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特開2023-151117セメント組成物、及び、セメント組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151117
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】セメント組成物、及び、セメント組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20231005BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20231005BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20231005BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20231005BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20231005BHJP
   B28B 17/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/12 A
C04B24/22 B
C04B24/26 E
C04B14/02 Z
B28B17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060559
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】今津 大貴
(72)【発明者】
【氏名】西 元央
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 尚
(72)【発明者】
【氏名】金井 謙介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔平
【テーマコード(参考)】
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055EA03
4G112MD01
4G112PA04
4G112PB20
4G112PB25
4G112PB31
4G112PC03
4G112PC04
(57)【要約】
【課題】硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することが可能なセメント組成物、及び、セメント組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るセメント組成物は、セメントと、ジエタノールイソプロパノールアミンと、水と、細骨材と、減水剤と、を含み、前記減水剤が、ポリカルボン酸系減水剤、及び、ナフタレンスルホン酸系減水剤からなる群から選択される少なくとも一種を含み、前記ジエタノールイソプロパノールアミンの含有量が、前記セメントに対して10ppm以上200ppm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、ジエタノールイソプロパノールアミンと、水と、細骨材と、減水剤と、を含み、
前記減水剤が、ポリカルボン酸系減水剤、及び、ナフタレンスルホン酸系減水剤からなる群から選択される少なくとも一種を含み、
前記ジエタノールイソプロパノールアミンの含有量が、前記セメントに対して10ppm以上200ppm以下である、
セメント組成物。
【請求項2】
前記減水剤が、前記ポリカルボン酸系減水剤を含み、
前記ポリカルボン酸系減水剤の含有量が、前記セメントに対して0.5質量%以上3.0質量%以下である、請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
前記減水剤が、前記ナフタレンスルホン酸系減水剤を含み、
前記ナフタレンスルホン酸系減水剤の含有量が、前記セメントに対して0.6質量%以上3.5質量%以下である、請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項4】
以下の工程(1)~(3)により測定されるフレッシュモルタルの形成直後の貫入抵抗値が、300以上3500以下である、請求項1~3のいずれか一つに記載のセメント組成物。
工程(1):上部が開口した容器にフレッシュモルタルを充填する工程。
工程(2):容器に充填されたフレッシュモルタルの上方から、断面積が900mm以上8000mm以下の貫入針を貫入させて貫入力を測定する工程。
工程(3):得られた貫入力を貫入針の断面積で除し、貫入抵抗値を算出する工程。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一つに記載のセメント組成物を製造する方法であって、
前記ジエタノールイソプロパノールアミンを、前記セメントに対して10ppm以上200ppm以下の配合量となるように添加する、
