IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特開-加工装置、及び加工装置の管理方法 図1
  • 特開-加工装置、及び加工装置の管理方法 図2
  • 特開-加工装置、及び加工装置の管理方法 図3
  • 特開-加工装置、及び加工装置の管理方法 図4
  • 特開-加工装置、及び加工装置の管理方法 図5
  • 特開-加工装置、及び加工装置の管理方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152005
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】加工装置、及び加工装置の管理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/414 20060101AFI20231005BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20231005BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231005BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G05B19/414 N
H01L21/02 Z
H01L21/78 A
H01L21/304 601
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061918
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】武石 康行
【テーマコード(参考)】
3C269
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
3C269AB07
3C269AB11
3C269BB07
3C269BB11
3C269CC02
3C269CC15
3C269EF02
3C269KK08
3C269MN07
3C269MN09
3C269MN29
3C269MN47
3C269PP17
3C269QC01
3C269QD02
5F057AA31
5F057BA11
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB11
5F057BB12
5F057DA01
5F057DA11
5F057DA14
5F057GA11
5F057GA27
5F063AA28
5F063BA43
5F063BA44
5F063BA47
5F063BA48
5F063DD01
5F063DD25
5F063DD58
5F063FF01
5F063FF57
(57)【要約】
【課題】加工装置の記憶部に記憶された情報のデータバックアップを容易に、低コストに、かつ、安全に実施する。
【解決手段】被加工物を加工する加工装置であって、制御ユニットと、通信回線を介して外部加工装置と通信できる通信機と、を備え、該制御ユニットは、各種の情報を記憶できる記憶部と、該記憶部に記憶された該情報を含む自己バックアップデータを作成し、該通信機を制御して該自己バックアップデータを該外部加工装置に送信させるバックアップデータ送信制御部と、該通信機を制御して該外部加工装置が送信した他装置バックアップデータを受信させ、受信した該他装置バックアップデータを該記憶部に記憶させるバックアップデータ受信制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する加工装置であって、
該被加工物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、
該保持テーブル及び該加工ユニットを相対的に加工送りする加工送りユニットと、
制御ユニットと、
通信回線を介して外部加工装置と通信できる通信機と、を備え、
該制御ユニットは、
各種の情報を記憶できる記憶部と、
該保持テーブルと、該加工ユニットと、該加工送りユニットと、を制御して該被加工物の加工を遂行させる加工制御部と、
該記憶部に記憶された該情報を含む自己バックアップデータを作成し、該通信機を制御して該自己バックアップデータを該外部加工装置に送信させるバックアップデータ送信制御部と、
該通信機を制御して該外部加工装置が送信した他装置バックアップデータを受信させ、受信した該他装置バックアップデータを該記憶部に記憶させるバックアップデータ受信制御部と、を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該制御ユニットは、該通信機を制御して該外部加工装置から該自己バックアップデータを受信し、該自己バックアップデータに基づいて該情報を復元して該記憶部に記憶させる復元部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
被加工物を加工する加工装置であって、
該被加工物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、
該保持テーブル及び該加工ユニットを相対的に加工送りする加工送りユニットと、
制御ユニットと、
通信回線を介して複数の外部加工装置と通信できる通信機と、を備え、
該制御ユニットは、
各種の情報を記憶できる記憶部と、
該保持テーブルと、該加工ユニットと、該加工送りユニットと、を制御して該被加工物の加工を遂行させる加工制御部と、
該記憶部に記憶された該情報を含む自己バックアップデータを作成し、該通信機を制御して該自己バックアップデータを複数の該外部加工装置の一部または全部に対して送信させるバックアップデータ送信制御部と、
該通信機を制御して複数の該外部加工装置のうち一つまたは複数の該外部加工装置が送信したそれぞれの他装置バックアップデータを受信させ、受信したすべての該他装置バックアップデータを該記憶部に記憶させるバックアップデータ受信制御部と、を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項4】
該制御ユニットは、該通信機を制御して該自己バックアップデータを記憶する該外部加工装置のうち一つから該自己バックアップデータを受信し、該自己バックアップデータに基づいて該情報を復元して該記憶部に記憶させる復元部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の加工装置。
【請求項5】
被加工物を加工する加工装置であって、
該被加工物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、
該保持テーブル及び該加工ユニットを相対的に加工送りする加工送りユニットと、
制御ユニットと、
通信回線を介して複数の外部加工装置と通信できる通信機と、を備え、
該制御ユニットは、
各種の情報を記憶できる記憶部と、
該保持テーブルと、該加工ユニットと、該加工送りユニットと、を制御して該被加工物の加工を遂行させる加工制御部と、
該記憶部に記憶された該情報を含む自己バックアップデータを作成し、該自己バックアップデータを分割して分割自己バックアップデータを作成し、該通信機を制御して複数の該外部加工装置のそれぞれに互いに異なる該分割自己バックアップデータを送信させるバックアップデータ送信制御部と、
