によって検出される。これにより、試料8上における荷電粒子ビーム2の走査領域の拡大像が得られる。
【0015】
荷電粒子ビーム2の照射による試料8のダメージを最小限にするために、荷電粒子ビーム2を出来る限り試料8にまき散らさないようにする必要がある。そこで、荷電粒子ビーム装置100では、ライン間、フレーム間、ピクセル間でブランキングを実行する。荷電粒子ビーム2のブランキングを実行する際には、ブランキング偏向器4の電場又は磁場によって、荷電粒子ビーム2を大きく偏向し、試料8より外側の関心領域外(例えば、絞り板5上)に照射する。
【0016】
ブランキング偏向器4は、4つの電極4a~4dを有し、ブランキング電圧印加装置12の4つの駆動回路12a~12dのそれぞれが、4つの電極4a~4dに電圧を印加する。4つの駆動回路12a~12dが印加する電圧の大きさ、方向、及びタイミングは、ブランキング電圧制御装置13によって制御される。ブランキング電圧制御装置13の制御によって、任意の大きさと方向の電場を任意のタイミングで形成することができる。なお、ブランキング偏向器4の電極の数、及びブランキング電圧印加装置12の駆動回路の数は、4つに限定されない。ブランキングの際に、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4の電場の方向に偏向されて、絞り板5で遮蔽される。ブランキング電圧制御装置13は、コンピュータシステム15からブランキング制御情報を受信し、ブランキング制御情報に従って4つの駆動回路12a~12dの動作を制御する。ブランキング制御情報は、荷電粒子ビーム2が走査される走査領域から退避領域に向かって荷電粒子ビーム2を退避させる方向(以下、ブランキング退避方向とする)、退避領域から走査領域に向かって荷電粒子ビーム2を進入させる方向(以下、ブランキング解除方向)、ブランキングのタイミングを示すタイミング情報、等を含む。
【0017】
(コンピュータシステム15)
図1Bは、実施例1のコンピュータシステムのハードウェアブロック図である。図1Bを参照して、実施例1のコンピュータシステム15の詳細を説明する。コンピュータシステム15は、後述するフローチャートの各処理を実行する。コンピュータシステム15は、プロセッサ151と、主記憶部152と、補助記憶部153と、入出力インタフェース(以下、インタフェースをI/Fと略記する)154と、通信I/F155と、表示器156と、上記した各モジュールを通信可能に接続するバス157と、を有する。
【0018】
プロセッサ151は、中央処理演算装置である。プロセッサ151は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等である。プロセッサ151は、補助記憶部153に記憶されるプログラムを主記憶部152の作業領域に実行可能に展開して実行する。主記憶部152は、プロセッサ151が実行するプログラム、当該プロセッサが処理するデータ等を記憶する。主記憶部152は、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等である。補助記憶部(記憶媒体)153は、例えば、ブランキング方向の決定処理に係るプログラムなどを記憶する。補助記憶部153は、例えば、ソリッドステートドライブ装置、ハードディスクドライブ装置等である。
【0019】
入出力I/F154は、ブランキング電圧制御装置13、及び収束レンズ制御装置14と通信可能に接続される。上記したブランキング制御情報は、入出力I/F154を介して、ブランキング電圧制御装置13に送信される。通信I/F155は、ネットワークを介して外部機器と通信可能に接続するためのインタフェースである。表示器156は、各種情報を表示する。
【0020】
コンピュータシステム15は、オンプレミスのコンピュータシステムであってもよいし、クラウド上のコンピュータシステムであってもよい。コンピュータシステム15は、1以上のコンピュータシステムから構成される。
【0021】
(ブランキング)
図2は、実施例1のブランキング方向と荷電粒子ビームの照射軌跡とを示した図である。図2には、説明の簡略化のために、ブランキング偏向器4の2つの電極4a及び4cのみ図示される。図2では、ブランキング偏向器4の電極4a及び4cと、荷電粒子ビーム2が走査される走査領域(関心領域、測長領域、又は検査領域)Aと、ブランキング時に荷電粒子ビーム2が照射されるブランキング照射領域Bとの位置関係を示している。
【0022】
まず、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、退避領域C(絞り板5の上)からブランキング解除方向BLK1に沿って走査領域Aまで偏向される。そして、荷電粒子ビーム2は、イメージシフト偏向器6の電場又は磁場によって、走査領域A上を走査方向Sに沿って走査される。走査領域Aの走査中に、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、走査領域Aからブランキング退避方向BLK2に沿って退避領域Cまで偏向される。
【0023】
(走査方向とブランキング方向との関係)
図3は、実施例1の荷電粒子ビームの走査方向とブランキング方向との関係を示す図である。図3を参照して、荷電粒子ビーム2の走査方向Sとブランキング方向(ブランキング退避方向BLK2、ブランキング解除方向BLK1)との関係について説明する。
【0024】
実施例1では、荷電粒子ビーム2のブランキング時に後続の走査領域(未走査領域)を横切らないように、走査方向Sに基づいてブランキング方向又はブランキング位置が自動的に決定される。また、実施例1では、荷電粒子ビーム2のブランキング時に走査領域Aの未走査領域を除く他の領域に荷電粒子ビーム2が照射されるように、走査方向Sに基づいてブランキング方向又はブランキング位置を自動的に決定してもよい。図3(a)に示すように、走査領域Aにおける荷電粒子ビーム2の走査方向Sが+X方向の場合、ブランキング解除方向BLK1は-Y方向となり、ブランキング退避方向BLK2は+Y方向となる。また、図3(b)に示すように、走査領域Aにおける荷電粒子ビーム2の走査方向Sが-Y方向の場合、ブランキング解除方向BLK1は-X方向となり、ブランキング退避方向BLK2は+X方向となる。また、図3(c)に示すように、走査領域Aにおける荷電粒子ビーム2の走査方向Sが-X方向の場合、ブランキング解除方向BLK1は+Y方向となり、ブランキング退避方向BLK2は-Y方向となる。また、図3(d)に示すように、走査領域Aにおける荷電粒子ビーム2の走査方向Sが+Y方向の場合、ブランキング解除方向BLK1は+X方向となり、ブランキング退避方向BLK2は-X方向となる。
【0025】
