(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151109
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】アルカリ金属含有重合体、並びにそれを含む電解質組成物及び電池
(51)【国際特許分類】
C08L 101/02 20060101AFI20231005BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20231005BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231005BHJP
C08F 222/40 20060101ALI20231005BHJP
C08F 212/14 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L101/02
H01M10/0565
H01M10/052
C08F222/40
C08F212/14
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060550
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100226023
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】中島 秀人
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 康貴
(72)【発明者】
【氏名】大内 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 泉
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
5H029
【Fターム(参考)】
4J002AA031
4J002BC101
4J002BD122
4J002BH021
4J002EL106
4J002EV267
4J002FD026
4J002FD207
4J002GQ00
4J100AB07Q
4J100AM49P
4J100BA58P
4J100BA59P
4J100BA87Q
4J100BB18P
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA55
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA43
5H029AJ06
5H029AM16
5H029HJ01
5H029HJ02
(57)【要約】
【課題】
アルカリ金属塩を添加した場合であっても、アルカリ金属イオンの輸率の低下を抑制できる重合体を提供すること。
【解決手段】
アルカリ金属イオンを対カチオンとするアニオン部分を有する構造単位(A)と、アニオンレセプターとしての機能を有する官能基を有する構造単位(B)と、を含む、重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属イオンを対カチオンとするアニオン部分を有する構造単位(A)と、アニオンレセプターとしての機能を有する官能基を有する構造単位(B)と、を含む、重合体。
【請求項2】
構造単位(B)が下記式(B)で表される構造単位の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の重合体。
【化1】
(式(B)中、Wは、アニオンレセプターとしての機能を有する官能基であり、R
1~R
3は、それぞれ独立に水素原子若しくは1価の置換基である、又はR
3は水素原子若しくは1価の置換基であり、R
1及びR
2は一緒になって2価の有機基を形成している。*は、構造単位(A)が他の構造単位と結合する位置を表す。)
【請求項3】
前記官能基がルイス酸性を有する、請求項1又は2に記載の重合体。
【請求項4】
前記官能基が電子不足の原子を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項5】
前記電子不足の原子が周期表第13族に属する原子である、請求項4に記載の重合体。
【請求項6】
前記構造単位(A)がスルホニルイミド基の共役アニオン、スルホン酸基の共役アニオン、及びフェノール性水酸基の共役アニオンの少なくとも一つを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項7】
前記重合体に含まれる全構造単位に対する構造単位(A)のモル比nが0.2~0.8であり、前記重合体に含まれる全構造単位に対する構造単位(B)のモル比mが0.2~0.8である、請求項1~6のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項8】
前記重合体の総量に対して、構造単位(A)の含有量が、5~90質量%であり、構造単位(B)の含有量が、10~95質量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項9】
アルカリ金属イオンを対カチオンとするアニオン部分を有する構造単位(A)と、下記式(B)で表される構造単位(B)と、を含む、重合体。
【化2】
(式(B)中、Wは電子不足の原子を有する官能基であり、R
1~R
3は、それぞれ独立に水素原子若しくは1価の置換基である、又はR
3は水素原子若しくは1価の置換基であり、R
1及びR
2は一緒になって2価の有機基を形成している。*は、構造単位(B)が他の構造単位と結合する位置を表す。)
【請求項10】
Wが下記式(B1)で表される基を有する、請求項9に記載の重合体。
【化3】
(式(B1)中、W
Bは周期表第13族に属する原子であり、R
5は共有結合又は2価の有機基であり、R
6及びR
7はハロゲン原子若しくは1価の有機基である、又は一緒になって2価の有機基を形成している。)
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の重合体を含む、電解質組成物。
【請求項12】
更に可塑剤を含む、請求項11に記載の電解質組成物。
【請求項13】
更にアルカリ金属塩を含む、請求項11又は12に記載の電解質組成物。
【請求項14】
更に、フッ素系樹脂を含有する、請求項11~13のいずれか一項に記載の電解質組成物。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の重合体又は請求項11~14のいずれか一項に記載の電解質組成物を含む、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属含有重合体、並びにそれを含む電解質組成物及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等は、高容量であることから盛んに研究が進められている。リチウムイオン電池の電解質としては、有機溶媒又はイオン液体を含むリチウム塩の溶液などが知られているが、安全性とプロセス性の観点から固体電解質の研究が進められており、なかでも以下の理由から、リチウムイオンを含有するポリマーについて注目が集まっている(特許文献1、並びに非特許文献1及び2)。
【0003】
すなわち、リチウムイオンを含有するポリマーは、柔軟性が高いため、固体電解質内および電極との界面において接触を取りやすいという利点がある。また、リチウムイオンを含有するポリマーは、リチウムイオンの対アニオンをポリマーの官能基とすることにより、アニオンがポリマーに固定されて充放電時にリチウムイオン以外のイオンの移動を抑えることができ、実質的にリチウムイオンのみを電荷単体とすることができる(つまり、シングルイオンコンダクター(SIC)として利用できる。)。また、リチウムイオン電池以外にも、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンのイオン伝導を利用した電池も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第108878777号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Li et al., "Single ion conducting lithium sulfur polymerbatteries with improved safety and stability", Journal of MaterialsChemistry A, 2018, 6, p.14330-14338.
