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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151491
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】金属構造体および冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/04 20060101AFI20231005BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20231005BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20231005BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20231005BHJP
   F28D 15/02 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
F28D15/04 A
F28D15/04 G
F28F21/08 A
F28F21/08 E
F28F21/08 F
F28F21/08 G
H01L23/46 B
H01L23/46 A
H05K7/20 Q
F28D15/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061115
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 智明
(72)【発明者】
【氏名】反町 真人
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA11
5E322DB06
5E322FA01
5E322FA04
5F136CC12
5F136CC34
(57)【要約】
【課題】作動流体が流動し易い流路を有するとともに、所望の厚さに調整することが可能であり、かつ作動流体の沸騰を促進するキャビティ構造を有する金属構造体と、それを用いた冷却装置を提供する。
【解決手段】金属構造体1は、熱源から発生する熱が伝達される伝熱面2aを有する第1金属部2と、第1金属部2に対向する放熱面3a、3bを有する第2金属部3と、第1金属部2と第2金属部3の間に間隔をおいて配設され、内部に空洞51が形成され、表面に空洞51に連通する開口52を有する複数の柱状金属部5と、複数の柱状金属部5同士の間に形成される複数本の連通溝6と、これらの連通溝6内に、連通溝6に沿って延在する複数の金属フィン部7とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源から発生する熱が伝達される伝熱面を有する第1金属部と、
前記第1金属部に対向する放熱面を有する第2金属部と、
前記第1金属部と前記第2金属部の間に間隔をおいて配設され、内部に空洞が形成され、表面に前記空洞に連通する開口を有する複数の柱状金属部と、
前記複数の柱状金属部同士の間に形成される複数本の連通溝と、
前記連通溝内に、前記連通溝に沿って延在する複数の金属フィン部と
を備えることを特徴とする金属構造体。
【請求項2】
前記第1金属部、前記第2金属部、前記柱状金属部および前記金属フィン部のうち少なくともいずれかは、銅系材料、鉄系材料、アルミニウム系材料およびチタン系材料の群から選択される少なくとも1種の材料を含む金属粉の焼結体からなる、請求項1に記載の金属構造体。
【請求項3】
前記複数本の連通溝は、互いに交差する交差部を有し、
前記交差部は、交差している前記連通溝同士の高さを異ならせて配設した立体交差構造で構成されている、請求項1または2に記載の金属構造体。
【請求項4】
前記第2金属部は、前記放熱面に、前記連通溝の交差部に対応して第1放熱面開口を有する、請求項3に記載の金属構造体。
【請求項5】
前記柱状金属部の空洞は、前記柱状金属部の前記第2金属部に面する開口を介して、前記第2金属部の放熱面に設けられた第2放熱面開口に連通する、請求項4に記載の金属構造体。
【請求項6】
前記柱状金属部の空洞は、前記柱状金属部の開口を介して前記連通溝に連通する、請求項1から5のいずれか1項に記載の金属構造体。
【請求項7】
前記柱状金属部は、前記空洞のうち、前記空洞の最大横断面寸法が前記柱状金属部の開口寸法よりも大きな空洞である特定空洞を少なくとも1個有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の金属構造体。
【請求項8】
前記金属フィン部は、前記第1金属部に熱的に接続される、請求項1から7のいずれか1項に記載の金属構造体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の金属構造体を備える冷却装置。