また、実施例1では、荷電粒子ビーム2は、荷電粒子ビーム2の退避位置から近い順に走査方向Sに沿って複数回走査される。すなわち、走査領域Aにおける走査の進行方向Tは、ブランキング退避方向BLK2の反対方向(ブランキング解除方向BLK1)に進行する。例えば、実施例1では、図3(a)に示すように、走査領域Aにおいて-Y方向に向かって第1の走査(No.1)、第2の走査(No.2)、第3の走査(No.3)、及び第4の走査(No.4)が順次実行される。
【0026】
なお、ブランキング方向及びブランキング位置は、走査領域Aにおける走査の進行方向Tに基づいて決定してもよい。
【0027】
(ブランキング方向の決定処理)
図4は、実施例1のブランキング方向の決定処理を示すフローチャートである。図4のフローチャートの各ステップは、補助記憶部153に記憶されるブランキング方向の決定処理に係るプログラムをプロセッサ151が実行することによって、実行される。
【0028】
コンピュータシステム15は、走査領域Aの走査条件や手順などを含むレシピ情報から走査領域Aの位置、及び走査領域Aにおける荷電粒子ビーム2の走査方向Sを取得する(ステップS401)。なお、走査領域Aの位置とは、処理対象であるパターンの位置、処理対象を含むFOV(Field of View(視野))の位置を意味する。次に、コンピュータシステム15は、走査領域Aにおける荷電粒子ビーム2の走査方向Sに基づいて、ブランキング方向又はブランキング位置を決定する(ステップS402)。例えば、コンピュータシステム15は、走査方向Sに対して、時計回りに約90°回転させた方向をブランキング解除方向BLK1とし、反時計回りに約90°回転させた方向をブランキング退避方向BLK2とする。
【0029】
なお、コンピュータシステム15は、走査方向S及び走査領域Aにおける走査の進行方向Tに基づいてブランキング方向を決定してもよい。さらに、コンピュータシステム15は、表示器156やコンピュータシステム15と通信可能に接続される他の表示器に、ブランキング方向又はブランキング位置に関する情報を表示してもよい。
【0030】
(実施例1の効果)
実施例1では、走査領域Aにおける荷電粒子ビーム2の走査方向Sに基づいて、ブランキング方向又はブランキング位置を決定することができる。これにより、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aにおける未走査領域を横切るのを防止することができる。その結果、ブランキングによる走査領域の帯電や走査領域のダメージを防止することができる。
【0031】
実施例1では、荷電粒子ビーム2が退避位置から近い順に走査方向Sに沿って複数回走査される。これにより、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が、走査領域Aにおける未走査領域を横切るのを防止することができる。
【0032】
<実施例2>
実施例1では、ブランキング退避方向BLK2に沿って退避された荷電粒子ビーム2をその退避位置からブランキング解除方向BLK1に沿って荷電粒子ビーム2を次の走査の開始位置まで移動させる。一方、実施例2では、ブランキング退避方向BLK2に沿って退避された荷電粒子ビーム2を、その退避位置から走査領域外を通過して解除位置まで移動させ、この解除位置からブランキング解除方向BLK1に沿って次の走査の開始位置まで移動させる。
【0033】
図5は、実施例2の荷電粒子ビームの走査方向とブランキング方向との関係を示す図である。図5を参照して、実施例2の走査方向Sとブランキング方向(ブランキング解除方向BLK1、ブランキング退避方向BLK2、ブランキング移動方向BLK3)との関係について説明する。
【0034】
荷電粒子ビーム2は、イメージシフト偏向器6の電場又は磁場によって、走査領域A上を走査方向Sに沿って走査される。そして、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、走査領域Aからブランキング退避方向BLK2に沿って退避領域Cまで偏向される。電極4aの近傍の退避位置まで偏向された荷電粒子ビーム2は、絞り板5上をブランキング移動方向BLK3に沿って、電極4dの近傍の解除位置まで偏向される。そして、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、電極4dの近傍の解除位置からブランキング解除方向BLK1に沿って次の走査の開始位置まで偏向される。
【0035】
(実施例2の効果)
実施例2では、ブランキングの退避位置とブランキングの解除位置とを異ならせることができるので、ブランキング退避方向BLK2及びブランキング解除方向BLK1の自由度が大きくなる。その結果、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域を横切らないように、容易にブランキング退避方向BLK2及びブランキング解除方向BLK1を決定することができる。その他の効果は、他の実施例と同様である。
【0036】
<実施例3>
実施例1では、走査領域Aにおける荷電粒子ビーム2の走査方向Sに基づいてブランキング方向及びブランキング位置を決定したが、実施例3では、ブランキング時に後続の走査領域を横切らないか否かを判断して、ブランキング方向及びブランキング位置を変更する。
【0037】
図6は、実施例3の荷電粒子ビームの走査方向とブランキング方向との関係を示す図である。実施例3では、ブランキング時に後続の走査領域を横切らないか否かを判断して、ブランキング方向又はブランキング位置を変更する。そして、実施例3では、荷電粒子ビーム2のブランキング時に走査領域Aの未走査領域を除く他の領域に荷電粒子ビーム2が照射されるように、ブランキング方向又はブランキング位置を決定する。図6に示すように、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、退避領域からブランキング解除方向BLK1に沿って走査領域Aまで偏向される。そして、荷電粒子ビーム2は、イメージシフト偏向器6の電場又は磁場によって、走査領域A上を走査方向S(+X方向)に沿って走査される。そして、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、走査領域Aからブランキング退避方向BLK2に沿って退避領域まで偏向される。
【0038】
しかし、ブランキング退避方向BLK2に沿って偏向される荷電粒子ビーム2は、走査領域Aの後続の走査領域(未走査領域)Uを横切る。これでは、後続の走査領域(未走査領域)Uがブランキング時の荷電粒子ビーム2によって帯電したりダメージを受けたりしてしまう。そこで、実施例3では、ブランキング時に、荷電粒子ビーム2が後続の走査領域(未走査領域)Uを横切らないように、ブランキング方向及びブランキング位置を変更する。例えば、図6の例では、ブランキング解除方向BLK1が+X方向から-Y方向に、ブランキング退避方向BLK2が-X方向から+Y方向に変更される。すなわち、変更後のブランキング解除方向BLK1´は-Y方向となり、変更後のブランキング退避方向BLK2´は+Y方向となる。
