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特開2023-151752ロボットハンド及びロボットハンドの製造方法
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  • 特開-ロボットハンド及びロボットハンドの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151752
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ロボットハンド及びロボットハンドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B25J15/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061556
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智章
(72)【発明者】
【氏名】東海林 和貴
(72)【発明者】
【氏名】後藤 良太
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS15
3C707CT04
3C707FS01
3C707FT08
3C707HS27
3C707NS13
(57)【要約】
【課題】製造工程を簡略化することが可能なロボットハンドの製造方法を提供する。
【解決手段】対象物を保持するロボットハンドの製造方法であって、互いに連結された複数の空孔を含むポーラス部材を準備する準備工程と、ポーラス部材の表面を、対象物を吸引保持する吸引保持面及び吸引源に接続される接続部を除いて溶融させることにより、ポーラス部材の表面のうち吸引保持面及び接続部を除く領域に空孔を塞ぐシール面を形成するシール面形成工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持するロボットハンドの製造方法であって、
互いに連結された複数の空孔を含むポーラス部材を準備する準備工程と、
該ポーラス部材の表面を、該対象物を吸引保持する吸引保持面及び吸引源に接続される接続部を除いて溶融させることにより、該ポーラス部材の表面のうち該吸引保持面及び該接続部を除く領域に該空孔を塞ぐシール面を形成するシール面形成工程と、を含むことを特徴とするロボットハンドの製造方法。
【請求項2】
該シール面形成工程では、該ポーラス部材にレーザービームを照射することによって該ポーラス部材の表面を溶融させることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンドの製造方法。
【請求項3】
該ポーラス部材は、導電性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のロボットハンドの製造方法。
【請求項4】
対象物を保持するロボットハンドであって、
互いに連結された複数の空孔を含むポーラス部材を備え、
該ポーラス部材は、該対象物を吸引保持する吸引保持面と、吸引源に接続される接続部と、を備え、
該ポーラス部材の表面のうち該吸引保持面及び該接続部を除く領域に、該空孔を塞ぐシール面が形成されていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項5】
該ポーラス部材は、導電性を有することを特徴とする請求項4に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を保持するロボットハンド、及び、該ロボットハンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の産業界では、様々な製品の製造工程において自動化が進められており、作業者の代わりに産業用ロボットが物品の搬送、組み立て、検査等の作業を行うことが一般的になっている。例えば、半導体ウェーハ、樹脂パッケージ基板等の被加工物を加工する際には、切削装置、研削装置、研磨装置、レーザー加工装置等の各種の加工装置が用いられる。そして、被加工物を自動で搬送する搬送ロボットが加工装置に搭載される。
【0003】
加工装置で被加工物を加工する際には、複数の被加工物を収容したカセットが加工装置にセットされる。そして、搬送ロボットは、加工前の被加工物を保持してカセットから搬出するとともに、加工後の被加工物を保持してカセットに搬入する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加工装置等に搭載される搬送ロボットには、対象物を保持するロボットハンド(エンドエフェクタ)が装着される。例えばロボットハンドは、対象物を吸引保持する吸引保持面を備えており、吸引保持面は吸引源に接続される。吸引保持面を対象物に接触させた状態で、吸引保持面に吸引源の吸引力を作用させることにより、被加工物がロボットハンドによって吸引保持される。
