(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151550
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】光走査装置、光走査装置の駆動方法、及び画像描画システム
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20231005BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20231005BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20231005BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20231005BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20231005BHJP
【FI】
G02B26/10 C
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
B81B3/00
B06B1/06 A
H01L41/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061219
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸也
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 宏俊
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
3C081
5D107
【Fターム(参考)】
2H045AB13
2H045AB24
2H045AB34
2H045AB38
2H045AB44
2H045AB81
2H045BA12
2H141MA12
2H141MB24
2H141MC09
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD20
2H141MD24
2H141MF05
2H141MZ06
2H141MZ13
2H141MZ15
3C081AA13
3C081BA28
3C081BA44
3C081BA47
3C081BA55
3C081CA44
3C081EA08
3C081EA11
5D107AA07
5D107CC01
5D107CC10
5D107CC12
5D107CD01
5D107CD03
5D107CD08
(57)【要約】
【課題】第1駆動信号の周波数及び第2駆動信号の周波数を変更する場合に、第1駆動信号の周波数と、第2駆動信号の周波数との周波数比を一定に保つことができる光走査装置、光走査装置の駆動方法、及び画像描画システムを得る。
【解決手段】駆動制御部は、第1設定値に応じた第1駆動周波数を有する第1駆動信号を第1アクチュエータに付与し、第2設定値に応じた第2駆動周波数を有する第2駆動信号を第2アクチュエータに付与し、第1設定値を第1設定値及び第2設定値の最大公約数で除算して得られた第1の数単位で第1設定値を変更することにより第1駆動周波数を変更し、第2設定値を最大公約数で除算して得られた第2の数単位で第2設定値を変更することにより第2駆動周波数を変更する。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を反射する反射面を有するミラー部と、
前記ミラー部の静止時の前記反射面を含む平面内にある第1軸の周りに前記ミラー部を揺動させる第1アクチュエータと、
前記ミラー部の静止時の前記反射面を含む平面内であって前記第1軸に交差する第2軸の周りに前記ミラー部を揺動させる第2アクチュエータと、
少なくとも1つのプロセッサと、
を備える光走査装置であって、
前記プロセッサは、
第1設定値に応じた第1駆動周波数を有する第1駆動信号を前記第1アクチュエータに付与し、
第2設定値に応じた第2駆動周波数を有する第2駆動信号を前記第2アクチュエータに付与し、
前記第1駆動周波数及び前記第2駆動周波数を変更する場合、前記第1設定値及び前記第2設定値の最大公約数を導出し、
前記第1設定値を前記最大公約数で除算して得られた第1の数単位で前記第1設定値を変更することにより前記第1駆動周波数を変更し、
前記第2設定値を前記最大公約数で除算して得られた第2の数単位で前記第2設定値を変更することにより前記第2駆動周波数を変更する
光走査装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、共通のクロック信号に基づく同じタイミングに、前記第1駆動周波数及び前記第2駆動周波数を変更する
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記共通のクロック信号は、前記第1設定値と前記第2の数とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がるクロック信号又は前記第2設定値と前記第1の数とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がるクロック信号である
請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記第1設定値と前記第2の数とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がる第1クロック信号のクロックが立ち上がるタイミングで前記第1駆動周波数を変更した前記第1駆動信号を前記第1アクチュエータに付与し、
前記第2設定値と前記第1の数とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がる第2クロック信号のクロックが立ち上がるタイミングで前記第2駆動周波数を変更した前記第2駆動信号を前記第2アクチュエータに付与する
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記第1駆動周波数及び前記第2駆動周波数を変更するとともに、前記第1設定値及び前記第2の数と、前記第2設定値及び前記第1の数とを、変更後の前記第1駆動周波数及び前記第2駆動周波数に応じた値に変更し、変更後の前記第1設定値及び前記第2の数に基づいて前記第1クロック信号を生成し、変更後の前記第2設定値及び前記第1の数に基づいて前記第2クロック信号を生成する
請求項4に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記第1駆動周波数及び前記第2駆動周波数を変更するとともに、前記第1駆動周波数及び前記第2駆動周波数の変更前の前記第1クロック信号と第2クロック信号との位相差を、その位相差に変更後の前記第1駆動周波数に対する変更前の前記第1駆動周波数の比を乗算して得られた位相差に変更する
請求項4又は請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
入射光を反射する反射面を有するミラー部と、
前記ミラー部の静止時の前記反射面を含む平面内にある第1軸の周りに前記ミラー部を揺動させる第1アクチュエータと、
前記ミラー部の静止時の前記反射面を含む平面内であって前記第1軸に交差する第2軸の周りに前記ミラー部を揺動させる第2アクチュエータと、
を備える光走査装置の駆動方法であって、
第1設定値に応じた第1駆動周波数を有する第1駆動信号を前記第1アクチュエータに付与し、
第2設定値に応じた第2駆動周波数を有する第2駆動信号を前記第2アクチュエータに付与し、
前記第1駆動周波数及び前記第2駆動周波数を変更する場合、前記第1設定値及び前記第2設定値の最大公約数を導出し、
前記第1設定値を前記最大公約数で除算して得られた第1の数単位で前記第1設定値を変更することにより前記第1駆動周波数を変更し、
前記第2設定値を前記最大公約数で除算して得られた第2の数単位で前記第2設定値を変更することにより前記第2駆動周波数を変更する
光走査装置の駆動方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の光走査装置と、
前記ミラー部に光を照射する光源と、
を備える画像描画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光走査装置、光走査装置の駆動方法、及び画像描画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)の微細加工技術を用いて作製される微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)デバイスの1つとしてマイクロミラーデバイス(マイクロスキャナともいう)が知られている。このマイクロミラーデバイスを備える光走査装置は、小型かつ低消費電力であることから、レーザーディスプレイ又はレーザープロジェクタ等の画像描画システムへの応用が期待されている。
【0003】