【0039】
(ブランキング方向の最適化処理)
図7は、実施例3のブランキング方向の最適化処理を示すフローチャートである。図7のフローチャートの各ステップは、補助記憶部153に記憶されるブランキング方向の最適化処理に係るプログラムをプロセッサ151が実行することによって、実行される。
【0040】
コンピュータシステム15は、変更前のブランキング方向、走査領域Aの位置、及び走査領域Aにおける荷電粒子ビーム2の走査方向Sを取得する(ステップS701)。次に、コンピュータシステム15は、取得したブランキング方向、走査領域Aの位置、及び走査方向Sに基づいて、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域(未走査領域)Uを横切るか否かを判断する(ステップS702)。ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域(未走査領域)Uを横切ると判断した場合(ステップS702:Yes)、コンピュータシステム15は、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域(未走査領域)Uを横切らないようにブランキング方向を変更する(ステップS703)。なお、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域(未走査領域)Uを横切らないと判断した場合(ステップS702:No)、ブランキング方向を変更せずに、本処理を終了する。
【0041】
ステップS703は、ブランキング方向を所定角度(例えば、90°)回転させるステップであってもよい。この場合、ステップ702の判断を再度実行し、回転後のブランキングにおいて荷電粒子ビーム2が後続の走査領域(未走査領域)Uを横切るか否かを判断する。回転後のブランキングにおいて荷電粒子ビーム2が後続の走査領域(未走査領域)Uを横切らないと判断するまで、ブランキング方向を繰り返し所定角度変更してもよい。
【0042】
コンピュータシステム15は、表示器156やコンピュータシステム15と通信可能に接続される他の表示器に、ブランキング方向又はブランキング位置に関する特性情報を表示してもよい。特性情報とは、例えば、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域を横切ることを示唆するメッセージ、ブランキング方向の変更を促すメッセージなどを含む。
【0043】
(実施例3の効果)
実施例3では、ステップS702において、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域(未走査領域)Uを横切るか否かを判断しているので、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域(未走査領域)Uを確実に横切らないようにすることができる。その他の効果は、他の実施例と同様である。
【0044】
<実施例4>
実施例4では、複数の走査領域A1~A12を走査する例について説明する。実施例4では、複数の走査領域A1~A12の処理(例えば、観察、測長、検査、分析など)順を決定することによって、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域を横切らないようにする。そして、実施例4では、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が複数の走査領域A1~A12の未走査領域を除く他の領域に照射されるように、複数の走査領域A1~A12の処理順を決定する。
【0045】
図8は、実施例4の複数の走査領域A1~A12の処理順を示した図である。図8を参照して、実施例4の複数の走査領域A1~A12の処理順を説明する。説明の簡略化のため、図8では、複数の走査領域A1~A12の走査方向Sは、全て同じ方向とする。実施例4では、複数の走査領域A1~A12の各位置に関する第1の情報、及び荷電粒子ビーム2の退避位置に関する第2の情報に基づいて、複数の走査領域A1~A12の処理順を決定する。走査領域A1~A12の位置とは、測定対象となるパターン、又は測定対象を含むFOVの位置を含む。また、第2の情報は、荷電粒子ビーム2の退避位置、荷電粒子ビーム2の退避方向を含む。
【0046】
まず、実施例1で説明したように、走査方向Sに基づいてブランキング方向が決定される。そして、そのブランキング退避方向BLK2にある退避位置から各走査領域A1~A12の位置までの距離を算出し、複数の走査領域A1~A12の処理順を決定する。図8の例では、退避位置から近い順に、走査領域A10、A11、A12、A7、A8、A9、A4、A5、A6、A1、A2、及びA3が配置されている。そのため、図8の例では、複数の走査領域A1~A12は、走査領域A10、A11、A12、A7、A8、A9、A4、A5、A6、A1、A2、及びA3の順に処理される。なお、図8中の番号は、処理順を示す。
【0047】
(複数の走査領域の処理順の決定処理)
図9は、実施例4の複数の走査領域の処理順の決定処理を示すフローチャートである。フローチャートの各ステップは、補助記憶部153に記憶される複数の走査領域の処理順の決定処理に係るプログラムをプロセッサ151が実行することによって、実行される。
【0048】
コンピュータシステム15は、複数の走査領域A1~A12の位置に関する位置情報及び走査方向Sを取得する(ステップS901)。位置情報は、複数の走査領域A1~A12に対する荷電粒子ビーム2の照射位置に関する情報であってもよい。そして、コンピュータシステム15は、複数の走査領域A1~A12の走査方向Sに基づいて、ブランキング方向を決定する(ステップS902)。このブランキング方向を決定する処理は、実施例1と同様である。そして、コンピュータシステム15は、ブランキング方向(ブランキング退避方向)にある退避位置と、複数の走査領域A1~A12の位置との間の距離を算出し(ステップS903)、算出した距離順に従って、複数の走査領域A1~A12の処理順を決定する(ステップS904)。
【0049】
そして、コンピュータシステム15は、イメージシフト偏向器6及びブランキング偏向器4を制御して、複数の走査領域A1~A12と退避位置とを往復しつつ、決定された処理順に従って複数の走査領域A1~A12を処理する。
【0050】
コンピュータシステム15は、表示器156やコンピュータシステム15と通信可能に接続される他の表示器に、複数の走査領域A1~A12の処理順に関する順番情報を表示してもよい。順番情報とは、例えば、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域を横切ることを示唆するメッセージ、複数の走査領域A1~A12の処理順の変更を促すメッセージなどを含む。
