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特開2023-152053磁性シート、多層磁性シート、および、磁性シートの製造方法
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  • 特開-磁性シート、多層磁性シート、および、磁性シートの製造方法 図20
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152053
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】磁性シート、多層磁性シート、および、磁性シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/25 20060101AFI20231005BHJP
   H01F 1/153 20060101ALI20231005BHJP
   H01F 1/16 20060101ALI20231005BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01F27/25
H01F1/153 133
H01F1/16
H01F41/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061984
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮野 興平
(72)【発明者】
【氏名】栗山 安男
【テーマコード(参考)】
5E041
5E062
【Fターム(参考)】
5E041AA11
5E041BD03
5E041CA06
5E041HB15
5E041NN06
5E041NN17
5E062AA02
5E062AC05
(57)【要約】
【課題】求められる特性を損なうことを抑制しつつ、製造を容易にすることができる磁性シート、多層磁性シート、および、磁性シートの製造方法を提供する。
【解決手段】帯状に形成された支持体11、及び、粘着剤12を有する粘着層10と、磁性を有する材料を用いて帯状に形成され、粘着層10に接着された磁性薄帯20と、樹脂材料を用いて帯状に形成され、粘着層10に配置された樹脂シート15と、が設けられた第1の磁性シート110および第2の磁性シート120と、第1の磁性シート110における磁性薄帯20の長手方向の端部111と、第2の磁性シート120における磁性薄帯20の長手方向の端部121とが、所定値以下の間隔Dで隣り合った状態で固定する固定テープ130と、が設けられる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に形成された支持体、及び、前記支持体における第1面および第2面に設けられた粘着剤を有する粘着層と、
磁性を有する材料を用いて帯状に形成され、前記粘着層における前記第1面の前記粘着剤に接着された磁性薄帯と、
樹脂材料を用いて帯状に形成され、前記粘着層における第2面の前記粘着剤に配置された樹脂シートと、
が設けられた第1の磁性シートおよび第2の磁性シートと、
前記第1の磁性シートにおける前記磁性薄帯の長手方向の端部と、前記第2の磁性シートにおける前記磁性薄帯の長手方向の端部とが、所定値以下の間隔で隣り合った状態で固定するテープであって、前記第1の磁性シートにおける前記樹脂シートと、前記第2の磁性シートにおける前記樹脂シートとにわたって接着される固定テープと、
が設けられた磁性シート。
【請求項2】
前記第1の磁性シートにおける端部と、前記第2の磁性シートにおける端部とは、前記磁性薄帯および前記粘着層の積層方向からみて、直線状に延びる形状を有している請求項1に記載の磁性シート。
【請求項3】
前記粘着層における寸法であって、前記粘着層の長手方向と交差する方向の寸法を幅A、
前記磁性薄帯における寸法であって、前記磁性薄帯の長手方向と交差する方向の寸法を幅Bとした場合に、0.2mm≦(幅A-幅B)≦3mmの関係を満たす請求項1又は2に記載の磁性シート。
【請求項4】
前記磁性薄帯が、アモルファス合金薄帯、又は、ナノ結晶合金薄帯である請求項1から3のいずれか1項に記載の磁性シート。
【請求項5】
前記磁性薄帯はナノ結晶合金薄帯であり、複数の小片を含んでいる請求項1から4のいずれか1項に記載の磁性シート。
【請求項6】
帯状に形成された支持体、及び、前記支持体における第1面および第2面に設けられた粘着剤を有する少なくとも1層の粘着層と、
磁性を有する材料を用いて帯状に形成され、前記粘着層における前記第1面および前記第2面の少なくとも一方の前記粘着剤に接着された複数層の磁性薄帯と、
が設けられ、
少なくとも1層の前記磁性薄帯における少なくとも1ヶ所において、長手方向に対して交差する方向に延びる前記磁性薄帯の2つの端部が、所定値以下の間隔で対向している多層磁性シート。
【請求項7】
前記粘着層における寸法であって、前記粘着層の長手方向と交差する方向の寸法を幅A、
前記磁性薄帯における寸法であって、前記磁性薄帯の長手方向と交差する方向の寸法を幅Bとした場合に、0.2mm≦(幅A-幅B)≦3mmの関係を満たす請求項6に記載の多層磁性シート。
【請求項8】
前記磁性薄帯が、アモルファス合金薄帯、又は、ナノ結晶合金薄帯である請求項6または7に記載の多層磁性シート。
【請求項9】
前記磁性薄帯はナノ結晶合金薄帯であり、複数の小片を含んでいる請求項6から8のいずれか1項に記載の多層磁性シート。
【請求項10】
前記粘着層および前記磁性薄帯が積層された方向において、
第1積層端部の前記磁性薄帯、又は、第1積層端部と反対側の第2積層端部の前記磁性薄帯には、
前記粘着層と、
樹脂を用いて形成された膜状部材であって、前記粘着層に接着された樹脂シートと、が設けられている請求項6から9のいずれか1項に記載の多層磁性シート。
【請求項11】
前記粘着層および前記磁性薄帯が積層された方向において、
10層以上の前記磁性薄帯が積層され、
隣接する前記磁性薄帯の間の少なくとも1つの間には、2層の前記粘着層が配置されている請求項6から10のいずれか1項に記載の多層磁性シート。
【請求項12】
帯状に形成された支持体、及び、前記支持体における第1面および第2面に設けられた粘着剤を有する粘着層と、磁性を有する材料を用いて帯状に形成され、前記粘着層における前記第1面の前記粘着剤に接着された磁性薄帯と、樹脂材料を用いて帯状に形成され、前記粘着層における第2面の前記粘着剤に配置された樹脂シートと、が設けられた第1の磁性シートを長手方向に対して交差する方向に第1所定形状に切断する第1切断工程と、
前記粘着層と、前記磁性薄帯と、前記樹脂シートと、が設けられた第2の磁性シートを長手方向に対して交差する方向に、前記第1所定形状に対応する第2所定形状に切断する第2切断工程と、
前記第1の磁性シートにおける切断された端部と、前記第2の磁性シートにおける切断された端部とを所定値以下の間隔で隣り合わせるとともに、前記第1の磁性シートにおける前記磁性薄帯と、前記第2の磁性シートにおける前記磁性薄帯とを相対して配置し、前記第1の磁性シートにおける前記樹脂シートと、前記第2の磁性シートにおける前記樹脂シートとにわたって固定テープを接着させる接着工程と、
を有する磁性シートの製造方法。
【請求項13】
前記粘着層における寸法であって、前記粘着層の長手方向と交差する方向の寸法を幅A、
前記磁性薄帯における寸法であって、前記磁性薄帯の長手方向と交差する方向の寸法を幅Bとした場合に、0.2mm≦(幅A-幅B)≦3mmの関係を満たす請求項12に記載の磁性シートの製造方法。
【請求項14】
前記磁性薄帯が、アモルファス合金薄帯、又は、ナノ結晶合金薄帯である請求項12又は13に記載の磁性シートの製造方法。
【請求項15】
前記磁性薄帯はナノ結晶合金薄帯であり、複数の小片を含んでいる請求項12~14のいずれかに記載の磁性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタや磁気シールド等に用いられる磁性シート、多層磁性シート、および、磁性シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、給電側と受電側の両方に伝送コイルを設け、電磁誘導を利用した電力伝送によって充電する非接触充電が注目されている。非接触充電において、給電装置の一次伝送コイルに発生した磁束は給電装置と受電装置の筐体を介して受電装置の二次伝送コイルに起電力を発生させることで給電が行われる。
【0003】
非接触充電は、例えば、タブレット型情報端末や、ミュージックプレイヤーや、スマートフォンや、携帯電話等の電子機器に対して普及し始めている。また、非接触充電は、上述以外の電子機器や、電気自動車や、ドローンに適用可能な技術である。また、フォークリフト、AGV(AutomatedGuidedVehicle)等の運搬車、鉄道、路面電車等にも適用可能な技術である。
【0004】
非接触充電において電力伝送効率を高めるために、伝送コイルにおける給電装置と受電装置の接触面とは反対側に、コイルヨークとして磁性シートが設置される場合がある。このように配置される磁性シートには、充電時における磁束の漏れを防ぐ磁気シールド材としての役割や、充電中にコイルで発生した磁束を還流させるヨーク部材としての役割などがある。
【0005】