【0006】
ロボットハンドの製造工程では、吸引保持面を吸引源に接続するための吸引路をロボットハンドの内部に形成する加工が行われる。しかしながら、ロボットハンドは狭い隙間にも配置できるように薄く形成されていることも多く、吸引路の形成には微細で高精度な加工が求められる。そのため、吸引路を適切に形成するためには特別な設備や複雑な加工プロセスが必要となり、ロボットハンドの製造に要する工程数やコストが増大する原因となっている。
【0007】
また、搬送ロボットの稼働中にロボットハンドに形成された吸引路に異物が入り込み、吸引路が異物によって塞がれると、吸引保持面に作用する吸引力が弱まってしまう。その結果、ロボットハンドによる被加工物の保持が不完全になり、被加工物の落下等の不都合が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、製造工程を簡略化することが可能なロボットハンドの製造方法、及び、対象物を確実に保持することが可能なロボットハンドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、対象物を保持するロボットハンドの製造方法であって、互いに連結された複数の空孔を含むポーラス部材を準備する準備工程と、該ポーラス部材の表面を、該対象物を吸引保持する吸引保持面及び吸引源に接続される接続部を除いて溶融させることにより、該ポーラス部材の表面のうち該吸引保持面及び該接続部を除く領域に該空孔を塞ぐシール面を形成するシール面形成工程と、を含むロボットハンドの製造方法が提供される。
【0010】
なお、好ましくは、該シール面形成工程では、該ポーラス部材にレーザービームを照射することによって該ポーラス部材の表面を溶融させる。また、好ましくは、該ポーラス部材は、導電性を有する。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、対象物を保持するロボットハンドであって、互いに連結された複数の空孔を含むポーラス部材を備え、該ポーラス部材は、該対象物を吸引保持する吸引保持面と、吸引源に接続される接続部と、を備え、該ポーラス部材の表面のうち該吸引保持面及び該接続部を除く領域に、該空孔を塞ぐシール面が形成されているロボットハンドが提供される。
【0012】
なお、好ましくは、該ポーラス部材は、導電性を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係るロボットハンドの製造方法では、ポーラス部材の表面を溶融させてシール面を形成することにより、ポーラス部材の内部で連結された複数の空孔によって吸引路が構成されるロボットハンドが得られる。これにより、ポーラス部材の内部に吸引路を形成するための加工が不要になり、ロボットハンドの製造工程が簡略化される。
【0014】
また、本発明の一態様に係るロボットハンドでは、ポーラス部材に含まれる複数の空孔によって、多数の吸引路がポーラス部材の内部の全体にわたって形成される。これにより、仮に空孔の一部が異物によって塞がれた場合にも、他の空孔が正常な吸引路として機能し、吸引保持面の吸引力の低下が抑制される。その結果、ロボットハンドによる対象物の確実な保持が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】搬送ロボットを示す斜視図である。
図2図2(A)はロボットハンドを示す側面図であり、図2(B)はロボットハンドを示す平面図である。
図3図3(A)はシール面形成工程におけるポーラス部材を示す斜視図であり、図3(B)はシール面形成工程後のポーラス部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係るロボットハンドを装着可能な搬送ロボットの構成例について説明する。図1は、搬送ロボット2を示す斜視図である。なお、図1において、X軸方向(第1水平方向、前後方向)とY軸方向(第2水平方向、左右方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(鉛直方向、高さ方向、上下方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0017】
搬送ロボット2は、対象物11を保持して搬送する搬送機構(搬送ユニット)であり、例えば対象物を加工する加工装置に搭載される。この場合、対象物11は、搬送ロボット2によって搬送される被搬送物に相当し、且つ、加工装置によって加工される被加工物に相当する。
【0018】
