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特開2023-151508レーダ装置、レーダ制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151508
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】レーダ装置、レーダ制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/60 20060101AFI20231005BHJP
   G01S 13/58 20060101ALI20231005BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20231005BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01S13/60 202
G01S13/58 200
G01S13/931
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061141
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】居村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隼
【テーマコード(参考)】
5H181
5J070
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5J070AC01
5J070AC06
5J070AC13
5J070AD05
5J070AE01
5J070AF03
5J070AK40
5J070BF11
(57)【要約】
【課題】検出される物標の速度や位置にばらつきが生じるような場合であっても、不要な警報による報知を低減することができるレーダ装置、レーダ制御方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】レーダ装置2は、前後方向Yに交差する方向で移動する検知対象を検出する検出処理部21と、物標150の位置と速度に基づいて当該物標150の動きを予測した基準予測軌跡50を設定する進路予測部23と、物標150の位置及び速度の少なくとも何れか一方に対してばらつきを考慮した想定値を加えて第1予測軌跡51、第2予測軌跡52を設定する補助軌跡設定部24と、車両100の予測位置を示す衝突判定軌跡としてのTTCラインを設定し、当該TTCラインに対し、基準予測軌跡50及び補助予測軌跡が交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定し、その判定結果を出力する衝突判定処理部22と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を送信する送信アンテナ及び前記送信アンテナが送信した信号が検知対象により反射され、その反射された信号を受信する受信アンテナを備え、移動体に搭載されるレーダ装置であって、
前記受信アンテナが受信した信号に基づいて前記移動体の進行する方向、後退する方向、左折方向または右折方向に交差する方向で移動する検知対象を検出する検出処理部と、
前記検出処理部で検出した物標の位置と速度に基づいて当該物標の動きを予測した基準予測軌跡を設定する進路予測部と、
前記基準予測軌跡の予測の基になった前記物標の位置及び速度の少なくとも何れか一方に対してばらつきを考慮した想定値を加えて補助予測軌跡を設定する補助軌跡設定部と、
前記移動体の予測位置を示す衝突判定軌跡を設定し、当該衝突判定軌跡に対し、前記基準予測軌跡及び前記補助予測軌跡が交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定し、その判定結果を出力する衝突判定処理部と、
を備えるレーダ装置。
【請求項2】
前記補助軌跡設定部は、
前記補助予測軌跡として、前記基準予測軌跡に基づいて生成される第1予測軌跡と第2予測軌跡を設定し、
前記衝突判定処理部は、
前記移動体の進行する方向、後退する方向、左折方向または右折方向に延びる前記衝突判定軌跡に対し、前記基準予測軌跡、前記第1予測軌跡及び前記第2予測軌跡の全てが交差した場合に、衝突の危険性が有ると判定する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記想定値は、前記物標の移動速度における前記移動体の進行する方向、後退する方向、左折方向または右折方向の成分の速度に対する速度想定値である請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記想定値は、前記移動体の進行する方向、後退する方向、左折方向または右折方向における前記物標の位置に対する位置想定値である請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記衝突判定処理部は、
前記移動体に基づく基準位置よりも前記移動体側に前記物標が位置する場合は、前記衝突判定軌跡に対して前記基準予測軌跡が交差した場合に、衝突の危険性が有ると判定する請求項1から4の何れかに記載のレーダ装置。
【請求項6】
信号を送信する送信アンテナ及び前記送信アンテナが送信した信号が検知対象により反射され、その反射された信号を受信する受信アンテナを備え、移動体に搭載されるレーダ装置の制御方法であって、
前記受信アンテナが受信した信号に基づいて前記移動体の進行する方向、後退する方向、左折方向または右折方向に交差する方向で移動する検知対象を検出する検出処理ステップと、
前記検出処理ステップで検出した物標の位置と速度に基づいて当該物標の動きを予測した基準予測軌跡を設定する進路予測ステップと、
前記基準予測軌跡の予測の基になった前記物標の位置及び速度の少なくとも何れか一方に対してばらつきを考慮した想定値を加えて補助予測軌跡を設定する補助軌跡設定ステップと、
