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特開2023-151027キャップ及びキャップ付き容器入り飲食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151027
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】キャップ及びキャップ付き容器入り飲食品
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/32 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B65D41/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060416
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】島田 知
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
(72)【発明者】
【氏名】杉山 祐香
(72)【発明者】
【氏名】小山 雄
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CB01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DC03
3E084FC02
3E084FD02
3E084GA08
3E084GB06
3E084GB08
3E084KB01
3E084LA01
3E084LB02
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、スカート壁の高さが低いキャップや容器口部の外径が小さい容器を使用する場合でも、打栓時に第1スコアが破断することがなく、開封時や密封時に大きな力をかけることなく開封可能且つ再密封可能なキャップを提供すること。
【解決手段】キャップ天面101と、薄膜状の第1スコア111および第2スコア112が形成されたスカート壁110とを有し、容器Bを密封するキャップ100であって、第1スコア111はキャップ天面101の中心よりスカート壁110に形成された開封用鍔114側にのみ形成され、第2スコア112はキャップ天面101の中心より開封用鍔114と反対側にのみ形成され、第1スコア111の周方向幅は、第2スコア112よりも狭く、第1スコア111の膜厚は、第2スコア112よりも薄く、第1スコア111は、容器B開封時に破断可能に構成されていること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ天面と、前記キャップ天面の周囲から垂下するスカート壁と、前記キャップ天面の前記スカート壁よりも半径方向内方側からリング状に垂下するインナーリングとを有し、前記スカート壁には、前記スカート壁の下端から上方に向かって延びる薄膜状の第1スコアおよび第2スコアが形成され、容器口部に嵌合して容器を密封可能なキャップであって、
前記スカート壁の外周面側には、開封用鍔が形成され、
前記スカート壁の内周面側には、容器口部の突出部に係合するアンダーカットが周方向に形成され、
前記第1スコアは、前記スカート壁に、前記キャップ天面の中心よりも前記開封用鍔側にのみ1対形成され、
前記第2スコアは、前記スカート壁に、前記キャップ天面の中心よりも前記開封用鍔と反対側にのみ複数形成され、
前記第1スコアおよび前記第2スコアは、それぞれ前記アンダーカットに隣接するように周方向に形成され、
前記第1スコアの周方向幅は、前記第2スコアの周方向幅よりも狭く、
前記第1スコアの膜厚は、前記第2スコアの膜厚よりも薄く、
前記第1スコアは、容器開封時に破断可能に構成されていることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記第1スコアは、前記開封用鍔の周方向の両端にそれぞれ最も近接している前記アンダーカットに対し、前記アンダーカットを挟んで前記開封用鍔と反対側に隣接した位置にあることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記第1スコアは、周方向にみて前記アンダーカットを1個挟んで前記第2スコアと隣接していることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記第1スコアは、前記開封用鍔の周方向中心から30°以上90°未満の位置に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のキャップ。
【請求項5】
