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特開2023-151303医療支援装置、医療支援装置の作動方法及び作動プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151303
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】医療支援装置、医療支援装置の作動方法及び作動プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A61B6/03 360T
A61B6/03 360P
A61B6/03 360Q
A61B6/03 360D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060859
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広貴
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093DA04
4C093EE01
4C093FF17
4C093FF19
4C093FF32
4C093FF35
4C093FG01
4C093FG13
4C093FG16
(57)【要約】
【課題】従来よりもユーザの利便性を向上させた医療支援装置、医療支援装置の作動方法及び作動プログラムを提供する。
【解決手段】医療支援装置のプロセッサは、医用画像を画像解析することによって検出された異常信号領域を識別可能に表示する第1表示制御と、異常信号領域について、操作指示によって分類されたグループ毎に表示態様を変化させる第2表示制御とを実行する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備えた医療支援装置であって、
前記プロセッサは、
医用画像を画像解析することによって検出された異常信号領域を識別可能に表示する第1表示制御と、
前記異常信号領域について、操作指示によって分類されたグループ毎に表示態様を変化させる第2表示制御とを実行する、医療支援装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記第1表示制御において、前記異常信号領域を、信号値に応じて第1異常信号領域と第2異常信号領域の少なくとも2つに分類し、分類された前記第1異常信号領域と前記第2異常信号領域とで前記表示態様を変化させる、請求項1に記載の医療支援装置。
【請求項3】
前記第1異常信号領域は、前記信号値が相対的に高い高信号領域であり、
前記第2異常信号領域は、前記信号値が相対的に低い低信号領域である、請求項2に記載の医療支援装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記画像解析で検出された全ての前記異常信号領域を表示する第1リストと、前記グループ毎に生成され、前記グループに分類された前記異常信号領域を表示可能な第2リストとを含む操作画面を表示し、
前記操作画面を通じて、前記第1リストに表示された前記異常信号領域を前記グループに分類する前記操作指示を受け付けて、
前記グループに分類された前記異常信号領域を前記第2リストに表示する、請求項1~請求項3のうちのいずれか1項に記載の医療支援装置。
【請求項5】
前記グループは、ユーザが任意に設定可能であり、
前記プロセッサは、前記グループ毎に前記第2リストを表示する、請求項4に記載の医療支援装置。
【請求項6】
前記グループは、前記異常信号領域の所見毎に設定可能であり、
前記プロセッサは、前記第2リストのグループ名として前記所見の名称を表示する、請求項5に記載の医療支援装置。
【請求項7】
前記医用画像は脳が描出された脳画像であり、
前記所見は、前記脳内における、梗塞、出血、LVO、Hyperdense sign、及び石灰化のうちのいずれかを含む、請求項6に記載の医療支援装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
複数の前記異常信号領域に、信号値に応じて分類された第1異常信号領域と第2異常信号領域がある場合において、
前記第1異常信号領域が前記第2異常信号領域に対して予め設定された位置関係に有るか否かを判定し、
前記位置関係の判定結果に応じて前記第1異常信号領域の表示態様を変化させる第3表示制御を実行可能である、請求項1~請求項7のうちのいずれか1項に記載の医療支援装置。
【請求項9】
前記第1異常信号領域は、前記信号値が相対的に高い高信号領域であり、
前記第2異常信号領域は、前記信号値が相対的に低い低信号領域である、請求項8に記載の医療支援装置。
【請求項10】
前記位置関係の有無は、前記医用画像に描出された臓器における同一の解剖学的領域内に、前記第1異常信号領域と前記第2異常信号領域とが存在するか否かである、請求項8又は請求項9に記載の医療支援装置。
【請求項11】
プロセッサを備えた医療支援装置の作動方法であって、
前記プロセッサは、
医用画像を画像解析することによって検出された異常信号領域を識別可能に表示する第1表示制御と、
前記異常信号領域について、操作指示によって分類されたグループ毎に表示態様を変化させる第2表示制御とを実行する、医療支援装置の作動方法。
【請求項12】
医療支援装置としてコンピュータを機能させる作動プログラムであって、
医用画像を画像解析することによって検出された異常信号領域を識別可能に表示する第1表示制御と、
前記異常信号領域について、操作指示によって分類されたグループ毎に表示態様を変化させる第2表示制御とをコンピュータに実行させる、医療支援装置の作動プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、医療支援装置、医療支援装置の作動方法及び作動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、医用画像の一例である脳画像の信号値に基づいて出血領域を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-213785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る技術は、医用画像の異常信号領域の表示に関し、従来よりもユーザの利便性を向上させた医療支援装置、医療支援装置の作動方法及び作動プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の技術に係る医療支援装置は、プロセッサを備えた医療支援装置であって、プロセッサは、医用画像を画像解析することによって検出された異常信号領域を識別可能に表示する第1表示制御と、異常信号領域について、操作指示によって分類されたグループ毎に表示態様を変化させる第2表示制御とを実行する。
