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  • 特開-ヒーター用導電性シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151603
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ヒーター用導電性シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20231005BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20231005BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L21/00 ZNM
C08K3/04
C08K7/02
H01B1/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061303
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【弁理士】
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】竹下 誠
(72)【発明者】
【氏名】保坂 龍
【テーマコード(参考)】
4J002
5G301
【Fターム(参考)】
4J002AC001
4J002AC081
4J002DA016
4J002DA036
4J002FA056
4J002FD116
4J002GQ02
5G301DA18
5G301DA20
5G301DA42
5G301DA48
5G301DA51
5G301DA53
5G301DA59
5G301DA60
5G301DD08
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】電極に熱融着したときに、電極への追従性及び密着性に優れており、優れた伸縮性を発揮するヒーター用導電性シートを提供する。
【解決手段】ヒーター用導電性シートは、熱可塑性エラストマーと、導電性フィラーとを含み、体積抵抗率が1Ω・cm以上1000Ω・cm以下である。また、ヒーター用導電性シート切断して長さ100mm、幅10mm、厚さ40μmの試験片を得て、この試験片を長さ30mmの位置で伸縮性評価装置に固定し、この試験片に引張力を付加して試験片を長さ方向に最大30mm伸張させた後、引張力を除去して試験片を収縮させる伸縮工程を1回とする伸縮試験を30回/分の速度で繰り返したときに、試験片の抵抗値が10Ω以上となるときの伸縮回数が500以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極に熱融着されるヒーター用導電性シートであって、
熱可塑性エラストマーと、導電性フィラーとを含み、
前記ヒーター用導電性シートは、体積抵抗率が1Ω・cm以上1000Ω・cm以下であり、
前記ヒーター用導電性シートを切断して長さ100mm、幅10mm、厚さ40μmの試験片を得て、前記試験片を長さ30mmの位置で伸縮性評価装置に固定し、前記試験片に引張力を付加して前記試験片を長さ方向に最大30mm伸張させた後、前記引張力を除去して前記試験片を収縮させる伸縮工程を1回とする伸縮試験を30回/分の速度で繰り返したときに、前記試験片の抵抗値が10Ω以上となるときの伸縮回数が500以上である、ヒーター用導電性シート。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマーが、スチレン系エラストマーである、請求項1に記載のヒーター用導電性シート。
【請求項3】
前記導電性フィラーが、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ及びカーボンブラックからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のヒーター用導電性シート。
【請求項4】
前記導電性フィラーは単層カーボンナノチューブであり、前記ヒーター用導電性シートは、前記熱可塑性エラストマー100質量部当たり、前記単層カーボンナノチューブを1質量部以上20質量部以下の割合で含有する、請求項3に記載のヒーター用導電性シート。
【請求項5】
前記導電性フィラーは多層カーボンナノチューブであり、前記ヒーター用導電性シートは、前記熱可塑性エラストマー100質量部当たり、前記多層カーボンナノチューブを1質量部以上18質量部以下の割合で含有する、請求項3に記載のヒーター用導電性シート。
【請求項6】
前記導電性フィラーはカーボンブラックであり、前記ヒーター用導電性シートは、前記熱可塑性エラストマー100質量部当たり、前記カーボンブラックを10質量部以上60質量部以下の割合で含有する、請求項3に記載のヒーター用導電性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒーター用導電性シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性金属粒子や導電性カーボン粒子などの導電性粒子を多量にゴム中に含有させた導電性ゴム組成物が、例えば、電極間の導電接点に用いられる導電性ゴムや、回路装置検査に用いられる導電性シートとして使用されている。
【0003】