【0051】
(実施例4の効果)
実施例4では、複数の走査領域A1~A12の位置と荷電粒子ビーム2の退避位置とに基づいて複数の走査領域A1~A12の処理順が決定されるので、先に処理された走査領域A1~A12でのブランキングによって、後続の走査領域が帯電したりダメージを受けたりすることを防止することができる。その他の効果は、他の実施例と同様である。
【0052】
<実施例5>
実施例4では、複数の走査領域A1~A12の位置及び走査方向Sに基づいて複数の走査領域A1~A12の処理順を決定したが、実施例5では、ブランキング時に後続の走査領域を横切らないか否かを判断して、複数の走査領域A1~A12の処理順を最適化する。
【0053】
図10は、実施例5の複数の走査領域の処理順を示した図である。実施例5では、ブランキング時に後続の走査領域を横切らないか否かを判断して、複数の走査領域の処理順が自動的に最適化される。図10(a)に示すように、最適化前では、複数の走査領域A1~A12は、この処理順で処理される。この場合、例えば、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、退避位置からブランキング解除方向BLK1に沿って走査領域A1まで偏向される。そして、荷電粒子ビーム2は、イメージシフト偏向器6の電場又は磁場によって、走査領域A1上を走査方向Sに沿って走査される。そして、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、走査領域A1からブランキング退避方向BLK2に沿って退避位置まで偏向される。荷電粒子ビーム2がブランキング解除方向BLK1に沿って走査領域A1まで偏向されるとき、及び荷電粒子ビーム2がブランキング退避方向BLK2に沿って退避位置まで偏向されるとき、荷電粒子ビーム2は、走査領域A1の後に処理される走査領域A4、A7及びA10を横切る。そのため、走査領域A1の後に処理される走査領域A4、A7及びA10が帯電したり、ダメージ受けたりしてしまう。
【0054】
そこで、実施例5では、図10(b)に示すように、最適化後では、複数の走査領域A1~A12は、退避位置から近い順に、走査領域A10、A11、A12、A7、A8、A9、A4、A5、A6、A1、A2、及びA3の順に処理される。なお、図10中の番号は、処理順を示す。
【0055】
(複数の走査領域の処理順の最適化処理)
図11は、実施例5の複数の走査領域の処理順の最適化処理を示すフローチャートである。フローチャートの各ステップは、補助記憶部153に記憶される複数の走査領域の処理順の最適化処理に係るプログラムをプロセッサ151が実行することによって、実行される。
【0056】
コンピュータシステム15は、複数の走査領域A1~A12の位置、ブランキング方向、及び複数の走査領域A1~A12の処理順を取得する(ステップS1101)。そして、コンピュータシステム15は、取得した複数の走査領域A1~A12の位置、ブランキング方向、及び複数の走査領域A1~A12の処理順に基づいて、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域A1~A12を横切るか否かを判断する(ステップS1102)。ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域A1~A12を横切ると判断した場合(ステップS1102:Yes)、コンピュータシステム15は、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域A1~A12を横切らないように走査領域A1~A12の処理順を変更する(ステップS1103)。なお、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域A1~A12を横切らないと判断した場合(ステップS1102:No)、走査領域A1~A12の処理順を変更せずに、本処理を終了する。
【0057】
コンピュータシステム15は、表示器156やコンピュータシステム15と通信可能に接続される他の表示器に、複数の走査領域A1~A12の処理順に関する特性情報を表示してもよい。特性情報とは、例えば、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域を横切ることを示唆するメッセージ、複数の走査領域A1~A12の処理順の変更を促すメッセージなどを含む。
【0058】
(実施例5の効果)
実施例5では、ステップS1102において、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域A1~A12を横切るか否かを判断しているので、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域A1~A12を確実に横切らないようにすることができる。その他の効果は、他の実施例と同様である。
【0059】
<実施例6>
実施例5で説明した走査領域A1~A12の処理順は、ブランキング時の荷電粒子ビーム2の影響を受けない範囲であれば、他の基準に従って変更してもよい。例えば、実施例6では、走査領域A1~A12の処理順は、ブランキング時の荷電粒子ビーム2の影響を受けない範囲で、走査領域A1~A12の移動距離に従って調整される。
【0060】
図12は、実施例6の複数の走査領域の処理順を示した図である。実施例6では、荷電粒子ビーム2の移動距離に従って、決定又は最適化した走査領域A1~A12の処理順を調整する。図12(a)に示すように、調整前では、複数の走査領域A1~A12は、走査領域A10、A11、A12、A7、A8、A9、A4、A5、A6、A1、A2、及びA3の順に処理される。この場合、後続の走査領域A1~A12はブランキング時の荷電粒子ビーム2の影響は受けないが、例えば、走査領域A12の次に走査領域A7を処理することになり、走査領域A12の次に走査領域A9を処理する場合に比べて、走査領域間の移動距離が長くなる。その結果、計測にかかる時間も増加してしまう。
【0061】
そこで、実施例6では、図12(b)に示すように、調整後では、荷電粒子ビーム2の移動距離に従って、複数の走査領域A1~A12は、走査領域A10、A11、A12、A9、A8、A7、A4、A5、A6、A3、A2、及びA1の順に処理される。なお、図12中の番号は、処理順を示す。
【0062】