マイクロミラーデバイスは、ミラー部が、互いに直交する第1軸及び第2軸の周りに揺動可能に形成されており、ミラー部が各軸の周りに揺動することで、ミラー部が反射した光を二次元的に走査する。また、ミラー部を各軸の周りに共振させることにより、光をリサージュ走査することを可能とするマイクロミラーデバイスが知られている。
【0004】
特許文献1には、MEMSミラーの振幅及び位相に基づいて、MEMSミラーの駆動周波数及びMEMSミラーのスキャンが一周するまでのレートであるフレームレートを選択する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ミラー部を第1軸の周りに揺動させるための第1駆動信号の周波数と、第2軸の周りに揺動させるための第2駆動信号の周波数との周波数比が変動してしまうと、光の走査軌道が変動してしまう。この結果、描画される画像にぶれが発生してしまう。特許文献1に記載の技術では、第1駆動信号の周波数及び第2駆動信号の周波数を変更する場合に、第1駆動信号の周波数と、第2駆動信号の周波数との周波数比を一定に保つことについては考慮されていない。
【0007】
本開示は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、第1駆動信号の周波数及び第2駆動信号の周波数を変更する場合に、第1駆動信号の周波数と、第2駆動信号の周波数との周波数比を一定に保つことができる光走査装置、光走査装置の駆動方法、及び画像描画システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の光走査装置は、入射光を反射する反射面を有するミラー部と、ミラー部の静止時の反射面を含む平面内にある第1軸の周りにミラー部を揺動させる第1アクチュエータと、ミラー部の静止時の反射面を含む平面内であって第1軸に交差する第2軸の周りにミラー部を揺動させる第2アクチュエータと、少なくとも1つのプロセッサと、を備える光走査装置であって、プロセッサは、第1設定値に応じた第1駆動周波数を有する第1駆動信号を第1アクチュエータに付与し、第2設定値に応じた第2駆動周波数を有する第2駆動信号を第2アクチュエータに付与し、第1駆動周波数及び第2駆動周波数を変更する場合、第1設定値及び第2設定値の最大公約数を導出し、第1設定値を最大公約数で除算して得られた第1の数単位で第1設定値を変更することにより第1駆動周波数を変更し、第2設定値を最大公約数で除算して得られた第2の数単位で第2設定値を変更することにより第2駆動周波数を変更する。第1の数と第2の数は互いに素となる。
【0009】
なお、本開示の光走査装置は、プロセッサが、共通のクロック信号に基づく同じタイミングに、第1駆動周波数及び第2駆動周波数を同時に変更してもよい。
【0010】
また、本開示の光走査装置は、共通のクロック信号が、第1設定値と第2の数とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がるクロック信号又は第2設定値と第1の数とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がるクロック信号であってもよい。
【0011】
また、本開示の光走査装置は、プロセッサが、第1設定値と第2の数とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がる第1クロック信号のクロックが立ち上がるタイミングで第1駆動周波数を変更した第1駆動信号を第1アクチュエータに付与し、第2設定値と第1の数とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がる第2クロック信号のクロックが立ち上がるタイミングで第2駆動周波数を変更した第2駆動信号を第2アクチュエータに付与してもよい。
【0012】
また、本開示の光走査装置は、プロセッサが、第1駆動周波数及び第2駆動周波数を変更するとともに、第1設定値及び第2の数と、第2設定値及び第1の数とを、変更後の第1駆動周波数及び第2駆動周波数に応じた値に変更し、変更後の第1設定値及び第2の数に基づいて第1クロック信号を生成し、変更後の第2設定値及び第1の数に基づいて第2クロック信号を生成してもよい。
【0013】
また、本開示の光走査装置は、プロセッサが、第1駆動周波数及び第2駆動周波数を変更するとともに、第1駆動周波数及び第2駆動周波数の変更前の第1クロック信号と第2クロック信号との位相差を、その位相差に変更後の第1駆動周波数に対する変更前の第1駆動周波数の比を乗算して得られた位相差に変更してもよい。
【0014】
また、本開示の光走査装置の駆動方法は、入射光を反射する反射面を有するミラー部と、ミラー部の静止時の反射面を含む平面内にある第1軸の周りにミラー部を揺動させる第1アクチュエータと、ミラー部の静止時の反射面を含む平面内であって第1軸に交差する第2軸の周りにミラー部を揺動させる第2アクチュエータと、を備える光走査装置の駆動方法であって、第1設定値に応じた第1駆動周波数を有する第1駆動信号を第1アクチュエータに付与し、第2設定値に応じた第2駆動周波数を有する第2駆動信号を第2アクチュエータに付与し、第1駆動周波数及び第2駆動周波数を変更する場合、第1設定値及び第2設定値の最大公約数を導出し、第1設定値を最大公約数で除算して得られた第1の数単位で第1設定値を変更することにより第1駆動周波数を変更し、第2設定値を最大公約数で除算して得られた第2の数単位で第2設定値を変更することにより第2駆動周波数を変更するものである。
【0015】
また、本開示の画像描画システムは、上記の何れかの光走査装置と、ミラー部に光を照射する光源と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、第1駆動信号の周波数及び第2駆動信号の周波数を変更する場合に、第1駆動信号の周波数と、第2駆動信号の周波数との周波数比を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】マイクロミラーデバイスの外観斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る駆動制御部の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】一対の第1角度検出センサから出力される信号の一例を示す図である。
【
図7】一対の第2角度検出センサから出力される信号の一例を示す図である。
【
図8】第1信号処理部の構成の一例を示す回路図である。
【
図11】第1ゼロクロスパルスの生成処理を説明するための図である。
【
図12】第2ゼロクロスパルスの生成処理を説明するための図である。
【
図13】第1駆動周波数と第1振れ角との関係の一例を示すグラフである。
【
図14】第2駆動周波数と第2振れ角との関係の一例を示すグラフである。
【
図15】目標とする第1駆動周波数の決定処理を説明するための図である。
【
図16】共通のクロック信号を説明するための図である。
【
図17】第1駆動周波数及び第2駆動周波数の変更タイミングを説明するための図である。
【
図18】第1実施形態に係る駆動周波数変更処理の一例を示すフローチャートである。
【
図19】変形例に係る第1駆動周波数及び第2駆動周波数の変更タイミングを説明するための図である。
【
図20】第2実施形態に係る駆動制御部の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図21】第1クロック信号及び第2クロック信号を説明するための図である。
【
図22】第1クロック信号及び第2クロック信号の位相差の変更処理を説明するための図である。
【
図23】第2実施形態に係る駆動周波数変更処理の一例を示すフローチャートである。
【
図24】変形例に係るマイクロミラーデバイスの平面図である。
【
図25】変形例に係る第1信号処理部の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0019】
[第1実施形態]
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る画像描画システム10の構成を説明する。
図1に示すように、画像描画システム10は、光走査装置2及び光源3を備える。光走査装置2は、マイクロミラーデバイス(以下、「MMD(Micro Mirror Device)」という)4、駆動制御部5、及び温度センサ7を備える。駆動制御部5は、開示の技術に係るプロセッサの一例である。
【0020】
画像描画システム10は、駆動制御部5の制御に従って、光源3から照射された光ビームLをMMD4により反射して被走査面6を光走査することにより、画像を描画する。被走査面6は、例えば、画像を投影するためのスクリーン又は人の目の網膜等である。
【0021】
画像描画システム10は、例えば、リサージュ走査方式のレーザーディスプレイに適用される。具体的には、画像描画システム10は、AR(Augmented Reality)グラス又はVR(Virtual Reality)グラス等のレーザースキャンディスプレイに適用可能である。
【0022】
MMD4は、第1軸a
1と、第1軸a
1に直交する第2軸a
2との周りに、ミラー部20(
図2参照)を揺動させることを可能とする圧電型2軸駆動方式のマイクロミラーデバイスである。以下、第2軸a
