(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151985
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】エッチング方法及びプラズマ処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061885
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】大内田 聡
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】戸村 幕樹
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA01
5F004BA09
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004BD03
5F004CA03
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5F004CA06
5F004DA03
5F004DA15
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5F004DA20
5F004DA22
5F004DA23
5F004DA24
5F004DA26
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA03
5F004EA32
5F004EB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エッチングレートの均一性を改善するエッチング方法及びプラズマ処理システムを提供する。
【解決手段】エッチング方法は、第1のシリコン含有膜と、第2のシリコン含有膜とを有する基板を、HFガス及びリン含有ガスを含む処理ガスをチャンバ内に供給する工程と、ソースRF信号によってチャンバ内で処理ガスからプラズマを生成するとともに、バイアス信号によって基板にバイアス電位を発生させることで、第1のシリコン含有膜及び第2のシリコン含有膜をエッチングする工程と、を含む。エッチングする工程において、ソースRF信号及びバイアス信号を供給する工程と、ソースRF信号及びバイアス信号の少なくとも一方の供給を停止するか又はソースRF信号及びバイアス信号の少なくとも一方を、信号を供給する工程における少なくとも一方の電力の実効値よりも低い電力の実効値で供給する工程と、を交互に繰り返す。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるエッチング方法であって、
(a)第1のシリコン含有膜と、前記第1のシリコン含有膜とは異なる膜種のシリコン含有膜を少なくとも含む第2のシリコン含有膜とを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、
(b)HFガス及びリン含有ガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給する工程と、
(c)ソースRF信号によって前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するとともに、バイアス信号によって前記基板にバイアス電位を発生させることで、前記第1のシリコン含有膜及び前記第2のシリコン含有膜をエッチングする工程と、を含み、
前記(c)の工程において、(c1)前記ソースRF信号及び前記バイアス信号を供給する工程と、(c2)前記ソースRF信号及び前記バイアス信号の少なくとも一方の供給を停止する、又は、前記ソースRF信号及び前記バイアス信号の少なくとも一方を前記(c1)の工程における当該少なくとも一方の電力の実効値よりも低い電力の実効値で供給する工程と、を交互に繰り返す、
エッチング方法。
【請求項2】
前記(c)の工程において、前記基板支持部の温度は0℃以下に設定される、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記(c)の工程は、前記基板または前記基板支持部の温度を測定する工程をさらに含む、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記(c1)及び前記(c2)の少なくとも一方の工程において、前記測定した温度に基づいて、前記ソースRF信号及び前記バイアス信号の少なくとも一方の電力の実効値、供給時間及びデューティ比のいずれか一つ以上を調整する、請求項3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記第1のシリコン含有膜は1種類のシリコン含有膜からなる単層膜であり、前記第2のシリコン含有膜は2種類以上のシリコン含有膜が積層された積層膜である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記第1のシリコン含有膜は、シリコン酸化膜を含む、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記第2のシリコン含有膜は、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜を含む、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記基板は、前記第1のシリコン含有膜及び前記前記2のシリコン含有膜上に炭素含有マスク膜を有する、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記(c)の工程において、前記第1のシリコン含有膜のエッチングレートに対する前記第2のシリコン含有膜のエッチングレートの比は、0.95~1.05である、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記ソースRF信号及び前記バイアス信号は、パルス波である請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記ソースRF信号及び前記バイアス信号は、連続波である請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記(b)の工程において供給される前記処理ガスのうち、前記HFガスの流量が不活性ガスを除いて最も多い、請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記リン含有ガスは、ハロゲン化リンガスである、請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記処理ガスは、フルオロカーボンガス又はハイドロフルオロカーボンガスの少なくともいずれかをさらに含む、請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項15】