また、図13は、実施例6のウェハ上の複数の走査領域の処理順を示した図である。図13に示した例も図12の例と同様で、走査領域A1~A12の移動距離に従って、決定又は最適化した走査領域A1~A11の処理順を調整する。図13(a)に示すように、変更前では、ウェハW上の複数の走査領域A1~A11は、走査領域A1、A3、A8、A11、A9、A4、A2、A7、A10、A5、及びA6の順に処理される。この場合、後続の走査領域A1~A12はブランキング時の荷電粒子ビーム2の影響は受けないが、例えば、走査領域A1の次に走査領域A3を処理することになり、走査領域A1の次に走査領域A2を処理する場合に比べて、走査領域間の移動距離が長くなる。
【0063】
そこで、実施例6では、図13(b)に示すように、調整後では、荷電粒子ビーム2の移動距離に従って、複数の走査領域A1~A11は、走査領域A1、A2、A3、A8、A7、A6、A5、A4、A9、A10、及びA11の順に処理される。なお、図13中の番号は、処理順を示す。
【0064】
(複数の走査領域の処理順の調整処理)
図14は、実施例6の複数の走査領域の処理順の調整処理を示すフローチャートである。フローチャートの各ステップは、補助記憶部153に記憶される複数の走査領域の処理順の調整処理に係るプログラムをプロセッサ151が実行することによって、実行される。
【0065】
コンピュータシステム15は、ステップS1401~S1403の処理を実行する。ステップS1401~S1403の内容は、図11のステップS1101~S1103の内容と同じであるので、その説明を省略する。次に、コンピュータシステム15は、荷電粒子ビーム2の移動距離が最短であるか否かを判断し(ステップS1404)、移動距離が最短であると判断すると(ステップS1404:Yes)、本処理を終了する。一方で、移動距離が最短でないと判断すると(ステップS1404:No)、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が後続の走査領域A1~A12を横切らない範囲で、荷電粒子ビーム2の移動距離が最短となるように、走査領域A1~A12の処理順を調整する(ステップS1405)。
【0066】
コンピュータシステム15は、表示器156やコンピュータシステム15と通信可能に接続される他の表示器に、複数の走査領域A1~A12の処理順に関する特性情報を表示してもよい。特性情報とは、例えば、荷電粒子ビーム2の移動距離が長いことを示唆するメッセージ、複数の走査領域A1~A12の処理順の調整を促すメッセージなどを含む。
【0067】
(実施例6の効果)
実施例6では、走査領域A1~A12の移動距離が最短となるように走査領域A1~A12の処理順が調整されるので、複数の走査領域A1~A12の処理が完了するまでの時間を短縮することができる。その他の効果は、他の実施例と同様である。
【0068】
<実施例7>
実施例1~6では、走査領域Aの走査前後のブランキング時に走査領域Aの未走査領域を横切らないように、ブランキング方向やブランキング位置を決定及び変更したり、複数の走査領域A1~A12の後続の未走査領域を横切らないように複数の走査領域A1~A12の処理順を決定及び変更したりする。実施例7では、走査領域Aの前に走査される事前照射領域Pの走査前後のブランキング時に走査領域Aを横切らないように、ブランキング方向又はブランキング位置を決定する。事前照射領域Pは、オートフォーカス、アドレッシング、パターンマッチングのために使用される。
【0069】
図15は、実施例7の事前照射領域と走査領域との位置関係を示した図である。実施例7では、事前照射領域Pの位置と走査領域Aの位置とに基づいて、事前照射領域Pの走査前後のブランキング方向及びブランキング位置を決定する。なお、図15では、説明の簡略化のために、事前照射領域P及び走査領域Aにおける荷電粒子ビーム2の走査方向PS及びSを+X方向とする。図15(a)に示すように、事前照射領域Pが走査領域Aの+X方向側に配置される場合、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング解除方向BLK1は-Y方向となり、ブランキング退避方向BLK2は+Y方向となる。また、図15(b)に示すように、事前照射領域Pが走査領域Aの-Y方向側に配置される場合、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング解除方向BLK1は+Y方向となり、ブランキング退避方向BLK2は-Y方向となる。また、図15(c)に示すように、事前照射領域Pが走査領域Aの-X方向側に配置される場合、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング解除方向BLK1は-Y方向となり、ブランキング退避方向BLK2は+Y方向となる。また、図15(d)に示すように、事前照射領域Pが走査領域Aの+Y方向側に配置される場合、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング解除方向BLK1は-Y方向となり、ブランキング退避方向BLK2は+Y方向となる。
【0070】
(ブランキング方向の最適化処理)
図16は、実施例7のブランキング方向の決定処理を示すフローチャートである。図16のフローチャートの各ステップは、補助記憶部153に記憶されるブランキング方向の決定処理に係るプログラムをプロセッサ151が実行することによって、実行される。
【0071】
コンピュータシステム15は、走査領域Aの位置、及び事前照射領域Pの位置を取得する(ステップS1601)。次に、コンピュータシステム15は、走査領域Aの位置、及び事前照射領域Pの位置に基づいて、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング方向又はブランキング位置を決定する(ステップS1602)。また、コンピュータシステム15は、走査領域Aの位置、事前照射領域Pの位置、及び走査方向PSに基づいて、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング方向又はブランキング位置を決定してもよい。
【0072】
コンピュータシステム15は、表示器156やコンピュータシステム15と通信可能に接続される他の表示器に、ブランキング方向又はブランキング位置に関する特性情報を表示してもよい。特性情報とは、例えば、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域を横切ることを示唆するメッセージ、ブランキング方向の変更を促すメッセージなどを含む。
【0073】
(実施例7の効果)
実施例7では、走査領域Aの位置及び事前照射領域Pの位置に基づいて、事前照射領域Pでの走査中におけるブランキング方向又はブランキング位置を決定することができる。これにより、このブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るのを防止することができる。その結果、ブランキングによる走査領域Aの帯電や走査領域Aのダメージを防止することができる。その他の効果は、他の実施例と同様である。
