(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151390
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】乾麺類用茹で時間短縮剤
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20231005BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20231005BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/10 Z
A23L7/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060975
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕明
(72)【発明者】
【氏名】飯田 岳士
(72)【発明者】
【氏名】川村 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】上野山 遼
【テーマコード(参考)】
4B023
4B046
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE26
4B023LG06
4B023LP07
4B023LP20
4B046LA02
4B046LA04
4B046LA05
4B046LA06
4B046LB03
4B046LC02
4B046LC10
4B046LG29
(57)【要約】
【課題】茹で時間が短くても、小麦粉の自然な味・風味を強く感じ、粘弾性や中心の硬さの観点からも良好な麺類が得られる、乾麺類を提供すること。
【解決手段】本技術では、原料としてデュラム小麦から得られた小麦粉を含む小麦粉を含有し、且つ、当該原料に含まれるたん白質の一部が変性されている、以下の(a)及び(b)の特徴を有する、乾麺類用茹で時間短縮剤を提供する。
(a)粒子径735μm以上の粒子が2%以下、粒子径215μm以上の粒子が25%以上、且つ、中位粒子径が100~400μm、及び
(b)酢酸可溶たん白質含量が5~25質量%。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料としてデュラム小麦から得られた小麦粉を含む小麦粉を含有し、且つ、当該原料に含まれるたん白質の一部が変性されている、以下の(a)及び(b)の特徴を有する、乾麺類用茹で時間短縮剤。
(a)粒子径735μm以上の粒子が2%以下、粒子径215μm以上の粒子が25%以上、且つ、中位粒子径が100~400μm、及び
(b)酢酸可溶たん白質含量が5~25質量%。
【請求項2】
請求項1に記載の短縮剤を含有する、麺類用組成物。
【請求項3】
前記短縮剤が、麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%となるように含有される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の短縮剤、又は請求項2若しくは3に記載の組成物が用いられた、乾麺類。
【請求項5】
原料としてデュラム小麦から得られた小麦粉を含む小麦粉を含有し、且つ、当該原料に含まれるたん白質の一部が変性されている、以下の(a)及び(b)の特徴を有する、乾麺類用茹で時間短縮剤を麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%となるように添加する添加工程を含む、乾麺類の製造方法。
(a)粒子径735μm以上の粒子が2%以下、粒子径215μm以上の粒子が25%以上、且つ、中位粒子径が100~400μm、及び
(b)酢酸可溶たん白質含量が5~25質量%。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法を用いて製造された乾麺を茹で処理する工程を含む、麺類の製造方法。
【請求項7】
原料としてデュラム小麦から得られた小麦粉を含む小麦粉を含有し、且つ、当該原料に含まれるたん白質の一部が変性されている、以下の(a)及び(b)の特徴を有する、乾麺類用茹で時間短縮剤を麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%となるように添加する添加工程を含む、乾麺類の茹で時間短縮方法。
(a)粒子径735μm以上の粒子が2%以下、粒子径215μm以上の粒子が25%以上、且つ、中位粒子径が100~400μm、及び