前記処理ガスは、タングステン、モリブデン及びチタンの少なくともいずれかを含有するガスをさらに含む、請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項16】
前記処理ガスは、酸素含有ガスをさらに含む、請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項17】
前記処理ガスは、貴ガスをさらに含む、請求項1ないし請求項16のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項18】
チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるエッチング方法であって、
(a)第1のシリコン含有膜と、前記第1のシリコン含有膜とは異なる膜種のシリコン含有膜を少なくとも含む第2のシリコン含有膜とを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、
(b)処理ガスを前記チャンバ内に供給する工程と、
(c)ソースRF信号によって前記チャンバ内で前記処理ガスからHF種及びリン化学種を含むプラズマを生成するとともに、バイアス信号によって前記基板にバイアス電位を発生させることで、前記第1のシリコン含有膜及び前記第2のシリコン含有膜をエッチングする工程と、を含み、
前記(c)の工程において、(c1)前記ソースRF信号及び前記バイアス信号を供給する工程と、(c2)前記ソースRF信号及び前記バイアス信号の少なくとも一方の供給を停止する、又は、前記ソースRF信号及び前記バイアス信号の少なくとも一方を前記(c1)の工程における当該少なくとも一方の電力の実効値よりも低い電力の実効値で供給する工程と、を交互に繰り返す、
エッチング方法。
【請求項19】
前記HF種は、HFガス又はハイドロフルオロカーボンガスの少なくとも1種のガスから生成される、請求項18に記載のエッチング方法。
【請求項20】
前記HF種は、炭素数が2以上のハイドロフルオロカーボンガスから生成される、請求項18に記載のエッチング方法。
【請求項21】
前記HF種は、フッ素含有ガス及び水素含有ガスから生成される、請求項18に記載のエッチング方法。
【請求項22】
チャンバ、前記チャンバ内に設けられた基板支持部、電源、及び、制御部を備え、
前記制御部は、
(a)第1のシリコン含有膜と、前記第1のシリコン含有膜とは異なる膜種のシリコン含有膜を少なくとも含む第2のシリコン含有膜とを有する基板を、前記基板支持部上に提供する制御と、
(b)HFガス及びリン含有ガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給する制御と、
(c)ソースRF信号によって前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するとともに、バイアス信号によって前記基板にバイアス電位を発生させることで、前記第1のシリコン含有膜及び前記第2のシリコン含有膜をエッチングする制御と、を実行し、
前記(c)の制御において、(c1)前記電源から前記ソースRF信号及び前記バイアス信号を供給する制御と、(c2)前記電源からの前記ソースRF信号及び前記バイアス信号の少なくとも一方の供給を停止する、又は、前記ソースRF信号及び前記バイアス信号の少なくとも一方を前記(c1)の工程における当該少なくとも一方の電力の実効値よりも低い電力の実効値で供給する制御と、を交互に繰り返す、
プラズマ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、エッチング方法及びプラズマ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フルオロカーボンガスを含む処理ガスを用いたシリコン含有膜のプラズマエッチングについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2016/0343580号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチングレートの均一性を改善する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるエッチング方法であって、(a)第1のシリコン含有膜と、前記第1のシリコン含有膜とは異なる膜種のシリコン含有膜を少なくとも含む第2のシリコン含有膜とを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)HFガス及びリン含有ガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給する工程と、(c)ソースRF信号によって前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するとともに、バイアス信号によって前記基板にバイアス電位を発生させることで、前記第1のシリコン含有膜及び前記第2のシリコン含有膜をエッチングする工程と、を含み、前記(c)の工程において、(c1)前記ソースRF信号及び前記バイアス信号を供給する工程と、(c2)前記ソースRF信号及び前記バイアス信号の少なくとも一方の供給を停止する、又は、前記ソースRF信号及び前記バイアス信号の少なくとも一方を前記(c1)の工程における当該少なくとも一方の電力の実効値よりも低い電力の実効値で供給する工程と、を交互に繰り返すエッチング方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、エッチングレートの均一性を改善する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】例示的なプラズマ処理システムを概略的に示す図である。
【
図2】本処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】工程ST1において準備される基板Wの一例を示す上面図である。
【
図4】
図3に示す基板WのAA´断面の一部を示す図である。
【
図5】工程ST4の処理中の基板Wの断面構造を示す図である。
【
図6】工程ST4の処理後の基板Wの断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるエッチング方法であって、(a)第1のシリコン含有膜と、第1のシリコン含有膜とは異なる膜種のシリコン含有膜を少なくとも含む第2のシリコン含有膜とを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)HFガス及びリン含有ガスを含む処理ガスをチャンバ内に供給する工程と、(c)ソースRF信号によってチャンバ内で処理ガスからプラズマを生成するとともに、バイアス信号によって基板にバイアス電位を発生させることで、第1のシリコン含有膜及び第2のシリコン含有膜をエッチングする工程と、を含み、(c)の工程において、(c1)ソースRF信号及びバイアス信号を供給する工程と、(c2)ソースRF信号及びバイアス信号の少なくとも一方の供給を停止する、又は、ソースRF信号及びバイアス信号の少なくとも一方を(c1)の工程における少なくとも一方の電力の実効値よりも低い電力の実効値で供給する工程と、を交互に繰り返すエッチング方法が提供される。