前記アンダーカットの上端は、軸方向に見て前記インナーリングの下端よりも上方にあることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のキャップ。
【請求項6】
前記アンダーカットおよび前記第1スコアは、前記開封用鍔が形成されている箇所の内周面側には形成されていないことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のキャップ。
【請求項7】
前記スカート壁の、前記開封用鍔と直近の前記アンダーカットとの間には、前記第1スコアよりも周方向幅が広く、前記第1スコアよりも膜厚が厚い第3スコアが形成されていることを特徴とする請求項6に記載のキャップ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のキャップを備えることを特徴とするキャップ付き容器入り飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器口部に嵌合して容器を密封可能なキャップ及びキャップ付き容器入り飲食品であって、特に、開封後も簡易的な再密封が可能なキャップ及びキャップ付き容器入り飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牛乳瓶等の容器口部に嵌合して容器を密封可能なキャップとして、容器の外周面側から容器口部に係止するとともに、容器口部内周面をシールするように密着する合成樹脂製キャップが特許文献1で公知である。
【0003】
特許文献1で公知のキャップ(合成樹脂製キャップ2)は、キャップ天面(天面壁4)と、キャップ天面(天面壁4)の周囲から垂下するスカート壁(6)と、キャップ天面(天面壁4)のスカート壁(6)よりも半径方向内方側からリング状に垂下するインナーリング(シール突条8)とを有し、スカート壁(6)には、スカート壁(6)の下端から上方に向かって延びる薄膜状の第1スコア(比較的幅狭の弱化ライン30)および第2スコア(比較的幅広の弱化ライン20)が形成されている。
スカート壁(6)の外周面側の一部には、開封用鍔(タブ12)が形成され、スカート壁(6)の内周側には、容器口部(開口部102)の突出部(被係止あご部104)に係合するアンダーカット(係止突条10)が周方向に断続形成されている。
【0004】
この特許文献1等で公知のキャップ(合成樹脂製キャップ2)は、打栓装置等で容器口部(開口部102)の上方から打栓することで、アンダーカット(係止突条10)が容器口部(開口部102)の突出部(被係止あご部104)の下部に係合され、インナーリング(シール突条8)が容器口部(開口部102)の内周面を周状にシールし、容器(牛乳びん100)を密封することができるものである。
また、開封用鍔(タブ12)を持ち上げることで、タブ側領域Xにある比較的幅広の弱化ライン20a及び20bは周方向に弾性変形(伸び)し、反タブ側領域Yに5個配置されている第1スコア(比較的幅狭の弱化ライン30)のうち、特に30c、及び30dが破断することでスカート壁(6)が拡径し、アンダーカット(係止突条10)を突出部(被係止あご部)から外して開封できるものである。
なお、第1スコア(比較的幅狭の弱化ライン30c、30d)を破断したことによってスカート壁(6)が拡径しやすくなっているため、使用者が手作業でキャップ(合成樹脂製キャップ2)を容器口部(開口部102)の上方から再び打栓することで、アンダーカット(シール突条8)を突出部(被係止あご部)の下部に再び係合させて容器(牛乳びん100)を簡易的に再密封することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3977911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1等で公知の合成樹脂製キャップには、さらなる改善の余地があった。
すなわち、特許文献1で公知のキャップは、従来の牛乳びんのような広口の容器に対しては、比較的幅広の弱化ラインの伸長と比較的幅狭の弱化ラインの破断によってシール突条が被係止あご部を乗り越えられる程度にスカート壁が十分に拡径でき、使用者の手作業でも容易に開封や再密封できていたが、開口部の外径が小さい場合や合成樹脂製キャップの高さが低くなると、開封時に係止突条を乗り上げる際の比較的幅狭の弱化ラインを破断する力が伝わりにくく、開封完了した際には天面壁が外側に反った状態となってしまい、係止突条及びシール突条も天面壁と同様、外側に反った状態となる。
【0007】
特に、合成樹脂製キャップの高さが低くなると、天面壁及びシール突条と係止突条の軸方向位置は近接することとなり、開封時に係止突条が被係止あご部を乗り越える際の軸方向の変形の影響を受けやすく、これも天面壁を外側に反らせてしまう要因の1つである。