2と平行な方向をX方向、第1軸a
1と平行な方向をY方向、第1軸a
1及び第2軸a
2に直交する方向をZ方向という。本実施形態では、第1軸a
1と第2軸a
2とが直交する(すなわち、垂直に交差する)例を示しているが、第1軸a
1と第2軸a
2とは90°以外の角度で交差してもよい。ここでいう交差とは、90度を中心として、許容誤差を含む一定の角度範囲内のことを意味する。
【0023】
光源3は、光ビームLとして、例えばレーザ光を発するレーザ装置である。光源3は、例えば、R(Red)、G(Green)、及びB(Blue)の3色のレーザ光を出力する。光源3は、MMD4のミラー部20が静止した状態において、ミラー部20が備える反射面20A(
図2参照)に垂直に光ビームLを照射することが好ましい。なお、光源3から反射面20Aに垂直に光ビームLを照射する場合、光ビームLを被走査面6に走査して描画する際に、光源3が障害物となる可能性がある。このため、光源3から発せられた光ビームLを、ビームスプリッタ等の光学系で制御して、反射面20Aに垂直に照射することが好ましい。光学系は、レンズを含むものであってもよいし、レンズを含まないものであってもよい。また、光源3から発せられた光ビームLを反射面20Aに照射する角度は垂直に限られず、光ビームLを反射面20Aに対して斜めに照射してもよい。
【0024】
駆動制御部5は、光走査情報に基づいて光源3及びMMD4に駆動信号を出力する。光源3は、入力された駆動信号に基づいて光ビームLを発生してMMD4に照射する。MMD4は、入力された駆動信号に基づいて、ミラー部20を第1軸a1及び第2軸a2の周りに揺動させる。
【0025】
温度センサ7は、MMD4の近傍に設けられる。温度センサ7は、MMD4が設置された環境の温度を検出し、検出した温度に応じた信号を駆動制御部5に出力する。
【0026】
駆動制御部5がミラー部20を第1軸a1及び第2軸a2の周りにそれぞれ共振させることにより、ミラー部20で反射される光ビームLが被走査面6上においてリサージュ波形を描くように走査される。この光走査方式は、リサージュ走査方式と呼ばれる。
【0027】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係るMMD4の構成を説明する。
図2に示すように、MMD4は、ミラー部20、第1支持部21、第1可動枠22、第2支持部23、第2可動枠24、接続部25、及び固定枠26を有する。MMD4は、いわゆるMEMSスキャナである。
【0028】
ミラー部20は、入射光を反射する反射面20Aを有する。反射面20Aは、ミラー部20の一面に設けられ、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、又は銀の合金等の金属薄膜で形成される。反射面20Aの形状は、例えば、第1軸a1と第2軸a2との交点を中心とした円形状である。
【0029】
第1軸a1及び第2軸a2は、ミラー部20が静止した静止時において反射面20Aを含む平面内に存在する。MMD4の平面形状は、矩形状であって、第1軸a1に関して線対称であり、かつ第2軸a2に関して線対称である。
【0030】
第1支持部21は、ミラー部20の外側に、第2軸a2を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。第1支持部21は、第1軸a1上でミラー部20と接続されており、ミラー部20を第1軸a1周りに揺動可能に支持している。本実施形態では、第1支持部21は、第1軸a1に沿って延伸したトーションバーである。
【0031】
第1可動枠22は、ミラー部20を取り囲む矩形状の枠体であって、第1軸a1上で第1支持部21を介してミラー部20と接続されている。第1可動枠22の上には、第1軸a1を挟んで対向する位置にそれぞれ圧電素子30が形成されている。このように、第1可動枠22上に2つの圧電素子30が形成されることにより、一対の第1アクチュエータ31が構成される。
【0032】
一対の第1アクチュエータ31は、第1軸a1を挟んで対向する位置に配置されている。第1アクチュエータ31は、ミラー部20に、第1軸a1周りの回転トルクを作用させることにより、ミラー部20を第1軸a1周りに揺動させる。
【0033】
第2支持部23は、第1可動枠22の外側に、第1軸a1を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。第2支持部23は、第2軸a2上で第1可動枠22と接続されており、第1可動枠22及びミラー部20を、第2軸a2周りに揺動可能に支持している。本実施形態では、第2支持部23は、第2軸a2に沿って延伸したトーションバーである。
【0034】
第2可動枠24は、第1可動枠22を取り囲む矩形状の枠体であって、第2軸a2上で第2支持部23を介して第1可動枠22と接続されている。第2可動枠24の上には、第2軸a2を挟んで対向する位置にそれぞれ圧電素子30が形成されている。このように、第2可動枠24上に2つの圧電素子30が形成されることにより、一対の第2アクチュエータ32が構成される。
【0035】
一対の第2アクチュエータ32は、第2軸a2を挟んで対向する位置に配置されている。第2アクチュエータ32は、ミラー部20及び第1可動枠22に、第2軸a2の周りの回転トルクを作用させることにより、第2軸a2の周りにミラー部20を揺動させる。
【0036】
接続部25は、第2可動枠24の外側に、第1軸a1を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。接続部25は、第2軸a2上で第2可動枠24と接続されている。
【0037】
固定枠26は、第2可動枠24を取り囲む矩形状の枠体であって、第2軸a2上で接続部25を介して第2可動枠24と接続されている。
【0038】
また、第1可動枠22には、第1支持部21の近傍に、第1軸a1を挟んで対向する位置に一対の第1角度検出センサ11A、11Bが設けられている。一対の第1角度検出センサ11A、11Bは、それぞれ圧電素子により構成されている。第1角度検出センサ11A、11Bは、それぞれ、ミラー部20の第1軸a1周りの回動に伴う第1支持部21の変形により加わる力を電圧に変換して信号を出力する。すなわち、第1角度検出センサ11A、11Bは、ミラー部20の第1軸a1周りの角度に応じた信号を出力する。
【0039】
また、第2可動枠24には、第2支持部23の近傍に、第2軸a2を挟んで対向する位置に一対の第2角度検出センサ12A、12Bが設けられている。一対の第2角度検出センサ12A、12Bは、それぞれ圧電素子により構成されている。第2角度検出センサ12A、12Bは、それぞれ、ミラー部20の第2軸a2周りの回動に伴う第2支持部23の変形により加わる力を電圧に変換して信号を出力する。すなわち、第2角度検出センサ12A、12Bは、ミラー部20の第2軸a2周りの角度に応じた信号を出力する。
【0040】
図2では、第1アクチュエータ31及び第2アクチュエータ32に駆動信号を与えるための配線及び電極パッドについては図示を省略している。また、
図2では、第1角度検出センサ11A、11B及び第2角度検出センサ12A、12Bから信号を出力するための配線及び電極パッドについても図示を省略している。電極パッドは、固定枠26上に複数設けられる。
【0041】
ミラー部20の第1軸a1周りの振れ角(以下、「第1振れ角」という)θ1は、駆動制御部5が第1アクチュエータ31に与える駆動信号(以下、「第1駆動信号」という)により制御される。第1駆動信号は、例えば正弦波の交流電圧である。第1駆動信号は、一対の第1アクチュエータ31の一方に印加される駆動電圧波形V1A(t)と、他方に印加される駆動電圧波形V1B(t)とを含む。駆動電圧波形V1A(t)と駆動電圧波形V1B(t)は、互いに逆位相(すなわち位相差180°)である。
【0042】
なお、第1振れ角θ1は、反射面20Aの法線が、XZ平面においてZ方向に対して傾斜する角度である。
【0043】
ミラー部20の第2軸a2周りの振れ角(以下、「第2振れ角」という)θ2は、駆動制御部5が第2アクチュエータ32に与える駆動信号(以下、「第2駆動信号」という)により制御される。第2駆動信号は、例えば正弦波の交流電圧である。第2駆動信号は、一対の第2アクチュエータ32の一方に印加される駆動電圧波形V2A(t)と、他方に印加される駆動電圧波形V2B(t)とを含む。駆動電圧波形V2A(t)と駆動電圧波形V2B(t)は、互いに逆位相(すなわち位相差180°)である。
【0044】
なお、第2振れ角θ2は、反射面20Aの法線が、YZ平面においてZ方向に対して傾斜する角度である。
【0045】
図3に、第1駆動信号の一例を示し、
図4に、第2駆動信号の一例を示す。
図3は、第1駆動信号に含まれる駆動電圧波形V
1A(t)及びV
1B(t)を示す。
図4は、第2駆動信号に含まれる駆動電圧波形V
2A(t)及びV
2B(t)を示す。
【0046】
駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)は、それぞれ次のように表される。
V1A(t)=Voff1+V1sin(2πfd1t)
V1B(t)=Voff1+V1sin(2πfd1t+α)
【0047】