【0010】
一つの例示的実施形態において、(c)の工程において、基板支持部の温度は0℃以下に設定される。
【0011】
一つの例示的実施形態において、(c)の工程は、基板または基板支持部の温度を測定する工程をさらに含む。
【0012】
一つの例示的実施形態において、(c1)及び(c2)の少なくとも一方の工程において、測定した温度に基づいて、ソースRF信号及びバイアス信号の少なくとも一方の電力の実効値、供給時間及びデューティ比のいずれか一つ以上を調整する。
【0013】
一つの例示的実施形態において、第1のシリコン含有膜は1種類のシリコン含有膜からなる単層膜であり、第2のシリコン含有膜は2種類以上のシリコン含有膜が積層された積層膜である。
【0014】
一つの例示的実施形態において、第1のシリコン含有膜は、シリコン酸化膜を含む。
【0015】
一つの例示的実施形態において、第2のシリコン含有膜は、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜を含む。
【0016】
一つの例示的実施形態において、基板は、第1のシリコン含有膜及び2のシリコン含有膜上に炭素含有マスクを有する。
【0017】
一つの例示的実施形態において、(c)の工程において、第1のシリコン含有膜のエッチングレートに対する第2のシリコン含有膜のエッチングレートの比は、0.95~1.05である。
【0018】
一つの例示的実施形態において、ソースRF信号及びバイアス信号は、パルス波である。
【0019】
一つの例示的実施形態において、ソースRF信号及びバイアス信号は、連続波である。
【0020】
一つの例示的実施形態において、(b)の工程において供給される処理ガスのうち、HFガスの流量が不活性ガスを除いて最も多い。
【0021】
一つの例示的実施形態において、リン含有ガスは、ハロゲン化リンガスである。
【0022】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、フルオロカーボンガス又はハイドロフルオロカーボンガスの少なくともいずれかをさらに含む。
【0023】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、タングステン、モリブデン及びチタンの少なくともいずれかを含有するガスをさらに含む。
【0024】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、酸素含有ガスをさらに含む。
【0025】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、貴ガスをさらに含む。
【0026】
一つの例示的実施形態において、チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるエッチング方法であって、(a)第1のシリコン含有膜と、第1のシリコン含有膜とは異なる膜種のシリコン含有膜を少なくとも含む第2のシリコン含有膜とを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)処理ガスをチャンバ内に供給する工程と、(c)ソースRF信号によってチャンバ内で処理ガスからHF種及びリン化学種を含むプラズマを生成するとともに、バイアス信号によって基板にバイアス電位を発生させることで、第1のシリコン含有膜及び第2のシリコン含有膜をエッチングする工程と、を含み、(c)の工程において、(c1)ソースRF信号及びバイアス信号を供給する工程と、(c2)ソースRF信号及びバイアス信号の少なくとも一方の供給を停止する、又は、ソースRF信号及びバイアス信号の少なくとも一方を(c1)の工程における少なくとも一方の電力の実効値よりも低い電力の実効値で供給する工程と、を交互に繰り返すエッチング方法が提供される。
【0027】
一つの例示的実施形態において、HF種は、HFガス又はハイドロフルオロカーボンガスの少なくとも1種のガスから生成される。
【0028】
一つの例示的実施形態において、HF種は、炭素数が2以上のハイドロフルオロカーボンガスから生成される。
【0029】
一つの例示的実施形態において、HF種は、フッ素含有ガス及び水素含有ガスから生成される。
【0030】
一つの例示的実施形態において、チャンバ、チャンバ内に設けられた基板支持部、電源、及び、制御部を備え、制御部は、(a)第1のシリコン含有膜と、第1のシリコン含有膜とは異なる膜種のシリコン含有膜を少なくとも含む第2のシリコン含有膜とを有する基板を、基板支持部上に提供する制御と、(b)HFガス及びリン含有ガスを含む処理ガスをチャンバ内に供給する制御と、(c)ソースRF信号によってチャンバ内で処理ガスからプラズマを生成するとともに、バイアス信号によって基板にバイアス電位を発生させることで、第1のシリコン含有膜及び第2のシリコン含有膜をエッチングする制御と、を実行し、(c)の制御において、(c1)電源からソースRF信号及びバイアス信号を供給する制御と、(c2)電源からのソースRF信号及びバイアス信号の少なくとも一方の供給を停止する、又は、ソースRF信号及びバイアス信号の少なくとも一方を(c1)の工程における少なくとも一方の電力の実効値よりも低い電力の実効値で供給する制御と、を交互に繰り返すプラズマ処理システムが提供される。
【0031】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0032】
<プラズマ処理システムの構成例>
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。
