(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151808
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】酸化物粉末の製造装置および酸化物粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
F27B 9/22 20060101AFI20231005BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20231005BHJP
F27B 9/04 20060101ALI20231005BHJP
F27D 3/06 20060101ALN20231005BHJP
F27B 9/38 20060101ALN20231005BHJP
F27B 9/39 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
F27B9/22
F27D7/02 Z
F27B9/04
F27D3/06 A
F27D3/06 B
F27B9/38
F27B9/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061635
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健司
【テーマコード(参考)】
4K050
4K055
4K063
【Fターム(参考)】
4K050AA02
4K050BA05
4K050CA15
4K050CC07
4K050CC10
4K050CD07
4K050CF02
4K050CF04
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4K050CG02
4K050EA03
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4K055AA06
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4K063AA15
4K063BA04
4K063BA15
4K063CA03
4K063DA06
4K063DA13
4K063DA15
4K063DA34
(57)【要約】
【課題】酸化物粉末の製造する際に、匣鉢を使用しない技術を提供する。
【解決手段】原料粉末を板状に加圧成形した圧粉体を、一の圧粉体を他の圧粉体で支持する列状の圧粉体群を構成した状態で、前記圧粉体の配列方向に沿って移動させる移動機構と、前記圧粉体群が通過する内部空間を有する加熱炉と、前記内部空間内の前記圧粉体群を加熱する加熱機構と、を備える、酸化物粉末の製造装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉末を板状に加圧成形した圧粉体を、一の圧粉体を他の圧粉体で支持する列状の圧粉体群を構成した状態で、前記圧粉体の配列方向に沿って移動させる移動機構と、
前記圧粉体群が通過する内部空間を有する加熱炉と、
前記内部空間内の前記圧粉体群を加熱する加熱機構と、を備える、
酸化物粉末の製造装置。
【請求項2】
前記加熱炉は、前記圧粉体を搬入する搬入口から前記圧粉体を搬出する搬出口まで直線状に延びる筒状に構成されており、
前記移動機構は、前記圧粉体を所定の枚数ずつ前記搬入口から押し込んで前記内部空間内に搬入するとともに、当該搬入した圧粉体によって先に前記内部空間内に搬入されている前記圧粉体群を前記搬出口側へ移動させるように構成されている、
請求項1に記載の酸化物粉末の製造装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記内部空間内を通過した前記圧粉体を所定の枚数ずつ前記搬出口から搬出するように構成されている、
請求項2に記載の酸化物粉末の製造装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記加熱炉外に配置され、前記加熱炉外で動作するように構成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化物粉末の製造装置。
【請求項5】
前記加熱炉内に酸素ガスを供給するガス供給管を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化物粉末の製造装置。
【請求項6】
前記圧粉体と前記酸素ガスとが反応することにより前記加熱炉内に生じる水蒸気を前記加熱炉外へ排出するガス排出管を有する、
請求項5に記載の酸化物粉末の製造装置。
【請求項7】
前記圧粉体を作製する圧粉体作製機構と、