【請求項10】
前記冷却装置は、ベーパーチャンバ、沸騰型冷却装置またはヒートパイプである、請求項9に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属構造体および冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化に伴い、電子機器内部には、電気・電子部品等の発熱体(以下、単に「発熱体」という場合がある。)が高密度に搭載され、また、発熱体の発熱量が増大化する傾向がある。発熱体の温度が、所定の許容温度を超えて上昇すると、発熱体が誤作動等を起こす原因となることから、発熱体の温度は、常に許容温度以下に維持し続けることが必要である。そのため、電子機器内部には、通常、発熱体を冷却する冷却装置が搭載されている。このような冷却装置としては、例えば、作動流体を液相から気相に相変化させることによる潜熱(気化熱)を利用したベーパーチャンバやヒートパイプ、沸騰冷却装置(沸騰型冷却装置)などが知られている。
【0003】
このうち、ベーパーチャンバやヒートパイプとしては、作動流体が封入された内部空間を有する管状容器(コンテナ)を備えるものが一般的である。ここで、管状容器としては、一端側部分に、液相の作動流体を蒸発させて気相の作動流体に相変化させる蒸発面を備えた蒸発部を有し、他端側部分に、気相の作動流体を凝縮させて液相の作動流体に相変化させる凝縮部を有するものが挙げられる。このとき、蒸発部で液相から気相に相変化させた作動流体は、蒸発部から凝縮部に流動する。また、凝縮部で気相から液相に相変化した作動流体は、凝縮部から蒸発部に流動する。ベーパーチャンバやヒートパイプは、このような蒸発部と凝縮部の間での作動流体の循環流れによって、管状容器内の蒸発部から凝縮部に熱輸送を行なうものである。
【0004】
また、沸騰型冷却装置(CVC)としては、略直方体あるいは平面型のコンテナに流体を封入した構造を有し、電子部品等の発熱体を接触させて取り付けたコンテナの外面に対応する内面部分が蒸発部の蒸発面となるものが挙げられる。ここで、封入された流体は、蒸発部において発熱体から受けた熱によって蒸発し、気相となった流体は、蒸発部の上方に位置する凝縮部を貫通させた配設した冷却管やヒートパイプによって冷却されて、液相に相変化する。
【0005】
冷却装置における蒸発面として、例えば、金属粉の焼結体からなる多孔質金属の構造体(伝熱部材)を備える構成が挙げられる。このうち、多孔質金属として、例えば特許文献1には、金属リガメントと第1細孔とを含み、金属リガメントには第1細孔より小さい第2細孔が形成されており、金属リガメントの表面積は65m/g以上である多孔質金属が記載されている。この多孔質金属は、複数の繊維を有する網状構造体に金属を付着させる工程と、金属から第1細孔を有する合金を形成する工程と、合金のうち一部の金属を選択的に除去することにより、第1細孔と第1細孔より小さい第2細孔とを含む多孔質金属を形成する工程を含む方法によって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-169429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、金属粉の焼結体からなる多孔質金属の構造体は、作動流体の流路が複雑な形状を有することで、気相や液相の作動流体が流動し難く、また、多孔質金属の内部に作動流体の沸騰を促進するキャビティ構造を形成することも困難である。さらに、特許文献1に記載されるような、網状構造体の表面に金属層を付着させる多孔質金属では、得られる多孔質金属の厚さを大きくしようとすると第1細孔が塞がるため、多孔質金属の厚さを所望の厚さに調整することも困難である。
【0008】
本発明は、作動流体が流動し易い流路を有するとともに、所望の厚さに調整することが可能であり、かつ作動流体の沸騰を促進するキャビティ構造を有する金属構造体と、それを用いた冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
【0010】
(1)熱源から発生する熱が伝達される伝熱面を有する第1金属部と、前記第1金属部に対向する放熱面を有する第2金属部と、前記第1金属部と前記第2金属部の間に間隔をおいて配設され、内部に空洞が形成され、表面に前記空洞に連通する開口を有する複数の柱状金属部と、前記複数の柱状金属部同士の間に形成される複数本の連通溝と、前記連通溝内に、前記連通溝に沿って延在する複数の金属フィン部とを備えることを特徴とする金属構造体。
【0011】