図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0033】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0034】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0035】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも一つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0036】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0037】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0038】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも一つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0039】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0040】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0041】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0042】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0043】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0044】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、DCに基づく電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a、32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0045】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0046】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0047】
<エッチング方法の一例>
図2は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法(以下「本処理方法」ともいう。)を示すフローチャートである。
図2に示すように、本処理方法は、基板を提供する工程ST1と、基板支持部の温度を設定する工程ST2と、処理ガスを供給する工程ST3と、エッチングを行う工程ST4とを含む。各工程における処理は、
図1に示すプラズマ処理システムで実行されてよい。以下では、制御部2がプラズマ処理装置1の各部を制御して、基板Wに対して本処理方法を実行する場合を例に説明する。
【0048】
(工程ST1:基板の提供)
工程ST1において、基板Wは、プラズマ処理装置1のプラズマ処理空間10s内に提供される。基板Wは、基板支持部11の上面に、上部電極と対向するように配置され、静電チャック1111により基板支持部11に保持される。
【0049】
図3は、工程ST1において提供される基板Wの一例を示す上面図である。
図4は、
図3に示す基板WのAA´断面の一部を示す図である。基板Wは、DRAM、3D-NANDフラッシュメモリ等の半導体メモリデバイスを含む半導体デバイスの製造に用いられてよい。
【0050】
基板Wは、第1の領域RE1及び第2の領域RE2を有する。基板Wの平面視(
図3の上面図)において、第1の領域RE1及び第2の領域RE2は、それぞれ基板W上で所定の範囲を有する領域である。第1の領域RE1及び第2の領域RE2は、互いに隣接した2つの領域であってよく、また、互いに離れた2つの領域であってもよい。第1の領域RE1は、例えば、半導体メモリデバイスにおけるコンタクト領域や周辺回路領域であってよい。コンタクト領域は、一例では、1つ以上のメモリセルと周辺回路とを電気的に接続するための1つ以上のコンタクトホールが設けられた領域である。また、第2の領域RE2は、例えば、半導体メモリデバイスにおけるメモリセル領域であってよい。
【0051】
基板Wは、第1の領域RE1から第2の領域RE2に亘って設けられた下地膜UFを有する。下地膜UFは、例えば、シリコンウェハやシリコンウェハ上に形成された有機膜、誘電体膜、金属膜、半導体膜等でよい。下地膜UFは、単層膜でも複数の膜が積層された積層膜でもよい。一例では、下地膜UFは、ポリシリコン膜である。
【0052】
基板Wは、第1の領域RE1において、下地膜UF上に設けられた第1のシリコン含有膜SF1を有する。第1のシリコン含有膜SF1は、一例では、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜又はポリシリコン膜の少なくとも一つを含んでよい。第1のシリコン含有膜SF1は、単層膜でよく、また2種類以上のシリコン含有膜が積層された積層膜でもよい。一例では、第1のシリコン含有膜SF1は、シリコン酸化膜の単層膜である。
【0053】
基板Wは、第2の領域RE2において、下地膜UF上に設けられた第2のシリコン含有膜SF2を有する。第2のシリコン含有膜SF2は、第1のシリコン含有膜SF1とは異なる膜種のシリコン含有膜を少なくとも含む。第1のシリコン含有膜SF1と第2のシリコン含有膜SF2は、互いに同じ厚さを有してよく、また異なる厚さを有してよい。第2のシリコン含有膜SF2は、一例では、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜又はポリシリコン膜の少なくとも一つを含んでよい。第2のシリコン含有膜SF2は、単層膜でよく、また2種類以上のシリコン含有膜が積層された積層膜でもよい。一例では、第2のシリコン含有膜SF2は、シリコン窒化膜SF2a及びシリコン酸化膜SF2bが交互に繰り返し積層された積層膜である。
【0054】
基板Wは、マスクMKをさらに有する。マスクMKは、第1のシリコン含有膜SF1及び第2のシリコン含有膜SF2上に設けられている。すなわち、マスクMKは、第1の領域RE1から第2の領域RE2に亘って設けられている。マスクMKは、所定のパターンを有する。マスクMKには、第1の領域RE1において、1つ以上の開口OP1が設けられている(なお、第1の領域RE1に設けられた円形状の開口を開口OP1a、矩形形状のスリット(開口)を開口OP1bとも呼ぶ。)。一例では、1つ以上の開口OP1のそれぞれは、マスクMKに形成された側壁により規定される開口である。また、マスクMKには、第2の領域RE2において、1つ以上の開口OP2が設けられている(なお、第2の領域RE2に設けられた円形状の開口を開口OP2a、矩形形状のスリット(開口)を開口OP2bとも呼ぶ。)。一例では、1つ以上の開口OP2は、マスクMKに形成された側壁により規定される開口である。
【0055】
開口OP1及び開口OP2は、一例では、第1のシリコン含有膜SF1及び/又は第2のシリコン含有膜SF2に、メモリセルが形成されるホール、コンタクトホール、ラインアンドスペース、スリット、トレンチ等を形成するための開口である。開口OP1及び開口OP2は、一例では、平面視において、円形状、楕円形状、線形状、矩形形状等の形状を有する。開口OP1及び開口OP2は、平面視において、同様の形状を有してよく、また、異なる形状を有してもよい。開口OP1は、開口OP2と同じ幅(例えば、円形状の開口の径、楕円形状の開口の短径、線形状の開口の線幅、及び、矩形形状の開口短辺又は長辺の長さである。)でも異なる幅でもよい。また、開口OP1及び開口OP2は、一体に形成された開口であってもよい。一例として、開口OP1及び開口OP2は、第1の領域RE1から第2の領域RE2に亘って形成された1つのスリットの一部であってもよい。