加熱した前記圧粉体を粉砕する粉砕機構と、を備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化物粉末の製造装置。
【請求項8】
原料粉末を板状に加圧成形して圧粉体を作製する工程と、
前記圧粉体を、一の圧粉体を他の圧粉体で支持する列状の圧粉体群を構成した状態で、前記圧粉体の配列方向に沿って加熱炉の内部空間内を移動させる工程と、
前記内部空間内の前記圧粉体群を加熱する工程と、
加熱した前記圧粉体を粉砕する工程と、を有する、
酸化物粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物粉末の製造装置および酸化物粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、酸化物粉末を製造する際に、原料粉末を匣鉢に収容し、匣鉢ごと加熱する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、加熱過程で匣鉢にダメージを与える等、不利益を生じさせる可能性がある。また、加熱過程で匣鉢を使用するので、生産効率が良好でない場合がある。
【0005】
本発明は、酸化物粉末を製造する際に、匣鉢を使用しない技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
原料粉末を板状に加圧成形した圧粉体を、一の圧粉体を他の圧粉体で支持する列状の圧粉体群を構成した状態で、前記圧粉体の配列方向に沿って移動させる移動機構と、
前記圧粉体群が通過する内部空間を有する加熱炉と、
前記内部空間内の前記圧粉体群を加熱する加熱機構と、を備える
酸化物粉末の製造装置が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、
原料粉末を板状に加圧成形して圧粉体を作製する工程と、
前記圧粉体を、一の圧粉体を他の圧粉体で支持する列状の圧粉体群を構成した状態で、前記圧粉体の配列方向に沿って加熱炉の内部空間内を移動させる工程と、
前記内部空間内の前記圧粉体群を加熱する工程と、
加熱した前記圧粉体を粉砕する工程と、を有する、
酸化物粉末の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、酸化物粉末を製造する際に、匣鉢を使用しない技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る酸化物粉末の製造装置100の一例を示す概略縦断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態における酸化物粉末の製造工程のフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態の変形例に係る酸化物粉末の製造装置100の一例を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
<本発明の第1実施形態>
(1)酸化物粉末の製造装置100の構成例
まず、本実施形態の酸化物粉末の製造装置100の構成例について説明する。
【0012】
図1に示すように、酸化物粉末の製造装置100は、主として、加熱炉10と、移動機構20と、加熱機構30と、を備えている。
【0013】
加熱炉10は、鉛直方向に直線状に延びる中空の筒状(円筒形状)に構成されている。加熱炉10の下端部は、加熱対象物である圧粉体200aを搬入する搬入口10aとして構成されており、中空部は、圧粉体200aを収容する内部空間10bとして構成されており、上端部は、圧粉体200aを搬出する搬出口10cとして構成されている。
【0014】
加熱炉10を構成する材料は、高い断熱性、耐熱性を有する材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)を好適に用いることができる。加熱炉10の内壁下部には、シール部材としてのOリング11が設けられている。
【0015】
加熱炉10の外部には、圧粉体200aを移動させる移動機構20が配置されている。移動機構20は、搬入アーム20aと、移動台20bと、搬出アーム20cとを備えている。具体的には、移動機構20は、未加熱の圧粉体200aを移動台20b上に搬送する搬入アーム20aと、圧粉体200aを内部空間10b内に搬入する移動台20bと、加熱済みの圧粉体200aを加熱炉10(内部空間10b)外に搬出する搬出アーム20cとを備えている。
【0016】
搬入アーム20aは、加熱炉10の下方に配置されており、移動可能に構成されている。搬入アーム20aは、後述する圧粉体作製機構15により作製され、不図示の圧粉体待機台上に載置されている未加熱の圧粉体200aを、所定の枚数(例えば、1枚)保持し、移動台20b上に搬送するように構成されている。
【0017】