(b)酢酸可溶たん白質含量が5~25質量%。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾麺類用茹で時間短縮剤、乾麺類用茹で時間短縮剤を含む麺類用組成物、及び乾麺類、乾麺類の製造方法、並びに乾麺類の茹で時間短縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、茹で時間が短くても喫食可能となる乾麺類について、様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、早茹ででわずかに芯の残る良好な食感に茹で上がり、茹で上がりの断面の形状が略円形になるという機能を付加する溝を麺線の縦方向に形成したスパゲッティが開示されている。また、特許文献2には、麺の原料小麦粉に対し、タピオカ澱粉と、小麦澱粉と、α化澱粉と、小麦蛋白とからなる改良剤を添加し、常法により製麺したことを特徴とする早茹で麺が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-17104号公報
【特許文献2】特開2001-321108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、茹で時間が短くても喫食可能となる乾麺類については、検討の余地が多く、例えば、特許文献1では、茹でた際に凹凸の線が残り、見栄えや食感が悪くなる場合があった。また、特許文献2では、喫食時に小麦粉の自然な味・風味が弱くなる場合があった。そのため、更なる改善が求められている。
【0006】
そこで、本技術では、茹で時間が短くても、小麦粉の自然な味・風味を強く感じ、粘弾性や中心の硬さの観点からも良好な麺類が得られる、乾麺類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、原料としてデュラム小麦から得られた小麦粉を含む小麦粉を含有し、且つ、当該原料に含まれるたん白質の一部が変性されている、下記の(a)及び(b)の特徴を有する乾麺類用茹で時間短縮剤を用いることで、茹で時間が短くても、小麦粉の自然な味・風味を強く感じ、粘弾性や中心の硬さの観点からも良好な麺類が得られる、乾麺類が提供できることを見出し、本技術を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本技術では、まず、原料としてデュラム小麦から得られた小麦粉を含む小麦粉を含有し、且つ、当該原料に含まれるたん白質の一部が変性されている、以下の(a)及び(b)の特徴を有する、乾麺類用茹で時間短縮剤を提供する。
(a)粒子径735μm以上の粒子が2%以下、粒子径215μm以上の粒子が25%以上、且つ、中位粒子径が100~400μm、及び
(b)酢酸可溶たん白質含量が5~25質量%。
また、前記短縮剤を含有する、麺類用組成物を提供する。この場合、前記短縮剤は、麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%含まれていてよい。
更に、前記短縮剤、又は前記麺類用組成物が用いられた、乾麺類も提供する。
【0009】
また、本技術では、原料としてデュラム小麦から得られた小麦粉を含む小麦粉を含有し、且つ、当該原料に含まれるたん白質の一部が変性されている、上記(a)及び(b)の特徴を有する、乾麺類用茹で時間短縮剤を麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%となるように添加する添加工程を含む、乾麺類の製造方法も提供する。
更に、前記製造方法を用いて製造された乾麺を茹で処理する工程を含む、麺類の製造方法も提供する。
【0010】
また、本技術では、原料としてデュラム小麦から得られた小麦粉を含む小麦粉を含有し、且つ、当該原料に含まれるたん白質の一部が変性されている、上記(a)及び(b)の特徴を有する、乾麺類用茹で時間短縮剤を麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%となるように添加する添加工程を含む、乾麺類の茹で時間短縮方法も提供する。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、茹で時間が短くても、小麦粉の自然な味・風味を強く感じ、粘弾性や中心の硬さの観点からも良好な麺類が得られる、乾麺類を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
<乾麺類用茹で時間短縮剤>
本技術に係る乾麺類用茹で時間短縮剤(以下、単に「本技術に係る短縮剤」とも称する。)は、原料としてデュラム小麦から得られた小麦粉を含む小麦粉を含有し、且つ、当該原料に含まれるたん白質の一部が変性されている、以下の(a)及び(b)の特徴を有する。
(a)粒子径735μm以上の粒子が2質量%以下、粒子径215μm以上の粒子が25質量%以上、且つ、中心粒子径が100~400μm、及び
(b)酢酸可溶たん白質含量が5~25質量%。
【0014】
本技術に係る短縮剤を用いることで、茹で時間が短くても、小麦粉の自然な味・風味を強く感じ、粘弾性や中心の硬さの観点からも良好な麺類が得られる、乾麺類を提供することができる。
【0015】
なお、本技術でいう「茹で時間の短縮」とは、一般的な乾麺類の茹で時間と比較して茹で時間を短縮できることをいう。従って、乾麺類の種類によって、短縮される茹で時間も異なる。例えば、茹で時間が、本技術に係る短縮剤を用いない場合は6分であるところ、本技術に係る短縮剤を用いた場合は、茹で時間を6分未満に短縮しても、粘弾性や中心の硬さが良好な麺類を得ることができる場合をいう。