【0006】
本開示の技術に係る医療支援装置の作動方法は、プロセッサを備えた医療支援装置の作動方法であって、プロセッサは、医用画像を画像解析することによって検出された異常信号領域を識別可能に表示する第1表示制御と、異常信号領域について、操作指示によって分類されたグループ毎に表示態様を変化させる第2表示制御とを実行する。
【0007】
本開示の技術に係る医療支援装置の作動プログラムは、医療支援装置としてコンピュータを機能させる作動プログラムであって、医用画像を画像解析することによって検出された異常信号領域を識別可能に表示する第1表示制御と、異常信号領域について、操作指示によって分類されたグループ毎に表示態様を変化させる第2表示制御とをコンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】医療支援装置を示す図ある。
図2】医療支援装置のハードウェア構成を示す図である。
図3】医療支援処理の全体の処理手順を示すフローチャートである。
図4】第1表示制御の処理手順を示すフローチャートである。
図5】異常信号検出、第1表示制御及び第1リスト表示の処理を模式的に示す図である。
図6】画像表示画面の一例を示す図である。
図7】高信号領域の解析結果が表示された画像表示画面の一例である。
図8】低信号領域の解析結果が表示された画像表示画面の一例である。
図9】第1リスト及び断層画像のそれぞれの異常信号領域の対応関係を示す方法の一例を示す図である。
図10】異常信号領域分類前の第2リストが表示された画像表示画面の一例である。
図11】異常信号領域分類後の第2リストが表示された画像表示画面の一例である。
図12】第2リスト設定情報の一例を示す図である。
図13】第1表示制御と第2表示制御を模式的に示す図である。
図14】第2実施形態の医療支援処理の処理手順を示すフローチャートである。
図15】第3表示制御の模式的に示す図である。
図16】第1表示制御の変形例を示す図である。
図17】第2表示制御と第3表示制御の組み合わせ例を示す図である。
図18】心臓画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
図1に示す医療支援装置11は、ディスプレイ16を備えており、被検者PTの断層画像32Aをディスプレイ16に出力する。断層画像32Aは、「医用画像」の一例である。医療支援装置11は、例えば、通信可能に接続された画像データベース33から断層画像群32を取得する。画像データベース33は、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication System)サーバであり、断層画像群32を格納する。断層画像撮影装置31は、断層画像群32を撮影する。断層画像撮影装置31は、本例ではCT(Computed Tomography)装置である。CT装置は、周知のように、放射線源と放射線検出器とを被検者PTの体軸回りに回転させながらCT値を取得する。CT値の取得は、放射線源と放射線検出器とを被検者PTの体軸方向に走査することにより体軸方向の各位置で行われる。CT値は、被検者PTの体内の放射線吸収値である。CT装置は、体軸回りの各方向で取得したCT値に基づいて画像再構成処理を行うことにより断層画像32Aを生成する。各断層画像32Aは体軸方向のスライス厚に応じて生成された二次元の画像であり、断層画像群32は、体軸方向の各位置に対応する複数の断層画像32Aの集合である。断層画像群32は、断層画像撮影装置31から画像データベース33に出力される。
【0010】
図2において、医療支援装置11のハードウェア構成の一例を示す。医療支援装置11は、本開示の技術に係る「医療支援装置」及び「コンピュータ」の一例であり、プロセッサ41、受付デバイス42、ディスプレイ16、RAM(Random access memory)43、ストレージ44、通信I/F45、及び外部I/F46を備えている。これらの各部は、バス48に接続されており、相互に通信可能である。
【0011】
医療支援装置11は、受付デバイス42を通じて医師などのユーザによって操作される。受付デバイス42は、図示しないキーボード及びマウス等を有しており、操作者からの指示を受け付ける。受付デバイス42としては、タッチパネル等のタッチ入力を受け付けるデバイス、マイク等の音声入力を受け付けるデバイス、及びカメラ等のジェスチャ入力を受け付けるデバイス等でもよい。
【0012】
ディスプレイ16としては、例えば、EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ又は液晶ディスプレイ等が挙げられる。ディスプレイ16には、断層画像32A等の医用画像の他、各種の情報が表示される。
【0013】
プロセッサ41は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、制御プログラムに従って医療支援装置11の各部を統括的に制御し、かつ各種のアプリケーションプログラムに従って各種の処理を実行する。
【0014】
ストレージ44は、各種プログラム及び各種の設定情報50等を記憶する不揮発性の記憶装置である。ストレージ44としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)が挙げられる。また、ストレージ44には、コンピュータを医療支援装置11として機能させるための医療支援プログラム49が格納されている。設定情報50には、後述するように断層画像32Aの表示に関する設定情報等が含まれる。
【0015】
RAM43は、一時的に情報が記憶されるメモリであり、プロセッサ41によってワークメモリとして用いられる。RAM43としては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)等が挙げられる。
【0016】
通信I/F45は、LAN(Local Area Network)及び/又はWAN(Wide Area Network)等のネットワーク(図示省略)に接続されており、有線又は無線の各種の通信規格で規定された通信プロトコルに従って伝送制御を行う。プロセッサ41は、画像データベース33から通信I/F45を介して断層画像32Aを取得する。
【0017】
外部I/F46は、例えばUSB(Universal Serial Bus)インタフェースであり、プリンタ及びメモリカードなどの周辺機器との接続に用いられる。
【0018】
プロセッサ41は、ストレージ44から医療支援プログラム49を読み出し、医療支援プログラム49をRAM43上で実行することにより医療支援処理を行う。医療支援処理は、プロセッサ41が画像解析部41A及び表示制御部41Bとして動作することによって実現される。医療支援プログラム49は、本開示の技術に係る「医療支援装置の作動プログラム」の一例である。
