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特開2023-151582熱伝導シート及び熱伝導シートの製造方法
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  • 特開-熱伝導シート及び熱伝導シートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151582
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】熱伝導シート及び熱伝導シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20231005BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231005BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20231005BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L23/36 D
C08J5/18 CEQ
H01L23/36 M
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061269
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】村上 康之
【テーマコード(参考)】
4F071
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
4F071AA12
4F071AA13
4F071AA21
4F071AA34X
4F071AB03
4F071AD02
4F071AD06
4F071AE22
4F071AF44Y
4F071AG22
4F071AG28
4F071AH12
4F071AH16
4F071BB03
4F071BB04
4F071BC01
4F071BC03
5E322AB04
5E322EA11
5E322FA04
5F136BC05
5F136BC07
5F136FA23
5F136FA63
5F136GA12
(57)【要約】
【課題】熱伝導性及び圧縮性に優れる熱伝導シートを提供する。
【解決手段】アスペクト比が1超である黒鉛粒子の体積分率を50体積%以上にするとともに、黒鉛粒子の長軸が厚み方向に配向するようにし、さらに、厚み方向に熱伝導シートを加圧した場合に、熱伝導シート内の所定の領域に黒鉛粒子の長軸が変曲点を有さないような構造を有する熱伝導シートである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂及び黒鉛粒子を含む、第一主面及び第二主面が厚みを介して隔てられてなる熱伝導シートであって、
前記黒鉛粒子がアスペクト比1.0超であり、前記黒鉛粒子の長軸が前記熱伝導シートの厚み方向に配向してなり、
前記熱伝導シートにおける前記黒鉛粒子の体積分率が50体積%以上であり、
前記熱伝導シートを、前記第一主面側から前記厚み方向に加圧して30%圧縮した後に、前記熱伝導シートの厚み方向断面視において、前記第一主面と前記第二主面との間に位置し、且つ前記第一主面からの厚み方向の距離が、30%圧縮した前記熱伝導シートの厚みに対して30%以上100%以下である領域に、前記黒鉛粒子の前記長軸が変曲点を有さない、
熱伝導シート。
【請求項2】
前記熱伝導シートは、前記第一主面側から前記厚み方向に加圧して30%圧縮した前後における熱伝導率の変化率が40.0%以下であるとともに、
前記熱伝導シートを前記第一主面側から前記厚み方向に0.9MPaの圧力で加圧したときの圧縮率が17%以上である、
請求項1に記載の熱伝導シート。
【請求項3】
前記黒鉛粒子の、レーザー回折散乱法に従う体積平均粒子径が、前記熱伝導シートの前記厚みの90%以上140%以下の範囲である、請求項1又は2に記載の熱伝導シート。
【請求項4】
X線回折プロファイルを用いて、ロットゲーリング法により算出した前記黒鉛粒子の(110)面配向度が0.045以上である、請求項1~3の何れかに記載の熱伝導シート。
【請求項5】
前記第一主面側から前記厚み方向に加圧して30%圧縮した後の前記熱伝導シートについて、X線回折プロファイルを用いて、ロットゲーリング法により算出した前記黒鉛粒子の(110)面配向度が0.020以上0.028以下である、請求項1~4の何れかに記載の熱伝導シート。
【請求項6】
樹脂とアスペクト比1.0超の黒鉛粒子とを含む組成物をロール成形してシート状に成形し、一次シートを得る一次シート成形工程と、
前記一次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記一次シートを折畳又は捲回して、積層体を得る積層体形成工程と、
前記積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、二次シートを得るスライス工程と、を含み、
前記組成物は、前記黒鉛粒子の体積分率が50体積%以上であり、
前記ロール成形では、前記組成物を、第一ロールと、前記第一ロールよりも外周速度が速い第二ロールとの間を通過させる、熱伝導シートの製造方法。
【請求項7】
前記熱伝導シート中に含有される黒鉛粒子の、レーザー回折散乱法に従う体積平均粒子径が、前記熱伝導シートの前記厚みの90%以上140%以下の範囲である、請求項6に記載の熱伝導シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導シート及び熱伝導シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パワー半導体(IGBTモジュール等)及び集積回路(IC)チップ等の電子部品は、高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、電子部品を用いた電子機器では、電子部品の温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。
【0003】
電子部品の温度上昇による機能障害対策としては、一般に、電子部品等の発熱体に対し、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を取り付けることによって、放熱を促進させる方法が採られている。そして、放熱体を使用する際には、発熱体から放熱体へと熱を効率的に伝えるために、発熱体と放熱体との間に熱伝導性が高いシート状の部材(以下、「熱伝導シート」ともいう。)を用いる。
【0004】