上述の磁性シートを製造する方法として、種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1から3参照。)。特許文献1から3には、Q値の向上または渦電流損の低減を目的とした、磁性シートに含まれる薄板状磁性体や、非晶質合金またはナノ結晶粒合金のリボン等(以下「合金薄帯」とも表記する。)を複数に分割する工程を含む製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献1には、シート基材上に設けられた接着層に合金薄帯を接着して磁性シートを形成する工程と、合金薄帯をシート基材に接着された状態を維持しつつ、外力により合金薄帯を複数に分割する工程を有する製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、合金薄帯を熱処理した後、フレーク処理して合金薄帯を多数の細片に分離したり、合金薄帯にクラックを形成したりする磁性シートの製造方法が開示されている。磁性シートには複数の合金薄帯が積層され、複数の合金薄帯の間には接着層または両面テープが配置された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-112830号公報
【特許文献2】特表2015-505166号公報
【特許文献3】国際公開第2020-235642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように複数の合金薄帯を積層させた多層の磁性シートは、隣接する合金薄薄帯の間に粘着層(または接着層とも表記する。)が配置された構成を有する。粘着層は、粘着層は、隣接する合金薄帯を接着させる機能と、隣接する合金薄帯の間の絶縁を確保する機能を有している。
【0010】
この多層磁性シートを製造する場合には、次の製造方法が用いられる。まず、粘着層の一方の面に合金薄帯を接着した積層体を製造する。次に、製造した複数の積層体を積層させて多層磁性シートが製造される。
【0011】
合金薄帯に対しては、所望の特性を持たせるために熱処理が行われる場合がある。例えば、非晶質の合金薄帯を製造し、この合金薄帯に対して熱処理を加えて結晶化することにより、合金薄帯に所望の特性を持たせる場合がある。
【0012】
上述の熱処理が行われた合金薄帯は、熱処理前の合金薄帯と比較して強度が低下することが知られている。熱処理が行われた合金薄帯は強度が低下するため、上述の粘着層の一方の面に合金薄帯を接着させる工程において切断される場合があった。
【0013】
合金薄帯が切断された場合、合金薄帯の供給を再開して粘着層の一方の面に合金薄帯を接着させる工程が再開されて継続される。しかしながら、製造された積層体において合金薄帯の欠落が生じるおそれがあった。
【0014】
言い換えると、製造された積層体において、切断前の合金薄帯と、切断後の合金薄帯との間に隙間が生じる等のおそれがあった。この場合、欠落が生じた積層体は、磁気シールド材として求められる特性や、ヨーク部材としての求められる特性などを満たさない可能性があり多層磁性シートの製造に用いることができないという問題があった。
【0015】
また、粘着層の一方の面に合金薄帯を接着した積層体の長さが、多層磁性シートの長さよりも短い場合、当該積層体を多層磁性シートの製造に用いることができないという問題があった。
【0016】
本開示は、求められる特性を損なうことを抑制しつつ、製造を容易にすることができる磁性シート、多層磁性シート、および、磁性シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示の第1の態様に係る磁性シートは、帯状に形成された支持体、及び、前記支持体における第1面および第2面に設けられた粘着剤を有する粘着層と、磁性を有する材料を用いて帯状に形成され、前記粘着層における前記第1面の前記粘着剤に接着された磁性薄帯と、樹脂材料を用いて帯状に形成され、前記粘着層における第2面の前記粘着剤に配置された樹脂シートと、が設けられた第1の磁性シートおよび第2の磁性シートと、前記第1の磁性シートにおける前記磁性薄帯の長手方向の端部と、前記第2の磁性シートにおける前記磁性薄帯の長手方向の端部とが、所定値以下の間隔で隣り合った状態で固定するテープであって、記第1の磁性シートにおける前記樹脂シートと、前記第2の磁性シートにおける前記樹脂シートとにわたって接着される固定テープと、が設けられる。
【0018】
本開示の第2の態様に係る多層磁性シートは、帯状に形成された支持体、及び、前記支持体における第1面および第2面に設けられた粘着剤を有する少なくとも1層の粘着層と、磁性を有する材料を用いて帯状に形成され、前記粘着層における前記第1面および前記第2面の少なくとも一方の前記粘着剤に接着された複数層の磁性薄帯と、が設けられ、少なくとも1層の前記磁性薄帯における少なくとも1ヶ所において、長手方向に対して交差する方向に延びる前記磁性薄帯の2つの端部が、所定値以下の間隔で対向している。
【0019】
本開示の第3の態様に係る磁性シートの製造方法は、帯状に形成された支持体、及び、前記支持体における第1面および第2面に設けられた粘着剤を有する粘着層と、磁性を有する材料を用いて帯状に形成され、前記粘着層における前記第1面の前記粘着剤に接着された磁性薄帯と、樹脂材料を用いて帯状に形成され、前記粘着層における第2面の前記粘着剤に配置された樹脂シートと、が設けられた第1の磁性シートを長手方向に対して交差する方向に第1所定形状に切断する第1切断工程と、前記粘着層と、前記磁性薄帯と、前記樹脂シートと、が設けられた第2の磁性シートを長手方向に対して交差する方向に、前記第1所定形状に対応する第2所定形状に切断する第2切断工程と、前記第1の磁性シートにおける切断された端部と、前記第2の磁性シートにおける切断された端部とを所定値以下の間隔で隣り合わせるとともに、前記第1の磁性シートにおける前記磁性薄帯と、前記第2の磁性シートにおける前記磁性薄帯とを相対して配置し、前記第1の磁性シートにおける前記樹脂シートと、前記第2の磁性シートにおける前記樹脂シートとにわたって固定テープを接着させる接着工程と、を有する。
【0020】
本開示の第1の態様に係る磁性シート、第2の態様に係るに多層磁性シート、および、第3の態様に係る磁性シートの製造方法によれば、磁性薄帯が所定値以下の間隔で隣り合うため、磁性薄帯が設けられていない部分に起因する特性の低下を抑制しやすい。
【0021】
粘着層および磁性薄帯を積層させた積層体において、磁性薄帯が切断されて長手方向に不連続な部分を有しても、当該積層体を利用することができる。つまり、上述の積層体における不連続な部分を取り除いた残りを利用することが可能となる。
【0022】
粘着層および磁性薄帯を積層させた積層体において、当該積層体の長手方向の長さが所望の値よりも短い場合であっても、当該積層体を利用することができる。つまり、所望の値よりも短い積層体および他の積層体をつなぎ、長手方向の長さが所望の値以上となる積層体として利用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の磁性シート、多層磁性シート、および、磁性シートの製造方法によれば、磁性薄帯が所定値以下の間隔で隣り合わせて接続することにより、求められる特性を損なうことを抑制しつつ、製造を容易にするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示による磁性シートを積層方向から見た模式図である。
図2図1の磁性シートの構成を説明するX-X断面視図である。
図3】第1の磁性シートの端部および第2の磁性シートの端部における別の実施形態を説明する模式図である。
図4】第1の磁性シートの端部および第2の磁性シートの端部における更に別の実施形態を説明する模式図である。
図5図1の第1の磁性シートの構成を説明するY-Y断面視図である。
図6】多層磁性シートの構成を説明する長手方向の断面視図である。
図7】多層磁性シートの構成を説明する幅方向の断面視図である。
図8】多層磁性シートの他の構成を説明する幅方向の断面視図である。
図9】積層数が異なる多層磁性シートの構成を説明する幅方向の断面視図である。
図10】磁性シートの製造方法を説明する模式図である。
図11】第1巻出しロールから供給される積層体の構成を説明する幅方向の断面視図である。
図12】第1巻出しから供給され、樹脂シートが剥離された積層体の構成を説明する幅方向の断面視図である。
図13】第2巻出しロールから供給される磁性薄帯の構成を説明する幅方向の断面視図である。
図14】貼付けロールにより、磁性薄帯が粘着層に接着された状態を説明する幅方向の断面視図である。
図15】クラックロールにより磁性薄帯にクラックが形成された状態を説明する幅方向の断面視図である。
図16】磁性薄帯が切断された状態を説明する幅方向の断面視図である。
図17】磁性薄帯が切断された磁性シートの切断を説明する幅方向の断面視図である。
図18】多層磁性シートの製造方法を説明する模式図である。
図19図2の磁性シートにおける樹脂シートが剥離される状態を説明する長手方向の断面視図である。