このような導電性シートとして、例えば特許文献1には、所定量の導電性金属粒子と、所定量のカーボンナノチューブと、弾性高分子とを含み、圧縮接触抵抗が所定値以下である導電性シートが提案されている。この導電性シートによれば、通常圧力での加圧圧縮及び低い圧力での加圧圧縮のいずれにおいても、高い導電性を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/188023号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の導電性シートは、電極に熱融着すると、電極への追従性や密着性が悪いことから、導電性シートを良好に導通させることができない場合があった。そのため、上記従来の導電性シートは、ヒーター用のシート部材として用いる場合には、電極と導電性シートとの高い接触抵抗のため、十分な発熱効果が得られないという問題があった。また、上記従来の導電性シートは、伸縮性を向上させるという点において更なる改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、電極に熱融着したときに、電極への追従性及び密着性に優れており、優れた伸縮性を発揮するヒーター用導電性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。その結果、熱可塑性エラストマーと、導電性フィラーとを含む導電性シートであって、体積抵抗率が所定範囲内であり、当該ヒーター用導電性シートから得た試験片について所定の伸縮試験を繰り返し行ったときに、試験片の抵抗値が所定値以上となるときの伸縮回数が所定値以上である導電性シートは、電極に熱融着したときに電極への追従性及び密着性に優れており、優れた伸縮性を発揮するため、ヒーター用のシート部材として良好に使用できることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のヒーター用導電性シートは、電極に熱融着されるヒーター用導電性シートであって、熱可塑性エラストマーと、導電性フィラーとを含み、前記ヒーター用導電性シートは、体積抵抗率が1Ω・cm以上1000Ω・cm以下であり、前記ヒーター用導電性シートを切断して長さ100mm、幅10mm、厚さ40μmの試験片を得て、前記試験片を長さ30mmの位置で伸縮性評価装置に固定し、前記試験片に引張力を付加して前記試験片を長さ方向に最大30mm伸張させた後、前記引張力を除去して前記試験片を収縮させる伸縮工程を1回とする伸縮試験を30回/分の速度で繰り返したときに、前記試験片の抵抗値が10Ω以上となるときの伸縮回数が500以上であることを特徴とする。このように、熱可塑性エラストマーと導電性フィラーとを含む導電性シートであって、体積抵抗率が所定範囲内であり、導電性シートから得た試験片について所定の伸縮試験を繰り返したときに、試験片の抵抗値が所定値以上となるときの伸縮回数が所定値以上であるヒーター用導電性シートであれば、電極に熱融着したときに電極への追従性及び密着性に優れており、優れた伸縮性を発揮する。
なお、本発明において、「体積抵抗率」とは、式:{表面抵抗率(Ω)×導電性シートの厚さ(cm)}を用いて算出される値である。「表面抵抗率」及び「導電性シートの厚さ」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて求めることができる。
【0009】
ここで、本発明のヒーター用導電性シートは、前記熱可塑性エラストマーが、スチレン系エラストマーであることが好ましい。スチレン系エラストマーを用いれば、電極への優れた追従性を維持したまま、伸縮性を更に高めることができる。
【0010】
また、本発明のヒーター用導電性シートは、前記導電性フィラーが、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ及びカーボンブラックからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ及びカーボンブラックの少なくともいずれかを含む導電性フィラーを用いれば、電極への優れた追従性及び密着性と、伸縮性の向上とのバランスを良好に維持することができる。
【0011】
そして、本発明のヒーター用導電性シートにおいて、前記導電性フィラーは単層カーボンナノチューブであり、前記ヒーター用導電性シートは、前記熱可塑性エラストマー100質量部当たり、前記単層カーボンナノチューブを1質量部以上20質量部以下の割合で含有することが好ましい。単層カーボンナノチューブの含有割合が上記範囲内であれば、電極への優れた追従性及び密着性と、伸縮性の向上とのバランスを更に高めることができる。
【0012】
また、本発明のヒーター用導電性シートにおいて、前記導電性フィラーは多層カーボンナノチューブであり、前記ヒーター用導電性シートは、前記熱可塑性エラストマー100質量部当たり、前記多層カーボンナノチューブを1質量部以上18質量部以下の割合で含有することが好ましい。多層カーボンナノチューブの含有割合が上記範囲内であれば、電極への優れた追従性及び密着性と、伸縮性の向上とのバランスを更に高めることができる。
【0013】