熱伝導シートには、放熱を促進するための高い熱伝導性の他に、高い柔軟性が求められる。近年では、熱伝導シートの属性をより一層高めるために種々の熱伝導シートの製造方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、鱗片状、楕球状又は棒状であり、結晶中の6員環面が鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している黒鉛粒子(A)と、Tgが50℃以下である有機高分子化合物(B)とを含有する組成物を、黒鉛粒子(A)の長径の平均値の20倍以下の厚みに圧延成形、プレス成形、押出成形又は塗工し、主たる面に関してほぼ平行な方向に黒鉛粒子(A)が配向した一次シートを作製し、一次シートを積層して成形体を得、得られた成形体を一次シート面から出る法線に対し0度~30度の角度でスライスする、熱伝導シートの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5381102号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、熱伝導シートには、熱伝導性に加えて、発熱体と放熱体との間における熱伝導効率をより一層高める観点から、厚み方向において圧力が印加された際につぶれやすいこと、言い換えると圧縮性に優れることも必要とされている。
【0008】
そこで、本発明は、熱伝導性及び圧縮性に優れる熱伝導シート、及びこのような熱伝導シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、熱伝導シートにおいて、アスペクト比が1超である黒鉛粒子の体積分率を50体積%以上にするとともに、黒鉛粒子の長軸が厚み方向に配向するようにし、さらに、厚み方向に熱伝導シートを加圧した場合に、熱伝導シート内の所定の領域に黒鉛粒子の長軸が変曲点を有さないような構造とすることにより、上記課題を解決できることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は上記課題を解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートは、樹脂及び黒鉛粒子を含む、第一主面及び第二主面が厚みを介して隔てられてなる熱伝導シートであって、前記黒鉛粒子がアスペクト比1.0超であり、前記黒鉛粒子の長軸が前記熱伝導シートの厚み方向に配向してなり、前記熱伝導シートにおける前記黒鉛粒子の体積分率が50体積%以上であり、前記熱伝導シートを、前記第一主面側から前記厚み方向に加圧して30%圧縮した後に、前記熱伝導シートの厚み方向断面視において、前記第一主面と前記第二主面との間に位置し、且つ前記第一主面からの厚み方向の距離が、30%圧縮した前記熱伝導シートの厚みに対して30%以上100%以下である領域に、前記黒鉛粒子の前記長軸が変曲点を有さない、ことを特徴とする。かかる属性を満たす本発明の熱伝導シートは、熱伝導性及び圧縮性に優れる。「アスペクト比」は、黒鉛粒子をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の黒鉛粒子について、最大径(長軸)と、最大径に直交する方向の粒子径(短軸)とを測定し、長軸と短軸の比(長軸/短軸)の平均値を算出することにより求めることができる。なお、上記において、黒鉛粒子の「長軸」は当該黒鉛粒子が有する主面(すなわち、最大面積を有する面)の長軸の方向の長さを指し、「短軸」は当該主面の長軸に直交する方向の長さを指すものとする。なお、熱伝導シートの「主面」(第一主面と第二主面)は、熱伝導シートにおける最大面積を有する面及び当該面に対向する面を意味し、二つの主面の面積は同等であってもよい。また、熱伝導シート中の黒鉛粒子の体積分率は、樹脂及び黒鉛粒子の合計体積を100体積%とした場合の分率である。さらにまた、熱伝導シートの「厚み方向断面」は、本明細書の実施例に記載した方法に従って観察することができる。
【0011】
ここで、本発明の熱伝導シートは、前記熱伝導シートは、前記第一主面側から前記厚み方向に加圧して30%圧縮した前後における熱伝導率の変化率が40.0%以下であるとともに、前記熱伝導シートを前記第一主面側から前記厚み方向に0.9MPaの圧力で加圧したときの圧縮率が17%以上である、ことが好ましい。厚み方向に加圧して30%圧縮した前後における熱伝導率の変化率が上記上限値以下であり、且つ、圧縮率が上記下限値以上であれば、熱伝導シートを発熱体と放熱体の間に介在させて使用するにあたり、良好な放熱性能を発揮することができる。
なお、熱伝導率の変化率及び圧縮率は、本明細書の実施例に記載した方法に従って測定することができる。
【0012】
また、本発明の熱伝導シートは、前記黒鉛粒子の、レーザー回折散乱法に従う体積平均粒子径が、前記熱伝導シートの前記厚みの90%以上140%以下の範囲であることが好ましい。熱伝導シートの厚みと黒鉛粒子の所定の測定方法に従う体積平均粒子径とが上記関係を満たせば、熱伝導性を一層高めつつ、シート上面から加圧した際に黒鉛が座屈することなく一方向に倒れる構造を形成しやすくなる。
なお、熱伝導シートの厚みは、本明細書の実施例に記載した方法に従って測定することができる。また、黒鉛粒子の体積平均粒子径は、JIS Z8825に準拠してレーザー回折散乱法に従って測定でき、測定された粒度分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
【0013】
また、本発明の熱伝導シートは、X線回折プロファイルを用いて、ロットゲーリング法により算出した前記黒鉛粒子の(110)面配向度が0.045以上であることが好ましい。熱伝導シートにおける黒鉛粒子の(110)面配向度が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの熱伝導性を良好にすると同時に、シート上面から加圧した際に黒鉛が座屈することなく一方向に倒れる構造を形成しやすくなる。
X線回折(XRD)プロファイルは、X線回折装置を用いて得たものである。X線回折装置としては、例えば、PANalytical製の「X’ Pert PRO MPD」を用いることができる。熱伝導シートにおける黒鉛粒子の(110)面配向度は、本明細書の実施例に記載の方法に従って算出することができる。
【0014】
また、本発明の熱伝導シートは、前記第一主面側から前記厚み方向に加圧して30%圧縮した後の前記熱伝導シートについて、X線回折プロファイルを用いて、ロットゲーリング法により算出した前記黒鉛粒子の(110)面配向度が0.020以上0.028以下であることが好ましい。熱伝導シートの、加圧後の黒鉛粒子の(110)面配向度が上記範囲内であれば、熱伝導シートの熱伝導性及び圧縮性を一層良好に両立することができる。
【0015】
この発明は上記課題を解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートの製造方法は、樹脂とアスペクト比1.0超の黒鉛粒子とを含む組成物をロール成形してシート状に成形し、一次シートを得る一次シート成形工程と、前記一次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記一次シートを折畳又は捲回して、積層体を得る積層体形成工程と、前記積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、二次シートを得るスライス工程と、を含み、前記組成物は、前記黒鉛粒子の体積分率が50体積%以上であり、前記ロール成形では、前記組成物を、第一ロールと、前記第一ロールよりも外周速度が速い第二ロールとの間を通過させることを特徴とする。このような製造方法によれば、熱伝導性及び圧縮性に優れる熱伝導シートを製造することができる。