セメント組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物、及び、該セメント組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやモルタルの強度発現性を高めるために、アルカノールアミンが用いられることがある。例えば、特許文献1には、トリイソプロパノールアミンを主成分とする強度増進剤を添加したコンクリートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/142003号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンクリートやモルタルの施工を適切に行い、耐久性に優れた構造物を構築するために、フレッシュコンクリートやフレッシュモルタルには作業に適したワーカビリティが要求される。特許文献1のようにアルカノールアミンが添加されたコンクリートやモルタルについては、ワーカビリティの改善に関する検討がこれまで十分になされておらず、強度発現性を維持しつつ、ワーカビリティを改善する方法が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することが可能なセメント組成物、及び、セメント組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセメント組成物は、セメントと、ジエタノールイソプロパノールアミンと、水と、細骨材と、減水剤と、を含み、前記減水剤が、ポリカルボン酸系減水剤、及び、ナフタレンスルホン酸系減水剤からなる群から選択される少なくとも一種を含み、前記ジエタノールイソプロパノールアミンの含有量が、前記セメントに対して10ppm以上200ppm以下である。
【0007】
前記セメント組成物は、前記ジエタノールイソプロパノールアミンの含有量が、前記セメントに対して10ppm以上200ppm以下であり、前記減水剤が、ポリカルボン酸系減水剤、及び、ナフタレンスルホン酸系減水剤からなる群から選択される少なくとも一種を含むことにより、硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することができる。
【0008】
本発明に係るセメント組成物は、前記減水剤が、前記ポリカルボン酸系減水剤を含み、前記ポリカルボン酸系減水剤の含有量が、前記セメントに対して0.5質量%以上3.0質量%以下であってもよい。
【0009】
斯かる構成により、硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することができる。
【0010】
本発明に係るセメント組成物は、前記減水剤が、前記ナフタレンスルホン酸系減水剤を含み、前記ナフタレンスルホン酸系減水剤の含有量が、前記セメントに対して0.6質量%以上3.5質量%以下であってもよい。
【0011】
斯かる構成により、硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することができる。
【0012】
本発明に係るセメント組成物は、以下の工程(1)~(3)により測定されるフレッシュモルタルの形成直後の貫入抵抗値が、300以上3500以下であってもよい。
工程(1):上部が開口した容器にフレッシュモルタルを充填する工程。
工程(2):容器に充填されたフレッシュモルタルの上方から、断面積が900mm以上8000mm以下の貫入針を貫入させて貫入力を測定する工程。
工程(3):得られた貫入力を貫入針の断面積で除し、貫入抵抗値を算出する工程。
【0013】
斯かる構成により、硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することができる。
【0014】
本発明に係るセメント組成物の製造方法は、前記ジエタノールイソプロパノールアミンを、前記セメントに対して10ppm以上200ppm以下の配合量となるように添加する。
【0015】
前記セメント組成物の製造方法は、硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することが可能なセメント組成物、及び、セメント組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<セメント組成物>
以下、本実施形態に係るセメント組成物について説明する。
【0018】
本実施形態に係るセメント組成物は、セメントと、ジエタノールイソプロパノールアミンと、水と、細骨材と、減水剤と、を含む。また、本実施形態に係るセメント組成物は、セメントと、ジエタノールイソプロパノールアミンと、水と、細骨材と、減水剤と、粗骨材と、を含むものであってもよい。なお、本実施形態に係るセメント組成物が、骨材として細骨材のみを含む場合、セメント組成物はモルタルを構成し、骨材として細骨材と粗骨材とを含む場合、セメント組成物はコンクリートを構成する。
【0019】
セメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS R 5210で規定される普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、超速硬セメント、アルミナセメント等が挙げられる。また、前記ポルトランドセメントにフライアッシュ、高炉スラグ等を混合した各種混合セメントも使用することができる。なお、セメントは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