【0016】
本技術に係る短縮剤を乾麺類に用いる方法に特に制限はなく、例えば、製造原料の一つとして生地調製時に添加して乾麺類を製造することができる。また、本技術に係る短縮剤と、麺類の他の材料とを用いて麺類用組成物(麺類用ミックス)を調製し、該麺類用組成物を用いて乾麺類を製造することもできる。
【0017】
(1)原料
本技術に係る短縮剤は、デュラム小麦から得られた小麦粉(セモリナ、ファリナを含む。)を含む小麦粉を含有する。特には、北米産デュラム小麦であることが好ましく、北米産デュラム小麦とは、北米を産地とするデュラム小麦を意味する。また、デュラム小麦から得られた小麦粉以外にも、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉等の小麦粉が原料に含まれていてもよい。好ましくは原料としてデュラム小麦から得られた小麦粉(セモリナ、ファリナを含む。)を含む小麦粉と水のみを含有することであり、より好ましくはデュラム小麦から得られた小麦粉がセモリナであることである。これらにより、茹でた際小麦粉の自然な味・風味をより付与した麺類が得られる、乾麺類となる。また、他の好ましい態様では、デュラム小麦から得られた小麦粉が、原料に含まれる原料粉100質量%のうち20質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、70質量%以上、80質量%以上としてもよい。原料粉におけるデュラム小麦から得られた小麦粉の割合が増えるほど、茹でた際小麦粉の自然な味・風味をより強く付与した麺類が得られる、乾麺類となる。
【0018】
なお、デュラム小麦から小麦粉を製造する方法としては、常法に従って実施され、例えば、精選した小麦粒を加水・調質(テンパリング)した後、ブレーキング工程、リダクション工程等を行ってもよい。また、ピーリング工程や一般的な粉砕機(石臼、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等)を用いた粉砕工程、分級工程を必要に応じて組合せてもよい。
【0019】
(2)粒度
本明細書において、粒子径735μm以上の粒子の割合、粒子径215μm以上の粒子の割合、中位粒子径は、体積基準の粒子径累積分布から決定することができ、レーザー回折式の粒度分布測定装置を用いて測定することができる。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置HELOS&RODOS(日本レーザー製)を用いて、フラウンホーファー回折によって体積基準の粒子径分布を得て、735μm以上の粒子径を有する粒子又は215μm以上の粒子径を有する粒子の体積基準の割合を算出する。また、粒子径分布における体積基準での積算分析曲線の50%に相当する粒子径を、「中位粒子径」として算出する。
【0020】
本技術に係る短縮剤は、粒子径735μm以上の粒子が2%以下であり、好ましくは1%以下であり、0.5%以下、0.3%以下であってもよい。2%を超えると、製麺性が悪くなる。また、粒子径215μm以上の粒子が25%以上であり、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上であり、45%以上、50%以上、55%以上であってもよい。粒子径215μm以上の粒子をこの範囲に調整することで、茹でた際小麦粉の自然な味・風味をより強く付与した麺類が得られる、乾麺類となる。一方、25%未満であると、茹で時間が短い場合粘弾性や中心の硬さの評価が低い麺類が得られる、乾麺類となる。
【0021】
また、本技術に係る短縮剤は、中位粒子径が100~400μmであり、好ましくは150~380μmであり、より好ましくは180~370μmであり、更に好ましくは200~360μmである。中位粒子径が400μmを超えると、製麺性が悪くなる。また、100μm未満であると、茹で時間が短い場合粘弾性や中心の硬さの評価が低い麺類が得られる、乾麺類となる。
【0022】
(3)酢酸可溶たん白質含量
本明細書において、「酢酸可溶たん白質含量(質量%)」とは、本技術に係る短縮剤中の酢酸に溶解するたん白質の含有量を下記の操作工程により測定し、算出された値である。
(i)試料2gを、100mL容量の三角フラスコに入れる。
(ii)上記(i)に0.05N酢酸を40mL加えて、振盪する(25℃、130rpm、60分間)。
(iii)三角フラスコの内容物を遠沈管に移して遠心分離(5000rpm、5分間)し、上層の液相と下層の残渣とに分離する。
(iv)上記で分離した上層を濾紙(Whatman、No.42)で吸引濾過して濾液を回収する。
(v)上記(ii)の三角フラスコに、0.05N酢酸40mLを入れてフラスコ壁面についた残渣を洗い流すように軽く撹拌し、内容物を遠沈管に移して遠心分離(5000rpm、5分間)し、上層の液相と下層の残渣とに分離する。
(vi)分離した上層の液相を濾紙(Whatman、No.42)で吸引濾過して回収した濾液を上記(iv)で回収した濾液と混合する。
(vii)濾液をイオン交換水にて100mLにメスアップする。
