(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150884
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20231005BHJP
C10M 133/06 20060101ALI20231005BHJP
C10M 133/08 20060101ALI20231005BHJP
C10M 129/54 20060101ALI20231005BHJP
C10M 133/16 20060101ALI20231005BHJP
C10M 139/00 20060101ALI20231005BHJP
C10M 137/10 20060101ALI20231005BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20231005BHJP
C10N 30/04 20060101ALN20231005BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20231005BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
C10M169/04 ZHV
C10M133/06
C10M133/08
C10M129/54
C10M133/16
C10M139/00 A
C10M137/10 A
C10N10:04
C10N30:04
C10N30:00 Z
C10N40:25
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060214
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】大木 啓司
(72)【発明者】
【氏名】山下 潤
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BA08A
4H104BB08A
4H104BB24C
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104BE11C
4H104BH03A
4H104BH07C
4H104BJ05C
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104EA22C
4H104FA02
4H104LA02
4H104LA20
4H104PA41
(57)【要約】
【課題】高温清浄性及びロングドレイン性といった特性をより向上させた、内燃機関及び電動機を動力源として有するハイブリッドシステムの内燃機関に好適に使用し得る、潤滑油組成物が求められている。
【解決手段】基油(A)、ヒンダードアミン系化合物(B1)及びアルカノールアミン系化合物(B2)から選ばれる1種以上のアミン系化合物(B)、及び、塩基価が0~100mgKOH/gの中性金属サリシレート(C)を含有する潤滑油組成物であって、成分(B1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1.50質量%以上3.50質量%未満である、潤滑油組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)、ヒンダードアミン系化合物(B1)及びアルカノールアミン系化合物(B2)から選ばれる1種以上のアミン系化合物(B)、及び、塩基価が0~100mgKOH/gの中性金属サリシレート(C)を含有する潤滑油組成物であって、
成分(B1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1.50質量%以上3.50質量%未満である、
潤滑油組成物。
【請求項2】
成分(C)と成分(B1)との含有量比[(C)/(B1)]が、質量比で、0.10~7.00である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
成分(B1)が、下記一般式(b1-1)で表される化合物(B11)及び下記一般式(b1-2)で表される化合物(B12)から選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【化1】
〔上記式中、R
b1は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数1~10のアルコキシ基である。
R
b2は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、環形成炭素数3~18のシクロアルキル基、環形成炭素数6~18のアリール基、水酸基、アミノ基、又は-O-CO-R
b3で表される基(R
b3は、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基)である。
Zは、炭素数1~20のアルキレン基、環形成炭素数3~18のシクロアルキレン基、環形成炭素数6~18のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、又は-O-CO-(CH
2)
n-CO-O-で表される基(nは1~20の整数)である。〕
【請求項4】
成分(B1)が、前記一般式(b1-1)で表される化合物(B11)を少なくとも含む、請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
基油(A)、ヒンダードアミン系化合物(B1)及びアルカノールアミン系化合物(B2)から選ばれる1種以上のアミン系化合物(B)、及び、塩基価が0~100mgKOH/gの中性金属サリシレート(C)を含有する、潤滑油組成物であって、
成分(B2)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、2.20質量%以上である、
潤滑油組成物。
【請求項6】
成分(C)と成分(B2)との含有量比[(C)/(B2)]が、質量比で、0.10~7.00である、請求項5に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
成分(B2)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、2.20~10.0質量%である、請求項5又は6に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
成分(B2)が、ジアルカノールアミン系化合物(B21)を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
さらに、イミド系化合物(E)を含み、
成分(E)が、非ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(E1)及びホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(E2)から選ばれる1種以上を含む、請求項1~8のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
成分(E)が、成分(E1)及び成分(E2)含み、
成分(E1)と成分(E2)との含有量比[(E1)/(E2)]が、質量比で、5.00未満である、請求項9に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
さらに、ジチオリン酸亜鉛(F)を含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
リン原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1000質量ppm以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
ハイブリッドシステムの内燃機関の潤滑に用いられる、請求項1~12のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を充填した、ハイブリッドシステムに搭載される、内燃機関。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の潤滑油組成物をハイブリッドシステムに搭載される内燃機関に適用した、内燃機関の潤滑方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物、当該潤滑油組成物を充填した内燃機関、及び、当該潤滑油組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模での環境規制はますます厳しくなり、特に自動車を取り巻く状況は、燃費規制、排出ガス規制等厳しくなる一方である。この背景には地球温暖化等の環境問題と、石油資源の枯渇に対する懸念からの資源保護がある。このような近年の状況から、自動車の排気ガスによる大気汚染を低減させるために、内燃機関と共に、電動機が搭載されたハイブリッド自動車の生産比率が向上している。
ところで、ハイブリッド自動車の内燃機関の潤滑油には、従来の内燃機関のみで駆動する自動車の内燃機関用潤滑油と同じエンジン油が用いられているが、ハイブリッド自動車の使用環境に適応した内燃機関用潤滑油の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、100N水素化精製鉱油に、ヒンダードアミン化合物、アミン系酸化防止剤、金属系清浄剤、及び有機ジチオリン酸亜鉛を含有し、ヒンダードアミン化合物とアミン系酸化防止剤とを所定比で含有する、ハイブリッド自動車の内燃機関用潤滑油組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況において、例えば、高温清浄性及びロングドレイン性といった特性をより向上させた、内燃機関及び電動機を動力源として有するハイブリッドシステムの内燃機関に好適に使用し得る、潤滑油組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、基油と共に、特定のアミン系化合物および中性金属サリシレートを含有する潤滑油組成物とすることで、上記課題を解決し得ることを見出した。具体的には、本発明は、以下の態様を開示する。
[1]基油(A)、ヒンダードアミン系化合物(B1)及びアルカノールアミン系化合物(B2)から選ばれる1種以上のアミン系化合物(B)、及び、塩基価が0~100mgKOH/gの中性金属サリシレート(C)を含有する潤滑油組成物であって、
成分(B1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1.50質量%以上3.50質量%未満である、
潤滑油組成物。
[2]基油(A)、ヒンダードアミン系化合物(B1)及びアルカノールアミン系化合物(B2)から選ばれる1種以上のアミン系化合物(B)、及び、塩基価が0~100mgKOH/gの中性金属サリシレート(C)を含有する、潤滑油組成物であって、
成分(B2)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、2.20質量%以上である、
潤滑油組成物。
[3]上記[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物を充填した、ハイブリッドシステムに搭載される、内燃機関。
[4]上記[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物をハイブリッドシステムに搭載される内燃機関に適用した、内燃機関の潤滑方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の好適な一態様の潤滑油組成物は、高温清浄性及びロングドレイン性に優れており、より好適な態様においては、これらの特性に加えて、水分が混入した場合でも優れたロングドレイン性を維持し得る。そのため、本発明の一態様の潤滑油組成物は、ハイブリッドシステムの内燃機関の潤滑に好適に使用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載された数値範囲については、上限値及び下限値を任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「好ましくは30~100、より好ましくは40~80」と記載されている場合、「30~80」との範囲や「40~100」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。