【0074】
<実施例8>
実施例7では、走査領域Aの位置、及び事前照射領域Pの位置に基づいて、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング方向又はブランキング位置を決定したが、実施例8では、事前照射領域Pの走査中のブランキング時に走査領域を横切らないか否かを判断して、ブランキング方向及びブランキング位置を変更する。
【0075】
図17は、実施例8の事前照射領域と走査領域との位置関係を示した図である。実施例8では、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時に走査領域Aを横切らないか否かを判断して、ブランキング方向又はブランキング位置を変更する。図17に示すように、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、退避領域からブランキング解除方向BLK1に沿って事前照射領域Pまで偏向される。そして、荷電粒子ビーム2は、イメージシフト偏向器6の電場又は磁場によって、事前照射領域P上を走査方向PS(+X方向)に沿って走査される。そして、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、事前照射領域Pからブランキング退避方向BLK2に沿って退避領域まで偏向される。
【0076】
しかし、ブランキング解除方向BLK1及びブランキング退避方向BLK2に沿って偏向される荷電粒子ビーム2は、事前照射領域Pの走査後に走査される走査領域Aを横切る。これでは、走査領域Aがブランキング時の荷電粒子ビーム2によって帯電したりダメージを受けたりしてしまう。そこで、実施例8では、ブランキング時に、荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切らないように、ブランキング方向及びブランキング位置を変更する。例えば、図17の例では、ブランキング解除方向BLK1が+X方向から-Y方向に、ブランキング退避方向BLK2が-X方向から+Y方向に変更される。すなわち、変更後のブランキング解除方向BLK1´は-Y方向となり、変更後のブランキング退避方向BLK2´は+Y方向となる。
【0077】
(ブランキング方向の最適化処理)
図18は、実施例8のブランキング方向の最適化処理を示すフローチャートである。図18のフローチャートの各ステップは、補助記憶部153に記憶されるブランキング方向の最適化処理に係るプログラムをプロセッサ151が実行することによって、実行される。
【0078】
コンピュータシステム15は、ブランキング方向、走査領域Aの位置、及び事前照射領域Pの位置を取得する(ステップS1801)。次に、コンピュータシステム15は、取得したブランキング方向、走査領域Aの位置、及び事前照射領域Pの位置に基づいて、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るか否かを判断する(ステップS1802)。ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切ると判断した場合(ステップS1802:Yes)、コンピュータシステム15は、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切らないようにブランキング方向を変更する(ステップS1803)。なお、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切らないと判断した場合(ステップS1802:No)、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング方向を変更せずに、本処理を終了する。
【0079】
コンピュータシステム15は、表示器156やコンピュータシステム15と通信可能に接続される他の表示器に、ブランキング方向又はブランキング位置に関する特性情報を表示してもよい。特性情報とは、例えば、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域を横切ることを示唆するメッセージ、ブランキング方向の変更を促すメッセージなどを含む。
【0080】
(実施例8の効果)
実施例8では、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るのを防止することができる。その結果、事前照射領域Pの走査中におけるブランキングによる走査領域Aの帯電や走査領域Aのダメージを防止することができる。その他の効果は、他の実施例と同様である。
【0081】
<実施例9>
実施例7及び8では、走査領域Aの位置と事前照射領域Pの位置とに基づいて、ブランキング方向又はブランキング位置を決定又は変更したが、実施例9では、ブランキング方向は変更せずに事前照射領域Pの位置を決定する。
【0082】
図19は、実施例9の事前照射領域と走査領域との位置関係を示した図である。実施例9では、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時に走査領域Aを横切らないように、事前照射領域Pを決定する。図19(a)に示すように、例えば、事前照射領域の候補P1~P4のうちの候補P3を選択した場合、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、退避領域からブランキング解除方向BLK1に沿って事前照射領域の候補P3まで偏向される。そして、荷電粒子ビーム2は、イメージシフト偏向器6の電場又は磁場によって、事前照射領域の候補P3上を走査方向PS(+X方向)に沿って走査される。そして、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、事前照射領域の候補P3からブランキング退避方向BLK2に沿って退避領域まで偏向される。荷電粒子ビーム2がブランキング解除方向BLK1に沿って事前照射領域の候補P3まで偏向されるとき、及び荷電粒子ビーム2がブランキング退避方向BLK2に沿って事前照射領域の候補P3から退避領域まで偏向されるとき、荷電粒子ビーム2が事前照射領域の候補P3の後に走査される走査領域A1を横切る。そのため、事前照射領域の候補P3の後に処理される走査領域Aが帯電してしまう。
【0083】
そこで、実施例9では、図19(b)に示すように、事前照射領域の走査中におけるブランキング時に走査領域Aを横切らないように、事前照射領域の候補P1を事前照射領域とする。事前照射領域の走査中におけるブランキング時に走査領域Aを横切らなければ、事前照射領域の候補P2やP4を事前照射領域としてもよい。事前照射領域P1は、走査領域Aよりブランキングの退避領域側に配置されるので、事前照射領域P1の走査中におけるブランキング時に、荷電粒子ビーム2は走査領域Aを横切らない。