図20】多層磁性シートの製造方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この開示の一実施形態に係る磁性シート100、多層磁性シート300及び多層磁性シート300Tについて、図1から図20を参照しながら説明する。一実施形態に係る磁性シート100、多層磁性シート300及び多層磁性シート300Tは、非接触方式の充電機器に用いられる。充電機器の給電装置に用いられてもよいし、受電装置に用いられてもよい。
【0026】
本実施形態では、多層磁性シート300や多層磁性シート300Tがスマートフォンなどの情報処理機器や電子機器よりも消費電力が大きな機器に対する非接触充電に用いられる例に適用して説明する。
【0027】
例えば、多層磁性シート300Tが自動車などの移動体への非接触充電に用いられる例に適用して説明する。なお、多層磁性シート300や多層磁性シート300Tや磁性シート100は、情報処理機器や電子機器などの非接触充電に用いられてもよい。
【0028】
図1は、磁性シート100を積層方向から見た模式図である。図2は、磁性シート100の構成を説明するX-X断面視図である。積層方向は、磁性薄帯20、粘着層10、樹脂シート15が積層される方向である。言い換えると、積層方向は、図1における紙面に対して垂直な方向である。
【0029】
磁性シート100は、多層磁性シート300及び多層磁性シート300Tを構成するシートである。磁性シート100には、図1および図2に示すように、第1の磁性シート110と、第2の磁性シート120と、固定テープ130と、が設けられている。
【0030】
磁性シート100は、第1の磁性シート110および第2の磁性シート120を1本の帯形状を形成するように長手方向に並べた構成を有する。さらに、並べた第1の磁性シート110および第2の磁性シート120を固定テープ130で固定した構成を有する。
【0031】
長手方向は、帯状に形成された磁性シート100、第1の磁性シート110および第2の磁性シート120が延びる方向である。言い換えると、長手方向は、図1におけるX-X方向である。
【0032】
第1の磁性シート110の長手方向における第2の磁性シート120側の端部111は、積層方向から見て、幅方向に直線状に延びる形状を有している。また、第2の磁性シート120の長手方向における第1の磁性シート110側の端部121は、積層方向から見て、幅方向に直線状に延びる形状を有している。
【0033】
第1の磁性シート110および第2の磁性シート120は、それぞれ端部111および端部121を対向して配置されている。また、端部111および端部121の間隔Dは、所定値以下である。所定値としては0mm以上1mm以下の範囲の任意の値を用いることができる。
【0034】
図3は、第1の磁性シート110の端部111および第2の磁性シート120の端部121における別の実施形態を説明する模式図である。
端部111および端部121は、上述のように、積層方向から見て幅方向に直線状に延びる形状を有してもよいし、図3に示すように、積層方向から見て円弧状に延びる形状を有してもよい。
【0035】
図3では、端部111が端部121に向かって凸となり、端部121が凹となる円弧状の形状を有している例が示されている。なお、端部121が端部111に向かって凸となり、端部111が凹となる円弧状の形状を有してもよい。
【0036】
さらに、端部111および端部121は、1つの円弧から形成された形状を有してもよいし、複数の円弧から形成された形状を有してもよいし、円弧と異なる形状とを組み合わせた複合形状を有してもよい。
【0037】
図4は、第1の磁性シート110の端部111および第2の磁性シート120の端部121における更に別の実施形態を説明する模式図である。
端部111および端部121は、上述のように、積層方向から見て幅方向に直線状に延びる形状を有してもよいし、図4に示すように、積層方向から見て折れ線状に延びる形状を有してもよい。
【0038】
図4では、端部111が端部121に向かって凸となり、端部121が凹となる折れ線状の形状を有している例が示されている。なお、端部121が端部111に向かって凸となり、端部111が凹となる折れ線状の形状を有してもよい。
【0039】
さらに、端部111および端部121は、1つの角を有する折れ線から形成された形状を有してもよいし、複数の角を有する折れ線から形成された形状を有してもよいし、折れ線と異なる形状とを組み合わせた複合形状を有してもよい。
【0040】
図5は、第1の磁性シートの構成を説明するY-Y断面視図である。
磁性シート100、第1の磁性シート110および第2の磁性シート120における幅方向の断面視図は全て同じである。ここでは、第1の磁性シート110における幅方向の断面視図を用いて断面構成を説明するが、磁性シート100および第2の磁性シート120も第1の磁性シート110と同じ断面構造を有している。
【0041】
幅方向は、帯状に形成された磁性シート100、第1の磁性シート110および第2の磁性シート120の長手方向に対して直交する方向である。言い換えると、幅方向は、図1におけるY-Y方向である。
【0042】
第1の磁性シート110は、図5に示すように、1層の粘着層10と、1層の樹脂シート15と、1層の磁性薄帯20と、が積層された構成を有する。磁性シート100および第2の磁性シート120も同様な構成を有する。
【0043】
粘着層10は磁性薄帯20が貼り付けられる部材である。また粘着層10は長尺状に形成された部材、例えば長方形状に形成された膜状の部材である。粘着層10には、支持体11と、粘着剤12と、が主に設けられている。
【0044】
支持体11は、長尺状に形成された帯状の膜部材、例えば長方形状に形成された膜部材である。支持体11は、可撓性を有する樹脂材料を用いて形成されている。樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethyleneterephthalate)を用いることができる。
【0045】
粘着剤12は、支持体11における第1面11Aおよび第2面11Bに膜状または層状に設けられている。本実施形態では、第1面11Aが膜状の支持体11における磁性薄帯20と対向する面であり、第2面11Bは第1面11Aと反対側の面である例に適用して説明する。
【0046】
粘着剤12は、例えば、感圧性接着剤を用いることができる。例えば、アクリル系の接着剤、シリコーン系の接着剤、ウレタン系の接着剤、合成ゴム、天然ゴム等の、公知の接着剤を粘着剤12として用いることができる。アクリル系の接着剤は、耐熱性、耐湿性に優れ、かつ、接着可能な材質も幅広いため、粘着剤12として好ましい。
【0047】
粘着剤12は、支持体11の第1面11Aおよび第2面11Bに、層状に設けられている。本実施形態では、支持体11の第1面11Aおよび第2面11Bの全面に粘着剤12が設けられた例に適用して説明する。
【0048】
なお、第1面11Aが磁性薄帯20と対向する面ではなく、第2面11Bが磁性薄帯20と対向する面であってもよい。また、支持体11における第1面11Aおよび第2面11Bのうち、磁性薄帯20と対向する面にのみ粘着剤12が設けられてもよい。
【0049】
樹脂シート15は樹脂を用いて形成された膜状の部材であり、保護フィルム、リリースフィルムまたはライナーとも表記される部材である。樹脂シート15は、磁性シート100(多層磁性シート300および多層磁性シート300Tも含む。)の保護に用いられる部材である。
【0050】
樹脂シート15は、磁性薄帯20に意図しない外力が加わることにより、後述するクラック21(または複数のクラック21同士を網目状に繋ぐクラック)が不要に増えることを抑制する機能を有する。また、磁性薄帯20の小片22が脱落することを抑制する機能や、磁性薄帯20が錆びることを抑制する機能を有する。
【0051】
また、樹脂シート15は、磁性シート100(多層磁性シート300および多層磁性シート300Tも含む。)を所定の形状に加工する際に、不要な変形が発生することを抑制する機能を有する。不要な変形としては、表面の凹凸などを例示することができる。樹脂シート15は、上述のように粘着層10とともに積層されてもよいし、単体で積層されてもよい。
【0052】
樹脂シート15は、樹脂を用いて形成された膜状の部材であることが好ましく、弾力性を有する樹脂を用いて形成された部材であることがより好ましい。樹脂シート15が樹脂を用いて形成された部材であると、樹脂シート15の弾性力により、磁性薄帯20の表面における凹凸の発生を抑制しやすくなる。
【0053】
磁性薄帯20の表面に凹凸が発生しても、樹脂シート15の弾性力により、磁性薄帯20の凹凸が平坦になりやすい。磁性薄帯20の平面状態を凹凸が少ない良好な状態にすることができる。磁性シート100における磁気特性の経時変化を小さくしやすい。
【0054】
樹脂シート15は、引張弾性率の下限が0.1GPaの樹脂を使用できる。樹脂の引張弾性率が0.1GPa以上であれば、上記の効果が十分に得られやすい。引張弾性率の下限は、0.5GPaが好ましく、1.0GPaがさらに好ましい。
【0055】
樹脂の引張弾性率の上限は10GPaとすることが好ましい。10GPaを超えると、後述するクラック21を形成する際、合金薄帯の変形を抑制してしまうことがある。引張弾性率の上限は9GPaが好ましく、8GPaがさらに好ましい。
【0056】