前記移動体の予測位置を示す衝突判定軌跡を設定し、当該衝突判定軌跡に対し、前記基準予測軌跡及び前記補助予測軌跡が交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定し、その判定結果を出力する衝突判定処理ステップと、
を含むレーダ装置の制御方法。
【請求項7】
信号を送信する送信アンテナ及び前記送信アンテナが送信した信号が検知対象により反射され、その反射された信号を受信する受信アンテナを備え、移動体に搭載されるレーダ装置のコンピュータに、
前記受信アンテナが受信した信号に基づいて前記移動体の進行する方向、後退する方向に交差する方向、左折方向または右折方向で移動する検知対象を検出する検出処理機能と、
前記検出処理機能で検出した物標の位置と速度に基づいて当該物標の動きを予測した基準予測軌跡を設定する進路予測機能と、
前記基準予測軌跡の予測の基になった前記物標の位置及び速度の少なくとも何れか一方に対してばらつきを考慮した想定値を加えて補助予測軌跡を設定する補助軌跡設定機能と、
前記移動体の予測位置を示す衝突判定軌跡を設定し、当該衝突判定軌跡に対し、前記基準予測軌跡及び前記補助予測軌跡が交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定し、その判定結果を出力する衝突判定処理機能と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載されるレーダ装置、レーダ制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の移動体に搭載され、衝突の危険性を車両に搭乗するユーザに報知する警報システムに関する技術が知られている。この種の技術が記載されるものとして例えば、特許文献1や特許文献2がある。特許文献1は、車両が接近している際に警報を発する警報装置において、警報対象の判定精度を向上させる技術に関するものである。特許文献2は、見通し外の位置の歩行者を精度よく検出可能な車両の歩行者検出装置に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-126351号公報
【特許文献2】特開2015-108871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、衝突の危険性は、レーダ装置が搭載される移動体の予測進路と、レーダ装置によって検出される検知対象としての他の移動体の予測進路と、が交差するか否かに基づいて判定される。しかし、この他の移動体の速度や位置の推定に誤差が生じていた場合、この他の移動体の予測進路にもばらつきが生じることになる。そのため、本来は危険性のない場合であってもばらつきに起因して衝突の危険性が有ると判定され、不要な警報がユーザに報知されることがあった。この点、特許文献1に記載される技術は、ターゲットである検知対象の推定速度の誤差が十分に考慮されているとは言えない。また、特許文献2に記載される技術は、歩行者の推定相対距離から相対速度を算出しているが、自車両を中心とした動径方向速度で推定しているので、角度方向分の推定誤差が生じるおそれがある。従来技術には、衝突危険性の判定精度の更なる向上という観点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、検出される物標の速度や位置にばらつきが生じるような場合であっても、不要な警報による報知を低減することができるレーダ装置、レーダ制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、信号を送信する送信アンテナ及び前記送信アンテナが送信した信号が検知対象により反射され、その反射された信号を受信する受信アンテナを備え、移動体に搭載されるレーダ装置であって、前記受信アンテナが受信した信号に基づいて前記移動体の進行する方向、後退する方向、左折方向または右折方向に交差する方向で移動する検知対象を検出する検出処理部と、前記検出処理部で検出した物標の位置と速度に基づいて当該物標の動きを予測した基準予測軌跡を設定する進路予測部と、前記基準予測軌跡の予測の基になった前記物標の位置及び速度の少なくとも何れか一方に対してばらつきを考慮した想定値を加えて補助予測軌跡を設定する補助軌跡設定部と、前記移動体の予測位置を示す衝突判定軌跡を設定し、当該衝突判定軌跡に対し、前記基準予測軌跡及び前記補助予測軌跡が交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定し、その判定結果を出力する衝突判定処理部と、を備えるレーダ装置に関する。
【0007】
前記補助軌跡設定部は、前記補助予測軌跡として、前記基準予測軌跡の前方を通る前方予測軌跡を設定するとともに前記基準予測軌跡の後方を通る後方予測軌跡を設定し、前記衝突判定処理部は、前記移動体の前後方向に延びる前記衝突判定軌跡に対し、前記基準予測軌跡、前記前方予測軌跡及び前記後方予測軌跡の全てが交差した場合に、衝突の危険性が有ると判定してもよい。
【0008】
前記想定値は、前記物標の移動速度における前記移動体の進行する方向、後退する方向、左折方向または右折方向の成分の速度に対する速度想定値であってもよい。
【0009】
前記想定値は、前記移動体の進行する方向、後退する方向、左折方向または右折方向における前記物標の位置に対する位置想定値であってもよい。
【0010】
前記衝突判定処理部は、前記移動体に基づく基準位置よりも前記移動体側に前記物標が位置する場合は、前記衝突判定軌跡に対して前記基準予測軌跡が交差した場合に、衝突の危険性が有ると判定してもよい。
【0011】
