(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151576
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】光半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/062 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H01S5/062
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061259
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀川 浩二
(72)【発明者】
【氏名】金堂 晃久
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173SC02
5F173SC03
5F173SE01
5F173SF13
5F173SF43
5F173SF53
5F173SF62
5F173SH23
5F173SJ15
(57)【要約】
【課題】例えば、電圧印加部が増幅部や発光部に電圧を印加する際に電流値を制御する構成において、構成が大型化したり複雑化したりするのを回避しながら過度な大電圧の印加による増幅部や発光部の損傷を抑制することが可能となるような、新規な改善された光半導体モジュールを得る。
【解決手段】光半導体モジュールは、例えば、発光する発光部と、第一電極間に印加された電圧に応じて活性層で光を増幅または吸収する増幅部と、を有し、レーザ光を出力する半導体光素子と、第一電極間に正電圧または負電圧を印加可能であるとともに当該正電圧または負電圧を印加する際の出力電流または入力電流を制御する電圧印加部と、第一電極間において増幅部に過電圧が印加されるのを抑制する過電圧抑制回路と、を備える。過電圧抑制回路は、活性層と並列に設けられ、増幅部の耐電圧よりも低い閾値電圧で電流を流し始めるよう構成されてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光する発光部と、第一電極間に印加された電圧に応じて活性層で光を増幅または吸収する増幅部と、を有し、レーザ光を出力する半導体光素子と、
前記第一電極間に正電圧または負電圧を印加可能であるとともに当該正電圧または負電圧を印加する際の出力電流または入力電流を制御する電圧印加部と、
前記第一電極間において前記増幅部に過電圧が印加されるのを抑制する過電圧抑制回路と、
を備えた、光半導体モジュール。
【請求項2】
前記過電圧抑制回路は、前記増幅部と並列に設けられ、前記増幅部の耐電圧よりも低い閾値電圧で電流を流し始めるよう構成された、請求項1に記載の光半導体モジュール。
【請求項3】
前記過電圧抑制回路は、前記活性層に対する逆バイアス状態で順方向電流が流れるダイオードを有した、請求項2に記載の光半導体モジュール。
【請求項4】
前記過電圧抑制回路は、前記活性層に対する逆バイアス状態で逆方向電流が流れる第一ツェナーダイオードを有した、請求項2または3に記載の光半導体モジュール。
【請求項5】
前記過電圧抑制回路は、前記第一ツェナーダイオードと直列に設けられ前記活性層に対する順バイアス状態で逆方向電流が流れる第二ツェナーダイオードを有した、請求項4に記載の光半導体モジュール。
【請求項6】
前記過電圧抑制回路は、
前記電圧印加部とは別に設けられ、前記活性層が逆バイアス状態となる電圧を印加可能な電圧源と、
前記増幅部が光を増幅する際には、当該増幅部と前記電圧印加部とを電気的に接続し、前記増幅部が光を吸収する際には、前記増幅部と前記電圧源とを電気的に接続する切替部と、を有した、請求項1に記載の光半導体モジュール。
【請求項7】
前記電圧源は、前記増幅部に一定の電圧を印加する定電圧源である、請求項6に記載の光半導体モジュール。
【請求項8】
第二電極間に印加された電圧に応じて活性層に流れる電流により発光する発光部を有し、レーザ光を出力する半導体光素子と、
前記第二電極間に電圧を印加可能であるとともに当該電圧を印加する際の出力電流を制御する電圧印加部と、
前記第二電極間において前記発光部に過電圧が印加されるのを抑制する過電圧抑制回路と、
を備えた、光半導体モジュール。
【請求項9】