【0016】
ここで、本発明の熱伝導シートの製造方法において、前記熱伝導シート中に含有される黒鉛粒子の、レーザー回折散乱法に従う体積平均粒子径が、前記熱伝導シートの前記厚みの90%以上140%以下の範囲であることが好ましい。かかる製造方法によれば、熱伝導性及び圧縮性に一層優れる熱伝導シートを製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱伝導性及び圧縮性に優れる熱伝導シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一例にかかる本発明の熱伝導シートの厚み方向断面の概略図である。
図2図1にかかる熱伝導シートを30%圧縮した場合の概略断面図である。
図3】本発明の熱伝導シートに相当しない熱伝導シートを30%圧縮した場合の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の熱伝導シートは、発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用できる。即ち、本発明の熱伝導シートは、放熱部材として機能し得るものであり、ヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体と共に放熱装置を構成できる。本発明の熱伝導シートは、本発明の熱伝導シートの製造方法を用いて製造できる。
【0020】
(熱伝導シート)
本発明の熱伝導シートは、樹脂と、アスペクト比が1.0超の黒鉛粒子とを含む、第一主面及び第二主面が厚みを介して隔てられてなるシートである。また、熱伝導シートにおいては、黒鉛粒子の長軸が厚み方向に配向している。さらに、本発明の熱伝導シートにおける黒鉛粒子の体積分率は50体積%以上である。そして、本発明の熱伝導シートを、第一主面側から厚み方向に加圧して30%圧縮した後に、熱伝導シートの厚み方向断面視において、第一主面と第二主面との間に位置し、且つ第一主面からの厚み方向の距離が、30%圧縮した熱伝導シートの厚みに対して30%以上100%以下である領域に、黒鉛粒子の長軸が変曲点を有さない。かかる条件を満たす本発明の熱伝導シートは、黒鉛粒子の配向性が高く熱伝導性に優れるとともに、厚み方向に圧縮した場合に黒鉛粒子が座屈することなく倒れるため、圧縮性に優れている。
【0021】
<熱伝導シートの構造>
図1に、黒鉛粒子の長軸が厚み方向に配向している本発明の熱伝導シートの厚み方向断面を概略的に示す。図1には、熱伝導シート1を主面に対して垂直に、すなわち厚み方向に一致する方向に切断した得た断面を部分的に示す。熱伝導シート1は樹脂10及び黒鉛粒子(図示しない)を含む。黒鉛粒子は、黒鉛粒子の長軸11(破線)に代表させて示し、その形状の図示は明確化のために省略する。なお、樹脂10及び黒鉛粒子は熱伝導シート1の全体にわたり充填されているが、明確化のために、特に、黒鉛粒子の長軸11については一部を省略図示する。図1より明らかなように、黒鉛粒子の長軸11は熱伝導シート1の厚み方向に配向している。よって、かかる黒鉛粒子が、熱伝導シート1の第一主面Aと第二主面Bとの間における熱伝導を担い、一方の主面から他方の主面へと効果的に熱を移動させることができる。
【0022】
ここで、本発明の熱伝導シートにおいて、黒鉛粒子の長軸が熱伝導シート厚み方向に配向しているとは、熱伝導シートの主面(第一主面A及び第二主面B)の方向を基準として、黒鉛粒子の長軸11が略垂直となるように配置されていることを意味する。具体的には、図1に示すような熱伝導シート1の厚み方向断面視において、第一主面A及び第二主面Bの平均値として主面方向を定め、かかる主面方向に対して、黒鉛粒子の長軸11の成す角度(鋭角側)が、75°以上90°以下の範囲内であることが好ましく、78°以上90°以下の範囲内であることがより好ましい。
【0023】
図2は、図1にかかる本発明の熱伝導シートを第一主面A側から加圧して、厚みを30%圧縮した様子を示す概略図である。図2に示す、厚みを30%圧縮した熱伝導シート1’は、第一主面Aと第二主面Bとの間に位置し、且つ第一主面Aからの厚み方向の距離が、30%圧縮した熱伝導シートの厚みに対して30%以上100%以下である領域20に、黒鉛粒子の長軸11が変曲点を有さない。言い換えると、黒鉛粒子の長軸11は第一主面A方向から30%圧縮した熱伝導シート1’の領域20において座屈箇所を有さない。なお、明確のために、図2に一点鎖線21で、領域20の上端を示す。一点鎖線21は、厚みを30%圧縮した熱伝導シート1’における、第一主面Aからの厚み方向の距離が、通常時(無圧縮時)と比較して30%圧縮した熱伝導シートの厚みに対して30%であるライン(すなわち、第一主面Aからの厚みの30%ライン)を示す。
【0024】
なお、30%圧縮した熱伝導シート1’における、黒鉛粒子の長軸11の配向は、黒鉛粒子の長軸11と、第一主面A及び第二主面Bとがそれぞれなす角度(鋭角側)の平均値として表現することができる。このような方途に従って算出されうる、30%圧縮した熱伝導シート1’における黒鉛粒子の長軸11の配向を示す角度(α)は、60°以下であることが好ましく、50°以下であることがより好ましく、40°以下であることがより好ましく、35°以下であることが更に好ましく、例えば、20°以上でありうる。角度(α)が上記上限値以下であれば、かかる熱伝導シートは圧縮性に優れる。
【0025】
一方、図3は、本発明の熱伝導シートに相当しない熱伝導シート(非圧縮時の構造自体は、図1に示した構造と同様の、黒鉛粒子の長軸11”が熱伝導シートの厚み方向に配向した構造に類似するものである。)を第一主面A”から厚み方向に加圧して30%圧縮して得た圧縮熱伝導シート2を示す。圧縮熱伝導シート2は、樹脂10”及び黒鉛粒子を含む。圧縮熱伝導シート2では、一点鎖線21と第二主面B”との間に存在する領域20において、黒鉛粒子の長軸11”に屈曲点が存在する。すなわち、圧縮熱伝導シート2では、黒鉛粒子の長軸11”が領域20において座屈箇所を有しうる。
【0026】
また、圧縮熱伝導シート2における黒鉛粒子の長軸11”の配向も、図2に示す熱伝導シート1’と同様に、黒鉛粒子の長軸11”と、第一主面A及び第二主面Bとがそれぞれなす角度(鋭角側)の平均値として表現してもよい。ここで、図3より明らかなように、黒鉛粒子の長軸11”は屈曲点を有するため、例えば、屈曲点を境界として、上側の長軸と第一主面Aとがなす角(鋭角側)と、下側の長軸と第二主面Bとがなす角(鋭角側)との平均値として表現することができる。
【0027】
図2~3より明らかなように、本発明の熱伝導シート(図2に示す30%圧縮した熱伝導シート1’)と、これに該当しない熱伝導シート(図3に示す圧縮熱伝導シート2)とでは圧縮された場合にその構造が明らかに異なっている。具体的には、本発明の熱伝導シートでは、圧縮時に黒鉛粒子の長軸が所定の領域において座屈することなく「倒れる」ように構造変化する一方で、図3に示した熱伝導シートでは、圧縮時に黒鉛粒子の長軸が所定領域において座屈し、黒鉛粒子の配向に大幅な変化が生じている。図2に示したような構造変化は圧縮時の応力が少なく、圧縮性に優れると考えられる。一方、図3に示すような大幅な構造変化は、圧縮時の応力が図2の構造変化よりも大きく、圧縮性に劣るとともに、黒鉛粒子長軸の配向構造における変更の大きさから、熱伝導性の変化も大きいと考えられる。