該通信機を制御して複数の該外部加工装置がそれぞれ送信した分割他装置バックアップデータを受信させ、該記憶部に該分割他装置バックアップデータを記憶させるバックアップデータ受信制御部と、を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項6】
該制御ユニットは、該通信機を制御して複数の該外部加工装置のそれぞれから該分割自己バックアップデータを受信し、すべての該分割自己バックアップデータに基づいて該自己バックアップデータを作成し、該自己バックアップデータに基づいて該情報を復元して該記憶部に記憶させる復元部をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の加工装置。
【請求項7】
それぞれ情報を記憶できる記憶部を含む制御ユニットを備え、互いに通信回線で接続された複数の加工装置を管理する加工装置の管理方法であって、
複数の該加工装置の該制御ユニットで該記憶部に記憶された該情報を含むバックアップデータを作成する作成ステップと、
複数の該加工装置のそれぞれの該制御ユニットに該通信回線を介して該バックアップデータを他の該加工装置に送信させる送信ステップと、
該通信回線を介して該バックアップデータを受信した該加工装置の該制御ユニットの該記憶部に該バックアップデータを記憶させる記憶ステップと、を備えることを特徴とする加工装置の管理方法。
【請求項8】
該記憶ステップでは、それぞれの該加工装置の該制御ユニットの該記憶部は、互いに異なる一つの該バックアップデータを記憶することを特徴とする請求項7に記載の加工装置の管理方法。
【請求項9】
それぞれ情報を記憶できる記憶部を含む制御ユニットを備え、互いに通信回線で接続された複数の加工装置を管理する加工装置の管理方法であって、
複数の該加工装置の該制御ユニットで該記憶部に記憶された該情報を含むバックアップデータを作成する作成ステップと、
複数の該加工装置の該制御ユニットで該バックアップデータを分割し、複数の分割バックアップデータを作成する分割ステップと、
該制御ユニットに該通信回線を介してそれぞれ異なる該分割バックアップデータを他の複数の該加工装置に送信させる送信ステップと、
該通信回線を介して該分割バックアップデータを受信した該加工装置の該制御ユニットの該記憶部に該分割バックアップデータを記憶させる記憶ステップと、を備えることを特徴とする加工装置の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の被加工物を加工する加工装置と、加工装置に関するデータを保存できるように加工装置を制御する加工装置の管理方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等に組み込まれるデバイスチップの製造工場では、半導体ウェーハや樹脂パッケージ基板に代表される板状の被加工物が様々な加工装置によって加工される。工場等には複数の加工装置が配置され、被加工物が各加工装置で順次加工される。また、同種の複数の加工装置が工場に配置される場合、複数の被加工物を同時並行的に加工できる。
【0003】
加工装置は、例えば、被加工物を円環状の切削ブレードで切削する切削装置(例えば、特許文献1参照)、被加工物をレーザビームで加工するレーザ加工装置、被加工物を研磨パッドで研磨する研磨装置、被加工物を研削砥石で研削する研削装置等である。また、工場等では、被加工物を洗浄する洗浄装置、被加工物に紫外線を照射する紫外線照射装置等の加工装置も使用される場合がある。
【0004】
各加工装置は、それぞれ、被加工物を保持する保持テーブルと、保持テーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、保持テーブル及び加工ユニットを相対的に加工送りする加工送りユニットと、を備える。また、各加工装置は、指令の入力等に使用される入力ユニットと、各種の情報を表示できる表示ユニットと、をさらに備える。
【0005】
さらに、各加工装置には、コンピュータ(マイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ)等で構成される制御ユニットが組み込まれており、制御ユニットが加工装置の各構成要素を制御する。制御ユニットは、各種の情報を記憶できるHDD、SSD、またはフラッシュメモリ等で構成される記憶部を有する。
【0006】
記憶部には、制御ユニットを動作させるOS、各構成要素に所定の動作をさせるためのプログラム、被加工物の種別や加工の目的により使い分けられる加工条件等のさまざまな情報が格納されている。また、加工装置で被加工物を加工すると、各構成要素の動作記録や加工結果の評価結果等のさまざまな情報が作成され、これらが記憶部に格納される。
【0007】
加工装置では、ごく稀に制御ユニットが故障して機能が失われることがある。そして、記憶部に記憶された各種の情報が読み出し不能となり、失われることがある。そこで、記憶部に記憶された情報のデータバックアップ(以下、単にバックアップという)が定期的に実施される。
【0008】
例えば、加工装置においてUSBメモリやDVD―R等の記憶媒体を接続し、記憶部に記憶された情報をこの記憶媒体に書き込み、記憶媒体を加工装置から取り外して保管する。または、工場等に設置されている複数の加工装置を遠隔制御できるサーバ機等が工場に設置されており、サーバ機が各加工装置に接続されている場合、サーバ機にバックアップを実施させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-53432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、各加工装置で定期的にバックアップを実施するのは手間がかかる。また、バックアップデータを保存した記憶媒体の管理も容易ではなく、情報漏洩の防止に配慮した管理体制が必要となる。また、工場等では、各加工装置を遠隔管理できるサーバ機が設置されない場合があり、サーバ機を利用したバックアップを実施できない場合がある。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加工装置の記憶部に記憶された情報のデータバックアップを容易に、低コストに、かつ、安全に実施できる加工装置、及び加工装置の管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、被加工物を加工する加工装置であって、該被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、該保持テーブル及び該加工ユニットを相対的に加工送りする加工送りユニットと、制御ユニットと、通信回線を介して外部加工装置と通信できる通信機と、を備え、該制御ユニットは、各種の情報を記憶できる記憶部と、該保持テーブルと、該加工ユニットと、該加工送りユニットと、を制御して該被加工物の加工を遂行させる加工制御部と、該記憶部に記憶された該情報を含む自己バックアップデータを作成し、該通信機を制御して該自己バックアップデータを該外部加工装置に送信させるバックアップデータ送信制御部と、該通信機を制御して該外部加工装置が送信した他装置バックアップデータを受信させ、受信した該他装置バックアップデータを該記憶部に記憶させるバックアップデータ受信制御部と、を備えることを特徴とする加工装置が提供される。
【0013】
好ましくは、該制御ユニットは、該通信機を制御して該外部加工装置から該自己バックアップデータを受信し、該自己バックアップデータに基づいて該情報を復元して該記憶部に記憶させる復元部をさらに備える。