また、本明細書に記載された数値範囲として、例えば「60~100」との記載は、「60以上、100以下」という範囲であることを意味する。
さらに、本明細書に記載された上限値及び下限値の規定において、それぞれの選択肢の中から適宜選択して、任意に組み合わせて、下限値~上限値の数値範囲を規定することができる。
加えて、本明細書に記載された好ましい態様として記載の各種要件は複数組み合わせることができる。
【0009】
本明細書において、動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出された値を意味する。
アルカリ金属、アルカリ土類金属、リン原子(P)、ホウ素原子(B)及び亜鉛原子(Zn)の含有量は、JPI-5S-38-92に準拠して測定された値を意味する。
窒素原子(N)の含有量は、JIS K2609:1998に準拠して測定された値を意味する。
塩基価は、JIS K2501「石油製品および潤滑油-中和価試験方法」の7.に準拠して測定される塩酸法による塩基価を意味する。
【0010】
〔潤滑油組成物の構成〕
本発明の一態様の潤滑油組成物は、基油(A)、ヒンダードアミン系化合物(B1)及びアルカノールアミン系化合物(B2)から選ばれる1種以上のアミン系化合物(B)、及び、塩基価が0~100mgKOH/gの中性金属サリシレート(C)を含有し、成分(B)については、下記要件(I)及び(II)の少なくとも一方を満たす。
・要件(I):成分(B1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.60質量%以上3.50質量%未満である。
・要件(II):成分(B)が、少なくとも成分(B2)を含有する。
【0011】
内燃機関と共に電動機が搭載されたハイブリッド自動車の内燃機関は、従来の自動車の内燃機関に比べて、自動車を使用している際であっても停止している時間が長く、クランク室内で結露が生じ易い。そのため、ハイブリッド自動車等のハイブリッドシステムに用いられる潤滑油組成物には、水分が混入しやすく、その水分が要因でロングドレイン性の低下を引き起こしやすい。
また、内燃機関に用いられる潤滑油組成物には、高温清浄性が要求される。一般的に、高温清浄性を向上させた潤滑油組成物とするために、カルシウムスルホネート等の金属系清浄剤を用いる場合が多い。しかしながら、本発明者らの検討によれば、カルシウムスルホネート等の金属系清浄剤は、水が混入した際のロングドレイン性の低下を引き起こしやすいことが分かった。
以上のように、高温清浄性を向上させつつ、水が混入した際のロングドレイン性も良好に保持し得る潤滑油組成物を提供するべく、本発明者らは、鋭意検討し、上記要件(I)及び(II)の少なくとも一方を満たすアミン系化合物(B)と、中性金属サリシレートとを併用した潤滑油組成物とすることで、上記問題が解決し得るという知見を得た。本発明の一態様の潤滑油組成物は、当該知見に基づいて完成されたものである。
【0012】
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに、成分(B)には該当しない酸化防止剤(D)を含有してもよい。
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに、イミド系化合物(E)を含有してもよい。
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに、ジチオリン酸亜鉛(F)を含有してもよい。
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに、有機モリブデン系化合物(G)を含有してもよい
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、上記成分(B)~(G)以外の他の潤滑油用添加剤を含有してもよい。
【0013】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)、(B)及び(C)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上であり、また、100質量%以下、99.99質量%以下、99.90質量%以下、99.50質量%以下、99.0質量%以下、98.0質量%以下、97.0質量%以下、95.0質量%以下、92.0質量%以下、又は91.0質量%以下としてもよい。
【0014】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、また、100質量%以下、99.99質量%以下、99.90質量%以下、99.50質量%以下、又は99.0質量%以下としてもよい。
【0015】
以下、本発明の一態様の潤滑油組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0016】
<成分(A):基油>
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)として用いる基油は、鉱油及び合成油から選ばれる1種以上が挙げられる。
鉱油としては、例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油、ナフテン基系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる精製油;等が挙げられる。
【0017】
合成油としては、例えば、α-オレフィン単独重合体、又はα-オレフィン共重合体(例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体等の炭素数8~14のα-オレフィン共重合体)等のポリα-オレフィン;イソパラフィン;ポリアルキレングリコール;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等のエステル系油;ポリフェニルエーテル等のエーテル系油;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる合成油(GTL)等が挙げられる。
【0018】
本発明の一態様で用いる成分(A)は、API(米国石油協会)基油カテゴリーのグループII及びグループIIIに分類される鉱油、並びに合成油から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0019】
本発明の一態様で用いる成分(A)の40℃における動粘度は、好ましくは3.0~120mm2/s、より好ましくは3.5~100mm2/s、更に好ましくは4.0~70mm2/s、より更に好ましくは4.5~50mm2/s、特に好ましくは5.0~30mm2/sである。
【0020】
本発明の一態様で用いる成分(A)の粘度指数は、好ましくは70以上、より好ましくは90以上、更に好ましくは100以上、より更に好ましくは110以上、特に好ましくは120以上である。
なお、本発明の一態様において、成分(A)として、2種以上の基油を組み合わせた混合油を用いる場合、当該混合油の動粘度及び粘度指数が上記範囲であることが好ましい。
【0021】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、また、99.4質量%以下、99.0質量%以下、97.0質量%以下、95.0質量%以下、92.0質量%以下、又は90.0質量%以下としてもよい。
【0022】
<成分(B):アミン系化合物>
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)として用いるアミン系化合物は、ヒンダードアミン系化合物(B1)及びアルカノールアミン系化合物(B2)から選ばれる1種以上である。また、成分(B)は、下記要件(I)及び(II)の少なくとも一方を満たす。
・要件(I):成分(B1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1.50質量%以上3.50質量%未満である。
・要件(II):成分(B2)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、2.20質量%以上である。
【0023】
本発明の一態様の潤滑油組成物は、上記要件(I)及び(II)の少なくとも一方を満たすように成分(B)を含有しているため、ロングドレイン性を格段に向上させることができ、特に、劣化の要因となる水が混入しても、ロングドレイン性を良好に保持することができる。
本発明の一態様で用いる成分(B)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)の含有量は、上記要件(I)及び(II)の少なくとも一方を満たすように調整されるが、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、水が混入してもロングドレイン性がより優れた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは1.50質量%以上、より好ましくは1.70質量%以上、より好ましくは2.00質量%以上、更に好ましくは2.10質量%以上、更に好ましくは2.20質量%以上、より更に好ましくは2.50質量%以上、特に好ましくは2.70質量%以上であり、また、高温清浄性を良好とした潤滑油組成物とする観点から、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは9.5質量%以下、より好ましくは9.0質量%以下、更に好ましくは8.5質量%以下、更に好ましくは8.0質量%以下、より更に好ましくは7.5質量%以下、特に好ましくは7.0質量%以下であり、さらに、6.5質量%以下、6.0質量%以下、5.5質量%以下、5.0質量%以下、4.5質量%以下、4.0質量%以下、又は3.5質量%未満としてもよい。
【0025】
<成分(B1):ヒンダードアミン系化合物>
本発明の一態様において、成分(B1)として用いるヒンダードアミン系化合物としては、下記式(b1-0)で表される構造を含む化合物であればよい。
【化1】
上記式中、*1及び*2は、他の原子との結合位置を示す。
【0026】
本発明の一態様で用いる成分(B1)は、下記一般式(b1-1)で表される化合物(B11)及び下記一般式(b1-2)で表される化合物(B12)から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【化2】
【0027】
上記一般式(b1-1)及び(b1-2)中、Rb1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数1~10のアルコキシ基である。
上記一般式(b1-1)中、Rb2は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、環形成炭素数3~18のシクロアルキル基、環形成炭素数6~18のアリール基、水酸基、アミノ基、又は-O-CO-Rb3で表される基(Rb3は、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基)である。
上記一般式(b1-2)中、Zは、炭素数1~20のアルキレン基、環形成炭素数3~18のシクロアルキレン基、環形成炭素数6~18のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、又は-O-CO-(CH2)n-CO-O-で表される基(nは1~20の整数)である。
【0028】
Rb1として選択し得る、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基)、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
Rb1として選択し得る、前記アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3である。
【0029】
Rb1として選択し得る、前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(n-プロポキシ基、イソプロポキシ基)、ブトキシ基(n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソブトキシ基)、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、-(CH2)n-で表される基(nは1~20の整数)等が挙げられる。当該アルコキシ基は、直鎖アルコキシ基であってもよく、分岐鎖アルコキシ基であってもよい。