移動台20bは、搬入口10aの直下の所定の位置(以下、「初期位置」と称する場合がある。
図1に示す矢印A参照)に配置され、昇降可能に構成されている。移動台20bは、圧粉体200aを載置した状態で、初期位置から搬入位置(
図1に示す矢印B参照)に上昇するように構成されている。搬入位置とは、後述する一対の把持部25により、移動台20b上の圧粉体200a(移動台20b上に圧粉体200aが複数枚列状に載置されているときは、最も下方の圧粉体200a)が把持されるときの移動台20bの高さ位置である。移動台20bは、初期位置から搬入位置に上昇したら停止し、一対の把持部25により、移動台20b上の圧粉体200aが把持された後は、初期位置まで下降するように構成されている。
【0018】
搬入口10aの直下かつ移動台20bの上方には、圧粉体200aを把持する一対の把持部25が配置されている。一対の把持部25は、移動台20bが圧粉体200aを載置した状態で搬入位置に上昇したときは、当該圧粉体200aの側面に接触し、当該圧粉体200aを挟んで把持する状態(把持状態)となるように構成されている。
【0019】
把持部25は、移動台20bが初期位置に配置されているときは、上述の把持状態を維持するように構成されている。また、把持部25は、移動台20bが搬入位置に上昇するときは、上述の把持状態を解除する状態(解除状態)となるように構成されている。具体的には、移動台20bが搬入位置に上昇するときに、移動台20b上の圧粉体200aが、把持部25が把持している圧粉体200aと接触したタイミングで、把持部25は、把持している圧粉体200aから離れる方向に移動し、解除状態となるように構成されている。このとき、移動台20b上の圧粉体200aが、把持部25に把持されている圧粉体200aを搬入口10aから押し込んで、内部空間10b内に搬入することができる。
【0020】
移動台20bが搬入位置に上昇したら、把持部25は、移動台20b上の圧粉体200aに近づく方向に移動し、当該圧粉体200aを把持する状態(把持状態)となるように構成されている。
【0021】
上述した搬入アーム20a、移動台20b、把持部25の動作を繰り返し行うことにより、内部空間10b内に、一の圧粉体200aを他の圧粉体200aで支持する列状の圧粉体群200を構成することができ、当該圧粉体群200を搬出口10c側へ移動させることができる。
【0022】
一対の把持部25は、圧粉体群200のうちの最も下方に配列されている圧粉体200aを把持することにより、内部空間10b内の圧粉体群200(圧粉体200a)を安定に保持することができる。圧粉体200aの側面にV溝や凹状の凹みを設けることで把持を確実にしても良い。この場合はOリング11がV溝や凹状の凹みの無い平坦部に当たるように位置を設計する。
【0023】
搬出アーム20cは、加熱炉10の上方に配置されており、移動可能に構成されている。搬出アーム20cは、内部空間10bを通過した圧粉体200aを、所定の枚数(例えば、1枚)外部の押出機(不図示)により載置され、または、自らが挟んで保持し、搬出口10cから加熱炉10外に搬出するように構成されている。
【0024】
移動機構20を構成する材料は、特に限定されるものでなく、例えば、セラミック材料または金属材料を用いることができる。
【0025】
加熱炉10の外周側には、内部空間10b内の圧粉体群200を加熱する加熱機構30が配置されている。加熱機構30として、例えば、コイル線が加熱炉10の外周(外壁)側に螺旋状に巻回された誘導コイルを用いることができる。本実施形態では、誘導コイルのコイル線として、例えば、中に冷却水を流した中空銅パイプ管を用いることができる。誘導コイルのコイル線の両端部には不図示の電源ケーブルが接続されており、当該電源ケーブルは、不図示の電源部に電気的に接続されている。
【0026】
加熱炉10の内壁側面には、ガス導入孔12が設けられている。加熱炉10の外壁側面には、ガス導入孔12と連通するようガス供給管40が接続されている。ガス供給管40は、加熱炉10内に酸素(O2)ガスを供給するように構成されている。ガス供給管40の一端(上流側)は、O2ガスを貯蔵する不図示のガスボンベ等に接続され、他端(下流側)は加熱炉10に接続されている。
【0027】
加熱炉10の内壁側面には、加熱炉10内の雰囲気(H2O)を排出する排出口13が設けられている。加熱炉10の外壁側面には、排出口13と連通するようガス排出管50が接続されている。ガス排出管50は、水蒸気(H2O)を加熱炉10外に排出するように構成されている。
【0028】
ガス導入孔12から吐出されるO2ガス量を、排出口13から排出されるH2Oガスに含有されるO2ガス量よりも多くし、O2ガスが加熱炉10の上端部に行き渡るように、ガス導入孔12は、加熱炉10内のH2Oガス発生箇所よりも高く、加熱炉10の上端部よりも低い位置に設置されている。