樹脂シート15は、樹脂シート15の厚みが1μm以上100μm以下であることが好ましい。樹脂シート15の厚みが増すと、磁性シート100が変形し難くなる。磁性シート100を曲面又は屈曲面に倣って配置しにくくなることがある。
【0057】
樹脂シート15の厚さが1μm未満であると、樹脂シート15の変形が容易となる。樹脂シート15の扱いが難しくなり、樹脂シート15による磁性薄帯20を支持する機能が十分に得られない場合がある。樹脂シート15が保護フィルムである場合には、樹脂シート15の強度が弱くなり、磁性薄帯20などを保護する機能が十分でなくなる場合もある。
【0058】
樹脂シート15は、樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、アクリル樹脂、セルロース等を用いることができる。耐熱性及び誘電損失の観点から、ポリアミド及びポリイミドが樹脂シート15を形成する樹脂として特に好ましい。
【0059】
磁性薄帯20は、磁性を有する材料を用いて長尺状の帯状に形成された薄帯である。磁性薄帯20にはクラック21が形成されている。磁性薄帯20は、クラック21により複数の小片22に分割されている。言い換えると、磁性薄帯20は複数の小片22を含む。クラック21とは、磁性薄帯20に形成される磁気的なギャップを指し、例えば、磁性薄帯20の割れ及び/又はひびが包含される。
【0060】
磁性薄帯20にクラック21を形成することで、磁性シート100をインダクタ用磁性体として用いる場合にQ値の向上を図りやすくなる。また、磁性シート100を磁気シールド用磁性体として用いる場合には、磁性薄帯20の電流路を分断して渦電流損を低減しやすくなる。
【0061】
磁性薄帯20を形成する材料としては、合金組成がFe基又はCo基の合金を使用でき、ナノ結晶合金又はアモルファス合金を使用できる。磁性薄帯20は、特にナノ結晶合金を材料として形成された薄帯(以下、「ナノ結晶合金薄帯」とも表記する。)であることが好ましい。
【0062】
ナノ結晶合金薄帯としては、ナノ結晶化が可能な非晶質合金薄帯にナノ結晶化の熱処理を行って得られたナノ結晶合金薄帯を用いることができる。ナノ結晶化の熱処理の際、ナノ結晶化が可能な非晶質合金薄帯に張力を付与した状態でナノ結晶化の熱処理を行うことが好ましい。なお、アモルファス合金を材料として形成された薄帯をアモルファス合金薄帯、または、非晶質合金薄帯とも表記する。
【0063】
ナノ結晶合金薄帯は、次の一般式により表される組成を有することが好ましい。
一般式:(Fe1-aMa)100-x-y-z-α-β-γCuSiM’αM”βγ(原子%)
【0064】
上記の一般式中で、MはCo及び/又はNiであり、M’はNb、Mo、Ta、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mn及びWからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、M”はAl、白金族元素、Sc、希土類元素、Zn、Sn、及びReからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、XはC、Ge、P、Ga、Sb、In、Be、及びAsからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、a、x、y、z、α、β及びγはそれぞれ0≦a≦0.5、0.1≦x≦3、0≦y≦30、0≦z≦25、5≦y+z≦30、0≦α≦20、0≦β≦20及び0≦γ≦20を満たす。
好ましくは、上記一般式において、a、x、y、z、α、β及びγは、それぞれ0≦a≦0.1、0.7≦x≦1.3、12≦y≦17、5≦z≦10、1.5≦α≦5、0≦β≦1及び0≦γ≦1である。
【0065】
本実施形態では磁性薄帯20が、Fe-Cu-Nb-Si-B系のナノ結晶合金である薄帯(日立金属株式会社製FT-3)の例に適用して説明する。なお、磁性薄帯20は、上記の一般式により表される他の組成を有するナノ結晶合金薄帯であってもよいし、アモルファス合金薄帯であってもよい。
【0066】
磁性薄帯20がナノ結晶合金薄帯である場合は、磁性薄帯20がアモルファス合金薄帯である場合よりも機械的に脆い。磁性薄帯20がナノ結晶合金薄帯である場合は、磁性薄帯20に直接外力を付与してクラック21を形成する際に、小さな外力でクラック21を形成することができる。
【0067】
磁性薄帯20がナノ結晶合金薄帯である場合は、磁性薄帯20の表面に凹凸を実質的に形成することなくクラック21を形成できる。そのため、磁性薄帯20の平面状態を良好な状態とすることができる。磁性薄帯20と粘着層10とを貼り合わせて磁性シート100とした後に発生する磁性薄帯20の形状の経時変化が小さくなる。磁性シート100や磁性薄帯20における磁気特性の経時変化を抑制することができる。
【0068】
磁性薄帯20としては、例えば、ロール急冷により製造された厚さが100μm以下の合金薄帯を用いることができる。磁性薄帯20の厚さは、50μm以下が好ましく、更に30μm以下が好ましく、更に25μm以下が好ましく、特に20μm以下が好ましい。また、厚さが薄いと磁性薄帯20の取り扱いが困難となるため、磁性薄帯20の厚さは、5μm以上であることが好ましく、更に10μm以上が好ましい。
【0069】
磁性薄帯20は、粘着層10の粘着剤12に接着されている。本実施形態では、粘着層10の第1面11Aに設けられた粘着剤12に磁性薄帯20が接着されている。また、磁性薄帯20と粘着層10とは次式の関係を満たす形状を有している。
【0070】
0.2mm≦(幅A-幅B)≦3mm
幅Aは、粘着層10に関する寸法であって、より好ましくは粘着層10における磁性薄帯20が接着される粘着剤12が設けられた領域に関する寸法である。幅Bは、磁性薄帯20に関する寸法である。なお、粘着剤12が粘着層10の支持体11の全面に設けられている場合には、幅Aは、粘着層10または支持体11に関する寸法である。
【0071】
ここで、(幅A-幅B)の下限は、0.5mmであることが好ましく、更に1.0mmであることが好ましい。また、(幅A-幅B)の上限は、2.5mmであることが好ましく、更に2.0mmであることが好ましい。
【0072】
また、磁性薄帯20と粘着層10とは、別の次式の関係を満たすように配置されている。
0mm<隙間a、および、0mm<隙間b
【0073】
隙間aおよび隙間bは、粘着層10の端部から磁性薄帯20の端部までの距離である。具体的には隙間aは、粘着層10の第1粘着層端部10Xから、磁性薄帯20の第1薄帯端部20Xまでの距離である。隙間bは、粘着層10の第2粘着層端部10Yから、磁性薄帯20の第2薄帯端部20Yまでの距離である。
【0074】
第1薄帯端部20Xは、磁性薄帯20における第1粘着層端部10Xと同じ側の端部である。第2粘着層端部10Yは、粘着層10の第1粘着層端部10Xと反対側の端部である。第2薄帯端部20Yは、磁性薄帯20における第2粘着層端部10Yと同じ側の端部である。
【0075】
幅A、幅B、隙間a、および隙間bは、磁性シート100の長手方向と交差する方向、より好ましくは直交する方向の寸法である。磁性シート100の長手方向と、粘着層10の長手方向は同じ方向である。また、磁性シート100の長手方向と、磁性薄帯20の長手方向は同じ方向である。
【0076】
本実施形態では、磁性薄帯20の長手方向の長さが20,000mである例に適用して説明する。また、粘着層10または支持体11に関する寸法である幅Aが32mmであり、磁性薄帯20に関する寸法である幅Bが30mmであり、幅A-幅Bは2mmである例に適用して説明する。
【0077】
磁性シート100の長手方向の長さは、例えば20,000mを挙げることができる。また、磁性シート100の幅は、例えば32mmを挙げることができる。なお、磁性シート100の長手方向の長さは、20,000mよりも長くてもよいし、短くてもよい。磁性シート100の幅は、32mmよりも広くてもよいし、狭くてもよい。
【0078】
なお、磁性シート100の長手方向の長さは、使用状態に応じて、所望の長さとすればよい。例えば、100mm、300mm、1000mmなど、必要な長さに切断されていてもよい。
【0079】
固定テープ130は、図1および図2に示すように、第1の磁性シート110と、第2の磁性シート120とを隣り合った状態で固定するテープである。固定テープ130は、第1の磁性シート110における樹脂シート15と、第2の磁性シート120における樹脂シート15とにわたって配置されて接着されている。固定テープ130における幅方向の長さは、第1の磁性シート110および第2の磁性シート120と同じであってもよいし、短くてもよい。
【0080】
固定テープ130は、樹脂シート15と同様に樹脂を用いて形成された膜状の部材である。また、固定テープ130には、樹脂シート15と接着する接着剤の層が設けられている。固定テープ130を構成する樹脂の材料や、粘着剤の材料は、樹脂シート15と同じものを用いることができる。
【0081】
図6は、多層磁性シート300の構成を説明する長手方向の断面視図である。図7は、多層磁性シート300の構成を説明する幅方向の断面視図である。
図6および図7に示す多層磁性シート300は、5層の磁性薄帯20と、6層の粘着層10と、2層の樹脂シート15と、が積層された多層構造を有している。樹脂シート15はリリースフィルムであってもよいし、保護フィルムであってもよい。