【0014】
本発明の他の一態様によると、被加工物を加工する加工装置であって、該被加工物を保持する該保持テーブルと、保持テーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、該保持テーブル及び該加工ユニットを相対的に加工送りする加工送りユニットと、制御ユニットと、通信回線を介して複数の外部加工装置と通信できる通信機と、を備え、該制御ユニットは、各種の情報を記憶できる記憶部と、該保持テーブルと、該加工ユニットと、該加工送りユニットと、を制御して該被加工物の加工を遂行させる加工制御部と、該記憶部に記憶された該情報を含む自己バックアップデータを作成し、該通信機を制御して該自己バックアップデータを複数の該外部加工装置の一部または全部に対して送信させるバックアップデータ送信制御部と、該通信機を制御して複数の該外部加工装置のうち一つまたは複数の該外部加工装置が送信したそれぞれの他装置バックアップデータを受信させ、受信したすべての該他装置バックアップデータを該記憶部に記憶させるバックアップデータ受信制御部と、を備えることを特徴とする加工装置が提供される。
【0015】
好ましくは、該制御ユニットは、該通信機を制御して該自己バックアップデータを記憶する複数の該外部加工装置のうち一つから該自己バックアップデータを受信し、該自己バックアップデータに基づいて該情報を復元して該記憶部に記憶させる復元部をさらに備える。
【0016】
本発明のさらに他の一態様によると、被加工物を加工する加工装置であって、該被加工物を保持する該保持テーブルと、保持テーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、該保持テーブル及び該加工ユニットを相対的に加工送りする加工送りユニットと、制御ユニットと、通信回線を介して複数の外部加工装置と通信できる通信機と、を備え、該制御ユニットは、各種の情報を記憶できる記憶部と、該保持テーブルと、該加工ユニットと、該加工送りユニットと、を制御して該被加工物の加工を遂行させる加工制御部と、該記憶部に記憶された該情報を含む自己バックアップデータを作成し、該自己バックアップデータを分割して分割自己バックアップデータを作成し、該通信機を制御して複数の該外部加工装置のそれぞれに互いに異なる該分割自己バックアップデータを送信させるバックアップデータ送信制御部と、該通信機を制御して複数の該外部加工装置がそれぞれ送信した分割他装置バックアップデータを受信させ、該記憶部に該分割他装置バックアップデータを記憶させるバックアップデータ受信制御部と、を備えることを特徴とする加工装置が提供される。
【0017】
好ましくは、該制御ユニットは、該通信機を制御して複数の該外部加工装置のそれぞれから該分割自己バックアップデータを受信し、すべての該分割自己バックアップデータに基づいて該自己バックアップデータを作成し、該自己バックアップデータに基づいて該情報を復元して該記憶部に記憶させる復元部をさらに備える。
【0018】
また、本発明の別の一態様によると、それぞれ情報を記憶できる記憶部を含む制御ユニットを備え、互いに通信回線で接続された複数の加工装置を管理する加工装置の管理方法であって、複数の該加工装置の該制御ユニットで該記憶部に記憶された該情報を含むバックアップデータを作成する作成ステップと、複数の該加工装置のそれぞれの該制御ユニットに該通信回線を介して該バックアップデータを他の該加工装置に送信させる送信ステップと、該通信回線を介して該バックアップデータを受信した該加工装置の該制御ユニットの該記憶部に該バックアップデータを記憶させる記憶ステップと、を備えることを特徴とする加工装置の管理方法が提供される。
【0019】
好ましくは、該記憶ステップでは、それぞれの該加工装置の該制御ユニットの該記憶部は、互いに異なる一つの該バックアップデータを記憶する。
【0020】
また、本発明のさらに別の一態様によると、それぞれ情報を記憶できる記憶部を含む制御ユニットを備え、互いに通信回線で接続された複数の加工装置を管理する加工装置の管理方法であって、複数の該加工装置の該制御ユニットで該記憶部に記憶された該情報を含むバックアップデータを作成する作成ステップと、複数の該加工装置の該制御ユニットで該バックアップデータを分割し、複数の分割バックアップデータを作成する分割ステップと、該制御ユニットに該通信回線を介してそれぞれ異なる該分割バックアップデータを他の複数の該加工装置に送信させる送信ステップと、該通信回線を介して該分割バックアップデータを受信した該加工装置の該制御ユニットの該記憶部に該分割バックアップデータを記憶させる記憶ステップと、を備えることを特徴とする加工装置の管理方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様に係る加工装置、及び加工装置の管理方法では、通信回線を介して加工装置を外部加工装置に接続し、加工装置の記憶部に記憶された情報のバックアップを外部加工装置の記憶部に実施させる。そのため、バックアップのために記憶媒体を準備する必要がなく、記憶媒体を加工装置に運ぶ手間やバックアップデータが書き込まれた記憶媒体を管理する必要もない。加工装置が置かれた領域の外にバックアップデータが持ち出されることもないため、情報漏洩のリスク増も限定的である。
【0022】
したがって、本発明の一態様によると、加工装置の記憶部に記憶された情報のデータバックアップを容易に、低コストに、かつ、安全に実施できる加工装置、及び加工装置の管理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】加工装置を模式的に示す斜視図である。
図2】複数の加工装置を模式的に示す斜視図である。
図3】複数の加工装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図4図4(A)は、バックアップデータの保存態様の一例を模式的に示すブロック図であり、図4(B)は、バックアップデータの保存態様の他の一例を模式的に示すブロック図である。
図5図5(A)は、バックアップデータの保存態様の一例を模式的に示すブロック図であり、図5(B)は、バックアップデータの保存態様の他の一例を模式的に示すブロック図である。
図6図6(A)は、一例に係る加工装置の管理方法の各ステップの流れを説明するフローチャートであり、図6(B)は、他の一例に係る加工装置の管理方法の各ステップの流れを説明するフローチャートであり、図6(C)は、さらに他の一例に係る加工装置の管理方法の各ステップの流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る加工装置、及び加工装置の管理方法では、加工装置の制御ユニットの記憶部に記憶された情報のバックアップデータを外部加工装置(他の加工装置)の制御ユニットの記憶部に記憶させる。まず、加工装置について説明する。図1は、加工装置2を模式的に示す斜視図である。
【0025】
加工装置2は、例えば、半導体ウェーハ等の基板を被加工物とし、被加工物を加工ユニットで加工する。図1には、板状の被加工物1が模式的に示されている。被加工物は、例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体等の材料から形成されるウェーハである。または、被加工物は、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる略円板状の基板等である。