(2)前記第1金属部、前記第2金属部、前記柱状金属部および前記金属フィン部のうち少なくともいずれかは、銅系材料、鉄系材料、アルミニウム系材料およびチタン系材料の群から選択される少なくとも1種の材料を含む金属粉の焼結体からなる、上記(1)に記載の金属構造体。
【0012】
(3)前記複数本の連通溝は、互いに交差する交差部を有し、前記交差部は、交差している前記連通溝同士の高さを異ならせて配設した立体交差構造で構成されている、上記(1)または(2)に記載の金属構造体。
【0013】
(4)前記第2金属部は、前記放熱面に、前記連通溝の交差部に対応して第1放熱面開口を有する、上記(3)に記載の金属構造体。
【0014】
(5)前記柱状金属部の空洞は、前記柱状金属部の前記第2金属部に面する開口を介して、前記第2金属部の放熱面に設けられた第2放熱面開口に連通する、上記(4)に記載の金属構造体。
【0015】
(6)前記柱状金属部の空洞は、前記柱状金属部の開口を介して前記連通溝に連通する、上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の金属構造体。
【0016】
(7)前記柱状金属部は、前記空洞のうち、前記空洞の最大横断面寸法が前記柱状金属部の開口寸法よりも大きな空洞である特定空洞が少なくとも1個有する、上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の金属構造体。
【0017】
(8)前記金属フィン部は、前記第1金属部に熱的に接続される、上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の金属構造体。
【0018】
(9)上記(1)から(8)のいずれか1項に記載の金属構造体を備える冷却装置。
【0019】
(10)前記冷却装置は、ベーパーチャンバ、沸騰型冷却装置またはヒートパイプである、上記(9)に記載の冷却装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、作動流体が流動し易い流路を有するとともに、所望の厚さに調整することが可能であり、かつ作動流体の沸騰を促進するキャビティ構造を有する金属構造体と、それを用いた冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施形態に係る金属構造体を概略的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る金属構造体から、第2金属部を取り除いて、柱状金属部や連通溝、金属フィン部の状態がわかるように示したときの図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る金属構造体の側面図である。
図4図4は、図3に示す金属構造体を構成する1つの柱状金属部に形成されている空洞および開口のサイズ(寸法)を説明するための拡大図である。
図5図5は、他の実施形態に係る金属構造体を構成する、空洞および開口を有する柱状金属部、交差部を有する連通溝、および金属フィンの位置関係を説明するための図であって、図5(a)が、複数本の連通溝同士が約60°で交差する場合、図6(b)が、複数本の連通溝のそれぞれの湾曲部同士が交差する場合を示す。
図6図6は、他の実施形態に係る金属構造体の側面図である。
図7図7は、本発明に従う金属構造体を有する冷却装置の一例である沸騰型冷却装置の内部を透視して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る金属構造体を概略的に示す斜視図、図2は、本発明の実施形態に係る金属構造体から、第2金属部を取り除いて、柱状金属部や連通溝、金属フィン部の状態がわかるように示したときの図、図3は、本発明の実施形態に係る金属構造体の側面図、そして、図4は、図3に示す金属構造体を構成する1つの柱状金属部に形成されている空洞および開口のサイズ(寸法)を説明するための拡大図である。
【0024】
金属構造体1は、図1図3に示すように、熱源から発生する熱が伝達される伝熱面2aを有する第1金属部2と、第1金属部2に対向する放熱面3a、3bを有する第2金属部3と、第1金属部2と第2金属部3の間に間隔をおいて配設され、内部に空洞51が形成され、表面に空洞51に連通する開口52を有する複数の柱状金属部5と、複数の柱状金属部5同士の間に形成される複数本の連通溝6と、これらの連通溝6内に、連通溝6に沿って延在する複数の金属フィン部7とを備える。
【0025】
