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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151121
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】計測システム、計測方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20231005BHJP
   G01B 15/00 20060101ALI20231005BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20231005BHJP
   H01L 21/82 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01B15/00 K
H01J37/28 B
H01L21/82 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060565
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 明之
【テーマコード(参考)】
2F067
4M106
5C101
5F064
【Fターム(参考)】
2F067AA03
2F067AA54
2F067BB04
2F067CC17
2F067EE05
2F067HH06
2F067JJ05
2F067KK04
2F067KK07
2F067NN01
4M106AA01
4M106BA02
4M106CA39
4M106DB05
4M106DJ20
5C101AA03
5C101BB06
5C101EE48
5C101FF02
5C101HH11
5C101HH17
5C101HH24
5C101HH25
5F064AA04
5F064BB03
5F064BB04
5F064BB05
5F064BB06
5F064BB07
5F064HH10
5F064HH13
5F064HH14
(57)【要約】
【課題】半導体材料上に形成された複数の回路パターンに対して同じ計測手順を実施する際に、各回路パターンに対して計測条件を設定する作業の負担を軽減することができる技術を提供する。
【解決手段】本開示に係る計測システムは、基準回路パターンにおいて設定した計測点を、同じ回路パターンを有する別回路パターンに対して設定し、前記回路パターンが前記基準回路パターンと同じ回路パターンを上下反転または左右反転または回転して有する場合は、前記計測点に対してその反転またはその回転を適用した上で設定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料上に形成された回路パターンを計測する計測システムであって、
計測装置が前記回路パターンを計測する手順を規定した計測レシピを作成するコンピュータシステムを備え、
前記コンピュータシステムは、前記回路パターンの設計レイアウトを記述した設計データ内の基準回路パターン上において、前記計測レシピを用いて計測する計測点を設定し、
前記コンピュータシステムは、前記基準回路パターン上において設定した前記計測点を、前記設計データ内の前記基準回路パターンと同じ回路パターンを有する別回路パターンに対して設定し、
前記コンピュータシステムは、前記別回路パターンが前記基準回路パターンと同じ回路パターンを上下反転または左右反転または回転して有する場合は、前記計測点に対してその反転またはその回転を適用した上で、前記別回路パターンに対して設定し、
前記コンピュータシステムは、前記別回路パターンに対して設定した前記計測点にしたがって、前記計測レシピを作成する
ことを特徴とする計測システム。
【請求項2】
前記コンピュータシステムは、前記計測装置が前記計測点を計測する際に用いる荷電粒子ビームをスキャンする方向を前記基準回路パターンにおいて設定し、
前記コンピュータシステムは、前記基準回路パターンにおいて設定した前記方向を、前記別回路パターンに対して設定し、
前記コンピュータシステムは、前記別回路パターンが前記基準回路パターンと同じ回路パターンを上下反転または左右反転または回転して有する場合は、前記方向に対してその反転またはその回転を適用した上で、前記別回路パターンに対して設定し、
前記コンピュータシステムは、前記別回路パターンに対して設定した前記方向にしたがって、前記計測レシピを作成する
ことを特徴とする請求項1記載の計測システム。
【請求項3】
前記コンピュータシステムは、前記基準回路パターンを撮影する際に用いる撮影条件を設定し、
前記コンピュータシステムは、前記撮影条件を前記別回路パターンに対して設定することにより、前記計測レシピを作成する
ことを特徴とする請求項1記載の計測システム。
【請求項4】
前記基準回路パターンは、前記半導体材料上に形成される複数の回路パターン間において共通して用いる共通回路パターンの3次元構造を定義したスタンダードセルである
ことを特徴とする請求項1記載の計測システム。
【請求項5】
前記計測点は、前記基準回路パターン内において金属線レイヤと半導体デバイスの構成要素との間で電気的接続が形成されるコンタクトホールの平面位置である
ことを特徴とする請求項1記載の計測システム。
【請求項6】
前記コンピュータシステムは、前記基準回路パターンの種別と前記計測点の組み合わせごとに計測を実施するように、前記計測レシピを作成する