前記過電圧抑制回路は、前記発光部と並列に設けられ、前記発光部の耐電圧よりも低い閾値電圧で電流を流し始めるよう構成された、請求項8に記載の光半導体モジュール。
【請求項10】
前記過電圧抑制回路は、前記活性層に対する順バイアス状態で逆方向電流が流れる第三ツェナーダイオードを有した、請求項9に記載の光半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光部としてのレーザ領域と、光を増幅する増幅部と、を有してレーザ光を出力するよう構成された光半導体素子を備え、当該増幅部に逆バイアスの電圧を印加した場合には当該増幅部がレーザ光を吸収するよう構成された光半導体モジュールが、知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の光半導体モジュールにおいて、増幅部に電圧を印加する電圧印加部が、例えば、電流出力型のDAC(digital analog converter、以下単にIDACと称する)のように、電圧を印加する際に電流値を制御するデバイスである場合、当該電流値は比較的精度良く所定値に制御される。このため、複数の光半導体モジュールにおいて、電圧印加部における電流値の個体差(ばらつき)は、比較的小さくなる。
【0005】
これに対し、複数の光半導体モジュールにおける逆バイアス印加時の増幅部の電流電圧特性の個体差(ばらつき)は、例えば光半導体素子の製造ばらつき等に起因して、比較的大きくなる場合がある。
【0006】
ここで、電圧印加部から増幅部に実際に印加される電圧値は、電流電圧特性の線形性から、電流値と抵抗値との乗算値とみなせる。よって、複数の光半導体モジュールにおける当該電圧値の個体差(ばらつき)は、比較的大きい抵抗値の個体差に応じて、比較的大きくなってしまう虞がある。
【0007】
すなわち、電圧印加部が増幅部に逆バイアスを印加する際に電流値を制御する構成にあっては、複数の光半導体モジュールのうち、増幅部の抵抗値が比較的大きい個体においては、当該増幅部に実際に印加される電圧値が他の個体に比べて大きくなってしまう虞がある。
【0008】
この場合において、仮に、増幅部の抵抗値が比較的大きい個体において、増幅部に実際に印加された逆バイアスにて、十分な光吸収を行える電流値に制御された際の電圧値が、増幅部の耐電圧を超えてしまうと、当該個体においては、増幅部、ひいては光半導体素子、すなわち光半導体モジュールが、損傷してしまう虞がある。そのような個体は、製造時の検査によって取り除けば良いが、その場合、検査に手間がかかる上、歩留まりが悪化してしまうという問題が生じる。
【0009】
また、過電圧による損傷を防止するため、光半導体モジュールに電圧モニタを設けると、装置構成が大型化したり複雑化したりといった問題が生じる。
【0010】
さらに、上述した場合に限らず、増幅部は、例えば、サージ電圧のような過度な大電圧の印加によって損傷する虞があるし、また、発光部も、サージ電圧のような過度な大電圧の印加によって損傷する虞がある。
【0011】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、電圧印加部が増幅部や発光部に電圧を印加する際に電流値を制御する構成において、構成が大型化したり複雑化したりするのを回避しながら過度な大電圧の印加による増幅部や発光部の損傷を抑制することが可能となるような、新規な改善された光半導体モジュールを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光半導体モジュールは、例えば、発光する発光部と、第一電極間に印加された電圧に応じて活性層で光を増幅または吸収する増幅部と、を有し、レーザ光を出力する半導体光素子と、前記第一電極間に正電圧または負電圧を印加可能であるとともに当該正電圧または負電圧を印加する際の出力電流または入力電流を制御する電圧印加部と、前記第一電極間において前記増幅部に過電圧が印加されるのを抑制する過電圧抑制回路と、を備える。
【0013】
前記光半導体モジュールでは、前記過電圧抑制回路は、前記増幅部と並列に設けられ、前記増幅部の耐電圧より低い閾値電圧で電流を流し始めるよう構成されてもよい。
【0014】
前記光半導体モジュールでは、前記過電圧抑制回路は、前記活性層に対する逆バイアス状態で順方向電流が流れるダイオードを有してもよい。
【0015】