例えば対象物11は、単結晶シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面(第1面)11a及び裏面(第2面)11bを備える。また、対象物11の表面11a側には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス13が形成されている。
【0019】
対象物11を切削装置やレーザー加工装置によって加工して分割することにより、対象物11がデバイス13をそれぞれ備える複数のデバイスチップに個片化される。また、対象物11の分割前に、対象物11の裏面11b側を研削装置や研磨装置で加工して対象物11を薄化しておくと、薄型化されたデバイスチップが得られる。
【0020】
ただし、対象物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば対象物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等でなる基板(ウェーハ)であってもよい。また、デバイス13の種類、数量、形状、構造、大きさ、配列等にも制限はなく、対象物11にはデバイス13が形成されていなくてもよい。
【0021】
加工装置で対象物11を加工する際には、複数の対象物11を収容したカセットが加工装置にセットされる。そして、加工装置に搭載された搬送ロボット2が、加工前の対象物11を保持してカセットから搬出するとともに、加工後の対象物11を保持してカセットに搬入する。
【0022】
搬送ロボット2は、移動機構(移動ユニット)4を備える。移動機構4は、円柱状の支持台6と、支持台6によって支持された第1アーム8及び第2アーム10とを備える。第1アーム8の一端部は、支持台6の上面側に接続されている。また、第2アーム10の一端部は、第1アーム8の他端部の上面側に接続されている。
【0023】
第1アーム8の一端部には、第1アーム8をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の第1回転駆動源(不図示)が連結されている。第1回転駆動源を駆動させると、第1アーム8が水平面(XY平面)と平行な方向に沿って旋回する。なお、第1アーム8には、第1アーム8をZ軸方向に沿って昇降させる昇降機構(不図示)が連結されていてもよい。また、第2アーム10の一端部には、第2アーム10をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の第2回転駆動源(不図示)が連結されている。第2回転駆動源を駆動させると、第2アーム10が第1アーム8と独立して水平面(XY平面)と平行な方向に沿って旋回する。
【0024】
第2アーム10の他端部の上面側には、ロボットハンド支持部12が固定されている。また、ロボットハンド支持部12の前端部には、ロボットハンド支持部12の前面から前方に突出する装着部14が固定されている。
【0025】
装着部14の先端部(一端部)には、対象物11を保持するロボットハンド(エンドエフェクタ)20が装着される。また、装着部14の基端部(他端部)には、装着部14を回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0026】
例えば装着部14は、ロボットハンド20の基端部が挿入される挿入口14aを備える。ロボットハンド20の基端部を装着部14の挿入口14aに挿入することにより、ロボットハンド20が装着部14に装着され、ロボットハンド支持部12によって支持される。そして、第1アーム8及び第2アーム10を独立して旋回させることにより、ロボットハンド20がXY平面方向における任意の位置に位置付けられる。
【0027】
ロボットハンド支持部12の内部には、吸引路16が設けられている。吸引路16の一端側は、装着部14の挿入口14aに接続されている。また、吸引路16の他端側は、バルブ(不図示)等を介してエジェクタ等の吸引源18に接続されている。ロボットハンド20を装着部14に装着すると、ロボットハンド20が吸引路16を介して吸引源18に接続される。
【0028】
ロボットハンド20は、ポーラス部材22を備える。例えばポーラス部材22は、板状に形成され、互いに概ね平行な上面(第1面)22a及び下面(第2面)22bと、上面22a及び下面22bに接続された側面(外周面)22cとを備える。ポーラス部材22は、ポーラスセラミックス、ポーラスメタル、ポーラスシリコン、ポーラス樹脂等の多孔質材料でなり、内部に複数の空孔(気孔)を含む。ポーラス部材22の空孔は互いに連結されており、ポーラス部材22の内部で流体の流路を構成している。
【0029】
ポーラス部材22は、本体部24と、本体部24に接続された支持部26とを備える。本体部24の先端部(一端部)は、二股に分岐しており、対象物11を保持する一対の保持部24aを構成している。また、保持部24aの上面は、対象物11を吸引保持する吸引保持面24bを構成している。吸引保持面24bは、本体部24の上面のうち、ポーラス部材22の空孔が露出している領域に相当する。