また、本発明は、信号を送信する送信アンテナ及び前記送信アンテナが送信した信号が検知対象により反射され、その反射された信号を受信する受信アンテナを備え、移動体に搭載されるレーダ装置の制御方法であって、前記受信アンテナが受信した信号に基づいて前記移動体の進行する方向、後退する方向、左折方向または右折方向に交差する方向で移動する検知対象を検出する検出処理ステップと、前記検出処理ステップで検出した物標の位置と速度に基づいて当該物標の動きを予測した基準予測軌跡を設定する進路予測ステップと、前記基準予測軌跡の予測の基になった前記物標の位置及び速度の少なくとも何れか一方に対してばらつきを考慮した想定値を加えて補助予測軌跡を設定する補助軌跡設定ステップと、前記移動体の予測位置を示す衝突判定軌跡を設定し、当該衝突判定軌跡に対し、前記基準予測軌跡及び前記補助予測軌跡が交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定し、その判定結果を出力する衝突判定処理ステップと、を含むレーダ装置の制御方法に関する。
【0012】
また、本発明は、信号を送信する送信アンテナ及び前記送信アンテナが送信した信号が検知対象により反射され、その反射された信号を受信する受信アンテナを備え、移動体に搭載されるレーダ装置のコンピュータに、前記受信アンテナが受信した信号に基づいて前記移動体の進行する方向、後退する方向、左折方向または右折方向に交差する方向で移動する検知対象を検出する検出処理機能と、前記検出処理機能で検出した物標の位置と速度に基づいて当該物標の動きを予測した基準予測軌跡を設定する進路予測機能と、前記基準予測軌跡の予測の基になった前記物標の位置及び速度の少なくとも何れか一方に対してばらつきを考慮した想定値を加えて補助予測軌跡を設定する補助軌跡設定機能と、前記移動体の予測位置を示す衝突判定軌跡を設定し、当該衝突判定軌跡に対し、前記基準予測軌跡及び前記補助予測軌跡が交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定し、その判定結果を出力する衝突判定処理機能と、を実行させるプログラムに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検出される物標の速度や位置にばらつきが生じるような場合であっても、不要な警報による報知を低減することができるレーダ装置、レーダ制御方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るレーダ装置を含む警報システムの模式図である。
図2】本実施形態のレーダ装置の構成のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】本実施形態のレーダ装置の衝突検知に関する機能的構成の一例を示すブロック図である。
図4】本実施形態のレーダ装置の車両移動時における前方の検出範囲を模式的に示す平面図である。
図5】本実施形態のレーダ装置の車両停止時における後方の検出範囲を模式的に示す平面図である。
図6】本実施形態のレーダ装置の物標の前後方向の速度のばらつきを考慮した衝突判定を模式的に説明する平面図である。
図7】本実施形態のレーダ装置の物標の前後方向の位置のばらつきを考慮した衝突判定を模式的に説明する平面図である。
図8】本実施形態のレーダ装置の物標の前後方向の速度及び位置の両方のばらつきを考慮した衝突判定を模式的に説明する平面図である。
図9】本実施形態のレーダ装置による衝突判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るレーダ装置2を含む警報システム1の模式図である。図1に示す警報システム1は、移動体としての車両100に搭載され、衝突の可能性をユーザに報知する装置である。なお、本実施の形態において、「物標」とは、レーダが検知対象からの受信信号に基づいて、位置と速度を推定したものをいう。
【0017】
警報システム1は、前後左右のレーダ装置2-1~2-4と、レーダ装置2-1~2-4からの検出情報を受信するECU(Electric Control Unit)3と、危険をユーザに報知する報知装置4と、を備える。
【0018】
レーダ装置2-1~2-4は、警報システム1が搭載される車両100以外の検知対象をターゲットとして検出するターゲット検出装置である。例えば、レーダ装置2-1は車両100の前方左側のバンパ内に配置され、レーダ装置2-2は車両の前方右側のバンパ内に配置される。また、レーダ装置2-3は車両の後方左側のバンパ内に配置され、レーダ装置2-4は車両の後方右側のバンパ内に配置される。レーダ装置2-1~2-4は、電磁波を送信し、検知対象によって反射された反射波を受信する。この受信した信号に基づいて検知対象に関する距離、速度、及び、方位角等を推定した物標が検出される。レーダ装置2-1~2-4は、検出した距離及び方位角と、車両の長さや幅等の車両情報と、該車両における自身の取付位置や角度等に関する情報に基づいて物標の位置を検出する。なお、以下の説明においてレーダ装置2とした場合は、レーダ装置2-1~2-4の何れか又はその組み合わせを示すものとする。
【0019】
ECU3は、車両100の電子部品の各種の制御を行うコンピュータである。ECU3は、レーダ装置2-1~2-4から衝突の危険性を示す検出情報を受信すると、その種類に応じて報知装置4を動作させる制御を行う。なお、ECU3には、レーダ装置2-1~2-4や報知装置4以外の電子機器が接続されていてもよい。警報システム1は、ECU3が実現するシステムの1つともいえる。
【0020】
報知装置4は、ユーザに衝突の危険性が生じていることを光、音、映像又はこれらの組み合わせによって報知する機器である。報知装置4は、例えば、光を点灯する表示灯、音を発生させるスピーカ、映像を表示するディスプレイ等によって構成される。
【0021】
次に、レーダ装置2のハードウェア構成について説明する。なお、以下に図2を参照して説明するレーダ装置2のハードウェア構成はあくまで一例であり、この構成に限定されるわけではない。
【0022】
図2は、本実施形態のレーダ装置2の構成のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2の例では、レーダ装置2は、電磁波を送受信するアンテナ部5と、アンテナ部5の検出信号の処理等、レーダ装置2の各種の制御を行うレーダ制御部10と、を備える。
【0023】