前記光半導体モジュールでは、前記過電圧抑制回路は、前記活性層に対する逆バイアス状態で逆方向電流が流れる第一ツェナーダイオードを有してもよい。
【0016】
前記光半導体モジュールでは、前記過電圧抑制回路は、前記第一ツェナーダイオードと直列に設けられ前記活性層に対する順バイアス状態で逆方向電流が流れる第二ツェナーダイオードを有してもよい。
【0017】
前記光半導体モジュールでは、前記過電圧抑制回路は、前記電圧印加部とは別に設けられ、前記活性層が逆バイアス状態となる電圧を印加可能な電圧源と、前記増幅部が光を増幅する際には、当該増幅部と前記電圧印加部とを電気的に接続し、前記増幅部が光を吸収する際には、前記増幅部と前記電圧源とを電気的に接続する切替部と、を有してもよい。
【0018】
前記光半導体モジュールでは、前記電圧源は、前記増幅部に一定の電圧を印加する定電圧源であってもよい。
【0019】
また、本発明の光半導体モジュールは、例えば、第二電極間に印加された電圧に応じて活性層に流れる電流により発光する発光部を有し、レーザ光を出力する半導体光素子と、前記第二電極間に電圧を印加可能であるとともに当該電圧を印加する際の出力電流を制御する電圧印加部と、前記第二電極間において前記発光部に過電圧が印加されるのを抑制する過電圧抑制回路と、を備える。
【0020】
前記光半導体モジュールでは、前記過電圧抑制回路は、前記発光部と並列に設けられ、前記発光部の耐電圧より低い閾値電圧で電流を流し始めるよう構成されてもよい。
【0021】
前記光半導体モジュールでは、前記過電圧抑制回路は、前記活性層に対する順バイアス状態で逆方向電流が流れる第三ツェナーダイオードを有してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、例えば、電圧印加部が増幅部や発光部に電圧を印加する際に電流値を制御する構成において、構成が大型化したり複雑化したりするのを回避しながら過度な大電圧の印加による増幅部や発光部の損傷を抑制することが可能となるような、新規な改善された光半導体モジュールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1実施形態の光半導体モジュールの例示的な概略構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の光半導体モジュールの一部の例示的な回路図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態の光半導体モジュールの一部の例示的な回路図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態の光半導体モジュールの一部の例示的な回路図である。
【
図5】
図5は、第4実施形態の光半導体モジュールの一部の例示的な回路図である。
【
図6】
図6は、第5実施形態の光半導体モジュールの例示的な概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の例示的な複数の実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0025】
以下に示される複数の実施形態は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0026】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の光半導体モジュール10A(10)の概略構成図である。
図1に示されるように、光半導体モジュール10A(10)は、IDAC100と、光半導体素子200と、過電圧抑制回路300Aと、を備えている。
【0027】
光半導体素子200は、発光部211と、増幅部212と、を有している。
【0028】
発光部211には、二つの電極221a,221cが設けられている。発光部211には、IDAC100からこれら二つの電極221a,221cを介して電圧が印加される。二つの電極221a,221c間に印加された電圧に応じて、発光部211内の活性層(不図示)を電流が流れる。これにより、当該活性層が発光し、発光した光が光半導体素子200内で発振することにより、当該光半導体素子200からレーザ光が出力される。電極221a,221cは、第二電極の一例である。
【0029】