【0026】
被加工物の表面には、互いに交差する複数の分割予定ラインが設定される。分割予定ラインで区画された各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成されている。被加工物を裏面側から研削して薄化し、研削面を研磨して平坦化し、分割予定ラインに沿って被加工物を分割すると、個々のデバイスチップを形成できる。ただし、被加工物はこれに限定されない。
【0027】
本実施形態に係る加工装置2は、例えば、分割予定ラインに沿って被加工物を切削ブレードで切削して分割する切削装置である。または、分割予定ラインに沿って被加工物をレーザ加工して分割するレーザ加工装置である。また、加工装置2は、被加工物を研削する研削装置でもよく、被加工物を研磨する研磨装置でもよい。さらに、加工装置2はこれらに限定されず、他の加工装置でもよく、半導体ウェーハ以外の被加工物を加工してもよい。以下、加工装置2が切削装置である場合を例に説明する。
【0028】
加工装置2は、各構成要素を支持する基台4と、基台4に支持された各構成要素を覆う筐体6と、備える。筐体6に覆われていない基台4の一角には、カセット支持台8が設けられている。カセット支持台8の上面には、複数の被加工物を収容するカセットが搭載される。
【0029】
加工装置2の外面には、タッチパネル付きディスプレイ10が設けられている。タッチパネル付きディスプレイ10は、各種の情報及び操作画面を表示する。作業者は、表示画面を表示するタッチパネル付きディスプレイ10の所定の位置をタッチすることで加工装置2に各種の指令を入力できる。すなわち、タッチパネル付きディスプレイ10は、各種の指令の入力に使用される入力ユニット(入力インターフェース)として機能するとともに、各種の情報を表示する表示ユニットとしても機能する。
【0030】
加工装置2の筐体6の内側は、加工室12となっている。加工装置2は、加工室12で被加工物を加工(切削)する。加工室12には被加工物を吸引保持できるチャックテーブル(保持テーブル)14が収容されている。チャックテーブル14は、図示しない加工送りユニット(X軸移動機構)によって加工送り方向(X軸方向)に移動する。また、チャックテーブル14はモータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転する。
【0031】
なお、加工送りユニットは、チャックテーブル14に代えて、または、チャックテーブル14とともに、後述の加工ユニット16を移動させてもよい。すなわち、加工送りユニットは、チャックテーブル14及び加工ユニット16を相対的に移動させる。
【0032】
チャックテーブル14の上面14aは、被加工物を吸引保持する保持面となっている。チャックテーブル14の上面14aは、X軸方向及びY軸方向に対して概ね平行に形成されており、チャックテーブル14の内部に設けられた吸引路(不図示)等を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0033】
加工室12の内部には、チャックテーブル14で保持された被加工物を加工(切削)する加工ユニット(切削ユニット)16が収容されている。加工ユニット16は、図示しない昇降ユニット(Z軸移動機構)及び割り出し送りユニット(Y軸移動機構)に支持されており、上下方向(Z軸方向)及び割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能である。
【0034】
加工ユニット16は、チャックテーブル14の上面14aに平行で該チャックテーブル14の上方に配置されたスピンドル18を有する。スピンドル18は、Y軸方向に沿って配設されている。加工ユニット16は、スピンドル18の基端に接続されたモータ等で構成される回転駆動源(不図示)と、スピンドル18の先端に装着された加工具(切削ブレード)20と、をさらに有する。
【0035】
加工装置2で被加工物を切削する場合、まず、カセット支持台8に載せられたカセットから被加工物を搬出し、チャックテーブル14の上面14aに被加工物を載せ、チャックテーブル14で被加工物を吸引保持する。そして、チャックテーブル14を回転させて、被加工物の分割予定ラインの向きを加工送り方向(X軸方向)に合わせる。また、加工ユニット16の高さを調整し、加工具(切削ブレード)20を高速で回転させる。
【0036】
その後、チャックテーブル14を加工送り方向に沿って移動させ、分割予定ラインに沿って加工具20を被加工物に切り込ませ、被加工物を切削する。次に、加工ユニット16を割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って移動させ、他の分割予定ラインに沿って次々に被加工物を切削する。
【0037】
そして被加工物の一つの方向に沿ったすべての分割予定ラインに沿って被加工物を切削した後、チャックテーブル14を回転させ、他の方向に沿った分割予定ラインを同様に切削する。そして、被加工物に設定されたすべての分割予定ラインに沿って被加工物が切削されると、加工装置2における切削加工が終了する。
【0038】
加工装置2は、各構成要素を制御して被加工物の加工を遂行する制御ユニット22を備える。制御ユニット22は、各構成要素に接続されている。制御ユニット22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニット22の機能が実現される。
【0039】
制御ユニット22は、各種の情報を記憶できる記憶部24を有する。記憶部24には、制御ユニット22を動作させるOS、各構成要素に所定の動作をさせるためのプログラム、被加工物の種別や加工の目的により使い分けられる加工条件等のさまざまな情報が格納されている。
【0040】
例えば、加工条件には、加工具(切削ブレード)20の型式、加工具の回転数、チャックテーブル14及び加工ユニット16の相対的な加工送り速度や割り出し送り量、被加工物に対する加工具の切り込み深さ等が含まれる。また、加工条件には、冷却や洗浄等の目的で加工具20等の供給される加工液の供給量、被加工物を吸引保持するチャックテーブル14の負圧、スピンドル18を回転させるモータの負荷電流値等が含まれても良い。
【0041】
制御ユニット22は、チャックテーブル(保持テーブル)14と、加工ユニット16と、加工送りユニットと、を制御して被加工物の加工を遂行させる加工制御部26をさらに備える。加工制御部26は、被加工物の種別や目的の加工結果に適した加工条件を記憶部24から読み出し、加工条件に従って所定の手順で各構成要素を制御して加工装置2における加工を遂行する。
【0042】
また、加工装置2で被加工物を加工すると、各構成要素の動作記録や加工結果の評価結果等のさまざまな情報が作成され、これらが記憶部24に格納され保存される。例えば、加工装置2は、チャックテーブル14に保持された被加工物の表面を撮像する撮像ユニット(不図示)を備え、撮像ユニットで加工後の被加工物の表面を撮像して撮像画像から加工結果の良否を判定する。この場合、判定結果や撮像画像は、記憶部24に蓄積される。
【0043】
さらに、加工装置2では、スピンドル18を回転させるモータの負荷電流値が監視されてもよく、負荷電流値の推移が記憶部24に蓄積されてもよい。この場合、後に被加工物に問題が検出されたときに記憶部24に記憶された負荷電流値の推移を読み出すと、問題の原因の検証が可能となる。このように、記憶部24には、様々な情報が記憶される。