また、本発明のヒーター用導電性シートにおいて、前記導電性フィラーはカーボンブラックであり、前記ヒーター用導電性シートは、前記熱可塑性エラストマー100質量部当たり、前記カーボンブラックを1質量部以上60質量部以下の割合で含有することが好ましい。カーボンブラックの含有割合が上記範囲内であれば、電極への優れた追従性及び密着性と、伸縮性とのバランスを更に高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電極に熱融着したときに、電極への追従性及び密着性に優れており、優れた伸縮性を発揮するヒーター用導電性シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るヒーター用導電性シートの構造を概略的に示す平面図である。
図2図1中、A-A線で示す断面図である。
図3図1中、B-B線で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(ヒーター用導電性シート)
本発明のヒーター用導電性シートは、電極に熱融着されるシートである。そして、本発明のヒーター用導電性シートは、熱可塑性エラストマーと、導電性フィラーとを含み、任意に、熱可塑性エラストマー及び導電性フィラー以外の成分(以下、「その他の成分」という。)を含む。また、本発明のヒーター用導電性シートは、体積抵抗率が所定範囲内であり、当該ヒーター用導電性シートを切断して得た試験片を用いて所定の伸縮試験を繰り返したときに、試験片の抵抗値が所定値以上となるときの伸縮回数が所定値以上であることを特徴とする。これにより、本発明のヒーター用導電性シートは、電極に熱融着したときに電極への追従性及び密着性に優れており、優れた伸縮性を発揮することができる。
なお、本発明のヒーター用導電性シートは、特に限定されることなく、例えば、ウェットスーツ、手袋等の衣類品や、各種電子機器のヒーター用シート部材として好適に使用することができる。
【0017】
<熱可塑性エラストマー>
本発明において、熱可塑性エラストマーは、導電性フィラー同士を結着するバインダーとして機能する材料である。なお、本発明において、熱可塑性エラストマーとは、常温(25℃)では、ベンゼン環のπ-π相互作用によってゴム弾性を示し、高温では可塑化されて成形可能となる材料をいう。
【0018】
熱可塑性エラストマーとしては、従来から成形用樹脂として用いられている熱可塑性弾性ポリマーを用いることができ、例えば、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アミド系エラストマー、及びエステル系エラストマー等が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、電極への優れた追従性及び密着性を維持したまま、伸縮性を更に高める観点からは、スチレン系エラストマーが好ましい。
【0019】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)共重合体、及び、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン(SBBS)共重合体等のブロック共重合体等が挙げられる。中でも、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)共重合体が好ましい。
スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱ケミカル製「ラバロン7400B」、旭化成株式会社製「タフブレン」、「アサブレン」及び「タフテック」、アロン化成株式会社製「エラストマーAR」、クラレ株式会社製「セプトン」及び「ハイブラー」、JSR株式会社製「JSR TR」及び「JSR SIS」、昭和化成工業株式会社製「マキシロン」、神興化成株式会社製「トリブレン」及び「スーパトリブレン」、住友化学株式会社製「エスポレックスSBシリーズ」、並びに、リケンテクノス株式会社製「レオストマー」、「アクティマー」、「高機能アロイアクティマー」及び「アクティマーG」等を挙げることができる。
【0020】
ウレタン系エラストマーとして、具体的にはDIC(株)製「パンデックス」、日本ミラクトラン(株)製「ミラクトランE390」、日本ポリウレタン工業(株)製「パラプレン」、住友バイエル(株)製「デスモパン」等を挙げることができる。
【0021】
オレフィン系エラストマーとしては、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、及び塩素化ポリエチレン等を挙げることができる。
オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、エクソンモービル株式会社製「サントプレーン」及び「ビスタマックス」、JSR株式会社製「エクセリンク」、昭和化成工業株式会社製「マキシロン」、住友化学株式会社製「エスポレックスTPEシリーズ」、ダウケミカル日本株式会社製「エンゲージ」、プライムポリマー株式会社製「プライムTPO」、三井化学株式会社製「ミラストマー」、三菱化学株式会社製「ゼラス」及び「サーモラン」、並びに、リケンテクノス株式会社製「マルチユースレオストマー」、「オレフレックス」及び「トリニティーFR」等を挙げることができる。
【0022】
アミド系エラストマーとしては、例えば、宇部興産株式会社製「UBEポリアミドエラストマーPAE」、大日本インキ化学株式会社製「グリラックスA」、及び、三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバミッドPAE」等を挙げることができる。