【非特許文献2】Du et al., "Water-Insoluble Side-Chain-Grafted Single IonConducting Polymer Electrolyte for Long-Term Stable Lithium Metal SecondaryBatteries", ACS Applied Energy Materials, 2020, 3, p.1128-1138.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、電池の電解質等には、イオン伝導度を高めるため、更にアルカリ金属塩を添加する場合がある。しかしながら、アルカリ金属塩を添加した場合、アルカリ金属塩に含まれるアニオンの移動により、アルカリ金属イオンの輸率が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、アルカリ金属塩を添加した場合であっても、アルカリ金属イオンの輸率の低下を抑制できる重合体、及び当該重合体を含む電解質組成物及び電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の重合体は、アルカリ金属イオンを対カチオンとするアニオン部分を有する構造単位(A)と、アニオンレセプターとしての機能を有する官能基を有する構造単位(B)と、を含む。
【0009】
上記構造単位(B)が下記式(B)で表される構造単位の少なくとも1種を含むと好ましい。
【化1】
(式(B)中、Wは、アニオンレセプターとしての機能を有する官能基であり、R
1~R
3は、それぞれ独立に水素原子若しくは1価の置換基である、又はR
3は水素原子若しくは1価の置換基であり、R
1及びR
2は一緒になって2価の有機基を形成している。*は、構造単位(A)が他の構造単位と結合する位置を表す。)
【0010】
上記官能基がルイス酸性を有することが好ましい。
【0011】
上記官能基が電子不足の原子を有することが好ましい。
【0012】
上記電子不足の原子が周期表第13族に属する原子であることが好ましい。
【0013】
上記構造単位(A)がスルホニルイミド基の共役アニオン、スルホン酸基の共役アニオン、及びフェノール性水酸基の共役アニオンの少なくとも一つを有すると好ましい。
【0014】
上記重合体に含まれる全構造単位に対する構造単位(A)のモル比nが0.2~0.8であり、上記重合体に含まれる全構造単位に対する構造単位(B)のモル比mが0.2~0.8であると好ましい。
【0015】
上記重合体の全量に対して、構造単位(A)の含有量が、5~90質量%であり、構造単位(B)の含有量が、10~95質量%であると好ましい。
【0016】
本発明の重合体は、アルカリ金属イオンを対カチオンとするアニオン部分を有する構造単位(A)と、下記式(B)で表される構造単位(B)と、を含むものであってよい。
【化2】
(式(B)中、Wは電子不足の原子を有する官能基であり、R
1~R
3は、それぞれ独立に水素原子若しくは1価の置換基である、又はR
3は水素原子若しくは1価の置換基であり、R
1及びR
2は一緒になって2価の有機基を形成している。*は、構造単位(B)が他の構造単位と結合する位置を表す。)
【0017】
Wが下記式(B1)で表される基を有すると好ましい。
【化3】
(式(B1)中、W
Bは周期表第13族に属する原子であり、R
5は共有結合又は2価の有機基であり、R
6及びR
7はハロゲン原子若しくは1価の有機基である、又は一緒になって2価の有機基を形成している。)
【0018】
本発明の電解質組成物は、上記重合体を含む。
【0019】
上記電解質組成物は、更に可塑剤を含むと好ましい。
【0020】
上記電解質組成物は、更にアルカリ金属塩を含むと好ましい。
【0021】
上記電解質組成物は、更に、フッ素系樹脂を含有すると好ましい。
【0022】
本発明の電池は、上記重合体又は上記電解質組成物を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、アルカリ金属塩を添加した場合であっても、アルカリ金属イオンの輸率の低下を抑制できる重合体、及び当該重合体を含む電解質組成物及び電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本実施形態の重合体は、アルカリ金属イオンを対カチオンとするアニオン部分を有する構造単位(A)と、アニオンレセプターとしての機能を有する官能基を有する構造単位(B)と、を含む。このような重合体は、アルカリ金属塩と併用した場合であってもアルカリ金属イオンの輸率の低下を抑制できる。
【0025】
構造単位(B)はアニオンレセプターとしての機能を有する。アニオンレセプターは、アニオンと静電相互作用、水素結合、酸塩基錯体等を形成することによりアニオンを補足する化学種を言う。構造単位(B)は、アルカリ金属塩におけるアルカリ金属イオンの対アニオンを補足し、当該対アニオンとアルカリ金属イオンとの解離を促す。これにより、アルカリ金属イオンは、より移動度が増し、対アニオンは、構造単位(B)を介して重合体に捕捉されるため、対アニオンの移動度は低下し、結果としてアルカリ金属イオンの輸率が向上すると考えられる。また、アルカリ金属イオンの移動度が増すため、アルカリ金属イオンの伝導性も向上する傾向にある。
【0026】
アニオンレセプターとして機能する低分子の化学種(化合物等)は知られており、そのようなものとしては、例えば、米国特許6022643号明細書、米国特許5705689号明細書、米国特許6120941号明細書等に記載の化合物が挙げられる。本実施形態の重合体は、アニオンレセプターとして機能する化学種に対応する構造を、構造単位(B)における官能基として含む。当該官能基は、重合体に固定されているため、従来の低分子のアニオンレセプターとは異なり、補足したアニオンを重合体の構造上に固定でき、当該アニオンが移動することによる電流への関与をより有効に抑制することができると考えられる。
【0027】
なお、アルカリ金属塩の対アニオンは、上記官能基に捕捉される際に完全に電離した遊離のアニオンである必要はなく、アルカリ金属イオンとイオン結合又はイオン対を形成した状態で上記官能基と相互作用し、捕捉されてよい。
【0028】
アニオンレセプターとしての機能を有する官能基は、ルイス酸性を有するものであってよい。この場合、上記官能基は、アニオンの非共有電子対を受容し、酸塩基錯体を形成することによりアニオンを補足することができる。このような官能基としては、電子不足の原子を有する官能基が挙げられる。なお、電子不足の原子とは、他の原子と共有結合しているものの、当該原子の最外殻の電子がオクテットを形成していないものを言う。電子不足の原子としては、周期表第13族に属する原子が挙げられ、より具体的には、アルミニウム及びホウ素のすくなくとも一方であってよく、ホウ素であってよい。
【0029】
また、アニオンレセプターとしての機能を有する官能基としては、アザエーテル部分を有する基であってもよい。アザエーテル部分を有する基は、アザエーテル化合物を置換基として有する基であり、アザエーテル化合物は、エーテル化合物の-O-を-NRE-(ここで、REは水素原子又は有機基である)で置き換えた化合物である。アザエーテル部分は鎖状アザエーテル部分及び環状アザエーテル部分のいずれであってもよく、鎖状アザエーテル部分及び環状アザエーテル部分の両方を有していてよい。アザエーテル部分を有する基は、例えば炭化水素部分等に、電子求引基を有していてもよい。
【0030】
構造単位(B)は、下記式(B)で表される構造単位の少なくとも1種を含んでいてよい。
【化4】
(式(B)中、Wは、アニオンレセプターとしての機能を有する官能基であり、R
1~R
3は、それぞれ独立に水素原子若しくは1価の置換基である、又はR
3は水素原子若しくは1価の置換基であり、R
1及びR
2は一緒になって2価の有機基を形成している。*は、構造単位(B)が他の構造単位と結合する位置を表す。)
【0031】
R1~R3は1つ以上が水素原子であってもよく、すべて水素原子であってもよい。Wは後述の式(B1)で表される基であってよい。
【0032】