ここで、V1は振幅電圧である。Voff1はバイアス電圧である。Voff1はゼロでもよい。fd1は駆動周波数(以下、「第1駆動周波数」という)である。tは時間である。αは、駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)の位相差である。本実施形態では、例えば、α=180°とする。
【0048】
駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)が一対の第1アクチュエータ31に印加されることにより、ミラー部20は、第1駆動周波数fd1で第1軸a1周りに揺動する。
【0049】
駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)は、それぞれ次のように表される。
V2A(t)=Voff2+V2sin(2πfd2t+φ)
V2B(t)=Voff2+V2sin(2πfd2t+β+φ)
【0050】
ここで、V2は振幅電圧である。Voff2はバイアス電圧である。Voff2はゼロでもよい。fd2は駆動周波数(以下、「第2駆動周波数」という)である。tは時間である。βは、駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)の位相差である。本実施形態では、例えば、β=180°とする。また、φは、駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)と、駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)との位相差である。
【0051】
駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)が一対の第2アクチュエータ32に印加されることにより、ミラー部20は、第2駆動周波数fd2で第2軸a2周りに揺動する。
【0052】
本実施形態では、第1駆動周波数fd1は、ミラー部20の第1軸a1周りの共振周波数に一致するように設定される。第2駆動周波数fd2は、第1駆動周波数fd1と、第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2の周波数比Hに基づいて設定される。周波数比Hは、描画パターンに応じた光の走査密度に基づいて設定される。その第2駆動周波数fd2が、ミラー部20の第2軸a2周りの共振周波数に一致するようにMMD4が設定される。本実施形態では、fd1>fd2とする。すなわち、ミラー部20は、第1軸a1周りの揺動周波数が、第2軸a2周りの揺動周波数よりも高い。なお、第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2は、必ずしも共振周波数と一致していなくてもよい。例えば、第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2は、それぞれ共振周波数の近傍の周波数範囲(例えば、共振周波数をピーク値とする周波数分布の半値幅の範囲)内の周波数であってもよい。この周波数範囲は、例えば、いわゆるQ値の範囲内である。
【0053】
次に、
図5を参照して、駆動制御部5の機能的な構成を説明する。
図5に示すように、駆動制御部5は、第1駆動信号生成部60A、第2駆動信号生成部60B、第1信号処理部61A、第2信号処理部61B、第1位相シフト部62A、第2位相シフト部62B、第1ゼロクロスパルス出力部63A、第2ゼロクロスパルス出力部63B、導出部64、クロック信号生成部65、及び光源駆動部66を有する。
【0054】
第1駆動信号生成部60A、第1信号処理部61A、及び第1位相シフト部62Aは、ミラー部20の第1軸a1周りの揺動が指定の周波数の振動状態を維持するようにフィードバック制御を行ってもよい。第2駆動信号生成部60B、第2信号処理部61B、及び第2位相シフト部62Bは、ミラー部20の第2軸a2周りの揺動が指定の周波数の振動状態を維持するようにフィードバック制御を行ってもよい。
【0055】
第1駆動信号生成部60Aは、基準波形に基づいて、上述の駆動電圧波形V1A(t)及びV1B(t)を含む第1駆動信号を生成し、生成した第1駆動信号を、第1位相シフト部62Aを介して一対の第1アクチュエータ31に付与する。これにより、ミラー部20は、第1軸a1周りに揺動する。
【0056】
第2駆動信号生成部60Bは、基準波形に基づいて、上述の駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)を含む第2駆動信号を生成し、生成した第2駆動信号を、第2位相シフト部62Bを介して一対の第2アクチュエータ32に付与する。これにより、ミラー部20は、第2軸a2周りに揺動する。
【0057】
第1駆動信号生成部60Aが生成する第1駆動信号と、第2駆動信号生成部60Bが生成する第2駆動信号とは、第2駆動信号に含まれる駆動電圧波形V2A(t)及びV2B(t)を示す式において、φで示したとおり、位相同期されている。
【0058】
第1角度検出センサ11A、11Bは、ミラー部20の第1軸a1周りの角度に応じた信号を出力する。第2角度検出センサ12A、12Bは、ミラー部20の第2軸a2周りの角度に応じた信号を出力する。
【0059】
図6は、一対の第1角度検出センサ11A、11Bから出力される信号の一例を示す。
図6において、S1a
1及びS1a
2は、ミラー部20を第2軸a
2周りには揺動させずに、第1軸a
1周りにのみ揺動させた場合に一対の第1角度検出センサ11A、11Bから出力される信号を表している。信号S1a
1、S1a
2は、第1駆動周波数f
d1を有する正弦波に近似した波形信号であり、互いに逆位相となる。
【0060】
ミラー部20を第1軸a
1及び第2軸a
2の周りに同時に揺動させた場合には、一対の第1角度検出センサ11A、11Bの出力信号には、ミラー部20の第2軸a
2周りの揺動に起因する振動ノイズRN1が重畳される。S1b
1は、信号S1a
1に振動ノイズRN1が重畳された信号を表している。S1b
2は、信号S1a
2に振動ノイズRN1が重畳された信号を表している。なお、
図6の例では、本実施形態の説明のために、振動ノイズRN1を強調して示している。
【0061】
図7は、一対の第2角度検出センサ12A、12Bから出力される信号の一例を示す。
図7において、S2a
1及びS2a
2は、ミラー部20を第1軸a
1周りには揺動させずに、第2軸a
2周りにのみ揺動させた場合に一対の第2角度検出センサ12A、12Bから出力される信号を表している。信号S2a
1、S2a
2は、第2駆動周波数f
d2を有する正弦波に近似した波形信号であり、互いに逆位相となる。
【0062】
ミラー部20を第1軸a
1及び第2軸a
2の周りに同時に揺動させた場合には、一対の第2角度検出センサ12A、12Bの出力信号には、ミラー部20の第1軸a
1周りの揺動に起因する振動ノイズRN2が重畳される。S2b
1は、信号S2a
1に振動ノイズRN2が重畳された信号を表している。S2b
2は、信号S2a
2に振動ノイズRN2が重畳された信号を表している。なお、
図7の例では、本実施形態の説明のために、振動ノイズRN2を強調して示している。
【0063】
第1信号処理部61Aは、一対の第1角度検出センサ11A、11Bから出力されたS1a1、S1a2に基づいて、振動ノイズRN1が除去された信号(以下、「第1角度検出信号」という)S1cを生成する。第2信号処理部61Bは、一対の第2角度検出センサ12A、12Bから出力されたS2a1、S2a2に基づいて、振動ノイズRN2が除去された信号(以下、「第2角度検出信号」という)S2cを生成する。
【0064】
第1信号処理部61Aは、例えば、一例として
図8に示す構成の回路によって実現が可能である。
図8に示すように、第1信号処理部61Aは、バッファーアンプ71、可変ゲインアンプ72、減算回路73、及びゲイン調整回路74により構成されている。ゲイン調整回路74は、第1BPF(Band Pass Filter)回路75A、第2BPF回路75B、第1検波回路76A、第2検波回路76B、減算回路77により構成されている。減算回路73及び減算回路77は、オペアンプで構成された差動増幅回路である。
【0065】
第1角度検出センサ11Aから出力された信号S1b1は、バッファーアンプ71を経由して、減算回路73のプラス入力端子(非反転入力端子)に入力される。また、バッファーアンプ71から出力される信号は、減算回路73に入力されるまでの間に途中で分岐されて、ゲイン調整回路74内の第1BPF回路75Aに入力される。
【0066】
第1角度検出センサ11Bから出力された信号S1b2は、可変ゲインアンプ72を経由して、減算回路73のマイナス入力端子(反転入力端子)に入力される。また、可変ゲインアンプ72から出力される信号は、減算回路73に入力されるまでの間に途中で分岐されて、ゲイン調整回路74内の第2BPF回路75Bに入力される。
【0067】
第1BPF回路75A及び第2BPF回路75Bは、それぞれ、第2駆動周波数fd2を中心周波数とする通過帯域B1を有する。通過帯域B1は、例えば、fd2±5kHの周波数帯である。振動ノイズRN1は、第2駆動周波数fd2を有するので、通過帯域B1を通過する。したがって、第1BPF回路75Aは、バッファーアンプ71から入力された信号から、振動ノイズRN1を抽出して出力する。第2BPF回路75Bは、可変ゲインアンプ72から入力された信号から、振動ノイズRN1を抽出して出力する。
