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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151984
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/72 20060101AFI20231005BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20231005BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20231005BHJP
   B23K 1/005 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N25/72 F
H01L21/60 311Q
B23K1/00 A
B23K1/005 A
B23K1/00 330E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061884
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 哲平
(72)【発明者】
【氏名】陳 之文
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンソク
【テーマコード(参考)】
2G040
5F044
【Fターム(参考)】
2G040AA05
2G040AB08
2G040BA18
2G040BA26
2G040CA02
2G040DA06
2G040DA15
2G040EA06
2G040HA01
2G040HA06
2G040HA16
5F044KK02
5F044KK05
5F044LL05
(57)【要約】
【課題】チップが基板に正常に接続されたか否かを検査する検査方法を提供すること。
【解決手段】検査方法は、一方の面にバンプを有した半導体チップがバンプを介して基板上に載置された被加工物を準備する準備ステップ1と、他方の面から半導体チップに対してレーザ光を照射して被加工物の被照射範囲に含まれるバンプをリフローさせるレーザ光照射ステップ3と、レーザ光を半導体チップに照射しながら被照射範囲をサーマルカメラで撮像し、温度情報を取得する温度情報取得ステップ4と、半導体チップと基板とがレーザ光の照射によって正常に接合される場合の温度情報である基準温度情報を予め記憶しておく記憶ステップ2と、記憶ステップ2で記憶した基準温度情報と、温度情報取得ステップ4で取得した温度情報と、に基づいて、半導体チップと基板とがレーザ光の照射によって正常に接合されたか否かを判定する判定ステップ5と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと基板との接合状態を検査する検査方法であって、
一方の面にバンプを有した半導体チップが該バンプを介して基板上に載置された被加工物を準備する準備ステップと、
該一方の面の反対側の他方の面から、該半導体チップに対してレーザ光を照射して該被加工物の被照射範囲に含まれるバンプをリフローさせるレーザ光照射ステップと、
該レーザ光を該半導体チップに照射しながら該被照射範囲をサーマルカメラで撮像し、温度情報を取得する温度情報取得ステップと、
を備え、
半導体チップと基板とがレーザ光の照射によって正常に接合される場合の温度情報である基準温度情報を予め記憶しておく記憶ステップを更に備え、
該記憶ステップで記憶した該基準温度情報と、該温度情報取得ステップで取得した該温度情報と、に基づいて、該半導体チップと該基板とが該レーザ光の照射によって正常に接合されたか否かを判定する判定ステップを更に備えることを特徴とする、
検査方法。
【請求項2】
該温度情報は、
該半導体チップの断面における温度プロファイルを含むことを特徴とする、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
該温度情報は、
該半導体チップの上面におけるサーモグラフィ画像を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項4】
該判定ステップでは、
該温度情報取得ステップで取得した該温度情報において、該記憶ステップで記憶した該基準温度情報よりも高温になる領域が存在する場合に、