【0019】
プロセッサ41は、画像解析部41Aとして機能することにより、断層画像32Aを画像解析する。また、プロセッサ41は、表示制御部41Bとして機能することにより、断層画像32A及び断層画像32Aの解析結果のディスプレイ16への表示を制御する。
【0020】
医療支援装置11は、断層画像32Aにおいて信号値が異常な異常信号領域を解析結果として表示することにより、診断に有用な情報を提供する。異常信号領域とは、医用画像の臓器が描出されている領域において、正常な場合と比較して、信号値が異常値を示す領域をいう。具体的には、異常信号領域は、周辺の領域の信号値(周辺の代表値(平均値、中央値)を含む)と比較して信号値の差が大きい領域、ある領域の正常な信号値との乖離が大きな領域(例えば閾値との差が許容範囲外の領域)などであり、このような領域として機械学習モデルが検出した領域を含む。
【0021】
CT値は、本開示の技術に係る「信号値」の一例である。CT値は、放射線(例えばX線)吸収値であるが、より具体的には、水を「0」、空気を「-1000」として、体内の各部の放射線吸収値を数値化したものであり、CT値の単位は「HU:Hounsfield Unit」である(図5など参照)。CT値は、断層画像32Aにおいては輝度値として表現される。X線の吸収が大きいほど、信号値であるCT値は高くなり、断層画像32Aにおいては濃度が低く表示される(白に近づく)。反対に、X線の吸収が小さいほど、信号値であるCT値は低くなり、断層画像32Aにおいては濃度が高く表示される(黒に近づく)。例えば、骨と軟部組織を比較すると、骨の方がX線の吸収が大きいため、骨はCT値が高く、断層画像32Aにおいて濃度が低い(白色に近い)。反対に、軟部組織はCT値が低く、断層画像32Aにおいて濃度は高い(黒色に近い)。
【0022】
異常信号領域には、一例として、信号値が相対的に高い高信号領域と、信号値が相対的に低い低信号領域とがある。信号値の正常な範囲は、例えば、臓器の部位毎に決まっており、高信号領域は、正常な範囲よりも信号値が高く、低信号領域は、正常な範囲よりも信号値が低い。高信号領域は、本開示の技術に係る「第1異常信号領域」の一例であり、低信号領域は、本開示の技術に係る「第2異常信号領域」の一例である。
【0023】
図3は、プロセッサ41が実行する医療支援処理の手順の全体を示すフローチャートの一例であり、図4図3に示す処理の一部の手順を示すフローチャートの一例である。以下において、図3及び図4のフローチャートに加えて、図5図12の画像表示画面例などを適宜参照しながら、プロセッサ41が実行する医療支援処理を説明する。
【0024】
図3に示すように、ステップS1100において、プロセッサ41は、画像解析により断層画像32Aの異常信号領域を検出する。次に、ステップS1200において、検出した異常信号領域を識別可能に表示する。ステップS1200の処理を第1表示制御という。
【0025】
ステップS1200の第1表示制御は、より具体的には、図4に示す手順で行われる。プロセッサ41は、まず、ステップS1210において、プロセッサ41は、検出された異常信号領域を、本例では高信号領域と低信号領域とに分類する。そして、プロセッサ41は、ステップS1220において、断層画像32Aにおいて高信号領域と低信号領域の表示態様を変化させて表示する。
【0026】
さらに、プロセッサ41は、図3に示すステップS1300において、断層画像32A内の異常信号領域の表示とは別に、検出された異常信号領域の一覧を第1リスト51(図5など参照)として表示する。
【0027】
図5を用いて、ステップS1100からステップS1300の処理を模式的に説明する。断層画像32Aは、一例として、脳のアキシャル断面が描出された脳画像である。プロセッサ41は、ステップS1100において、断層画像32Aに対する画像解析として、例えば機械学習モデルを用いたセマンティックセグメンテーションを行うことにより、断層画像32A内の異常信号領域を検出する。
【0028】
機械学習モデルとしては、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)の一例であるUNETなどである。UNETは、画像内の物体及び領域などを識別する画像認識に用いられる代表的な機械学習モデルである。UNETは、入力画像の画像サイズを段階的に縮小させながら、画像サイズが異なる階層毎に複数種類のフィルタリング処理を行うことにより画像の特徴量を抽出する。画像サイズが異なる階層毎に特徴量を抽出することにより、画像の大局的な特徴量及び局所的な特徴量を抽出することができる。UNETは、こうした特徴量に基づいて画像内の異常信号領域を識別し、識別した異常信号領域がセグメンテーションされた画像を出力する。
【0029】
機械学習モデルは、例えば、過去の症例画像と症例画像内の異常信号領域にラベリングが施された正解データとを学習データとして学習が行われる。ここで、異常信号領域にラベリングを施すとは、例えば、異常信号領域に含まれる画素に、正常信号領域に含まれる画素に付されるラベルとは異なる異常信号領域を示すラベルを付すことを示す。なお、異常信号領域について、さらに高信号領域と低信号領域とを区別して、機械学習モデルに識別させたい場合は、高信号領域と低信号領域とに異なるラベルを付した正解データを使用して学習させる。なお、異常信号領域を検出するための画像解析手法としては、機械学習モデルを用いたものに限定されず、パターンマッチングなどのルールベースの画像解析手法を用いてもよい。
【0030】
そして、プロセッサ41は、ステップS1200において、検出された異常信号領域について第1表示制御を実行する。図5において、プロセッサ41によって画像解析された解析後の2枚の断層画像32Aは、左側の断層画像32Aが、異常信号領域として高信号領域Hを含む画像であり、右側の断層画像32Aが、異常信号領域として低信号領域Lを含む画像である。高信号領域Hと低信号領域Lとは、それぞれ他の領域と識別可能な表示態様で表示される。
【0031】
ここで、表示態様とは、色、輝度、及び模様などのいずれかを含む概念である。色は、例えば、色相、彩度、及び明度のいずれかを含み、模様は、例えば、ハッチング等を含む概念である。また、矩形を含む多角形、円などで異常信号領域を囲うバウンディングボックスの形態も表示態様に含まれる。要するに、表示態様は、他の領域と識別可能な態様をすべて含む概念である。本例においては、モノクロの断層画像32A内において、高信号領域Hには赤色のハッチングが付され、低信号領域Lには青色のハッチングが付されている。このように、高信号領域Hと低信号領域Lの2種類の異常信号領域は、色付きのハッチングが付されることによって、正常な信号領域と識別可能に表示される。また、高信号領域Hと低信号領域Lには、赤色と青色というようにそれぞれ別の色が割り当てられており、両者の識別も可能になっている。なお、図5においては、高信号領域Hが含まれる断層画像32Aと、低信号領域Lが含まれる断層画像32Aとは、異なる断層位置の別の画像として示している。もちろん、1枚の断層画像32A内に高信号領域Hと低信号領域Lとが混在している場合もある。