【0082】
多層磁性シート300は、少なくとも磁性薄帯20と粘着層10とが交互に積層された構造を有している。また、多層磁性シート300における積層方向の両端部である第1積層端部301および第2積層端部302には、樹脂シート15が配置されている。
【0083】
具体的には、図6の下側から上に向かって、樹脂シート15、粘着層10、磁性薄帯20、粘着層10、磁性薄帯20、粘着層10、磁性薄帯20、粘着層10、磁性薄帯20、粘着層10、磁性薄帯20、粘着層10、樹脂シート15が順に積層された構造を有している。
【0084】
図6における磁性薄帯20および粘着層10のうち、下側から2層目の磁性薄帯20および粘着層10には、長手方向に対して交差する方向に延びる2つの端部111、121が設けられている。より好ましくは、幅方向に延びる2つの端部111、121が設けられている。図6において幅方向は、紙面に対して垂直な方向である。2つの端部111、121は、所定値以下の間隔Dで対向して配置されている。
【0085】
図6では、下側から2層目の磁性薄帯20および粘着層10に2つの端部111、121が設けられているが、下側から2層目以外の磁性薄帯20および粘着層10に2つの端部111、121が設けられてもよい。また、同じ層の磁性薄帯20および粘着層10に2つの端部111、121のみが設けられてもよいし、4つ以上の端部111、121が設けられてもよい。
【0086】
多層磁性シート300は、図6および図7に示すように、少なくとも5層の磁性薄帯20を有する多層構造を有してもよいし、2層以上4層以下の磁性薄帯20を有する多層構造を有してもよい。また、6層以上の磁性薄帯20を有する多層構造を有してもよい。磁性薄帯20の層数は、適宜決定すればよい。また、磁性薄帯20の層数は3層以上が好ましく、4層以上がより好ましく、5層以上がより好ましい。
【0087】
図8は、多層磁性シート300の他の構成を説明する幅方向の断面視図である。
多層磁性シート300は、図6に示すように、幅方向において5層の磁性薄帯20が同じ位置に配置されて積層されてもよいし、図8に示すように、幅方向において異なる位置に配置されて積層されてもよい。
【0088】
5層の磁性薄帯20が図8に示すように積層された場合であっても、隣接する磁性薄帯20と粘着層10との間に、0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係が満たされることが好ましい。
【0089】
多層磁性シート300が図8に示す構成を有する場合、5層ある磁性薄帯20におけるクラック21の位置が一致しにくくなる。そのため、多層磁性シート300における磁気ギャップを均等にしやすい。
【0090】
また、図8に示す構成を有する多層磁性シート300を所望の形状に打ち抜いたり、切断したりして加工する場合、加工位置による透磁率の変動を抑制しやすい。そのため、安定したシールド特性を有する多層磁性シート300を製造しやすい。
【0091】
多層磁性シート300の長手方向の長さは、例えば20,000mを挙げることができる。また、多層磁性シート300の幅は、例えば32mmを挙げることができる。なお、多層磁性シート300の長手方向の長さは、20,000mよりも長くてもよいし、短くてもよい。多層磁性シート300の幅は、32mmよりも広くてもよいし、狭くてもよい。
【0092】
なお、多層磁性シート300の長手方向の長さは、使用状態に応じて、所望の長さとすればよい。例えば、100mm、300mm、1000mmなど、必要な長さに切断されていてもよい。
【0093】
図9は、積層数が異なる多層磁性シート300Tの構成を説明する幅方向の断面視図である。
多層磁性シート300Tは、図9に示すように、10層よりも多くの磁性薄帯20を有する多層構造を有してもよい。例えば、25層以上80層以下の磁性薄帯20を有する多層構造を有してもよい。また、80層よりも多くの磁性薄帯20を有する多層構造を有してもよい。
【0094】
この多層磁性シート300Tは、層数の多い多層磁性シートにおいて、好ましい構造例である。この多層磁性シート300Tによれば、層数の多い多層磁性シートの製造を容易とする。
【0095】
多層磁性シート300Tは、隣り合う磁性薄帯20の間に1層または2層以上の粘着層10が配置された積層構造を有している。本実施形態では、隣り合う磁性薄帯20の間に1層または2層の粘着層10が配置された積層構造の例に適用して説明する。また、多層磁性シート300Tにおける積層方向の両端部である第1積層端部301および第2積層端部302には、樹脂シート15が配置されている。
【0096】
また、第1積層端部401又は第2積層端部402には樹脂シート15が積層されていなくてもよい。磁性薄帯20が露出していてもよいし、例えば、第1積層端部301又は第2積層端部402に、アモルファス合金薄帯、又は、ナノ結晶合金薄帯、もしくは、他の磁性材、アルミニウム等の金属箔、並びに樹脂シート等を貼り付けてもよい。
【0097】
図9では、樹脂シート15から数えて5ヶ所までの隣り合う磁性薄帯20の間に、1層の粘着層10が配置されている。樹脂シート15から数えて6ヶ所目の隣り合う磁性薄帯20の間に、2層の粘着層10が配置されている。その後、同じパターンで1層の粘着層10と、2層の粘着層10が配置されている。
【0098】
また、他の部分において、粘着層10が2層積層されていてもよい。また、粘着層10が3層以上積層されていてもよいが、全体として厚くなるため、粘着層10が積層される場合、2層以下が好ましい。
【0099】
多層磁性シート300Tの長手方向の長さは、例えば100mm以上、1000mm以下の所定の長さを挙げることができる。また、多層磁性シート300Tの幅は、例えば32mmを挙げることができる。なお、多層磁性シート300Tの長手方向の長さは、100mm以上、1000mm以下の所定の長さよりも長くてもよいし、短くてもよい。多層磁性シート300Tの幅は、32mmよりも広くてもよいし、狭くてもよい。
【0100】
次に、本実施形態の磁性シート100、多層磁性シート300及び多層磁性シート300Tの製造方法について図10から図20を参照しながら説明する。まず、磁性シート100の製造方法について説明する。
【0101】
図10は、磁性シート100の製造方法を説明する模式図である。
磁性シート100は、図10に示す製造装置500を用いて製造される。製造装置500には、製造工程の上流から下流に向かって、第1巻出しロール510と、第1巻取りロール520と、第2巻出しロール530と、貼付けロール540と、クラックロール550と、平坦化ロール560と、第3巻取りロール570と、が主に設けられている。製造装置500には、さらに複数の誘導ロール580が設けられてもよい。なお、誘導ロール580は記載していない位置でも必要に応じて配置することができる。
【0102】
図11は、第1巻出しロール510から供給される積層体の構成を説明する幅方向の断面視図である。
第1巻出しロール510には、図11に示すように、粘着層10の第1面11Aおよび第2面11Bに樹脂シート15が積層された積層体が巻き付けられている。第1面11Aに配置された樹脂シート15は保護シートであり、第2面11Bに配置された樹脂シート15はライナーとも表記する。第1面11Aに配置された樹脂シート15は、第2面11Bに配置された樹脂シート15よりも厚さが薄いシートである。
【0103】
図12は、第1巻出しロール510から供給され、樹脂シート15が剥離された積層体の構成を説明する幅方向の断面視図である。
第1巻出しロール510から巻き出された積層体は、図12に示すように、第1面11Aに配置された樹脂シート15が剥離される。剥離された樹脂シート15は、図10に示すように、第1巻取りロール520に巻き取られる。
【0104】
図13は、第2巻出しロール530から供給される磁性薄帯20の構成を説明する幅方向の断面視図である。
第1面11Aに配置された樹脂シート15が剥離された積層体は、複数の誘導ロール580により、貼付けロール540に導かれる。貼付けロール540には、さらに第2巻出しロール530から巻き出された磁性薄帯20が導かれている。貼付けロール540に導かれる磁性薄帯20には、図13に示すように、クラック21は形成されていない。
【0105】
ここで、第2巻出しロール530から巻き出される磁性薄帯20の製造方法について説明する。例えば、磁性薄帯20がナノ結晶合金である場合について説明する。磁性薄帯20は、合金溶湯を急冷して、ナノ結晶化が可能なアモルファス合金薄帯を得る工程と、このアモルファス合金薄帯を結晶化開始温度以上で熱処理して微細な結晶粒を形成させる熱処理工程と、を含む製造方法によって製造される。
【0106】
上述の急冷は、回転する冷却ロール上に溶湯を吐出して急冷凝固させる単ロール法により行われる。磁性薄帯20は冷却ロールの回転方向に沿った方向が長手方向となる長尺形状を有する。磁性薄帯20の長手方向の長さは、例えば20,000mを挙げることができる。
【0107】
上述の熱処理の温度は、合金組成により異なるが、一般的には450℃以上である。微細な結晶粒は、例えば、Siなどが固溶した体心立方格子構造のFeである。この微細な結晶粒の分析は、X線回折及び透過電子顕微鏡を用いて行うことができる。
【0108】