Rb1として選択し得る、前記アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3である。
【0030】
Rb2として選択し得る、前記アルキル基としては、Rb1として選択し得る上述の炭素数1~10のアルキル基に加えて、例えば、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
Rb2として選択し得る、前記アルキル基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは3~18、更に好ましくは6~16、より更に好ましくは8~14である。
【0031】
Rb2として選択し得る、前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。
Rb2として選択し得る、前記シクロアルキル基の環形成炭素数は、好ましくは3~18、より好ましくは5~15、更に好ましくは6~12である。
【0032】
Rb2として選択し得る、前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェニルナフチル基等が挙げられる。
Rb2として選択し得る、前記アリール基の環形成炭素数は、好ましくは6~18、より好ましくは6~15、更に好ましくは6~12である。
【0033】
Zとして選択し得る、前記アルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,1-エチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン、1,2-プロピレン、2,2-プロピレン等の各種プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種へプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基、各種ウンデシレン基、各種ドデシレン基、各種トリデシレン基、各種テトラデシレン基、各種ペンタデシレン基、各種ヘキサデシレン基、各種ヘプタデシレン基、各種オクタデシレン基等が挙げられる。
Zとして選択し得る、シクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、アダマンチレン基等が挙げられる。
Zとして選択し得る、前記アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基等が挙げられる。
【0034】
本発明の一態様で用いる成分(B1)は、下記一般式(b1-1-1)で表される化合物(B11-1)及び下記一般式(b1-2-1)で表される化合物(B12-1)から選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。
【化3】
【0035】
上記一般式(b1-1-1)及び(b1-2-1)中、Rb1は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基である。Rb1として選択し得る、当該アルキル基の具体例及び好適な炭素数の範囲は、上述のとおりである。
上記一般式(b1-1-1)中、Rb3は、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基である。
上記一般式(b1-2-1)中、nは、1~20の整数である。
【0036】
Rb3として選択し得る、前記炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~10のアルキル基で置換されていてもよい環形成炭素数3~18のシクロアルキル基、炭素数1~10のアルキル基で置換されていてもよい環形成炭素数6~18のアリール基、及び炭素数7~19のアリールアルキル基等が挙げられる。
なお、前記アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。また、前記アルケニル基は、直鎖アルケニル基であってもよく、分岐鎖アルケニル基であってもよい。
【0037】
Rb3として選択し得る、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、及び前記アリール基としては、Rb2として選択し得る、アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基と同じ基が例示される。
Rb3として選択し得る、前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基(オレイル基)等が挙げられる。
Rb3として選択し得る、前記アリールアルキル基としては、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、Rb3は、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基であることが好ましく、炭素数1~20のアルキル基であることがより好ましい。
Rb3として選択し得る、前記アルキル基の炭素数は、好ましくは3~20、より好ましくは4~18、更に好ましくは6~16、より更に好ましくは8~14である。
Rb3として選択し得る、前記アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~20、より好ましくは3~18、更に好ましくは6~16である。
【0039】
本発明の一態様で用いる成分(B1)は、高温清浄性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、前記一般式(b1-1)で表される化合物(B11)を少なくとも含むことが好ましく、前記一般式(b1-1-1)で表される化合物(B11-1)を少なくとも含むことがより好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B1)中の成分(B11)又は(B11-1)の含有割合は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(B1)の全量(100質量%)基準で、高温清浄性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは40~100質量%以上、より好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0040】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B1)の含有量は、上記要件(I)のとおり、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、1.50質量%以上3.5質量%未満である。成分(B1)を含有する場合、成分(B1)の含有量を1.50質量%未満であると、水が混入してもロングドレイン性を十分に向上させることが難しくなる。また、成分(B1)を含有する場合、成分(B1)の含有量を3.5質量%超であると、高温清浄性の低下が懸念される。
【0041】
上記観点から、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B1)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは1.60質量%以上、より好ましくは1.70質量%以上、より好ましくは2.00質量%以上、更に好ましくは2.10質量%以上、更に好ましくは2.20質量%以上、より更に好ましくは2.50質量%以上、特に好ましくは2.70質量%以上であり、また、好ましくは3.4質量%以下、より好ましくは3.3質量%以下、より好ましくは3.2質量%以下、更に好ましくは3.1質量%以下、より更に好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは3.0質量%未満である。
【0042】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B1)の窒素原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、高温清浄性をより向上させると共に、水が混入してもロングドレイン性がより優れた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは0.070質量%以上、より好ましくは0.080質量%以上、更に好ましくは0.090質量%以上、より更に好ましくは0.100質量%以上、特に好ましくは0.110質量%以上であり、また、高温清浄性をより良好に保持し得る潤滑油組成物とする観点から、好ましくは0.144質量%未満、より好ましくは0.142質量%以下、更に好ましくは0.140質量%以下、より更に好ましくは0.138質量%以下、特に好ましくは0.135質量%以下である。
【0043】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、高温清浄性をより向上させると共に、水が混入してもロングドレイン性がより優れた潤滑油組成物とする観点から、成分(C)と成分(B1)との含有量比[(C)/(B1)]は、質量比で、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.30以上、より好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.55以上、更に好ましくは0.60以上、より更に好ましくは0.65以上、特に好ましくは0.70以上であり、また、好ましくは7.00以下、より好ましくは5.00以下、より好ましくは4.00以下、より好ましくは2.00以下、更に好ましくは1.00以下、更に好ましくは0.90以下、より更に好ましくは0.85以下、特に好ましくは0.80以下である。
【0044】
<成分(B2):アルカノールアミン系化合物>
本発明の一態様において、成分(B2)として用いるアルカノールアミンとしては、下記一般式(b2-1)~(b2-3)のいずれかで表される化合物であればよい。
【化4】
【0045】
上記式中、Ab1~Ab3は、それぞれ独立して、アルキレン基である。
Rb11及びRb12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基である。
【0046】
Ab1~Ab3として選択し得る、前記アルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,1-エチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン、1,2-プロピレン、2,2-プロピレン等の各種プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種へプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基、各種ウンデシレン基、各種ドデシレン基、各種トリデシレン基、各種テトラデシレン基、各種ペンタデシレン基、各種ヘキサデシレン基、各種ヘプタデシレン基、各種オクタデシレン基等が挙げられる。
前記アルキレン基は、直鎖アルキレン基であってもよく、分岐鎖アルキレン基であってもよい。
前記アルキレン基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~15、更に好ましくは1~10、より更に好ましくは1~6、特に好ましくは2~4である。
これらの中でも、Ab1~Ab3として選択し得る、前記アルキレン基は、-(CH2)m-で表される基(mは1~10の整数)であることが好ましい。なお、mは、好ましくは1~15の整数、より好ましくは1~10の整数、更に好ましくは1~6の整数、より更に好ましくは2~4の整数、特に好ましくは2である。
【0047】