【0032】
プロセッサ41は、ステップS1300において第1リスト51を表示する。図5に示すように、本例では、プロセッサ41は、異常信号領域を高信号領域Hと低信号領域Lの2つに分類し、高信号領域Hと低信号領域Lの2つに分けて第1リスト51を表示する。第1リスト51Aは、画像解析により検出された高信号領域Hの一覧であり、第1リスト51Bは、画像解析により検出された低信号領域Lの一覧である。以下において、第1リスト51Aと51Bとを区別する必要が無い場合は、単に第1リスト51という。第1リスト51は、本開示の技術に係る「第1リスト」の一例である。第1リスト51A及び51Bには、検出された高信号領域H及び低信号領域Lのそれぞれの領域毎に、体積、CT値の平均値及び最大値が表示される。面積ではなく体積が示されているのは、断層画像群32が、厚み方向に積層された複数枚の断層画像32Aの集合であるためである。つまり、1つの異常信号領域は、複数枚の断層画像32Aに渡って、3次元的に存在している。
【0033】
図6に示す画像表示画面70は、医療支援装置11において断層画像32Aを表示する画面の一例である。画像表示画面70には、上部に、被検者PTの患者ID(Identification)、患者名、撮影日などの書誌事項が表示され、その下方に画像を表示する領域が設けられている。図6に示す画像表示画面70では、解析前の断層画像32Aのみが表示されている。符号71は、断層位置が異なる複数の断層画像32Aを切り替えるためのスクロールバーである。
【0034】
画像表示画面70の下段には、解析ボタン72、設定ボタン74及び分類ボタン76が設けられている。解析ボタン72は、プロセッサ41に対して画像解析を実行させる操作指示を入力するための操作ボタンである。設定ボタン74は、表示内容の切り替え操作、及び表示に関する各種の設定操作を行うための操作ボタンである。分類ボタン76は、後述するように異常信号領域の分類に用いる操作ボタンである。このように、画像表示画面70は、操作に用いられる操作画面である。画像表示画面70は、本開示の技術に係る「操作画面」の一例である。符号73は、ポインタであり、マウスなどによって操作され、解析ボタン72及び設定ボタン74などを操作するために用いられる。
【0035】
断層画像32Aに対して画像解析が実行されると、図7及び図8に示すように、画像表示画面70には解析結果が表示される。解析結果は、一例として、断層画像32A内における高信号領域H及び低信号領域Lの表示と、高信号領域Hの一覧である第1リスト51A及び低信号領域Lの一覧である第1リスト51Bとである。図7は、高信号領域Hが検出された断層画像32Aの解析結果の表示例であり、図8は低信号領域Lが検出された断層画像32Aの解析結果の表示例である。なお、本例では、画像表示画面70内に、解析後の断層画像32Aを1枚ずつ表示する例で示しているが、画像表示画面70内に、図7及び図8に示す複数枚の断層画像32Aを並べて表示してもよい。
【0036】
また、第1リスト51内の異常信号領域と、断層画像32A上の異常信号領域との対応関係について、ユーザは、例えば、図9に例示する方法によって把握することができる。図9に示す方法は、第1リスト51又は断層画像32Aの一方において、1つの異常信号領域をポインタ73で選択した場合に、他方においてそれに対応する異常信号領域が、他の異常信号領域に対して強調表示される方法である。
【0037】
より具体的には、図9においては、第1リスト51に含まれる複数の高信号領域Hのうちの1つがポインタ73で選択された状態を示している。この状態では、第1リスト51内において選択された高信号領域Hを表示する行に対して網掛け表示等が加えられる。これにより、第1リスト51内において、選択された高信号領域Hの行が、他の高信号領域Hの行に対して強調表示される。プロセッサ41は、第1リスト51において1つの高信号領域Hがポインタ73で選択されると、それに対応する高信号領域Hを含む断層画像32Aを断層画像群32内から抽出する。そして、プロセッサ41は、抽出された断層画像32A上において、対応する高信号領域Hに対して矩形のバウンディングボックス79等を表示する。これにより、断層画像32A内において、対応する高信号領域Hを他の高信号領域Hに対して強調表示する。図9において、点線で示す円弧状の両矢印は、第1リスト51においてポインタ73で選択された1つの高信号領域Hと、断層画像32A上においてバウンディングボックス79で強調表示される1つの高信号領域Hとが対応することを示している。
【0038】
また、図9に示す例では、第1リスト51内の1つの高信号領域Hをポインタ73で選択する例を示しているが、その反対に、断層画像32A内の1つの高信号領域Hをポインタ73で選択された場合には、第1リスト51内において、対応する高信号領域Hを表示する行が、他の高信号領域Hを表示する行に対して強調表示される。
【0039】
ここで、強調表示とは、強調表示の対象である異常信号領域が、強調表示の対象以外の異常信号領域より視認性が向上する表示であれば良い。強調表示の方法としては、本例で示したように、強調表示の対象である異常信号領域に対して網掛け表示をしたり、バウンディングボックス79で囲う他、対象の輝度を向上させるハイライト表示等でもよい。
【0040】
なお、図9に示す例では、対応する高信号領域Hについて、第1リスト51と断層画像32Aの両方において強調表示する例で示しているが、第1リスト51及び断層画像32Aの一方のみにおいて強調表示するようにしてもよい。例えば、第1リスト51内の1つの高信号領域Hをポインタ73で選択した場合は、第1リスト51内の高信号領域Hについては強調表示せずに、断層画像32A内の対応する高信号領域Hのみを強調表示してもよい。というのも、ポインタ73で選択した高信号領域Hについては、あえて強調表示を行わなくてもポインタ73の存在によって、選択している対象をユーザが把握することができるからである。また、図9の例では、異常信号領域として高信号領域Hを例に説明しているが、低信号領域Lについても同様である。
【0041】
図9に例示した上記方法によって、第1リスト51内の異常信号領域と、断層画像32A上の異常信号領域との対応関係を、ユーザは把握することができる。