【0008】
これによって、再封時には外側に反った係止突条及びシール突条を開口部に挿入することとなる為、再封のために強い力が必要となり、充分な力が加わらず再封が不十分なことによる飲み残しなどの漏洩が発生してしまう虞があった。
また、開口部の外径が小さい場合、打栓装置による打栓時においても、スカート壁が拡径する際に比較的幅狭の弱化ラインにかかる応力が大きくなり、破断してしまう懸念があった。
【0009】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡単な構成で、スカート壁の高さが低いキャップや容器口部の外径が小さい容器を使用する場合でも、打栓時に第1スコアが破断することがなく、開封時や再密封時に容易且つ大きな力をかけることなく開封可能且つ再密封可能なキャップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のキャップは、キャップ天面と、前記キャップ天面の周囲から垂下するスカート壁と、前記キャップ天面の前記スカート壁よりも半径方向内方側からリング状に垂下するインナーリングとを有し、前記スカート壁には、前記スカート壁の下端から上方に向かって延びる薄膜状の第1スコアおよび第2スコアが形成され、容器口部に嵌合して容器を密封可能なキャップであって、前記スカート壁の外周面側には、開封用鍔が形成され、前記スカート壁の内周面側には、容器口部の突出部に係合するアンダーカットが周方向に形成され、前記第1スコアは、前記スカート壁に、前記キャップ天面の中心よりも前記開封用鍔側にのみ1対形成され、前記第2スコアは、前記スカート壁に、前記キャップ天面の中心よりも前記開封用鍔と反対側にのみ複数形成され、前記第1スコアおよび前記第2スコアは、それぞれ前記アンダーカットに隣接するように周方向に形成され、前記第1スコアの周方向幅は、前記第2スコアの周方向幅よりも狭く、前記第1スコアの膜厚は、前記第2スコアの膜厚よりも薄く、前記第1スコアは、容器開封時に破断可能に構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係るキャップによれば、第1スコアがスカート壁に、キャップ天面の中心よりも開封用鍔側にのみ1対形成されており、第2スコアがスカート壁に、キャップ天面の中心よりも開封用鍔と反対側のみに形成されているため、打栓装置による打栓時は、周方向均一にスカート壁が拡径しようとする力に対して第2スコアが弾性的に延びることで第1スコアの破断を防ぎながら突出部の下方にアンダーカットが移動し、容器を密封できる。
また、開封時に開封用鍔を持ち上げた際は、スカート壁の開封用鍔側が先に持ち上げ方向に応力を受けることによって、開封用鍔により近い第1スコアに応力が集中しやすく、大きな力をかけることなく第1スコアを容易に破断でき、開封用鍔側のアンダーカットが突出部を乗り越えやすくなり、スカート壁の高さが低いキャップを使用する場合や、容器口部の外径が小さい容器を使用する場合であっても、簡単にキャップを開封することができる。
また、開封後の開封用鍔側のスカート壁は、第1スコアが破断されていることによってキャップ天面の外側への反りを抑制できるため、インナーリングの外側への変形も同様に抑制できる。
これにより再密封時にインナーリングが容器口部に大きな抵抗となることなく、大きな力をかけることなく容易且つ確実に再密封できる。
さらに、第1スコアの膜厚は、第2スコアの膜厚よりも薄いため、開封時に第1スコアにさらに応力が集中しやすく、簡単に第1スコアを破断することができ、大きな力をかけることなく容易かつ確実に開封できる。
【0012】
請求項2に記載の構成によれば、第1スコアは、開封用鍔の周方向の両端にそれぞれ最も近接しているアンダーカットに対し、アンダーカットを挟んで開封用鍔と反対側に隣接した位置にあるため、開封用鍔が形成されていることによって変形しにくくなっているスカート壁を避けた位置に第1スコアが形成されており、かつ開封用鍔を持ち上げた際、開封用鍔の周方向の両端に最も近接しているアンダーカットが容器口部を乗り上げる応力が第1スコアに集中しやすく、簡単に第1スコアを破断することができる。
請求項3に記載の構成によれば、第1スコアは、周方向にみてアンダーカットを1個挟んで第2スコアと隣接しているため、打栓時に第1スコアにかかる応力を第2スコアが弾性的に拡径することで軽減させ、打栓時に第1スコアが虐待され破断してしまうことを回避することができる。
【0013】
請求項4に記載の構成によれば、第1スコアは、開封用鍔の周方向中心から30°以上90°未満の位置に配置されているため、第1スコアが開封用鍔から離れすぎずに確実に開封時に応力を集中して受け、容易且つ確実に第1スコアを開封工程の早い段階で破断することでキャップ天面の外側への反りを抑制することができる。