Rb11及びRb12として選択し得る、前記炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基;オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基等の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基;シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基、メチルベンジル基、ジメチルナフチル基等のアルキルアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
前記炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~15、更に好ましくは1~10である。
【0048】
本発明の一態様で用いる成分(B2)は、水が混入してもロングドレイン性がより優れた潤滑油組成物とする観点から、ジアルカノールアミン(B21)を少なくとも含むことが好ましい。
ジアルカノールアミン(B21)としては、前記一般式(b2-2)で表される化合物が挙げられるが、ジエタノールアミン(B21-1)を含むことがより好ましい。
【0049】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B2)中の成分(B21)又は(B21-1)の含有割合は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(B2)の全量(100質量%)基準で、ロングドレイン性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは40~100質量%、より好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0050】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B2)の含有量は、上記要件(II)のとおり、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、2.20質量%以上である。成分(B2)を含有する場合、成分(B2)の含有量を2.20質量%未満であると、水が混入してもロングドレイン性を十分に向上させることが難しくなる。
【0051】
上記観点から、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B2)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは2.30質量%以上、より好ましくは2.50質量%以上、より好ましくは2.60質量%以上、より好ましくは2.70質量%以上、より好ましくは2.80質量%以上、更に好ましくは3.00質量%以上、更に好ましくは3.30質量%以上、更に好ましくは3.50質量%以上、更に好ましくは3.70質量%以上、より更に好ましくは3.90質量%以上、特に好ましくは4.00質量%以上である。
【0052】
また、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B2)の含有量の上限の規定は特に無いが、高温清浄性を良好に保ち得るため高温清浄性をより良好に保持し得る潤滑油組成物とする観点から、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、更に好ましくは6.0質量%以下、より更に好ましくは5.5質量%以下、特に好ましくは5.0質量%以下である。
【0053】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、高温清浄性をより向上させると共に、水が混入してもロングドレイン性がより優れた潤滑油組成物とする観点から、成分(C)と成分(B1)との含有量比[(C)/(B2)]は、質量比で、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、より好ましくは0.30以上、更に好ましくは0.35以上、更に好ましくは0.40以上、より更に好ましくは0.45以上、特に好ましくは0.50以上であり、また、好ましくは7.00以下、より好ましくは5.00以下、より好ましくは4.00以下、より好ましくは2.00以下、更に好ましくは1.00以下、更に好ましくは0.90以下、より更に好ましくは0.85以下、特に好ましくは0.80以下である。
【0054】
<成分(C):中性金属サリシレート>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、成分(B)として、塩基価が0~100mgKOH/gの中性金属サリシレートを含有する。
成分(C)は、成分(B)と併用することで、高温清浄性を向上させると共に、水が混入してもロングドレイン性がより優れた潤滑油組成物とすることができる。
本発明の一態様において、成分(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本発明の一態様で用いる成分(C)を構成する金属原子は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が挙げられ、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムが好ましく、カルシウムがより好ましい。
【0056】
本発明の一態様で用いる成分(C)としては、例えば、下記一般式(c-1)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
【0057】
上記一般式(c-1)中、RCは、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基である。
RCとして選択し得る炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルケニル基、環形成炭素数3~18のシクロアルキル基、環形成炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18のアルキルアリール基、炭素数7~18のアリールアルキル基等が挙げられる。
Mは、金属原子であり、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であることが好ましく、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムであることがより好ましく、カルシウムであることが更に好ましい。
pは、金属原子Mの価数である。
【0058】
本発明で用いる成分(B)は、カルシウムサリシレート(B1)及びカルシウムフェネート(B2)から選ばれる少なくとも1種の過塩基性カルシウム清浄剤である。
過塩基性カルシウム清浄剤として、成分(B1)及び(B2)から選ばれる少なくとも1種を含有することで、過早着火の抑制効果がありながらも、ロングドレイン性を向上させた潤滑油組成物とすることができる。
【0059】
本発明の一態様で成分(C)として用いる「中性」金属系清浄剤とは、塩基価が0~100mgKOH/g以上の金属系清浄剤を意味し、塩基価が100mgKOH/g超の過塩基性金属系清浄剤と区別される。
本発明の一態様で用いる成分(C)の塩基価は、100mgKOH/g以下であればよいが、90mgKOH/g以下、80mgKOH/g以下、70mgKOH/g以下、60mgKOH/g以下、50mgKOH/g以下、40mgKOH/g以下、30mgKOH/g以下、20mgKOH/g以下、15mgKOH/g以下、又は10mgKOH/g以下としてもよく、また、0mgKOH/g以上、0mgKOH/g超、1mgKOH/g以上、5mgKOH/g以上、又は10mgKOH/g以上としてもよい。
【0060】
成分(B)と併用することで、高温清浄性を向上させると共に、水が混入してもロングドレイン性がより優れた潤滑油組成物とする観点から、本発明の一態様で用いる成分(B)は、塩基価が0~100mgKOH/gの中性カルシウムサリシレート(C1)を含有することが好ましい。
上記観点から、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)中の成分(C1)の含有割合は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(C)の全量(100質量%)基準で、好ましくは40~100質量%以上、より好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0061】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)と併用することで、高温清浄性を向上させると共に、水が混入してもロングドレイン性がより優れた潤滑油組成物とする観点から、成分(C)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上、より好ましくは0.50質量%以上、より好ましくは0.70質量%以上、更に好ましくは1.00質量%以上、更に好ましくは1.20質量%以上、更に好ましくは1.50質量%以上、より更に好ましくは1.70質量%以上、特に好ましくは1.90質量%以上であり、また、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、更に好ましくは6.0質量%以下、より更に好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは4.0質量%以下である。
【0062】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)と併用することで、高温清浄性を向上させると共に、水が混入してもロングドレイン性がより優れた潤滑油組成物とする観点から、成分(C)のカルシウム原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量ppm以上、より好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは150質量ppm以上、より好ましくは200質量ppm以上、更に好ましくは250質量ppm以上、更に好ましくは300質量ppm以上、更に好ましくは350質量ppm以上、より更に好ましくは400質量ppm以上、特に好ましくは450質量ppm以上であり、また、好ましくは3000質量ppm以下、より好ましくは2500質量ppm以下、より好ましくは2000質量ppm以下、更に好ましくは1500質量ppm以下、より更に好ましくは1000質量ppm以下、特に好ましくは800質量ppm以下である。
【0063】
<成分(C)以外の金属系清浄剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、成分(C)以外の金属系清浄剤を含有してもよく、また、成分(C)以外の金属系清浄剤を含有しなくてもよい。
【0064】
成分(C)以外の金属系清浄剤としては、例えば、過塩基性の金属サリシレート、中性もしくは過塩基性の金属スルホネート、中性もしくは過塩基性の金属フェネート等が挙げられる。
なお、「過塩基性」とは、塩基価が100mgKOH/g超であることを意味し、「中性」とは、塩基価が0~100mgKOH/gであることを意味する。
当該金属系清浄剤を構成する金属原子としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が挙げられる。
【0065】
ただし、成分(B)と共に、成分(C)以外の金属系清浄剤を用いると、水が混入した際のロングドレイン性の低下を引き起こす恐れがある。また、特に、過塩基性の金属スルホネートを用いた場合には、ロングドレイン性の低下だけでなく、高温清浄性の低下も生じ得る。
そのため、成分(C)以外の金属系清浄剤は、その含有量が少ないほど好ましく、実質的に含有しないことがより好ましい。
本明細書において、「成分(C)以外の金属系清浄剤を実質的に含有しない」とは、所定の目的をもって、当該金属系清浄剤を配合して含有させる態様を否定する規定であって、意図せずにもしくは不可避的に、当該金属系清浄剤が混入又は存在してしまうような態様までを否定する規定ではない。
【0066】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)以外の金属系清浄剤の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01質量%未満、より好ましくは0.001質量%未満、更に好ましくは0.0001質量%未満である。