【0068】
第1検波回路76A及び第2検波回路76Bは、それぞれ、例えば、RMS-DCコンバータ(Root Mean Squared value to Direct Current converter)により構成されている。第1検波回路76Aは、第1BPF回路75Aから入力された振動ノイズRN1の振幅をDC電圧信号に変換して、減算回路77のプラス入力端子に入力する。第2検波回路76Bは、第2BPF回路75Bから入力された振動ノイズRN1の振幅をDC電圧信号に変換して、減算回路77のマイナス入力端子に入力する。
【0069】
減算回路77は、第1検波回路76Aから入力されたDC電圧信号から第2検波回路76Bから入力されたDC電圧信号を減算した値d1を出力する。値d1は、第1角度検出センサ11Aから出力された信号S1b1に含まれる振動ノイズRN1の振幅と、第1角度検出センサ11Bから出力された信号S1b2に含まれる振動ノイズRN1の振幅との差に対応する。減算回路77は、値d1を、ゲイン調整値として可変ゲインアンプ72のゲイン調整端子に入力する。
【0070】
可変ゲインアンプ72は、ゲイン調整値として入力された値d1を、第1角度検出センサ11Bから入力される信号S1b2に乗じることにより、信号S1b2の振幅レベルを調整する。このように、ゲイン調整回路74によりフィードバック制御が行われることで、可変ゲインアンプ72を通過した後の信号S1b2に含まれる振動ノイズRN1の振幅が、バッファーアンプ71を通過した後の信号S1b1に含まれる振動ノイズRN1の振幅と一致するように調整される。
【0071】
減算回路73は、プラス入力端子に入力された信号S1b
1から、マイナス入力端子に入力された信号S1b
2を減算した値を出力する。上記のフィードバック制御により両信号に含まれる振動ノイズRN1の振幅が一致しているので、減算回路73による減算処理により、両信号に含まれる振動ノイズRN1が相殺される。従って、減算回路73からは、振動ノイズRN1が除去された信号である第1角度検出信号S1c(
図9参照)が出力される。
【0072】
図9は、一対の第1角度検出センサ11A、11Bから出力されたS1b
1、S1b
2に基づいて、第1角度検出信号S1cが生成される様子を示している。第1角度検出信号S1cは、信号S1b
1から振動ノイズRN1が除去された信号の振幅を2倍とした信号に対応する。
【0073】
ミラー部20の第1軸a
1周りの揺動が共振状態を維持している場合には、
図9に示すように、第1信号処理部61Aから出力される第1角度検出信号S1cは、第1駆動信号に含まれる駆動電圧波形V
1A(t)に対して、位相に90°の遅れが生じる。
【0074】
第2信号処理部61Bは、第1信号処理部61Aと同様の構成により実現が可能であるため、説明を省略する。
【0075】
図10は、一対の第2角度検出センサ12A、12Bから出力されたS2b
1、S2b
2に基づいて、第2角度検出信号S2cが生成される様子を示している。第2角度検出信号S2cは、信号S2b
1から振動ノイズRN2が除去された信号の振幅を2倍とした信号に対応する。
【0076】
ミラー部20の第2軸a
2周りの揺動が共振状態を維持している場合には、
図10に示すように、第2信号処理部61Bから出力される第2角度検出信号S2cは、第2駆動信号に含まれる駆動電圧波形V
2A(t)に対して、位相に90°の遅れが生じる。
【0077】
第1信号処理部61Aにより生成された第1角度検出信号S1cは、第1駆動信号生成部60Aにフィードバックされる。第1位相シフト部62Aは、第1駆動信号生成部60Aから出力された駆動電圧波形の位相をシフトする。第1位相シフト部62Aは、例えば、位相を90°シフトさせる。また、第1信号処理部61Aにより生成された第1角度検出信号S1cは、第1ゼロクロスパルス出力部63Aに入力される。
【0078】
第2信号処理部61Bにより生成された第2角度検出信号S2cは、第2駆動信号生成部60Bにフィードバックされる。第2位相シフト部62Bは、第2駆動信号生成部60Bから出力された駆動電圧波形の位相をシフトする。第2位相シフト部62Bは、例えば、位相を90°シフトさせる。また、第2信号処理部61Bにより生成された第2角度検出信号S2cは、第2ゼロクロスパルス出力部63Bに入力される。
【0079】
第1ゼロクロスパルス出力部63Aは、第1信号処理部61Aから入力される第1角度検出信号S1cに基づき、ゼロクロスパルス(以下、「第1ゼロクロスパルス」という。)ZC1を生成する。第1ゼロクロスパルス出力部63Aは、ゼロクロス検出回路により構成されている。
【0080】
図11に示すように、第1ゼロクロスパルス出力部63Aは、交流信号である第1角度検出信号S1cがゼロボルトを横切るタイミングで第1ゼロクロスパルスZC1を生成する。第1ゼロクロスパルス出力部63Aは、生成した第1ゼロクロスパルスZC1を光源駆動部66に入力する。
【0081】
第2ゼロクロスパルス出力部63Bは、第2信号処理部61Bから入力される第2角度検出信号S2cに基づき、ゼロクロスパルス(以下、「第2ゼロクロスパルス」という。)ZC2を生成する。第2ゼロクロスパルス出力部63Bは、ゼロクロス検出回路により構成されている。
【0082】
図12に示すように、第2ゼロクロスパルス出力部63Bは、交流信号である第2角度検出信号S2cがゼロボルトを横切るタイミングで第2ゼロクロスパルスZC2を生成する。第2ゼロクロスパルス出力部63Bは、生成した第2ゼロクロスパルスZC2を光源駆動部66に入力する。
【0083】
なお、第1ゼロクロスパルス出力部63A及び第2ゼロクロスパルス出力部63Bは、正弦波が負から正に向けてゼロになる時点及び正弦波が正から負に向けてゼロになる時点の双方を用いてゼロクロスパルスを出力しているが、これに限定されない。例えば、第1ゼロクロスパルス出力部63A及び第2ゼロクロスパルス出力部63Bは、正弦波が負から正に向けてゼロになる時点及び正弦波が正から負に向けてゼロになる時点の何れか一方を用いてゼロクロスパルスを出力してもよい。
【0084】
光源駆動部66は、例えば、画像描画システム10の外部から供給される描画データに基づいて、光源3を駆動する。また、光源駆動部66は、光源3によるレーザ光の照射タイミングが、第1ゼロクロスパルスZC1及び第2ゼロクロスパルスZC2と同期するように照射タイミングを制御する。
【0085】
以上のように、第1駆動周波数fd1、第2駆動周波数fd2、及び第1駆動周波数fd1と第2駆動周波数fd2の周波数比Hの初期設定値に従って、光源3が駆動し、かつミラー部20が第1軸a1及び第2軸a2の周りに揺動する。これにより、ミラー部20で反射される光ビームLが被走査面6上においてリサージュ波形を描くように走査される。
【0086】
ところで、ミラー部20の第1軸a
1周りの共振周波数及び第2軸a
2周りの共振周波数は、環境条件によって変動する場合がある。本実施形態では、環境条件として環境温度を適用した例を説明する。
図13に、4つの環境温度それぞれでの第1駆動周波数f
d1と第1振れ角θ
1との関係の一例を示す。
図13に示すように、環境温度が変わると、共振周波数が変動する結果、第1振れ角θ
1も変動する。
図14に、4つの環境温度それぞれでの第2駆動周波数f
d2と第2振れ角θ
2との関係の一例を示す。
図14に示すように、環境温度が変わると、共振周波数が変動する結果、第2振れ角θ
2も変動する。
【0087】
そこで、本実施形態に係る光走査装置2は、環境温度の変動に対応して第1駆動周波数f
d1、及び第2駆動周波数f
d2を変更する。この際、周波数比Hが変わってしまうと、被走査面6上における光の走査密度も変わってしまうため、光走査装置2は、周波数比Hを維持した状態で第1駆動周波数f
d1、及び第2駆動周波数f
d2を変更する。周波数比Hを維持した状態で第1駆動周波数f
d1、及び第2駆動周波数f
d2を変更する場合の第1駆動信号生成部60A、第2駆動信号生成部60B、導出部64、及びクロック信号生成部65の機能について説明する。本実施形態では、この機能を実現するために、
図13に示した環境温度毎の第1駆動周波数f
d1と第1振れ角θ
1との関係を表す情報(以下、「温度特性情報」という)が、駆動制御部5が備える不揮発性メモリ等の記憶装置に予め記憶される。温度特性情報は、環境温度毎に第1駆動周波数f
d1と第1振れ角θ
1とが対応付けられたルックアップテーブルでもよいし、環境温度を入力すると、第1振れ角θ
1が最大となる第1駆動周波数f
d1を出力する関数でもよい。
【0088】
本実施形態では、第1駆動信号生成部60Aによる第1駆動信号の生成及び第2駆動信号生成部60Bによる第2駆動信号の生成にDDS(Direct Digital Synthesizer)を用いた場合を例に生成する。また、以下では、変更前の第1駆動周波数fd1を「fd1A」と表記し、変更後の第1駆動周波数fd1を「fd1B」と表記する。また、以下では、変更前の第2駆動周波数fd2を「fd2A」と表記し、変更後の第2駆動周波数fd2を「fd2B」と表記する。