請求項5に記載の構成によれば、アンダーカットの上端は、軸方向に見てインナーリングの下端よりも上方にあるため、開封時に開封用鍔を持ち上げる際に、開封時にアンダーカットの容器口部乗り越えによる周方向の応力を開封工程の早い段階で第1スコアに加え破断させることができ、キャップ天面が外側への反りの抑制、ひいてはインナーリングの外側への反りを抑制することができる。
【0014】
請求項6に記載の構成によれば、アンダーカットおよび第1スコアは、開封用鍔が形成されている箇所の内周面側には形成されていないため、開封時に開封用鍔を持ち上げやすくなるとともに、より一層第1スコアを破断することができ、大きな力をかけることなく容易且つ確実に開封できる。
請求項7に記載の構成によれば、スカート壁の、開封用鍔と直近のアンダーカットとの間には、第1スコアよりも周方向幅が広く、第1スコアよりも膜厚が厚い第3スコアが形成されているため、打栓時の第1スコアへかかる応力を軽減させ、第1スコアの破断を回避できる。また、開封時には開封用鍔を持ち上げる際、第3スコアが伸長してアンダーカットの影響を受けることなく簡単に開封用鍔を持ち上げることができる。
さらに開封用鍔を持ち上げると開封用鍔近傍のアンダーカットと突出部との係合を解除するとともに、第3スコアが破断することなく第1スコアに応力を集中させて破断でき、大きな力をかけることなく容易且つ確実に開封できる。
【0015】
請求項8に記載の構成によれば、大きな力をかけることなく簡単に容器入り飲食品のキャップを開封することができ、容易且つ確実にキャップを再度被せて容器入り飲食品の簡易的な再密封をすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るキャップ100の上面図。
図2】本発明の一実施形態に係るキャップ100の正面図。
図3】本発明の一実施形態に係るキャップ100の下面図。
図4】本発明の一実施形態に係るキャップ100のA-A’部分断面図。
図5】本発明の一実施形態に係るキャップ100のB-B’部分断面図。
図6図5のF部に、C-C’部分断面図を合成した比較用拡大図。
図7】本発明の一実施形態に係るキャップ100の、容器口部BCとの嵌合状態を示すA-A’部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態に係るキャップ100について、図面に基づいて説明する。
なお、キャップ100が嵌合する容器Bは、容器口部BC周辺のみを図示する。
【0018】
本発明の一実施形態に係るキャップ100は、容器Bの容器口部BCに嵌合して容器Bを密封するものであり、図1乃至図6に示すように、キャップ天面101と、キャップ天面101の周囲から垂下するスカート壁110と、キャップ天面101のスカート壁110よりも半径方向内方側からリング状に垂下するインナーリング120とを有している。
また、スカート壁110の外周面側には、半径方向外方に突出した開封用鍔114が形成され、スカート壁110の内周面側には、半径方向内方に突出し、容器口部BCの突出部BTに係合可能なアンダーカット115(115d)と、スカート壁110の他の部分よりも薄肉に形成された膜状の第1スコア111、第2スコア112(112d)、第3スコア113とが設けられている。
【0019】
第1スコア111、第2スコア112、第3スコア113は、スカート壁110の外周面側は上端から下端まで溝状に形成され、スカート壁110の内周面側は軸方向にみて中央から下方に向かって溝状に形成されることで薄肉形成されている。
また、スカート壁110の開封用鍔114およびアンダーカット115の形成位置には各スコアは形成されておらず、第1スコア111はキャップ100の中心から見て開封用鍔114側にのみ形成され、第2スコア112はキャップ100の中心から見て開封用鍔114と反対側にのみ形成されている。
【0020】
第1スコア111は、スカート壁110の下部側に薄肉に形成された第1薄肉部111aと、スカート壁110の上部側に厚肉に形成された第1厚肉部111cと、徐々にスカート壁110の内径が変化して第1薄肉部111aと第1厚肉部111cとを滑らかに接続する第1傾斜部111bとで構成されている。
ここで、図6図5のF部に、C-C’部分断面図を合成した比較用の拡大図であり、第1薄肉部111aおよび後述する第2薄肉部112a、アンダーカット115および115dとを、スカート壁110の外径を合わせた状態で重ねて表示したものである。
なお、図6に示すように、詳細な寸法は一部異なるが、第2スコア112および第3スコア113の構成も第1スコア111と実質上同様である。
【0021】