該半導体チップと該基板とが正常に接合されていないと判定することを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、チップと外部端子とを電気的に接続する方法のひとつに、チップの電極とパッケージ基板上の電極とを向かいあわせにしてバンプを介して接続するフリップチップ実装方式がある。
【0003】
一般に、フリップチップ実装では、基板全体を加熱してボンディングするマスリフロー(Mass Reflow)プロセスや、各チップを加熱、加圧することでボンディングするTCB(Thermo-Compression Bonding;熱圧着)プロセス等が採用されている。しかしながら、マスリフロープロセスは、基板全体を加熱することによる熱ストレスが課題となっており、TCBプロセスは、ボンダーヘッドの冷却に時間がかかる等生産性が劣ることが課題となっている。
【0004】
上記のようなプロセスに対して優位性のあるプロセスとして、レーザ照射によりチップを基板上の電極に接続するレーザリフロープロセスが提案されている(特許文献1、2参照)。レーザリフロープロセスでは、基板全体に熱がかかることがないため熱ストレスを低減でき、また、複数のチップに対してレーザ光を照射することでTCBプロセスよりも高い生産性が得られるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-177240号公報
【特許文献2】特開2021-102217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のようなプロセスにおいて、チップが基板に接続されたか否かのボンディングの良否を判定するためには、導通検査を実施する必要がある。しかしながら、評価用のデイジーチェーン等が形成されていない量産品では、ボンディングの良否を検査する方法が存在しなかった。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、チップが基板に正常に接続されたか否かを検査する検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の検査方法は、半導体チップと基板との接合状態を検査する検査方法であって、一方の面にバンプを有した半導体チップが該バンプを介して基板上に載置された被加工物を準備する準備ステップと、該一方の面の反対側の他方の面から、該半導体チップに対してレーザ光を照射して該被加工物の被照射範囲に含まれるバンプをリフローさせるレーザ光照射ステップと、該レーザ光を該半導体チップに照射しながら該被照射範囲をサーマルカメラで撮像し、温度情報を取得する温度情報取得ステップと、を備え、半導体チップと基板とがレーザ光の照射によって正常に接合される場合の温度情報である基準温度情報を予め記憶しておく記憶ステップを更に備え、該記憶ステップで記憶した該基準温度情報と、該温度情報取得ステップで取得した該温度情報と、に基づいて、該半導体チップと該基板とが該レーザ光の照射によって正常に接合されたか否かを判定する判定ステップを更に備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の検査方法において、該温度情報は、該半導体チップの断面における温度プロファイルを含んでもよい。
【0010】
また、本発明の検査方法において、該温度情報は、該半導体チップの上面におけるサーモグラフィ画像を含んでもよい。
【0011】
また、本発明の検査方法において、該判定ステップでは、該温度情報取得ステップで取得した該温度情報において、該記憶ステップで記憶した該基準温度情報よりも高温になる領域が存在する場合に、該半導体チップと該基板とが正常に接合されていないと判定してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、チップが基板に正常に接続されたか否かを検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る検査方法の流れを示すフローチャートである。
図2図2は、図1に示す準備ステップで準備される被加工物の斜視図である。
図3図3は、図2に示す被加工物の要部断面図である。
図4図4は、評価用チップを示す平面図である。
図5図5は、図1に示す記憶ステップで記憶する断面温度プロファイルの一例を示すグラフである。
図6図6は、図1に示す記憶ステップで記憶するサーモグラフィ画像の一例である。
図7図7は、図1に示す記憶ステップで記憶する最高温度の時間変化を示すグラフである。