【0067】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)以外の金属系清浄剤の含有量は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(C)の全量100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは5質量部未満、より好ましくは1質量部未満、更に好ましくは0.1質量部未満、更に好ましくは0.01質量部未満、より更に好ましくは0.001質量部未満、特に好ましくは0.0001質量部未満である。
【0068】
<成分(D):成分(B)には該当しない酸化防止剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、高温清浄性及びロングドレイン性をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、成分(D)として、成分(B)には該当しない酸化防止剤を含有してもよい。
本発明の一態様で用いる成分(D)としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物以外のアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
本発明の一態様において、成分(D)は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0069】
本発明の一態様で用いる成分(D)は、成分(B)には該当しないアミン系酸化防止剤(D1)及びフェノール系酸化防止剤(D2)から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、成分(D1)及び成分(D2)の双方を含むことがより好ましい。
【0070】
本発明の一態様で用いる成分(D)中の成分(D1)及び(D2)の合計含有割合は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(D)の全量(100質量%)基準で、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは85~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0071】
本発明の一態様で用いる成分(D)が、成分(D1)及び(D2)の双方を含む場合、成分(D1)と成分(D2)との含有量比〔(D1)/(D2)〕は、質量比で、好ましくは0.10~5.0、より好ましくは0.30~4.5、より好ましくは0.50~4.0、更に好ましくは0.75~3.5、より更に好ましくは1.0~3.0、特に好ましくは1.2~2.7である。
【0072】
本発明の一態様で用いる成分(D1)としては、例えば、ジフェニルアミン、炭素数3~20(好ましくは6~16、より好ましくは8~12)のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤;α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、炭素数3~20(好ましくは6~16、より好ましくは8~12)のアルキル基がフェニル基に置換されたアルキル置換フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤;等が挙げられる。
【0073】
本発明の一態様で用いる成分(D2)としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸-3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシアルキルエステル等のモノフェノール系酸化防止剤;4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のジフェノール系酸化防止剤;等が挙げられる。
【0074】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(D)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.30質量%以上、更に好ましくは0.50質量%以上、より更に好ましくは0.70質量%以上、特に好ましくは1.00質量%以上であり、また、10.0質量%以下、8.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、又は2.0質量%以下としてもよい。
【0075】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(D)と成分(B)との比〔(D)/(B)〕は、質量比で、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.20以上、より更に好ましくは0.25以上、特に好ましくは0.30以上であり、また、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.0以下、より更に好ましくは0.90以下、特に好ましくは0.80以下である。
【0076】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(D1)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上、更に好ましくは0.30質量%以上、より更に好ましくは0.50質量%以上、特に好ましくは0.70質量%以上であり、また、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.5質量%以下としてもよい。
【0077】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(D2)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上、より更に好ましくは0.30質量%以上、特に好ましくは0.40質量%以上であり、また、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.0質量%以下としてもよい。
【0078】
<成分(E):イミド系化合物>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、成分(E)として、イミド系化合物を含有してもよい。成分(E)を含有することで、スラッジの析出を抑制し得る潤滑油組成物とすることができる。
本発明の一態様において、成分(E)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
本明細書において、「イミド系化合物」とは、下記式(e-0)で表されるイミド構造を有する化合物を意味し、当該イミド構造を有する鎖状化合物や、当該イミド構造を有する環状化合物も含まれる。
【化6】
(上記式中、*は結合位置を示す。)
【0080】
本発明の一態様で用いる成分(E)は、ホウ素化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルフェノール、環状カーボネート、エポキシ化合物、及び有機酸等から選ばれる1種以上と反応させた、変性イミド系化合物であってもよく、また、非変性イミド系化合物であってもよい。
【0081】
本発明の一態様で用いる成分(E)は、アルケニルコハク酸イミド及びその変性物から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、非ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(E1)及びホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(E2)から選ばれる1種以上を含むことがより好ましく、成分(E1)及び(E2)を共に含むことが更に好ましい。
【0082】
本発明の一態様で用いる成分(E)中の成分(E1)及び(E2)の合計含有割合は、当該潤滑油組成物に含まれる成分(E)の全量(100質量%)基準で、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは85~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0083】
非ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(E1)としては、下記一般式(e-1)で表されるアルケニルコハク酸ビスイミド(E11)及び下記一般式(e-2)で表されるアルケニルコハク酸モノイミド(E12)から選ばれる1種以上が好ましい。
【化7】
【0084】
上記一般式(e-1)及び(e-2)中、Re1、Re2及びRe3は、それぞれ独立に、質量平均分子量(Mw)が500~3000(好ましくは900~2500)のアルケニル基である。
Re1、Re2及びRe3として選択し得る、前記アルケニル基としては、例えば、ポリブテニル基、ポリイソブテニル基、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられ、これらの中でも、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基が好ましい。
Ae1、Ae2及びAe3は、それぞれ独立に、炭素数2~5のアルキレン基である。
z1は0~10の整数であり、好ましくは1~4の整数、より好ましくは2又は3である。
z2は1~10の整数であり、好ましくは2~5の整数、より好ましくは3又は4である。
【0085】
本発明の一態様で用いるホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(E2)としては、例えば、前記一般式(e-1)で表されるアルケニルコハク酸ビスイミドのホウ素変性体、及び、下記一般式(e-2)で表されるアルケニルコハク酸モノイミドのホウ素変性体等が挙げられる。
【0086】
本発明の一態様において、成分(E2)を構成するホウ素原子と窒素原子の比率〔B/N〕としては、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.9以上、特に好ましくは1.0以上である。
【0087】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、高温清浄性の観点から、成分(E1)と成分(E2)の含有量比〔(E1)/(E2)〕は、質量比で、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.70以上、より更に好ましくは1.00以上、特に好ましくは1.20以上であり、また、好ましくは5.00未満、より好ましくは4.00未満、更に好ましくは3.00未満、より更に好ましくは2.50未満、特に好ましくは2.00未満である。
【0088】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(E2)に由来するホウ素原子と、成分(E)に由来する窒素原子との含有量比〔B/N〕が、質量比で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは0.20以上、特に好ましくは0.30以上であり、また、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.70以下、より更に好ましくは0.60以下、特に好ましくは0.55以下である。
【0089】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(E)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.50質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、より更に好ましくは3.0質量%以上、特に好ましくは4.0質量%以上であり、また、好ましくは12.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましくは9.0質量%以下、より更に好ましくは8.5質量%以下、特に好ましくは8.0質量%以下である。