【0042】
図3に戻って、ステップS1300の後、プロセッサ41は、ステップS1400に移行する。ステップS1400~S1440は、第2表示制御に関する処理ステップである。第2表示制御は、検出された異常信号領域について、操作指示によって分類されたグループ毎に表示態様を変化させる表示制御である。異常信号領域をどのグループに分類するかの指定はユーザによって行われる。プロセッサ41は、まず、ステップS1400において、ユーザからの第2表示制御の開始指示の入力を待機する。第2表示制御の開始指示は、画像表示画面70の分類ボタン76が操作されることによって入力される。
【0043】
分類ボタン76が操作されることにより、第2表示制御の開始指示が入力されると(ステップS1400においてY)、プロセッサ41は、画像表示画面70にグループ指定用の第2リスト85(図10参照)を表示する(ステップS1410)。第2リスト85は、異常信号領域を分類するグループ毎に生成され、グループに分類された異常信号領域を表示可能なリストである。第2リスト85は、本開示の技術に係る「第2リスト」の一例である。
【0044】
そして、ステップS1420において、プロセッサ41は、異常信号領域をグループに分類する操作指示としてグループ指定を受け付ける。プロセッサ41は、グループ指定が入力されると(ステップS1420でY)、ステップS1430において、指定されたグループに異常信号領域を分類する。グループ指定は異常信号領域毎に行われる。ステップS1430において、プロセッサ41は、グループに分類された異常信号領域を第2リスト85内に表示する。
【0045】
ステップS1440において、プロセッサ41は、断層画像32Aにおいて、分類されたグループ毎に表示態様を変化させて異常信号領域を表示する第2表示制御を実行する。プロセッサ41は、断層画像32Aの表示が終了するまで、ステップS1400~ステップS1440の処理を繰り返す(ステップS2000)。
【0046】
図3のステップS1400~ステップS1440までの第2表示制御に関する処理を、図10及び図11を用いて具体的に説明する。第1リスト51A及び51Bは、画像解析で検出された全ての異常信号領域を表示するリストである。対して、第2リスト85は、異常信号領域をグループに分類するためのグループ指定用のリストである。図10及び図11においては、第2リスト85として、第2リスト85A及び85Bの2つのリストを例示している。以下において、第2リスト85A及び85Bを区別する必要が無い場合は、単に第2リスト85と呼ぶ。異常信号領域を第2リスト85のどのグループに分類するかは、ユーザが指定することができる。
【0047】
第2リスト85のグループは、ユーザが任意に設定可能であり、プロセッサ41は、グループ毎に第2リスト85を表示する。第2リスト85の各グループは、異常信号領域の所見毎に設定可能であり、この場合、プロセッサ41は、第2リスト85のグループ名として所見の名称を表示する。このような第2リスト85は、各異常信号領域を、各異常信号領域に対するユーザの評価である所見毎のグループに分類するために用いられる。図10においては、第2リスト85は、異常信号領域が未分類の空の状態である。
【0048】
本例においては、図10に示すように、第2リスト85Aは「脳内出血」という所見が、第2リスト85Bは「LVO:Large vessel occlusion(脳主幹動脈閉塞))という所見が設定されている。ユーザである医師は、断層画像32Aの高信号領域H及び低信号領域Lなどを観察し、各異常信号領域に対して所見を下す。例えば、ユーザが、断層画像32A内の1つ高信号領域Hについて「脳内出血」であるという所見を下した場合は、その高信号領域Hを第1リスト51Aから選択し、第2リスト85Aの「脳内出血」のグループに分類する。同様に、ユーザが、断層画像32A内の1つ高信号領域Hについて「LVO」であるという所見を下した場合は、その高信号領域Hを第1リスト51Aから選択し、第2リスト85Bの「LVO」のグループに分類する。「脳内出血」及び「LVO」のどちらの異常信号領域も、断層画像32Aにおいては信号値が相対的に高い高信号領域Hである。
【0049】
図9で説明したとおり、断層画像32A内の異常信号領域をポインタ73で選択すると、第1リスト51内において選択した異常信号領域の行が強調表示される。加えて、断層画像32A上でも、対応する異常信号領域が強調表示される。これにより、断層画像32A上の異常信号領域と第1リスト51内の異常信号領域との対応関係を、ユーザが把握することができる。第2リスト85内において異常信号領域が選択された場合も、第1リスト51の場合と同様に図9に示す方法で強調表示が行われる。これにより、第2リスト85に分類後の異常信号領域と断層画像32A上の異常信号領域との対応関係についても、ユーザが把握することができる。
【0050】
また、異常信号領域のグループ指定は、例えば、図11において点線の矢印で示すように、第1リスト51A及び51Bに含まれる異常信号領域を、ポインタ73で選択して、第2リスト85A及び85Bのいずれかにドラッグする操作によって行われる。
【0051】
図12は、第2リスト設定情報50Aの一例である。第2リスト設定情報50Aは、第2リスト85のグループと、それぞれのグループの表示態様との関係を示す情報である。本例では、第2リスト85のグループとして設定される所見は、脳卒中などの脳の傷病に関する診断に特化した所見が設定されている。第2リスト設定情報50Aにおいて、高信号領域Hについては、「くも膜下出血」、「脳内出血」、「LVO」、「Hyperdense Sign」及び「石灰化」などの所見が設定されている。また、低信号領域Lについては、「梗塞」などが設定されている。ユーザは、第2リスト設定情報50Aを編集することにより、異常信号領域を分類するグループ又はグループに対応する表示態様を任意に設定することが可能である。グループの数を増減することも可能である。また、第2リスト設定情報50Aを編集することにより、グループ名として、所見の名称を設定することができる。
【0052】
なお、第2リスト設定情報50Aと同様に、第1リスト設定情報を有しても良い。第1リスト設定情報は、第1リスト51のグループと、それぞれのグループの表示態様との関係を示す情報である。第1リスト51のグループとしては、例えば、異常信号領域と、正常信号領域というグループであったり、高信号領域と低信号領域というグループ等が含まれる。ユーザが第1リスト設定情報を編集することにより、それぞれのグループに対応する表示態様を任意に設定できるようにしてもよい。
【0053】