具体的に説明すると、第2スコア112、第3スコア113の外径、薄肉部の軸方向の長さ、厚肉部の軸方向の長さ、傾斜部の軸方向の長さは、いずれも第1スコア111の外径D、第1薄肉部111aの軸方向の長さha、第1厚肉部111cの軸方向の長さhc、第1傾斜部111bの軸方向の長さhbと同一である。
また、第1薄肉部111aの内径ddは、第2スコア112の薄肉部である第2薄肉部112aや第3スコア113の薄肉部である第3薄肉部113aの内径dcよりも大きく形成されている。
すなわち、第1薄肉部111aは第2薄肉部112aおよび第3薄肉部113aよりも薄肉に形成されている。
【0022】
本実施例では、図1図3に示すとおり第2スコア112dの周方向の幅は、第2スコア112d以外の第2スコア112と同じ、或いは幅広に形成されているが、第1スコア111よりも幅が広い限りは第2スコア112d以外の第2スコア112よりも狭くてもよい。
なお、第3スコア113も第1スコア111よりも幅広に形成されている。
【0023】
ここで、具体的な寸法例として、キャップ100の最外径が32.00mm、高さが5.80mmである場合を例示すると、第1薄肉部111aの軸方向の長さhaと第1傾斜部111bの軸方向の長さhbとの合計は2.00~3.50mm、第1厚肉部の軸方向の長さは2.30~3.80mmの範囲で形成されている。
すなわち、第1薄肉部111aの厚みは0.20~0.35mm、第2薄肉部112aおよび第3薄肉部113aの厚みは0.30~0.45mmの範囲で形成され、上記の寸法範囲内で第1薄肉部111aの厚みが第2薄肉部112a、第3薄肉部113aの厚みよりも薄い関係であればよい。
また、各スコアの周方向の幅は、第1スコア111は0.5~1.3mm、第2スコア112は1.4mm~5.0mm、第3スコア113は1.2~2.1mmの範囲で形成されている。
【0024】
アンダーカット115および115dは、上端がインナーリング120の下端よりも上方に位置し、アンダーカット115および115dの最内径部は、第1スコア111、第2スコア112、第3スコア113の各薄肉部の形成されている高さに位置するように形成されている。
なお、アンダーカット115dの内径dbは、アンダーカット115の内径daよりも0.1~0.8mm大きく形成されている。
【0025】
容器口部BCは、上端部の外周面から全周にわたって半径方向外方に突出した突出部BTが設けられている。
【0026】
次に、本発明の一実施形態に係るキャップ100による、容器Bの密封および開封工程について、図1乃至図7を用いて説明する。
【0027】
まず、容器Bの密封手順を説明する。
容器Bの上方からキャップ100を下方に押圧すると、キャップ100のアンダーカット115は容器口部BCの突出部BTに干渉する。
このとき、さらにキャップ100を押し込むと、スカート壁110は周方向均一に拡径する力を受け、薄肉に形成された第1スコア111、第2スコア112、第3スコア113が破断することなく弾性的に伸長することで、スカート壁110が徐々に拡径する。
これによって、アンダーカット115は突出部BTを乗り越えることができる。
【0028】
このとき、第1スコア111に隣接するアンダーカット115dは他のアンダーカット115よりも内径が大きいため、突出部BTを乗り越える際にスカート壁110が拡径する量を抑えることができ、第1スコア111が受ける応力を低減できる。
また、アンダーカット115dを挟んで第1スコア111に隣接する第2スコア112bによって、アンダーカット115が突出部BTを乗り越える際のスカート壁110の拡径に追従するように大きく弾性変形することができ、第1スコア111が受ける応力をさらに低減できる。
これらによって、第1スコア111の虐待を低減でき、打栓時における第1スコア111の破断を防止できる。
【0029】
アンダーカット115が突出部BTを乗り越えた後、第1スコア111、第2スコア112、第3スコア113はスカート壁110は拡径前の状態まで縮小するため、スカート壁110も縮径し、図6に示すように、アンダーカット115は突出部BTの下方に係合する。
また、インナーリング120は容器口部BCの内周面に密着しながら進入する。
これによって、容器Bの密封が完了する。
【0030】
次に、容器Bの開封手順を説明する。
容器口部BCに嵌合しているキャップ100の、開封用鍔114を上方に持ち上げると、開封用鍔114近傍のスカート壁110から徐々に上方、すなわち、容器口部BCから離脱する方向へ移動を開始する。
このとき、アンダーカット115は突出部BTと係合しているため、開封用鍔114と開封用鍔114の最も近傍に形成されたアンダーカット115との間に設けられている第3スコア113がスカート壁110の移動に伴って伸長する。
これによって、開封用鍔114が上方に移動しやすくなり、使用者が開封用鍔114に力を入れやすい位置まで移動させやすくできる。