【0029】
また、酸化物粉末の製造装置100は、圧粉体200aを作製する圧粉体作製機構15を備えている。圧粉体作製機構15は、加熱炉10の外方に配置され、原料粉末を所定の形状に加圧(圧縮)成形し、圧粉体200aを作製するように構成されている。
【0030】
酸化物粉末の製造装置100は、加熱した圧粉体200aを粉砕する粉砕機構35を備えている。粉砕機構35は、加熱炉10の外方に配置され、搬出アーム20cにより搬出された圧粉体200aを粉末状に粉砕するように構成されている。
【0031】
さらに、酸化物粉末の製造装置100は、制御部60を備えている。制御部60は、例えばコンピュータであり、不図示のプログラム格納部を有している。プログラム格納部には、酸化物粉末の製造装置100における処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、移動機構20、把持部25、電源部等の動作を制御するプログラムも格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部60にインストールされたものであってもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよい。
【0032】
(2)酸化物粉末の製造方法
次に、酸化物粉末の製造装置100を用いた、酸化物粉末を製造する方法について説明する。なお、以下の説明において、酸化物粉末の製造装置100を構成する各部の動作は、制御部60により制御される。
【0033】
図2は、本発明の実施形態に係る酸化物粉末の製造工程のフローチャートである。
【0034】
(原料粉末準備工程:S101)
まず、原料粉末を準備する。原料粉末としては、例えば、酸化ニッケル粉末、酸化コバルト粉末、酸化マンガン粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化リチウム粉末を挙げることができる。なお、酸化物ではなく水酸化物でも良い。原料粉末の純度は99.9%以上が好ましく、より好ましくは99.99%以上である。原料粉末は成形性の改善のため、圧密、粉砕、造粒処理することが好ましい。また、成形性を考慮して、成形助剤や固体潤滑剤等の各種充填剤を原料粉末に添加してもよい。
【0035】
(圧粉体作製工程:S102)
次に、圧粉体作製機構15を用いて、原料粉末を所定の形状に加圧(圧縮)成形し、圧粉体200aを作製する。具体的には、一の圧粉体200aを他の圧粉体200aで支持する列状の圧粉体群200を構成できる、すなわち、複数の圧粉体200aを一列に重ねることができる形状・大きさとなるように、圧粉体200aを成形する。加圧成形方法は、公知の方法を適宜選択することができるが、複数の圧粉体200aを列状に重ねて圧粉体群200を構成したときに、圧粉体200aが容易に割れない充分な強度を得られるように加圧、成形することが好ましい。なお、後述する圧粉体搬入工程(S104)を行う前に、必要に応じて圧粉体200aを仮焼してもよい。
【0036】
このようにして作製された圧粉体200aを、酸化物粉末の製造装置100の近傍に配置されている不図示の圧粉体待機台上に載置する。
【0037】
(圧粉体搬入・移動工程:S103)
次に、移動機構20を用いて圧粉体200aを酸化物粉末の製造装置100内に搬入する。具体的には、(A)搬入アーム20aに、圧粉体待機台上に載置されている圧粉体200aを1枚保持させ、移動台20b上に搬送させる。(B)圧粉体200aを載置した状態で、移動台20bを初期位置から搬入位置に上昇させ、その後、停止させる。(C)一対の把持部25に、移動台20b上の圧粉体200aを把持させる。(D)移動台20bを、搬入位置から初期位置に下降させ、その後、停止させる。(E)搬入アーム20aに、圧粉体待機台上に載置されている圧粉体200aを1枚保持させ、移動台20b上に搬送させる。(F)圧粉体200aを載置した状態で、移動台20bを期位置から搬入位置に向かって上昇させる。(G)移動台20b上の圧粉体200aと、把持部25が把持している圧粉体200aとが接触したら、把持部25の圧粉体200aを把持する状態(把持状態)を解除する。(H)移動台20bを搬入位置まで上昇させる。(I)把持部25に、移動台20b上の圧粉体200aを把持させる。(J)移動台20bを、搬入位置から初期位置に下降させ、その後、停止させる。(A)~(D)を1回行った後に、(E)~(J)を複数回繰り返し行う。
【0038】
上述した(A)~(D)を行うことにより、把持部25に圧粉体200aを把持させることができる。上述した(F)~(H)を行うことにより、新たに移動台20b上に載置された圧粉体200aにより、把持部25に把持されている圧粉体200aを、搬入口10aから押し込んで内部空間10b内に搬入することができる。