アンテナ部5は、電磁波等の信号を送信する送信アンテナ6と、送信アンテナ6が送信した信号が検知対象により反射され、その反射された信号を受信する受信アンテナ7と、を備える。送信アンテナ6及び受信アンテナ7は、それぞれ、複数のアンテナ素子によって構成される。アンテナ部5は、受信アンテナ7の受信信号を処理し、レーダ制御部10に送信する。
【0024】
レーダ制御部10は、プロセッサ11、ROM(read-only memory)12、RAM(random-access memory)13、補助記憶装置14、通信I/F(interface)15を備え、各部がバス等によって接続されるコンピュータである。
【0025】
プロセッサ11は、レーダ装置2の動作に必要な演算及び制御等の処理を行うコンピュータの中枢部分であり、各種演算及び処理等を行う。プロセッサ11は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate aRRay)等である。あるいは、プロセッサ11は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。また、プロセッサ11は、これらにハードウェアアクセラレーター等を組み合わせたものであっても良い。
【0026】
プロセッサ11は、ROM12又は補助記憶装置14等に記憶されたファームウェア、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェア等のプログラムに基づいて、レーダ装置2の各種の機能を実現するべく各部を制御する。また、プロセッサ11は、当該プログラムに基づいて後述する処理を実行する。なお、当該プログラムの一部又は全部は、プロセッサ11の回路内に組み込まれていても良い。
【0027】
ROM12及びRAM13は、プロセッサ11を中枢としたコンピュータの主記憶装置である。ROM12は、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリである。ROM12は、上記のプログラムのうち、例えばファームウェア等を記憶する。また、ROM12は、プロセッサ11が各種の処理を行う上で使用するデータ等も記憶する。RAM13は、データの読み書きに用いられるメモリである。RAM13は、プロセッサ11が各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶するワークエリア等として利用される。RAM13は、典型的には揮発性メモリである。
【0028】
補助記憶装置14は、例えばEEPROM(electric erasable programmable read-only memory)、HDD(hard disk drive)又はフラッシュメモリ等である。補助記憶装置14は、上記のプログラムのうち、例えば、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェア等を記憶する。また、補助記憶装置14は、プロセッサ11が各種の処理を行う上で使用するデータ、プロセッサ11での処理によって生成されたデータ及び各種の設定値等を記憶する。
【0029】
通信I/F15は、ECU3と通信するためのインターフェースである。レーダ制御部10の検出結果は、通信I/F15からECU3に送信される。
【0030】
次に、プロセッサ11によって実現されるレーダ装置2の機能について説明する。図3は、本実施形態のレーダ装置2の衝突検知に関する機能的構成の一例を示すブロック図である。
【0031】
図3に示すように、レーダ装置2のレーダ制御部10は、プロセッサ11によって実行される機能部として、検出処理部21と、衝突判定処理部22と、進路予測部23と、補助軌跡設定部24と、を備える。
【0032】
検出処理部21は、アンテナ部5の受信アンテナ9が受信した信号に基づいて検知対象を検出する処理を実行する。検出処理部21は、照射範囲内に入った他車両等の検知対象を物標150として検出する。また、検出処理部21は、物標150に関する情報(位置、相対速度、及び、方位角等)を取得する。
【0033】
また、検出処理部21は、衝突危険性の有無の判定を開始するための基準として検出範囲を設定する。検出範囲は、車両100の移動方向や移動状態等に基づいて設定される。
【0034】
図4を参照して車両100移動時の検出範囲101FL、101FRについて説明する。図4は、本実施形態のレーダ装置2の車両100移動時における前方の検出範囲101FL、101FRを模式的に示す平面図である。図4にはレーダ装置2-1の視野角θの照射範囲とレーダ装置2-2の視野角θの照射範囲が示されている。また、車両100の左端を車両100の進行する方向または後退する方向(以下、前後方向)Yに延長した左側基準線100Lと、車両100の右端を前後方向Yに延長した右側基準線100Rと、車両の前端を前後方向Yに交差する左右方向Xに延長した前端基準線100Fと、が示される。なお、本明細書では、車両100が進行する方向を前方向Y1とし、車両100が後退する方向を後方向Y2とする。
【0035】
検出処理部21は、車両100が所定速度Vs(例えば、10km/h)以下で移動する状態になると、実際の車両100よりも前方の想定位置に設定される想定車両110に基づいて検出範囲101FL及び検出範囲101FRを設定する。検出範囲101FLはレーダ装置2-1の照射範囲の内側に設定され、検出範囲101FRはレーダ装置2-2の照射範囲の内側に設定される。
【0036】
検出範囲101FLは、想定車両110の左側に設定される矩形状の領域である。車両100の移動を考慮し、検出範囲101FLは、車両100の前端基準線100Fに対応する想定車両110の前端基準線110Fよりも前方の領域を含むように設定される。検出範囲101FRは、想定車両110の右側に設定される矩形状の領域である。検出範囲101FRは、前端基準線110Fよりも前方の領域を含むように設定される。
【0037】
図5を参照して車両100停止時の検出範囲101RL、101RRについて説明する。図5は、本実施形態のレーダ装置2の車両100停止時における後方の検出範囲101RL、101RRを模式的に示す平面図である。図5には、車両100の左端を前後方向Yに延長した左側基準線100Lと、車両100の右端を前後方向Yに延長した右側基準線100Rと、車両100の後端を左右方向Xに延長した後端基準線100Bが示される。