【0023】
エステル系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学株式会社製「プリマロイ」、東洋紡績株式会社製「ペルプレン」、及び、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」等を挙げることができる。
【0024】
<導電性フィラー>
導電性フィラーは、ヒーター用導電性シートにおいて、導電材として機能する材料である。導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラックなど)、グラファイト(グラフェン)、炭素繊維(カーボンナノファイバー)、カーボンフレーク、炭素超短繊維(例えば、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」という。)、気相成長炭素繊維など)等が挙げられる。CNTは、単層CNT、又は、5層までの多層CNTであることがより好ましい。
これらの中でも、優れた導電性を示すことから、導電性フィラーとして、単層及び多層CNT、並びに、カーボンブラックが好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
ここで、CNTの平均直径は、1nm以上であることが好ましく、60nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。CNTの平均直径が上記下限値以上であれば、ヒーター用導電性シートの導電性を更に高めることができる。また、CNTの平均直径が上記上限値以下であれば、少ない配合量であってもヒーター用導電性シートに優れた導電性を付与することができる。
なお、本発明において、「CNTの平均直径」は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像上で、例えば、20本のCNTについて直径(外径)を測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。
【0026】
また、CNTの平均長さは、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることが更に好ましく、600μm以下であることが好ましく、550μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましい。CNTの平均長さが上記下限値以上であれば、ヒーター用導電性シートの導電性を更に高めることができる。また、CNTの平均長さが上記上限値以下であれば、CNTの破断や切断などの破損を防ぐことができる。
【0027】
さらに、CNTのBET比表面積は、600m/g以上であることが好ましく、800m/g以上であることがより好ましく、2000m/g以下であることが好ましく、1800m/g以下であることがより好ましい。CNTのBET比表面積が上記範囲内であれば、ヒーター用導電性シートの性能を一層向上させることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
【0028】
また、CNTは、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が0.5以上5.0以下であることが好ましい。G/D比が0.5以上5.0以下であれば、ヒーター用導電性シートの性能を更に向上させることができる。
【0029】
また、CNTは、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。なお、「t-プロット」は、窒素ガス吸着法により測定されたCNTにおいて、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得ることができる。すなわち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて上記変換を行うことにより、CNTのt-プロットが得られる(de Boerらによるt-プロット法)。
【0030】
CNTは、t-プロットから得られる全比表面積S1に対する内部比表面積の比(S2/S1)が0.05以上0.30以下であることが好ましい。(S2/S1)が上記範囲内であれば、ヒーター用導電性シートの性能を更に向上させることができる。
【0031】
ここで、CNTの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スーパーグロース法(国際公開第2006/011655号参照)などの既知の方法で得られるCNTを用いることができる。また、CNTとして、例えば、以下の(1)~(3)の条件のうち少なくとも1つを満たすCNTを用いてもよい。
【0032】
(1)カーボンナノチューブ集合体を、バンドル長が10μm以上になるように分散させて得たカーボンナノチューブ分散体について、フーリエ変換赤外分光分析して得たスペクトルにおいて、カーボンナノチューブ分散体のプラズモン共鳴に基づくピークが、波数300cm-1超2000cm-1以下の範囲に、少なくとも1つ存在する。