図8図8は、図1に示すレーザ光照射ステップの一状態を示す被加工物の要部断面図である。
図9図9は、図1に示す温度情報取得ステップで取得した断面温度プロファイルの一例を示すグラフである。
図10図10は、図1に示す温度情報取得ステップで取得したサーモグラフィ画像の一例である。
図11図11は、図1に示す温度情報取得ステップで取得した最高温度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る検査方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係る検査方法の流れを示すフローチャートである。図1に示すように、検査方法は、準備ステップ1と、記憶ステップ2と、レーザ光照射ステップ3と、温度情報取得ステップ4と、判定ステップ5と、を備える。
【0016】
(準備ステップ1)
図2は、図1に示す準備ステップ1で準備される被加工物100の斜視図である。図3は、図2に示す被加工物100の要部断面図である。図4は、評価用チップを示す平面図である。図2および図3に示すように、被加工物100は、基板110と、バンプ130を有する半導体チップ120と、を含む。
【0017】
準備ステップ1は、半導体チップ120が基板110上に載置された被加工物100を準備するステップである。この際、半導体チップ120は、バンプ130を有する一方の面(表面121)を下向きにした状態で、バンプ130を介して、表面111側が上向きにされた基板110の表面111側に載置される。
【0018】
基板110は、実施形態において、矩形状である。基板110は、例えば、PCB(Printed Circuit Board)基板や、チップに分割される前のデバイスウェーハ等である。基板110の表面111側には、バンプ130を介して半導体チップ120が複数配置される。半導体チップ120は、表面121に1以上のバンプ130を有する。バンプ130は、半導体チップ120の表面121に設けられる突起状の端子である。
【0019】
半導体チップ120は、バンプ130が加熱され溶けることによって、基板110上の電極に接続する。すなわち、準備ステップ1で準備される被加工物100は、バンプ130をレーザ光21(図8参照)でリフローさせることにより、半導体チップ120が基板110に対してフリップ実装されることが予定されるものである。
【0020】
なお、被加工物100は、実施形態における半導体チップ120がバンプ130を介して基板110に配列されたものの他に、複数の半導体チップ120が積層され、各々の半導体チップ120間にバンプ130が存在するもの等でもよい。
【0021】
後述において、温度情報と接合(ボンディング)の良否との相関を説明するため、以降の説明では、図4に示すように、半導体チップ120として、複数の領域124-1、124-2、124-3、124-4、124-5の導通状況を取得可能なデイジーチェーン有する評価用チップを使用するが、本発明の検査方法において、半導体チップ120は、デイジーチェーンを有さなくてよい。
【0022】
(記憶ステップ2)
記憶ステップ2は、半導体チップ120と基板110とがレーザ光21の照射によって正常に接合される場合の温度情報である基準温度情報を予め記憶しておくステップである。記憶ステップ2は、準備ステップ1より前に実施されてもよい。
【0023】
基準温度情報は、サーマルカメラで撮像したサーマル画像から取得可能な情報であり、後述の温度情報取得ステップ4で取得する温度情報と同種の温度情報である。実施形態の記憶ステップ2では、図4に示す評価用チップに対して、後述のレーザ光照射ステップ3と同一の条件でレーザ光21を照射した結果、領域124-1、124-2、124-3、124-4、124-5の全てにおいて導通状況が確認できた際の温度情報を、基準温度情報として予め記憶しておく。
【0024】
図5は、図1に示す記憶ステップ2で記憶する断面温度プロファイルの一例を示すグラフである。温度情報は、例えば、図5に示すような、半導体チップ120の所定の断面における温度プロファイルを含む。温度プロファイルは、半導体チップ120の所定の断面における各部の温度と時間との関係を表やグラフにしたものである。所定の断面は、実施形態において、図4に示す半導体チップ120の平面視において、一点鎖線で示す対角線を通る断面である。所定の断面は、領域124-1、124-5、124-3を通る。