R1~R3が1価の置換基である場合、当該1価の置換基は1価の有機基であってもよい。当該有機基が有する炭素原子の個数は、1~20個であってよく、1~15個であってよく、1~10個であってよく、1~5個であってよく、1~3個であってよい。有機基としては、炭化水素基、当該炭化水素基における一つ以上の炭素原子(メチレン基)が-O-、-S-、-C(=O)-又は-C(=O)O-の連結基により置換されて形成された化学構造を有する基等、複素環を有する基等の1価の置換基が挙げられる。また、上記1価の置換基は、炭素原子に結合する水素原子を置換する置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。上記炭化水素基としては特に限定されず、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基、分岐鎖状炭化水素基、及び環式炭化水素基のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれであってもよい。炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられる。
【0033】
なお、本明細書において、芳香族炭化水素基は、芳香族部分を含む基であり、脂肪族部分を有していてもよい。また、本明細書において環式炭化水素基は、環式の炭化水素部分を含む基であり、直鎖又は分岐鎖の炭化水素部分を含んでいてもよい。
【0034】
1価の置換基は電子求引基を有していてよく、電子求引基自体であってもよい。電子求引基は上記1価の有機基に結合していてもよく、上記1価の有機基が電子求引基であってもよい。電子求引基としては、ハロゲン原子、スルホン酸基又はその塩、スルホン酸エステル、ニトロ基、ニトリル基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子のいずれであってもよい。
【0035】
R1及びR2は一緒になって2価の有機基を形成している場合、2価の有機基が有する炭素原子の個数は、1~20個であってよく、1~15個であってよく、1~10個であってよく、1~5個であってよく、1~3個であってよい。有機基としては、炭化水素基、当該炭化水素基における一つ以上の炭素原子(メチレン基)が-O-、-S-、-C(=O)-又は-C(=O)O-の連結基により置換されて形成された化学構造を有する基等、複素環を有する基等の2価の置換基が挙げられる。また、上記2価の有機基は、炭素原子に結合する水素原子を置換する置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。上記炭化水素基としては特に限定されず、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基、分岐鎖状炭化水素基、及び環式炭化水素基のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれであってもよい。炭化水素基としては、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0036】
Wは下記式(B1)で表される基を有すると好ましい。
【化5】
(式(B1)中、W
Bは周期表第13族に属する原子であり、R
5は共有結合又は2価の有機基であり、R
6及びR
7はハロゲン原子若しくは1価の有機基である、又は一緒になって2価の有機基を形成している。R
6及びR
7は同じ基であっても異なる基であってもよい。)
【0037】
WBは、アルミニウム及びホウ素の少なくとも一方であってよく、ホウ素であってよい。
【0038】
R5が2価の有機基である場合、2価の有機基が有する炭素原子の個数は、1~20個であってよく、1~15個であってよく、1~10個であってよく、1~5個であってよく、1~3個であってよい。有機基としては、炭化水素基、当該炭化水素基における一つ以上の炭素原子(メチレン基)が-O-、-S-、-C(=O)-又は-C(=O)O-の連結基により置換されて形成された化学構造を有する基等、複素環を有する基等の1価の置換基が挙げられる。また、上記2価の有機基は、炭素原子に結合する水素原子を置換する置換基を有していてもよい。置換基は、電子求引基であってよい。電子求引基は、としては、ハロゲン原子、スルホン酸基又はその塩、スルホン酸エステル、ニトロ基、ニトリル基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子のいずれであってもよい。R5は、炭化水素基、ハロゲン置換炭化水素基、又は炭化水素基若しくはハロゲン置換炭化水素基がエーテル結合を介してWBに結合する基であってよい。ハロゲン置換炭化水素基は、炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換したものであってよく、部分フッ素置換炭化水素基又は全フッ素置換炭化水素基であってよい。R5は共有結合であってもよい。
【0039】
R6又はR7がハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子のいずれであってもよく、フッ素原子が好ましい。
【0040】
R6又はR7が1価の有機基である場合、1価の有機基が有する炭素原子の個数は、1~20個であってよく、1~15個であってよく、1~10個であってよく、1~5個であってよく、1~3個であってよい。有機基としては、炭化水素基、当該炭化水素基における一つ以上の炭素原子(メチレン基)が-O-、-S-、-C(=O)-又は-C(=O)O-の連結基により置換されて形成された化学構造を有する基等、複素環を有する基等の1価の置換基が挙げられる。また、上記1価の有機基は、炭素原子に結合する水素原子を置換する置換基を有していてもよい。置換基は、電子求引基であってよい。電子求引基は、としては、ハロゲン原子、スルホン酸基又はその塩、スルホン酸エステル、ニトロ基、ニトリル基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子のいずれであってもよい。R6又はR7は、炭化水素基、ハロゲン置換炭化水素基、又は炭化水素基若しくはハロゲン置換炭化水素基がエーテル結合を介してWBに結合する基であってよい。ハロゲン置換炭化水素基は、炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換したものであってよく、部分フッ素置換炭化水素基又は全フッ素置換炭化水素基であってよい。
【0041】
Wは下記式(B1a)で表される基、又は下記式(B1b)で表される基であってよい。
【化6】
(式(B1a)中、X
1及びX
2はそれぞれ酸素原子(エーテル結合)又は共有結合であり、R
11及びR
12は、それぞれハロゲン原子、1価の炭化水素基、水素原子、又は1価のハロゲン置換炭化水素基であり、ハロゲン原子、1価の炭化水素基、又は1価のハロゲン置換炭化水素基であってよく、R
11及びR
12の少なくとも一方が1価の炭化水素基、又は1価のハロゲン置換炭化水素基であってよい。R
11及びR
12は同じ基であってよく、異なる基であってもよい。)
【化7】
(式(B1b)中、X
3及びX
4はそれぞれ酸素原子(エーテル結合)又は共有結合であり、R
13は、2価の炭化水素基、又は2価のハロゲン置換炭化水素基である。)
【0042】
式(B1a)において、R11がハロゲン原子である場合、X1は共有結合であってよく、R12がハロゲン原子である場合、X2は共有結合であってよい。R11もしくはR12が1価の炭化水素基、又は1価のハロゲン置換炭化水素基である場合、1価の炭化水素基、又は1価のハロゲン置換炭化水素基が有する炭素原子の個数は、1~20個であってよく、1~15個であってよく、1~10個であってよく、1~5個であってよく、1~3個であってよい。ハロゲン置換炭化水素基は、炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換したものであってよく、部分フッ素置換炭化水素基又は全フッ素置換炭化水素基であってよい。
【0043】