ことを特徴とする請求項1記載の計測システム。
【請求項7】
前記コンピュータシステムは、前記基準回路パターンの種別と前記計測点の組み合わせごとに、前記計測レシピを用いた計測の結果を集計するとともにその統計値を計算し、その結果を出力する
ことを特徴とする請求項6記載の計測システム。
【請求項8】
前記半導体材料は、前記基準回路パターンが形成された層とは別の層において、前記基準回路パターンとは別の別層パターンを有しており、
前記コンピュータシステムは、前記計測点の平面位置において前記別層パターンを計測するように、前記計測レシピを作成する
ことを特徴とする請求項1記載の計測システム。
【請求項9】
前記コンピュータシステムは、前記半導体材料のうち少なくとも一部の領域を指定し、
前記コンピュータシステムは、前記領域内に存在する前記別回路パターンに対して前記計測点を設定し、前記領域外に存在する前記別回路パターンに対しては設定しない
ことを特徴とする請求項1記載の計測システム。
【請求項10】
半導体材料上に形成された回路パターンを計測する計測方法であって、
計測装置が前記回路パターンを計測する手順を規定した計測レシピを作成するステップを有し、
前記計測レシピを作成するステップにおいては、前記回路パターンの設計レイアウトを記述した設計データ内の基準回路パターン上において、前記計測レシピを用いて計測する計測点を設定し、
前記計測レシピを作成するステップにおいては、前記基準回路パターン上において設定した前記計測点を、前記設計データ内の前記基準回路パターンと同じ回路パターンを有する別回路パターンに対して設定し、
前記計測レシピを作成するステップにおいては、前記別回路パターンが前記基準回路パターンと同じ回路パターンを上下反転または回転して有する場合は、前記計測点に対してその反転またはその回転を適用した上で、前記別回路パターンに対して設定し、
前記計測レシピを作成するステップにおいては、前記別回路パターンに対して設定した前記計測点にしたがって、前記計測レシピを作成する
ことを特徴とする計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体材料上に形成された回路パターンを計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル論理回路のレイアウトを設計する際には、スタンダードセルと呼ばれる基本回路パターンを組み合わせることによって、全体レイアウトを設計する場合がある。基本回路パターンは例えば、AND回路、OR回路、XOR回路、NAND回路、フリップフロップ回路、マルチプレクサ回路、などである。
【0003】
スタンダードセルは、これら基本回路の標準的な3次元構造を規定している。例えば基本回路の高さ、基本回路の横幅、などが標準化されている。高さは例えば、平面方向において基本回路を貫通して延伸する金属配線レイヤの層数によって規定される。横幅は例えば、半導体素子の論理ゲートピッチの整数倍によって規定される。
【0004】
下記特許文献1は、半導体基板上に形成されたパターンを走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)によって測定する技術を記載している。同文献においては1例として、スタンダードセルの回路種類に応じてFOV(Field Of View)を適切に割り当てることを記載している(同文献の図9、段落0059~0064)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-043937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような回路パターンを計測する際に用いるSEMなどの計測装置は、計測の信頼性を確保するために、多数の計測対象を同じ条件で計測することが望ましい。ここでいう計測条件は、例えばSEMの撮像条件、計測カーソル(回路パターン上の計測点)、荷電粒子ビームをスキャンする方向、などである。これらの計測条件は、例えば回路パターンごとに設定することになる。
【0007】
計測カーソルの位置やスキャン方向が異なれば、それらを用いることにより得られる観察画像も異なる可能性がある。したがって、同じ回路パターンについては、同じ計測カーソルやスキャン方向を設定することが望ましい。このとき、同じ回路パターンが多数存在するのであれば、設定作業もその回路パターンの個数だけ実施する必要がある。多数の計測対象に対して、同じ計測条件をそれぞれ設定する作業は、計測対象数が増えるにしたがって多大な工数となる。これにより設定ミスが発生する可能性が高まる。すなわち、本来であれば同じ回路パターンからは同じ観察画像が得られるはずであるところ、設定ミスに起因して、回路パターンごとに異なる観察画像が得られる可能性がある。
【0008】