【0025】
図5に示す温度情報は、図4に示す位置の断面に沿う各位置における温度の分布を示している。また、図5に示す基準温度情報は、後述のレーザ光照射ステップ3と同様の照射条件において、レーザ光21の照射を開始した直後と、レーザ光21の照射を終了する直前と、の温度の分布情報を含む。図5に示す例において、断面温度プロファイルは、レーザ光21の照射開始直後では、領域124-1での温度が少し高めであり、領域124-3での温度が低めである傾向を示している。また、断面温度プロファイルは、レーザ光21の照射終了直前では、領域124-1での温度が少し高めではあるが、温度分布が平坦に近付く傾向を示している。
【0026】
図6は、図1に示す記憶ステップ2で記憶するサーモグラフィ画像の一例である。温度情報は、例えば、図6に示すような、半導体チップ120の上面を撮像したサーモグラフィ画像を含む。図6に示すサーモグラフィ画像では、白色が高温を示し、黒色が低温を示し、明度が高い程高温を示す。
【0027】
図6に示す温度情報は、半導体チップ120の上面における温度の分布を示している。また、図6に示す基準温度情報は、後述のレーザ光照射ステップ3と同様の照射条件において、レーザ光21の照射を終了する直前の温度の分布情報を含む。図6に示す例において、サーモグラフィ画像は、半導体チップ120の外縁より内側の領域で明度が概ね一定である傾向を示している。なお、記憶ステップ2では、サーモグラフィ画像の明度に基づいて数値に変換した温度の分布を二次元座標と紐付けて記憶してもよい。
【0028】
図7は、図1に示す記憶ステップ2で記憶する最高温度の時間変化を示すグラフである。温度情報は、例えば、図7のような、最高温度の時間変化を含む。最高温度は、例えば、図6に示すようなサーモグラフィ画像から取得される。最高温度は、領域124-1、124-2、124-3、124-4、124-5毎で取得され、各々で最も明度が高い箇所に対応する温度が最高温度として取得される。
【0029】
図7に示す温度情報は、半導体チップ120の上面における温度について、各々の領域124-1、124-2、124-3、124-4、124-5における最高温度の時間変化を示している。また、図7に示す基準温度情報は、後述のレーザ光照射ステップ3と同様の照射条件において、レーザ光21を照射している際の最高温度の時間変化を含む。図7に示す例では、全ての領域124-1、124-2、124-3、124-4、124-5において、時間変化に関わらず、最高温度に大きな差異がない傾向を示している。
【0030】
(レーザ光照射ステップ3)
図8は、図1に示すレーザ光照射ステップ3の一状態を示す被加工物100の要部断面図である。レーザ光照射ステップ3は、半導体チップ120に対してレーザ光21を照射して被加工物100の被照射範囲123に含まれるバンプ130をリフローさせるステップである。
【0031】
レーザ光照射ステップ3は、例えば、被加工物100を載置する保持テーブルと、レーザ光21を照射するレーザ光照射ユニットと、を備えるレーザ光照射装置等によって実施される。レーザ光照射ステップ3では、まず、保持テーブルの保持面に被加工物100の基板110を保持させる。この際、保持面が基板110の裏面112側を保持し、基板110は表面111側にバンプ130を介して半導体チップ120が載置された状態である。次に、レーザ光照射ユニットのレーザ光21を照射する照射部を、保持テーブルに対向させて、照射位置を半導体チップ120に位置合わせするアライメントを実行する。
【0032】
レーザ光照射ステップ3では、バンプ130を有する一方の面(表面121)とは反対側の他方の面(裏面122)側から、半導体チップ120に対してレーザ光21を照射する。実施形態のレーザ光照射ステップ3では、被加工物100に対して、1sec間、加工点出力が102Wの条件で、レーザ光21を照射する。これにより、レーザ光21が照射された半導体チップ120の一方の面(表面121)側において、レーザ光21の照射範囲に相当するバンプ130がリフローされて、半導体チップ120が基板110に接合される。
【0033】
(温度情報取得ステップ4)
温度情報取得ステップ4は、レーザ光21を半導体チップ120に照射しながら被照射範囲123(図8参照)をサーマルカメラ(赤外線カメラ)で撮像し、温度情報を取得するステップである。温度情報は、サーマルカメラで撮像したサーマル画像から取得可能な情報であり、記憶ステップ2で記憶する基準温度情報と同種の温度情報である。具体的には、温度情報は、例えば、半導体チップ120の所定の断面における温度プロファイルや、半導体チップ120の上面における温度の分布情報、最高温度の時間変化等を含む。