R11及びR12は、それぞれ独立に-F、-CH3、-C2H5、-C3H7、-C6H5(フェニル基)、-C6HnF5-n(nは0~4の整数であり、0~3の整数であってよい。)、-CF3、-CH2CF3、-CH2CF3F7、-CH(CF3)2、-C(CF3)2-C6H5、-C(CF3)3、-C6Hn(CF3)5-n(nは0~4の整数であり、1又は2であってよい。)
【0044】
式(B1b)において、2価の炭化水素基、又は2価のハロゲン置換炭化水素基が有する炭素原子の個数は、1~20個であってよく、1~15個であってよく、2~10個であってよく、3~8個であってよい。ハロゲン置換炭化水素基は、炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換したものであってよく、部分フッ素置換炭化水素基又は全フッ素置換炭化水素基であってよい。
【0045】
R13は、-C2H4-、-C3H6-、-C4H8-、-C5H10-、-C6H12-、-C7H14-、-C8H16-、-C9H18-、-C10H20-等、これらの水素原子を部分的に又は全部フッ素に置換したものなどが挙げられる。より具体的には、-C(CH3)2-C(CH3)2-が好ましい。
【0046】
構造単位(A)は、アルカリ金属イオンと当該アルカリ金属イオンの対カチオンであるアニオン部分を有する官能基(アニオン性官能基)とを有する。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等が挙げられ、リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンであってよく、リチウムイオン、又はナトリウムイオンであってよく、リチウムイオンであってよい。
【0047】
構造単位(A)は、スルホニルイミド基の共役アニオン、スルホン酸基の共役アニオン、及びフェノール性水酸基の共役アニオンからなる群から選択される少なくとも一つを有していてよい。スルホニルイミド基の共役アニオン、スルホン酸基の共役アニオン、及びフェノール性水酸基の共役アニオンは、例えば、以下で説明するスルホニルイミド基の共役アニオンを有する基、スルホン酸基の共役アニオン(スルホネート基)を有する基、及びフェノール性水酸基の共役アニオンを有する基に含まれていてよい。
【0048】
スルホニルイミド基を有する基としては、以下の式(A1)で表される基であってよい。
【化8】
(式(A1)において、Xは、1~20個の炭素原子を有する2価の有機基であり、Yは、ハロゲン原子、又は1~20個の炭素原子を有する1価の有機基であり、Mは、Li、Na及びKから選択されるアルカリ金属元素であり、*は、構造単位(A1)が他の構造単位と結合する位置を表す。)
【0049】
Xとしては、特に制限はなく、炭化水素基であってもヘテロ原子を有する基であってもよく、複素環を有していてもよい。Xとして、より具体的には、炭化水素基、炭化水素基における一つ以上の炭素原子(メチレン基)が-O-、-S-、-C(=O)-又は-C(=O)O-の連結基により置換された化学構造を有する基等の2価の基が挙げられる。なお、連結基が複数ある場合、当該連結基は互いに隣り合わない。また、上記2価の基は、炭素原子に結合する水素原子を置換する置換基を有していてもよい。置換基としては、1価の置換基であってよく、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。上記炭化水素基としては特に限定されず、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基、分岐鎖状炭化水素基、及び環式炭化水素基のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれであってもよい。Xは、Xが有する炭素原子により、マレイミド基の窒素原子及びスルホニル基の硫黄原子の一方又は両方と結合していてよい。
【0050】
Xが有する炭素原子の個数は1~15個であってよく、2~10個であってよく、3~8個であってよい。Xは芳香環を有する基であってよく、ベンゼン環等の芳香族の炭素環を有する基であってよい。当該炭素環の環員である炭素原子にはアルキル基、ハロゲン原子、電子求引基等の置換基が結合していてもよい。Xとしての炭化水素基は、フェニレン基、1~8個の炭素原子を有するアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、又はこれらが有する炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子等のハロゲン原子に置換された基であると好ましく、フェニレン基又はアルキル基、ハロゲン原子、電子求引基等に置換された置換フェニレン基であるとより好ましい。電子求引基としては、ハロゲン原子、スルホン酸基又はその塩、スルホン酸エステル、ニトロ基、ニトリル基などが挙げられる。
【0051】
式(A)において、Yが1価の有機基である場合、当該有機基としては、特に制限はなく、炭化水素基であってもヘテロ原子を有する基であってもよく、複素環を有していてもよい。Yとして、より具体的には、炭化水素基、炭化水素基における一つ以上の炭素原子(メチレン基)が-O-、-S-、-C(=O)-又は-C(=O)O-の連結基により置換された化学構造を有する基等の1価の基が挙げられる。なお、連結基が複数ある場合、連結基は互いに隣り合わない。また、上記1価の基は、炭素原子に結合する水素原子を置換する置換基を有していてもよい。置換基としては、1価の置換基であってよく、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。上記炭化水素基としては特に限定されず、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基、分岐鎖状炭化水素基、及び環式炭化水素基のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれであってもよい。
【0052】
Yが有する炭素原子の個数は1~15個であってよく、1~10個であってよく、1~8個であってよく、1~5個であってよく、1~3個であってよい。Yとしての炭化水素基は、フェニル基、1~5個の炭素原子を有するアルキル基、又はこれらの基が有する炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子等のハロゲン原子に置換されたものが好ましく、1~5個の炭素原子を有するフッ素化アルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基等の1~3個の炭素原子を有するフッ素化アルキル基が更に好ましい。フッ素化アルキル基は全フッ素化アルキル基であってよい。Yがハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としては、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0053】
式(A)中、M+は、アルカリ金属イオンであり、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、又はカリウムイオン(K+)であると好ましく、リチウムイオンであることがより好ましい。M+は、Li+、Na+、及びK+のうち2種又は3種のイオンを含んでいてもよいが、実質的に単一のイオンのみを含むことが好ましい。
【0054】
フェノール性水酸基の共役アニオンを有する基は、芳香環に直接結合した水酸基(すなわち、フェノール性水酸基(-OH))がアルカリ金属化した基(つまり、Mをアルカリ金属として-OM基)を有する基である。
【0055】
構造単位(A)は、以下の式(A2)で表される基であってよい。
【0056】
【化9】
(式(A2)中、Y
2は、アルカリ金属化されたフェノール性水酸基を有する基、又はスルホン酸の共役アニオンを有する基であり、*は、構造単位(A2)の他の構造単位との結合位置を表す。R
15~R
17は、それぞれ独立に水素原子若しくは1価の置換基である、又はR