セメントの含有量は、セメント組成物がモルタルを構成する場合、単位量(kg/m:セメント組成物1m当たりの質量)で、450kg/m以上950kg/m以下であることが好ましく、475kg/m以上875kg/m以下であることがより好ましい。また、セメントの含有量は、セメント組成物がコンクリートを構成する場合、単位量(kg/m:セメント組成物1m当たりの質量)で、260kg/m以上650kg/m以下であることが好ましく、270kg/m以上600kg/m以下であることがより好ましい。なお、セメントが2種以上含まれる場合、前記含有量はセメントの合計含有量である。
【0021】
ジエタノールイソプロパノールアミンの含有量は、セメントに対して、10ppm以上200ppm以下であり、コンクリートの耐久性を向上させる等の観点から、50ppm以上100ppm以下であることが好ましい。
【0022】
水は、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用することができる。
【0023】
水の含有量は、セメント組成物がモルタルを構成する場合、単位量(kg/m:セメント組成物1m当たりの質量)で、240kg/m以上330kg/m以下であることが好ましく、260kg/m以上320kg/m以下であることがより好ましい。また、水の含有量は、セメント組成物がコンクリートを構成する場合、単位量(kg/m:セメント組成物1m当たりの質量)で、165kg/m以上185kg/m以下であることが好ましく、170kg/m以上185kg/m以下であることがより好ましい。
【0024】
細骨材とは、10mm網ふるいを全部通過し、5mm網ふるいを質量で85%以上通過する骨材のことをいう(JIS A 0203:2014)。細骨材としては、例えば、JIS A 5308附属書Aレディミクストコンクリート用骨材で規定される山砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂、石灰石砕砂等の天然由来の砂、高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、フェロニッケルスラグ等のスラグ由来の砂等が挙げられる。なお、これらの細骨材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
細骨材の含有量は、セメント組成物がモルタルを構成する場合、単位量(kg/m:セメント組成物1m当たりの質量)で、920kg/m以上1460kg/m以下であることが好ましく、950kg/m以上1430kg/m以下であることがより好ましい。また、細骨材の含有量は、セメント組成物がコンクリートを構成する場合、単位量(kg/m:セメント組成物1m当たりの質量)で、400kg/m以上1000kg/m以下であることが好ましく、480kg/m以上950kg/m以下であることがより好ましい。なお、細骨材が2種以上含まれる場合、前記含有量は細骨材の合計含有量である。
【0026】
細骨材とセメントとの容積比は、作業性の向上、材料不分離性の向上等の観点から、1.00以上4.10以下であることが好ましく、1.30以上3.80以下であることがより好ましい。
【0027】
減水剤は、ポリカルボン酸系減水剤、及び、ナフタレンスルホン酸系減水剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0028】
ポリカルボン酸系減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」の化学混和剤の性能による区分で「減水剤」、「高性能減水剤」、「AE減水剤」、「高性能AE減水剤」及び塩化物イオン(Cl)量による区分で「I種(塩化物イオン量=0.02kg/m以下)」に規定される性能及び品質を保有するものであれば、市販のいずれの銘柄でも使用することができる。例えば、ポリカルボン酸系エーテル系の複合物、ポリカルボン酸系エーテル系及び架橋ポリマーの複合体、ポリカルボン酸系エーテル系及び配向ポリマーの複合物、ポリカルボン酸系エーテル系及び高変性ポリマーの複合物、ポリエーテルカルボン酸系高分子化合物、マレイン酸共重合物、マレイン酸エステル共重合物、マレイン酸誘導体共重合物、カルボキシル基含有ポリエーテル系、末端スルホン基を有するポリカルボン酸基含有多元ポリマー、ポリカルボン酸系グラフトポリマー、ポリカルボン酸及び変性リグニン、ポリカルボン酸エーテル系ポリマー等を基剤とする減水剤が使用できる。
【0029】
ナフタレンスルホン酸系減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」の化学混和剤の性能による区分で「減水剤」、「高性能減水剤」、「AE減水剤」、「高性能AE減水剤」、塩化物イオン(Cl)量による区分で「I種(塩化物イオン量=0.02kg/m以下)」に規定される性能及び品質を保有するものであれば、市販のいずれの銘柄でも使用することができる。例えば、変性リグニンにアルキルアリルスルホン酸(ナフタレンスルホン酸)及び活性持続ポリマーを加えたもの、ポリアルキルアリルスルホン酸塩及び反応性高分子、アルキルアリルスルホン酸塩高縮化合物及び特殊スルホン酸基カルボキシル基含有多元ポリマー、アルキルナフタレンスルホン酸塩及び特殊界面活性剤、アルキルアリルスルホン酸塩変性リグニン共縮合物と変性リグニン誘導体及びアルキルアリルスルホネート等を基剤とする減水剤が使用できる。