【0044】
ところで、加工装置2では、ごく稀に制御ユニット22が故障して機能が失われることがある。そして、記憶部24に記憶された各種の情報が読み出し不能となり、大きな損害となることがある。そこで、記憶部24に記憶された情報のバックアップが望まれる。そして、制御ユニット22を復旧したのちにバックアップデータから情報を復元し、これを記憶部24に再び記憶させることで、加工装置2を復旧できる。
【0045】
バックアップの方法としては、例えば、加工装置2にUSBメモリやDVD―R等の記憶媒体を接続し、記憶部24に記憶された情報をバックアップデータとしてこの記憶媒体に書き込み、この記憶媒体を保管する。または、工場等に所属の複数の加工装置2を遠隔制御できるサーバ機等が当該工場に設置されサーバ機が各加工装置2に接続されている場合、サーバ機にバックアップを実施させ、サーバ機の記憶部にバックアップデータを書き込む。
【0046】
しかしながら、デバイスチップの製造工場等に設置された各加工装置2で定期的にバックアップを実施するのは手間がかかる。また、バックアップデータを保存した記憶媒体の管理も容易ではなく、情報漏洩の防止に配慮した管理体制が必要となる。また、工場等では、各加工装置2を遠隔管理できるサーバ機が設置されない場合があり、サーバ機を利用したバックアップを実施できない場合がある。
【0047】
そこで、本実施形態に係る加工装置2及びその管理方法では、加工装置2の記憶部24に記憶された情報のデータバックアップを容易に、低コストに、かつ、安全に実施するために、外部加工装置(他の加工装置)の記憶部をバックアップに使用する。以下、データバックアップを関連する本実施形態に係る加工装置2の構成及びその管理方法を中心に説明を続ける。
【0048】
加工装置2は、通信回線を介して他の加工装置(外部加工装置)と通信できる通信機34を備える。ここで、他の加工装置(外部加工装置)とは、ある加工装置2に着目したときの加工装置2以外の加工装置のことをいい、加工装置2が設置された工場の内外に置かれた他の加工装置を指す。そして、バックアップに使用される他の加工装置(外部加工装置)の構成や設置場所等に限定はない。
【0049】
通信機34は、所定の規格による有線通信回線または無線通信回線を介して外部加工装置とデータの送受信を行う送受信器である。通信機34は、例えば、無線LAN回線を通じて外部加工装置の通信機との間で通信を行う。ただし、通信機34の形態はこれに限定されない。
【0050】
通信機34は、制御ユニット22に接続されており、制御ユニット22から送られた情報を通信回線を介して外部加工装置に送信する機能と、通信回線を介して外部加工装置から受信した情報を制御ユニット22に送る機能と、を有する。また、制御ユニット22は、通信機34を制御して情報の送受信をさせる機能を備える。
【0051】
そして、制御ユニット22は、記憶部24に記憶された情報を含む自己バックアップデータを作成し、通信機34を制御してこの自己バックアップデータを他の加工装置(外部加工装置)に送信させるバックアップデータ送信制御部28を備える。また、制御ユニット22は、通信機34を制御して他の加工装置(外部加工装置)が送信した他装置バックアップデータを受信させ、受信した該他装置バックアップデータを記憶部24に記憶させるバックアップデータ受信制御部30を備える。
【0052】
ここで、自己バックアップデータとは、加工装置2の制御ユニット22の記憶部24に記憶された情報のバックアップのために作成されるデータである。また、他装置バックアップデータとは、外部加工装置の制御ユニットの記憶部に記憶された情報のバックアップのために作成されたデータである。
【0053】
加工装置2における自己バックアップデータは、これを記憶する記憶部を含む外部加工装置においては他装置バックアップデータとなる。逆に、加工装置2における他装置バックアップデータは、これを送信する外部加工装置においては自己バックアップデータとなる。すなわち、自己バックアップデータ及び他装置バックアップデータの語は、使用の場面に応じて適宜読み替え可能である。
【0054】
図2は、通信機34aを備える加工装置2aが工場等に設置された他の加工装置(外部加工装置)2b,2c,2dの通信機34b,34c,34dと通信回線36を介して接続される様子を模式的に示す斜視図である。図3は、各加工装置2a,2b,2c,2dの簡略化された構成を模式的に示すブロック図である。通信機34aは、通信機34b,34c,34dに接続され、情報の送受信を行う。
【0055】
ここで、加工装置2aの制御ユニット22aの記憶部24aに記憶された情報のバックアップの手順について説明する。下記の手順は、他の加工装置2b,2c,2dの記憶部24b,24c,24dのバックアップの手順として適宜読み替え可能である。
【0056】
まず、制御ユニット22aのバックアップデータ送信制御部28(図3において不図示)は、記憶部24aに記憶された情報のうちバックアップの対象となる情報を記憶部24aから読み出し、自己バックアップデータを作成する。
【0057】
なお、自己バックアップデータとされる情報は、記憶部24aに記憶されたすべての情報である必要はない。例えば、加工装置2aが有する固有の情報であると要保護性が高く、他の加工装置等も持つ汎用的な情報であると要保護性が低い。また、例えば、加工装置2aで実施された加工のログ情報、加工された被加工物が写る画像、加工結果の評価等は要保護性が比較的高く、加工制御部26が構成要素を制御するための一般的な加工条件、制御ユニット22のOSソフト等は要保護性が比較的低い。
【0058】
また、自己バックアップデータに含まれる情報は、当該情報の容量(データサイズ)により選択されてもよい。例えば、加工装置2aが有する固有の情報のうち加工された被加工物が写る画像の容量は比較的大きく、撮像画像を含む自己バックアップデータが外部加工装置の記憶部に記憶されたときにこの記憶部の記憶領域を圧迫する。そこで、自己バックアップデータに含まれる情報から撮像画像が除外されてもよい。
【0059】
バックアップデータ送信制御部28は、通信機34aで通信回線36を介して自己バックアップデータを他の加工装置(外部加工装置)2b,2c,2dに送信する。そして、他の加工装置2a,2b,2dのバックアップデータ受信制御部30は、送信されてきたこの自己バックアップデータを他装置バックアップデータとして通信機34b,34c,34dに受信させる。バックアップデータ受信制御部30は、この他装置バックアップデータを記憶部24b,24c,24dに記憶させる。
【0060】
これにより、他の加工装置(外部加工装置)2b,2c,2dによる加工装置2aのバックアップが完了する。逆に、加工装置2aは、他の加工装置2b,2c,2dからバックアップデータを受信し、これを記憶部24aで記憶することにより、他の加工装置2b,2c,2dのバックアップを実施できる。
【0061】
このように、本実施形態に係る加工装置2は、外部加工装置を利用して記憶部24に記憶された情報のバックアップを実施する。そのため、記憶媒体を加工装置2に接続してバックアップデータを記憶させる必要がなく、加工装置2が置かれた工場を統括制御するサーバ機等を利用してバックアップを実施する必要もない。
【0062】