本開示は、上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、半導体材料上に形成された複数の回路パターンに対して同じ計測手順を実施する際に、各回路パターンに対して計測条件を設定する作業の負担を軽減することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る計測システムは、基準回路パターンにおいて設定した計測点を、同じ回路パターンを有する別回路パターンに対して設定し、前記回路パターンが前記基準回路パターンと同じ回路パターンを上下反転または左右反転または回転して有する場合は、前記計測点に対してその反転またはその回転を適用した上で設定する。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る計測システムによれば、半導体材料上に形成された複数の回路パターンに対して同じ計測手順を実施する際に、各回路パターンに対して計測条件を設定する作業の負担を軽減することができる。本開示のその他課題、構成、利点などについては、以下の実施形態の説明によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】計測システム1の構成図である。
図2】半導体基板上に形成された回路パターンの1例を示す平面模式図である。
図3】計測システム1の動作手順を説明するフローチャートである。
図4】スタンダードセルとして規定された基準回路Aの平面模式図である。
図5】基準回路パターンにおいて設定した計測カーソルとスキャン方向を他の回路パターンに対して適用する様子を示す平面図である。
図6】コンピュータシステム10が回路部品レイアウトごとに計測結果を分類し、統計解析を実施した結果を格納するデータの構成例を示す。
図7】スタンダードセルとして規定された基準回路Aの平面図である。
図8】半導体基板上に形成されている回路パターンのうち計測対象とする領域を選択する様子を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本開示の実施形態1に係る計測システム1の構成図である。計測システム1は計測対象40を計測するシステムである。計測対象40は例えば半導体ウエハであり、計測システム1はその上に形成された回路パターンのサイズなどを計測する。計測システム1は、コンピュータシステム10、記憶装置20、計測装置30、を備える。
【0013】
計測装置30は、例えばSEM装置であり、計測対象40を計測してその結果をコンピュータシステム10に対して送信する。コンピュータシステム10は、計測装置30の動作を制御する。コンピュータシステム10は、計測装置30が計測対象40を計測する際の手順や様々なパラメータなどを記述したデータ(これを計測レシピと呼ぶ)を計測装置30に対して送信し、計測装置30はその計測レシピにしたがって計測対象40を計測する。記憶装置20は、後述する設計データ21を格納している。
【0014】
図2は、半導体基板上に形成された回路パターンの1例を示す平面模式図である。半導体基板上の回路パターンは、スタンダードセルを組み合わせることによって設計される場合がある。図2においては、AND回路、OR回路、XOR回路、NAND回路、フリップフロップ回路がそれぞれスタンダードセルとして規定されており、これらを組み合わせた回路パターンを例示した。設計データ21は、図2に例示するような回路パターンの構造を記述している。
【0015】
図3は、計測システム1の動作手順を説明するフローチャートである。以下図3の各ステップについて説明する。
【0016】
図3:ステップS301)
コンピュータシステム10は、設計データ21が記述している回路設計レイアウト内の回路部品レイアウトに対して、撮像条件を設定するとともに、計測カーソルを配置する。撮像条件は、計測装置30の例えば加速電圧などの動作条件である。計測カーソルは、回路部品上の計測点である。本ステップは、例えば計測オペレータが撮像条件や計測カーソルを指定することによって実施することができる。本ステップの具体例については後述する。
【0017】
図3:ステップS302)
コンピュータシステム10は、S301において設定した計測条件(撮像条件、計測カーソル)を、設計データ21内の同じ種類の回路パターンに対して設定する。本ステップの具体例については後述する。
【0018】
図3:ステップS303~S304)
コンピュータシステム10は、S301~S302の結果および設計データ21にしたがって、計測レシピを作成する(S303)。コンピュータシステム10は、計測装置30をその計測レシピにしたがって制御することにより、計測対象40を撮像および計測する(例えば回路パターンのサイズを計測する)(S304)。
【0019】
図3:ステップS305~S306)
コンピュータシステム10は、回路部品レイアウトの種別ごとに、計測結果を分類する(S305)。コンピュータシステム10は、S305によって分類した計測結果に対して、統計解析を実施する(S306)。これらステップの具体例については後述する。
【0020】
図4は、スタンダードセルとして規定された基準回路Aの平面模式図である。オペレータはS301において、設計データ21内のいずれかのスタンダードセルを基準回路パターンとして選択する。オペレータは、基準回路パターンに対して撮像条件を設定するとともに、計測カーソルと荷電粒子ビームのスキャン方向を設定する。基準回路パターンは、設計データ21内において同じ回路パターンを有する別の回路パターンに対して同じ撮像条件/計測カーソル/スキャン方向を適用するために用いるものである。したがって基準回路パターンとして適しているのは、典型的にはスタンダードセルである。以下の説明においては、オペレータがS301において図4の回路パターンを基準回路パターンとして選択したものと仮定する。
【0021】