(2)カーボンナノチューブ集合体について、液体窒素の77Kでの吸着等温線から、Barrett-Joyner-Halenda法に基づいて得られる、細孔径とLog微分細孔容積との関係を示す細孔分布曲線における最大のピークが、細孔径100nm超400nm未満の範囲にある。
(3)カーボンナノチューブ集合体の電子顕微鏡画像の二次元空間周波数スペクトルのピークが、1μm-1以上100μm-1以下の範囲に少なくとも1つ存在する。
【0033】
上記(1)~(3)の条件のうち少なくとも1つを満たすCNTは、例えば、CNT合成工程において、粒子状の触媒担持体をスクリュー回転によって連続的に搬送しながら原料ガスを供給する方法にて製造することができる。
【0034】
そして、導電性フィラーが単層CNTである場合、ヒーター用導電性シートは、熱可塑性エラストマー100質量部当たり、単層CNTを1質量部以上20質量部以下の割合で含むことが好ましい。単層CNTの含有割合が上記範囲内であれば、電極への優れた追従性及び密着性と、伸縮性の向上とのバランスを更に高めることができる。
【0035】
また、導電性フィラーが多層CNTである場合、ヒーター用導電性シートは、熱可塑性エラストマー100質量部当たり、多層CNTを1質量部以上18質量部以下の割合で含むことが好ましい。多層CNTの含有割合が上記範囲内であれば、電極への優れた追従性及び密着性と、伸縮性の向上とのバランスを更に高めることができる。
【0036】
さらに、導電性フィラーがカーボンブラックである場合、ヒーター用導電性シートは、熱可塑性エラストマー100質量部当たり、カーボンブラックを10質量部以上60質量部以下の割合で含むことが好ましい。カーボンブラックの含有割合が上記範囲内であれば、電極への優れた追従性及び密着性と、伸縮性の向上とのバランスを更に高めることができる。
【0037】
<その他の成分>
本発明のヒーター用導電性シートが含み得るその他の成分としては、本発明の効果を損なわないものであれば、特に限定されることはない。その他の成分としては、例えば、既知の添加剤が挙げられる。既知の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、発泡剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、軟化剤、粘着付与剤、可塑剤、離型剤、防臭剤、香料などが挙げられる。
【0038】
<体積抵抗率>
そして、本発明のヒーター用導電性シートは、体積抵抗率が1Ω・cm以上であり、1000Ω・cm以下であり、100Ω・cm以下であることが好ましく、50Ω・cm以下であることがより好ましい。体積抵抗率が上記範囲内であれば、ヒーター用導電性シートを良好に導通させて、発熱効率を十分に高めることができる。
なお、本発明において、導電性シートの体積抵抗率は、本明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0039】
<伸縮試験>
そして、本発明の導電性シートは、当該ヒーター用導電性シートを切断して長さ100mm、幅10mm、厚さ40μmの試験片を得て、前記試験片を長さ30mmの位置で伸縮性評価装置に固定し、この試験片に引張力を付加して試験片を長さ方向に最大30mm伸張させた後、引張力を除去して試験片を収縮させる伸縮工程を1回とする伸縮試験を30回/分の速度で繰り返したときに、試験片の抵抗値が10Ω以上となるときの伸縮回数が500以上であり、好ましくは1000以上であり、より好ましくは2000以上である。試験片の抵抗値が10Ω以上となるときの伸縮回数が500以上であれば、導電性シートは優れた伸縮性を発揮することができる。
なお、伸縮試験は、本明細書の実施例に記載の方法に従って行うことができる。
【0040】
(ヒーター用導電性シートの製造方法)
上述した本発明のヒーター用導電性シートの製造方法は、特に限定されることなく、例えば、熱可塑性エラストマーと、導電性フィラーと、任意にその他の成分とを含む導電性組成物を調製する組成物調製工程と、導電性組成物を成形するシート形成工程とを含む方法を用いて製造することができる。
【0041】
<組成物調製工程>
組成物調製工程は、例えば、(i)導電性フィラーを含む導電性分散液を調製する分散液調製工程と、(ii)導電性分散液と、熱可塑性エラストマーと、任意のその他の成分とを混合する混合工程と、(iii)混合工程で得られた混合溶液を乾燥させる乾燥工程とを含むものとすることができる。
【0042】
(i)分散液調製工程
分散液調製工程では、導電性フィラーを溶媒に分散させ、粗分散液を得る。次いで、粗分散液を分散処理し、導電性分散液を得る。
【0043】
上記溶媒としては、例えば、水又は揮発性の非水溶媒等が挙げられる。具体的には、上記溶媒としては、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコール、メトキシプロパノール、プロピレングリコール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、α-ヒドロキシカルボン酸のエステル、ベンジルベンゾエート(安息香酸ベンジル)等のエステル類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノメチルエーテル等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系極性有機溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;サリチルアルデヒド、ジメチルスルホキシド、4-メチル-2-ペンタノン、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。他にも、シクロヘキサン、シクロペンタン等のシクロアルカン;クロロホルム等のハロゲン化アルキル;を用いることもできる。