【0031】
さらに開封用鍔114を持ち上げると、開封用鍔114側のスカート壁110の拡径に伴って開封用鍔114の最も近傍に形成されたアンダーカット115が徐々に突出部BTとの係合を解除するとともに、第1スコア111に応力が集中し始める。
このとき、周方向にみて第1スコア111に最も近傍且つ開封用鍔114から遠い位置に形成されているアンダーカット115dはまだ突出部BTとの係合を解除されていないため、第1スコア111形成部分よりも開封用鍔114側のキャップ天面101が持ち上げ方向(上方)に応力が加わり、応力は他のスコアに分散されることなく第1スコア111に集中することで、第1スコア111は破断する。
また、アンダーカット115の上端は、軸方向に見てインナーリング120の下端よりも上方にあるため、開封時に開封用鍔114を持ち上げる際に、開封時にアンダーカット115の突出部BTの乗り越えによる周方向の応力を開封工程の早い段階で第1スコア111に加え破断させることができ、キャップ天面101が外側への反りの抑制、ひいてはインナーリング120の外側への反りを抑制することができる。
【0032】
また、第1スコア111は第2スコア112や第3スコア113よりも薄いため、より一層応力を集中的に受けやすく、破断しやすい。
これにより、開封用鍔114を持ち上げてから比較的早く第1スコア111が破断し突出部BTへの係合が解除するため、開封時の応力によってキャップ天面101が大きく変形することなく、キャップ100は離脱する。
なお、本実施形態では、第1スコア111の破断は軸方向にみて少なくとも第1薄肉部111aが破断する。
また、第1薄肉部111aと同じ軸方向高さにアンダーカット115の最内径部が形成されているため、第1薄肉部111aが破断することでアンダーカット115の係合は解除されることとなる。
【0033】
また、第1スコア111(第1薄肉部111a)が破断したことによってスカート壁110の突出部BTに対する周方向の締め付けも緩くなり、アンダーカット115と突出部BTとの係合を解除しやすくなるため、大きな力をかけることなく、開封用鍔114を引き続き持ち上げることで残りのアンダーカット115と突出部BTとの係合を解除し、キャップ100全体を容器口部BCから離脱させ、簡単に容器Bの開封を完了できる。
なお、アンダーカット115dが形成されている付近は、キャップ100開封時にキャップ100の内径方向、すなわち、突出部BTを締め付ける方向へ一時的に応力が加わり、突出部BTとの係合が解除しにくくなるが、アンダーカット115dの内径dbは他のアンダーカット115の内径daよりも大きく形成されているため、突出部BTの締め付けを抑制でき、突出部BTとの係合の解除に必要な力の増加を抑制することができる。
【0034】
前述のとおり、開封時のキャップ天面101の反り方向の変形を抑制できることから、インナーリング120の変形も抑制でき、再封時にもインナーリング120と容器口部BCの内面との位置関係は打栓時と同様であるため、大きな力を必要とせず、再封可能である。
さらに、容器Bより一度開封済みのキャップ100は、第1スコア111が破断しているため、再度容器Bにキャップ100を打栓する際には、スカート壁110が拡径しやすくなることで、簡単にアンダーカット115が突出部BTを乗り越えやすくなる。
すなわち、大きな力の必要なくキャップ100による容器Bの簡易的な再密封が可能となるため、再密封が不十分となることがなく、容器B内の飲み残しが漏洩するようなことがない。
【0035】
ここで、アンダーカット115は開封用鍔114の形成位置には形成されていないため、容器Bの開封時に開封用鍔114を指のかかりやすい位置まで持ち上げやすい。
また、第1スコア111は、開封用鍔114の周方向中心から30°以上90°未満の位置に配置されることで、第1スコア111が開封用鍔114から離れすぎずに確実に開封時に応力を集中して受けることができる。
【0036】
また、幅の異なる第2スコア112を配置することで、スカート壁110を拡径させたい位置や拡径する割合を第2スコア112の配置だけでなく、周方向幅によってもより詳細に調整することができ、様々な寸法の容器の開封や再密封を容易且つ確実に実施できる。
また、第2スコア112は、キャップ100の中心からみて開封用鍔114と反対側にのみ形成され、第1スコア111と第2スコア112との間にはアンダーカット115dが形成されているため、第1スコア111がアンダーカット115dを挟んで第1スコア111より開封用鍔114から遠い第2スコア112に応力を分散されることなく、効率的に第1スコア111に応力を集中でき、より容易且つ確実に第1スコア111を破断することができる。
【0037】