増幅部212には、二つの電極222p,222mが設けられている。増幅部212には、IDAC100から二つの電極222p,222mを介して電圧が印加される。二つの電極222p,222m間に印加された順バイアスの電圧に応じて、増幅部212内の活性層(不図示)で光が増幅される。また、IDAC100により、二つの電極222p,222m間に逆バイアスの電圧が印加された場合、増幅部212内の活性層で光が吸収される。よって、増幅部212は、吸収部とも称されうる。電極222p,222mは、第一電極の一例である。
【0030】
IDAC100は、電圧源110と、第一電流可変部121と、第二電流可変部122と、第一電流検知部131と、第二電流検知部132と、制御部140と、を有している。IDAC100は、電圧印加部の一例である。
【0031】
電圧源110は、発光部211の電極221a,221cに対して、正の電圧を印加することができる。また、電圧源110は、増幅部212の電極222p,222mに対し、グラウンドGに対する正の電圧および負の電圧を切り替えて印加することができる。
【0032】
第一電流検知部131は、発光部211へ電圧を印加する際の電流値を検出する。また、第一電流可変部121は、発光部211へ電圧を印加する際の電流値を変更することができる。制御部140は、第一電流検知部131によって検出された電流値が所期の電流値となるよう、第一電流可変部121の作動を制御する。
【0033】
第二電流検知部132は、増幅部212へ電圧を印加する際の電流値を検出する。また、第二電流可変部122は、増幅部212へ電圧を印加する際の電流値を変更することができる。制御部140は、第二電流検知部132によって検出された電流値が所期の電流値となるよう、第二電流可変部122の作動を制御する。
【0034】
このような構成を有したIDAC100は、発光部211に、電極221a,221cを介して、制御部140によって定められた所定の電流値で電圧を印加するとともに、増幅部212に、電極222p,222mを介して、制御部140によって定められた所定の電流値で電圧を印加する。
【0035】
本実施形態では、増幅部212を吸収部として用いる場合、IDAC100の作動により、増幅部212の電極222p,222mには、逆バイアスの電圧が印加される。すなわち、IDAC100は、増幅部212において、所期の光の吸収状態が得られるよう、増幅部212の電極222p,222m間に逆バイアス状態の電圧を印加する。この場合、電極222pの電位は、電極222mの電位よりも低くなる。
【0036】
ここで、IDAC100が、増幅部212に負電圧を印加している際に、電流値I2で電流が流れている場合について考察する。
【0037】
製造ばらつきにより、複数の光半導体素子200(光半導体モジュール10)において、増幅部212の抵抗値R2に個体差(ばらつき)が生じていた場合、当該複数の光半導体素子200のうち、増幅部212の抵抗値R2が比較的大きい個体では、逆バイアス状態における電極222p,222m間の実際の電圧値V2(=I2×R2、絶対値)が比較的大きくなる。逆に、増幅部212の抵抗値R2が比較的小さい個体では、逆バイアス状態における電極222p,222m間の実際の電圧値V2が比較的小さくなる。この場合に、仮に、逆バイアスにて一律の電流制御を行った場合、抵抗値R2が比較的大きい個体において、電極222p,222m間の実際の電圧値V2が増幅部212の耐電圧より大きくなると、増幅部212ひいては光半導体素子200が損傷してしまう虞がある。
【0038】
そこで、本実施形態では、光半導体モジュール10は、電極222p,222m間において増幅部212に過電圧が印加されるのを抑制する過電圧抑制回路300Aを備えている。
【0039】
図1に示されるように、本実施形態では、過電圧抑制回路300Aは、増幅部212と並列に設けられている。
【0040】
図2は、光半導体モジュール10A(10)の一部の例示的な回路図である。
図2に示されるように、本実施形態では、過電圧抑制回路300Aは、ダイオード301を有している。ダイオード301は、増幅部212の活性層に対する逆バイアス状態で、順方向電流が流れるように設けられている。
【0041】