【0038】
車両100が停止状態となると、検出処理部21は車両100の左後方に検出範囲101RLを設定し、車両100の右後方に検出範囲101RRを設定する。検出範囲101RLはレーダ装置2-3の照射範囲の内側に設定され、検出範囲101RRはレーダ装置2-4の照射範囲の内側に設定される。
【0039】
検出範囲101RLは、車両100の後方の左側基準線100Lから左方に設定される矩形状の領域である。検出範囲101RRは、車両100の後方の右側基準線100Rから右方に設定される矩形状の領域である。
【0040】
次に、衝突判定処理部22について説明する。衝突判定処理部22は、衝突判定を行うために、検出範囲101FL、101FR、101RL、101RRに対応する衝突判定軌跡としてTTC(Time to collision)ラインを設定する。
【0041】
図4に戻って車両100移動時の前方に設定されるTTCラインについて説明する。検出範囲101FLに対応するTTCラインをTTCライン1Lとする。TTCライン1Lは、車両100の左端を通過する左側基準線100Lよりも左側にオフセットした位置に前後方向Yに延びる直線として設定される。TTCライン1Lの前後方向Yの位置は、想定車両110の後端から想定車両110の前端基準線110Fよりも前方を含むように設定される。TTCライン1Lの長さは、検出範囲101FLの前後方向Yの範囲に対応している。同様に、検出範囲101FRに対応するTTCラインをTTCライン1Rとすると、TTCライン1Rは、車両100の右端を通過する右側基準線100Rよりも右側にオフセットした位置に前後方向Yに延びる直線として設定される。TTCライン1Rの前後方向Yの位置及び直線の長さは、TTCライン1Lと同様であり、検出範囲101RLの前後方向Yの範囲に対応している。
【0042】
図5に戻って車両100停止時の後方に設定されるTTCラインについて説明する。検出範囲101RLに対応するTTCラインをTTCライン2Lとする。TTCライン2Lは、車両100の左端を通過する左側基準線100Lに沿って延びる直線として設定される。TTCライン2Lの前後方向Yの前端位置は、後端基準線100Bよりも下側にオフセットした位置に設定され、後端位置は車両100の長さ等に基づいて適宜設定される。TTCライン2Lの直線の長さも、検出範囲121Lの前後方向Yの範囲に対応している。同様に、検出範囲101RRに対応するTTCラインをTTCライン2Rとすると、TTCライン2Lは、車両100の右端を通過する右側基準線100Rに沿って延びる直線として設定される。TTCライン2Rの前後方向の前後位置及び長さは、TTCライン2Rと同様であり、検出範囲121Rの前後方向Yの範囲に対応している。
【0043】
以上、検出範囲の例に説明したが、以下の説明において、検出範囲101FL、101FR、101RL、101RRのそれぞれに共通する内容については検出範囲101として説明する。同様に、TTCライン1L、TTCライン1R、TTCライン2L及びTTCライン2Rのそれぞれに共通する内容についてはTTCラインとして説明する。
【0044】
衝突判定処理部22は、検出範囲101に入った物標150の予測軌跡がTTCラインに交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定する。物標150の予測軌跡は進路予測部23及び補助軌跡設定部24によって推定される。図6を参照して進路予測部23による基準予測軌跡50の設定と、補助軌跡設定部24による補助予測軌跡としての第1予測軌跡51a及び第2予測軌跡52aの設定と、について説明する。
【0045】
図6は、本実施形態のレーダ装置2の前後方向Yにおける物標150の速度のばらつきを考慮した衝突判定を模式的に説明する平面図である。なお、図6において検出範囲101の図示は省略している。
【0046】
進路予測部23は、検出処理部21によって取得された物標150の位置及びその時間変化に基づいて当該物標150の動きを予測する処理を実行する。進路予測部23は、例えば、位置差分方式に基づき、物標150の位置及び相対速度から物標150の検出時点から数秒間の基準予測軌跡50を推定する。基準予測軌跡50はベクトルであり、図6において基準予測軌跡50は移動方向を矢印の向きで示す直線として示される。
【0047】
進路予測部23は、物標150の位置に基づいて衝突を判定する基準を変更するため、物標150の位置が補助軌跡判定条件を満たすか否かを判定する。この補助軌跡判定条件を満たす場合は、後述する補助予測軌跡(第1予測軌跡51a及び第2予測軌跡52a)が衝突の危険性の有無の判定に用いられる。本実施形態では、TTCラインの先端を示す先端基準線131から所定距離(例えば、2m)だけ車両100側であることを示す近接ライン130が基準位置に設定され、当該近接ライン130よりも、物標150の後端位置(物標150から見た場合は前方右端の位置)が前側(遠方)にある場合は補助軌跡判定条件を満たすと判定される。物標150の車両100から見た後端位置が、近接ライン130よりも車両100側にある場合は、TTCラインが基準予測軌跡50のみに交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定する。
【0048】
補助軌跡設定部24は、進路予測部23が基準予測軌跡50を推定する際に用いた物標150の移動方向の速度成分のうち、前後方向Yの速度のばらつきを考慮して第1予測軌跡51aと第2予測軌跡52aを設定する。図6において、第1予測軌跡51aは、基準予測軌跡50を前方向Y1に所定の角度θv傾けた直線として示される。即ち、第1予測軌跡51aは、基準予測軌跡50に基づいて前方向Y1に角度θv傾くように生成される軌跡である。同様に、第2予測軌跡52aは、基準予測軌跡50を後方向Y2に角度θv傾けた直線として示される。即ち、第2予測軌跡52aは、基準予測軌跡50に基づいて後方向Y2に角度θv傾くように生成される軌跡である。