【0089】
DDSの出力周波数は、以下の(1)式で表される。
【0090】
【0091】
ここで、foutはDDSの出力周波数である。fcはシステムクロック周波数である。Nは位相アキュムレータの長さである。Mはチューニングワード値である。システムクロック周波数及び位相アキュムレータの長さは、既知である。従って、第1駆動信号生成部60Aは、(1)式におけるfoutが目標とする第1駆動周波数fd1となるようにチューニングワード値Mを設定することによって、チューニングワード値Mに応じた第1駆動周波数fd1を有する第1駆動信号を生成することができる。また、第2駆動信号生成部60Bは、(1)式におけるfoutが目標とする第2駆動周波数fd2となるようにチューニングワード値Mを設定することによって、チューニングワード値Mに応じた第2駆動周波数fd2を有する第2駆動信号を生成することができる。
【0092】
以下では、第1駆動信号を生成するためにDDSに設定されるチューニングワード値Mを「M1」と表記し、第2駆動信号を生成するためにDDSに設定されるチューニングワード値Mを「M2」と表記する。チューニングワード値M1は開示の技術に係る第1設定値の一例であり、fd1はM1に比例する。チューニングワード値M2は開示の技術に係る第2設定値の一例であり、fd2はM2に比例する。また、以下では、変更前の第1駆動周波数fd1Aに対応するチューニングワード値Mを「M1A」と表記し、変更後の第1駆動周波数fd1Bに対応するチューニングワード値Mを「M1B」と表記する。また、以下では、変更前の第2駆動周波数fd2Aに対応するチューニングワード値Mを「M2A」と表記し、変更後の第2駆動周波数fd2Bに対応するチューニングワード値Mを「M2B」と表記する。
【0093】
導出部64は、温度センサ7により検出された温度を取得し、取得した温度に基づいて第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2を変更するか否かを判定する。具体的には、例えば、導出部64は、直近にチューニングワード値M1及びチューニングワード値M2を設定した際の温度と、取得した温度との差の絶対値が一定値(例えば、1℃)以上の場合に第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2を変更すると判定する。
【0094】
導出部64は、第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2を変更すると判定した場合、M1A及びM2Aの最大公約数Gを導出する。次に、導出部64は、M1Aを最大公約数Gで除算して得られる商である第1の数Q1を導出する。また、導出部64は、M2Aを最大公約数Gで除算して得られる商である第2の数Q2を導出する。
【0095】
また、導出部64は、取得した温度及び温度特性情報に基づいて、目標とする第1駆動周波数f
d1を決定する。一例として
図15に示すように、環境温度が25℃から35℃に変動した場合、目標とする第1駆動周波数f
d1はf1からf2になる。このように、導出部64は、取得した温度に対応して第1振れ角θ
1が目標の角度(本実施形態では、最大の角度)となる第1駆動周波数f
d1を目標とする第1駆動周波数f
d1とする。
【0096】
導出部64は、(1)式に従って、目標とする第1駆動周波数fd1が得られるチューニングワード値M1を導出する。また、導出部64は、M1A+n(nは整数)×Q1により得られる値が、導出したチューニングワード値M1に最も近くなるnを決定する。そして、導出部64は、以下の(2)式に従って、チューニングワード値M1Bを導出する。
M1B=M1A+n×Q1・・・(2)
すなわち、M1Bは、M1Aが第1の数Q1単位で変更された値と言える。
【0097】
また、導出部64は、以下の(3)式に従って、チューニングワード値M2Bを導出する。
M2B=M2A+n×Q2・・・(3)
すなわち、M2Bは、M2Aが第2の数Q2単位で変更された値と言える。
【0098】
(1)式のMにM1Bを代入することでfd1Bが得られ、(1)式のMにM2Bを代入することでfd2Bが得られる。ここで、M1A=G×Q1であり、かつM2A=G×Q2であるため、第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2の変更前の周波数比Hは、fd2A/fd1A=M2A/M1A=(G×Q2)/(G×Q1)=Q2/Q1となる。また、第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2の変更後の周波数比Hは、fd2B/fd1B=M2B/M1B=(M2A+n×Q2)/(M1A+n×Q1)=(G×Q2+n×Q2)/(G×Q1+n×Q1)=((G+n)×Q2)/((G+n)×Q1)=Q2/Q1となる。このように、M1Aを第1の数Q1単位で変更し、かつM2Aを第2の数Q2単位で変更することによって、変更後の周波数比Hであるfd1Bとfd2Bの比は、変更前の周波数比Hであるfd1Aとfd2Aとの比に厳密に一致する。
【0099】
クロック信号生成部65は、第1駆動信号生成部60Aが第1駆動周波数f
d1を変更する際、及び第2駆動信号生成部60Bが第2駆動周波数f
d2を変更する際に用いられる共通のクロック信号を生成する。一例として
図16に示すように、共通のクロック信号は、M
1AとQ2とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がるクロック信号である。具体的には、共通のクロック信号は、システムクロックが(M
1A×Q2)回立ち上がる毎にクロックが立ち上がるクロック信号である。共通のクロック信号の1周期は、第1駆動信号のQ2周期、及び第2駆動信号のQ1周期に相当する。共通のクロック信号の1周期に相当する期間を、動画像を描画する際の1フレームの期間としてもよい。
【0100】
なお、M1A×Q2=M2A×Q1であるため、共通のクロック信号は、システムクロックが(M2A×Q1)回立ち上がる毎にクロックが立ち上がるクロック信号であってもよい。
【0101】
第1駆動信号生成部60A及び第2駆動信号生成部60Bは、クロック信号生成部65により生成される共通のクロック信号に基づく同じタイミングに、第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2を変更する。
【0102】
具体的には、一例として
図17に示すように、第1駆動信号生成部60Aは、共通のクロック信号のクロックが立ち上がるタイミングに、DDSのチューニングワード値M
1を導出部64により導出されたM
1Bに変更する。これにより、第1駆動信号生成部60Aは、第1駆動周波数f
d1がf
d1Bに変更された第1駆動信号を生成し、生成した第1駆動信号を、第1位相シフト部62Aを介して一対の第1アクチュエータ31に付与する。
【0103】
また、
図17に示すように、第2駆動信号生成部60Bは、第1駆動信号生成部60Aが利用したクロックと同じクロックが立ち上がるタイミングに、DDSのチューニングワード値M
2を導出部64により導出されたM
2Bに変更する。これにより、第2駆動信号生成部60Bは、第2駆動周波数f
d2がf
d2Bに変更された第2駆動信号を生成し、生成した第2駆動信号を、第2位相シフト部62Bを介して一対の第2アクチュエータ32に付与する。
【0104】
第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2の変更とともに、クロック信号生成部65が生成するクロック信号も、(M1B×Q2)回立ち上がる毎にクロックが立ち上がるクロック信号に変更されてもよい。この場合のQ2は、M2BをM1B及びM2Bの最大公約数Gで除算して得られる商である。
【0105】
次に、
図18を参照して、駆動周波数変更処理の流れを説明する。駆動周波数変更処理の流れは、例えば、画像描画システム10による画像の描画中に実行される。
【0106】
図18のステップS10で、導出部64は、前述したように、温度センサ7により検出された温度を取得し、取得した温度に基づいて第1駆動周波数f
d1及び第2駆動周波数f
d2を変更するか否かを判定する。この判定が否定判定となった場合、再度ステップS10が実行され、肯定判定となった場合、処理はステップS12に移行する。
【0107】
ステップS12で、導出部64は、M1A及びM2Aの最大公約数Gを導出する。ステップS14で、導出部64は、M1AをステップS12で導出された最大公約数Gで除算して得られる商である第1の数Q1を導出する。また、導出部64は、M2AをステップS12で導出された最大公約数Gで除算して得られる商である第2の数Q2を導出する。
【0108】
ステップS16で、導出部64は、ステップS10で取得された温度と温度特性情報に基づいて、目標とする第1駆動周波数fd1を決定する。また、導出部64は、上記(1)式に従って、目標とする第1駆動周波数fd1が得られるチューニングワード値M1を導出する。また、導出部64は、M1A+n×Q1により得られる値が、導出したチューニングワード値M1に最も近くなるnを決定する。そして、導出部64は、上記(2)式に従って、チューニングワード値M1Bを導出する。また、導出部64は、上記(3)式に従って、チューニングワード値M2Bを導出する。