計測カーソルはある程度のサイズを有する平面領域であるので、計測装置30がその領域内をスキャンする(例えば計測のために用いる電子ビームの照射位置をスキャンする)際に、スキャン方向が設定される。オペレータはS301において、基準回路パターン内のスキャン方向を併せて設定する。図4の例においては、左上から右方向に向かって計測位置をスキャンし、右端に達したら1つ下の行を左端から右に向かってスキャンするように、スキャン方向を設定した。計測レシピにおいてもこのスキャン方向が用いられる。
【0022】
計測カーソルとして適しているのは、特徴的な形状が存在する箇所である。図4(および以下の例)においては、コンタクトホールの平面位置(回路平面図上の位置)を、計測カーソルとして設定することとする。コンタクトホールは、回路基板の内層を貫通し、その途中において金属配線層や他の半導体デバイスなどとの間で電気的に接触する箇所を形成するためのものである。図4においては、3つのコンタクトホールを計測カーソルとして設定した。
【0023】
図5は、基準回路パターンにおいて設定した計測カーソルとスキャン方向を他の回路パターンに対して適用する様子を示す平面図である。S302においてコンピュータシステム10は、基準回路パターンと同じ回路パターンを有する他の回路パターンに対して、基準回路パターンと同じ撮像条件、計測カーソル、およびスキャン方向を設定する。図4においては3つの計測カーソルを設定し、左上から右下に向かって荷電粒子ビームをスキャンすることを指定したので、他の回路パターンにおいても同じ計測カーソルとスキャン方向を設定する。
【0024】
ただし回路レイアウトによっては、基準回路パターンを平面内において上下反転/左右反転/上下左右反転した上で配置している場合がある(上下左右反転は180度回転と等価である)。そこでコンピュータシステム10は、計測カーソルの位置とスキャン方向それぞれに対してその反転を適用した上で、他の回路パターンに対して計測カーソルとスキャン方向を設定する。例えば図5左上のフリップフロップ回路は、図4の回路パターンを上下左右反転させたものであるので、同フリップフロップ回路内における計測カーソルの位置も上下左右反転しており、スキャン方向も上下左右反転している(電子ビームを右下から左上に向かってスキャンする)。上下反転と左右反転についても同様に、計測カーソルの位置とスキャン方向それぞれについて、その反転方向を適用する。
【0025】
図6は、コンピュータシステム10が回路部品レイアウトごとに計測結果を分類し、統計解析を実施した結果を格納するデータの構成例を示す。ここでは図4図5で説明したフリップフロップ回路を基準回路パターンとして用いた場合の例を示す。図5に示すように、設計データ21内には8つの基準回路パターン(FlipFlop1~FlipFlop8)が存在する。各基準回路パターンはそれぞれ3つのコンタクトホールを計測カーソルとして設定しているのでこれらの計測結果をデータ上に集計することとした。
【0026】
統計解析の例としては例えば以下が挙げられる:コンピュータシステム10は、計測カーソルの位置において想定している形状のサイズを基準回路パターンごと/計測カーソルごとに記録する。コンピュータシステム10は、そのサイズの平均値、最小値、最大値などの統計値を、基準回路パターン/計測カーソルの組み合わせごとに計算してその結果を記録する。
【0027】
従来技術においても、計測結果を計測カーソルごとに分類してその統計値を求める場合がある。ただし従来は計測カーソルをマニュアル作業によって設定するので、計測カーソルの分類数は少ないのが通常である。例えば図4図6のように3つの同じコンタクトホール形状を1つの同じタイプの計測カーソルとみなし、統計処理上においても1種類の分類として処理する。これに対して本実施形態においては、基準回路パターンの計測カーソルを別回路パターンに対してコンピュータシステム10が自動設定するので、計測カーソルの分類数を増やしたとしても、そのためにマニュアル作業が増えることはない。したがって図6のような計測カーソルごとの統計処理が可能になる点において、従来よりも詳細に計測結果を解析することができる。
【0028】
<実施の形態2>
実施形態1においては、スタンダードセル上の平面位置に対して計測カーソルを設定することを説明した。これは原則として、スタンダードセルの平面パターン形状を検査するためのものである。他方で計測カーソルの下層には、別の形状パターンが形成されていてその形状パターンを検査したい場合もある。本発明の実施形態2では、その場合における動作例を説明する。計測システム1の構成は実施形態1と同様である。
【0029】
図7は、スタンダードセルとして規定された基準回路Aの平面図である。オペレータは実施形態1と同様に、計測カーソルを設定する。このときオペレータは、スタンダードセルの下層に配置された下層パターン701を計測する位置として、計測カーソルを設定してもよい。例えば下層パターン701の上方(図7において視認できる回路パターン)の位置に計測カーソルを設定するとともに、その下層に配置されている下層パターン701を計測する旨を併せて設定する。
【0030】
コンピュータシステム10は、計測カーソルの位置と下層パターン701を計測する旨を反映した計測レシピを作成する。さらに実施形態1と同様に、同じ回路構成を有する他の回路パターンについても、同様に下層パターン701を計測する旨の計測レシピを作成する。計測装置30はその計測レシピにしたがって、計測カーソルの下層に配置されている下層パターン701を検査する。これにより、スタンダードセルが形成される層とは別の層に対する計測レシピを、スタンダードセル上の計測カーソルやスキャン方向の設定とともに併せて設定することができる。