16は水素原子若しくは1価の置換基であり、R
15及びR
17は一緒になって2価の置換基を形成している。)
【0057】
R15~R17は1つ以上が水素原子であってもよく、すべて水素原子であってもよい。
【0058】
R15~R17が1価の置換基である場合、当該1価の置換基は1価の有機基であってもよい。当該有機基が有する炭素原子の個数は、1~20個であってよく、1~15個であってよく、1~10個であってよく、1~5個であってよく、1~3個であってよい。有機基としては、炭化水素基、当該炭化水素基における一つ以上の炭素原子(メチレン基)が-O-、-S-、-C(=O)-又は-C(=O)O-の連結基により置換されて形成された化学構造を有する基等、複素環を有する基等の1価の置換基が挙げられる。また、上記1価の置換基は、炭素原子に結合する水素原子を置換する置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。上記炭化水素基としては特に限定されず、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基、分岐鎖状炭化水素基、及び環式炭化水素基のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれであってもよい。炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられる。
【0059】
R15~R17について、1価の置換基は電子求引基を有していてよく、電子求引基自体であってもよい。電子求引基は上記1価の有機基に結合していてもよく、上記1価の有機基が電子求引基であってもよい。電子求引基としては、ハロゲン原子、スルホン酸基又はその塩、スルホン酸エステル、ニトロ基、ニトリル基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子のいずれであってもよい。
【0060】
R15及びR17が一緒になって2価の有機基を形成している場合、2価の有機基が有する炭素原子の個数は、1~20個であってよく、1~15個であってよく、1~10個であってよく、1~5個であってよく、1~3個であってよい。有機基としては、炭化水素基、当該炭化水素基における一つ以上の炭素原子(メチレン基)が-O-、-S-、-C(=O)-又は-C(=O)O-の連結基により置換されて形成された化学構造を有する基等、複素環を有する基等の2価の置換基が挙げられる。また、上記2価の有機基は、炭素原子に結合する水素原子を置換する置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。上記炭化水素基としては特に限定されず、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基、分岐鎖状炭化水素基、及び環式炭化水素基のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれであってもよい。炭化水素基としては、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0061】
Y
2がフェノール性水酸基を有する基である場合、Y
2は、以下の式(A21)~(A26)のいずれかの式で表される基であってよい。
【化10】
(式(A21)中、R
A基のうち少なくとも一つが-OM基であり、残りは、水素原子又は1価の置換基であり、Mは、アルカリ金属であり、Li、Na又はKであってよい。式(A22)中、R
B基のうち少なくとも一つが-OM基であり、残りは、水素原子又は1価の置換基であり、Mは、アルカリ金属であり、Li、Na又はKであってよい。式(A23)中、R
C基のうち少なくとも一つが-OM基であり、残りは、水素原子又は1価の置換基であり、Mは、アルカリ金属であり、Li、Na又はKであってよい。式(A24)中、R
D基のうち少なくとも一つが-OM基であり、残りは、水素原子又は1価の置換基であり、Mは、アルカリ金属であり、Li、Na又はKであってよい。式(A25)中、R
E基のうち少なくとも一つが-OM基であり、残りは、水素原子又は1価の置換基であり、Mは、アルカリ金属であり、Li、Na又はKであってよい。式(A26)中、R
F基のうち少なくとも一つが-OM基であり、残りは、水素原子又は1価の置換基であり、Mは、アルカリ金属であり、Li、Na又はKであってよい。)
【0062】
式(A21)~(A26)で表される基は、1~3個の-OM基を有していてよく、1又は2個の-OM基を有していてよく、1個の-OM基を有していてよい。
【0063】
式(A21)~(A26)において、1価の置換基は、電子求引基であると好ましい。電子求引基としては、ハロゲン原子、スルホン酸基又はその塩、スルホン酸エステル、ニトロ基、ニトリル基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、F、Cl、Br及びIのいずれであってもよい。
【0064】
また、式(A21)~(A26)において、1価の置換基は、1~20個の炭素原子を有する有機基であってよい。当該有機基が有する炭素原子の個数は、1~15個であってよく、1~10個であってよく、1~5個であってよく、1~3個であってよい。有機基としては、炭化水素基、当該炭化水素基における一つ以上の炭素原子(メチレン基)が-O-、-S-、-C(=O)-又は-C(=O)O-の連結基により置換されて形成された化学構造を有する基等、複素環を有する基等の1価の基が挙げられる。また、上記1価の基は、炭素原子に結合する水素原子を置換する置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。上記炭化水素基としては特に限定されず、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基、分岐鎖状炭化水素基、及び環式炭化水素基のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれであってもよい。炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられる。なお、1価の有機基は、それ自体が電子求引基であってもよい。
【0065】
Y
2がスルホン酸の共役アニオンを有する基である場合、Y
2としては、下記式(A3)で表される基が挙げられる。
【化11】
(式(A3)において、R
19は、共有結合又は2価の有機基である。Mは、Li、Na又はKである。)
【0066】
式(A3)において、2価の有機基が有する炭素原子の個数は、1~20個であってよく、1~15個であってよく、1~10個であってよく、1~5個であってよく、1~3個であってよい。有機基としては、炭化水素基、当該炭化水素基における一つ以上の炭素原子(メチレン基)が-O-、-S-、-C(=O)-又は-C(=O)O-の連結基により置換されて形成された化学構造を有する基等、複素環を有する基等の2価の置換基が挙げられる。また、上記2価の有機基は、炭素原子に結合する水素原子を置換する置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。上記炭化水素基としては特に限定されず、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、直鎖状炭化水素基、分岐鎖状炭化水素基、及び環式炭化水素基のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基のいずれであってもよい。炭化水素基としては、メチレン基、フェニレン基等が挙げられる。
【0067】
スルホン酸の共役アニオンを有する基としては、-SO3M、-CH2-SO3M、-C6H4-SO3M等が挙げられる。
【0068】
重合体に含まれる全構造単位に対する構造単位(B)のモル比mは、0.2~0.8であってよく、0.25~0.75であってよく、0.3~0.7であってよく、0.35~0.65であってよく、0.4~0.6であってよい。
【0069】