これにより、複数の柱状金属部5同士の間に連通溝6が形成され、かつ連通溝6内に、連通溝に沿って延在する金属フィン部7を有することで、連通溝6と金属フィン部7によって作動流体の流路が形成されるため、金属構造体1の内部における作動流体の流動を促進することができる。また、第1金属部2や、第1金属部2に対向する第2金属部3は、厚さを調整することが可能なため、連通溝6による作動流体の流路を有しながらも、金属構造体1の厚さを、所望の厚さに調整することができる。また、柱状金属部5の内部に空洞51が形成され、この空洞51に連通する開口52を有することによって、開口52を通じて空洞51の内部に供給された作動流体を、第1金属部2から柱状金属部5に伝わる熱で効率よく加熱して、作動流体の液相から気相への相変化を促進することができる。したがって、作動流体が流動し易い流路を有するとともに、金属構造体1の厚さを所望の厚さに調整することが可能であり、かつ作動流体の沸騰を促進するキャビティ構造を有する金属構造体と、それを用いた冷却装置を提供することができる。
【0026】
金属構造体1は、図1に示すように、第1金属部2と、第2金属部3と、柱状金属部5と、連通溝6と、金属フィン部7とを、少なくとも有する。
【0027】
ここで、第1金属部2、第2金属部3、柱状金属部5および金属フィン部7のうち少なくともいずれかは、銅系材料、鉄系材料、アルミニウム系材料およびチタン系材料の群から選択される、少なくとも1種の材料(金属材料)を含む金属粉の焼結体からなることが好ましく、少なくとも1種の金属材料からなる金属粉の焼結体からなることがより好ましい。これにより、これらの部分のうち、金属粉の焼結体からなる部分の熱伝導率が高められるため、熱源から発生する潜熱で、液相の作動流体を、速やかに気相に相変化させることができる。また、後述する連通溝6などにおいて、毛細管現象による液相の作動流体の流動が起こりやすくなるため、作動流体をより流動し易くすることができる。
【0028】
(第1金属部)
第1金属部2は、熱源から発生する熱が伝達される伝熱面2aを有する。これにより、熱源が第1金属部2に熱的に接続されたときに、熱源から発生する熱が、伝熱面2aを介して第1金属部2に伝えられる。
【0029】
第1金属部2は、熱源からの熱を、後述する柱状金属部5と連通溝6に伝達する。このとき、柱状金属部5に伝達した熱の一部が、後述する第2金属部3に伝達されて、第2金属部3の放熱面3a、3bを通じて放熱する。これらの熱の流れによって、連通溝6を流通する作動流体が、連通溝6の溝側面を形成する柱状金属部5と、連通溝6の底面を形成する第1金属部の上面2bと、第2金属部3の放熱面3aとによって加熱される。
【0030】
(第2金属部)
第2金属部3は、柱状金属部5を挟んで第1金属部2と対向するように設けられる。より具体的に、第2金属部3は、第1金属部2に対向して設けられ、その表面に放熱面3a、3bを有する。これにより、柱状金属部5から第2金属部3に伝達した熱が放熱面3a、3bに伝達されるため、放熱面3a、3bの近傍で作動流体を加熱することができる。
【0031】
第2金属部3は、放熱面3bに、後述する第1放熱面開口81および第2放熱面開口82のうち一方または両方を有することが好ましい。ここで、第1放熱面開口81は連通溝6に、第2放熱面開口82は空洞51に、それぞれ通じていることが好ましい。
【0032】
第1金属部2の厚さtと、第2金属部3の厚さtは、所望とされる金属構造体1の厚さに応じて調整することが可能である。そのため、金属構造体1は、連通溝6によって作動流体の流路が確保された状態で、第1金属部2および第2金属部3の厚さを調整することで、所望の厚さのものを構成することができる。
【0033】
(柱状金属部)
柱状金属部5は、第1金属部2と第2金属部3の間に間隔をおいて複数配設される。
これにより、複数の柱状金属部5同士の間には、後述する連通溝6が形成されるため、連通溝6に沿った作動流体の流れを形成することができる。すなわち、柱状金属部5は、連通溝6に囲まれ、かつ第1金属部2および第2金属部3に挟まれた部分である対向部4に位置する。
【0034】
柱状金属部5は、内部に空洞51が形成されており、空洞51に連通する開口52を表面5aに有する。これにより、柱状金属部5に形成された空洞51に、開口52から流入した液相の作動流体が溜まり、この作動流体が柱状金属部5に伝達される熱によって加熱されて気相に相変化するため、作動流体の液相から気相への相変化を促進することができる。
【0035】
ここで、柱状金属部5は、図4に示すように、空洞51のうち、空洞51の最大横断面寸法dが柱状金属部5の開口52の寸法(開口寸法d)よりも大きな空洞である、特定空洞51aを少なくとも1個有することが好ましい。これにより、特定空洞51aがリエントラントな構造を有するとともに、特定空洞51aに、開口52から流入した作動流体を溜まりやすくすることができる。
【0036】
柱状金属部5の空洞51は、図1図3に示すように、柱状金属部5の開口52を介して連通溝6に連通することが好ましい。これにより、連通溝6を流通する液相の作動流体が開口52を介して空洞51に供給されやすくなるため、空洞51における液相の作動流体への潜熱の受け渡し効率を向上させることができる。