【0028】
<熱伝導シートの熱伝導変化特区性及び圧縮率>
本発明の熱伝導シートは、第一主面側から厚み方向に加圧して30%圧縮した前後における熱伝導率の変化率が40.0%以下であるとともに、熱伝導シートを第一主面側から厚み方向に0.9MPaの圧力で加圧したときの圧縮率が17%以上である、ことが好ましい。熱伝導シートが加圧の前後において熱伝導率の変化率が上記上限値以下であるとともに、所定の圧力で加圧したときの圧縮率が上記上限値以上であれば、熱伝導性及び圧縮性に一層優れる。なお、熱伝導性向上の観点から、加圧前後における熱伝導率の変化率は、30.0%以下であることがより好ましく、下限は特に限定されないが、10.0%以上でありうる。また、所定の圧力で加圧したときの圧縮率は20.0%以上であることがより好ましく、25.0%以上であることが更に好ましい。
【0029】
<樹脂>
樹脂としては、特に限定されず、任意の樹脂を用いることができる。例えば、樹脂としては、液状樹脂及び固体樹脂のいずれも用いることができる。樹脂は、1種を単独で使用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、樹脂としては、液状樹脂と固体樹脂との双方を用いることができる。樹脂として液状樹脂と固体樹脂とを併用する場合、液状樹脂と固体樹脂との質量比は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で調整できる。
樹脂は、液状樹脂を含むことが好ましい。樹脂が液状樹脂を含むものであれば、熱伝導シートにおける黒鉛粒子の充填率を高めることができ、且つ、熱伝導シートと被着体との密着性を高めることができる等の理由により、熱伝導シートの熱伝導性を向上できる。
【0030】
液状樹脂としては、常温常圧下で液体である限り、特に限定されず、例えば、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂を用いることができる。
なお、本明細書において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
【0031】
液状樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(ニトリルゴム)、ポリブテンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
樹脂が液状樹脂を含む場合、樹脂における液状樹脂の含有割合は、熱伝導シートの熱伝導性及び柔軟性の観点から、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。一方、樹脂における液状樹脂の含有割合は、例えば90質量%以下であり、80質量%以下でもよい。
【0033】
固体樹脂としては、常温常圧下で液体でない限り、特に限定されず、例えば、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂、常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂等を用いることができる。
【0034】
常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2-エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸又はそのエステル、ポリアクリル酸又はそのエステル等のアクリル樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン-プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン-アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(ニトリルゴム);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン-ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物;スチレン-イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;ブタジエンゴム;ブチルゴム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、ゴムは、「樹脂」に含まれるものとする。
【0035】
常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
樹脂が固体樹脂を含む場合、樹脂における固体樹脂の含有割合は、例えば10質量%以上であり、20質量%以上でもよい。一方、樹脂における固体樹脂の含有割合は、例えば50質量%以下であり、40質量%以下でもよい。
【0037】
熱伝導シートにおける樹脂の含有割合は、樹脂及び黒鉛粒子の合計体積を100体積%として、50体積%以下である必要があり、45体積%以下であることが好ましく、30体積%以上であることが好ましく、40体積%以上であることがより好ましい。樹脂の含有割合が上記上限値以下であれば、熱伝導シートの熱伝導性を一層高めることができる。また、樹脂の含有割合が上記下限値以上であれば熱伝導シートを柔らかくして圧縮性を一層高めることができる。
【0038】
<黒鉛粒子>
黒鉛粒子としては、アスペクト比が1.0超である限りにおいて特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛及び天然黒鉛等を用いることができる。人造黒鉛には、カーボンブラック及び熱分解グラファイト等が含まれる。天然黒鉛には、膨張化黒鉛及び球状黒鉛等の鱗片状黒鉛、並びに、鱗状黒鉛が含まれる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、黒鉛粒子は、鱗片状黒鉛であることが好ましい。黒鉛粒子が鱗片状黒鉛であれば、熱伝導シート中において黒鉛粒子が良好に配向するため、熱伝導シートの熱伝導性を向上できる。黒鉛粒子が鱗片状黒鉛である場合、「長軸」は鱗片形状が有する主面の長軸の方向の長さを指し、「短軸」は当該主面の長軸に直交する方向の長さを指すものとする。鱗片状黒鉛は、膨張化黒鉛であることが好ましい。鱗片状黒鉛が膨張化黒鉛であれば、熱伝導シートの熱伝導性を一層高めることができる。
【0039】
黒鉛粒子のアスペクト比(長径/短径)は、1.2以上であることが好ましく、1.3以上であることが好ましく、1.4以上であることが好ましく、10以下であることは好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましい。
黒鉛粒子のアスペクト比が上記範囲内であれば、熱伝導シート中において黒鉛粒子が良好に配向するため、熱伝導シートの熱伝導性を向上できる。