【0030】
ポリカルボン酸系減水剤の含有量は、セメントに対して、0.5質量%以上3.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。また、ナフタレンスルホン酸系減水剤の含有量は、セメントに対して0.6質量%以上3.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
減水剤は、ポリカルボン酸系減水剤、及び、ナフタレンスルホン酸系減水剤以外のその他の減水剤を含んでいてもよい。その他の減水剤としては、例えば、リグニン系減水剤等が挙げられる。なお、その他の減水剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
その他の減水剤の含有量は、コンクリートやモルタルの耐久性を向上させる等の観点から、セメントに対して、0.3質量%以上2.5質量%以下であることが好ましい。なお、その他の減水剤が2種以上含まれる場合、前記含有量はその他の減水剤の合計含有量である。
【0033】
粗骨材とは、5mm網ふるいに質量で85%以上とどまる骨材のことをいう(JIS A 0203:2014)。粗骨材としては、特に限定されるものではなく、例えば、川砂利、山砂利、海砂利等の天然骨材、砂岩、硬質石灰岩、玄武岩、安山岩等の砕石等の人工骨材、再生骨材等が挙げられる。なお、粗骨材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
粗骨材の含有量は、単位量(kg/m:セメント組成物1m当たりの質量)で、600kg/m以上1200kg/m以下であることが好ましく、650kg/m以上1150kg/m以下であることがより好ましい。なお、粗骨材が2種以上含まれる場合、前記含有量は粗骨材の合計含有量である。
【0035】
本実施形態に係るセメント組成物は、減水剤以外の混和剤をさらに含んでいてもよい。前記混和剤としては、例えば、AE剤、流動化剤、増粘剤、防せい剤、分離低減剤、凝結遅延剤(例えば、酒石酸等)、凝結促進剤(例えば、硫酸アルミニウム等)、急結剤、収縮低減剤、起泡剤、発泡剤、防水剤、消泡剤等が挙げられる。なお、混和剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
本実施形態に係るセメント組成物は、混和材をさらに含んでいてもよい。前記混和材としては、例えば、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、セメントキルンダスト、高炉フューム、転炉スラグ微粉末、無水石膏、半水石膏、二水石膏、膨張材、石灰石微粉末、生石灰微粉末、ドロマイト微粉末等の無機質微粉末、ナトリウム型ベントナイト、カルシウム型ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライト、活性白土、酸性白土、アロフェン、イモゴライト、シラス(火山灰)、シラスバルーン、カオリナイト、メタカオリン(焼成粘土)、合成ゼオライト、人造ゼオライト、人工ゼオライト、モルデナイト、クリノプチロライト等の無機物系フィラーが挙げられる。なお、混和材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
セメント組成物は、以下の工程(1)~(3)により測定されるフレッシュモルタルの形成直後の貫入抵抗値が、300以上5000以下であることが好ましく、300以上4500以下であることがより好ましく、300以上3500以下であることがさらに好ましく、350以上3500以下であることが特に好ましい。なお、形成直後とは、セメント組成物に含まれる各成分の練混ぜを終了してから15分までの時間である。
工程(1):上部が開口した容器にフレッシュモルタルを充填する工程。
工程(2):容器に充填されたフレッシュモルタルの上方から、断面積が900mm以上8000mm以下の貫入針を貫入させて貫入力を測定する工程。
工程(3):得られた貫入力を貫入針の断面積で除し、貫入抵抗値を算出する工程。
【0038】
工程(1)は、上部が開口した容器にフレッシュモルタルを充填する工程である。フレッシュモルタルは、例えば、JIS A 1147に記載の試験方法に従い、容器に充填することができる。容器の形状及び材質は、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 1147に記載の容器を使用することができる。
【0039】
フレッシュモルタルは、セメントと、ジエタノールイソプロパノールアミンと、水と、細骨材と、減水剤と、を含む。フレッシュモルタルは、モルタルを構成する成分を練り混ぜて得た練混ぜ直後のモルタルであってもよいし、フレッシュコンクリートをウェットスクリーニングしたモルタル成分であってもよい。ウェットスクリーニングには、例えば、JIS Z 8801-1に規定される5mmの網ふるいを使用することができる。
【0040】
工程(2)は、容器に充填されたフレッシュモルタルの上方から、断面積が900mm以上8000mm以下の貫入針を貫入させて貫入力を測定する工程である。具体的には、まず、貫入力を測定する装置に断面積が4418mmの貫入針を取り付け、フレッシュモルタルを充填した容器を、貫入針の下部に設置する。次に、容器に充填されたフレッシュモルタルに、上方から貫入針が10秒間で25mm貫入されるように装置を操作することにより、貫入力を測定することができる。