【0034】
なお、以下の説明の図9から図11までに示す例で温度情報を取得した被加工物100(評価用チップ)では、領域124-1、124-2、124-5では導通状況が確認できたが、領域124-3、124-4では導通状況が確認できなかったものとする。
【0035】
まず、温度情報取得ステップ4において、温度情報として、半導体チップ120の所定の断面における温度プロファイルを取得する場合、すなわち、記憶ステップ2において、半導体チップ120の所定の断面における温度プロファイルを予め記憶している場合について説明する。
【0036】
図9は、図1に示す温度情報取得ステップ4で取得した断面温度プロファイルの一例を示すグラフである。温度情報取得ステップ4で取得する断面温度プロファイルは、記憶ステップ2で記憶した断面温度プロファイルを測定した断面について取得する。また、温度情報取得ステップ4で取得する断面温度プロファイルは、レーザ光照射ステップ3においてレーザ光21の照射を開始した直後と、レーザ光21の照射を終了する直前と、のそれぞれの温度の分布情報を含む。このような、温度の分布情報は、記憶ステップ2で予め記憶する基準温度情報と、レーザ照射条件、サンプリング数、レーザ照射開始からの測定時刻等が同等である条件下で取得される。
【0037】
図9に示す例において、取得した断面温度プロファイルは、レーザ光21の照射開始直後では、領域124-1での温度が少し高めである傾向を示した。また、断面温度プロファイルは、レーザ光21の照射終了直前では、領域124-3での温度が高い傾向を示した。
【0038】
次に、温度情報取得ステップ4において、温度情報として、半導体チップ120の上面を撮像したサーモグラフィ画像を取得する場合、すなわち、記憶ステップ2において、半導体チップ120の上面を撮像したサーモグラフィ画像を予め記憶している場合について説明する。
【0039】
図10は、図1に示す温度情報取得ステップ4で取得したサーモグラフィ画像の一例である。温度情報取得ステップ4で取得するサーモグラフィ画像は、記憶ステップ2で記憶したサーモグラフィ画像を撮像した撮像条件と同一の撮像条件で撮像する。また、温度情報取得ステップ4で取得するサーモグラフィ画像は、レーザ光照射ステップ3においてレーザ光21の照射を終了する直前の半導体チップ120の上面の温度の分布情報を含む。このような、温度の分布情報は、記憶ステップ2で予め記憶する基準温度情報と、レーザ照射条件、サンプリング数、レーザ照射開始からの測定時刻等が同等である条件下で取得される。
【0040】
図10に示す例において、サーモグラフィ画像は、半導体チップ120の外縁より内側の領域において、図10における上部の領域(図4に示す領域124-3、124-4に対応)で明度が高く、中央部から下部にかけての領域(図4に示す領域124-1、124-2、124-5)で、上部の領域に比べて明度が低い傾向を示した。なお、温度情報取得ステップ4では、記憶ステップ2でサーモグラフィ画像の明度に基づいて数値に変換した温度の分布を二次元座標と紐付けて記憶した場合、同様に温度の分布を数値として取得してもよい。
【0041】
次に、温度情報取得ステップ4において、温度情報として、最高温度の時間変化を取得する場合、すなわち、記憶ステップ2において、最高温度の時間変化を予め記憶している場合について説明する。
【0042】
図11は、図1に示す温度情報取得ステップ4で取得した最高温度の時間変化を示すグラフである。温度情報取得ステップ4で取得する最高温度の時間変化は、記憶ステップ2で記憶した最高温度の時間変化を測定した領域毎に測定する。また、温度情報取得ステップ4で取得する最高温度の時間変化は、レーザ光照射ステップ3においてレーザ光21を照射している際の最高温度の時間変化を含む。このような、最高温度の時間変化情報は、記憶ステップ2で予め記憶する基準温度情報と、レーザ照射条件、サンプリング数、レーザ照射開始からの測定時刻等が同等である条件下で取得される。
【0043】
図11に示す例において、最高温度の時間変化は、ピーク時において、領域124-3、124-4における最高温度が、領域124-1、124-2、124-5に対して高くなる傾向を示した。
【0044】
(判定ステップ5)