【0090】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(E)の窒素原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.010~0.200質量%、より好ましくは0.020~0.170質量%、更に好ましくは0.030~0.130質量%、より更に好ましくは0.040~0.100質量%、特に好ましくは0.050~0.090質量%である。
【0091】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(E1)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.50質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、より更に好ましくは3.0質量%以上、特に好ましくは4.0質量%以上であり、また、好ましくは12.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましくは9.0質量%以下、より更に好ましくは8.5質量%以下、特に好ましくは8.0質量%以下である。
【0092】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(E1)の窒素原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.005~0.150質量%、より好ましくは0.010~0.120質量%、更に好ましくは0.015~0.100質量%、より更に好ましくは0.020~0.080質量%、特に好ましくは0.025~0.070質量%である。
【0093】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(E2)の含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.50質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、より更に好ましくは3.0質量%以上、特に好ましくは4.0質量%以上であり、また、好ましくは12.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましくは9.0質量%以下、より更に好ましくは8.5質量%以下、特に好ましくは8.0質量%以下である。
【0094】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(E2)のホウ素原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.001~0.100質量%、より好ましくは0.005~0.090質量%、更に好ましくは0.010~0.080質量%、より更に好ましくは0.015~0.070質量%、特に好ましくは0.020~0.060質量%である。
【0095】
<成分(F):ジチオリン酸亜鉛>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、成分(F)として、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を含有してもよい。成分(E)を含有することで、耐摩耗剤を向上させた潤滑油組成物とすることができる。
本発明の一態様において、成分(F)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
本発明の一態様で用いる成分(F)は、下記一般式(f-1)で表される化合物が好ましい。
【化8】
【0097】
上記式(f-1)中、Rf1~Rf4は、それぞれ独立に、炭化水素基を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rf1~Rf4として選択し得る炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~16、更に好ましくは3~12、より更に好ましくは3~10である。
【0098】
Rf1~Rf4として選択し得る、具体的な当該炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基等のアルケニル基;シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基、メチルベンジル基、ジメチルナフチル基等のアルキルアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
これらの中でも、Rf1~Rf4として選択し得る、当該炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、第1級又は第2級のアルキル基がより好ましく、第2級のアルキル基が更に好ましい。
【0099】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(F)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.30質量%以上、より更に好ましくは0.50質量%以上、特に好ましくは0.70質量%以上であり、また、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下、より更に好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下である。
【0100】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(F)の亜鉛原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上、より更に好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.06質量%以上であり、また、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.70質量%以下、更に好ましくは0.50質量%以下、より更に好ましくは0.30質量%以下、特に好ましくは0.20質量%以下である。
【0101】
<成分(G):有機モリブデン系化合物>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、有機モリブデン系化合物(G)を含有してもよい。成分(G)を含有することで、摩擦低減効果をより向上させた潤滑油組成物とすることができる。
本発明の一態様において、成分(G)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
本発明の一態様で用いる成分(G)としては、例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)、モリブテン酸のアミン塩等が挙げられ、摩擦低減効果の向上の観点から、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)及びジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
成分(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
本発明の一態様で用いるジチオリン酸モリブデン(MoDTC)は、下記一般式(g1-1)で表される化合物及び下記一般式(g1-2)で表される化合物から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0104】
【0105】
上記一般式(g1-1)及び(g1-2)中、Rg1~Rg4は、それぞれ独立に、炭化水素基を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
X1~X8は、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、式(g1-1)中のX1~X8の少なくとも二つは硫黄原子である。
なお、本発明の一態様においては、前記一般式(g1-1)中、X1及びX2が酸素原子であり、X3~X8が硫黄原子であることが好ましい。また、前記一般式(g1-2)中、X1及びX2が酸素原子であり、X3及びX4が硫黄原子であることが好ましい。
【0106】
上記一般式(g1-1)において、溶解性を向上させる観点から、X1~X8中の硫黄原子と酸素原子とのモル比〔硫黄原子/酸素原子〕が、好ましくは1/4~4/1、より好ましくは1/3~3/1である。
上記一般式(g1-2)において、上記と同様の観点から、X1~X4中の硫黄原子と酸素原子とのモル比〔硫黄原子/酸素原子〕が、好ましくは1/3~3/1、より好ましくは1.5/2.5~2.5/1.5である。
【0107】
ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)としては、一分子中に2つのモリブデン原子を含む二核のジチオカルバミン酸モリブデン、及び一分子中に3つのモリブデン原子を含む三核のジチオカルバミン酸モリブデンが挙げられ、二核のジチオカルバミン酸モリブデンが好ましい。
本発明の一態様で用いる二核のジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)は、下記一般式(g2-1)で表される化合物及び下記一般式(g2-2)で表される化合物から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0108】
【0109】
上記一般式(g2-1)及び(g2-2)中、Rg11~Rg14は、それぞれ独立に、炭化水素基を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
X11~X18は、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
ただし、式(g2-1)中のX11~X18の少なくとも一つは硫黄原子である。
なお、本発明の一態様においては、式(g2-1)中のX11及びX12が酸素原子であり、X13~X18が硫黄原子であることが好ましい。
また、式(g2-2)中のX11~X14が酸素原子であることが好ましい。
【0110】
上記一般式(g2-1)において、溶解性を向上させる観点から、X11~X18中の硫黄原子と酸素原子とのモル比〔硫黄原子/酸素原子〕が、好ましくは1/4~4/1、より好ましくは1/3~3/1である。
【0111】
上記一般式(g1-1)及び(g1-2)、並びに、上記一般式(g2-1)及び(g2-2)中、Rg1~Rg4及びRg11~Rg14して選択し得る、前記炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは5~18、更に好ましくは5~16、より更に好ましくは5~12である。
また、Rg1~Rg4及びRg11~Rg14して選択し得る、前記炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基等のアルケニル基;シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基、メチルベンジル基、ジメチルナフチル基等のアルキルアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0112】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(G)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、摩擦低減効果をより向上させた潤滑油組成物とする観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上、より更に好ましくは0.30質量%以上、特に好ましくは0.50質量%以上であり、また、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.5質量%以下、又は1.0質量%以下としてもよい。
【0113】
<潤滑油用添加剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、更に成分(B)~(G)以外の潤滑油用添加剤を含有してもよい。
このような潤滑油用添加剤としては、例えば、流動点降下剤、粘度指数向上剤、摩擦調整剤、耐摩耗剤、極圧剤、金属不活性化剤、油性剤、防錆剤、消泡剤等が挙げられる。