ナノ結晶合金においては、ナノ結晶合金の少なくとも50体積%が、最大寸法で測定した粒径の平均が100nm以下の微細な結晶粒で占められる。また、ナノ結晶合金のうちで微細結晶粒以外の部分は主に非晶質である。微細結晶粒の割合は実質的に100体積%であってもよい。
【0109】
図14は、貼付けロール540により、磁性薄帯20が粘着層10に接着された状態を説明する幅方向の断面視図である。
貼付けロール540は、図10に示すように、樹脂シート15が剥離された積層体に磁性薄帯20を押し付けて接着する。具体的には、対向して配置された2つのロールの間に、積層体と磁性薄帯20とを導き、2つのロールを用いて、図14に示すように、粘着層10の第1面11Aに磁性薄帯20を押し付けて接着する。
【0110】
磁性薄帯20は、粘着層10と幅方向において中心が一致するように配置されもよいし、中心が離れて配置されてもよい。この場合、0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係(図5参照。)を満たすように配置されている。磁性薄帯20が接着された積層体は、図10に示すように、貼付けロール540からクラックロール550に導かれる。
【0111】
図15は、クラックロール550により磁性薄帯20にクラック21が形成された状態を説明する幅方向の断面視図である。
クラックロール550は、粘着層10に接着された磁性薄帯20にクラック21を形成する。具体的には、対向して配置された2つのロールの間に、磁性薄帯20が接着された積層体を導き、2つのロールのうちの突起が設けられたロールを磁性薄帯20に押し付けて、図15に示すようにクラック21を形成する。
【0112】
2つのロールのうちの突起が設けられていないロールは、樹脂シート15が剥離された積層体側に配置されている。クラック21が形成された磁性薄帯20には複数の小片22が含まれる。複数の小片22は、粘着層10に接着される。
【0113】
ここで、クラックロール550の構成について説明する。クラックロール550は、複数の凸状部材を周面に配置したロールである。クラックロール550の凸状部材の端部の先端は、平坦、錐状、中央が窪む逆錐状、又は筒状でもよい。複数の凸状部材は、規則的に配置されてもよいし、不規則に配置されてもよい。
【0114】
長尺の磁性薄帯20をクラックロール550に押し付けたり、又は長尺の磁性薄帯20を2つのクラックロール550の間に通したりすることで、磁性薄帯20にクラック21が連続的に形成される。また、磁性薄帯20の表面の複数箇所にクラックロール550の凸状部材が押し付けられ、磁性薄帯20に複数のクラック21が形成される。
【0115】
クラックロール550を用いたクラックの形成では、さらに、複数のクラック21同士を網目状に繋ぐクラックを形成することが好ましい。具体的には、磁性薄帯20にクラックロール550を押しつけて複数のクラック21を形成した後、上記複数のクラック21同士を網目状に繋ぐクラックを形成する工程を有することが好ましい。
【0116】
例えば、クラックロール550を用いて磁性薄帯20に直接外力を付与してクラック21を形成した後、磁性薄帯20を湾曲したり、巻き取ったりする等の手段によって第2の外力を付与して、複数のクラック21同士を網目状に繋ぐクラックを形成してもよい。クラック21同士を繋ぐクラック(クラック同士を繋ぐ磁気的なギャップ)は、クラック21を脆性破壊及び/又は亀裂破壊の起点として形成される。
【0117】
複数のクラック21同士を網目状に繋ぐクラックを形成する工程では、上記のような第2の外力を付与しなくてもよい。第2の外力を付与しない場合には、複数のクラック21が形成される過程で、複数のクラック21同士を網目状に繋ぐクラックが形成される。
【0118】
クラックロール550から平坦化ロール560に導かれた積層体は、平坦化ロール560により平坦化処理が行われる。なお、平坦化ロール560は整形ロールとも表記する。
【0119】
具体的には、平坦化ロール560における対向して配置された2つのロールの間に積層体が導かれ、積層体が2つのローラに挟まれて押圧される。これにより、クラック21が形成された磁性薄帯20の表面が平坦化される。
【0120】
平坦化処理が行われた後の積層体が磁性シート100となる。磁性シート100は、誘導ロール580を経由して第3巻取りロール570に導かれる。磁性シート100は、第3巻取りロール570に巻き取られる。
【0121】
図16は、磁性薄帯20が切断された状態を説明する長手方向の断面視図である。
製造装置500で磁性シート100を製造する際に、図16に示すように、磁性薄帯20が切断される場合がある。例えば、粘着層10に磁性薄帯20を接着させる工程で磁性薄帯20が切断される場合がある。
【0122】
粘着層10に磁性薄帯20を接着させる工程は、図10に示されるように、それぞれを搬送しながら連続して行われる。この工程中で、磁性薄帯20の切断が生じると、連続して搬送されている粘着層10に対し、磁性薄帯20の供給ができなくなり、粘着層10の長手方向において、磁性薄帯20が接着されていない領域が生じる。このままでは使用できなく、全体が不良となってしまう場合がある。
【0123】
図17は、磁性薄帯20が切断された磁性シートの切断を説明する長手方向の断面視図である。
図16に示す磁性シート100に対して、磁性薄帯20が切断された部分を取り除く第1切断工程および第2切断工程が行われる。第1切断工程は、第1切断面115において磁性薄帯20が切断された磁性シート100から第1の磁性シート110を切り離す工程である。第2切断工程は、第2切断面125において磁性薄帯20が切断された磁性シート100から第2の磁性シート120を切り離す工程である。
【0124】
第1切断面115および第2切断面125は、磁性シート100の長手方向に対して交差する方向にのびる切断面である。より好ましくは、長手方向に対して直交する方向に延びる切断面である。
【0125】
第1切断面115により切断された第1の磁性シート110の端部は第1所定形状を有している。第2切断面125により切断された第2の磁性シート120の端部は第2所定形状を有している。
【0126】
本実施形態では、第1所定形状および第2所定形状は、積層方向からみて直線状に延びる形状である例に適用して説明する。なお、第1所定形状および第2所定形状は、積層方向から見て円弧状に延びる形状であってもよいし、折れ線状に延びる形状であってもよい。
【0127】
第1切断工程および第2切断工程により切り離された第1の磁性シート110および第2の磁性シート120は、接着工程により固定される。具体的には、図2に示すように、長手方向に隣り合った状態で固定テープ130により固定される。第1の磁性シート110における切断された端部と、第2の磁性シート120における切断された端部とは所定値以下の間隔Dで隣り合っている。第1の磁性シート110における磁性薄帯20と、第2の磁性シート120における磁性薄帯20とは相対して配置されている。
【0128】
図18は、多層磁性シート300の製造方法を説明する模式図である。
多層磁性シート300は、図18に示す製造装置600を用いて製造される。図18には、5層の磁性薄帯20を含む多層磁性シート300を製造する製造装置600が示されている。
【0129】
製造装置600には、製造工程の上流から下流に向かって、供給ロール601と、樹脂シート巻取りロール602と、第1磁性シート巻出しロール611と、第1巻取りロール612と、第1貼付けロール613と、第2磁性シート巻出しロール621と、第2巻取りロール622と、第2貼付けロール623と、第3磁性シート巻出しロール631と、第3巻取りロール632と、第3貼付けロール633と、第4磁性シート巻出しロール641と、第4巻取りロール642と、第4貼付けロール643と、第5磁性シート巻出しロール651と、第5貼付けロール653と、平坦化ロール663と、多層磁性シート巻取りロール670と、が主に設けられている。製造装置600には、さらに複数の誘導ロール680が設けられてもよい。なお、誘導ロール680は記載していない位置でも必要に応じて配置することができる。
【0130】
なお、製造装置600は、磁性薄帯20の数が2層以上4層以下の多層磁性シート300を製造してもよい。また、磁性薄帯20の数が6層以上の多層磁性シート300を製造してもよい。この場合、上述の第1磁性シート巻出しロール611等の数が磁性薄帯20の数に応じて変更される。
【0131】
磁性薄帯20の層数の上限は、適宜決定すればよい。例えは、20層でもよく、30層でもよい。層数を多くすると、製造装置600が大型化してしまうため、30層以下が好ましく、25層以下が好ましく、20層以下が好ましい。ただし、層数が多いと、多層磁性シート300を巻き取る場合、巻き取ることが困難になったり、巻き取るときに形状不良が生じたりすることがある。そのため、多層磁性シート300を巻き取る場合、層数は15層以下が好ましい。よく好ましくは10層以下である。また、磁性薄帯20の層数は3層以上が好ましく、4層以上がより好ましく、5層以上がより好ましい。
【0132】
供給ロール601には、図11に示すように、粘着層10の第1面11Aおよび第2面11Bに樹脂シート15が積層された積層体が巻き付けられている。