また、第1スコア111、第2スコア112、第3スコア113は、スカート壁110の外周面側は上端から下端まで溝状に形成され、スカート壁110の内周面側は中央から下方に向かって溝状に形成されることで薄肉形成されているため、第1スコア111、第2スコア112、第3スコア113の下部側、すなわち、第1薄肉部111a、第2薄肉部112a、第3薄肉部113aのみがより一層拡径しやすくなるとともに、容器Bをインナーリング120とスカート壁110とを挟んで強く密封できる。
【0038】
ここで、本発明のキャップ100の開封性の官能評価試験について説明する。
試験方法は、被験者に本発明のキャップ100(本発明キャップ)と、比較例として、特許文献1に記載の発明のキャップ(従来キャップ)とを、それぞれ所定の開封方法で開封した際の、開封のし易さを、開けやすい、やや開けやすい、どちらともいえない、やや開けにくい、開けにくいの5段階でそれぞれ絶対評価した。
被験者は年齢や性別の異なる152人である。
試験結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示すように、本発明キャップは、開けやすいと答えた被験者が108人、やや開けやすいと答えた被験者が36人で、全体の94.8%の被験者が本発明キャップを容易に開封できたと評価した。
一方で、従来キャップは、開けやすいと答えた被験者が82人、やや開けやすいと答えた被験者が50人で、全体の86.8%の被験者が従来キャップを容易に開封できたと評価した。
【0041】
以上の試験結果より、本発明キャップは、従来キャップに比べてより一層開封性が向上したものであることがわかる。
【0042】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0043】
なお、上述した実施形態では、第3スコアは、開封用鍔と開封用鍔の近傍のアンダーカットとの間に形成されているものとして説明したが、第3スコアの形成位置はこれに限定されず、例えば、開封用鍔の形成位置まで第3スコアが形成されていてもよい。また、キャップに第3スコアがなくてもよい。
また、上述した実施形態では、第2スコアは、周方向幅が異なるものを含むものとして説明したが、第2スコアの形状はこれに限定されず、例えば、全ての第2スコアが周方向均一な幅で形成されていてもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、第1スコアは、スカート壁の下部側に薄肉に形成された第1薄肉部と、スカート壁の上部側に厚肉に形成された第1厚肉部と、徐々にスカート壁の内径が変化して第1薄肉部と第1厚肉部とを滑らかに接続する第1傾斜部とで構成されているものとして説明したが、第1スコアや第1スコアと実質上同様の構成である第2スコアおよび第3スコアの構成はこれに限定されず、例えば、第1傾斜部がなくてもよい。
また、上述した実施形態では、第1スコアに最も近傍且つ開封用鍔から遠い位置に形成されているアンダーカットは、他のアンダーカットよりも内径が大きく形成されているものとして説明したが、アンダーカットの構成はこれに限定されず、全てのアンダーカットの内径が同一であってもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、第2スコア、第3スコアの外径、薄肉部の軸方向の長さ、厚肉部の軸方向の長さ、傾斜部の軸方向の長さは、いずれも第1スコアの外径、第1薄肉部の軸方向の長さ、第1厚肉部の軸方向の長さ、第1傾斜部の軸方向の長さと同一であるものとして説明したが、各スコアの形状はこれに限定されず、例えば、第1スコアの厚肉部の軸方向の長さが他のスコアの厚肉部の軸方向の長さよりも短くてもよく、第2スコアに傾斜部がなくてもよい。
【符号の説明】
【0046】
100 ・・・ キャップ
101 ・・・ キャップ天面
110 ・・・ スカート壁
111 ・・・ 第1スコア
111a ・・・ 第1薄肉部
111b ・・・ 第1傾斜部
111c ・・・ 第1厚肉部
112、112d ・・・ 第2スコア
112a ・・・ 第2薄肉部
113 ・・・ 第3スコア
113a ・・・ 第3薄肉部
114 ・・・ 開封用鍔
115、115d ・・・ アンダーカット
120 ・・・ インナーリング
B ・・・ 容器
BC ・・・ 容器口部
BT ・・・ 突出部
ha ・・・ 薄肉部の軸方向の長さ
hb ・・・ 傾斜部の軸方向の長さ
hc ・・・ 厚肉部の軸方向の長さ
da ・・・ アンダーカット115の内径
db ・・・ アンダーカット115dの内径
dc ・・・ 第2薄肉部および第3薄肉部の内径
dd ・・・ 第1薄肉部の内径
D ・・・ 第1スコア、第2スコア、第3スコアの外径

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7