なお、本明細書において、黒鉛粒子のアスペクト比は、黒鉛粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、任意の50個の黒鉛粒子について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値により算出できる。
【0040】
熱伝導シートに含まれる黒鉛粒子は、レーザー回折散乱法に従う体積平均粒子径が、熱伝導シートの厚みの90%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましく、110%以上であることがより好ましく、120%以上であることが更に好ましく、140%以下であることが好ましく、135%以下であることがより好ましい。黒鉛粒子の体積平均粒子径が上記範囲内であれば、シート上面から加圧した際に黒鉛が座屈することなく一方向に倒れる構造を形成しやすくなり、圧縮されやすい熱伝導シートを形成することが出来る。なお、粒子の長軸が熱伝導シートの厚み方向に配向しているにも関わらす、レーザー回折散乱法に従う黒鉛粒子の体積平均粒子径がシート厚みの100%を超える場合が想定される理由は、測定方法の違いに起因すると推察される。黒鉛粒子の体積平均粒子径は上記の通りレーザー回折散乱法に従って測定した値を採用し、熱伝導シートの厚みは、後述する実施例のように、厚みゲージを用いて測定した値を採用する。この測定方法の相違に起因して、黒鉛粒子の体積平均粒子径がシート厚みの100%を超える場合が生じると考えられる。
【0041】
熱伝導シート中の黒鉛粒子の配向については、X線回折プロファイルを用いて、ロットゲーリング法により算出した黒鉛粒子の(110)面配向度が0.045以上であることが好ましく、0.050以上であることがより好ましく、0.065以下であることが好ましく、0.060以下であることがより好ましい。黒鉛粒子の(110)面配向度が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの熱伝導性を一層高めることができる。また同時に上記下限値以上の配向性であれば、シート上面から加圧した際に黒鉛が座屈することなく一方向に倒れる構造を形成しやすくなり、圧縮されやすい熱伝導シートを形成することが出来る。
【0042】
また、熱伝導シートは、第一主面側から厚み方向に加圧して30%圧縮した後の黒鉛粒子の配向については、X線回折プロファイルを用いて、ロットゲーリング法により算出した黒鉛粒子の(110)面配向度が0.020以上であることが好ましく、0.021以上であることがより好ましく、0.028以下であることが好ましく、0.026以下であることがより好ましい。熱伝導シートを加圧した後における黒鉛粒子の(110)面配向度が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの熱伝導性を一層高めることができる。熱伝導シートを加圧した後における黒鉛粒子の(110)面配向度が上記上限値以下であれば、熱伝導シートの圧縮性を一層高めることができる。
【0043】
熱伝導シート中の黒鉛粒子の含有割合は、樹脂及び黒鉛粒子の合計体積を100体積%として、50体積%以上であることが必要であり、55体積%以上であることがより好ましく、80体積%以下であることが好ましく、75体積%以下であることがより好ましい。熱伝導シート中の黒鉛粒子の含有割合が上記下限以上であれば、熱伝導シートの熱伝導性を向上できる。また同時に黒鉛量が上記下限以上であればシート上面から加圧した際に黒鉛が座屈することなく一方向に倒れる構造を形成しやすくなり、圧縮されやすい熱伝導シートを形成することが出来る。熱伝導シート中の黒鉛粒子の含有割合が上記上限以下であれば、熱伝導シートの柔軟性を保つことが出来る。
【0044】
<熱伝導シートの性状>
熱伝導シートは、樹脂と黒鉛粒子とを含む条片が熱伝導シートの厚み方向に対して一方の略垂直な方向(厚み方向に対する角度が略90°の方向)に並列結合された構造を有してもよい。この略垂直な方向における条片の幅は、1mm以上であることが好ましく、1.2mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることが更に好ましく、5mm以下であることが好ましく、4mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることが更に好ましい。
上記条片の幅は熱伝導シートの製造時における中間体である一次シートの厚みに依存し得る。そのため、条片の幅が上記下限以上の熱伝導シートは、一次シートの積層数、折畳数又は捲回数が比較的少ない。そのため、このような熱伝導シートは、後述する積層体形成工程の所要時間が比較的短く、生産性に優れる。一方、条片の幅が上記上限以下の熱伝導シートは、熱伝導シート中において黒鉛粒子が厚み方向に良好に配向しているため、熱伝導性が向上されている。
【0045】
熱伝導シートの厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜調節することができる。例えば、熱伝導シートの厚みは、0.05mm以上であることが好ましく、0.10mm以上であることがより好ましく、0.50mm以下であることが好ましく、0.40mm以下であることがより好ましく、0.35mm以下であることが更に好ましい。
熱伝導シートの厚みが上記下限以上であれば、熱伝導シートの強度を向上できる。一方、熱伝導シートの厚みが上記上限以下であれば、熱伝導シートの圧縮性を一層高めることができる。
【0046】
(熱伝導シートの製造方法)
本発明の熱伝導シートの製造方法は、(A)樹脂と黒鉛粒子とを含む組成物(黒鉛粒子の体積分率が50体積%以上)をロール成形してシート状に成形し、一次シートを得る一次シート成形工程と、(B)一次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、一次シートを折畳又は捲回して、積層体を得る積層体形成工程と、(C)積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、二次シートを得るスライス工程と、を含む。
【0047】
ここで、上述した(A)一次シート成形工程のロール成形では、組成物を、第一ロールと、第一ロールよりも外周速度が速い第二ロール(以下、「第一ロールよりも外周速度が速い第二ロール」を、単に「第二ロール」と称することがある。)との間を通過させる。このような熱伝導シートの製造方法によれば、熱伝導性及び圧縮性に優れる熱伝導シートを効率的に製造できる。
【0048】
本発明の熱伝導シートの製造方法は、任意で、上記(A)~(C)以外の工程を更に含んでいてもよい。
【0049】
<(A)一次シート成形工程>
一次シート成形工程では、樹脂と黒鉛粒子とを含む組成物をロール成形してシート状に成形し、一次シートを得る。
【0050】
〔組成物〕
組成物は、樹脂と黒鉛粒子とを含む。樹脂及び黒鉛粒子としては、「熱伝導シート」の項で上述した樹脂及び材料としての黒鉛粒子を、上述した比率で用いることができる。
【0051】