【0056】
一例では、
図3に示すように、マスクMKの第1の領域RE1に、平面視において円形状を有する複数の開口OP1aが設けられてよい。また、マスクMKの第2の領域RE2に、平面視において円形状を有する複数の開口OP2aが設けられてよい。第1の領域RE1に設けられた開口OP1aの幅(径)は、第2の領域RE2に設けられた開口OP2aの幅(径)よりも広くても狭くてもよく、また、開口OP2aの幅(径)と同一であってもよい。
【0057】
一例では、
図3に示すように、マスクMKの第1の領域RE1から第2の領域RE2に亘って、平面視においてスリット形状を有する開口が設けられてよい。当該開口は、マスクMKの第1の領域RE1に設けられた部分である開口OP1bと、第2の領域RE2に設けられた部分である開口OP2bとを有する。開口OP1b及び開口OP2bの幅は、開口OP1a及び/又は開口OP2aの幅(径)よりも広くても狭くてもよく、また、開口OP1a及び/又は開口OP1aの幅(径)と同一であってもよい。また、開口OP1bの幅は、開口OP2bの幅よりも広くても狭くてもよく、また開口OP2bの幅と同一でもよい。また、
図3におけるスリット形状を有する開口は、第1の領域RE1及び第2の領域RE2のいずれか一方のみに設けられてもよい。すなわち、当該開口は、開口OP1b及び開口OP2bのいずれか一方のみを有するスリットであってもよい。
【0058】
マスクMKは、工程ST4における第1のシリコン含有膜SF1及び第2のシリコン含有膜SF2のエッチングレートよりも低いエッチングレートを有する材料から形成される。マスクMKは、炭素含有材料から形成されてよい。マスクMKは、例えば、アモルファスカーボン膜、フォトレジスト膜、又はSOC膜(スピンオンカーボン膜)であってよい。マスクMKは、例えば、タングステンなどの金属を含む金属含有膜であってもよい。
【0059】
基板Wの各構成を形成するプロセスの少なくとも一部は、プラズマ処理チャンバ10内で行われてよい。一例では、マスクMKをエッチングして開口OP1及びOP2を形成する工程は、プラズマ処理チャンバ10で実行されてよい。すなわち、開口OP1、OP2及び後述する第1のシリコン含有膜SF1及び第2のシリコン含有膜SF2のエッチングは、同一のチャンバ内で連続して実行されてよい。また、基板Wの各構成の全部又は一部がプラズマ処理装置1の外部の装置又はチャンバで形成された後、基板Wがプラズマ処理装置1のプラズマ処理空間10s内に搬入され、基板支持部11の上面に配置されてもよい。
【0060】
(基板ST2:基板支持部の温度設定)
工程ST2において、温調モジュールにより、基板支持部11の温度を0℃以下の設定温度に調整する。設定温度は、-10℃以下、-20℃以下、-30℃以下、-40℃以下、-50℃以下、-60℃以下又は-70℃以下でもよい。一例では、基板支持部11の温度を調整又は維持することは、流路1110aを流れる伝熱流体の温度を設定温度又は設定温度と異なる温度に調整又は維持することを含む。一例では、基板支持部11の温度を調整又は維持することは、静電チャック1111と基板Wの裏面との間の伝熱ガス(例えばHe)の圧力を制御することを含む。なお、流路1110aに伝熱流体が流れ始めるタイミングは、基板Wが基板支持部11に載置される前でも後でもよく、また同時でもよい。また、本処理方法において、工程ST2は、工程ST1の前に行ってもよい。すなわち、基板支持部11の温度を設定温度に調整した後に、当該基板支持部11に基板Wを提供してよい。なお、本処理方法において、基板支持部11の温度は、工程ST3及び工程ST4においても設定温度に維持される。
【0061】
(工程ST3:処理ガスの供給)
工程ST3において、処理ガスがガス供給部20からプラズマ処理空間10s内に供給される。処理ガスは、HFガス(フッ化水素ガス)及びリン含有ガスを含む。工程ST3の間、基板支持部11の温度は設定温度(例えば-70℃)に維持される。
【0062】
処理ガス中、不活性ガスを除き、HFガスの流量が最も多くてよい。一例では、HFガスは、処理ガスの不活性ガスを除く総流量に対して、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上でよく、また80体積%以上でもよい。HFガスとしては、高純度のもの、例えば、純度が99.999%以上のものを用いることができる。
【0063】
処理ガスは、HFガスに代えて又はHFガスに加えて、プラズマ中にHF種を生成可能なガスを含んでよい。なお、HF種は、フッ化水素のガス、ラジカル及びイオンの少なくともいずれかを含む。
【0064】
一例では、HF種を生成可能なガスとして、ハイドロフルオロカーボンガスを用いてよい。ハイドロフルオロカーボンガスは、炭素数が2以上、3以上、又は4以上でもよい。ハイドロフルオロカーボンガスは、一例では、CH2F2ガス、C3H2F4ガス、C3H2F6ガス、C3H3F5ガス、C4H2F6ガス、C4H5F5ガス、C4H2F8ガス、C5H2F6ガス、C5H2F10ガス及びC5H3F7ガスからなる群から選択される少なくとも1種を用いてよい。ハイドロフルオロカーボンガスは、一例では、CH2F2ガス、C3H2F4ガス、C3H2F6ガス及びC4H2F6ガスからなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0065】
一例では、HF種を生成可能なガスとして、フッ素含有ガス及び水素含有ガスを用いてよい。フッ素含有ガスは、一例では、フルオロカーボンガスを用いてよい。フルオロカーボンガスは、C2F2ガス、C2F4ガス、C3F6ガス、C3F8ガス、C4F6ガス、C4F8ガス及びC5F8ガスからなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。フッ素含有ガスは、一例では、NF3ガス又はSF6ガスを用いてもよい。水素含有ガスは、一例では、H2ガス、CH4ガス、NH3ガスを用いてよい。
【0066】