中でも、後に行われる乾燥処理を考慮して、揮発除去させやすいクロロホルム、シクロヘキサン、メチルエチルケトンが好ましい。
また、導電性分散液に用いる溶媒としては、熱可塑性エラストマーを溶解し得るものが特に好ましい。かかる溶媒に導電性フィラーを分散させておき、その分散液に熱可塑性エラストマーを溶解させることで、得られる導電性組成物中に導電性フィラーを高分散させることができるからである。
上記溶媒は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0044】
上記粗分散液は、特に限定されることなく、(ヒーター用導電性シート)の項目で上述した導電性フィラーと、上述した溶媒とを既知の方法で混合することにより得ることができる。なお、導電性フィラーと、溶媒とは任意の順序で混合することができる。
【0045】
また、粗分散液を分散処理に供して導電性分散液を調製する際の分散処理方法としては、特に限定されることなく、既知の分散処理方法を用いることができる。
【0046】
そして、導電性分散液中の導電性フィラーの濃度は、導電性分散液中に導電性フィラーを分散できる限り、特に制限はないが、導電性分散液中の導電性フィラーの濃度は、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。導電性分散液中の導電性フィラーの濃度が上記範囲内であれば、導電性フィラーの分散性に優れる導電性分散液を得ることができる。
【0047】
(ii)混合工程
混合工程では上記のようにして得た導電性分散液と、熱可塑性エラストマーと、任意のその他の成分とを混合する。混合方法は、特に制限はなく、前述の導電性分散液と、熱可塑性エラストマーと、任意のその他の成分とを既知の方法で混合することにより得ることができる。なお、導電性分散液と、熱可塑性エラストマーと、任意のその他の成分とは、任意の順序で混合することができる。
【0048】
(iii)乾燥工程
乾燥工程では、混合工程で得られた混合溶液を乾燥させて、混合溶液の溶媒除去後の残留物として導電性組成物を得る。乾燥方法は、特に制限はなく、既知の方法で乾燥することが可能である。
【0049】
<シート形成工程>
シート形成工程では、上記導電性組成物をシート成形してヒーター用導電性シートを得る。ヒーター用導電性シートの形成方法は特に限定されることなく、熱溶融押出しシート成形機又は圧縮成形機を用いて、減圧、加熱等の操作を行うなどの、既知の方法で成形することが可能である。
【0050】
(ヒーター用導電性シートの使用態様)
本発明のヒーター用導電性シートは、単独でヒーター機能を有するシート部材として用いてもよく、他の任意の部材と組み合わせて使用してもよい。以下、本発明のヒーター用導電性シートの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0051】
図1は、本発明の一実施形態に係るヒーター用導電性シートの概略構成を示す断面図であり、図2は、図1中、A-A線で示す断面図であり、図3は、図1中、B-B線で示す断面図である。
図1に示すヒーター用導電性シート1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム2上に取り付けられた一対の電極(3a,3b)に熱融着されている。ここで、ヒーター用導電性シート1は、上述した性状を有する本発明のヒーター用導電性シートであるため、電極(3a,3b)への追従性及び密着性に優れると共に、優れた伸縮性を発揮する。したがって、ヒーター用導電性シート1は良好に導通させることができるため、十分な発熱効果を得ることができる。なお、電極(3a,3b)としては、特に限定されるものではないが、銅電極を用いることが好ましい。
【実施例0052】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0053】
実施例及び比較例において、体積抵抗率、伸縮回数、コンタクト抵抗値(プレス前及びプレス後)、導電性シートの厚さ及び成形性は、以下の方法を使用して測定又は評価した。
【0054】
<体積抵抗率>
実施例及び比較例で作製した導電性シートについて、表面抵抗率計〔日東精工アナリテック社製(旧三菱化学アナリテック社製)、製品名「ロレスタ(登録商標)GX MCP-T700型」〕を用いて、表面抵抗率を5点測定し、その平均値を表面抵抗率とした。そして、下記式に基づいて、体積抵抗率を求めた。
体積抵抗率(Ω・cm)=表面抵抗率(Ω)×導電性シートの厚さ(cm)
【0055】
<伸縮回数>
実施例及び比較例で製作した導電性シートA(長さ:100mm、幅:100mm、厚さ:40μm)を切断し、長さ100mm、幅10mm、厚さ40μmの短冊状の試験片を得た。この試験片を長さ30mmの位置で伸縮性評価装置(ユアサシステム機器株式会社社製、面状引張試験機「DMLHP-ST」)に固定した。そして、伸縮性評価装置を用いて試験片を長さ方向に最大30mm伸張して100%伸張を行った後、引張力を除去して試験片を収縮させる伸縮工程を1回とする伸縮試験を30回/分の速度で繰り返した。そして、試験片の抵抗値が10Ω以上となるときの伸縮回数を計測した。