(viii)上記の操作で回収した濾液(小麦粉酢酸抽出液)は25mLを、試料は0.5gを、それぞれ分解に供する。分解は、ケルダール分析用分解促進剤(KJELTABS:フォス社製)1錠及び濃硫酸15mLを加えて、ケルダール分解器(ダイジェスター)にセットして行う。具体的には、小麦粉の酢酸抽出液の分解は250℃から加温し、30分毎に50℃ずつ420℃になるまで加温し、420℃になってから90分間加温して分解する。また、小麦粉の分解は420℃で150分加温し分解する。
(ix)分解により得られた試料それぞれに、イオン交換水を30mL加え、ケルダール蒸留滴定装置(スーパーケル1500/1550、アクタック社製)にセットして蒸留及び滴定を行う。
(x)下式に基づき、小麦粉酢酸抽出液と小麦粉の窒素量をそれぞれ求めた後、酢酸可溶たん白質含量(%)を算出する。
【0023】
【0024】
本技術に係る短縮剤は、酢酸可溶たん白質含量が5~25質量%である。5質量%未満であると、製麺性が低下する場合がある。また、25質量%を超えると、茹で時間短縮効果が低下する。酢酸可溶たん白質含量の好ましい範囲は10~24質量%であり、より好ましくは12~23質量%であり、更に好ましくは14~22質量%であり、特に好ましくは15~21質量%である。
【0025】
(4)製造例
本技術に係る短縮剤は、原料としてデュラム小麦から得られた小麦粉を含む小麦粉を含有し、当該原料に含まれるたん白質の一部が変性され、前記酢酸可溶たん白質含量となり、且つ、前記粒子径の範囲であれば、特に製造方法は限定されない。例えば、たん白質の一部を変性させる方法としては、加熱等であってよく、加熱方法も乾熱加熱や湿熱加熱、若しくは、その両方であってもよい。また、前記粒子径を満たす方法としては、所望の粒子径になるようにロールミル、ピンミル、気流式粉砕機等を用いて粉砕してもよく、篩や分級機等を用いて整粒してもよく、これらの方法を組み合わせてもよい。例えば、デュラム小麦から得られた小麦粉単独、又は、必要に応じて他の小麦粉を含む原料粉100質量部に、20~40質量部、好ましくは23~35質量部の水を加え、混捏して生地を調製し、30~110℃、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~90℃の環境下で生地の水分含量が8~17質量%、好ましくは9~15質量%、より好ましくは10~14質量%になるまで加熱する。その後、乾燥物を粉砕して篩に供すことによって得ることができる。
【0026】
本技術に係る短縮剤は、更に下記(c)の特徴を有していてもよい。
(c)損傷澱粉量が20質量%以下
【0027】
(5)損傷澱粉量
本明細書において、「損傷澱粉量(質量%)」とは、本発明に係る短縮剤中のα-アミラーゼによって分解される澱粉の含有量をAACC Method 76-31に従って測定し、算出された値である。具体的には、Starch Damage Assay Kit(MegaZyme製)を用いて、各試料100mgに、予め40℃で10分間プレインキュベートしたα-アミラーゼ溶液(Aspergillus oryzae由来、50unit/mL)を1mL添加して、撹拌した後、40℃で10分間処理する。次いで、クエン酸-リン酸水溶液(pH2.5)を5mL添加して反応を停止させ、遠心分離(1000g、5分間)して上清を得る。この上清0.1mLにアミログルコシダーゼ溶液(Aspergillus niger由来、2unit/0.1mL)を添加して40℃で20分間処理した後、510nmで吸光度を測定し、得られた吸光度から生成したグルコース量を算出し、試料中に含まれる損傷澱粉量を算出する。
【0028】
本技術に係る短縮剤の損傷澱粉量は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されないが、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは4~20質量%であり、更に好ましくは5~15質量%であり、より更に好ましくは5.5~12質量%であり、5.7~10.5質量%、5.8~10質量%としてもよい。本技術に係る短縮剤の損傷澱粉量を上記範囲とすることで、製麺性がより向上する。
【0029】
<麺類用組成物>
本技術に係る短縮剤は、本技術の効果を損なわない限り、麺類の材料と共に麺類用組成物として流通させることができる。即ち、麺類用ミックスとして流通させることができる。