判定ステップ5は、記憶ステップ2で記憶した基準温度情報と、温度情報取得ステップ4で取得した温度情報と、に基づいて、半導体チップ120と基板110とがレーザ光21の照射によって正常に接合されたか否かを判定するステップである。
【0045】
まず、記憶ステップ2で記憶した基準温度情報と、温度情報取得ステップ4で取得した温度情報とが、半導体チップ120の所定の断面における温度プロファイルを含む場合における、判定方法の一例を説明する。判定ステップ5では、温度情報取得ステップ4で取得した図9に示す断面温度プロファイルを含む温度情報を、記憶ステップ2で予め記憶している図5に示す基準温度情報と比較することによって、接合の良否を判定する。
【0046】
具体的には、例えば、図5に示す基準温度情報の断面温度プロファイルを基準として、温度の誤差許容範囲を予め設定し、温度情報取得ステップ4で取得した断面温度プロファイルが誤差許容範囲内である場合には正常に接合されたと判断し、誤差許容範囲を超える箇所がある場合には正常に接合されていないと判断してもよい。
【0047】
断面温度プロファイルと接合状況との相関関係を説明する。ここで、半導体チップ120のレーザ光21が照射される被照射範囲123(図8参照)では、温度が一定であることが好ましい。すなわち、被加工物100の断面に沿う温度分布は、裾野が急峻形状かつ頂上が平坦である矩形波状であることが理想である。
【0048】
判定ステップ5では、図5に示すように、レーザ光21の照射終了直前でのプロファイルが平坦な場合には、接合が良好であると判定可能である。また、図9に示す例のように、レーザ光21の照射終了直前でのプロファイルが傾いている場合には、温度が高い領域において接合不良が発生したと判定可能である。
【0049】
次に、記憶ステップ2で記憶した基準温度情報と、温度情報取得ステップ4で取得した温度情報とが、半導体チップ120の上面を撮像したサーモグラフィ画像を含む場合における、判定方法の一例を説明する。判定ステップ5では、温度情報取得ステップ4で取得した図10に示すサーモグラフィ画像を含む温度情報を、記憶ステップ2で予め記憶している図6に示す基準温度情報と比較することによって、接合の良否を判定する。
【0050】
具体的には、例えば、図6に示す基準温度情報の半導体チップ120の上面のサーモグラフィ画像における温度の分布情報を基準として、温度の誤差許容範囲を予め設定し、図10に示す温度情報取得ステップ4で取得したサーモグラフィ画像から取得された温度の分布が誤差許容範囲内である場合には正常に接合されたと判断し、誤差許容範囲を超える箇所がある場合には正常に接合されていないと判断する。
【0051】
上面の温度の分布と接合状況との相関関係を説明する。ここで、半導体チップ120のレーザ光21が照射される被照射範囲123(図8参照)では、温度が一定であることが好ましい。すなわち、サーモグラフィ画像において、被加工物100は、外縁より内側の領域で明度が一定であることが理想である。
【0052】
判定ステップ5では、図6に示すように、半導体チップ120の外縁より内側の領域で明度が一定な場合には、接合が良好であると判定可能である。また、図10に示す例のように、半導体チップ120の外縁より内側の領域で明度にムラがある場合には、明度がより高い領域において接合不良が発生したと判定可能である。
【0053】
次に、記憶ステップ2で記憶した基準温度情報と、温度情報取得ステップ4で取得した温度情報とが、最高温度の時間変化を含む場合における、判定方法の一例を説明する。判定ステップ5では、温度情報取得ステップ4で取得した図11に示す最高温度の時間変化を含む温度情報を、記憶ステップ2で予め記憶している図7に示す基準温度情報と比較することによって、接合の良否を判定する。
【0054】
具体的には、例えば、図7に示す基準温度情報の最高温度の時間変化を基準として、温度の誤差許容範囲を予め設定し、図11に示す温度情報取得ステップ4で取得した最高温度の時間変化が誤差許容範囲内である場合には正常に接合されたと判断し、誤差許容範囲を超える箇所がある場合には正常に接合されていないと判断する。
【0055】
最高温度の時間変化と接合状況との相関関係を説明する。ここで、半導体チップ120のレーザ光21が照射される被照射範囲123(図8参照)では、各領域124-1、124-2、124-3、124-4、124-5で互いに最高温度が同一であることが好ましい。すなわち、最高温度の時間変化において、各領域124-1、124-2、124-3、124-4、124-5のデータは、時間の経過に関わらず、互いに重なっていることが理想である。