【0030】
本体部24の基端部(他端部)には、本体部24よりも幅が狭い支持部26が接続されている。支持部26は、装着部14の挿入口14aに対応する形状に形成されており、挿入口14aに挿入できる。支持部26が装着部14の挿入口14aに挿入されると、ロボットハンド20が装着部14に装着、固定される。
【0031】
図2(A)は、ロボットハンド20を示す側面図である。支持部26の側面(外周面)26aには、吸引源18(図1参照)に接続される接続部26bが設けられている。接続部26bは、支持部26の側面26aのうち、ポーラス部材22の空孔が露出している領域に相当する。ただし、接続部26bは支持部26の上面又は下面に設けられていてもよい。
【0032】
ポーラス部材22の表面(上面22a、下面22b、側面22c)のうち、吸引保持面24b(図1参照)及び接続部26b(図2(A)参照)を除く領域には、ポーラス部材22の空孔を塞ぐシール面が形成されている。具体的には、ポーラス部材22の表面は、吸引保持面24b及び接続部26bを除いてレーザービームの照射等によって溶融され、溶融された面(シール面)においてポーラス部材22の空孔が塞がれている。そして、吸引保持面24b及び接続部26bは、ポーラス部材22の内部の空孔を介して互いに接続されている。
【0033】
図2(B)は、ロボットハンド20を示す平面図である。ロボットハンド20の支持部26が装着部14(図1参照)に装着されると、支持部26の側面26aに形成されている接続部26bが、装着部14の挿入口14a内で吸引路16に接続される。その結果、一対の吸引保持面24bが、ポーラス部材22の内部の空孔、接続部26b、及び吸引路16を介して、吸引源18に接続される。これにより、吸引源18の吸引力(負圧)を吸引保持面24bに作用させることが可能になる。
【0034】
搬送ロボット2で対象物11を搬送する際には、まず、図1に示す移動機構4によってロボットハンド20を移動させ、対象物11の下に配置する。そして、一対の吸引保持面24bを対象物11の下面側に接触させた状態で、吸引保持面24bに吸引源18の吸引力を作用させる。これにより、対象物11が一対の保持部24aによって吸引保持される。ただし、吸引保持面24bは、保持部24aの下面に設けられていてもよい。この場合には、ロボットハンド20は対象物11の上面側を吸引保持する。
【0035】
次に、一対の保持部24aで対象物11を保持した状態で、ロボットハンド20を移動機構4によって移動させ、対象物11を所望の場所に搬送する。その後、吸引保持面24bによる対象物11の吸引を解除することにより、対象物11が所望の場所に載置される。例えば、搬送ロボット2が加工装置に搭載される場合には、ロボットハンド20はカセットに収容されている加工前の対象物11を吸引保持し、カセットから搬出する。また、ロボットハンド20は、加工後の対象物11を吸引保持し、カセットに搬入する。
【0036】
上記のロボットハンド20においては、ポーラス部材22の内部に存在する多数の空孔が連結されることにより、吸引保持面24bと接続部26bとを繋ぐ吸引路が構成される。すなわち、ポーラス部材22の内部には、多数の吸引路がポーラス部材22の全体にわたって形成される。そのため、仮に吸引保持面24bから異物が入り込んで空孔の一部が異物によって塞がれた場合にも、他の空孔を介して吸引源18の吸引力を吸引保持面24bに作用させることができる。これにより、吸引保持面24bの吸引力の低下が抑制され、対象物11が確実に保持される。
【0037】
なお、ポーラス部材22の絶縁性が高いと、吸引保持面24bが帯電しやすくなり、被加工物に微粒子等の異物が吸着することがある。また、吸引保持面24bが対象物11に接近した際に、対象物11と吸引保持面24bとの間で放電が生じやすくなり、対象物11に形成されているデバイス13の静電破壊の原因となる。そのため、ポーラス部材22は導電性を有することが好ましい。
【0038】
ただし、ポーラス部材22の抵抗率が低すぎると、対象物11と吸引保持面24bとの間でスパークが生じ、対象物11に形成されているデバイス13の損傷等の不都合が生じるおそれがある。そのため、ポーラス部材22の抵抗率は、10Ω・cm以上10Ω・cm以下であることが好ましい。例えば、導電性のポーラス部材22として、ポーラスSiCを用いることができる。
【0039】
導電性のポーラス部材22を用いることにより、吸引保持面24bの帯電を回避し、異物の付着や静電気及びスパークの発生を抑制することができる。また、ポーラス部材22自体が導電性を有することにより、ポーラス部材22の表面に導電性を付与する処理(フッ素樹脂コーティング等)が不要になり、ロボットハンド20の製造工程が簡略化される。