【0109】
ステップS18で、第1駆動信号生成部60A及び第2駆動信号生成部60Bは、クロック信号生成部65により生成される共通のクロック信号が立ち上がるまで待機する。クロック信号生成部65により生成される共通のクロック信号が立ち上がると、ステップS18の判定が肯定判定なり、処理はステップS20に移行する。
【0110】
ステップS20で、第1駆動信号生成部60Aは、DDSのチューニングワード値M1をステップS16で導出されたM1Bに変更する。これにより、第1駆動信号生成部60Aは、第1駆動周波数fd1がfd1Bに変更された第1駆動信号を生成し、生成した第1駆動信号を、第1位相シフト部62Aを介して一対の第1アクチュエータ31に付与する。また、第2駆動信号生成部60Bは、DDSのチューニングワード値M2をステップS16で導出されたM2Bに変更する。これにより、第2駆動信号生成部60Bは、第2駆動周波数fd2がfd2Bに変更された第2駆動信号を生成し、生成した第2駆動信号を、第2位相シフト部62Bを介して一対の第2アクチュエータ32に付与する。ステップS20の処理が終了すると、処理はステップS10に戻る。画像描画システム10による画像の描画処理が終了すると、駆動周波数変更処理が終了する。
【0111】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2を変更する場合に、第1駆動周波数fd1と、第2駆動周波数fd2との周波数比Hを厳密に一定に保つことができる。また、第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2を同じタイミングに変更しているため、第1駆動信号及び第2駆動信号の位相差φを維持することができる。
【0112】
なお、第1実施形態において、
図19に示すように、第1駆動信号生成部60A及び第2駆動信号生成部60Bは、2値化した第1駆動信号及び第2駆動信号のそれぞれが立ち上がるタイミングと同じタイミングであって、システムクロックが立ち上がるタイミングに第1駆動周波数f
d1及び第2駆動周波数f
d2を変更してもよい。この場合、システムクロックが共通のクロック信号となる。また、この場合、第1実施形態におけるクロック信号生成部65は不要となる。
【0113】
[第2実施形態]
開示の技術の第2実施形態を説明する。なお、本実施形態に係る画像描画システム10の構成(
図1参照)及びMMD4の構成(
図2参照)は、第1実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0114】
図20を参照して、本実施形態に係る駆動制御部5の機能的な構成について説明する。第1実施形態と同一の機能を有する機能部については、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。駆動制御部5は、第1駆動信号生成部60C、第2駆動信号生成部60D、第1信号処理部61A、第2信号処理部61B、第1位相シフト部62A、第2位相シフト部62B、第1ゼロクロスパルス出力部63A、第2ゼロクロスパルス出力部63B、導出部64、第1クロック信号生成部65A、第2クロック信号生成部65B、及び光源駆動部66を有する。
【0115】
第1クロック信号生成部65Aは、M
1AとQ2とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がる第1クロック信号を生成する。具体的には、一例として
図21に示すように、第1クロック信号生成部65Aは、システムクロックが(M
1A×Q2)回立ち上がる毎にクロックが立ち上がる第1クロック信号を生成する。
【0116】
第2クロック信号生成部65Bは、M
2AとQ1とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がる第2クロック信号を生成する。具体的には、一例として
図21に示すように、第2クロック信号生成部65Bは、システムクロックが(M
2A×Q1)回立ち上がる毎にクロックが立ち上がる第2クロック信号を生成する。
【0117】
本実施形態では、第1クロック信号及び第2クロック信号に位相差がある場合について説明する。この位相差は、第1駆動信号及び第2駆動信号の位相差と等しいため、「φ」と表記する。位相差φの初期値は、第1角度検出信号S1cと第2角度検出信号S2cとの位相差に応じて設定される。以下では、第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2の変更前の位相差φを「φc1」と表記し、変更後の位相差φを「φc2」と表記する。
【0118】
図22に示すように、第2クロック信号生成部65Bは、第1駆動周波数f
d1及び第2駆動周波数f
d2の変更タイミングと同じタイミングに、以下の(4)式に従って、φ
c1を、φ
c1にf
d1Bに対するf
d1Aの比を乗算して得られた位相差φ
c2に変更する。
【0119】
【0120】
また、第1クロック信号生成部65Aは、第1駆動周波数fd1の変更タイミングと同じタイミングに、チューニングワード値M1及び第2の数Q2を、fd1B及びfd2Bに応じた値に変更し、変更後のM1BとQ2とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がる第1クロック信号を生成する。
【0121】
また、第2クロック信号生成部65Bは、第2駆動周波数fd2の変更タイミングと同じタイミングに、チューニングワード値M2及び第1の数Q1を、fd1B及びfd2Bに応じた値に変更し、変更後のM2BとQ1とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がる第2クロック信号を生成する。
【0122】
第1駆動信号生成部60Cは、第1駆動周波数fd1を変更する場合の機能以外の機能については第1実施形態に係る第1駆動信号生成部60Aと同一の機能を有するため、ここでは、第1駆動周波数fd1を変更する場合の機能について説明する。
【0123】
第1駆動信号生成部60Cは、第1クロック信号生成部65Aにより生成される第1クロック信号のクロックが立ち上がるタイミングでDDSのチューニングワード値M
1を導出部64により導出されたM
1Bに変更する。これにより、第1駆動信号生成部60Cは、第1駆動周波数f
d1がf
d1Bに変更された第1駆動信号を生成し、生成した第1駆動信号を、第1位相シフト部62Aを介して一対の第1アクチュエータ31に付与する。この第1駆動周波数f
d1の変更タイミングは、例えば、
図22の上段のt
1で示される。
【0124】
第2駆動信号生成部60Dは、第2駆動周波数fd2を変更する場合の機能以外の機能については第1実施形態に係る第2駆動信号生成部60Bと同一の機能を有するため、ここでは、第2駆動周波数fd2を変更する場合の機能について説明する。
【0125】
第2駆動信号生成部60Dは、第2クロック信号生成部65Bにより生成される第2クロック信号のクロックが立ち上がるタイミングでDDSのチューニングワード値M
2を導出部64により導出されたM
2Bに変更する。これにより、第2駆動信号生成部60Dは、第2駆動周波数f
d2がf
d2Bに変更された第2駆動信号を生成し、生成した第2駆動信号を、第2位相シフト部62Bを介して一対の第2アクチュエータ32に付与する。この第2駆動周波数f
d2の変更タイミングは、例えば、
図22の上段のt
2で示される。
【0126】
次に、
図23を参照して、本実施形態に係る駆動周波数変更処理の流れを説明する。駆動周波数変更処理の流れは、例えば、画像描画システム10による画像の描画中に実行される。
図23における
図18と同一の処理を実行するステップについては、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0127】
図23のステップS16の処理が終了すると、処理はステップS30に移行する。ステップS30で、第1駆動信号生成部60Cは、第1クロック信号生成部65Aにより生成される第1クロック信号のクロックが立ち上がるタイミングであるか否かを判定する。この判定が肯定判定となった場合、処理はステップS32に移行する。
【0128】
ステップS32で、第1駆動信号生成部60Cは、DDSのチューニングワード値M1をステップS16で導出されたM1Bに変更する。これにより、第1駆動信号生成部60Cは、第1駆動周波数fd1がfd1Bに変更された第1駆動信号を生成し、生成した第1駆動信号を、第1位相シフト部62Aを介して一対の第1アクチュエータ31に付与する。
【0129】
ステップS34で、第1クロック信号生成部65Aは、チューニングワード値M1及び第2の数Q2を、fd1B及びfd2Bに応じた値に変更し、変更後のM1BとQ2とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がる第1クロック信号を生成する。ステップS34の処理が終了すると、処理はステップS42に移行する。
【0130】