リン含有ガスは、リン含有分子を含むガスである。リン含有分子は、十酸化四リン(P4O10)、八酸化四リン(P4O8)、六酸化四リン(P4O6)等の酸化物であってもよい。十酸化四リンは、五酸化二リン(P2O5)と呼ばれることがある。リン含有分子は、三フッ化リン(PF3)、五フッ化リン(PF5)、三塩化リン(PCl3)、五塩化リン(PCl5)、三臭化リン(PBr3)、五臭化リン(PBr5)、ヨウ化リン(PI3)のようなハロゲン化物(ハロゲン化リン)であってもよい。すなわち、リン含有分子は、フッ化リン等、ハロゲン元素としてフッ素を含んでもよい。或いは、リン含有分子は、ハロゲン元素としてフッ素以外のハロゲン元素を含んでもよい。リン含有分子は、フッ化ホスホリル(POF3)、塩化ホスホリル(POCl3)、臭化ホスホリル(POBr3)のようなハロゲン化ホスホリルであってよい。リン含有分子は、ホスフィン(PH3)、リン化カルシウム(Ca3P2等)、リン酸(H3PO4)、リン酸ナトリウム(Na3PO4)、ヘキサフルオロリン酸(HPF6)等であってよい。リン含有分子は、フルオロホスフィン類(HgPFh)であってよい。ここで、gとhの和は、3又は5である。フルオロホスフィン類としては、HPF2、H2PF3が例示される。処理ガスは、少なくとも一つのリン含有分子として、上記のリン含有分子のうち一つ以上のリン含有分子を含み得る。例えば、処理ガスは、少なくとも一つのリン含有分子として、PF3、PCl3、PF5、PCl5、POCl3、PH3、PBr3、又はPBr5の少なくとも一つを含み得る。なお、処理ガスに含まれる各リン含有分子が液体又は固体である場合、各リン含有分子は、加熱等によって気化されてプラズマ処理空間10s内に供給され得る。
【0067】
処理ガスは、炭素含有ガスをさらに含んでよい。炭素含有ガスは、フルオロカーボンガス又はハイドロフルオロカーボンガスの少なくともいずれか又は両方であってよい。フルオロカーボンガスは、C2F2ガス、C2F4ガス、C3F6ガス、C3F8ガス、C4F6ガス、C4F8ガス及びC5F8ガスからなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。ハイドロフルオロカーボンガスは、CHF3ガス、CH2F2ガス、CH3Fガス、C2HF5ガス、C2H2F4ガス、C2H3F3ガス、C2H4F2ガス、C3HF7ガス、C3H2F2ガス、C3H2F4ガス、C3H2F6ガス、C3H3F5ガス、C4H2F6ガス、C4H5F5ガス、C4H2F8ガス、C5H2F6ガス、C5H2F10ガス及びC5H3F7ガスからなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。また、炭素含有ガスは、不飽和結合を有する直鎖状のものであってもよい。不飽和結合を有する直鎖状の炭素含有ガスは、例えば、C3F6(ヘキサフルオロプロペン)ガス、C4F8(オクタフルオロ-1-ブテン、オクタフルオロ-2-ブテン)ガス、C3H2F4(1,3,3,3-テトラフルオロプロペン)ガス、C4H2F6(トランス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン)ガス、C4F8O(ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル)ガス、CF3COFガス(1,2,2,2-テトラフルオロエタン-1-オン)、CHF2COF(ジフルオロ酢酸フルオライド)ガス及びCOF2(フッ化カルボニル)ガスからなる群から選択される少なくとも1種を用いてもよい。
【0068】
処理ガスは、タングステン含有ガスをさらに含んでよい。タングステン含有ガスは、タングステンとハロゲンとを含有するガスでよく、一例では、WFaClbガスである(a及びbはそれぞれ0以上6以下の整数であり、aとbとの和は2以上6以下である)。具体的には、タングステン含有ガスとしては、2フッ化タングステン(WF2)ガス、4フッ化タングステン(WF4)ガス、5フッ化タングステン(WF5)ガス、6フッ化タングステン(WF6)ガス等のタングステンとフッ素とを含有するガス、2塩化タングステン(WCl2)ガス、4塩化タングステン(WCl4)ガス、5塩化タングステン(WCl5)ガス、6塩化タングステン(WCl6)ガス等のタングステンと塩素とを含有するガスであってよい。これらの中でも、WF6ガス及びWCl6ガスの少なくともいずれかのガスであってよい。タングステン含有ガスの流量は、不活性ガスを除く処理ガスの総流量に対して、5体積%以下でよく、1体積%以下、0.5体積%以下、0.2体積%以下でもよい。
【0069】
処理ガスは、タングステン含有ガスに代えてまたは加えて、モリブデン含有ガス及びチタン含有ガスの少なくとも一方を含んでよい。
【0070】
処理ガスは、酸素含有ガスをさらに含んでよい。酸素含有ガスは、例えば、O2、CO、CO2、H2O及びH2O2からなる群から選択される少なくとも1種のガスでよい。一例では、処理ガスは、H2O以外の酸素含有ガス、すなわち、O2、CO、CO2及びH2O2からなる群から選択される少なくとも1種のガスを含んでよい。酸素含有ガスの流量は、フルオロカーボンガス又はハイドロフルオロカーボンガス等の炭素含有ガスの流量に応じて調整してよい。
【0071】
処理ガスは、Arガス、Heガス、Krガス等の貴ガスや窒素ガス等の不活性ガスをさらに含んでよい。
【0072】
(工程ST4:エッチング)
図5は、工程ST4の処理中の基板Wの断面構造の一例を示す図である。工程ST4においては、第1のシリコン含有膜SF1及び第2のシリコン含有膜SF2が同時にエッチングされる。工程ST4の間、基板支持部11の温度は設定温度(例えば-70℃)に維持される。
【0073】
工程ST4においては、ソースRF信号及びバイアス信号の少なくとも一方の供給と停止とが交互に繰り返されてよい。例えば、ソースRF信号が連続して供給される間に、バイアス信号の供給と停止とが交互に繰り返されてよい。また例えば、ソースRF信号の供給と停止とが交互に繰り返される間に、バイアス信号が連続して供給されてもよい。また例えば、ソースRF信号及びバイアス信号の双方の供給と停止とが交互に繰り返されてもよい。ここで、ソースRF信号は、処理ガスからプラズマを生成するための信号であり、第1のRF生成部31aから下部電極及び/又は上部電極に供給される。ソースRF信号は、一例では、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0074】
また、バイアス信号は、基板Wにバイアス電位を発生させるための信号であり、第2のRF生成部31bからバイアスRF信号として、又は、DC生成部32aからバイアスDC信号として、下部電極に供給される。バイアス信号は、一例では、1~200kHzの範囲内の周波数を有する。バイアス信号は、5~100kHzの範囲内の周波数を有してもよい。
【0075】
ソースRF信号及びバイアス信号は、双方が連続波又はパルス波でよく、また一方が連続波で他方がパルス波でもよい。ソースRF信号及びバイアス信号の双方がパルス波である場合、双方のパルス波の周期は同期してよい。またパルス波のデューティ比は適宜設定してよく、例えば、1~80%でよく、また5~50%でよい。なお、デューティ比は、パルス波の周期における、電力又は電圧レベルが高い期間が占める割合である。またバイアスDC信号を用いる場合、パルス波は、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせの波形を有してよい。バイアスDC信号の極性は、プラズマと基板との間に電位差を与えてイオンを引き込むように基板Wの電位が設定されれば、負であっても正であってもよい。