【0040】
次に、ロボットハンドの製造方法について説明する。本実施形態に係るロボットハンドの製造方法では、レーザービームの照射等によってポーラス部材22の表面を溶融させることにより、吸引保持面24b(図1参照)及び接続部26b(図2(A)参照)を備えるロボットハンド20を製造する。
【0041】
具体的には、まず、互いに連結された複数の空孔を含むポーラス部材22を準備する(準備工程)。準備工程では、ポーラス材料でなる板状部材を準備し、板状部材を所定の形状に加工する。例えば、液体を高圧で噴射するウォータージェット加工によって板状部材を切断し、図1に示す形状のポーラス部材22を形成する。
【0042】
ただし、ポーラス部材22を準備する方法に制限はない。例えば、ポーラス材料でなる板状部材にレーザービームを照射することによって、所望の形状のポーラス部材22を形成してもよい。この場合、ポーラス部材22を形成するとともに、ポーラス部材22の側面22cを溶融させて、ポーラス部材22の側面22cにシール面を形成してもよい。また、ポーラス材料を所定の形状に成形して焼結することにより、所望の形状のポーラス部材22を形成してもよい。
【0043】
前述の通り、ポーラス部材22としては、ポーラスセラミックス、ポーラスメタル、ポーラスシリコン、ポーラス樹脂等を用いることができる。また、ポーラス部材22の抵抗率は、10Ω・cm以上10Ω・cm以下であることが好ましい。
【0044】
次に、ポーラス部材22の表面のうち吸引保持面24b(図1参照)及び接続部26b(図2(A)参照)を除く領域に、ポーラス部材22の空孔を塞ぐシール面を形成する(シール面形成工程)。図3(A)は、シール面形成工程におけるポーラス部材22を示す斜視図である。
【0045】
例えばシール面形成工程では、ポーラス部材22にレーザー加工を施すことにより、ポーラス部材22の表面を溶融させる。ポーラス部材22のレーザー加工には、レーザー加工装置が用いられる。
【0046】
レーザー加工装置は、ポーラス部材22を保持する保持ユニット(不図示)と、ポーラス部材22にレーザービームを照射するレーザー照射ユニット30とを備える。保持ユニットとしては、ポーラス部材22を保持するチャックテーブルや、ポーラス部材22の端部を把持して固定するクランプ等を用いることができる。
【0047】
レーザー照射ユニット30は、レーザー発振器(不図示)と、レーザー加工ヘッド32とを備える。レーザー加工ヘッド32には、レーザー発振器から出射したレーザービームをポーラス部材22へと導く光学系が内蔵されており、光学系はレーザービームを集光させる集光レンズ等の光学素子を含む。レーザー照射ユニット30からポーラス部材22にレーザービーム34を照射することにより、ポーラス部材22にレーザー加工が施される。
【0048】
レーザービーム34をポーラス部材22に照射しつつ走査させると、ポーラス部材22の表面のうちレーザービーム34が照射された領域(被加工領域)が溶融され、被加工領域において露出するポーラス部材22の空孔が塞がれる。これにより、ポーラス部材22の表面に空孔を塞ぐシール面が形成される。
【0049】
例えば、ポーラス部材22がポーラスセラミックスである場合には、レーザー発振器として連続発振(CW)のCOレーザーが用いられ、波長が10μm付近のレーザービーム34がポーラス部材22に照射される。また、レーザービーム34の平均出力は10W以上20W以下程度、レーザービーム34の走査速度は10mm/s程度に設定される。上記のような照射条件でレーザービーム34をポーラス部材22に照射すると、ポーラス部材22の表面が溶融し、平坦なシール面が形成される。ただし、レーザービーム34の照射条件は、ポーラス部材22の材質等に応じて適宜変更できる。
【0050】
レーザービーム34は、ポーラス部材22の表面(上面22a、下面22b、側面22c)のうち、吸引保持面24bが形成される予定の吸引保持面形成領域24c、及び、接続部26b(図2(A)参照)が形成される予定の領域を除く領域に照射される。その結果、ポーラス部材22の空孔が露出する吸引保持面24b及び接続部26bが残存するとともに、ポーラス部材22の表面のうち吸引保持面24b及び接続部26bを除く領域にポーラス部材22の空孔を塞ぐシール面が形成される。
【0051】
なお、シール面形成工程では、ポーラス部材22の位置や角度を変えつつレーザービーム34をポーラス部材22に照射してもよい。また、レーザービーム34を遮光するマスクで吸引保持面24b及び接続部26bを覆った状態で、ポーラス部材22にレーザービーム34を照射してもよい。これにより、吸引保持面24b及び接続部26bが誤って溶融されることを防止できる。
【0052】