なお、組成物に配合する「材料」としての黒鉛粒子の体積平均粒子径は、目的とする熱伝導シートの厚みの90%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましく、300%以下であることが好ましく、280%以下であることがより好ましい。材料としての黒鉛粒子の体積平均粒子径が上記範囲内であれば、得られる熱伝導シートに含まれる黒鉛粒子の体積平均粒子径を、熱伝導シートの厚みとの関係が上述した好適な範囲を満たすように制御することが容易になる。
【0052】
〔組成物の調製〕
組成物は、特に限定されず、上述した成分を混合することにより調製できる。
なお、上述した成分の混合は、特に制限されず、ニーダー;ヘンシェルミキサー、ホバートミキサー、ハイスピードミキサー等のミキサー;二軸混練機;ロール;等の既知の混合装置を用いて行うことができる。
【0053】
混合は、酢酸エチル等の溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒に予め樹脂を溶解又は分散させて樹脂溶液として、黒鉛粒子、及び任意で添加されるその他の成分と混合してもよい。
【0054】
混合時間は、例えば、5分以上60分以下である。また、混合温度は、例えば、5℃以上160℃以下である。
【0055】
〔組成物の成形〕
調製した組成物は、任意に脱泡及び解砕した後に、ロール成形してシート状に成形できる。このように組成物をロール成形したシート状のものを、一次シートとすることができる。なお、混合時に溶媒を用いている場合には、溶媒を除去してからシート状に成形することが好ましく、例えば、真空脱泡を用いて脱泡を行えば、脱泡時に溶媒の除去も同時に行うことができる。
【0056】
本発明の熱伝導シートの製造方法において、ロール成形では、組成物を、第一ロールと、第一ロールよりも外周速度が速い第二ロールとの間を通過させる。このようなロール成形によれば、高い剪断応力を加えて組成物を成形でき、この結果、一次シート中の黒鉛粒子が良好に配向し、これを用いて得られた熱伝導シートは熱伝導性に優れる。
【0057】
第一ロールに対する第二ロールの外周速度比(「第二ロールの外周速度」/「第一ロールの外周速度」)は、1.03/1以上であることが好ましく、1.05/1以上であることがより好ましく、1.10/1以上であることが更に好ましく、1.50/1以下であることが好ましく、1.30/1以下であることがより好ましく、1.20/1以下であることが更に好ましい。
第一ロールに対する第二ロールの外周速度比が上記下限以上であれば、より高い剪断応力を加えて組成物を成形できるため、熱伝導シート中における黒鉛粒子の配向性を一層高めることができ、その結果熱伝導シートの熱伝導性を一層高めることができると考えられる。また、黒鉛粒子の配向を高めることで、シート上面から加圧した際に黒鉛が座屈することなく一方向に倒れる構造を形成しやすくなり、圧縮されやすい熱伝導シートを形成することができる。一方、第一ロールに対する第二ロールの外周速度比が上記上限以下であれば、熱伝導シートの形状を保ったままシート化することが出来る。また、第一ロールに対する第二ロールの外周速度比が上記上限以下であれば、一次シートの表面に発生するシワを抑制して一次シートの平滑性を向上できる。即ち、一次シートの製品不良の発生を抑制し、これを用いて得られる熱伝導シートの生産性を向上できる。
なお、外周速度比は、ロールの径及び/又は回転速度を変更することで調整できる。
【0058】
第一ロールと第二ロールとの外周速度差(「第二ロールの外周速度」-「第一ロールの外周速度」)は、0.06m/分以上であることが好ましく、0.1m/分以上であることがより好ましく、0.20m/分以上であることが更に好ましく、1.00m/分以下であることが好ましく、0.70m/分以下であることがより好ましく、0.50m/分以下であることが更に好ましい。
第一ロールと第二ロールとの外周速度差が上記下限以上であれば、より高い剪断応力を加えて組成物を成形できるため、熱伝導シート中における黒鉛粒子の配向性を一層高めることができ、その結果熱伝導シートの熱伝導性を一層高めることができると考えられる。一方、第一ロールと第二ロールとの外周速度差が上記上限以下であれば、熱伝導シートの平滑性を向上できる。また、第一ロールと第二ロールとの外周速度差が上記上限以下であれば、一次シートの表面に発生するシワを抑制して一次シートの平滑性を向上できる。即ち、一次シートの製品不良の発生を抑制し、これを用いて得られる熱伝導シートの生産性を向上できる。
なお、外周速度差は、ロールの径及び/又は回転速度を変更することで調整できる。
【0059】
第一ロールと第二ロールとの間隔は、1mm以上であることが好ましく、1.2mm以上であることより好ましく、1.5mm以上であることが更に好ましく、3mm以下であることが好ましく、2.8mm以下であることがより好ましく、2.5mm以下であることが更に好ましい。
第一ロールと第二ロールとの間隔が上記下限以上であれば、組成物に剪断応力が過度に加わることを抑制して一次シート中における黒鉛粒子の崩壊を抑制して、得られる熱伝導シートの熱伝導性を高めることができると考えられる。また、第一ロールと第二ロールとの間隔が上記上限以下であれば、より高い剪断応力を加えて組成物を成形できるため、熱伝導シート中における黒鉛粒子の配向性を一層高めることができ、その結果熱伝導シートの熱伝導性を一層高めることができると考えられる。
【0060】
<(B)積層体形成工程>
積層体形成工程では、一次シート成形工程で得られた一次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、一次シートを折畳又は捲回して、樹脂及び黒鉛粒子を含む一次シートが厚み方向に複数形成された積層体を得る。ここで、一次シートの折畳による積層体の形成は、特に制限されることなく、折畳機を用いて一次シートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、一次シートの捲回による積層体の形成は、特に制限されることなく、一次シートの短手方向又は長手方向に平行な軸の回りに一次シートを捲き回すことにより行うことができる。また、一次シートの積層による積層体の形成は、特に制限されることなく、積層装置を用いて行うことができる。例えば、シート積層装置(日機装社製、製品名「ハイスタッカー」)を用いれば、層間に空気が入り込むことを抑えることができるため、良好な積層体を効率的に得ることができる。
【0061】
なお、積層工程では、得られた積層体を、加熱しながら、積層方向に加圧(二次加圧)することが好ましい。積層体を加熱しながら積層方向に加圧する二次加圧を行うことにより、積層された一次シート相互間の融着を促進することができる。
【0062】
ここで、積層体を積層方向に加圧する際の圧力は、0.05MPa以上0.50MPa以下とすることができる。また、積層体の加熱温度は、特に限定されないが、50℃以上170℃以下であることが好ましい。更に、積層体の加熱時間は、例えば、10秒間以上30分間以下とすることができる。
【0063】
なお、一次シートを積層、折畳又は捲回して得られる積層体では、黒鉛粒子が積層方向に略直交する方向に配向していると推察される。例えば、黒鉛粒子の形状が鱗片形状である場合、当該鱗片形状が有する主面の長軸の方向は、積層方向に略直交していると推察される。
【0064】