【0049】
第1予測軌跡51aは、物標150の初期パラメータの前後方向Yの速度Vfbに対して想定される速度想定値ΔV(例えば、0.5m/s)を加算して算出したものである。第2予測軌跡52aは、物標150の初期パラメータの前後方向Yの速度Vfbに対して想定される速度想定値ΔV(例えば、0.5m/s)を減算して算出したものである。速度想定値は、経験則又は理論的に算出することができる。例えば、速度想定値をレーダ装置2の検出精度に基づいて設定することで、衝突の判定をより向上させることができる。なお、この例では、左右方向Xの速度Vflについては想定値を加減する処理は行っていない。また速度想定値ΔVを動的に変更してもよい。
【0050】
衝突判定処理部22は、基準予測軌跡50、第1予測軌跡51a及び第2予測軌跡52aがTTCラインに交差するか否かに基づいて物標150との衝突の可能性を判定する。本実施形態では、補助軌跡判定条件を満たす場合、TTCラインが基準予測軌跡50、第1予測軌跡51a及び第2予測軌跡52aの全てに交差する場合に、衝突の危険性が有ると判定する。
【0051】
図6を参照して物標150の前後方向Yの速度のばらつきを考慮して第1予測軌跡51と第2予測軌跡52を設定する例を説明したが、補助軌跡の設定はこの方法に限定されるわけではない。以下、図6の例とは異なる補助予測軌跡の設定について説明する。なお、上述した構成と共通又は同様の構成には同じ符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0052】
図7は、本実施形態のレーダ装置2の物標150の前後方向Yの位置のばらつきを考慮した衝突判定を模式的に説明する平面図である。図7に示す例では、補助軌跡設定部24は、進路予測部23が基準予測軌跡50を推定する際に用いた物標150の前後方向Yの位置のばらつきを考慮して第1予測軌跡51bと第2予測軌跡52bを設定する。
【0053】
図7において、第1予測軌跡51bは、基準予測軌跡50から前方向Y1に所定の距離d隔て、基準予測軌跡50に平行な直線として示される。即ち、第1予測軌跡51bは、基準予測軌跡50に基づいて前方向Y1に距離d隔てて生成される軌跡である。同様に、第2予測軌跡52bは、基準予測軌跡50から後方向Y2に距離d隔て、基準予測軌跡50に平行な直線として示される。即ち、第2予測軌跡52aは、基準予測軌跡50に基づいて後方向Y2に距離d隔てて生成される軌跡である。
【0054】
第1予測軌跡51bは、物標150の初期パラメータの前後方向Yの位置Pfbに対して想定される位置想定値ΔP(例えば、0.5m)を加算して算出したものである。第2予測軌跡52bは、物標150の初期パラメータの前後方向Yの位置Pfbに対して想定される位置想定値ΔP(例えば、0.5m)を減算して算出したものである。位置想定値は、経験則又は理論的に算出することができる。例えば、位置想定値をレーダ装置2の検出精度に基づいて設定することで、衝突の判定をより向上させることができる。なお、この例では、左右方向Xの位置Plrについては想定値を加減する処理は行っていない。また位置想定値ΔPを動的に変更してもよい。
【0055】
衝突判定処理部22は、基準予測軌跡50、第1予測軌跡51b及び第2予測軌跡52bがTTCラインに交差するか否かに基づいて物標150との衝突の可能性を判定する。本実施形態では、TTCラインが基準予測軌跡50、第1予測軌跡51b及び第2予測軌跡52bの全てに交差する場合に、衝突の危険性があると判定する。この例でも、衝突判定処理部22は、物標150の位置に応じて衝突を判定する基準を変更する。物標150の車両100から見た後端位置が、近接ライン130よりも車両100側にある場合は、TTCラインが基準予測軌跡50のみに交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定する。
【0056】
図8は、本実施形態のレーダ装置2の物標150の前後方向Yの速度及び位置の両方のばらつきを考慮した衝突判定を模式的に説明する平面図である。図8に示す例では、補助軌跡設定部24は、進路予測部23が基準予測軌跡50を推定する際に用いた物標150の前後方向Yの速度及び前後方向Yの位置の両方のばらつきを考慮して第1予測軌跡51cと第2予測軌跡52cを設定する。
【0057】
図8において、第1予測軌跡51cは、基準予測軌跡50の物標150側の基端を前方向Y1にオフセットした上で、前方向Y1に角度θv傾けた直線として示される。即ち、第1予測軌跡51cは、基準予測軌跡50に基づいて基準予測軌跡50の基端を前方向Y1に距離d隔てた上で、前方向Y1に角度θv傾くように生成される軌跡である。同様に、第2予測軌跡52cは、基準予測軌跡50の物標150側の基端を後方向Y2にオフセットした上で、後方向Y2に角度θv傾けた直線として示される。即ち、第2予測軌跡52cは、基準予測軌跡50に基づいて基準予測軌跡50の基端を後方向Y2に距離d隔てた上で、後方向Y2に角度θv傾くように生成される軌跡である。
【0058】
第1予測軌跡51cは、物標150の初期パラメータの前後方向Yの位置Pfbに対して想定される位置想定値ΔP(例えば、0.5m)を加算するとともに、物標150の初期パラメータの前後方向Yの速度Vfbに対して想定される速度想定値ΔV(例えば、0.5m/s)を加算して算出したものである。第2予測軌跡52cは、物標150の初期パラメータの前後方向Yの位置Pfbに対して想定されるΔP位置想定値(例えば、0.5m)を減算するとともに、物標150の初期パラメータの前後方向Yの速度Vfbに対して想定される速度想定値ΔV(例えば、0.5m/s)を減算して算出したものである。位置想定値及び速度想定値は、経験則又は理論的に算出することができる。例えば、想定値をレーダ装置2の検出精度に基づいて設定することで、衝突の判定をより向上させることができる。なお、速度想定値及び位置想定値の組み合わせは上述の組み合わせに限られるわけでなく、速度想定値及び位置想定値の加減を適宜組み合わせることもできる。また速度想定値ΔV及び位置想定値ΔPを動的に変更してもよい。