図3(B)は、シール面形成工程後のポーラス部材22を示す斜視図である。シール面形成工程が完了すると、レーザービーム34が照射されていない吸引保持面24b及び接続部26b(図2(A)参照)においてはポーラス部材22の空孔が露出し、その他のポーラス部材22の表面では空孔が塞がれる。これにより、吸引保持面24bから接続部26bに至る吸引路を内部に備えるロボットハンド20が形成される。
【0053】
以上の通り、本実施形態に係るロボットハンドの製造方法では、ポーラス部材22の表面を溶融させてシール面を形成することにより、ポーラス部材22の内部で連結された複数の空孔によって吸引路が構成されるロボットハンド20が得られる。これにより、ポーラス部材22の内部に吸引路を形成するための加工が不要になり、ロボットハンド20の製造工程が簡略化される。
【0054】
また、本実施形態に係るロボットハンド20では、ポーラス部材22に含まれる複数の空孔によって、多数の吸引路がポーラス部材22の内部の全体にわたって形成される。これにより、仮に空孔の一部が異物によって塞がれた場合にも、他の空孔が正常な吸引路として機能し、吸引保持面24bの吸引力の低下が抑制される。その結果、ロボットハンド20による対象物11の確実な保持が維持される。
【0055】
なお、本実施形態では、レーザービーム34の照射によってポーラス部材22にシール面を形成する例について説明したが(図3(A)参照)、シール面の形成方法に制限はない。例えば、高温に加熱されたプレート(ホットプレート)をポーラス部材22の表面に押し当てることにより、ポーラス部材22の表面を溶融させてもよい。
【0056】
また、本実施形態に係るロボットハンド20が装着された搬送ロボット2の用途に制限はない。例えば搬送ロボット2は、切削装置、研削装置、研磨装置、レーザー加工装置等の加工装置に搭載される。
【0057】
切削装置は、被加工物を切削する加工ユニット(切削ユニット)を備える。切削ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には環状の切削ブレードが装着される。切削ブレードを回転させつつ被加工物に切り込ませることにより、被加工物が切削される。
【0058】
研削装置は、被加工物を研削する加工ユニット(切削ユニット)を備える。研削ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には複数の研削砥石を備える環状の研削ホイールが装着される。研削ホイールを回転させつつ研削砥石を被加工物に接触させることにより、被加工物が研削される。
【0059】
研磨装置は、被加工物を研磨する加工ユニット(研磨ユニット)を備える。研磨ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には円盤状の研磨パッドが装着される。研磨パッドを回転させつつ被加工物に接触させることにより、被加工物が研磨される。
【0060】
レーザー加工装置は、被加工物にレーザービームを照射する加工ユニット(レーザー照射ユニット)を備える。レーザー照射ユニットは、所定の波長のレーザーを発振するレーザー発振器と、レーザー発振器から出射したレーザービームを被加工物へと導く光学系とを備える。レーザー照射ユニットから被加工物にレーザービームを照射することにより、被加工物にレーザー加工が施される。
【0061】
また、搬送ロボット2は、被加工物にプラズマエッチングを施すプラズマ処理装置に搭載することもできる。プラズマ処理装置は、被加工物にプラズマ状態のエッチングガスを供給することにより、被加工物をエッチングする。
【0062】
上記のような各種の加工装置で対象物11を加工する際には、複数の対象物11を収容したカセットが加工装置にセットされる。そして、加工装置に搭載された搬送ロボット2は、加工装置内で対象物11の搬送(対象物11のカセットからの搬出、対象物11のカセットへの搬入等)を行う。
【0063】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0064】
11 対象物(被搬送物、被加工物)
11a 表面(第1面)
11b 裏面(第2面)
13 デバイス
2 搬送ロボット(搬送機構、搬送ユニット)
4 移動機構(移動ユニット)
6 支持台
8 第1アーム
10 第2アーム
12 ロボットハンド支持部
14 装着部
14a 挿入口
16 吸引路
18 吸引源
20 ロボットハンド(エンドエフェクタ)
22 ポーラス部材
22a 上面(第1面)
22b 下面(第2面)
22c 側面(外周面)
24 本体部
24a 保持部
24b 吸引保持面
24c 吸引保持面形成領域
26 支持部
26a 側面(外周面)
26b 接続部
30 レーザー照射ユニット
32 レーザー加工ヘッド
34 レーザービーム
図1
図2
図3