重合体に含まれる全構造単位に対する構造単位(A)のモル比nは、0.25~0.75であってよく、0.3~0.7であってよく、0.35~0.65であってよく、0.4~0.6であってよい。
【0070】
m及びnの合計は、1以下であれば問題ないが、0.95以下であってもよい。また、m及びnの合計は、0.5以上であってよく、0.6以上であってよく、0.7以上であってよく、0.8以上であってよく、0.9以上であってよく、0.95以上であってよい。
【0071】
重合体の総質量に対する構造単位(A)の含有量は、5~90質量%であってよく、20~80質量%であってよく、40~75質量%であってよく、55~70質量%であってよい。
【0072】
重合体の総質量に対する構造単位(B)の含有量は、10~95質量%であってよく、20~80質量%であってよく、25~60質量%であってよく、30~45質量%であってよい。
【0073】
構造単位(A)と構造単位(B)との含有量の合計は、重合体の総質量に対して50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。
【0074】
重合体は、構造単位(A)及び構造単位(B)のいずれとも異なる構造単位である構造単位(C)を含んでいてよい。構造単位(C)としては、以下の構造単位(C1)で表される構造単位、構造単位(C2)で表される構造単位等が挙げられる。
【化12】
(式(C1)において、R
21~R
24は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、1~20個の炭素原子を有する1価の有機基である。*は、構造単位(C1)が他の構造単位と結合する位置を表す。)
【化13】
(式(C2)中、R
25は、1~20個の炭素原子を有する2価の有機基であり、R
26及びR
27は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、又は1~20個の炭素原子を有する1価の有機基である。)
【0075】
また、構造単位(C)には、構造単位(A)の前駆体である構造単位(構造単位(Ap)とも呼ぶ。)が含まれていてもよい。このような構造単位としては、構造単位(A)の前駆体である構造単位(例えば、後述の単量体(A2’)に由来する構造単位)のうち、構造単位(A)に変換できなかった未反応の構造単位及び中間的な構造単位が挙げられ、例えば、構造単位(A)の共役酸である基(つまり、構造単位(A)の対カチオンであるアルカリ金属イオンをH+に置き換えたもの)、及び構造単位(A)の対カチオンをアルカリ金属イオン以外のカチオンに置き換えた基などが挙げられる。構造単位(Ap)に含まれる対カチオンとしては、NH4
+、有機アンモニウムカチオン、アルカリ土類金属イオン等の金属イオンなどが挙げられる。重合体は、構造単位(A)と構造単位(Ap)との合計量に対して構造単位(A)を85モル%以上、90モル%以上、又は95モル%以上含んでいてもよい。
【0076】
重合体は、ブタジエン、イソプレン等の複数のエチレン性不飽和基を有する炭化水素化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0077】
重合体は、架橋剤に由来する構造単位を有していてもよい。架橋剤としては、ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジビニルベンゼン、トリエチレングリコールジビニルエーテル等の分子内に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。
【0078】
重合体の数平均分子量(Mn)は、5000~200000であってよく、8000~120000であってよく、10000~100000であってよい。重合体の重量平均分子量(Mw)は、5000~300000であってよく、10000~250000であってよく、20000~100000であってよい。重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.0~3.5であってよく、1.3~2.7であってよい。重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0079】
本実施形態の重合体は、イオン伝導性材料として使用でき、電池の材料として使用することができる。すなわち、本実施形態の電池は、上記重合体を含む。重合体は、電池の電解質を構成する電解質組成物に含まれていてもよい。電池としては、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池等が挙げられる。電池は、正極と、負極と、正極及び負極の間に配置された電解質とを含み、当該電解質が上記重合体を含んでいてよい。すなわち、本実施形態の重合体は、電解質材料として使用できる。
【0080】
電解質組成物は可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、有機溶媒であってよく、非プロトン性溶媒であってよい。有機溶媒としては、カーボネート系溶媒、フッ素系溶媒、及びエーテル系溶媒からなる群から選択される少なくとも一種であってよく、これらの溶媒は、非プロトン性溶媒であってもよい。可塑剤を使用すると、電解質組成物が成形しやすくなる傾向にある。
【0081】
カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネートなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン等の環状エーテル;1,2-ジエトキシエタン、及びエトキシメトキシエタン等の鎖状エーテルなどが挙げられる。フッ素系溶媒としては、パーフルオロオクタン等のハイドロフルオロカーボン類;メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル等のハイドロフルオロエーテル類、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン等のハイドロフルオロオレフィン類などが挙げられる。また、溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO);ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒などの非プロトン性溶媒が挙げられる。有機溶媒は、1種のみ、又は2種以上の有機溶媒を含む混合溶媒として使用してよい。
【0082】
電解質組成物における有機溶媒の含有量は、上記重合体100質量部に対して、20~600質量部であってよく、50~400質量部であってよく、80~300質量部であってよい。
【0083】
電解質組成物は、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、フッ素系樹脂が挙げられる。フッ素系樹脂は、主鎖として炭素鎖を有するものが好ましく、フッ素及びエチレン性不飽和基を有する単量体の単独重合体又は共重合体が挙げられる。具体的には、フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が挙げられる。
【0084】
電解質組成物は、上記重合体以外にアルカリ金属塩を含んでいてもよい。アルカリ金属塩としては、特に限定されないが、アルカリ金属をMとして、MF、MCl、MBr、MI、MClO4、MPF6、MBF4、M2SO4、M[(ChF2h+1)SO2]2N(hは、0~3)等が挙げられる。Mは構造単位(A)と同じアルカリ金属であってよい。Mは、リチウム、ナトリウム又はカリウムであってよい。
【0085】
<重合体の製造方法>
重合体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属イオン化されたアニオン性官能基を有する単量体又は当該アニオン性官能基の前駆体を有する単量体(以下、単量体(A')と呼ぶ。)と、アニオンレセプターとしての機能を有する官能基を有する単量体(B’)とを含む単量体(単量体混合物)を重合させる方法が挙げられる。単量体は更に単量体(A’)及び単量体(B’)と異なる単量体(C’)を含んでいてよい。