ダイオード301の順方向電圧Vf(絶対値)は、増幅部212の耐電圧Vl(絶対値)より低い値に設定される。また、当該順方向電圧Vfは、増幅部212に逆バイアス状態で流れる電流値I2と増幅部212の抵抗値のばらつきの上限値R2max(例えば平均値+3σ、σ:標準偏差)との乗算値Vmax(=I2×R2max、絶対値)よりも小さい値、例えば、当該乗算値Vmax>Vfに設定される。順方向電圧Vfは、閾値電圧の一例である。
【0042】
このような構成において、電極222p,222m間の実際の電圧値V2(絶対値)が、順方向電圧Vf(閾値電圧、絶対値)以上となった場合には、
図2に示されるように、グラウンドGからIDAC100への電流は、ダイオード301を有した過電圧抑制回路300Aも経由して流れる。このとき、増幅部212の電極222p,222m間の電圧値V2は、順方向電圧Vfに維持され、当該増幅部212には順方向電圧Vfに対応した電流が流れる。したがって、増幅部212における所要の光の吸収作用を得ながら、当該増幅部212の損傷を抑制することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、過電圧抑制回路300Aにより、逆バイアス状態において、増幅部212に過電圧が印加されるのを抑制することができ、当該過電圧の印加による増幅部212、ひいては光半導体素子200、すなわち光半導体モジュール10(10A)の損傷を、抑制することができる。また、増幅部212が増幅する際に印加される電圧は増幅部212の順方向バイアス(ダイオード301にとっては逆バイアス)となるが、当該電圧の絶対値はダイオードの降伏電圧以下である。よって、過電圧抑制回路300Aには電流が流れないものとみなせるため、増幅部212の光増幅機能には影響を与えない。なお、過電圧抑制回路300Aによれば、上述したような光半導体モジュール10の個体差に起因した過電圧に限らず、サージ電圧等の過電圧が印加された場合にも、同様の作用および効果が得られる。
【0044】
また、本実施形態では、過電圧抑制回路300Aは、増幅部212と並列に設けられており、ダイオード301を有している。このような構成によれば、例えば、過電圧抑制回路300Aを、比較的簡素な構成によって実現することができ、過電圧抑制回路300Aを追加したことによる光半導体モジュール10の大型化を抑制できたり、製造の手間やコストの増大を抑制できたり、といった利点が得られる。
【0045】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態の光半導体モジュール10B(10)の一部の例示的な回路図である。
図3に示されるように、本実施形態でも、過電圧抑制回路300Bは、増幅部212と並列に設けられている。
【0046】
ただし、本実施形態では、過電圧抑制回路300Bは、ダイオード301とともに、ツェナーダイオード302を有している。過電圧抑制回路300Bにおいて、ダイオード301およびツェナーダイオード302は、直列に設けられている。ダイオード301は、増幅部212の活性層に対する逆バイアス状態で、順方向電流が流れるように設けられている。また、ツェナーダイオード302は、増幅部212の活性層に対する逆バイアス状態で、逆方向電流が流れるように設けられている。ツェナーダイオード302は、第一ツェナーダイオードの一例である。
【0047】
この場合、逆バイアス状態において、ダイオード301には、印加される電圧が順方向電圧Vfを超えた時点で順方向電流が流れ、ツェナーダイオード302には、印加される電圧がツェナー電圧を超えた時点で逆方向電流が流れる。このため、逆バイアス状態において、電極222p,222m間の実際の電圧値V2(絶対値)が、ダイオード301の順方向電圧Vfとツェナーダイオード302のツェナー電圧Vz2との合計値Vt(=Vf+Vz2、絶対値)以上となった場合に、
図3に示されるように、グラウンドGからIDAC100への電流は、ダイオード301およびツェナーダイオード302を有した過電圧抑制回路300Bも経由して流れる。このとき、増幅部212の電極222p,222m間の電圧値V2は、合計値Vtに維持され、当該増幅部212には合計値Vtに対応した電流が流れる。
【0048】
また、本実施形態では、合計値Vtは、増幅部212の耐電圧Vlより低い値に設定されている。また、合計値Vtは、増幅部212に逆バイアス状態で流れる電流値I2と増幅部212の抵抗値のばらつきの上限値R2max(例えば平均値+3σ、σ:標準偏差)との乗算値Vmax(=I2×R2max、絶対値)よりも小さい値、例えば、当該乗算値Vmax>Vfに設定されている。本実施形態では、合計値Vtが、閾値電圧の一例である。