【0059】
衝突判定処理部22は、基準予測軌跡50、第1予測軌跡51c及び第2予測軌跡52cがTTCラインに交差するか否かに基づいて物標150との衝突の可能性を判定する。本実施形態では、TTCラインが基準予測軌跡50、第1予測軌跡51c及び第2予測軌跡52cの全てに交差する場合に、衝突の危険性があると判定する。この例でも、衝突判定処理部22は、物標150の位置に応じて衝突を判定する基準を変更する。物標150の車両100から見た後端位置が、基準位置としての近接ライン130よりも車両100側にある場合は、TTCラインが基準予測軌跡50のみに交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定する。
【0060】
衝突判定処理部22は、物標150との衝突の危険性があると判定した場合には、例えば通信I/F15を介して衝突の危険性が生じていることを示す信号をECU3に送信する。
【0061】
以上、衝突判定の例について説明した。次に、図9を参照して衝突判定処理の全体的な流れについて説明する。図9は、本実施形態のレーダ装置2による衝突判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0062】
まず、検出処理部21は、レーダ装置2の照射範囲の検知対象を検出する(ステップS101)。次に、検出処理部21は、検出された物標150が検出範囲101内に位置しない場合はこのサイクルの処理を一旦終了する(ステップS102;No)。検出された物標150が検出範囲101内に位置する場合は、衝突判定を進めるため処理をステップS103に進める(ステップS102;Yes)。
【0063】
ステップS103では、進路予測部23が基準予測軌跡50を設定する(ステップS103)。次に、進路予測部23は、物標150の位置が上述の補助軌跡判定条件を満たすか否かを判定する(ステップS104)。例えば、物標150の車両100から見た後端位置が近接ライン130よりも前側にある場合は補助軌跡判定条件を満たすと判定して処理をステップS105に移行する(ステップS104;Yes)。一方、物標150の車両100から見た後端位置が近接ライン130よりも後(車両100)側にある場合は、ステップS105の処理をスキップして処理をステップS106に移行する(ステップS104;No)。
【0064】
ステップS105では、補助軌跡設定部24が第1予測軌跡51及び第2予測軌跡52を設定する(ステップS106)。例えば、第1予測軌跡51は、上述の第1予測軌跡51a、第1予測軌跡51b及び第1予測軌跡51cの何れかであり、第2予測軌跡52は、対応する第2予測軌跡52a、第2予測軌跡52b及び第2予測軌跡52cの何れかである。
【0065】
ステップS106では、衝突判定処理部22が、事前に設定された予測軌跡に基づいて車両100と物標150の衝突の危険性を判定する(ステップS106)。この衝突判定処理部22の判定は、事前にステップS105で第1予測軌跡51及び第2予測軌跡52が設定されている場合は、基準予測軌跡50、第1予測軌跡51及び第2予測軌跡52の全てにTTCラインが交差する条件を満たすと衝突の危険性が有ると判定する。ステップS105をスキップして第1予測軌跡51及び第2予測軌跡52が設定されていない場合は、基準予測軌跡50にTTCラインが交差する条件を満たすと衝突の危険性が有ると判定する。
【0066】
衝突判定処理部22は、衝突の危険性がないと判定した場合は処理を終了する(ステップS106;No)。衝突判定処理部22は、衝突の危険性が有ると判定した場合は処理をステップS107に移行する(ステップS106;Yes)。
【0067】
ステップS107では、衝突判定処理部22が衝突の危険性があることをECU3に送信する報知処理を実行して処理を終了する(ステップS107)。ECU3は、レーダ装置2から衝突の危険性があることを示す情報を受信すると、報知装置4を動作させて衝突の危険性があることをユーザに報知する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態のレーダ装置2は、信号を送信する送信アンテナ6及び送信アンテナ6が送信した信号が検知対象により反射され、その反射された信号を受信する受信アンテナ7を備え、移動体としての車両100に搭載される。そして、レーダ装置2は、受信アンテナ7が受信した信号に基づいて前後方向Yに交差する方向で移動する検知対象を検出する検出処理部21と、検出処理部21で検出した物標150の位置と速度に基づいて当該物標150の動きを予測した基準予測軌跡50を設定する進路予測部23と、基準予測軌跡50の予測の基になった物標150の位置及び速度の少なくとも何れか一方に対してばらつきを考慮した想定値を加えて補助予測軌跡(第1予測軌跡51、第2予測軌跡52)を設定する補助軌跡設定部24と、車両100の予測位置を示す衝突判定軌跡としてのTTCラインを設定し、当該TTCラインに対し、基準予測軌跡50及び補助予測軌跡が交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定し、その判定結果を出力する衝突判定処理部22と、を備える。
【0069】
これにより、レーダ装置2の推定誤差等によって予測進路を推定する基になる物標150の位置や速度にばらつきが生じる場合であっても、基準予測軌跡50とともにばらつきを考慮した補助予測軌跡を用いて衝突危険性を正確に判定し、その判定結果を出力できる。従って、本来は衝突の危険性がない場合にもかかわらず、衝突危険性が有ると判断される事態の発生を回避でき、誤警報の発生を効果的に抑制できる。
【0070】
また、本実施形態の補助軌跡設定部24は、補助予測軌跡として、基準予測軌跡50に基づいて生成される第1予測軌跡51と第2予測軌跡52を設定し、衝突判定処理部22は、車両100の前後方向Yに延びるTTCラインに対し、基準予測軌跡50、第1予測軌跡51及び第2予測軌跡52の全てが交差した場合に、衝突の危険性が有ると判定する。