【0056】
判定ステップ5では、図7に示すように、各領域124-1、124-2、124-3、124-4、124-5のデータが、常時概ね重なっている場合には、接合が良好であると判定可能である。また、図11に示す例のように、各領域124-1、124-2、124-3、124-4、124-5のデータが、重ならない箇所がある場合には、温度が高い領域において接合不良が発生したと判定可能である。
【0057】
なお、判定ステップ5では、基準温度情報の最高温度を閾値として、温度情報の最高温度が閾値を上回った場合、接合不良が発生したと判定してもよい。
【0058】
このように、判定ステップ5では、いずれの例で温度情報を用いた場合であっても、温度情報取得ステップ4で取得した温度情報において、記憶ステップ2で記憶した基準温度情報よりも高温になる領域が存在する場合に、半導体チップ120と基板110とが正常に接合されていないと判定することができる。
【0059】
また、上記では、温度が高い領域で接合不良が発生したと判定するケースを説明したが、例えば、半導体チップ120の断面内(断面温度プロファイル)または上面内(サーモグラフィ画像)での温度バラつきが所定の範囲以上であった場合や、最低温度が所定値以下であった場合にも、接合不良が発生したと判定してもよい。この場合、判定方法として、基準となる断面温度プロファイルやサーモグラフィ画像と、新たに取得した断面温度プロファイルやサーモグラフィ画像との類似度を判断するパターンマッチングを実施してもよい。
【0060】
以上説明したように、実施形態に係る検査方法は、サーマルカメラでボンディング中の温度変化を測定し、記憶ステップ2で予め記憶された正常にボンディングされた場合の温度変化と比較して、ボンディングが正常に行われたかどうかを判定する。これにより、ボンディングと同時に接続の良否を検査することが可能となるため、接続不良の半導体チップ120を除去したり、再度加工を施して接続しなおしたりすること等が可能となり、歩留まりの向上に貢献することができる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、記憶ステップ2は、準備ステップ1より前に実施されてもよい。また、例えば、製造ラインにおいて、複数の同種の被加工物100に対して次々にレーザ照射と検査とを実施する場合、記憶ステップ2は、全体で最初の1度のみ実施されてもよい。
【0062】
また、断面温度プロファイルが取得される断面は、実施形態では図4の一点鎖線に示すように半導体チップ120の平面視における対角線を通る断面であり、領域124-1、124-5、124-3を通るが、逆の対角線を通る断面、すなわち、領域124-2、124-5、124-4を通る断面であってもよく、両者を同時に記憶および判定してもよい。
【0063】
また、本発明の検査方法では、判定ステップ5において接合不良と判定された半導体チップ120を記憶して、後工程で使用しないように除去する除去ステップを更に備えていてもよい。また、判定ステップ5において接合不良と判定された半導体チップ120に対して、再度レーザ光21を照射し、かつガラス基板による押圧を実施して再接合する再接合ステップを更に備えていてもよい。
【0064】
また、本発明の検査方法を実施するレーザ光照射装置に表示装置を備え、判定ステップ5において接合不良と判定された半導体チップ120の接合不良箇所をマッピングして表示装置に表示させてもよい。また、本発明の検査方法を実施するレーザ光照射装置に報知装置を備え、判定ステップ5において接合不良と判定された半導体チップ120の接合不良箇所が所定量を超える場合に、レーザ光照射装置に何らかの異常があると判定して報知装置にアラームを発報させてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 準備ステップ
2 記憶ステップ
3 レーザ光照射ステップ
4 温度情報取得ステップ
5 判定ステップ
21 レーザ光
100 被加工物
110 基板
111 表面
112 裏面
120 半導体チップ
121 表面(一方の面)
122 裏面(他方の面)
123 被照射範囲
124-1、124-2、124-3、124-4、124-5 領域
130 バンプ
図1
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図11