供給ロール601から巻き出された積層体は、図12に示すように、第1面11Aに配置された樹脂シート15が剥離される。剥離された樹脂シート15は、図18に示すように、樹脂シート巻取りロール602に巻き取られる。
【0133】
第1面11Aに配置された樹脂シート15が剥離された積層体は、誘導ロール680により、第1貼付けロール613に導かれる。第1貼付けロール613には、さらに第1磁性シート巻出しロール611から巻き出された磁性シート100が導かれている。
【0134】
第1貼付けロール613は、樹脂シート15が剥離された積層体に磁性シート100を押し付けて接着する。具体的には、対向して配置された2つのロールの間に、積層体と磁性シート100とを導き、2つのロールを用いて、図14に示すように、粘着層10の第1面11Aに磁性シート100の磁性薄帯20を押し付けて接着する。
【0135】
磁性シート100の接着される磁性薄帯20は、粘着層10と幅方向において中心が一致するように配置されもよいし、中心が離れて配置されてもよい。この場合、0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係(図5参照。)を満たすように配置されている。
【0136】
第1貼付けロール613により接着された磁性シート100の樹脂シート15は、磁性シート100から剥離されて第1巻取りロール612に巻き取られる。樹脂シート15が第1巻取りロール612に巻き取られた後の積層体は、第2貼付けロール623に導かれる。第2貼付けロール623には、さらに第2磁性シート巻出しロール621から巻き出された磁性シート100が導かれている。
【0137】
第2貼付けロール623は、第1貼付けロール613から導かれた積層体に磁性シート100を押し付けて接着する。磁性シート100の接着される磁性薄帯20は、第1貼付けロール613から導かれた積層体の粘着層10と幅方向において中心が一致するように配置されもよいし、中心が離れて配置されてもよい。
【0138】
この場合、0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係(図5参照。)を満たすように配置されている。第2貼付けロール623により接着された磁性シート100の樹脂シート15は、磁性シート100から剥離されて第2巻取りロール622に巻き取られる。
【0139】
樹脂シート15が第2巻取りロール622に巻き取られた後の積層体は、第3貼付けロール633に導かれる。第3貼付けロール633には、さらに第3磁性シート巻出しロール631から巻き出された磁性シート100が導かれている。
【0140】
第3貼付けロール633は、第2貼付けロール623から導かれた積層体に磁性シート100を押し付けて接着する。磁性シート100の接着される磁性薄帯20は、第2貼付けロール623から導かれた積層体の粘着層10と幅方向において中心が一致するように配置されもよいし、中心が離れて配置されてもよい。
【0141】
この場合、0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係(図5参照。)を満たすように配置されている。第3貼付けロール633により接着された磁性シート100の樹脂シート15は、磁性シート100から剥離されて第3巻取りロール632に巻き取られる。
【0142】
樹脂シート15が第3巻取りロール632に巻き取られた後の積層体は、第4貼付けロール643に導かれる。第4貼付けロール643には、さらに第4磁性シート巻出しロール641から巻き出された磁性シート100が導かれている。
【0143】
第4貼付けロール643は、第3貼付けロール633から導かれた積層体に磁性シート100を押し付けて接着する。磁性シート100の接着される磁性薄帯20は、第3貼付けロール633から導かれた積層体の粘着層10と幅方向において中心が一致するように配置されもよいし、中心が離れて配置されてもよい。
【0144】
この場合、0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係(図5参照。)を満たすように配置されている。第4貼付けロール643により接着された磁性シート100の樹脂シート15は、磁性シート100から剥離されて第4巻取りロール642に巻き取られる。
【0145】
樹脂シート15が第4巻取りロール642に巻き取られた後の積層体は、第5貼付けロール653に導かれる。第5貼付けロール653には、さらに第5磁性シート巻出しロール651から巻き出された磁性シート100が導かれている。
【0146】
第5貼付けロール653は、第4貼付けロール643から導かれた積層体に磁性シート100を押し付けて接着する。磁性シート100の接着される磁性薄帯20は、第4貼付けロール643から導かれた積層体の粘着層10と幅方向において中心が一致するように配置されもよいし、中心が離れて配置されてもよい。
【0147】
この場合、0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係(図5参照。)を満たすように配置されている。第5貼付けロール653から平坦化ロール663に導かれた積層体は、平坦化ロール663により平坦化処理が行われる。
【0148】
磁性薄帯20と粘着層10との関係は、上記のとおり、0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係(図5参照。)を満たすように配置されていることが好ましい。しかしながら、磁性シート100と積層体との積層工程において、位置関係のズレが生じる場合がある。この位置関係のズレが生じた場合、磁性薄帯20と粘着層10との関係において、例えば、隙間aがマイナスとなる場合が生じ得る。つまり、磁性薄帯20の一面側において、粘着層10の端部より磁性薄帯20の端部が突出する場合が生じ得る。磁性薄帯20の一面側において、粘着層10の端部より磁性薄帯20の端部が突出する場合が生じたとしても、磁性薄帯20の他面側において、磁性薄帯20と粘着層10との関係が0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係(図5参照。)を満たすように配置されておれば、磁性薄帯20は粘着層10に接着された状態を維持できる。
【0149】
平坦化処理が行われた後の積層体が、図6に示す多層磁性シート300となる。多層磁性シート300は、誘導ロール680を経由して多層磁性シート巻取りロール670に導かれる。多層磁性シート300は、多層磁性シート巻取りロール670に巻き取られる。
【0150】
なお、多層磁性シート300は、多層磁性シート巻取りロール670に巻き取られる方法以外に、多層磁性シート300を所要の長さに切断してもよい。
【0151】
図19は、図2の磁性シート100における樹脂シート15が剥離される状態を説明する長手方向の断面視図である。
製造装置600において図2に示す磁性シート100は、積層体などに接着されたのち、図19に示すように樹脂シート15および固定テープ130が剥離される。具体的には、第1の磁性シート110の樹脂シート15、第2の磁性シート120の樹脂シート15および固定テープ130が一体となって剥離される。
【0152】
このとき、第1の磁性シート110の磁性薄帯20と第2の磁性シート120の磁性薄帯20とは、他の磁性シート100の粘着層10に接着されているので、固定テープ130とともに樹脂シート15を剥離させても、所定値以下の間隔で隣り合った状態を維持できる。
【0153】
図20は、多層磁性シート300Tの製造方法を説明する模式図である。
多層磁性シート300Tは、図20に示す製造装置700を用いて製造される。図20には、25層の磁性薄帯20を含む多層磁性シート300Tを製造する製造装置700が示されている。
【0154】
この多層磁性シート300Tの製造方法は、多層磁性シート300を複数積層して多層磁性シート300Tを製造する方向である。用いる多層磁性シート300の数や、用いる多層磁性シート300における磁性薄帯20の層数により、多層磁性シート300Tにおける磁性薄帯20の層数を調整できる。
【0155】
製造装置700には、製造工程の上流から下流に向かって、供給ロール701と、樹脂シート巻取りロール702と、第1多層磁性シート巻出しロール711と、2つの第1巻取りロール712と、第1貼付けロール713と、第2多層磁性シート巻出しロール721と、2つの第2巻取りロール722と、第2貼付けロール723と、第3多層磁性シート巻出しロール731と、2つの第3巻取りロール732と、第3貼付けロール733と、第4多層磁性シート巻出しロール741と、2つの第4巻取りロール742と、第4貼付けロール743と、第5多層磁性シート巻出しロール751と、第5巻取りロール752と、第5貼付けロール753と、平坦化ロール763と、切断部770と、が主に設けられている。製造装置700には、さらに誘導ロール780が設けられてもよい。なお、誘導ロール780は記載していない位置でも必要に応じて配置することができる。
【0156】