本技術に係る麺類用組成物に用いる麺類の材料としては、小麦粉(強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉)、デュラム小麦粉、米粉、そば粉、大麦粉、ライ麦粉、オーツ麦粉、トウモロコシ粉、ひえ粉、あわ粉、大豆粉、及びホワイトソルガム粉等の穀粉類(これらの穀粉類に加熱処理などを施したものも含む。);小麦澱粉、大麦澱粉、ライ麦澱粉、エンバク澱粉などの麦類澱粉、トウモロコシ澱粉、米澱粉、豆類澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ヒシ澱粉、クリ澱粉、サゴ澱粉、ナガイモ澱粉、レンコン澱粉、クワイ澱粉、ワラビ澱粉、ユリネ澱粉、アミロメイズ澱粉等の澱粉、及びそれらの澱粉を原料として、物理的及び/又は化学的に加工を施した加工澱粉等の澱粉類が挙げられる。その他材料としては、食塩やその他の塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等);イーストフード(例えば、無機フード、有機フード、酵素系フード等);油脂類(例えば、ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油(例えば、オリーブオイル、菜種油、大豆油、紅花油等)、粉末油脂、折り込み油脂等);糖類(例えば、トレハロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、砂糖、マルトース、イソマルトース等の糖類;ソルビト-ル、マルチトール、パラチニット、還元水飴等の糖アルコール;デキストリン;オリゴ糖等);乳製品(例えば、牛乳、粉乳類(脱脂粉乳を含む。)、クリーム類、チーズ類、ヨーグルト等);卵製品;増粘剤(例えば、キサンタンガム、グアガム、アルギン酸エステル、ペクチン、タマリンドシードガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアガム、ガラクトマンナン、ジェランガム等の増粘多糖類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピレングリコール等);膨張剤(例えば、重曹、炭酸アンモニウム、ベーキングパウダー等);乳化剤(例えば、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等);酵素類;製パン改良剤;かんすい;調味料;保存料;アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸等);着色料、又は香料等が挙げられる。
本技術おいて、麺類用組成物中の本技術に係る短縮剤の含有量は、麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%であり、好ましくは7~21質量%、より好ましくは8~18質量%、更に好ましくは9~17質量%である。麺類用組成物中の本技術に係る短縮剤の含有量を、麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%とすることで、茹で時間が短くても、小麦粉の自然な味・風味を強く感じ、粘弾性や中心の硬さの観点からも良好な麺類が得られる、乾麺類となる。なお、本発明において、「粉体材料」とは、麺類用生地を調製する際に用いる粉状の材料(短縮剤を含む。)をいうが、水などの液状材料に溶解又は分散させてから他の材料と混合する材料(例えば、実施例における塩など)は、麺類に用いられる粉体材料には含まないものとする。
以上説明した麺類用組成物中の本技術に係る短縮剤の含有量は、麺類に用いられる粉体材料100質量%当たりの量である。即ち、麺類用生地を調製する際に、麺類用組成物に更に粉体材料を加えて製造する場合には、麺類用組成物に含有する粉体材料と製造時に加える粉体材料を合わせた100質量%当たりの量であるため、麺類用組成物中の短縮剤の含有量は、前述の数値よりも大きくなる。
【0030】
<乾麺類>
本明細書における乾麺類とは、中華麺やスパゲッティ、マカロニなどのパスタ類に用いられる麺線はもちろん、ワンタンやラザニアなどに用いられる麺皮類を包含する概念である麺類を乾燥させたもので、乾麺、半乾燥麺、半生麺、即席麺等であり、好ましくは、乾麺、半乾燥麺、半生麺、より好ましくは乾麺である。本明細書において、乾麺とは、麺生地を成形して所定の形状とした後に、水分含量が16質量%以下、好ましくは14.5質量%以下、より好ましくは14.0質量%以下にまで乾燥させた麺類である。また、本明細書における乾麺類は、本発明の効果が得られ易い点で、茹で時間が3分以上の乾麺類が好ましく、茹で時間が4分以上の乾麺類がより好ましい。麺類の具体例としては、中華麺、うどん、冷麦、素麺、そば、パスタ、マカロニ等の麺類、ワンタン等の皮、ラザニアシート、又はその類似品(例えば、米粉主体で製造された米粉パスタのように、従来の麺類とは異なる穀粉類や澱粉類が原料の主体となって製造される麺類や麺皮類を模したもの)等が挙げられる。上述したように、本技術によれば、茹で時間が短くても、小麦粉の自然な味・風味を強く感じ、粘弾性や中心の硬さの観点からも良好な麺類が得られる、乾麺類を提供することができる。
【0031】
また、本明細書において、麺類は、調理前の麺類と調理済の麺類の両方を包含する概念である。調理済の麺類を調製する場合は、麺帯や麺線などの未調理の麺類を、湯の中で茹でるなどして調理すればよい。麺類の調理方法は特に制限されないが、茹でて調理することはもちろん、油ちょうや蒸し、電子レンジなどによって調理してもよく、喫食可能になるまで麺類をα化すればよい。即ち、本発明に係る乾麺類は、調理前の麺類を乾燥させたものでもよいし、調理済の麺類を乾燥させたものであってもよい。好ましくは、調理前の麺類を乾燥させたものである。