これらの潤滑油用添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0114】
これらの潤滑油用添加剤のそれぞれの含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内で、適宜調製することができるが、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、それぞれの添加剤ごとに独立して、通常0.001~15質量%、好ましくは0.005~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
【0115】
[流動点降下剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに流動点降下剤を含有してもよい。流動点降下剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる流動点降下剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられる。
本発明の一態様で用いる流動点降下剤の質量平均分子量(Mw)は、5,000以上、7,000以上、10,000以上、15,000以上、20,000以上、25,000以上、30,000以上、35,000以上、40,000以上、45,000以上、50,000以上、55,000以上、又は60,000以上としてもよく、また、150,000以下、120,000以下、100,000以下、90,000以下、又は80,000以下としてもよい。
【0116】
[粘度指数向上剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに粘度指数向上剤を含有してもよい。粘度指数向上剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる粘度指数向上剤としては、例えば、非分散型ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体等)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン-ジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体等)等の重合体が挙げられる。
本発明の一態様で用いる粘度指数向上剤の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上、7,000以上、10,000以上、15,000以上、又は20,000以上としてもよく、また、1,000,000以下、700,000以下、500,000以下、300,000以下、200,000以下、100,000以下、又は50,000以下としてもよい。
【0117】
[摩擦調整剤及び耐摩耗剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに摩擦調整剤又は耐摩耗剤を含有してもよい。摩擦調整剤又は耐摩耗剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる摩擦調整剤及び耐摩耗剤としては、例えば、摩擦調整剤及び耐摩耗剤としては、例えば、硫化オレフィン、ジアルキルポリスルフィド、ジアリールアルキルポリスルフィド、ジアリールポリスルフィド等の硫黄系化合物;リン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、アルキルハイドロゲンホスファイト、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステルアミン塩等のリン系化合物;脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ウレア系化合物、ヒドラジド系化合物等の無灰系摩擦調整剤;等が挙げられる。
【0118】
[極圧剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに極圧剤を含有してもよい。極圧剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる極圧剤としては、例えば、硫化オレフィン、ジアルキルポリスルフィド、ジアリールアルキルポリスルフィド、ジアリールポリスルフィド等の硫黄系化合物、リン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、アルキルハイドロゲンホスファイト、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステルアミン塩等のリン系化合物等が挙げられる。
【0119】
[金属不活性化剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに金属不活性化剤を含有してもよい。金属不活性化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体等が挙げられる。
【0120】
[油性剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに油性剤を含有してもよい。油性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる油性剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等の重合脂肪酸、リシノレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコール等の脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミン等の脂肪族飽和及び不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミド等が挙げられる。
【0121】
[防錆剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに防錆剤を含有してもよい。防錆剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられる。
【0122】
[消泡剤]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、さらに消泡剤を含有してもよい。消泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる消泡剤としては、例えば、アルキルシリコーン系消泡剤、フルオロシリコーン系消泡剤、フルオロアルキルエーテル系消泡剤等が挙げられる。
【0123】
<潤滑油組成物の製造方法>
本発明の一態様の潤滑油組成物の製造方法としては、特に制限はないが、生産性の観点から、基油(A)に、上述の成分(B)及び(C)と共に、必要に応じて、成分(D)~(G)及び他の潤滑油用添加剤を配合する工程を有する、方法であることが好ましい。
【0124】
〔潤滑油組成物の性状〕
本発明の一態様の潤滑油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは10~120mm2/s、より好ましくは15~100mm2/s、更に好ましくは20~80mm2/s、より更に好ましくは25~70mm2/s、特に好ましくは27~60mm2/sである。
【0125】
本発明の一態様の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは2.5~20.0mm2/s、より好ましくは4.0~18.0mm2/s、更に好ましくは5.0~15.0mm2/s、より更に好ましくは6.0~12.0mm2/s、特に好ましくは7.0~10.0mm2/sである。
【0126】
本発明の一態様の潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは80以上、より好ましくは100以上、より好ましくは120以上、更に好ましくは150以上、より更に好ましくは170以上、特に好ましくは200以上である。
【0127】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、カルシウム原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量ppm以上、より好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは150質量ppm以上、より好ましくは200質量ppm以上、更に好ましくは250質量ppm以上、更に好ましくは300質量ppm以上、更に好ましくは350質量ppm以上、より更に好ましくは400質量ppm以上、特に好ましくは450質量ppm以上であり、また、好ましくは3000質量ppm以下、より好ましくは2500質量ppm以下、より好ましくは2000質量ppm以下、更に好ましくは1500質量ppm以下、より更に好ましくは1000質量ppm以下、特に好ましくは800質量ppm以下である。
【0128】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、リン原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量ppm以上、より好ましくは100質量ppm以上、更に好ましくは200質量ppm以上、より更に好ましくは300質量ppm以上、特に好ましくは400質量ppm以上であり、また、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは950質量ppm以下、更に好ましくは900質量ppm以下、より更に好ましくは850質量ppm以下、特に好ましくは750質量ppm以下である。
【0129】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、ホウ素原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは10質量ppm以上、より好ましくは50質量ppm以上、更に好ましくは100質量ppm以上、より更に好ましくは150質量ppm以上、特に好ましくは200質量ppm以上であり、また、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは900質量ppm以下、更に好ましくは800質量ppm以下、より更に好ましくは700質量ppm以下、特に好ましくは600質量ppm以下である。
【0130】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、窒素原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは300質量ppm以上、更に好ましくは500質量ppm以上、より更に好ましくは700質量ppm以上、特に好ましくは1000質量ppm以上であり、また、好ましくは8000質量ppm以下、より好ましくは6000質量ppm以下、更に好ましくは5000質量ppm以下、より更に好ましくは4000質量ppm以下、特に好ましくは3000質量ppm以下である。
【0131】
〔潤滑油組成物の用途〕
本発明の一態様の潤滑油組成物は、高温清浄性及びロングドレイン性に優れており、さらにこれらの特性に加えて、水分が混入した場合でも優れたロングドレイン性を維持し得る。
そのため、本発明の一態様の潤滑油組成物は、上記特性を発揮し得る各種装置に適用することができるが、内燃機関における各部品間の潤滑に好適に使用し得、特に、内燃機関及び電動機を動力源として有するハイブリッドシステムの内燃機関における各部品間の潤滑に好適に使用し得る。
【0132】
また、本発明の一態様の潤滑油組成物の上述の特性を考慮すると、本発明は、以下の[I]及び[II]も提供し得る。
[I]上述の本発明の一態様の潤滑油組成物を充填した、ハイブリッドシステムに搭載される、内燃機関。
[II]上述の本発明の一態様の潤滑油組成物をハイブリッドシステムに搭載される内燃機関に適用した、内燃機関の潤滑方法。
【0133】
上記[I]及び[II]に記載のハイブリッドシステムは、内燃機関及び電動機を動力源として有する機構である。