試験片の抵抗値が10Ω以上となるときの伸縮回数が多いほど、導電性シートは伸縮性に優れることを意味する。
【0056】
<コンタクト抵抗値(プレス前)>
実施例及び比較例で作製した導電性シートB(長さ:100mm、幅:100mm、厚さ:400μm)を25mm角に切断し、試験片とした。次に、試験片を上下面方向から一対の銅電極(サイズ:25mm角)で挟み、さらに、この銅電極の上からPETフィルム(サイズ:30mm角)で試験片を挟んだ。そして、一方のPETフィルム上に200gの錘を載せて試験片に荷重をかけ、テスター(三和電気計器社製、「デジタルマルチメータPC720M」)を用いて試験片の抵抗値を測定した。得られた抵抗値をコンタクト抵抗値(プレス前)とした。
【0057】
<コンタクト抵抗値(プレス後)>
試験片として、コンタクト抵抗値(プレス前)の測定に使用した試験片と同様のものを使用した。試験片を試験用プレス機(株式会社東洋精機製作所製、「ミニテストプレス」)の成形室に設置し、圧力2.7MPa、温度100℃、加圧時間3分で試験片をプレス処理し、銅電極に試験片を熱融着させた。その後、テスター(三和電気計器社製、「デジタルマルチメータPC720M」)を用いて銅電極に熱融着した試験片の抵抗値を測定した。得られた抵抗値をコンタクト抵抗値(プレス後)とした。
【0058】
<抵抗変化率>
上記により得られたコンタクト抵抗値(プレス前)とコンタクト抵抗値(プレス後)を用いて、下記式に基づいて抵抗変化率を求めた。得られた抵抗変化率は、小数点第三位を四捨五入した。
抵抗変化率=コンタクト抵抗率(プレス後)/コンタクト抵抗率(プレス前)
抵抗変化率が低いほど、導電性シートは電極への追従性及び密着性に優れていることを意味する。
【0059】
<導電性シートの厚さ>
実施例及び比較例で作製した導電性シートの中心1点と、4隅の4点を、マイクロメータ(293シリーズ、「MDH-25」:株式会社ミツトヨ製)を用いて測定し、その平均値を導電性シートの厚さとした。
【0060】
<成形性>
実施例及び比較例で作製した導電性シートについて、抵抗変化率により成形性を評価した。具体的には、上記のようにして抵抗変化率を求めた。そして、抵抗変化率が0.08未満であれば成形性は「良好」、0.08以上であれば成形性は「不良」と評価した。
【0061】
(実施例1)
<導電性組成物の調製>
<<分散液調製工程>>
溶媒としてのシクロヘキサンに、導電性フィラーとしての単層CNT(ゼオンナノテクノロジー社製、製品名「ZEONANO SG101」、比重:1.7、平均直径:3.5nm、平均長さ:400μm、BET比表面積:1050m/g、G/D比:2.1、t-プロットは上に凸(屈曲点の位置:0.6nm)、内部比表面積S2/全比表面積S1:0.24)を添加して、撹拌機で10分間撹拌し、粗分散液を得た。
次いで、高圧分散装置(美粒社製、製品名「BERYU SYSTEM PRO」)を使用して、圧力100MPa、温度20℃の条件で上記粗分散液を5回分散処理して、濃度0.35%の導電性分散液を得た。
【0062】
<<混合工程>>
得られた導電性分散液と、熱可塑性エラストマーとしてのスチレン-イソプレン共重合体(日本ゼオン社製、「QTC3620」)とを、スチレン-イソプレン共重合体100部に対して導電性分散液中の導電性フィラーが5質量部となるように撹拌機を用いて混合し、スチレン-イソプレン共重合体を溶解させて、混合溶液を得た。
<<乾燥工程>>
上記混合溶液を風乾し、黒色固体を得た。得られた黒色固体を80℃で12時間減圧乾燥し、組成物(導電性組成物)を得た。
【0063】
<導電性シートの作製>
伸縮試験用金型(100mm×100mm×0.04mmの空隙)及びプレス前後のコンタクト抵抗値評価用金型(100mm×100mm×0.4mmの空隙)を備えた圧縮成型用金型を、ミニテストプレス(株式会社東洋精機製作所)の成形室に設置した。そして、上記導電性組成物を上記それぞれの金型の空隙内に隙間なく充填した。
充填後、成形機の加熱圧縮板で上記それぞれの金型を25MPaの圧力で挟み込み、100℃で5分間圧縮加熱成形し、長さ100mm、幅100mm、厚さ40μmの導電性シートA(ヒーター用導電性シート)と、長さ100mm、幅100mm、厚さ400μmの導電性シートB(ヒーター用導電性シート)を作製した。
得られた導電性シートを用いて各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例2,3)
組成物の調製において、単層CNTの配合量がスチレン-イソプレン共重合体100部に対して10部(実施例2)、15部(実施例3)となるように調整した。それ以外は、実施例1と同様にして導電性シート(ヒーター用導電性シート)を作製した。
得られた導電性シートについて、実施例1と同様にして各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(実施例4,5)
導電性組成物の調製において、導電性フィラーとして、単層CNTに替えて多層CNT(KUMHO社製、K-Nanos-100T)を使用した。また、導電性フィラーの配合量が熱可塑性エラストマー100部に対して10部(実施例4)、15部(実施例5)となるように調整した。それ以外は、実施例1と同様にして導電性シート(ヒーター用導電性シート)を作製した。