【0032】
本技術に係る乾麺類は、上述した本技術に係る短縮剤、又は本技術に係る麺類用組成物を、製造原料の一部又は全部として製造することで得られる。本技術において、麺類用生地は、通常の麺類用生地の調製方法に準じて調製することができる。例えば、上述した麺類用組成物に、水、塩などを配合して混練し、麺類用生地を調製することができる。また、中華麺用生地を調製する場合には、更に、かんすいなどを配合してもよい。
麺類用生地を調製する際の水の量は、麺類の種類にもよるが、通常は、麺類に用いられる粉体材料100質量部に対し、水25~50質量部とすることが好ましく、水28~48質量部とすることがより好ましい。当該質量比において、粉体材料に含まれる水分は「水」ではなく「粉体材料」を構成するものとする。
【0033】
本技術に係る麺類は、圧延製麺、ロール式製麺、押出式製麺などの公知の製麺方法によって製造することができる。本技術の一つの態様において、麺類用生地は、圧延され、所望の厚さの麺帯とされる。当該圧延は、麺類用生地を圧延ロールに通すことで行われる。次いで、製麺機などを用いて麺帯を切り出して麺線とし、この麺線を所望の長さに切断することにより生麺を得ることができる。また、型抜き機などを用いて麺帯から麺皮を得ることができる。
本技術の一つの態様において、麺類用生地を引き伸ばしたり撚ったりして麺線を得てもよく、また、麺類用生地を穴などから押し出して麺類を製造してもよい。一般に、スパゲッティやマカロニなどの麺類は、麺類用生地を押し出して製造することが多い。また本技術においては、機械を用いて製麺してもよく、機械を用いずに手延べや手打ちによって製麺してもよい。
本技術に係る乾麺類は、例えば、前記生麺を、調湿乾燥法などにより乾燥することにより、乾麺、半乾燥麺、半生麺が得られ、好ましくは水分が16質量%以下の乾麺である。また、例えば、蒸し処理又は茹で処理を行った後、フライ用バスケット又は乾燥用バスケットに一食ずつ成形充填し、フライ又は高温熱風乾燥処理すれば即席麺が得られる。
【0034】
<乾麺類の製造方法、乾麺類の茹で時間短縮方法>
本技術に係る乾麺類の製造方法(以下、単に「本技術に係る製造方法」とも称する。)、或いは本技術に係る乾麺類の茹で時間短縮方法(以下、単に「本技術に係る短縮方法」と称する。)は、上述した本技術に係る短縮剤を添加する添加工程を含む。
【0035】
本技術に係る製造方法、或いは本技術に係る短縮方法において、上述した本技術に係る短縮剤を添加する方法や、添加するタイミングについては、特に限定されない。例えば、慣用的に採用される調理方法や改質方法に基づいて、麺類の製造に用いる製造原料に代えて、又はその一部とともに、上述した本技術に係る短縮剤を製造原料の一つとして添加したり、本技術に係る短縮剤を含有する麺類用組成物を予め調製した上で、当該麺類用組成物を用いて麺類用生地を調製することができる。
【0036】
添加工程における本技術に係る短縮剤は、麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%となるように添加する。好ましくは麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり7~21質量%、より好ましくは8~18質量%、更に好ましくは9~17質量%となるように添加する。本技術に係る短縮剤の添加量を、麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%となるように添加することで、茹で時間が短くても、小麦粉の自然な味・風味を強く感じ、粘弾性や中心の硬さの観点からも良好な麺類が得られる、乾麺類を提供することができる。
また、一つの観点から、本発明は、上記の乾麺類の製造方法を用いて製造された乾麺を茹で処理する工程を含む、麺類の製造方法である。
【実施例0037】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0038】
<実験例1:乾麺類用茹で時間短縮剤の調製>
実験例1では、下記表1に示すように、異なる原料粉から乾麺類用茹で時間短縮剤を調製した。
各原料粉100質量部に水28質量部を加えて混捏し、生地を調製した。その生地を、80℃の環境下で生地の水分含量が13質量%になるまで加熱した。その後、加熱した生地を、ピンミルを用いて条件を変更して粉砕し、短縮剤1~7を得た。なお、強力粉は、キングスター(昭和産業株式会社)を用いた。また、短縮剤8として、北米産デュラム小麦のセモリナ(セモリナ、昭和産業株式会社)を用いた。
各短縮剤の粒度、酢酸可溶たん白質含量、及び損傷澱粉量をあわせて下記表1に記載する。なお、粒度、酢酸可溶たん白質含量、及び損傷澱粉量は、上述した方法により測定した。
【0039】
【0040】
<実験例2:中華麺への応用とその評価(1)>
実験例2では、乾麺類の一例として、中華麺の乾麺を製造し、評価した。
【0041】
(1)中華麺の乾麺の製造