【0071】
これにより、衝突危険性の判断において重要な要素である前後方向で並ぶ基準予測軌跡50、第1予測軌跡51及び第2予測軌跡52の全てにTTCラインが交差した場合のみ、衝突の危険性が有ると判断されるので、より厳密に衝突危険性の判定を行うことができる。
【0072】
また、本実施形態の想定値は、物標150の移動速度における前後方向Yの成分の速度に対する速度想定値である。
【0073】
これにより、物標150の移動速度における前後方向Yの成分の速度のばらつきが生じることに起因する衝突危険性の誤判定の発生をより確実に防止することができる。
【0074】
また、本実施形態の想定値は、物標150の前後方向の位置に対する位置想定値である。
【0075】
これにより、前後方向Yにおける物標150の位置のばらつきが生じることに起因する衝突危険性の誤判定の発生をより確実に防止することができる。
【0076】
また、本実施形態の衝突判定処理部22は、車両100の位置に基づく基準位置としての近接ライン130よりも車両100側に物標150が位置する場合は、TTCラインに対して基準予測軌跡50が交差した場合に、衝突の危険性が有ると判定する。
【0077】
これにより、物標150が車両100の近くに位置するため衝突の蓋然性が高い場合には、TTCラインが基準予測軌跡50に交差することのみを条件とすることにより、TTCラインが第1予測軌跡51aに交差しないような場合でも衝突の危険性を確実に検出することができる。
【0078】
また本実施形態のレーダ装置2の制御方法は、受信アンテナ7が受信した信号に基づいて車両100の前後方向Yに交差する方向で移動する検知対象を検出する検出処理ステップと、検出処理ステップで検出した物標150の位置と速度に基づいて物標150の動きを予測した基準予測軌跡50を設定する進路予測ステップと、基準予測軌跡50の予測の基になった物標150の位置及び速度の少なくとも何れか一方に対してばらつきを考慮した想定値を加えて補助予測軌跡(第1予測軌跡51、第2予測軌跡52)を設定する補助軌跡設定ステップと、車両100の予測位置を示すTTCラインを設定し、当該TTCラインに対し、基準予測軌跡50及び補助予測軌跡が交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定し、その判定結果を出力する衝突判定ステップと、を含む。
【0079】
これにより、レーダ装置2の推定誤差等によって予測進路を推定する基になる物標150の位置や速度にばらつきが生じる場合であっても、基準予測軌跡50とともにばらつきを考慮した補助予測軌跡を用いて衝突危険性を正確に判定し、その判定結果を出力できる。従って、本来は衝突の危険性がない場合にもかかわらず、衝突危険性が有ると判断される事態の発生を回避でき、誤警報の発生を効果的に抑制できる。
【0080】
また本実施形態のプログラムは、レーダ装置2のコンピュータに、受信アンテナ7が受信した信号に基づいて車両100の前後方向Yに交差する方向で移動する検知対象を検出する検出処理機能と、検出処理機能で検出した物標150の位置と速度に基づいて物標150の動きを予測した基準予測軌跡50を設定する進路予測機能と、基準予測軌跡50の予測の基になった物標150の位置及び速度の少なくとも何れか一方に対してばらつきを考慮した想定値を加えて補助予測軌跡(第1予測軌跡51、第2予測軌跡52)を設定する補助軌跡設定機能と、車両100の予測位置を示すTTCラインを設定し、当該TTCラインに対し、基準予測軌跡50及び補助予測軌跡が交差するか否かに基づいて衝突の危険性を判定し、その判定結果を出力する衝突判定機能と、を実行させる。
【0081】
これにより、レーダ装置2の推定誤差等によって予測進路を推定する基になる物標150の位置や速度にばらつきが生じる場合であっても、基準予測軌跡50とともにばらつきを考慮した補助予測軌跡を用いて衝突危険性を正確に判定し、その判定結果を出力できる。従って、本来は衝突の危険性がない場合にもかかわらず、衝突危険性が有ると判断される事態の発生を回避でき、誤警報の発生を効果的に抑制できる。
【0082】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、上記実施形態では、TTCラインは、直線であったが、これに限定されるわけではない。予測進路を示す軌跡は、曲線であってもよいし、一定の範囲を有する領域であってもよい。
【0083】
上記実施形態では、レーダ装置2の想定値は、前後方向Yの速度想定値及び前後方向Yの位置想定値であったが、これに限定されるわけではない。例えば、左右方向Xの位置想定値や左右方向Xの速度想定値を加減して補助予測軌跡を設定する構成としてもよい。
【0084】
また例えば、検出処理部21が車両100の左折方向または右折方向(左右方向X)に交差する方向で移動する検知対象を検知し、進路予測部23が検出された物標150の位置と速度に基づいて物標150の動きを予測した基準予測軌跡50を設定する構成であってもよい。また例えば、衝突判定処理部22は、左右方向Xに延びるTTCラインに対し、第1予測軌跡51及び第2予測軌跡52の全てが交差した場合に、衝突の危険性が有ると判定してもよい。
【0085】
上記実施形態では、レーダ制御部10が衝突判定処理を行う構成としたが、この構成に限定されるわけではない。例えば、レーダ制御部10がECU3等のレーダ装置2-1~2-4の外部の装置に組み込まれる構成としてもよい。
【0086】
また、上述した上記実施形態及び変形例における一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。そして、コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【符号の説明】
【0087】
2 レーダ装置
6 受信アンテナ
7 送信アンテナ
21 検出処理部
22 衝突判定処理部
23 進路予測部
24 補助軌跡設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9