【0039】
上述した(E)~(J)を複数回繰り返し行うことにより、内部空間10b内に、一の圧粉体200aを他の圧粉体200aで支持する列状の圧粉体群200を構成することができる。
【0040】
また、上述した(E)~(J)を複数回繰り返し行うことにより、把持部25に把持されている圧粉体200aを、順次、内部空間10b内に搬入することができる。この内部空間10b内に搬入される圧粉体200aにより、先に内部空間10b内に搬入されている圧粉体群200を押し、圧粉体200aの配列方向に沿って搬出口10c側へ移動させることができる。
【0041】
(圧粉体加熱工程:S104)
加熱機構30により、内部空間10b内の圧粉体群200(圧粉体200a)を加熱する。具体的には、加熱機構30としての誘導コイルに、所定の周波数の交流電流を供給することより、誘導コイルの内側にある圧粉体群200を分極させ、誘電損失を起こして発熱させる。このように、圧粉体群200(圧粉体200a)を内部から加熱することができる。
【0042】
このとき、ガス供給管40を用いて、O2ガスを加熱炉10内に供給し、圧粉体群200(圧粉体200a)の加熱(焼成)により生成される水蒸気(H2O)を、ガス排出管50を用いて加熱炉10外に排出する。加熱炉10の内壁下部にはOリング11が設けられているので、加熱炉10内に供給されるO2ガスが、搬入口10aから加熱炉10外に漏れ出ることを防止することができる。また、Oリング11により、圧粉体群200から発生した熱で加熱されたガスが加熱炉10の下端部から漏れ出ることを防止することができる。
【0043】
このようにして圧粉体群200(圧粉体200a)を加熱することにより、圧粉体200aの酸化物の化合物(焼結体)を得ることができる。
【0044】
(圧粉体搬出工程:S105)
内部空間10b内を通過し、搬出口10c側に移動した圧粉体200aの酸化物(焼結体)を、搬出アーム20cにより、例えば1枚ずつ加熱炉10外に搬出し、所定の容器に収容する。
【0045】
(圧粉体粉砕工程:S106)
所定の容器に収容された圧粉体200aの酸化物(焼結体)を、粉砕して粉末状にし、必要に応じて所定のメッシュ(目開き)の篩にかけて、所望の粒径の酸化物粉末を分離回収する。
【0046】
以上の工程により、目的の酸化物粉末を製造することができる。
【0047】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0048】
(a)本実施形態の酸化物粉末の製造装置100は、圧粉体200aを、一の圧粉体200aを他の圧粉体200aで支持する列状の圧粉体群200を構成した状態で、加熱するように構成されている。このように、原料粉末を加圧成形した圧粉体200aを、列状の圧粉体群200を構成した状態で加熱するので、匣鉢を使用せずに酸化物粉末を製造することができる。匣鉢を使用しないので、加熱工程において、例えば、原料粉末(酸化物)内に匣鉢成分が混入したり、匣鉢が割れて加熱炉10内に匣鉢成分(クラック粉)が飛散したり、匣鉢がダメージを受けて寿命が短くなる、という不利益を回避することができる。また、得られる酸化物粉末に比して大きな体積を要する匣鉢を使用しないので、生産(体積)効率を良好にすることができる。
【0049】
(b)本実施形態の酸化物粉末の製造装置100において、移動機構20は、圧粉体200aを搬入口10aから押し込んで内部空間10b内に搬入するとともに、搬入した圧粉体200aによって先に内部空間10b内に搬入されている圧粉体群200を搬出口10c側へ移動させるように構成されている。このように、加熱炉10内に順次搬入される圧粉体200aにより、加熱炉10内の圧粉体群200を順次移動させるので、圧粉体200a(圧粉体群200)を連続加熱することができる。結果として、時間的ロスを少なくして効率よく加熱することができる。
【0050】
(c)本実施形態の酸化物粉末の製造装置100において、移動機構20は、内部空間10b内を通過した圧粉体200aを所定の枚数ずつ搬出口10cから搬出するように構成されている。このような構成により、加熱された圧粉体200aを、順次、加熱炉10外に搬出して、粉砕機構35により粉砕し、例えば酸化物化合物粉末を製造することができる。
【0051】
(d)本実施形態の酸化物粉末の製造装置100において、移動機構20は、加熱炉10外に配置され、加熱炉10外で動作するように構成されている。このような構成により、加熱炉10内において加熱状態の圧粉体200aに移動機構20が接触して、移動機構20がダメージを受けることを回避することができる。
【0052】