【0049】
本実施形態によっても、過電圧抑制回路300Bが設けられたことにより、増幅部212における所要の光の吸収作用を得ながら、過電圧による増幅部212、ひいては光半導体素子200、すなわち光半導体モジュール10B(10)の損傷を、抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、過電圧抑制回路300Bがツェナーダイオード302を有する分、ダイオード301のみを有している場合に比べて、増幅部212に印加される最大電圧(合計値Vt)の大きさの設定範囲をより拡大しやすくなるため、光の吸収量の設定範囲をより拡大しやすくなるという利点が得られる。
【0051】
なお、過電圧抑制回路300Bにおける、ダイオード301およびツェナーダイオード302の配列順序は、
図3とは逆であってもよい。
【0052】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態の光半導体モジュール10C(10)の一部の例示的な回路図である。
図4に示されるように、本実施形態では、過電圧抑制回路300Cは、発光部211に対応して設けられており、当該発光部211の過電圧を抑制する。
【0053】
過電圧抑制回路300Cは、発光部211と並列に設けられている。また、過電圧抑制回路300Cは、ツェナーダイオード303を有している。ツェナーダイオード303は、発光部211の活性層に対する順バイアス状態で、逆方向電流が流れるように設けられている。ツェナーダイオード303は、第三ツェナーダイオードの一例である。
【0054】
この場合、順バイアス状態において、ツェナーダイオード303では、印加される電圧がツェナー電圧Vz3(絶対値)を超えた時点で逆方向電流が流れる。このため、例えば、IDAC100の異常等によって、電極221a,221c間の実際の電圧値V1(絶対値)が当該ツェナーダイオード303のツェナー電圧Vz3以上となった場合には、
図4に示されるように、IDAC100からグラウンドGへの電流は、ツェナーダイオード303を有した過電圧抑制回路300Cも経由して流れる。この場合、発光部211の電極221a,221c間の電圧は、ツェナー電圧Vz3に維持され、当該発光部211にはツェナー電圧Vz3に対応した電流が流れる。ツェナー電圧Vz3は、発光部211の耐電圧よりも低く設定されている。本実施形態では、ツェナー電圧Vz3が、閾値電圧の一例である。
【0055】
したがって、本実施形態によれば、過電圧抑制回路300Cが設けられたことにより、発光部211に対するツェナー電圧Vz3以下の電圧の印加による所要の発光作用を得ながら、サージ電圧のような過電圧による発光部211、ひいては光半導体素子200、すなわち光半導体モジュール10C(10)の損傷を、抑制することができる。
【0056】
[第4実施形態]
図5は、第4実施形態の光半導体モジュール10D(10)の一部の例示的な回路図である。
図5に示されるように、本実施形態では、過電圧抑制回路300Dは、増幅部212と対応して設けられており、当該増幅部212の過電圧を抑制する。
【0057】
過電圧抑制回路300Dは、増幅部212と並列に設けられている。また、過電圧抑制回路300Dは、互いに逆向きに設けられた二つのツェナーダイオード302,304を有している。過電圧抑制回路300Dにおいて、ツェナーダイオード302,304は、直列に設けられている。ツェナーダイオード302は、増幅部212の活性層に対する逆バイアス状態で、逆方向電流が流れるように設けられている。また、ツェナーダイオード304は、増幅部212の活性層に対する順バイアス状態で、逆方向電流が流れるように設けられている。ツェナーダイオード302は、第一ツェナーダイオードの一例であり、ツェナーダイオード304は、第二ツェナーダイオードの一例である。
【0058】
順バイアス状態において、ツェナーダイオード304では、印加される電圧が当該ツェナーダイオード304のツェナー電圧Vz4(絶対値)を超えた時点で逆方向電流が流れる。このため、当該順バイアス状態において、例えば、IDAC100の異常等によって、電極222p,222m間の実際の電圧値V2(絶対値)がツェナーダイオード302の順方向電圧Vf4とツェナーダイオード304のツェナー電圧Vz4との合計値(絶対値)以上となった場合には、IDAC100からグラウンドGへの電流は、ツェナーダイオード304を有した過電圧抑制回路300Dも経由して流れる。この場合、増幅部212の電極222p,222m間の電圧は、Vf2+Vz4に維持され、当該増幅部212にはVf2+Vz4に対応した電流が流れる。