【0031】
図7においては、計測カーソルの下層パターン701を計測することを説明したが、必ずしも下層に限るものではなく、少なくとも基準回路パターンが形成されている層とは別の層におけるパターンを計測する場合において同様の手順を用いることができる。
【0032】
<実施の形態3>
図8は、半導体基板上に形成されている回路パターンのうち計測対象とする領域を選択する様子を示す平面模式図である。以上の実施形態において、計測カーソルやスキャン方向を基準回路パターンに対して設定すると、同じ回路構成を有する他の回路パターンについても同じ計測カーソルやスキャン方向が、コンピュータシステム10によって自動的に設定される。これにより、計測カーソルやスキャン方向が多数構成されることになる。
【0033】
従来は計測カーソルやスキャン方向をマニュアル作業によって設定していたのでその個数は限定的であったが、本開示の手法により自動設定されるとその個数が飛躍的に増加する。そうすると、計測処理の負担もこれにともなって飛躍的に増加するので、計測対象を絞り込むことが求められる場合がある。
【0034】
そこで本実施形態において、コンピュータシステム10は、計測対象とする領域801を指定し、その指定した領域についてのみ計測レシピを作成する。計測装置30もその領域についてのみ計測を実施する。これにより、計測カーソルやスキャン方向を多数設定して計測密度を高めるとともに、計測処理の飛躍的な増加を抑制することができる。
【0035】
領域801の指定の仕方としては例えば以下が挙げられる:(a)検査する領域801そのものを指定する、(b)検査しない領域を指定することによりその残部を領域801として指定する。さらに、(c)各領域801において検査するパターンの個数を指定してもよい。これらはユーザが指定してもよいし、半導体基板の面積に対する領域801の割合のみユーザが指定してコンピュータシステム10がその割合に基づき領域801を自動指定してもよい。
【0036】
<本開示の変形例について>
本開示は、上述した実施形態に限定されるものでなく、様々な変形例を含んでいる。例えば、上述した実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備える必要はない。また、ある実施形態の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の実施形態の構成の一部を追加、削除または置換することもできる。
【0037】
以上の実施形態において、コンピュータシステム10は、処理内容をユーザに対して提示するためのユーザインターフェース(例えばGUI:Graphical User Interface)を提供してもよい。ユーザインターフェースの例としては以下のようなものが挙げられる:(a)図2に例示するような設計データ21の内容を画面表示する;(b)図4に例示するような基準回路パターンを画面表示し、ユーザがその画面上において計測カーソル/スキャン方向を設定する;(c)図5に例示するような設計データ21上の基準回路パターンの位置および向きを画面表示する;(d)図6に例示する分類結果および統計処理を画面表示する。
【0038】
以上の実施形態において、計測装置30の例としてSEMを挙げたが、本開示はこれに限られるものではない。SEM以外の計測装置(例:SEM以外の荷電粒子ビーム装置)において計測レシピを作成する際に、本開示に係る手法を適用することにより、その計測装置についても、本開示と同様の効果(すなわち計測カーソルやスキャン方向を回路パターンごとに設定する作業負担を軽減する)を発揮することができる。
【0039】
以上の実施形態において、計測とは、回路パターンの測長以外に、欠陥検査、欠陥内容の解析、その他さまざまな同様の処理を含むことを付言しておく。
【0040】
以上の実施形態において、基準回路パターン上のスキャン方向と計測カーソル位置をそれぞれ反転させることを説明した。例えば基準回路パターンと同じ回路構成を有する別回路パターンが、基準回路パターンを任意角度(例:90度、270度)回転させたものを有する場合においても、本開示の手法を適用することができる。例えば、基準回路パターンを90度回転させた回路構成を有する別回路パターンについては、計測カーソルとスキャン方向をそれぞれ90度回転させた上で設定すればよい。
【0041】
以上の実施形態において、計測カーソルは、計測装置30が荷電粒子ビームを照射する範囲を指定するものであるので、計測カーソル内には荷電粒子ビームの照射位置を複数個所含んでいることを付言しておく。
【0042】
以上の実施形態において、半導体基板(半導体ウエハ)上に形成された回路パターンを計測する場合を例示したが、本開示はこれに限るものではなく、いったん製品として出荷された回路パターンを計測する場合などにおいても本開示を適用可能である。すなわち、任意の半導体材料上に形成された回路パターンを計測する場合において、本開示を適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1:計測システム
10:コンピュータシステム
20:記憶装置
21:設計データ
30:計測装置
40:計測対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8