なお、加工装置2の管理者等は、加工装置2に何らかの異常が生じたとき、加工装置2の状態を確認しつつタッチパネル付きディスプレイ10を使用して制御ユニット22を操作して加工装置2の復旧を試みる。このときに記憶部24が記憶する情報の一部または全部が失われたことを察知した場合、この管理者等は、制御ユニット22に情報の復元動作を実施させる。
【0063】
例えば、制御ユニット22は、通信機34を制御して外部加工装置から自己バックアップデータを受信し、自己バックアップデータに基づいて該情報を復元して記憶部24に記憶させる復元部32(図1参照)をさらに備えるとよい。復元部32は、通信機34で通信回線36を介して外部加工装置と通信し、外部加工装置に送信していた自己バックアップデータを外部加工装置に送信させ、これを通信機34に受信させる。そして、自己バックアップデータに基づいて失われた情報を復元して記憶部24に記憶させる。
【0064】
より詳細には、復元部32は、自己バックアップデータが記憶部24に記憶されていた情報そのものである場合、自己バックアップデータを当該情報として記憶部24に記憶させる。または、復元部32は、自己バックアップデータが圧縮データや暗号化されたデータ等である場合、元の形式に戻して記憶部24に記憶させる。すなわち、自己バックアップデータ等は、記憶部24に記憶されていた情報とは異なる形式のデータとされてもよい。
【0065】
次に、本実施形態に係る加工装置2が並ぶ工場等で実施されるバックアップの全体像について、複数の態様を説明する。図4(A)は、工場等に設置された2つの加工装置2a,2bの制御ユニット22a,22bの記憶部24a,24bに記憶されるバックアップデータを模式的に示すブロック図である。
【0066】
図4(A)に示す例では、2つの記憶部24a,24bが互いのバックアップに使用される。すなわち、一方の加工装置2aのバックアップデータAを他方の加工装置2bの制御ユニット22bの記憶部24bに記憶させ、他方の加工装置2bのバックアップデータBを当該一方の加工装置2aの制御ユニット22aの記憶部24aに記憶させる。これにより、各加工装置2a,2bは相互にバックアップできる。
【0067】
ここで、バックアップデータAは、加工装置2aの自己バックアップデータであるとともに、加工装置2bにおける他装置バックアップデータである。また、バックアップデータBは、加工装置2bの自己バックアップデータであるとともに、加工装置2aにおける他装置バックアップデータである。
【0068】
工場等に3以上の加工装置2が設置されている場合、各加工装置2は、他のすべての加工装置のバックアップをしてもよい。図4(B)は、工場等に設置された4つの加工装置2a,2b,2c,2dの制御ユニット22a,22b,22c,22dの記憶部24a,24b,24c,24dに記憶されるバックアップデータを模式的に示すブロック図である。
【0069】
図4(B)に示す例では、4つの記憶部24a,24b,24c,24dのそれぞれが他の記憶部24a,24b,24c,24dのバックアップに使用される。すなわち、加工装置2aのバックアップデータAを加工装置2b,2c,2dの制御ユニット22b,22c,22dの記憶部24b,24c,24dに記憶させる。また、加工装置2bのバックアップデータBを加工装置2a,2c,2dの制御ユニット22a,22c,22dの記憶部24a,24c,24dに記憶させる。
【0070】
さらに、加工装置2cのバックアップデータCを加工装置2a,2b,2dの制御ユニット22a,22b,22dの記憶部24a,24b,24dに記憶させる。また、加工装置2dのバックアップデータDを加工装置2a,2b,2cの制御ユニット22a,22b,22cの記憶部24a,24b,24cに記憶させる。
【0071】
これにより、工場等に設置された加工装置のうち複数の加工装置において同時に記憶部24a,24b,24c,24dに記憶された情報が失われた場合にも、失われた情報の復元が可能となる。ただし、各加工装置2a,2b,2c,2dがそれぞれ他の加工装置2a,2b,2c,2dのバックアップをする場合、各記憶部24a,24b,24c,24dにバックアップのために記憶されるデータの容量が極めて大きくなる。
【0072】
そこで、例えば、各加工装置2a,2b,2c,2dがそれぞれ他の一つの加工装置2a,2b,2c,2dのバックアップをしてもよい。図5(A)は、工場等に設置された4つの加工装置2a,2b,2c,2dの制御ユニット22a,22b,22c,22dの記憶部24a,24b,24c,24dに記憶されるバックアップデータを模式的に示すブロック図である。
【0073】
図5(A)に示す例では、4つの記憶部24a,24b,24c,24dのそれぞれが他の記憶部24a,24b,24c,24dのうち一つのバックアップに使用される。例えば、加工装置2aのバックアップデータAを加工装置2bの制御ユニット22bの記憶部24bに記憶させる。また、加工装置2bのバックアップデータBを加工装置2cの制御ユニット22cの記憶部24cに記憶させる。
【0074】
さらに、加工装置2cのバックアップデータCを加工装置2dの制御ユニット22dの記憶部24dに記憶させる。また、加工装置2dのバックアップデータDを加工装置2aの制御ユニット22aの記憶部24aに記憶させる。これにより、工場等に設置された加工装置のうちいずれか一つの加工装置において記憶部24a,24b,24c,24dに記憶された情報が失われた場合に、失われた情報に係るバックアップデータを記憶部で記憶する外部加工装置により情報の復元が可能となる。
【0075】
この場合、2以上の加工装置2a,2b,2c,2dが同時期に故障して記憶部24a,24b,24c,24dの情報が失われない限り、情報の復元が可能である。そして、工場等に設置された2以上の加工装置2a,2b,2c,2dが同時期に故障することは稀であるため、このようなバックアップ体制でもリスクは十分に小さい。その一方で、工場に設置される加工装置の数がどれだけ増えたとしても各記憶部24a,24b,24c,24dの容量は圧迫されず、容量の問題は生じない。
【0076】
なお、加工装置2の記憶部24のバックアップデータを保存する外部加工装置の数は、工場に設置された外部加工装置の数から自身の1を引いた数でなくてもよく、1つでなくてもよい。例えば、各記憶部24のバックアップデータは、2以上の所定の数の外部加工装置の記憶部がそれぞれ記憶してもよい。
【0077】
より詳細に説明する。各加工装置2のバックアップデータ送信制御部28は、記憶部24に記憶された情報を含む自己バックアップデータを作成し、通信機34を制御して該自己バックアップデータを複数の他の加工装置(外部加工装置)2の一部または全部に対して送信させる。
【0078】
そして、各加工装置2のバックアップデータ受信制御部30は、通信機34を制御して複数の他の加工装置(外部加工装置)2のうち一つまたは複数が送信したそれぞれの他装置バックアップデータを受信させる。そして、受信したすべての該他装置バックアップデータを記憶部24に記憶させる。
【0079】
また、各加工装置2の復元部32は、通信機34を制御して自己バックアップデータを記憶する他の加工装置2のうち少なくとも一つから該自己バックアップデータを受信し、該自己バックアップデータに基づいて情報を復元して記憶部24に記憶させる。
【0080】