【0084】
(事前照射領域の決定処理)
図20は、実施例9の事前照射領域の決定処理を示すフローチャートである。フローチャートの各ステップは、補助記憶部153に記憶される事前照射領域の決定処理に係るプログラムをプロセッサ151が実行することによって、実行される。
【0085】
コンピュータシステム15は、走査領域Aの位置、及び走査方向を取得する(ステップS2001)。次に、コンピュータシステム15は、走査領域Aの位置、及び走査方向Sに基づいて、事前照射領域Pの位置を決定する(ステップS2002)。
【0086】
コンピュータシステム15は、表示器156やコンピュータシステム15と通信可能に接続される他の表示器に、事前照射領域の位置に関する情報を表示してもよい。
【0087】
(実施例9の効果)
実施例9では、走査領域Aの位置及び走査方向PSに基づいて、事前照射領域Pの位置を決定することができる。これにより、決定した位置の事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るのを防止することができる。その結果、ブランキングによる走査領域Aの帯電や走査領域Aのダメージを防止することができる。その他の効果は、他の実施例と同様である。
【0088】
<実施例10>
実施例9では、走査領域Aの位置及び走査方向PSに基づいて、事前照射領域Pの位置を決定する。一方、実施例10では、事前照射領域の走査中におけるブランキング時に走査領域を横切らないか否かを判断して、ブランキング方向は変更せずに事前照射領域Pの位置を変更する。
【0089】
図21は、実施例10の事前照射領域と走査領域との位置関係を示した図である。実施例10では、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時に走査領域Aを横切らないか否かを判断して、事前照射位置を変更する。図21(a)に示すように、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、退避領域からブランキング解除方向BLK1に沿って事前照射領域P3まで偏向される。そして、荷電粒子ビーム2は、イメージシフト偏向器6の電場又は磁場によって、事前照射領域P3上を走査方向PS(+X方向)に沿って走査される。そして、荷電粒子ビーム2は、ブランキング偏向器4による電場によって、事前照射領域P3からブランキング退避方向BLK2に沿って退避領域まで偏向される。
【0090】
しかし、ブランキング解除方向BLK1及びブランキング退避方向BLK2に沿って偏向される荷電粒子ビーム2は、事前照射領域P3の走査後に走査される走査領域Aを横切る。これでは、走査領域Aがブランキング時の荷電粒子ビーム2によって帯電したりダメージを受けたりしてしまう。そこで、実施例10では、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時に、荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切らないように、事前照射領域Pの位置を変更する。例えば、図21の例では、事前照射領域の位置が、事前照射領域P3から事前照射領域P1に変更される。すなわち、実施例10では、退避領域から見て、走査領域Aより遠いところに配置された事前照射領域P3が、走査領域Bより近いことに配置された事前照射領域P1に変更される。
【0091】
(事前照射領域の位置の最適化処理)
図22は、実施例10の事前照射領域の最適化処理を示すフローチャートである。図22のフローチャートの各ステップは、補助記憶部153に記憶される事前照射領域の最適化処理に係るプログラムをプロセッサ151が実行することによって、実行される。
【0092】
コンピュータシステム15は、ブランキング方向、走査領域Aの位置、及び事前照射領域Pの位置を取得する(ステップS2201)。次に、コンピュータシステム15は、取得したブランキング方向、走査領域Aの位置、及び事前照射領域Pの位置に基づいて、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るか否かを判断する(ステップS2202)。事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切ると判断した場合(ステップS2202:Yes)、コンピュータシステム15は、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切らないように事前照射領域Pの位置を変更する(ステップS2203)。なお、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切らないと判断した場合(ステップS2202:No)、事前照射領域Pの位置を変更せずに、本処理を終了する。
【0093】
コンピュータシステム15は、表示器156やコンピュータシステム15と通信可能に接続される他の表示器に、事前照射領域の位置に関する特性情報を表示してもよい。特性情報とは、例えば、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域を横切ることを示唆するメッセージ、事前照射領域の位置の変更を促すメッセージなどを含む。
【0094】
(実施例10の効果)
実施例10では、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るのを防止することができる。その結果、事前照射領域Pの走査中におけるブランキングによる走査領域Aの帯電や走査領域Aのダメージを防止することができる。その他の効果は、他の実施例と同様である。
【0095】
<実施例11>
実施例11では、事前照射領域Pの走査時にはブランキングを実施しない例について説明する。図23は、実施例11のブランキングの実施有無判定処理を示すフローチャートである。図23のフローチャートの各ステップは、補助記憶部153に記憶されるブランキングの実施有無判定処理に係るプログラムをプロセッサ151が実行することによって、実行される。
【0096】
(ブランキングの実施有無判定処理)
図23に示すように、コンピュータシステム15は、レシピ情報を取得する(ステップS2301)。コンピュータシステム15は、取得したレシピ情報に従って、事前照射領域P、及び走査領域Aの走査を行う。コンピュータシステム15は、荷電粒子ビーム2の走査が事前照射領域Pに対する走査か否かを判断し(ステップS2302)、事前照射領域Pに対する走査でないと判断した場合(ステップS2302:No)、走査領域Aに対する走査中にブランキングを実施する(ステップS2303)。一方で、コンピュータシステム15は、事前照射領域Pに対する走査であると判断した場合(ステップS2302:Yes)、事前照射領域Pの走査中にブランキングを実施しない。例えば、荷電粒子ビーム2は、事前照射領域Pの一の走査ラインを走査した後、ブランキングせずに、次の走査ラインを走査する。