また、第2リスト設定情報50Aにおいては、「くも膜下出血」では「P1」、「脳内出血」では「P2」というように、グループ毎に表示態様が設定されている。プロセッサ41は、第2リスト85に分類された異常信号領域を、第2リスト設定情報50Aに規定された表示態様に従って断層画像32A内に表示する。
【0054】
図13は、ステップS1200の第1表示制御と、ステップS1440の第2表示制御を模式的に示す図である。第1表示制御は、上述したとおり、断層画像32Aを画像解析することによって検出された異常信号領域を識別可能に表示する制御である。本例では、異常信号領域を、信号値に応じて高信号領域Hと低信号領域Lとに分類し、それぞれの表示態様を変化させている。第1表示制御は第1表示規則に従って実行される。本例の第1表示規則において、高信号領域Hの表示態様は、赤色のハッチングが設定されている。図13においては、赤色のハッチングを点線の四角形で示している。また、低信号領域Lの表示態様は、青色のハッチングが設定されている。図13においては、青色を点線の三角形で示している。
【0055】
脳画像を模式的に示す断層画像32Aにおける右と左は、それぞれ脳の右半球と左半球を意味する。図13に示す断層画像32Aでは、高信号領域Hは、左半球に2つ(「H1」と「H2」)、右半球に1つ(「H3」)あるが、第1表示制御においては、これら「H1」~「H3」の3つの高信号領域Hは、第1表示規則に従って、すべて赤色のハッチングで表示される。一方、図13に示す断層画像32Aでは、低信号領域Lは、右半球に2つ(「L1」と「L2」)ある。これら「L1」と「L2」の2つの低信号領域Lは、第1表示規則に従って、すべて青色のハッチングで表示される。このように、第1表示制御においては、断層画像32Aにおいて、高信号領域Hと低信号領域Lの各異常信号領域が他の領域と識別可能に表示される。また、本例においては、高信号領域Hは赤色のハッチングで表示され、低信号領域Lは青色のハッチングで表示されるというように、高信号領域Hと低信号領域Lとで表示態様が変化する。
【0056】
一方、第2表示制御では、プロセッサ41は、異常信号領域について、操作指示によって分類されたグループ毎に表示態様を変化させる。第2表示制御では、第2表示規則に従って異常信号領域の表示態様が変化する。図13の第2表示規則は、図12に示す第2リスト設定情報50Aに規定した内容の一例である。図13に示す例では、脳内出血グループは赤色のハッチング、LVOグループは青色のハッチング、梗塞グループは緑色のハッチングがそれぞれの表示態様として設定されている。
【0057】
第2表示制御において示される断層画像32Aの異常信号領域の数及び位置は、第1表示制御において例示されている断層画像32Aの異常信号領域と同じである。第2表示制御においては、左半球にある「H1」は脳内出血グループに分類されるため、赤色のハッチングで示される(点線の四角形で示す)。同じく左半球にある「H2」はLVOグループに分類されるため、青色のハッチングで示される(点線の三角形で示す)。脳内出血グループもLVOグループも、高信号領域Hが分類される高信号グループである。梗塞グループは、低信号領域Lが分類される低信号グループである。「L1」と「L2」の2つの低信号領域Lは、梗塞グループに分類されており、緑色のハッチングで示される。このように、第2表示制御においては、ユーザの意図が反映された分類に応じて、異常信号領域の表示態様が変化する。
【0058】
以上説明したとおり、医療支援装置11は、断層画像32Aを一例として示す医用画像を画像解析することによって検出された異常信号領域を識別可能に表示する第1表示制御と、異常信号領域について、操作指示によって分類されたグループ毎に表示態様を変化させる第2表示制御とを実行する。そのため、第1表示制御に加えて、第2表示制御を実行することができるため、従来と比べて、ユーザの利便性が向上する。
【0059】
より具体的には以下のとおりである。第1表示制御に加えて、ユーザの分類に応じた第2表示制御を組み合わせることで、画像解析の解析結果としての異常信号領域を識別可能に表示する表示方法と、ユーザの分類に応じた表示態様で異常信号領域を表示する表示方法とが可能になり、複数の観点で異常信号領域を確認することができる。そのため、複数の観点での診断がしやすくなり、ユーザの利便性が向上する。また、第2表示制御を実行することにより、ユーザが分類した複数の異常信号領域をグループ毎にまとめて表示態様を変化させることができる。異常信号領域に対して個別にアノテーションを付すといったラベル付けは従来から行われているが、グループ毎に一括した表示制御が可能となるため、異常信号領域の分類がしやすくなり、ユーザの利便性が向上する。
【0060】
また、本例では、プロセッサ41は、第1表示制御において、異常信号領域を、信号値に応じて第1異常信号領域の一例である高信号領域と、第2異常信号領域の一例である低信号領域の少なくとも2つに分類し、分類された第1異常信号領域と第2異常信号領域とで表示態様を変化させる。これにより、信号値に応じて変化する第1異常信号領域と第2異常信号領域とが両方顕れる傷病の診断に有効である。
【0061】
また、本例では、第1異常信号領域は、信号値が相対的に高い高信号領域Hであり、第2異常信号領域は、信号値が相対的に低い低信号領域Lである。これにより、例えば、脳内出血及びLVOなどの高信号領域Hと、梗塞などの低信号領域Lとが両方顕れる傷病の診断に有効である。高信号領域Hと低信号領域Lの両方が顕れる傷病としては、例えば、脳卒中が挙げられる。
【0062】
また、本例では、プロセッサ41は、画像解析で検出された全ての異常信号領域を表示する第1リスト51と、グループ毎に生成され、グループに分類された異常信号領域を表示可能な第2リスト85とを含む操作画面の一例である画像表示画面70を表示する。そして、プロセッサ41は、操作画面の一例である画像表示画面70を通じて、第1リスト51に表示された異常信号領域をグループに分類する操作指示を受け付けて、グループに分類された異常信号領域を第2リスト85に表示する。これにより、操作指示によって変更された結果を第1リスト51および第2リスト85で確認することが可能となるため、リストを表示しない場合と比較して、第2表示制御によって分類された結果を容易に把握することができる。
【0063】
また、本例で挙げたように、第1リスト51又は第2リスト85の一方で異常信号領域を指定し、他方にドラック&ドロップすることで、異常信号領域が所属するグループを変更することも可能である。これにより、第1リスト51及び第2リスト85を通じて、異常信号領域を分類する操作指示が可能になるため、リストを用いない場合と比較して、直感的な操作が可能となる。
【0064】