【0059】
他方、逆バイアス状態において、ツェナーダイオード302では、印加される電圧が当該ツェナーダイオード302のツェナー電圧Vz4を超えた時点で逆方向電流が流れる。このため、当該逆バイアス状態において、例えば、IDAC100の異常等によって、電極222p,222m間の実際の電圧値V2(絶対値)がツェナーダイオード304の順方向電圧Vf4とツェナーダイオード302のツェナー電圧Vz2との合計値(絶対値)以上となった場合には、グラウンドGからIDAC100への電流は、ツェナーダイオード302を有した過電圧抑制回路300Dも経由して流れる。この場合、増幅部212の電極222p,222m間の電圧は、Vf4+Vz2に維持され、当該増幅部212にはVf4+Vz2に対応した電流が流れる。
【0060】
したがって、本実施形態によれば、増幅部212の順バイアス状態および逆バイアス状態の双方において、サージ電圧のような過電圧による増幅部212、ひいては光半導体素子200、すなわち光半導体モジュール10D(10)の損傷を、抑制することができる。
【0061】
[第5実施形態]
図6は、第5実施形態の光半導体モジュール10E(10)の概略構成図である。
図6に示されるように、光半導体モジュール10E(10)は、IDAC100と、光半導体素子200と、増幅部212の過電圧を抑制する過電圧抑制回路300Eと、を備えている。
図6に示されるように、本実施形態では、過電圧抑制回路300Eは、増幅部212と対応して設けられており、当該増幅部212の過電圧を抑制する。
【0062】
過電圧抑制回路300Eは、切替部305と電圧源306とを有している。
【0063】
電圧源306は、例えば、電圧源110とは別に設けられ、増幅部212に一定の負電圧を印加する定電圧源であって、当該増幅部212の活性層を逆バイアス状態にする。電圧源110は、第一電圧源の一例であり、電圧源306は、第二電圧源の一例である。
【0064】
切替部305は、増幅部212によって光を増幅する際には、当該増幅部212と前記電圧源110とを電気的に接続し、当該増幅部212によって光を吸収する際には、当該増幅部212と電圧源306とを電気的に接続する。切替部305は、例えば、トランジスタのようなスイッチング素子である。切替部305の作動は、例えば、制御部140によって制御される。
【0065】
本実施形態によれば、逆バイアス状態においては、増幅部212を、電圧を印加するIDAC100と電気的に遮断することができるため、複数の光半導体モジュール10のうち増幅部212の抵抗値が比較的大きい個体において、IDAC100から増幅部212に耐圧値を超える電圧が印加されるのを抑制することができる。
【0066】
また、逆バイアス状態においては、定電圧源としての電圧源306が増幅部212に電圧を印加するため、複数の光半導体モジュール10のうち増幅部212の抵抗値の大きい個体にあっても、電極222p,222m間の実際の電圧値V2(絶対値)が大きくなるのを抑制することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0068】
例えば、過電圧抑制回路は、同様の作用および効果が得られる等価な別の回路として構成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10,10A~10E…光半導体モジュール
100…IDAC(電圧印加部)
110…電圧源
121…第一電流可変部
122…第二電流可変部
131…第一電流検知部
132…第二電流検知部
140…制御部
200…光半導体素子
211…発光部
221a,221c…電極(第二電極)
212…増幅部
222p,222m…電極(第一電極)
300A~300E…過電圧抑制回路
301…ダイオード
302…ツェナーダイオード(第一ツェナーダイオード)
303…ツェナーダイオード(第二ツェナーダイオード)
304…ツェナーダイオード(第三ツェナーダイオード)
305…切替部
306…電圧源
G…グラウンド