ただし、加工装置2の記憶部24が記憶する他装置バックアップデータが多くなるほど、すなわち、一つの加工装置2のバックアップに使用される外部加工装置が多くなるほど、セキュリティーリスクは増大する。
【0081】
例えば、工場で稼働するネットワークや工場そのものに情報の窃取を目的とした侵入者が入り込み1台の加工装置2の制御ユニット22に対して不正なアクセスをする。このとき、当該加工装置2の記憶部24に記憶された当該加工装置2に関する情報のみならず、この記憶部24に記憶された他装置バックアップデータが窃取される可能性がある。そのため、加工装置2が外部加工装置をバックアップに使用したり、他装置バックアップデータを記憶部24で記憶したりすることのリスクに対する対策が望まれる。
【0082】
そこで、バックアップデータ送信制御部28は、1台の加工装置2の記憶部24に記憶された情報を含む自己バックアップデータを複数に分割して個々の分割自己バックアップデータを作成するとよい。そして、通信機34を制御して複数の他の加工装置(外部加工装置)のそれぞれに互いに異なる分割自己バックアップデータを送信させるとよい。
【0083】
図5(B)は、工場等に設置された4つの加工装置2a,2b,2c,2dの制御ユニット22a,22b,22c,22dの記憶部24a,24b,24c,24dに記憶されるバックアップデータを模式的に示すブロック図である。図5(B)を用いて分割自己バックアップデータの保存体制について説明する。
【0084】
図5(B)に示す例では、自己バックアップデータは加工装置2aにおいて外部加工装置の数である3つに分割され、分割自己バックアップデータ(バックアップデータA1,A2,A3)が作成される。そして、バックアップデータA1が加工装置2bの記憶部24bに、バックアップデータA2が加工装置2cの記憶部24cに、バックアップデータA3が加工装置2dの記憶部24dに、それぞれ送られて分割他装置バックアップデータとして記憶される。
【0085】
同様に、加工装置2bにおいても、3つの分割自己バックアップデータ(バックアップデータB1,B2,B3)が作成される。そして、バックアップデータB1が加工装置2aの記憶部24aに、バックアップデータB2が加工装置2cの記憶部24cに、バックアップデータB3が加工装置2dの記憶部24dに、それぞれ送られて分割他装置バックアップデータとして記憶される。
【0086】
そして、加工装置2cにおいて、3つの分割自己バックアップデータ(バックアップデータC1,C2,C3)が作成される。バックアップデータC1が加工装置2aの記憶部24aに、バックアップデータC2が加工装置2bの記憶部24bに、バックアップデータC3が加工装置2dの記憶部24dに、それぞれ送られて分割他装置バックアップデータとして記憶される。
【0087】
また、加工装置2dにおいて、3つの分割自己バックアップデータ(バックアップデータD1,D2,D3)が作成される。バックアップデータD1が加工装置2aの記憶部24aに、バックアップデータD2が加工装置2bの記憶部24bに、バックアップデータD3が加工装置2cの記憶部24cに、それぞれ送られて分割他装置バックアップデータとして記憶される。
【0088】
この場合、分割他装置バックアップデータとして、記憶部24aにはバックアップデータB1,C1,D1が記憶され、記憶部24にはバックアップデータA1,C2,D2が記憶される。また、記憶部24cにはバックアップデータA2,B2,D3が記憶され、記憶部24dにはバックアップデータA3,B3,C3が記憶される。すなわち、各記憶部24a,24b,24c,24dにおいて、それぞれのバックアップデータが分割保存される。
【0089】
そして、いずれかの加工装置2に故障が生じ記憶部24に記憶された情報が失われたとき、復元部32は、通信機34を制御して複数の外部加工装置のそれぞれから分割自己バックアップデータを受信する。そして、すべての分割自己バックアップデータに基づいて自己バックアップデータを作成し、この自己バックアップデータに基づいて失われた情報を復元して記憶部24に記憶させる。逆にいえば、すべての分割自己バックアップデータが揃わなければ自己バックアップデータを作成できない。
【0090】
例えば、加工装置2cに対する不正なアクセスが生じ、記憶部24cに記憶された情報が窃取される場合について検討する。このとき、記憶部24cに記憶された加工装置2cに関する情報は漏洩する。しかしながら、記憶部24cに記憶されたバックアップデータA2,B2,D3だけでは、すなわち、一部の分割自己バックアップデータだけが存在するだけでは、記憶部24a,24b,24dに記憶された情報を復元できない。
【0091】
例えば、分割自己バックアップデータが単に自己バックアップデータを分割したものである場合、漏洩した分割自己バックアップデータに基づいて一部の情報の復元が可能であるかもしれない。しかしながら、分割自己バックアップデータが暗号化されていたり、単独では一部の情報の復元もできない形態で自己バックアップデータが分割されていたりした場合、漏洩した分割自己バックアップデータに基づいた一部の情報の復元も防止できる。
【0092】
このように、加工装置2の記憶部24に記憶された情報に係るバックアップデータが分割され、各外部加工装置にそれぞれ互いに異なる分割バックアップデータが保存される場合、情報のバックアップに起因するセキュリティーのリスク増は極めて小さくなる。また、バックアップデータが分割されていると、バックアップのために占有される各記憶部24の容量も限定的である。
【0093】
なお、仮に工場等に設置されたすべての加工装置2から情報の窃取がされた場合、分割されたすべてのバックアップデータが揃うことになり、分割されたバックアップデータを統合することによる情報の作成が可能となる。しかしながらこのとき、窃取の実行者においては、既に各加工装置2に関する情報をそれぞれから直接的に取得できていることになるため、バックアップデータを使用して新たに得られる情報はない。したがって、やはり、情報のバックアップに起因するセキュリティーのリスク増は極めて小さいといえる。
【0094】
次に、本実施形態に係る加工装置の管理方法について説明する。この加工装置の管理方法は、工場等に設置された複数の加工装置2の制御ユニットに記憶された情報のバックアップの方法に関する。すなわち、それぞれ情報を記憶できる記憶部24を含む制御ユニット22を備え、互いに通信回線36で接続された複数の加工装置2を管理する加工装置の管理方法について、以下に説明する。図6(A)は、本実施形態に係る加工装置の管理方法の各ステップのフローを説明するフローチャートである。
【0095】
まず、複数の加工装置2の制御ユニット22で記憶部24に記憶された情報を含むバックアップデータを作成する作成ステップS10を実施する。次に、バックアップデータを作成した加工装置2の制御ユニット22に通信回線36を介して該バックアップデータを他の加工装置2に送信させる送信ステップS20を実施する。作成ステップS10及び送信ステップS20は、例えば、各加工装置2の制御ユニット22のバックアップデータ送信制御部28により遂行される。
【0096】
なお、送信ステップS20において、各加工装置2は、バックアップデータを他のすべての加工装置2に送信してもよい。ただし、送信ステップS20はこれに限定されず、各加工装置2は、バックアップデータを他の加工装置2の一つに送信してもよく、複数の加工装置2に送信してもよい。
【0097】