【0086】
単量体(A')及び単量体(B’)は、エチレン性不飽和基を有していてよい。この場合、ラジカル付加重合により単量体(A')及び単量体(B’)を重合することができる。この場合、単量体は、開始剤の存在下で重合することができる。つまり、重合反応は、単量体と開始剤とを含む重合性組成物において行われてよい。
【0087】
単量体(A')は、重合体において構造単位(A)を誘導する単量体である。単量体(A’)としては、以下の式(A1’)で表される単量体(A1’)、式(A2’)で表される単量体(A2’)等を挙げることができる。
【化14】
(式(A1’)のX、Y及びM
+は式(A)と同じ意味である。)
【化15】
(式(A2’)において、R
15~R
17は、式(A2)のR
15~R
17と同じ意味であり、Y2’は、式(A2)におけるY
2が有する-OM基に対応するフェノール性水酸基を誘導することができる基、又はY
2が有する-SO
3M基に対応するスルホン酸基を誘導することができる基を有する基である。)
【0088】
Y2’は、Y2と同じ基であってもよいが、Y2の前駆体である基であってよい。すなわち、Y2’は、得ようとするY2が有する-OM基又は-SO3M基と同じ位置に-OM基又は-SO3M基に変換可能な基を有する基である。
【0089】
Y2が有する-OM基に対応するフェノール性水酸基を誘導することができる基としては、例えば、加水分解性基が挙げられ、当該加水分解性基を加水分解することによりY2が有する-OM基に対応する位置にフェノール性水酸基を導入することができる。加水分解性基としては、例えば、アルコキシド基、又は-OSi(Rk)3基(Rkは、炭化水素基等の1価の有機基)が挙げられる。フェノール性水酸基は、例えば、MOH、M2CO3、MHCO3等のアルカリ金属の塩基性塩と反応させることにより-OM基に変換できる。
【0090】
同様に、Y2が有する-SO3M基に対応するスルホン酸基を誘導することができる基としては、例えば、スルホン酸エステル基、-SO2Cl基等のスルホン酸基(-SO3H)を誘導できる基が挙げられる。スルホン酸基は、例えば、MOH、M2CO3、MHCO3、ハロゲン化アルカリ金属等のアルカリ金属の塩と反応させることにより-OM基に変換できる。また、-SO2Cl基については、MOHと反応して-SO3M基に変換させることもできる。過剰量のMOHを用いる場合、ほとんどの-SO2Cl基を-SO3M基に変換させることもできる。かかる反応では、-SO2Cl基の一部が-SO3H基となる場合もあるが、-SO3H基については、別途Mを含む塩基と反応させて-SO3M基としてもよい。また、Y2’は、Y2と同じアニオン部分を有し、アルカリ金属イオン以外のカチオンと塩を形成している基であってもよい。この場合、得られた重合体にカチオン交換反応を行うことによって、構造単位(A2)を誘導することができる。Y2’の反応率(Y2’の総量のうちY2に変換されたものの割合)は、85モル%以上、90モル%以上、又は95モル%以上であってよい。
【0091】
単量体(B')は、重合体において構造単位(B)を誘導する単量体である。単量体(B’)としては、以下の式(B’)で表される単量体(B’)を挙げることができる。
【化16】
(式中、R
1~R
3及びWは、式(B)におけるR
1~R
3及びWと同じ意味である。)
【0092】
ラジカル重合開始剤は熱開始剤及び光開始剤のいずれであってもよい。たとえば、熱開始剤としては、2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN);2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN、V-40)、ジメチル-2,2-アゾビスイソブチレート(MAIB)等のアゾ系開始剤;ジベンゾイルパーオキシド、ジ-8,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジデカノイルパーオキシド、ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキシド等の有機過酸化物などが挙げられる。光開始剤としては、オキシム系化合物、メタロセン系化合物、アシルホスフィン系化合物、アミノアセトフェノン化合物などが挙げられる。開始剤は、1種又は2種以上を使用してよい。
【0093】
重合性組成物は、四塩化炭素等の連鎖移動剤を含んでいてもよい。
【実施例0094】
(単量体(A1)及び単量体(B1)の製造)
以下に説明するとおり、単量体(A1)及び単量体(B1)を用意した。
【0095】
(単量体A1の合成)
窒素雰囲気下、トリフルオロメタンスルホンアミド(52.5mmol、7.83g、東京化成工業株式会社製)を脱水アセトニトリル(150mL、関東化学株式会社製)に溶解させた。この溶液に水酸化リチウム(105mmol、2.51g、東京化成工業株式会社製)及び4-アセトアミドベンゼンスルホニルクロリド(50mmol、11.68g、東京化成工業株式会社製)を順に加えて5時間加熱還流した。室温への冷却後、過剰量のアセトニトリル(700mL)を加えて固体を析出させ、ろ過で分離したのちジクロロメタン(関東化学株式会社製)で洗浄し、中間体1を得た。収率は、97.1%であった。
・中間体1の構造式:
【化17】
【0096】
窒素雰囲気下、中間体1(15mmol、5.28g)に5%塩酸(22.5mL)を加え、90℃で2時間撹拌した。室温への冷却後、pH試験紙などでの確認のもと、pHが7以上になるまで水酸化リチウム水溶液を加えたのち、減圧乾燥により固体を得た。得られた固体をアセトニトリル溶液にて抽出、減圧乾燥により中間体2を得た。収率は、上記中間体1の原料に基づいて92.6%であった。
・中間体2の構造式:
【化18】
【0097】
窒素雰囲気下、無水マレイン酸(13.3mmol、1.30g、東京化成工業株式会社製)を脱水1,4-ジオキサン(関東化学株式会社製)に溶解した。この溶液に窒素雰囲気下で調整した中間体2(13.2mmol、4.09g)の脱水テトラヒドロフラン(26.4mL、関東化学株式会社製)溶液を全量滴下し、室温で12時間撹拌した。反応後、析出物をろ過、60℃で4時間真空乾燥することで中間体3を含む固体を得た。
・中間体3の構造式:
【化19】
【0098】
窒素雰囲気下、中間体3を含む固体(14.0mmol、5.70g)と酢酸ナトリウム水溶液(13.3mmol、1.09g、東京化成工業株式会社製)を無水酢酸(12.3mL、東京化成工業株式会社製)に加え、70℃で3時間撹拌した。反応後の溶液を0℃の過剰量のジエチルエーテル(関東化学株式会社製)に全量滴下し、析出物をろ過にて回収した。不活性雰囲気下にて、析出物を脱水アセトニトリル(関東化学株式会社製)で抽出し、減圧乾燥することでA1を得た。全工程を通した収率は72.8%であった。
・単量体A1:下記化合物(A1)
【化20】
【0099】
(単量体B1の合成)
単量体B1(下記式(B1))については、以下のとおり、合成した。
無水硫酸マグネシウム(MgSO
4)4.21g(5mmol)とピナコール4.14g(35mmol)にジエチルエーテル175mLを加え、撹拌して得られた白濁溶液に、4-ビニルフェニルボロン酸(VPBA、5.18g(35mmol)を加えて室温で19時間撹拌した。濾過して得られた溶液をエバポレーションし、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル20/1(体積比))、収率92.1%で目的とする単量体B1を得た。
【化21】
【0100】
(共重合体1の製造)
単量体A1:0.78g、単量体B1:0.46g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):16.4mgとなるように各成分の溶液を混合し、内部標準物質としてテトラリンを加えてモノマー消費率を確認しながら、窒素雰囲気下60℃で24時間反応させた。溶媒としては、アセトニトリルを使用した。反応後の溶液をアセトニトリル中で透析し、120℃で真空乾燥することで、共重合体1を1.08g(収率87%)得た。モノマー導入比はA1:B1=48:52であった。モノマー導入比は共重合体の1H-NMRより算出した。