<(C)スライス工程>
スライス工程では、積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、積層体のスライス片よりなる二次シートを得る。本工程にて得られた二次シートは本発明の熱伝導シートとしてもよい。
【0065】
積層体をスライスする方法としては、特に限定されず、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、二次シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。
【0066】
積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されず、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナ及びスライサー)を用いることができる。
【0067】
積層体をスライスする角度は、熱伝導シートの熱伝導性を高める観点からは、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが好ましい。
【実施例0068】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。また、体積分率等の算出に際して、各配合成分の体積として、各配合成分の質量をそれらの理論比重で除した値を採用した。
なお、実施例における各種の測定及び評価は以下の方法に従って行った。
【0069】
<黒鉛粒子の長軸の配向角度>
実施例、比較例で得られた熱伝導シート中の黒鉛粒子の長軸の配向角度は、熱伝導シートを正八角形に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ製「SU-3500」)にて当該シートの上端から下端までが収まる倍率で観察した。なお、このときの倍率は700倍であった。この断面における黒鉛粒子の長軸に50本線を引き、熱伝導シートの主面(第一主面及び第二主面)に対する長軸の角度の平均を算出した。なお、角度が90°以上であった場合には補角を採用した。これを8面に対して実施し、8面の中で最も値の大きなものを熱伝導シート中の黒鉛粒子の長軸の配向角度とした。
【0070】
<30%圧縮後の熱伝導シートの厚み方向断面観察>
-30%圧縮熱伝導シートの準備-
実施例、比較例で得られた熱伝導シートを精密ホットプレス機(新東工業株式会社製、製品名「CYPT-20」)を用いて、片方の主面(すなわち、第一主面)側から厚み方向に加圧して、各シートが初期の膜厚に対して30%圧縮されるようにプレスを行った。
-断面観察-
このようにて得られた30%圧縮シートに関しても、上記と同様に断面を観察した。すなわち、断面において黒鉛粒子の長軸を50本サンプリングした。サンプリングした長軸について、第一主面からの厚み方向の距離が、30%圧縮した熱伝導シートの厚みに対して30%以上100%以下である領域に、変曲点があるか否かを判定した。また、サンプリングした50本の長軸について、それぞれ、熱伝導シートの主面(第一主面及び第二主面)となす角(鋭角)を求め、平均値を算出した。これらの結果を表1に示す。
【0071】
<ロットゲーリング法による熱伝導シートの配向度の決定>
―黒鉛粒子の(110)面配向度の決定―
まず、PANalytical製の「X’ Pert PRO MPD」を用いて、実施例及び比較例で得られた熱伝導シート、及び、上記と同様にして準備した30%圧縮熱伝導シートの表面のXRDプロファイルを得た。
得られたXRDプロファイルから、ロットゲーリング法に従って(110)面配向度を算出した。具体的には、下記の手順に従って(110)面配向度に関するロットゲーリングファクターf110を算出した。
ロットゲーリングファクターf110は、対象とする結晶面から回折されるX線のピーク強度を用いて、下記式(1)により計算した。
110=(ρ-ρ0)/(1-ρ0)・・・(1)
ここで、式(1)中のρ0は、無配向サンプル のX線の回折強度(I0)を用いて計算した。具体的に、ρ0は、無配向サンプルにおける全回折強度の和(ΣI0(hkl))に対する、(110)面の回折強度の合計(ΣI0((110)面))の割合として、下記式(2)により算出した。なお、無配向サンプルとしては、粉末状の黒鉛粒子を用いた。
ρ0=ΣI0((110)面)/ΣI0(hkl)・・・(2)
式(1)中のρは、配向サンプル(熱伝導シート)のX線の回折強度(I)を用いて計算した。具体的にρは、熱伝導シートにおける全回折強度の和(ΣI(hkl))に対する、(110)面の回折強度の合計(ΣI((110)面))の割合として、下記式(3)により算出した。
ρ=ΣI((110)面)/ΣI(hkl)・・・(3)
なお、上記において、回折強度とは、XRDプロファイルにおける対象の配向面のピーク高さを意味する。(110)面配向の場合、回折強度とは、(110)面に相当する2Θ=77°のピーク高さを意味する。
―黒鉛粒子の(004)面配向度の決定―
上述した(110)面配向度に(110)面配向度に関するロットゲーリングファクターf110と同様にして(004)面配向度に関するロットゲーリングファクターf004を算出した。なお、(004)面配向の場合の、回折強度とは、(004)面に相当する2Θ=54.5°のピーク高さを意味する。かかる測定は、実施例及び比較例で得られた熱伝導シート、及び、上記と同様にして準備した30%圧縮熱伝導シートについて実施した。
【0072】
<熱伝導シート中の黒鉛粒子の体積平均粒子径>
実施例、比較例で得た熱伝導シート1gを溶媒としてのメチルエチルケトン中に入れ、熱伝導シートの樹脂成分等を溶解することにより、熱伝導シートに含まれる黒鉛粒子を分離及び分散させた懸濁液を得た。次に、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、型式「LA960」)を用いて、当該懸濁液に含まれる黒鉛粒子の粒子径を測定した。そして、得られた粒子径を横軸とし、体積換算した粒子の頻度を縦軸とした粒度分布曲線を作成した。また、当該粒度分布曲線において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(D50)を求め、当該黒鉛粒子の体積平均粒子径の値とした。
また、上記のようにして分離した黒鉛粒子をSEM観察して、アスペクト比を測定し、実施例、比較例にて用いた黒鉛粒子のアスペクト比が1.0超であることを確認した。
【0073】
<熱伝導シートの厚み>
厚みゲージ(株式会社ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID-C112XBS」)を用いて、実施例、比較例で得た熱伝導シートについて、厚みを測定した。測定数は10とし、得られた厚みの測定データの算術平均を、対象とする熱伝導シートの厚みとした。
【0074】
<熱伝導率>
実施例及び比較例で得られた熱伝導シート、及び、上記と同様にして準備した30%圧縮熱伝導シートについて、下記に従って熱伝導率を測定した。各測定値を表1に示すとともに、圧縮前後における熱伝導率の変化率(圧縮前の熱伝導率を100%とした圧縮後の熱伝導率の減少率)を算出し、その値も表1に示した。