【0037】
また、柱状金属部5の空洞51は、柱状金属部5の第2金属部3に面する開口53を介して、第2金属部3の放熱面3aに設けられた、第2放熱面開口82に連通することが好ましい。これにより、空洞51で気相になった作動流体が、開口53を介して第2放熱面開口82から金属構造体1の外部に放出されるため、開口52や連通溝6の内部における気相および液相の作動流体の流れの対向を減らして、より効率的に作動流体を金属構造体1の内部に流通させることができる。
【0038】
柱状金属部5が配設される間隔(配設ピッチ)は、特に限定されないが、例えば2mm以下の範囲にすることができる。また、柱状金属部5の高さhと、第1金属部2の厚さtと、第2金属部3の厚さtの合計は、例えば0.2mm以下の範囲にすることができる。
【0039】
(連通溝)
連通溝6は、金属構造体1に複数設けられるものであり、それぞれ、複数の柱状金属部5同士の間に形成される。これにより、作動流体の大まかな流路が規定されるとともに、連通溝6の溝表面における毛細管現象による液体の作動流体の流動が起こりやすくなるため、金属構造体1の内部における、液体および気体の作動流体の流動を促進することができる。
【0040】
連通溝6の溝側面は、柱状金属部5の表面5aによって構成される。これにより、連通溝6を流通している作動流体を、柱状金属部5に伝達される熱によって加熱して気相に相変化することができる。また、柱状金属部の表面5aに設けられる開口52から空洞51に作動流体を流通させて、空洞51で作動流体を気相に相変化することができる。
【0041】
連通溝6は、一の方向に沿った連通溝61のみを備えてもよいが、一の方向に沿った連通溝61と他の方向に沿った連通溝62とを備えてもよい。これら複数本の連通溝6は、互いに交差する交差部6aを有し、この交差部6aは、交差している連通溝6同士の高さを異ならせて配設した立体交差構造で構成されていることが好ましい。これにより、交差部6aにおいて、一の方向に沿った連通溝61を流通する作動流体の流れと、他の方向に沿った連通溝62を流通する作動流体の流れが、異なる高さ位置に形成されるため、交差している連通溝6を流れる作動流体同士が、交差部6aでぶつかり合って乱流が生じにくくなるため、それぞれの連通溝61内を作動流体が円滑に流れることができる。
【0042】
このとき、第2金属部3は、上面にある放熱面3bに、連通溝6の交差部6aに対応して第1放熱面開口81を有することが好ましい。これにより、交差している連通溝6を流れる作動流体同士が、それぞれの連通溝61内を作動流体がより一層円滑に流れることができる。
【0043】
なお、図1図3の金属構造体1では、一の方向に沿った連通溝61と他の方向に沿った連通溝62とが直角に交わる態様を示したが、これに限定されない。例えば、図4(a)に記載される金属構造体1Aのように、連通溝6として、一の方向に沿った連通溝61と他の方向に沿った連通溝62のほかに、さらに他の方向に沿った連通溝63を備えてもよい。また、図4(b)に記載される金属構造体1Bのように、連通溝6のうち少なくともいずれかが、少なくとも部分的に屈曲してもよい。また、連通溝6は、例えば平織り、綾織、朱子織りなどの配設形状になるように形成することができる。
【0044】
(金属フィン部)
金属フィン部7は、連通溝6の溝内に、連通溝6に沿って延在するように複数形成される。これにより、連通溝6の溝内における作動流体の流れが、連通溝6に沿う方向に誘導されるとともに、金属フィン部7によって連通溝6の表面積が増加するため、連通溝6の溝内における潜熱の受け渡し効率を高めることができる。さらに、複数の金属フィン部7が対向している部分や、連通溝6の溝壁面と金属フィン部7とが対向している部分では、作動流体の流れが乱流を生じやすくなり、それにより作動流体が攪拌される観点でも、作動流体への潜熱の受け渡し効率を高めることができる。
【0045】
金属フィン部7は、第1金属部2に熱的に接続されることが好ましい。ここで、金属フィン部7は、図1図3に示すように、第1金属部2に直接接続されていてもよく、また、第1金属部2に熱的に接続されている他の部材を介して接続されていてもよい。例えば、金属フィン部7Cは、図6に示すように、柱状金属部5および第2金属部3のうち一方または両方に、熱的に接続されていてもよい。このとき、金属フィン部7Cは、連通溝6の底面のほか、溝側面や上面にも設けられる。
【0046】
金属フィン部7は、図1図3に示すように、連通溝6に沿って延在するように形成されていればよく、連通溝6の延在方向に対して、少なくとも部分的に傾斜して形成されていてもよい。
【0047】
(金属構造体の作製方法)