【0076】
上述のとおり、工程ST4においては、ソースRF信号及びバイアス信号の少なくとも一方の供給と停止とを複数回繰り返してよい。ソースRF信号及び/又はバイアス信号を供給している間は、これらの信号による入熱があるので、基板Wの表面温度は、基板支持部11の設定温度(例えば-70℃)よりも高くなる。ソースRF信号及び/又はバイアス信号の供給を停止している間は、これらの信号による入熱がないので、基板Wの表面温度は、基板支持部11の設定温度(例えば-70℃)により近づく。すなわち、ソースRF信号及びバイアス信号の少なくとも一方の供給と停止とを繰り返すことで、基板Wの表面温度が制御される。基板Wの表面温度は、ソースRF信号及びバイアス信号の供給を連続する場合に比べて低温に維持される。
【0077】
工程ST4において、ソースRF信号及び/又はバイアス信号の供給及び停止は周期的に繰り返されてよい。すなわち、ソースRF信号及び/又はバイアス信号を供給する期間T1と停止する期間T2とを1サイクルとし、当該サイクルを複数回繰り返してよい。一例では、期間T1及び期間T2は、ぞれぞれ、0.1~30秒の範囲の期間でよく、0.5~20秒の範囲の期間でもよく、1~10秒の範囲の期間でもよい。期間T1と期間T2との比(オン/オフ比)は、目標とする基板Wの表面温度に基づいて適宜設定してよい。期間T1に対して期間T2の期間が長くなれば基板Wの表面温度はより低くなり、期間T1に対して期間T2の期間が短くなれば、基板Wの表面温度はより高くなる。
【0078】
ソースRF信号及びバイアスRF信号の供給により、処理ガスからプラズマが生成されるとともに、基板Wに基板にバイアス電位が発生し、プラズマ中の化学種が基板Wの表面に引きよせられる。これにより、
図5に示すように、第1のシリコン含有膜SF1のうち開口OP1において露出されている部分が深さ方向(
図5の上から下に向かう方向)エッチングされる。マスクMKの開口OP1の形状に基づいて、第1のシリコン含有膜SF1に凹部RC1が形成される。また、第2のシリコン含有膜SF2のうち開口OP2において露出されている部分が深さ方向にエッチングされる。そして、マスクMKの開口OP2の形状に基づいて、第2のシリコン含有膜SF2に凹部RC2が形成される。すなわち、第1のシリコン含有膜SF1及び第2のシリコン含有膜SF2のエッチングが同時に進行する。
【0079】
工程ST4では、ソースRF信号及び/又はバイアス信号の供給と停止とを繰り返してエッチングを行ってよい。これによりソースRF信号及びバイアス信号を連続して供給する場合に比べて、基板Wの表面温度が低下し、凹部RC1及び凹部RC2におけるHF種の吸着が促進され得る。そのため、第1のシリコン含有膜SF1及び第2のシリコン含有膜SF2のエッチングレートが高くなる。また、基板Wの表面温度の低下によるエッチングレートの増加量は、第1のシリコン含有膜SF1と第2のシリコン含有膜SF2とで異なる。そのため、基板Wの表面温度の低下量を調整することで、第1のシリコン含有膜SF1と第2のシリコン含有膜SF2のエッチングレートの差異を小さくし得る。すなわち、第1のシリコン含有膜に対する第2にシリコン含有膜の選択比を1に近づけ得る。例えば、当該選択比を、0.95~1.05の範囲に抑制し得る。
【0080】
図6は、工程ST4による処理後の基板Wの断面構造の一例を示す図である。処理後の基板Wにおいては、第1のシリコン含有膜SF1及び第2のシリコン含有膜SF2が深さ方向にエッチングされ、凹部RC1及び凹部RC2の底部が下地膜UFにほぼ同時に到達している。この状態における凹部RC1及び/又は凹部RC2のアスペクト比は、例えば、20以上でよく、30以上、40以上、50以上、又は100以上でもよい。
【0081】
本処理方法によれば、第1のシリコン含有膜SF1と第2のシリコン含有膜SF2のエッチングレートを高めつつ、両者のエッチングレートの均一性を改善し得る。そのため、本処理方法は、例えば、下地膜UFに対する選択比がとれず下地膜UFによるエッチングストップをすることが難しい場合であっても、第1のシリコン含有膜SF1及び第2のシリコン含有膜SF2を好適にエッチングし得る。
【0082】
<実施例>
次に、本処理方法の実施例について説明する。本開示は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0083】
(実施例1)
実施例1では、プラズマ処理装置1を用いて本処理方法を適用し、
図4に示す基板Wと同様の構造を有する基板をエッチングした。マスクMKとしては、ポリシリコン膜を用いた。第1のシリコン含有膜SF1としては、シリコン酸化膜の単層膜(「Ox膜」ともいう)を用いた。第2のシリコン含有膜SF2としては、シリコン窒化膜SF2a及びシリコン酸化膜SF2bが交互に繰り返し積層された積層膜(「ON膜」ともいう)を用いた。処理ガスは、HFガス、リン含有ガス及びアルゴンガスを含んでいた。エッチング中は、基板支持部11の温度は-70℃に設定し、ソースRF信号及びバイアス信号の供給(5秒)と停止(10秒)とを繰り返した。
【0084】
(参考例1)
プラズマ処理装置1を用いて、実施例1と同一の構成の基板をエッチングした。ソースRF信号及びバイアス信号の供給をエッチング中継続した点を除いて、実施例1と同一の条件でエッチングを行った。
【0085】
実施例1におけるOx膜のエッチングレートは、1169nm/分であり、ON膜のエッチングレートは、1196nm/分であった。実施例1では、Ox膜に対するON膜の選択比は、0.98であった。また基板Wの表面温度は、-31℃であった。これに対し、参考例1におけるOx膜のエッチングレートは、722nm/分であり、ON膜のエッチングレートは、558nm/分であった。参考例1では、Ox膜に対するON膜の選択比は、0.77であった。また基板Wの表面温度は、27℃であった。
【0086】
実施例1は、参考例1に比べて、第1のシリコン含有膜SF1(Ox膜)及び第2のシリコン酸化膜SF2(ON膜)の双方のエッチングレートが向上した。これは、基板Wの温度低下により、Ox膜及びON膜表面におけるHF種の吸着が促進されたためと考えられる。また、実施例1は、参考例1に比べて、Ox膜に対するON膜の選択比、すなわち、Ox膜及びON膜のエッチングレートの均一性も改善された。これは、Ox膜は、ON膜に比べて温度低下によるHF種の吸着促進効果(すなわちエッチングレートの増加量)がより大きいためであると考えられる。
【0087】
<変形例>
本開示の実施形態は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。
【0088】