【0041】
貫入力は、貫入針を貫入させる機構(貫入力付与機構)により測定される。貫入力付与機構は、特に限定されるものではなく、例えば、油圧やスプリングを介して貫入針に貫入力を与えるものを用いることができる。貫入力付与機構の操作方法は、特に限定されるものではなく、例えば、レバー等の入力機器を手動で操作してもよいし、自動で操作してもよい。
【0042】
貫入針の形状及び材質は、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 1147に記載の貫入針と同様の形状及び材質の貫入針を使用することができる。また、貫入針の断面形状は、例えば、円形、四角形、三角形等とすることができる。
【0043】
工程(3)は、貫入力の測定工程で得られた貫入力を、貫入針の断面積で除し、貫入抵抗値を算出する工程である。
【0044】
本実施形態に係るセメント組成物は、ジエタノールイソプロパノールアミンの含有量が、セメントに対して10ppm以上200ppm以下であり、減水剤が、ポリカルボン酸系減水剤、及び、ナフタレンスルホン酸系減水剤からなる群から選択される少なくとも一種を含むことにより、硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することができる。
【0045】
本実施形態に係るセメント組成物は、減水剤が、ポリカルボン酸系減水剤を含み、ポリカルボン酸系減水剤の含有量が、セメントに対して0.5質量%以上3.0質量%以下であることにより、硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することができる。
【0046】
本実施形態に係るセメント組成物は、減水剤が、ナフタレンスルホン酸系減水剤を含み、ナフタレンスルホン酸系減水剤の含有量が、セメントに対して0.6質量%以上3.5質量%以下であることにより、硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することができる。
【0047】
本実施形態に係るセメント組成物は、以下の工程(1)~(3)により測定されるフレッシュモルタルの形成直後の貫入抵抗値が、300以上3500以下であることにより、硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することができる。
工程(1):上部が開口した容器にフレッシュモルタルを充填する工程。
工程(2):容器に充填されたフレッシュモルタルの上方から、断面積が900mm以上8000mm以下の貫入針を貫入させて貫入力を測定する工程。
工程(3):得られた貫入力を貫入針の断面積で除し、貫入抵抗値を算出する工程。
【0048】
<セメント組成物の製造方法>
以下、本実施形態に係るセメント組成物の製造方法について説明する。
【0049】
本実施形態に係るセメント組成物の製造方法においては、ジエタノールイソプロパノールアミンを、セメントに対して10ppm以上200ppm以下の配合量となるように添加し、好ましくは50ppm以上100ppm以下の配合量となるように添加する。
【0050】
ジエタノールイソプロパノールアミンを添加するタイミング等は特に限定されない。例えば、クリンカを粉砕する工程で添加してもよいし、セメント等のセメント組成物に含まれる各成分を練り混ぜる工程で添加してもよい。
【0051】
クリンカを粉砕する工程でジエタノールイソプロパノールアミンを添加する場合には、クリンカにジエタノールイソプロパノールアミンを添加して粉砕した後、ジエタノールイソプロパノールアミンを含むセメントと、水と、細骨材と、減水剤と、必要に応じてその他の成分と、を練り混ぜることによりセメント組成物を製造することができる。
【0052】
セメント等のセメント組成物に含まれる各成分を練り混ぜる工程でジエタノールイソプロパノールアミンを添加する場合には、例えば、セメントと、ジエタノールイソプロパノールアミンと、水と、細骨材と、減水剤と、必要に応じてその他の成分と、を練り混ぜることによりセメント組成物を製造することができる。
【0053】
セメント組成物の製造方法における各成分の練混ぜ方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のミキサ等を用いて、従来公知の方法により練り混ぜることができる。
【0054】
本実施形態に係るセメント組成物を製造する方法は、ジエタノールイソプロパノールアミンを、セメントに対して10ppm以上200ppm以下の配合量となるように添加することにより、硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することができる。
【実施例0055】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
(フレッシュモルタルの作製)
表1に示す配合で実施例1~11及び比較例1~10のフレッシュモルタルを作製した。具体的には、温度20℃の恒温環境下でホバートミキサを用いて、セメント及び細骨材を15秒間空練りした後に、減水剤及びジエタノールイソプロパノールアミンを含む水を投入し、3分間本練り(ミキサの回転数200rpm)した。なお、1バッチ当たりの練混ぜ量が0.93Lとなるようにした。