【0097】
なお、コンピュータシステム15は、事前照射領域Pに対する走査であると判断した場合(ステップS2302:Yes)、ブランキング偏向器4をオフにし、事前照射領域Pに対する走査でないと判断した場合(ステップS2302:No)、ブランキング偏向器4をオンにしてもよい。
【0098】
(実施例11の効果)
実施例11では、事前照射領域Pの走査中にブランキングを実施しない。これにより、事前照射領域Pの走査中におけるブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るのを防止することができる。その結果、ブランキングによる走査領域Aの帯電や走査領域Aのダメージを防止することができる。
【0099】
また、実施例11では、事前照射領域Pの走査中にブランキングを実施しないため、荷電粒子ビーム2の退避領域への移動がなくなる。そのため、事前照射領域Pの走査時間を短縮することができる。その他の効果は、他の実施例と同様である。
【0100】
<実施例12>
上記した実施例1~11では、ブランキング時の荷電粒子ビームが走査領域を横切らないようにブランキング方向を決定する等したが、実施例12では、予備帯電として、あえてブランキング時の荷電粒子ビームを走査領域に照射する。
【0101】
図24は、実施例12の試料に対する荷電粒子ビームの照射時間と試料の帯電量との関係を示した図である。一般的に荷電粒子ビームを試料に照射すると試料帯電が進行し、あるところで飽和する。図24に示すように、荷電粒子ビームの照射初期では、試料の帯電量の変化が激しく、像のドリフトやコントラスト異常によって計測が安定しないことがある。そこで、実施例12では、事前照射領域の走査中におけるブランキング時に、あえて走査領域を横切らせて、走査領域の予備帯電を行う。
【0102】
(ブランキング方向の最適化処理)
図25は、実施例12のブランキング方向の最適化処理を示すフローチャートである。図25のフローチャートの各ステップは、補助記憶部153に記憶されるブランキング方向の最適化処理に係るプログラムをプロセッサ151が実行することによって、実行される。
【0103】
コンピュータシステム15は、ブランキング方向、走査領域Aの位置、及び事前照射領域Pの位置を取得する(ステップS2501)。次に、コンピュータシステム15は、取得したブランキング方向、走査領域Aの位置、及び事前照射領域Pの位置に基づいて、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るか否かを判断する(ステップS2502)。ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切ると判断した場合(ステップS2502:Yes)、ブランキング方向を変更せずに、本処理を終了する。一方、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切らないと判断した場合(ステップS2502:No)、コンピュータシステム15は、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るようにブランキング方向を変更する(ステップS2503)。
【0104】
図25のフローチャートでは、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るようにブランキング方向を変更したが、事前照射領域の位置を変更してもよい。図26は、実施例12の事前照射領域の最適化処理を示すフローチャートである。図26のフローチャートの各ステップは、補助記憶部153に記憶される事前照射領域の最適化処理に係るプログラムをプロセッサ151が実行することによって、実行される。
【0105】
図26に示すように、コンピュータシステム15は、ステップS2601及びS2602を実行する。ステップS2601及びS2602の内容は、図25のステップS2501及びS2502と同様であるので、その説明を省略する。そして、コンピュータシステム15は、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るように事前照射領域の位置を変更する(ステップS2603)。
【0106】
また、実施例12では、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るようにブランキング方向を変更したり事前照射領域の位置を変更したりするが、実施例7に倣って、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るように走査領域の位置及び事前照射領域の位置に基づいてブランキング方向を決定してもよいし、実施例9に倣って、ブランキング時の荷電粒子ビーム2が走査領域Aを横切るように走査領域の位置及び走査方向に基づいて事前照射領域の位置を決定してもよい。
【0107】
(実施例12の効果)
実施例12では、ブランキング時の荷電粒子ビームが走査領域を横切るようにブランキング方向又はブランキング位置を変更したり事前照射領域の位置を変更したりすることによって、走査領域を予備帯電させることができる。これにより、走査領域の処理時に図24に示した安定領域で処理(観察、測長、検査、分析など)することができる。
【0108】
なお、本開示は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0109】
1:電子銃、 2:荷電粒子ビーム、 3:収束レンズ、 4:ブランキング偏向器、 4a~4d:電極、 5:絞り板、 5a:絞り穴、 6:イメージシフト偏向器、 7:対物レンズ、 8:試料、 9:ステージ、 10:二次電子、 11:検出器、 12:ブランキング電圧印加装置、 12a~12d:駆動回路、 13:ブランキング電圧制御装置、 14:収束レンズ制御装置、 15:コンピュータシステム、 100:荷電粒子ビーム装置、 151:プロセッサ、 152:主記憶部、 153:補助記憶部、 154:入出力I/F、 155:通信I/F、 156:表示器、 157:バス、 A、A1~A12:走査領域、 B:ブランキング照射領域、 C:退避領域、 BLK1:ブランキング解除方向、 BLK2:ブランキング退避方向、 BLK3:ブランキング移動方向、 S:走査方向、 T:走査領域における走査の進行方向、 U:未走査領域、 P、P1~P4:事前照射領域、 PS:事前照射領域の走査方向
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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