なお、異常信号領域を分類する操作指示は、これに限らず、例えば、次のような方法でもよい。すなわち、プロセッサ41は、ポインタ73等により第1リスト51内の1つの異常信号領域が選択された場合に、選択された異常信号領域を分類可能な第2リスト85の候補となる複数のグループが含まれるグループリストを提示する。プロセッサ41は、提示されたグループリスト内の1つの指定を受け付けると、指定されたグループの第2リスト52に第1リスト51で指定された異常信号領域を分類する。
【0065】
また、本例では、第2リスト85のグループは、ユーザが任意に設定可能であり、プロセッサ41は、グループ毎に第2リスト85を表示する。グループをユーザが任意に設定できるため、ユーザの意図を反映したグループ分けが可能となる。
【0066】
第2リスト85のグループは、異常信号領域の所見毎に設定可能であり、プロセッサ41は、第2リスト85のグループ名として所見の名称を表示する。これにより、所見毎のグループ分けができるので、所見ごとに異常信号領域を把握することが可能となる。なお、異常信号領域の所見毎に設定する場合において、過去にユーザ又はユーザが所属するグループが画像診断で使用した所見の使用履歴に基づいて自動で設定するようにしても良い。なお、所見の使用履歴とは、所見の使用の有無、所見の使用頻度、使用率等を含む。また、ユーザが所属するグループとは、例えば、ユーザが所属する診療科又は診療施設の情報が同一であるグループ等を示す。なお、ユーザの過去の所見の使用履歴に基づいて設定する所見情報の候補が提示され、その中からユーザの選択に応じて第2リスト85のグループとして設定されるとしても良い。
【0067】
また、本例では、医用画像の一例として示す断層画像32Aは脳が描出された脳画像であり、図12などに示したように、所見は、「梗塞」、出血、LVO、Hyperdense sign、及び石灰化のうちのいずれかを含む。こうした所見は脳卒中に多く見られる所見であり、第2リスト85のグループとして、このような所見毎のグループを設定しておけば、脳卒中の診断に有効である。
【0068】
[第2実施形態]
図14及び図15に示す第2実施形態は、プロセッサ41が、第1表示制御及び第2表示制御に加えて、さらに第3表示制御を実行する例である。第3表示制御は、複数の異常信号領域に、信号値に応じて分類された第1異常信号領域と第2異常信号領域がある場合において、第1異常信号領域が第2異常信号領域に対して予め設定された位置関係に有るか否かを判定し、判定結果に応じて第1異常信号領域の表示態様を変化させる表示制御である。例えば、プロセッサ41は、第1異常信号領域の一例である高信号領域Hについて、第2異常信号領域の一例である低信号領域Lとの位置関係に応じて表示態様を変化させる。以下において、これを例に第3表示制御を説明する。
【0069】
図14に示すフローチャートは、第2実施形態の医療支援処理の手順を示すフローチャートである。ステップS1100~ステップS1300までの処理は、図3に示す第1実施形態のフローチャートと同様であるため、説明を省略する。また、ステップS1400~ステップS1440の第2表示制御に関する処理は、図14においては簡略的に示している。プロセッサ41は、ステップS1400において第2表示制御の開始指示が入力されない場合は(ステップS1400でN)、ステップS1500に移行する。
【0070】
ステップS1500において、プロセッサ41は、ユーザからの第3表示制御の開始指示の入力を待機する。プロセッサ41は、第3表示制御の開始指示が入力されると、ステップS1510に移行し、断層画像32Aにおいて検出された高信号領域Hについて位置関係判定処理を実行する。そして、プロセッサ41は、ステップS1520において、判定結果に応じて表示態様を変化させて高信号領域Hを表示する第3表示制御を実行する。
【0071】
図15は、第3表示制御を模式的に示す図である。第3表示制御では、第3表示規則に従って異常信号領域の表示態様が変化する。図15の第3表示規則は、高信号領域Hについて、低信号領域Lと予め設定された位置関係(以下、所定の位置関係という)が無い場合は、所定の位置関係が無いと判定された高信号領域Hは高信号グループ1に分類される。一方、高信号領域Hについて、低信号領域Lと所定の位置関係が有る場合は、所定の位置関係が有ると判定された高信号領域Hは高信号グループ2に分類される。本例において、所定の位置関係の有無は、脳画像においては、高信号領域Hと低信号領域Lとが脳と同じ半球に存在するか否かである。右半球及び左半球は、脳の解剖学的領域の一例である。すなわち、このような位置関係の有無は、断層画像32Aに描出された臓器の一例である脳における同一の解剖学的領域内に、第1異常信号領域と第2異常信号領域とが存在するか否かの一例である。
【0072】
本例の断層画像32Aにおいて、「L1」と「L2」の2つの低信号領域Lは右半球に存在し、左半球には存在しない。一方、「H1」と「H2」の2つの高信号領域Hは左半球にあり、「H3」の1つの高信号領域Hが右半球に存在する。したがって、低信号領域Lと所定の位置関係にある高信号領域Hは、「H3」である。プロセッサ41は、一例として、上述のセマンティックセグメンテーションを行う機械学習モデルを用いた画像解析により、臓器の解剖学的領域を判定する。プロセッサ41は、解剖学的領域の判定と異常信号領域の検出とを行うことにより、位置関係判定処理を実行する。
【0073】
本例の第3表示規則では、低信号領域Lと所定の位置関係に無い高信号グループ1の表示態様としては赤色のハッチングが設定されており、所定の位置関係に有る高信号グループ2の表示態様としては青色のハッチングが設定されている。そのため、断層画像32Aにおいて、左半球に存在する「H1」と「H2」の2つの高信号領域Hは赤色のハッチング(図15において点線の四角形で示す)で表示され、右半球に存在する「H3」の高信号領域Hは青色のハッチング(図15において点線の三角形で示す)で表示される。なお、本例において、梗塞グループに分類される「L1」と「L2」の低信号領域Lは緑色のハッチング(図15において点線の菱形で示す)で表示される。
【0074】
このように、第3表示制御においては、「H3」のように、「H1」及び「H2」と同じ高信号領域Hでも、低信号領域Lに対して予め設定された位置関係に有るか否かの判定結果に応じて表示態様が変化する。脳卒中の場合は、本例で示したように、高信号領域Hと低信号領域Lとが同じ半球に存在することが診断において重要な指標となる。そのため、このような第3表示制御は、高信号領域Hと低信号領域Lのように、信号値が異なる第1異常信号領域と第2異常信号領域とが同じ解剖学的領域に存在することが重要な指標となる傷病の診断に有効である。
【0075】
上記例では、第1異常信号領域として高信号領域Hを例に説明したが、第1異常信号領域が低信号領域Lであってもよい。すなわち、低信号領域Lについて、高信号領域Hと所定の位置関係に有るか否かを判定し、判定結果に応じて低信号領域Lの表示態様を変化させてもよい。