熱伝導シートの主面内について、それぞれ、熱拡散率α(m/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)及び比重ρ(g/m)を以下の方法で測定した。
[熱拡散率α(m/s)]
熱物性測定装置(株式会社ベテル製、製品名「サーモウェーブアナライザTA35」)を使用して熱拡散率を測定した。
[定圧比熱Cp(J/g・K)]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下における比熱を測定した。
[比重ρ(g/m)]
自動比重計(東洋精機社製、商品名「DENSIMETER-H」)を用いて比重(密度)(g/m)を測定した。
そして、得られた測定値を用いて下記式(4):
λ=α×Cp×ρ・・・(4)
に代入し、熱伝導シートの熱伝導率λ(W/m・K)を算出した。
【0075】
<圧縮率>
各実施例及び比較例で製造した熱伝導シートの厚み方向に加圧した状態における熱抵抗及び厚みは、熱抵抗試験器(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、製品名「樹脂材料熱抵抗測定装置」)を用いて測定した。ここで、1cm角の略正方形に切り出した熱伝導シートを試料とし、試料温度50℃において0.9MPaの圧力を加えた状態における熱伝導シートの熱抵抗(℃/W)及び厚みを測定した。熱抵抗の値が小さいほど、熱伝導シートが熱伝導性に優れ、例えば、発熱体と放熱体との間に介在させた際の放熱特性に優れていることを示す。
また、厚み方向に0.9MPaで加圧した状態における熱伝導シートの厚みをT0.9とし、加圧前の熱伝導シートの厚みをT0として、下記式(1):
C=100×[1-(T0.9/T0)][%]・・・(1)
により算出される熱伝導シートの圧縮率(%)を求めた。
【0076】
(実施例1)
<組成物の調製>
樹脂として、常温常圧下で液体のニトリルゴム(NBR)(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol(登録商標) 1312」)70部と、常温常圧下で固体のニトリルゴム(NBR)(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol(登録商標) 3350)30部とを準備し、黒鉛粒子として膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製 、商品名「EC-50」、体積平均粒子径:250μm、アスペクト比=1.5)340部(樹脂及び黒鉛粒子の全体積に対して60体積%)を準備した。これらを加圧ニーダー(日本スピンドル社製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合し、組成物を得た。
【0077】
<一次シート成形工程>
次いで、得られた組成物500gを、第一ロール及び第二ロールを用いて、第一ロールと第二ロールとの間隔2mm、ロール温度25℃、シート搬出速度(第一ロールの外周速度)2m/分、第一ロールに対する第二ロールの外周速度比(第二ロール/第一ロール):1.15/1の条件にて圧延加工(一次加圧)してシート状にした。シートの搬送方向を同一にして、圧延加工を繰り返した。合計で圧延加工を10回行い、厚み2mmの一次シートを得た。
【0078】
<積層体形成工程>
次いで、得られた一次シートを縦50mm×横50mmに裁断し、一次シートの厚み方向に25枚積層し、更に、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向に対してプレス(二次加圧)することにより、高さ約50mmの積層体を得た。
【0079】
<スライス工程>
次いで、二次加圧された積層体の積層面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0度の角度で(換言すれば、積層された一次シートの主面の法線方向に)スライスすることにより、縦50mm×横50mm×厚み0.10mmの二次シート(熱伝導シート)を得た。
得られた熱伝導シートについて、上記に従って各種測定及び評価を実施した。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例2)
実施例1における黒鉛粒子を膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製 、商品名「EC-100」、体積平均粒子径:190μm、アスペクト比=1.5)に変更した。それ以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例3)
実施例1における黒鉛粒子の部数を270に変更した。それ以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0082】
(実施例4)
実施例1における黒鉛粒子の部数を225に変更した。それ以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例5)
実施例1における樹脂を常温常圧下で固体のブチルゴム(エクソンモービル製;製品名「IRM-241G」)100部に変更し、黒鉛粒子の部数を225に変更した。それ以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0084】
(比較例1)
実施例1における黒鉛粒子を膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC-300」、体積平均粒子径:50μm、アスペクト比=1.5)に変更した。それ以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0085】
(比較例2)
実施例1における一次シートの成型工程において、ロールの回転比を1:1にしてシート成型を行った。それ以外は実施例1と同様の操作を試みたが、シート成形することができなかった。結果を表1に示す。
【0086】
(比較例3)
実施例1における黒鉛粒子の部数を185部に変更した。それ以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1より、樹脂と、黒鉛粒子とを含み、黒鉛粒子の体積分率を50体積%以上にするとともに、黒鉛粒子の長軸が厚み方向に配向するようにし、さらに、厚み方向に熱伝導シートを加圧した場合に、熱伝導シート内の所定の領域に黒鉛粒子の長軸が変曲点を有さないような構造とした、実施例1~5の熱伝導シートは、熱伝導性及び圧縮性に優れていたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、熱伝導性及び圧縮性に優れる熱伝導シートを提供することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 熱伝導シート
1’ 30%圧縮した熱伝導シート
2 圧縮熱伝導シート
10、10” 樹脂
11、11” 黒鉛粒子の長軸
20 領域
21 一点鎖線(第一主面Aからの厚みの30%ライン)
A、A” 第一主面
B、B” 第二主面
図1
図2
図3