送信ステップS20の後、通信回線36を介してバックアップデータを受信した加工装置2の記憶部24に該バックアップデータを記憶させる記憶ステップS30を実施する。記憶ステップS30では、それぞれの加工装置2の記憶部24が他のすべての加工装置2のバックアップデータを記憶してもよく、複数の又は互いに異なる一つのバックアップデータを記憶してもよい。
【0098】
さらに、本実施形態に係る加工装置の管理方法では、加工装置2の記憶部24に記憶された情報のバックアップデータが上述の通り分割されて他の加工装置2の記憶部24に記憶されてもよい。図6(B)は、この場合における加工装置の加工方法の各ステップの流れを説明するフローチャートである。この場合、作成ステップS10が実施されて各加工装置2のバックアップデータが作成された後、分割ステップS40が実施されるとよい。
【0099】
分割ステップS40では、複数の加工装置2の制御ユニット22でバックアップデータを分割し、複数の分割バックアップデータを作成する。例えば、各加工装置2のバックアップデータ送信制御部28は、工場等に設置された加工装置2の数から自身を示す1を引いた数でバックデータを分割する。ただし、分割バックアップデータの数はこれに限定されず、この数よりも小さい数でバックアップデータが分割されてもよい。
【0100】
分割ステップS40が実施されて分割バックアップデータが作成された場合、次に実施される送信ステップS20では、複数の加工装置2の制御ユニット22に通信回線36を介してそれぞれ異なる分割バックアップデータを他の複数の加工装置2に送信させる。そして、次に実施される記憶ステップS30では、通信回線36を介して分割バックアップデータを受信した加工装置2の制御ユニット22の記憶部24に該分割バックアップデータを記憶させる。
【0101】
次に、加工装置2が何らかの原因で故障して記憶部24に記憶されていた情報が失われた際に、他の加工装置2の記憶部24に記憶されたバックアップデータにより当該情報を復元する手順について説明する。すなわち、バックアップデータから記憶部24に記憶された情報を復元する加工装置の管理方法について説明する。図6(C)は、情報を復元する加工装置の管理方法の各ステップの流れを示すフローチャートである。
【0102】
まず、工場等に設置された複数の加工装置2から、記憶部24の情報の復元が必要となる加工装置2を特定する。そして、この加工装置2の制御ユニット22により、他の加工装置2の制御ユニット22の記憶部24に記憶されたバックアップデータを受信する受信ステップS50を実施する。
【0103】
受信ステップS50は、例えば、制御ユニット22の復元部32により実施される。復元部32は、通信機34を制御して通信回線36を介して他の加工装置2の制御ユニット22と通信し、他の加工装置2の制御ユニット22に情報の復元に必要なバックアップデータを送信するよう指令を送る。指令を受けた当該他の加工装置2の制御ユニット22は、通信機34を制御して通信回線36を介して記憶部24に記憶されたバックアップデータを送信する。
【0104】
そして、他の加工装置2からバックアップデータが送信されたとき、情報の復元が実施される加工装置2の制御ユニット22の復元部32は、バックアップデータを通信機34で受信する。そして、受信したバックアップデータに基づいて記憶部24に記憶されていた情報を復元し、これを記憶部24に記憶させる復元ステップS60を実施する。これにより、他の加工装置2で保存していたバックアップデータに基づいた情報の復元が実施される。
【0105】
なお、加工装置2の記憶部24が記憶する情報の分割バックアップデータが他の複数の加工装置2の記憶部24に記憶されている場合、受信ステップS50では、復元部32は、他の各加工装置2から分割バックアップデータを受信する。そして、受信ステップS50ですべての分割バックアップデータが集合した後、復元ステップS60を実施する前に、分割バックアップデータを統合してバックアップデータを形成する統合ステップが実施される。その後、復元ステップS60が実施されて記憶部24の情報が復元される。
【0106】
ここで、本実施形態に係る加工装置2、及び加工装置2の管理方法では、工場等の管理者が各加工装置2を操作してバックアップ作業を順次実施させてもよい。または、管理者は、各加工装置2を管理運営するサーバ機等により各加工装置2にバックアップ作業を実施させる指令を送信することで、各加工装置2にバックアップ作業を一斉に実施させてもよい。
【0107】
さらに、加工装置2の制御ユニット22には、所定のタイミングでバックアップ作業を実施する指令が予め入力されていてもよい。ここで、所定のタイミングとは、一定時間が経過したときや、加工装置2で加工された被加工物が所定の数に達したとき、または、記憶部24に記憶された情報のデータ容量が所定の量で増加したとき等である。加工装置2にバックアップ作業が自動的に実施される場合、加工装置2の信頼度が向上するだけでなく、管理者等が指令を入力する手間が省略されるとの利点がある。
【0108】
以上に説明する通り、本実施形態に係る加工装置2、及び加工装置2の管理方法によると、加工装置2の記憶部24に記憶された情報のデータバックアップを容易に、低コストに、かつ、安全に実施できる。バックアップには複数の加工装置2を管理するサーバ機等も不要であり、各加工装置2が備える記憶部24が有する一部の記憶領域を使用するだけで情報のバックアップが可能となる。
【0109】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、工場等に設置された複数の加工装置2を相互に利用して相互のバックアップを実施することについて説明した。すなわち、自己バックアップデータを外部加工装置に送信して保存させるとともに、他装置バックアップデータを受信して保存する加工装置2について説明した。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。
【0110】
本発明の一態様に係る加工装置2は、自己バックアップデータを外部加工装置に送信する機能を有する一方で、他装置バックアップデータを受信して保存する機能を備えなくてもよい。また、加工装置2は、他装置バックアップデータを受信して保存する機能を有する一方で、外部加工装置に自己バックアップデータを送信して保存させる機能を備えなくてもよい。故障率の比較的高い加工装置2に対してのみバックアップが実施されると、通信回線36にかかる負荷が比較的軽くなる。
【0111】
また、上記実施形態では、工場等に2台または4台の加工装置2が設置される場合を例に説明したが、工場等に設置される加工装置2の数がこれに限定されないことはいうまでもない。
【0112】
その他、上述した実施形態や変形例等にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0113】
1 被加工物
2,2a,2b,2c,2d 加工装置
4 基台
6 筐体
8 カセット支持台
10 タッチパネル付きディスプレイ
12 加工室
14 チャックテーブル
14a 上面
16 加工ユニット
18 スピンドル
20 加工具
22,22a,22b,22c,22d 制御ユニット
24,24a,24b,24c,24d 記憶部
26 加工制御部
28 バックアップデータ送信制御部
30 バックアップデータ受信制御部
32 復元部
34,34a,34b,34c,34d 通信機
36 通信回線
図1
図2
図3
図4
図5
図6