横型ピンミキサーを用いて、準強力粉(芳蘭、昭和産業株式会社)と短縮剤1~8を下記表2に示す配合(質量部)で混合し、麺類用組成物を調製した。この麺類用組成物100質量部に、塩1質量部、かんすい1質量部、水35質量部を添加して混合した後、15分間ミキシングし、麺類用生地を作製した。作製した生地を、ロール式製麺機にて圧延してから切り出し(切り刃:角20番)、麺線の厚みが1.5mmの生麺(中華麺)を製造した。製造した生麺を竿に吊るした状態で乾燥室(温度25~40℃、湿度60~70%)に入れ、17時間乾燥させて、乾麺(中華麺)を製造した。
乾麺を、沸騰水中で下記表2に示した茹で時間で茹で、温かいスープ(「醤油ラーメンスープ」株式会社創味食品)に入れ、中華麺を製造した。
【0042】
(2)評価
10人の専門パネルによって製麺性、麺類の味・風味、粘弾性、中心の硬さを評価した。評価方法は、製麺性については、下記の基準に基づいて2段階で実施し、合議で決定した。麺類の味・風味、粘弾性、中心の硬さについては、下記の基準に基づいて5段階で実施、平均点を算出した。なお、製麺性は、生麺の製造時に評価し、麺類の味・風味、粘弾性、中心の硬さは、乾麺を茹でた直後の麺類を評価した。
【0043】
[製麺性]
2:製麺性に問題なし
1:麺帯の表面に荒れが生じる(製麺性が悪い)
【0044】
[味・風味]
5:小麦粉の自然な味・風味が強く感じられ、非常に良好
4:小麦粉の自然な味・風味が一般的な茹で時間で茹でて得られた麺類(参考例1、3、5、7)より感じられ、良好
3:小麦粉の自然な味・風味が一般的な茹で時間で茹でて得られた麺類(参考例1、3、5、7)と同程度で、やや良好
2:小麦粉の自然な味・風味が一般的な茹で時間で茹でて得られた麺類(参考例1、3、5、7)よりわずかに弱い(やや劣る)
1:小麦粉の自然な味・風味が一般的な茹で時間で茹でて得られた麺類(参考例1、3、5、7)より弱い(劣る)
【0045】
[粘弾性]
5:粘弾性が一般的な茹で時間で茹でて得られた麺類(参考例1、3、5、7)と同程度に強く、非常に良好
4:粘弾性が強く、良好
3:粘弾性がやや強く、やや良好
2:粘弾性が一般的な茹で時間より短縮した時間で茹でて得られた麺類(参考例2、4、6、8)と同程度に弱い(やや劣る)
1:粘弾性が一般的な茹で時間より短縮した時間で茹でて得られた麺類(参考例2、4、6、8)より弱い(劣る)
【0046】
[中心の硬さ]
5:一般的な茹で時間で茹でて得られた麺類(参考例1、3、5、7)と同程度の中心の硬さで、非常に良好
4:適度な中心の硬さで、良好
3:やや適度な中心の硬さで、やや良好
2:中心の硬さが、一般的な茹で時間より短縮した時間で茹でて得られた麺類(参考例2、4、6、8)と同程度に硬い、または、中心がやや軟らかい(やや劣る)
1::中心の硬さが、一般的な茹で時間より短縮した時間で茹でて得られた麺類(参考例2、4、6、8)より硬い、または、中心が軟らかい(劣る)
【0047】
(3)結果
結果を、下記表2に示す。
【0048】
【0049】
(4)考察
上記表2の結果から、原料としてデュラム小麦から得られた小麦粉を含む小麦粉を含有し、(a)粒子径735μm以上の粒子が2%以下、粒子径215μm以上の粒子が25%以上、且つ、中心粒子径が100~400μmであり、(b)酢酸可溶たん白質含量が5~25質量%である、短縮剤1~5を用いた中華麺(実施例1~5)は、製麺性に問題なく、また、茹で時間が短くても、小麦粉の自然な味・風味を強く感じ、粘弾性や中心の硬さの観点からも良好であった。一方、粒子径735μm以上の粒子が2%を超え、中位粒子径が400μmを超える短縮剤6を用いた中華麺(比較例1)は、製麺性に問題があり、また、小麦粉の自然な味・風味を強く感じたが、粘弾性や中心の硬さの評価が低かった。粒子径215μm以上の粒子が25%未満で、中心粒子径が100μm未満である短縮剤7を用いた中華麺(比較例2)は、製麺性に問題なく、また、小麦粉の自然な味・風味を強く感じたが、粘弾性や中心の硬さの評価が低かった。酢酸可溶たん白質含量が25質量%を超える短縮剤8を用いた中華麺(比較例3)は、製麺性に問題なく、また、小麦粉の自然な味・風味を強く感じたが、粘弾性や中心の硬さの評価が低かった。
【0050】
<実験例3:中華麺への応用とその評価(2)>
実験例3では、麺類の一例として、実験例2と同様に、中華麺を製造し、評価した。
【0051】
(1)中華麺の製造
下記表3に記載する材料を用い、上述した方法と同様の方法にて、中華麺を製造した。
【0052】
(2)評価
製造した中華麺の製麺性、麺類の味・風味、粘弾性、中心の硬さについて、実験例2と同様の方法で評価した。
【0053】
(3)結果
結果を、下記表3に示す。
【0054】
【0055】
(4)考察
上記表3の結果から、本技術に係る短縮剤(短縮剤1)を麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%となるように添加した中華麺(実施例1及び6~8)は、製麺性に問題なく、また、茹で時間が短くても、小麦粉の自然な味・風味を強く感じ、粘弾性や中心の硬さの観点からも良好であった。一方、本技術に係る短縮剤(短縮剤1)を麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり25質量%となるように添加した中華麺(比較例4)は、製麺性に問題なく、また、小麦粉の自然な味・風味を強く感じたが、粘弾性や中心の硬さの評価が低かった。