【0057】
(フレッシュコンクリートの作製)
表3に示す配合で実施例12~16及び比較例11~15のフレッシュコンクリートを作製した。具体的には、温度20℃の恒温環境下でホバートミキサを用いて、セメント、細骨材及び粗骨材を15秒間空練りした後に、減水剤及びジエタノールイソプロパノールアミンを含む水を投入し、3分間本練り(ミキサの回転数200rpm)した。なお、1バッチ当たりの練混ぜ量が0.93Lとなるようにした。
【0058】
ミニスランプフロー及び貫入抵抗値の測定に用いるモルタル成分は、実施例12~16及び比較例11~15のフレッシュコンクリートをJIS Z 8801―1:2006「試験用ふるい」に規定する公称目開き4.75mmのふるいを用いてウェットスクリーニングして得た。ウェットスクリーニングは、上記ふるいにバイブレータを当てて、140~200Hzの振動数で目視判断にてモルタル成分を有効に取り出すことができなくなるまでふるうことにより行った。
【0059】
表1及び表3に示す各成分の詳細を以下に示す。
セメント:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)
DEIPA:ジエタノールイソプロパノールアミン(東京化成工業社製)
水:上水道水(千葉県船橋市)
細骨材:山砂(静岡県掛川市産)
粗骨材:砕石(茨城県桜川市産)
減水剤(リグニン系):マスターポゾリス 78s(BASFジャパン社製)
減水剤(ポリカルボン酸系):マスターグレニウムSP8SV(BASFジャパン社製)
減水剤(ナフタレンスルホン酸系):マイティ150(花王株式会社製)
【0060】
(ミニスランプフローの測定)
ミニスランプフローは、JIS A 1171に基づき、ミニスランプコーン(上端φ50mm、下端φ100mm、高さ150mm)を用いて測定した。なお、ミニスランプフローは、フレッシュモルタルの形成直後、並びに、フレッシュモルタルの形成から15分経過後、30分経過後、及び、60分経過後に測定した。測定結果を表1及び3に示す。
【0061】
(貫入抵抗値の測定)
貫入抵抗値は、デジタル式プロクター貫入抵抗試験機(ロードセル容量1kN、出力0.1N)を用いて測定した。まず、各実施例及び各比較例のフレッシュモルタルを入れた容器(φ100mm×高さ75mm)に、断面形状が円形の貫入針(φ75mm)を10秒間で25mm貫入させて貫入力を測定した。次に、得られた貫入力を貫入針の断面積(4418mm)で除して貫入抵抗値を求めた。なお、貫入抵抗値は、フレッシュモルタルの形成直後、並びに、フレッシュモルタルの形成から15分経過後、30分経過後、及び、60分経過後に測定した。測定結果を表1及び3に示す。
【0062】
(圧縮強度の測定)
圧縮強度は、JIS A 1108に基づく圧縮強度試験を行い、材齢3日、7日及び28日の圧縮強度を測定した。測定結果を表1及び3に示す。
【0063】
(ワーカビリティの改善の評価)
ワーカビリティの改善は、「スランプフロー比」及び「貫入抵抗値比」に基づいて評価した。「スランプフロー比」は、各経過時間において、DEIPA(ジエタノールイソプロパノールアミン)を含む各実施例及び各比較例のミニスランプフローの測定値から、その実施例及び比較例と減水剤の種類及びセメントの含有量が同一であり、かつ、DEIPAを含まない比較例のミニスランプフローの測定値を引いた値を、前記DEIPAを含まない比較例のミニスランプフローの測定値で除して算出した。「貫入抵抗値比」は、各経過時間において、DEIPAを含む各実施例及び各比較例の貫入抵抗値の測定値から、その実施例及び比較例と減水剤の種類及びセメントの含有量が同一であり、かつ、DEIPAを含まない比較例の貫入抵抗値の測定値を引いた値を、前記DEIPAを含まない比較例の貫入抵抗値の測定値で除して「貫入抵抗値比」を算出した。各経過時間の「スランプフロー比」の値が8%より大きく、かつ、各経過時間の「貫入抵抗値比」の値がマイナス12%より小さい場合に、ワーカビリティを改善することができると評価した。
【0064】
(強度発現性の評価)
強度発現性は、「圧縮強さ比」に基づいて評価した。「圧縮強さ比」は、各材齢において、DEIPAを含む各実施例及び各比較例の圧縮強度の測定値から、その実施例及び比較例と減水剤の種類及びセメントの含有量が同一であり、かつ、DEIPAを含まない比較例の圧縮強度の測定値を引いた値を、前記DEIPAを含まない比較例の圧縮強度の測定値で除して算出した。「圧縮強さ比」の値が、材齢3日において20%より大きく、材齢7日において10%より大きく、材齢28日において7%より大きい場合に、強度発現性を高めることができると評価した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
表2及び表4の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす各実施例のセメント組成物は、硬化後の強度発現性を高めるとともに、フレッシュコンクリート又はフレッシュモルタルのワーカビリティを改善することができる。
【0070】
また、表2及び表4に示すように、本発明の構成要件をすべて満たす各実施例のセメント組成物は、各経過時間の「スランプフロー比」の値が8%より大きく、流動性が大きく向上していることが認められる。