例えば、工程ST4において、ソースRF信号及び/又はバイアス信号の供給と停止とを繰り返すことに代えて又は加えて、次の処理を行ってもよい。すなわち、工程ST4において、(A1)ソースRF信号及びバイアス信号の供給を行う工程と、(A2)ソースRF信号及びバイアス信号の少なくとも一方の信号を(A1)の工程における当該信号よりも低い電力の実効値で供給する工程と、を交互に繰り返してよい。この場合でもソースRF信号及びバイアス信号を連続して供給する場合に比べて、基板Wの表面温度が低下し得る。これによりソースRF信号及び/又はバイアス信号の供給と停止とを繰り返すことと同様の効果を得ることができる。
【0089】
例えば、工程ST4において、基板W又は基板支持部11の温度を測定してよい。そして、当該測定した温度に基づいて、工程ST4で用いるソースRF信号及び前記バイアス信号の少なくとも一方の信号の出力を調整するようにしてよい。ここで、「信号の出力」は、例えば、信号の電力の実効値、信号の供給時間及び信号のデューティ比の1つ以上であり得る。信号の出力を調整することで、基板Wの温度を調整し得る。例えば、測定した基板Wや基板支持部11の温度が設定値よりも高い場合は、上記信号の出力を下げて(電力の実効値を低くする、供給時間を短くする、デューティ比を小さくする等)基板Wの表面温度を下げるようにしてよい。
【0090】
例えば、工程ST4において、ソースRF信号及び/又はバイアス信号の供給と停止とを繰り返すことに代えて又は加えて、次の処理を行ってもよい。すなわち、ソースRF信号及びバイアス信号を供給して第1のシリコン含有膜及び第2のシリコン含有膜をエッチングする工程であって、当該工程は、(B1)基板W及び/又は基板支持部11の温度を測定する工程と、(B2)当該測定した温度に基づいて、基板W及び/又は基板支持部11の温度を所与の温度以下に制御する工程と、を備えてよい。
【0091】
(B2)の工程における基板W及び/基板支持部11の温度制御は、例えば、ソースRF信号の電力の実効値、供給時間又はデューティ比を調整することで行われてよい。また当該温度制御は、バイアスRF信号の電力の実効値、供給時間又はデューティ比を調整することで行われてもよい。また当該温度制御は、流路1110aを流れる電熱流体の温度又は流量を調整することで行われてもよい。また当該温度制御は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間に供給される伝熱ガスの温度又は流量を調整することで行われてもよい。また当該温度制御は、静電チャック1111と基板Wとの吸着力を調整することで行われてもよい。なお、当該温度制御は、上記のいずれか一つ以上を調整することで行われてもよい。
【0092】
例えば、本処理方法は、容量結合型のプラズマ処理装置1以外にも、誘導結合型プラズマやマイクロ波プラズマ等、任意のプラズマ源を用いたプラズマ処理装置を用いて実行してよい。
【0093】
本開示の実施形態は、以下の態様をさらに含む。
【0094】
(付記1)
チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるデバイス製造方法であって、
(a)第1のシリコン含有膜と、前記第1のシリコン含有膜とは異なる膜種のシリコン含有膜を少なくとも含む第2のシリコン含有膜とを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、
(b)HFガス及びリン含有ガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給する工程と、
(c)前記基板支持部の温度を0℃以下に設定した状態で、ソースRF信号によって前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するとともに、バイアス信号によって前記基板にバイアス電位を発生させることで、前記第1のシリコン含有膜及び前記第2のシリコン含有膜を同時にエッチングする工程と、を含み、
前記(c)の工程において、(c1)前記ソースRF信号及び前記バイアス信号を供給する工程と、(c2)前記ソースRF信号及び前記バイアス信号の供給を停止する工程とを、交互に繰り返す、
デバイス製造方法。
【0095】
(付記2)
チャンバ、前記チャンバ内に設けられた基板支持部、電源を備えるプラズマ処理システムのコンピュータに、
(a)第1のシリコン含有膜と、前記第1のシリコン含有膜とは異なる膜種のシリコン含有膜を少なくとも含む第2のシリコン含有膜とを有する基板を、前記基板支持部上に提供する制御と、
(b)HFガス及びリン含有ガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給する制御と、
(c)前記基板支持部の温度を0℃以下に設定した状態で、ソースRF信号によって前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するとともに、バイアス信号によって前記基板にバイアス電位を発生させることで、前記第1のシリコン含有膜及び前記第2のシリコン含有膜を同時にエッチングする制御と、を実行させ、
前記(c)の制御において、(c1)前記電源から前記ソースRF信号及び前記バイアス信号を供給する制御と、(c2)前記電源からの前記ソースRF信号及び前記バイアス信号の供給を停止する制御とを、交互に繰り返す制御を実行させる、プログラム。
【0096】
(付記3)
付記2に記載のプログラムを格納した、記憶媒体。
【0097】
(付記4)
チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるエッチング方法であって、
(a)第1のシリコン含有膜と、前記第1のシリコン含有膜とは異なる膜種のシリコン含有膜を少なくとも含む第2のシリコン含有膜とを有する基板を、チャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、
(b)HFガス及びリン含有ガスを含む処理ガスを前記チャンバ内に供給する工程と、
(c)ソースRF信号によって前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するとともに、バイアス信号によって前記基板にバイアス電位を発生させることで、前記第1のシリコン含有膜及び前記第2のシリコン含有膜をエッチングする工程と、を含み、
前記(c)の工程は、(c1)前記基板又は前記基板支持部の温度を測定する工程と、(c2)前記測定した温度に基づいて、前記基板又は前記基板支持部の温度を所与の温度以下に制御する工程と、を含む、
エッチング方法。
【符号の説明】
【0098】
1……プラズマ処理装置、2……制御部、10……プラズマ処理チャンバ、10s……プラズマ処理空間、11……基板支持部、13……シャワーヘッド、20……ガス供給部、31a……第1のRF生成部、31b……第2のRF生成部、32a……第1のDC生成部、SF1…第1のシリコン含有膜、SF2…第2のシリコン含有膜、MK…マスク、OP1、OP2…開口、RC1、RC2…凹部、UF…下地膜、W…基板