一方、ステップS30の判定が否定判定となった場合、処理はステップS36に移行する。ステップS36で、第2駆動信号生成部60Dは、第2クロック信号生成部65Bにより生成される第2クロック信号のクロックが立ち上がるタイミングであるか否かを判定する。この判定が否定判定となった場合、処理はステップS30に戻り、肯定判定となった場合、処理はステップS38に移行する。
【0131】
ステップS38で、第2駆動信号生成部60Dは、DDSのチューニングワード値M2をステップS16で導出されたM2Bに変更する。これにより、第2駆動信号生成部60Dは、第2駆動周波数fd2がfd2Bに変更された第2駆動信号を生成し、生成した第2駆動信号を、第2位相シフト部62Bを介して一対の第2アクチュエータ32に付与する。
【0132】
ステップS40で、第2クロック信号生成部65Bは、チューニングワード値M2及び第1の数Q1を、fd1B及びfd2Bに応じた値に変更し、変更後のM2BとQ1とを乗算して得られる値に応じてクロックが立ち上がる第2クロック信号を生成する。この際、第2クロック信号生成部65Bは、前述したように、上記(4)式に従って、φc1を、φc1にfd1Bに対するfd1Aの比を乗算して得られた位相差φc2に変更する。ステップS34の処理が終了すると、処理はステップS42に移行する。
【0133】
ステップS42で、導出部64は、第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2の変更が完了したか否かを判定する。この判定が否定判定となった場合、処理はステップS30に戻り、肯定判定となった場合、処理はステップS10に戻る。画像描画システム10による画像の描画処理が終了すると、駆動周波数変更処理が終了する。
【0134】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態では、第1駆動周波数fd1及び第2駆動周波数fd2を異なるクロック信号に基づいて変更した場合でも、第1駆動信号及び第2駆動信号の位相差φを維持することができる。
【0135】
なお、上記各実施形態では、第1駆動周波数fd1を決定してから、第1駆動周波数fd1及び周波数比Hに基づいて第2駆動周波数fd2を決定する場合について説明したが、これに限定されない。第2駆動周波数fd2を決定してから、第2駆動周波数fd2及び周波数比Hに基づいて第1駆動周波数fd1を決定する形態としてもよい。
【0136】
また、上記各実施形態で示したMMD4の構成は一例である。MMD4の構成は、種々の変形が可能である。例えば、ミラー部20を第1軸a1周りの揺動させる第1アクチュエータ31を第2可動枠24に配置し、ミラー部20を第2軸a2周りの揺動させる第2アクチュエータ32を第1可動枠22に配置してもよい。
【0137】
また、上記各実施形態では、一対の第1角度検出センサ11A、11Bが、第1軸a
1を挟んで対向する位置に配置されている場合について説明したが、これに限定されない。例えば、
図24に示すように、一対の第1角度検出センサ11A、11Bは、第2軸a
2を挟んで対向する位置に配置されてもよい。
図24の例では、一対の第1角度検出センサ11A、11Bは、第1可動枠22上において、それぞれ第1支持部21の近傍に配置されている。第1角度検出センサ11Aは、ミラー部20の一方に接続された第1支持部21の近傍に配置されている。第1角度検出センサ11Bは、ミラー部20の他方に接続された第1支持部21の近傍に配置されている。従って、一対の第1角度検出センサ11A、11Bは、第2軸a
2を挟んで対向し、かつミラー部20を挟んで対向する位置に配置されている。また、一対の第1角度検出センサ11A、11Bは、第1軸a
1から同じ方向(
図24の例では-X方向)にずれた位置に配置されている。
【0138】
上記各実施形態のように一対の第1角度検出センサ11A、11Bが第1軸a1を挟んで対向する位置に配置されている場合には、両者の出力信号のうち、一方から他方を減算することにより、振動ノイズを除去することができる。これに対し、この形態例のように、一対の第1角度検出センサ11A、11Bが第2軸a2を挟んで対向する位置に配置されている場合には、両者の出力信号を加算することにより、振動ノイズを除去することができる。
【0139】
この形態例における第1信号処理部61Aの構成の一例を
図25に示す。
図25に示すように、この形態例では、第1信号処理部61Aは、減算回路73に代えて、加算回路73Aを有している。加算回路73Aは、第1角度検出センサ11Aからバッファーアンプ71を経由して入力された信号S1b
1と、第1角度検出センサ11Bから可変ゲインアンプ72を経由して入力された信号S1b
2とを加算した値を出力する。
【0140】
また、上記各実施形態では、一対の第2角度検出センサ12A、12Bが、第2軸a
2を挟んで対向する位置に配置されている場合について説明したが、これに限定されない。例えば、
図24に示すように、一対の第2角度検出センサ12A、12Bは、第1軸a
1を挟んで対向する位置に配置されてもよい。
図24の例では、一対の第2角度検出センサ12A、12Bは、第2可動枠24上において、それぞれ第2支持部23の近傍に配置されている。第2角度検出センサ12Aは、第1可動枠22の一方に接続された第2支持部23の近傍に配置されている。第2角度検出センサ12Bは、第1可動枠22の他方に接続された第2支持部23の近傍に配置されている。従って、一対の第2角度検出センサ12A、12Bは、第1軸a
1を挟んで対向し、かつミラー部20及び第1可動枠22を挟んで対向する位置に配置されている。また、一対の第2角度検出センサ12A、12Bは、第2軸a
2から同じ方向(
図24の例では+Y方向)にずれた位置に配置されている。
【0141】
上記各実施形態のように一対の第2角度検出センサ12A、12Bが第2軸a
2を挟んで対向する位置に配置されている場合には、両者の出力信号のうち、一方から他方を減算することにより、振動ノイズを除去することができる。これに対し、この形態例のように、一対の第2角度検出センサ12A、12Bが第1軸a
1を挟んで対向する位置に配置されている場合には、両者の出力信号を加算することにより、振動ノイズを除去することができる。この形態例における第2信号処理部61Bの構成は、
図25に示す第1信号処理部61Aと同様の構成により実現が可能であるため、説明を省略する。
【0142】
また、上記各実施形態において、一対の第1角度検出センサ11A、11Bのうちの何れか1つがMMD4に設けられる形態としてもよい。同様に、一対の第2角度検出センサ12A、12Bのうちの何れか1つがMMD4に設けられる形態としてもよい。
【0143】
また、駆動制御部5のハードウェア構成は種々の変形が可能である。駆動制御部5は、アナログ演算回路及びデジタル演算回路の少なくとも一方を用いて構成することが可能である。駆動制御部5は、1つのプロセッサで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせで構成されてもよい。プロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、プログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、及び専用電気回路等が含まれる。CPUは、周知のとおりソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサである。PLDは、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の、製造後に回路構成を変更可能なプロセッサである。専用電気回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである。
【符号の説明】
【0144】
2 光走査装置
3 光源
4 マイクロミラーデバイス(MMD)
5 駆動制御部
6 被走査面
7 温度センサ
10 画像描画システム
11A、11B 第1角度検出センサ
12A、12B 第2角度検出センサ
20 ミラー部
20A 反射面
21 第1支持部
22 第1可動枠
23 第2支持部
24 第2可動枠
25 接続部
26 固定枠
30 圧電素子
31 第1アクチュエータ
32 第2アクチュエータ
60A、60C 第1駆動信号生成部
60B、60D 第2駆動信号生成部
61A 第1信号処理部
61B 第2信号処理部
62A 第1位相シフト部
62B 第2位相シフト部
63A 第1ゼロクロスパルス出力部
63B 第2ゼロクロスパルス出力部
64 導出部
65 クロック信号生成部
65A 第1クロック信号生成部
65B 第2クロック信号生成部
66 光源駆動部
71 バッファーアンプ
72 可変ゲインアンプ
73、77 減算回路
73A 加算回路
74 ゲイン調整回路
75A 第1BPF回路
75B 第2BPF回路
76A 第1検波回路
76B 第2検波回路
L 光ビーム
RN1、RN2 振動ノイズ
S1c 第1角度検出信号
S2c 第2角度検出信号
ZC1 第1ゼロクロスパルス
ZC2 第2ゼロクロスパルス
a1 第1軸
a2 第2軸
fd1 第1駆動周波数
fd2 第2駆動周波数