上記[I]及び[II]に記載のハイブリッドシステムとしては、例えば、ハイブリッド自動車、ハイブリッド二輪車、ハイブリッド鉄道、ハイブリッド船舶等が挙げられる。
上記[I]の内燃機関は、上述の本発明の一態様の潤滑油組成物を充填したものであり、電動機である電気モーターと共に、ハイブリッドシステムに搭載される装置である。
また、上記[II]の内燃機関の潤滑方法は、上述の本発明の一態様の潤滑油組成物をハイブリッドシステムに搭載される内燃機関に適用することを規定したものであるが、当該潤滑油組成物は、電動機である電気モーターにも適用してもよい。
【0134】
以上のとおり、本発明は、以下の態様を開示する。
[1]基油(A)、ヒンダードアミン系化合物(B1)及びアルカノールアミン系化合物(B2)から選ばれる1種以上のアミン系化合物(B)、及び、塩基価が0~100mgKOH/gの中性金属サリシレート(C)を含有する潤滑油組成物であって、
成分(B1)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1.50質量%以上3.50質量%未満である、
潤滑油組成物。
[2]成分(C)と成分(B1)との含有量比[(C)/(B1)]が、質量比で、0.10~7.00である、上記[1]に記載の潤滑油組成物。
[3]成分(B1)が、下記一般式(b1-1)で表される化合物(B11)及び下記一般式(b1-2)で表される化合物(B12)から選ばれる1種以上を含む、上記[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物。
【化11】
〔上記式中、R
b1は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数1~10のアルコキシ基である。
R
b2は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、環形成炭素数3~18のシクロアルキル基、環形成炭素数6~18のアリール基、水酸基、アミノ基、又は-O-CO-R
b3で表される基(R
b3は、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基)である。
Zは、炭素数1~20のアルキレン基、環形成炭素数3~18のシクロアルキレン基、環形成炭素数6~18のアリーレン基、酸素原子、硫黄原子、又は-O-CO-(CH
2)
n-CO-O-で表される基(nは1~20の整数)である。〕
[4]成分(B1)が、前記一般式(b1-1)で表される化合物(B11)を少なくとも含む、上記[3]に記載の潤滑油組成物。
[5]基油(A)、ヒンダードアミン系化合物(B1)及びアルカノールアミン系化合物(B2)から選ばれる1種以上のアミン系化合物(B)、及び、塩基価が0~100mgKOH/gの中性金属サリシレート(C)を含有する、潤滑油組成物であって、
成分(B2)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、2.20質量%以上である、
潤滑油組成物。
[6]成分(C)と成分(B2)との含有量比[(C)/(B2)]が、質量比で、0.10~7.00である、上記[5]に記載の潤滑油組成物。
[7]成分(B2)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、2.200.10~10.0質量%である、上記[5]又は[6]に記載の潤滑油組成物。
[8]成分(B2)が、ジアルカノールアミン系化合物(B21)を含む、上記[5]~[7]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[10]さらに、イミド系化合物(E)を含み、
成分(E)が、非ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(E1)及びホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(E2)から選ばれる1種以上を含む、上記[1]~[9]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[11]成分(E)が、成分(E1)及び成分(E2)含み、
成分(E1)と成分(E2)との含有量比[(E1)/(E2)]が、質量比で、5.00未満である、上記[10]に記載の潤滑油組成物。
[12]さらに、ジチオリン酸亜鉛(F)を含有する、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[13]リン原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1000質量ppm以下である、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[14]ハイブリッドシステムの内燃機関の潤滑に用いられる、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[15]上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を充填した、ハイブリッドシステムに搭載される、内燃機関。
[16]上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物をハイブリッドシステムに搭載される内燃機関に適用した、内燃機関の潤滑方法。
【実施例0135】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、各種物性の測定法は、下記のとおりである。
【0136】
(1)カルシウム原子(Ca)、リン原子(P)、ホウ素原子(B)、亜鉛原子(Zn)の含有量
JPI-5S-38-92に準拠して測定した。
(2)窒素原子(N)の含有量
JIS K2609:1998に準拠して測定した。
【0137】
(3)重量平均分子量(Mw)
ゲル浸透クロマトグラフ装置(アジレント社製、「1260型HPLC」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「Shodex LF404」を2本、順次連結したもの。
・カラム温度:35℃
・展開溶媒:クロロホルム
・流速:0.3mL/min
【0138】
実施例1~9、比較例1~10
基油及び各種添加剤を、表1~2に示す配合量にて添加して混合し、潤滑油組成物をそれぞれ調製した。
なお、当該潤滑油組成物の調製に使用した、各成分の詳細は以下のとおりである。
【0139】
<成分(A):基油>
・「100N鉱油(a)」:API基油カテゴリーのグループIIIに分類されるパラフィン系鉱油、40℃動粘度=20mm2/s、粘度指数=122、成分(A)に該当。
<成分(B):アミン系化合物>
・「ヒンダードアミン系化合物(b1)」:ドデカン酸2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-4-イル、窒素原子含有量=4.13質量%、成分(B11-1)に該当。。
・「アルカノールアミン系化合物(b2)」:ジエタノールアミン、成分(B21-1)に該当。
<成分(C):中性金属サリシレート>
・「中性Caサリチレート(c)」:塩基価=64mgKOH/gのカルシウムサリチレート、Ca含有量=2.3質量%、成分(C)に該当。
<成分(C)以外の金属系清浄剤>
・「過塩基性Caフェネート」:塩基価=250mgKOH/gのカルシウムフェネート、Ca含有量=9.3質量%。
・「中性Caスルホネート(1)」:塩基価=19mgKOH/gのカルシウムスルホネート、Ca含有量=2.4質量%。
・「中性Caスルホネート(2)」:塩基価=17mgKOH/gのカルシウムスルホネート、Ca含有量=2.2質量%。
・「過塩基性Caスルホネート(1)」:塩基価=425mgKOH/gのカルシウムスルホネート、Ca含有量=16質量%。
・「過塩基性Caスルホネート(2)」:塩基価=300mgKOH/gのカルシウムスルホネート、Ca含有量=12質量%。
・「過塩基性Caスルホネート(3)」:塩基価=405mgKOH/gのカルシウムスルホネート、Ca含有量=15質量%。
<成分(D):成分(B)には該当しない酸化防止剤>
・「成分(B)には該当しないアミン系酸化防止剤(d1)」:ジノニルジフェニルアミン、窒素原子含有量=3.6質量%、成分(D1)に該当。
・「フェノール系酸化防止剤(d2)」:ベンゼンプロパン酸-3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシアルキルエステル、成分(D2)に該当。
<成分(E):イミド系化合物>
・「非ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(e1)」:ポリブテニルコハク酸ビスイミド、窒素原子(N)の含有量=1.0質量%、成分(E1)に該当。
・「ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド(e2)」:ポリブテニルコハク酸モノイミドのホウ素変性物、ホウ素原子(B)の含有量=1.3質量%、窒素原子(N)の含有量=1.2質量%、B/N=1.08、成分(E2)に該当。
<成分(F):ジチオリン酸亜鉛>
・「第2級ジチオリン酸亜鉛(f1)」:第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、前記一般式(f-1)中のRf1~Rf4が、すべて第2級アルキル基である化合物。リン原子含有量=7.1質量%、亜鉛原子含有量=8.2質量%、成分(F)に該当。
・「第1級ジチオリン酸亜鉛(f2)」:第1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、前記一般式(f-1)中のRf1~Rf4が、すべて第1級アルキル基である化合物。リン原子含有量=7.5質量%、亜鉛原子含有量=8.5質量%、成分(F)に該当。
<成分(G):有機モリブデン系化合物>
・「有機モリブデン系化合物(g1)」:ジチオカルバミン酸モリブデン、成分(G)に該当。
<他の添加剤>
・「添加剤混合物」:粘度指数向上剤(Mw=40万)、流動点降下剤(Mw=7万)、グリセリンモノオレート、及びシリコーン系消泡剤からなる添加剤混合物。
【0140】
調製した潤滑油組成物について、各原子の含有量を測定すると共に、以下の評価試験を行った。これらの結果を表1~2に示す。
【0141】
(1)ロングドレイン性の評価試験
調製した潤滑油組成物を用いて、下記試験条件にて、NOxガス吹き込みながら純水を添加したISOT試験を168時間行い、劣化油を調整した。
<試験条件>
・試験機:吉田科学器械株式会社製、ISOT TESTER
・試験容器内容積:500mL
・潤滑油組成物の使用量:300mL
・NOxガス量:供給ガス全量に対して2,000体積ppm
・純水添加量:24時間毎に潤滑油組成物の全量に対して5体積%添加
・攪拌速度:800r/min
・試験温度(サイクル):(1)60℃で4時間、(2)95℃で2時間、(3)120℃で12時間、及び(4)60℃で6時間の(1)~(4)を1サイクルとして、当該サイクルを繰り返した。
上記劣化油について、ASTM D6186-88の準拠し、180℃、200psig酸素(流れではない)の条件にて、加圧型示差走査熱量測定(PDSC)を行い、測定開始から自動酸化までの時間である酸化誘導時間(OIT)を測定した。酸化誘導時間が長いほど、ロングドレイン性が高い潤滑油組成物であるといえる。本実施例においては、酸化誘導時間が50分以上である場合、ロングドレイン性が良好な潤滑油組成物であると判断した。
【0142】
(2)ホットチューブ試験
上記(1)のロングドレイン性の評価試験で調整した前記劣化油を用いて、試験温度240℃で、JPI-5S-55-99に準拠したホットチューブ試験を行った。試験後のガラス管の変色の程度を、0点(黒色)~10点(無色)(メリット評点)において0.5刻みでの21段階の評点にて評価した。評点が高いほど、高温清浄性に優れた潤滑油組成物であるといえる。本実施例においては、評点が7.0以上である場合、高温清浄性が良好な潤滑油組成物であると判断した。
【0143】
【0144】
【0145】
表1より、実施例1~9で調製した潤滑油組成物は、高温清浄性に優れ、水が混入した場合のロングドレイン性も良好である結果となった。一方で、表2より、比較例1~10で調製した潤滑油組成物は、高温清浄性及びロングドレイン性の少なくとも一方が劣る結果となった。