【0076】
また、上記例では、所定の位置関係の有無の例として、臓器における同一の解剖学的領域内に、第1異常信号領域と第2異常信号領域とが存在するか否かで説明したが、位置関係はそれ以外でもよい。例えば、第1異常信号領域と第2異常信号領域とが予め設定された距離内に存在するか否かでもよい。
【0077】
また、上記例では、第1表示制御において、信号値が異なる第1異常信号領域(一例として高信号領域H)と第2異常信号領域(一例として低信号領域L)の表示態様を変化させる例で説明したが、図16に示すように、第1異常信号領域と第2異常信号領域の表示態様を変化させなくてもよい。図16においては、高信号領域H及び低信号領域Lを区別することなく、どちらも異常信号領域として、赤色のハッチングで表示している(図16においては点線の四角形で示す)。つまり、第1表示制御においては、画像解析によって検出された異常信号領域が、医用画像内において識別可能に表示されていればよく、高信号領域か低信号領域かに応じて表示態様を変化させなくてもよい。
【0078】
図15に示した第3表示制御も、医用画像内において異常信号領域を識別可能に表示しているため、第1表示制御の一例と言える。そのため、図17に示すように、プロセッサ41は、操作指示によって分類されたグループ毎に表示態様を変化させる第2表示制御と、第1表示制御の一例として第3表示制御とを実行してもよい。これは、図13及び図15に示した第1表示制御を実行することなく、その代わりに第3表示制御を第1表示制御の一例として実行するという意味である。第2表示制御と第3表示制御の組み合わせ例は、以下のとおりである。例えば、画像表示画面70の解析ボタン72が操作されることにより、プロセッサ41は画像解析を実行し、検出した異常信号領域に基づいて第3表示制御を実行する。この後、プロセッサ41は、ユーザのグループ指定に基づいて第2表示制御を実行する。
【0079】
また、第1表示制御、第2表示制御及び第3表示制御の3つの表示制御を選択的に実行可能としてもよい。また、図3及び図14で示したように、第1表示制御の後に、第2表示制御又は第3表示制御を実行しているが、各表示制御の順番はこれらに限定されず、逆の順番でもよい。また、図14の例では、第1表示制御及び第2表示制御に加えて、第3表示制御を実行しているが、第2表示制御の代わりに第3表示制御を実行してもよい。
【0080】
上記例では、医用画像の例として、臓器として脳が描出された脳画像を示したが、もちろん、医用画像は脳画像以外でもよい。例えば、図18に示すように臓器として心臓が描出された心臓画像91でもよい。このような心臓画像91においても、第1表示制御及び第2表示制御はもちろん、第3表示制御を実行することが可能である。心臓には、例えば、右心房と左心房といった解剖学的領域がある。そのため、心臓画像91においても、高信号領域Hの「H1」と低信号領域Lの「L1」のように、同一の解剖学的領域内に存在する場合には、別の解剖学的領域に存在する場合に対して表示態様を変化させてもよい。また、低信号領域Lの「L1」と「L2」について、高信号領域Hの「H1」との距離D1及びD2に応じて、表示態様を変化させてもよい。なお、高信号領域Hと低信号領域Lが含まれるか否かを判断する判断領域は、解剖学的領域に限らない。判断領域は、例えば、心臓において、血管を定点または定線としたボロノイ分割を用いて分割した領域としても良い。
【0081】
上記例では、医用画像を撮影するモダリティとして断層画像撮影装置を例に説明したが、モダリティとしては、断層画像撮影装置に限らず、単純X線画像を撮影するX線撮影装置、マンモグラフィ、内視鏡、及び超音波診断装置などのモダリティでもよい。
【0082】
また、上記実施形態において、例えば、画像解析部及び表示制御部といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、下記に示す各種のプロセッサ(Processer)を用いることができる。各種プロセッサとしては、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field‐Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0083】
また、上記各種処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせなど)で実行してもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、システムオンチップ(System On Chip:SOC)などのように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。
【0084】
このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0085】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【0086】
また、本開示の技術は、医療支援装置の作動プログラムに加えて、医療支援装置の作動プログラムを非一時的に記憶するコンピュータで読み取り可能な記憶媒体(USBメモリ又はDVD(Digital Versatile Disc)-ROM(Read Only Memory)など)にもおよぶ。
【0087】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0088】
本明細書において、「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「及び/又は」で結び付けて表現する場合も、「A及び/又はB」と同様の考え方が適用される。
【0089】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0090】
11 医療支援装置
16 ディスプレイ
31 断層画像撮影装置
32 断層画像群
32A 断層画像
33 画像データベース
41 プロセッサ
41A 画像解析部
41B 表示制御部
42 受付デバイス
44 ストレージ
45 通信I/F
46 外部I/F
48 バス
49 医療支援プログラム
50 設定情報
50A リスト設定情報
51、51A、51B 第1リスト
70 画像表示画面
71 スクロールバー
72 解析ボタン
73 ポインタ
74 設定ボタン
76 分類ボタン
79 バウンディングボックス
85、85A、85B 第2リスト
91 心臓画像
D1、D2 距離
H 高信号領域
L 低信号領域
PT 被検者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18