得られた導電性シートについて、実施例1と同様にして各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例6~8)
導電性フィラー分散液の調製において、単層CNTに替えてカーボンブラック(Cabot社製、VULCAN(登録商標)VXC72R)を使用し、熱可塑性エラストマー100部に対してカーボンブラックを30部(実施例6)、40部(実施例7)、50部(実施例8)使用した。それ以外は、実施例1と同様にして導電性シート(ヒーター用導電性シート)を作製した。
得られた導電性シートについて、実施例1と同様にして各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
<導電性組成物の調製>
実施例1で使用した導電性フィラー分散液に対し、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム(HNBR;日本ゼオン社製、「ゼットポール2020」)を、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム100部に対して導電性フィラー分散液中の導電性フィラーが5部となるように投入し、撹拌機を用いて溶解させた。次いで、得られた溶液を水へ滴下し、凝固させて黒色固体を得た。そして、この黒色固体を80℃で12時間減圧乾燥し、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムと単層CNTとの混合物を得た。
その後、20℃のオープンロールを用いて、上記混合物中の水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム100部に対して、架橋助剤としての酸化亜鉛(亜鉛華二種)を5部、ステアリン酸を1部、第一老化防止剤としての4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業社製、「ノクラックCD」)を1.5部、第二老化防止剤としての2-メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩(大内新興化学工業社製、「ノクラックMBZ」)を1.5部、及び加硫剤としての1,3-ビス[1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン(VUL-CUP(登録商標)40KE)8部を加え、混練し、組成物を得た。
【0068】
<導電性シートの作製>
伸縮試験用金型(100mm×100mm×0.04mmの空隙)及びプレス前後のコンタクト抵抗値評価用金型(100mm×100mm×0.4mmの空隙)を備えた圧縮成型用金型を、ミニテストプレス(株式会社東洋精機製作所)の成形室に設置した。そして、上記導電性組成物を、上記それぞれの金型の空隙内に充填した。
充填後、成形室を真空状態にし、成形機の加熱圧縮板で上記それぞれの金型を25MPaの圧力で挟み込み、150℃、30分間、圧縮加熱成形し、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム(HNBR)成分を架橋させ、長さ100mm、幅100mm、厚さ40μmの導電性シートXと、長さ100mm、幅100mm、厚さ400μmの導電性シートYを作製した。
導電性シートAに替えて導電性Xを、導電性シートBに替えて導電性シートYを使用した以外は、実施例1と同様にして各種測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0069】
(比較例2,比較例3)
組成物の調製において、単層CNTの配合量を、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム100部に対して10部(比較例2)、15部(比較例3)となるように調整した。それ以外は、比較例1と同様にして導電性シートを作製した。
得られた導電性シートについて、実施例1と同様にして各種測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1、2中、
「SIS」は、スチレン-イソプレン共重合体を、
「HNBR」は、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムを、
「SGCNT」は、単層カーボンナノチューブを、
「MWCNT」は、多層カーボンナノチューブを、
「CB」は、カーボンブラックを示す。
【0073】
表1、2の結果から、熱可塑性エラストマーと、導電性フィラーとを含み、体積抵抗率が所定値以上であり、所定の伸縮試験を繰り返し行ったときに、試験片の抵抗値が所定値以上となるときの伸縮回数が所定値以上である実施例1~8の導電性シートは、比較例1~3の導電性シートと比較して、電極に熱融着したときに、電極への追従性及び密着性に優れており、優れた伸縮性を発揮することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、電極に熱融着したときに、電極への追従性及び密着性に優れており、優れた伸縮性を発揮するヒーター用導電性シートを提供することができる。
図1
図2
図3