【0056】
<実験例4:うどんへの応用とその評価>
実験例4では、麺類の一例として、うどんを製造し、評価した。
【0057】
(1)うどんの製造
横型ピンミキサーを用いて、中力粉(北海道100、昭和産業)と短縮剤を下記表4に示す配合(質量部)で混合し、麺類用組成物を調製した。この麺類用組成物100質量部に、塩5質量部、水32質量部を添加して混合した後、15分間ミキシングし、麺類用生地を作製した。作製した生地を、ロール式製麺機にて圧延してから切り出し(切刃:角10番)、麺線の厚みが1.6mmの生麺(うどん)を製造した。製造した生麺を竿に吊るした状態で乾燥室(温度25~40℃、湿度60~70%)に入れ、17時間乾燥させて、乾麺(うどん)を製造した。
乾麺を、沸騰水中で下記表4に示した茹で時間で茹で、冷水で冷却、水切りし、めんつゆ(本つゆ、キッコーマン株式会社)を同温度の水で3倍希釈したものをかけ、うどんを製造した。
【0058】
(2)評価
製造したうどんの製麺性、麺類の味・風味、粘弾性、中心の硬さについて、実験例2と同様の方法で評価した。
【0059】
(3)結果
結果を、下記表4に示す。
【0060】
【0061】
(4)考察
上記表4の結果から、本技術に係る短縮剤(短縮剤1)を麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%となるように添加したうどん(実施例9)は、製麺性に問題なく、また、茹で時間が短くても、小麦粉の自然な味・風味を強く感じ、粘弾性や中心の硬さの観点からも良好であった。
【0062】
<実験例5:そばへの応用とその評価>
実験例5では、乾麺類の一例として、そばを製造し、評価した。
【0063】
(1)そばの製造
横型ピンミキサーを用いて、強力粉(赤ネオン、昭和産業)とそば粉(金寿(月)、日穀製粉株式会社)、短縮剤を下記表5に示す配合(質量部)で混合し、麺類用組成物を調製した。この麺類用組成物100質量部に、塩2質量部、水32質量部を添加して混合した後、15分間ミキシングし、麺類用生地を作製した。作製した生地を、ロール式製麺機にて圧延してから切り出し(切刃:角14番)、麺線の厚みが1.4mmの生麺(そば)を製造した。製造した生麺を竿に吊るした状態で乾燥室(温度25~40℃、湿度60~70%)に入れ、17時間乾燥させて、乾麺(そば)を製造した。
乾麺を、沸騰水中で下記表5に示した茹で時間で茹で、冷水で冷却、水切りし、めんつゆ(本つゆ、キッコーマン株式会社)を同温度の水で3倍希釈したものをかけ、そばを製造した。
【0064】
(2)評価
製造したそばの製麺性、麺類の味・風味、粘弾性、中心の硬さについて、実験例2と同様の方法で評価した。
【0065】
(3)結果
結果を、下記表5に示す。
【0066】
【0067】
(4)考察
上記表4の結果から、本技術に係る短縮剤(短縮剤1)を麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%となるように添加したそば(実施例10)は、製麺性に問題なく、また、茹で時間が短くても、小麦粉の自然な味・風味を強く感じ、粘弾性や中心の硬さの観点からも良好であった。
【0068】
<実験例6:パスタへの応用とその評価>
実験例6では、乾麺類の一例として、パスタを製造し、評価した。
【0069】
(1)パスタの製造
横型ピンミキサーを用いて、北米産デュラム小麦のセモリナ(セモリナ、昭和産業株式会社)と短縮剤を下記表6に示す配合(質量部)で混合し、麺類用組成物を調製した。この麺類用組成物100質量部に水26質量部を添加して混合した後、10分間ミキシングし、麺類用生地を作製した。作製した生地を、押出式製麺機にて、真空度80Mkp以上の条件下で、直径1.7mmのダイスを用いて、生麺(パスタ)を製造した。製造した生麺を竿に吊るした状態で75℃で8時間乾燥し、乾麺(パスタ)を製造した。
【0070】
(2)評価
製造したパスタの製麺性、麺類の味・風味、粘弾性、中心の硬さについて、実験例2と同様の方法で評価した。
【0071】
(3)結果
結果を、下記表6に示す。
【0072】
【0073】
(4)考察
上記表6の結果から、本技術に係る短縮剤(短縮剤1)を麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり4~22質量%となるように添加したパスタ(実施例11~14)は、製麺性に問題なく、また、茹で時間が短くても、小麦粉の自然な味・風味を強く感じ、粘弾性や中心の硬さの観点からも良好であった。一方、本技術に係る短縮剤(短縮剤1)を穀粉100質量%当たり2質量%となるように添加したパスタ(比較例5)は、製麺性に問題なく、味・風味は良好であったが、粘弾性や中心の硬さの評価が低かった。また、本技術に係る短縮剤(短縮剤1)を麺類に用いられる粉体材料100質量%当たり25質量%となるように添加したパスタは、製麺性に問題なく、味・風味は良好であったが、粘弾性や中心の硬さの評価が低かった。