(e)本実施形態の酸化物粉末の製造装置100は、加熱炉10内に酸素(O2)ガスを供給するガス供給管40を有している。これにより、圧粉体200aを加熱する際に、圧粉体200aを酸化させ、ニッケル酸リチウム化合物を得ることができる。
【0053】
また、本実施形態の酸化物粉末の製造装置100は、水酸化物を含む圧粉体200aと酸素(O2)ガスとが反応することにより加熱炉10内に生じる水蒸気(H2O)を加熱炉10外へ排出するガス排出管を有している。これにより、加熱炉10内に生じる水蒸気(H2O)を加熱炉10外へ排出できるので、例えば、加熱炉10内で酸化反応が阻害されることを防止しながら、圧粉体200aを効率よく加熱することができる。
【0054】
(f)本実施形態の酸化物粉末の製造装置100は、圧粉体200aを作製する圧粉体作製機構15と、加熱した圧粉体200aを粉砕する粉砕機構35と、を備えている。これにより、圧粉体200aの作製から酸化物粉末の製造まで一括して行うことができる。
【0055】
(4)第1実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図3は、本変形の酸化物粉末の製造装置100の一例を示す概略構成図である。
図3に示すように、本変形例の酸化物粉末の製造装置100では、加熱機構30は、加熱炉10の内周側に螺旋状に巻回されて構成されている。
【0057】
本変形例では、上述の第1実施形態と比べて、搬入口10a、搬出口10cが大きく開口している。また、加熱炉10の内壁に、シール部材としてのOリング11が配置されない構成となっている。これらにより、内部空間10b内に生成されたH2Oを容易に加熱炉10外に排出することができるので、ガス排出管50を配置しない簡素な構成にすることができる。
【0058】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0059】
上述の実施形態では、加熱機構30として誘導コイルを用いた場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は、上述の実施形態に限定されず、加熱機構30として、例えばヒータを用いてもよい。
【0060】
上述の実施形態では、一対の把持部25により、所定のタイミングで圧粉体200aを把持し、または把持を解除して、内部空間10b内の圧粉体群200を搬出口10c側に移動させる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は、上述の実施形態に限定されず、例えば、一対の把持部25を配置せず、以下に示す手順により、圧粉体群200を搬出口10c側に移動させるようにしてもよい。(a)搬入アーム20aにより、移動台20b上に、圧粉体200aを1枚載置させる。(b)搬入アーム20aにより、移動台20b上に圧粉体200aが1枚載置されるごとに、移動台20bを所定の距離だけ下降させる。(c)上述した(a)、(b)を複数回繰り返し行うことにより、移動台20b上に、圧粉体200aを列状に重ねた圧粉体群200を形成させる。(d)圧粉体群200を載置した状態で、移動台20bを上昇させ、内部空間10b内を通過させる。(e)内部空間10b内を通過し、搬出口10c側に移動した加熱済の圧粉体200aを、搬出アーム20cにより、1枚ずつ加熱炉10外に搬出し、粉砕する。例えば、上述した(d)において、圧粉体群200の加熱に充分な時間を確保できるように、移動台20bの速度を制御することが好ましい。
【0061】
上述の実施形態では、加熱機構30として中に冷却水を流した中空銅パイプ管により構成されている場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は、上述の実施形態に限定されず、誘導コイルが、例えば中空アルミニウムパイプ管または中空銀パイプ管により構成されていてもよい。
【0062】
上述の実施形態では、圧粉体200aを1枚ずつ、それぞれ、搬入アーム20aにより移動台20b上に搬送し、移動台20bにより内部空間10b内に搬入し、搬出アーム20cにより搬出口10cから搬出する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は、上述の実施形態に限定されず、圧粉体200aを複数枚ずつ、それぞれ、移動台20b上に搬送し、内部空間10b内に搬入し、搬出口10cから搬出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 加熱炉
10a 搬入口
10b 内部空間
10c 搬出口
15 圧粉体作製機構
20 移動機構
30 加熱機構
35 粉砕機構
40 ガス供給管
50 ガス排出管
100 酸化物粉末の製造装置
200a 圧粉体
200 圧粉体群