金属構造体1の作製方法は、特に限定されないが、例えば、第1金属部2になる銅板の上に、金属粉と溶剤を含むスラリーをガーゼなどの被覆率が小さい布に含浸させた繊維含浸体を積層し、その上にスラリーをさらに積層して第2金属部3になる部分を形成することで得られる積層体を、金属粉と結合しない素材によって構成される板を用いて上側より加圧しながら、溶剤および布が気化および焼尽する温度で焼成することで、布があった部分に柱状金属部5や連通溝6を備える金属構造体1を作製することができる。
【0048】
(金属構造体の用途)
金属構造体1は、容器の内部空間に封入された液相の作動流体に接触し、作動流体を通じて熱を伝達することができる構成を有し、冷却装置に好ましく用いることができる。ここで、冷却装置としては、ベーパーチャンバやヒートパイプ、沸騰型冷却装置などを挙げることができる。
【0049】
図7は、本発明に従う金属構造体1を有する冷却装置10の一例である沸騰型冷却装置の内部を透視して示す斜視図である。
【0050】
金属構造体1は、作動流体F1が封入された内部空間Sを有する容器11の内面11aであって、容器11の外面11bに熱的に接続される少なくとも1つの発熱体(図示せず)の取付位置Pに対応する位置に設けられ、発熱体からの熱を、容器11の内部空間Sの下部に封入された液相の作動流体F1(L)に伝えることで液相の作動流体F1(L)を加熱および沸騰させ、作動流体F1を液相から気相に相変化させる。このとき、金属構造体1は、発熱体からの熱を液相の作動流体F1(L)に伝え、液相の作動流体F1(L)を蒸発させて気相の作動流体F1(g)に相変化させる蒸発部として作用する。
【0051】
金属構造体1が設けられている冷却装置10の容器11は、内部空間Sの上部位置にて、容器11を貫通孔13で貫通するように延在し、かつ冷媒が流通する凝縮管14をさらに備える。
【0052】
金属構造体1が設けられている容器11の内部空間Sは、外部環境に対して密閉された空間であり、脱気処理により減圧されている。これにより、容器11からの液相の作動流体F1(L)や気相の作動流体F1(g)の漏洩を防ぐとともに、内部空間Sの圧力を調整して、所望の動作温度で動作するように構成されている。
【0053】
この冷却装置10では、発熱体が発熱すると、容器11の底部12を通じて金属構造体1に熱が伝達され、金属構造体1において液相の作動流体F1(L)が加熱されて気相の作動流体F1(g)へ相変化することで、発熱体からの熱を潜熱として吸収する。次に、気相へ相変化した作動流体F1(g)は、容器11の内部空間Sを上方へ移動し、凝縮管14などの冷却機構と熱的に接触する。例えば、冷却機構として凝縮管14を用いる場合、凝縮管14の内部には、低温の他の作動流体F2が流通している。このため、気相に相変化した作動流体F1(g)は、凝縮管14の外面に接触または接近することで、凝縮管14の熱交換作用により、潜熱を放出し、気相から液相へ相変化する。気相から液相への相変化の際に、気相の作動流体F1(g)から放出される潜熱が、凝縮管14を流通する他の作動流体F2へ伝達される。それにより、液相へ相変化した作動流体F1(L)は、重力の作下により、容器11の内部空間Sを上部から下部へと還流する。作動流体F1は、容器11の密閉された内部空間Sにて、液相から気相への相変化と、気相から液相への相変化を繰り返す。そして、気相の作動流体F1(g)から熱を受けた他の作動流体F2は、凝縮管14の延在方向に沿って冷却装置10の内部から外部へ流通することで、発熱体の熱が冷却装置10である沸騰型冷却装置の外部へ輸送される。
【0054】
(その他)
図1図3の金属構造体1では、第1金属部2が板状である態様を示したが、これに限定されない。例えば、第1金属部2の厚さ方向に向かってフィンを備えていてもよく、このフィンの表面に、柱状金属部5および第2金属部3を備えていてもよい。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 金属構造体
10 冷却装置
11 容器
12 容器の底部
13 貫通孔
14 凝縮管
2 第1金属部
2a 伝熱面(第1金属部の下面)
2b 第1金属部の上面
3 第2金属部
3a 放熱面(第2金属部の下面)
3b 放熱面(第2金属部の上面)
4 対向部
5 柱状金属部
5a 柱状金属部の表面
51 空洞
51a 特定空洞
52 柱状金属部の連通溝に面する開口
53 柱状金属部の第2金属部に面する開口
6 連通溝
6a 交差部
61 一の方向に沿った連通溝
62、63 他の方向に沿った連通溝
7 金属フィン部
81 第1放熱面開口
82 第2放熱面開口
空洞の最大横断面寸法
開口寸法
h 柱状金属部の高さ
第1金属部の厚さ
第2金属部の厚さ
F1 作動流体
F1(L) 液相の作動流体
F1(g) 気相の作動流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7