共重合体1は数平均分子量Mn=7.4×104、重量平均分子量Mw=1.8×105、分子量分布Mw/Mn=2.40であった。
【0101】
(共重合体2の製造)
単量体A1:0.558g、スチレン:0.149g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):11.7mgを脱水アセトニトリル13.4mLに溶解させ、内部標準物質としてテトラリンを加えてモノマー消費率を確認しながら、窒素雰囲気下60℃で24時間反応させた。重合溶液をアセトニトリル中で透析し、120℃で真空乾燥することで、共重合体2を0.64g(収率87%)得た。モノマー導入比はA1:スチレン=52:48であった。モノマー導入比は共重合体の1H-NMRより算出した。
共重合体2は数平均分子量Mn=8.7×104、重量平均分子量Mw=2.2×105、分子量分布Mw/Mn=2.55であった。
【0102】
(実施例1)
共重合体1に対して、可塑剤として200質量%のエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)を添加し、電解質組成物を製造した。
【0103】
<イオン伝導度の測定>
グローブボックス内、乾燥アルゴン雰囲気下にて、コイン型電池CR2032の評価セルを組み立てた。具体的には、評価セル内に以下の順に各層を積層して試験用積層体を作製した。
(ステンレス板/電解質組成物/ステンレス板)
インピーダンス測定装置を用いて、25℃、周波数範囲0.1Hz~1MHz、印加電圧10mV(vs.開回路電圧)の条件で測定する。イオン伝導度σは次の式で算出できる。
σ(S・cm-1)=t(cm)/(R(Ω)×A(cm2))
式中、Rは、インピーダンスの値を表す。Aは、サンプルの面積を表す。tは、サンプルの厚さを表す。結果を表1に示す。
【0104】
<活性化エネルギーの測定>
上記評価セルを用いたイオン伝導度測定を30、40、50、60、及び70℃の条件においても実施し、温度に対するイオン伝導度の変化を測定した。イオン伝導度の常用対数値と温度の逆数のグラフの傾きからアレニウスの式(logk=logA-Ea/RT、k:反応速度定数、A:頻度因子、Ea:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度)により活性化エネルギーを算出した。
【0105】
<リチウムイオン輸率の測定>
グローブボックス内、乾燥アルゴン雰囲気下にて、コイン型リチウム電池CR2032の評価セルを組み立てた。具体的には、評価セル内に以下の順に各層を積層して試験用積層体を作製した。(リチウム/電解質組成物/リチウム)
室温(25℃)において、試験用積層体に10mVを印加し、初期電流値(I0)および10000秒後の定常電流値(Iss)を測定した。得られた値を次式に導入してリチウムイオン輸率(tLi+)を求めた。
tLi+=Iss/I0
【0106】
(実施例2)
更にリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を、共重合体の構造単位(B)に対して50モル%添加したこと以外は、実施例1と同様に電解質組成物を製造し、各種測定を行った。
【0107】
(比較例1)
共重合体1を共重合体2に変更したこと以外、実施例1と同様に電解質組成物を製造し、各種測定を行った。
【0108】
(比較例2)
更にリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を、共重合体の構造単位(B)に対して50モル%添加したこと以外は、比較例1と同様に電解質組成物を製造し、各種測定を行った。
【表1】
【0109】
実施例1及び2を比較すると、リチウム塩を添加した実施例2では、リチウムイオン輸率が低下したものの、実施例1のリチウムイオン輸率の83%を保持していた。一方、比較例1及び2では、リチウムイオン輸率自体が実施例1及び2と比較して低く、比較例2では、比較例1のリチウムイオン輸率の73%しか保持しておらず、リチウムイオン輸率の低下率の幅が大きかった。
【0110】
(実施例3)
共重合体1に対して、可塑剤として400質量%のエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)、及びフッ素系樹脂100質量%を添加し、電解質組成物を製造した。実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2に示す。なお、使用したフッ素系樹脂は、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP、アルドリッチ社製、Mw:~400,000、Mn:~130,000、ペレット状、製品番号:427160)である。
【0111】
(実施例4)
更にリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を、共重合体の構造単位(B)に対して50モル%添加したこと以外は、実施例3と同様に電解質組成物を製造し、各種測定を行った。結果を表2に示す。
【0112】
(比較例3)
共重合体1を共重合体2に変更したこと以外、実施例4と同様に電解質組成物を製造し、各種測定を行った。結果を表2に示す。
【0113】
【0114】
共重合体1はフッ素系樹脂と複合した場合であっても、実施例1と実施例2の場合と同様にリチウム塩を加えた時のリチウムイオン輸率の維持率が高い結果となった。一方、比較例3では、実施例4と比較してリチウムイオン輸率が大きく低下する結果となった。
【0115】
(実施例5及び6)
リチウム塩としてLiFSIに代えてLiBF4を使用したこと以外は実施例2と同様に電解質組成物を製造し、実施例5として各種測定を行った。
リチウム塩としてLiFSIに代えてLiTFSIを使用したこと以外は実施例4と同様に電解質組成物を製造し、実施例6として各種測定を行った。
それぞれの結果を表3に示す。
【0116】
【0117】
共重合体1はLiFSIに代えてLiBF4又はLiTFSIを添加しても高いリチウムイオン輸率を維持した。
前記構造単位(A)がスルホニルイミド基の共役アニオン、スルホン酸基の共役アニオン、及びフェノール性水酸基の共役アニオンの少なくとも一つを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の重合体。
前記重合体に含まれる全構造単位に対する構造単位(A)のモル比nが0.2~0.8であり、前記重合体に含まれる全構造単位に対する構造単位(B)のモル比mが0.2~0.8である、請求項1~6のいずれか一項に記載の重合体。
アニオンレセプターとして機能する低分子の化学種(化合物等)は知られており、そのようなものとしては、例えば、米国特許6022643号明細書、米国特許5705689号明細書、米国特許6120941号明細書等に記載の化合物が挙げられる。本実施形態の重合体は、アニオンレセプターとして機能する化学種に対応する構造を、構造単位(B)における官能基として含む。当該官能基は、重合体に固定されているため、従来の低分子のアニオンレセプターとは異なり、捕捉したアニオンを重合体の構造上に固定でき、当該アニオンが移動することによる電流への関与をより有効に抑制することができると考えられる。
アニオンレセプターとしての機能を有する官能基は、ルイス酸性を有するものであってよい。この場合、上記官能基は、アニオンの非共有電子対を受容し、酸塩基錯体を形成することによりアニオンを捕捉することができる。このような官能基としては、電子不足の原子を有する官能基が挙げられる。なお、電子不足の原子とは、他の原子と共有結合しているものの、当該原子の最外殻の電子がオクテットを形成していないものを言う。電子不足の原子としては、周期表第13族に属する原子が挙げられ、より具体的には、アルミニウム及びホウ素のすくなくとも一方であってよく、ホウ素であってよい。