なお、製造装置700は、磁性薄帯20の数が25層以上80層以下の多層磁性シート300Tを製造してもよい。また、磁性薄帯20の数が80層よりも多い多層磁性シート300Tを製造してもよいし、磁性薄帯20の数が25層より少ない多層磁性シート300Tを製造してもよい。多層磁性シート300Tにおける磁性薄帯20の数は10層以上であることが好ましく、15層以上であることが更に好ましい。また、積層された磁性薄帯20の合計は200層以下であることが好ましい。この場合、上述の第1多層磁性シート巻出しロール711等の数が磁性薄帯20の数に応じて変更される。また、第1多層磁性シート300等の多層磁性シート300における磁性薄帯20の層数によっても変更される。
【0157】
供給ロール701には、図11に示すように、粘着層10の第1面11Aおよび第2面11Bに樹脂シート15が積層された積層体が巻き付けられている。
供給ロール701から巻き出された積層体は、図12に示すように、第1面11Aに配置された樹脂シート15が剥離される。剥離された樹脂シート15は、図20に示すように、樹脂シート巻取りロール702に巻き取られる。
【0158】
第1面11Aに配置された樹脂シート15が剥離された積層体は、誘導ロール780により、第1貼付けロール713に導かれる。第1貼付けロール713には、さらに第1多層磁性シート巻出しロール711から巻き出された多層磁性シート300が導かれている。
【0159】
なお、供給ロール701に、多層磁性シート巻出しロールを用いてもよい。供給ロール701に多層磁性シート巻出しロールを用いる場合、巻き出された多層磁性シートは、2つの樹脂シート15のうちの一方の樹脂シート15が剥離され、第1貼付けロール713に導かれる。
【0160】
第1貼付けロール713に導かれる多層磁性シート300は、2つの樹脂シート15のうちの供給ロール701から導かれた積層体と対向する樹脂シート15が剥離される。剥離された樹脂シート15は、第1巻取りロール712に巻き取られる。
【0161】
第1貼付けロール713は、樹脂シート15が剥離された積層体に、樹脂シート15が剥離された多層磁性シート300を押し付けて接着する。具体的には、対向して配置された2つのロールの間に積層体と多層磁性シート300とを導き、2つのロールを用いて、図20に示すように、粘着層10の第1面11Aに多層磁性シート300の磁性薄帯20を押し付けて接着する。
【0162】
多層磁性シート300の接着される磁性薄帯20は、粘着層10と幅方向において中心が一致するように配置されもよいし、中心が離れて配置されてもよい。この場合、0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係(図5参照。)を満たすように配置されている。
【0163】
第1貼付けロール713により接着された多層磁性シート300の残りの樹脂シート15は、多層磁性シート300から剥離されて第1巻取りロール712に巻き取られる。その積層体は、第2貼付けロール723に導かれる。第2貼付けロール723には、さらに第2多層磁性シート巻出しロール721から巻き出された多層磁性シート300が導かれている。
【0164】
第2貼付けロール723に導かれる多層磁性シート300は、2つの樹脂シート15のうち、第1貼付けロール713から導かれた積層体と対向する樹脂シート15が剥離される。剥離された樹脂シート15は、第2巻取りロール722に巻き取られる。
【0165】
第2貼付けロール723は、第1貼付けロール713から導かれた積層体に多層磁性シート300を押し付けて接着する。多層磁性シート300の接着される磁性薄帯20は、第1貼付けロール713から導かれた積層体の粘着層10と幅方向において中心が一致するように配置されもよいし、中心が離れて配置されてもよい。この場合、0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係(図5参照。)を満たすように配置されている。
【0166】
第2貼付けロール723により接着された多層磁性シート300の残りの樹脂シート15は、多層磁性シート300から剥離されて第2巻取りロール722に巻き取られる。
【0167】
その後、積層体は第3貼付けロール733に導かれる。第3貼付けロール733には、さらに第3多層磁性シート巻出しロール731から巻き出された多層磁性シート300が導かれている。
【0168】
第3貼付けロール733に導かれる多層磁性シート300は、2つの樹脂シート15のうち、第2貼付けロール723から導かれた積層体と対向する樹脂シート15が剥離される。剥離された樹脂シート15は、第3巻取りロール732に巻き取られる。
【0169】
第3貼付けロール733は、第2貼付けロール723から導かれた積層体に多層磁性シート300を押し付けて接着する。多層磁性シート300の接着される磁性薄帯20は、第2貼付けロール723から導かれた積層体の粘着層10と幅方向において中心が一致するように配置されもよいし、中心が離れて配置されてもよい。この場合、0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係(図5参照。)を満たすように配置されている。
【0170】
第3貼付けロール733により接着された多層磁性シート300の残りの樹脂シート15は、多層磁性シート300から剥離されて第3巻取りロール732に巻き取られる。
【0171】
その後、積層体は第4貼付けロール743に導かれる。第4貼付けロール743には、さらに第4多層磁性シート巻出しロール741から巻き出された多層磁性シート300が導かれている。
【0172】
第4貼付けロール743に導かれる多層磁性シート300は、2つの樹脂シート15のうち、第3貼付けロール733から導かれた積層体と対向する樹脂シート15が剥離される。剥離された樹脂シート15は、第4巻取りロール742に巻き取られる。
【0173】
第4貼付けロール743は、第3貼付けロール733から導かれた積層体に多層磁性シート300を押し付けて接着する。多層磁性シート300の接着される磁性薄帯20は、第3貼付けロール733から導かれた積層体の粘着層10と幅方向において中心が一致するように配置されもよいし、中心が離れて配置されてもよい。この場合、0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係(図5参照。)を満たすように配置されている。
【0174】
第4貼付けロール743により接着された多層磁性シート300の残りの樹脂シート15は、多層磁性シート300から剥離されて第4巻取りロール742に巻き取られる。
【0175】
その後、積層体は第5貼付けロール753に導かれる。第5貼付けロール753には、さらに第5多層磁性シート巻出しロール751から巻き出された多層磁性シート300が導かれている。
【0176】
第5貼付けロール753に導かれる多層磁性シート300は、2つの樹脂シート15のうち、第4貼付けロール743から導かれた積層体と対向する樹脂シート15が剥離される。剥離された樹脂シート15は、第5巻取りロール752に巻き取られる。
【0177】
第5貼付けロール753は、第4貼付けロール743から導かれた積層体に多層磁性シート300を押し付けて接着する。多層磁性シート300の接着される磁性薄帯20は、第4貼付けロール743から導かれた積層体の粘着層10と幅方向において中心が一致するように配置されもよいし、中心が離れて配置されてもよい。この場合、0mm<隙間a、および、0mm<隙間bの関係(図5参照。)を満たすように配置されている。
【0178】
第5貼付けロール753から平坦化ロール763に導かれた積層体は、平坦化ロール763により平坦化処理が行われる。
【0179】
平坦化処理が行われた後の積層体が、図9に示す多層磁性シート300Tとなる。多層磁性シート300Tは、切断部770において所望の長さに切断される。所望の長さとしては、例えば100mm以上、500mm以下の長さを挙げることができる。多層磁性シート300Tの長さは、多層磁性シート300Tに求められる仕様に基づいて、適宜変更することができる。また、多層磁性シート300Tは、巻取り可能な層数の場合は、巻取りしてもよい。その後、所望の長さに切断して使用してもよい。
【0180】
ここでは、磁性薄帯20の数が5層の多層磁性シート300を、5回積層して磁性薄帯20の数が25層の多層磁性シート300Tを製造したが、磁性薄帯20の数が25層の多層磁性シート300Tをさらに積層して、磁性薄帯20の数が50層の多層磁性シート300Tを製造してもよい。
【0181】
多層磁性シート300Tにおける磁性薄帯20の数を25層以上80層程度以下とすることにより、多層磁性シート300Tを自動車などの移動体への非接触充電に用いることができる。なお、磁性薄帯20の数は80層以上であってもよい。好ましくは20層以下である。
【0182】
また、最終的に製造する多層磁性シート300Tにおける磁性薄帯20の層数に基づいて、積層させる多層磁性シート300における磁性薄帯20の層数を変更してもよい。
【0183】
さらに、積層させる複数の多層磁性シート300における磁性薄帯20の層数がそれぞれ異なってもよい。言い換えると、磁性薄帯20の層数が異なる複数の多層磁性シート300の組合せで多層磁性シート300Tを製造してもよい。
【0184】
多層磁性シート300Tを製造装置700により製造することにより、製造装置600により製造する場合と比較して、装置の小型化を図りやすい。製造装置600により製造する場合には、磁性シート100が巻き付けられた第1磁性シート巻出しロール611などを磁性薄帯20の層数だけ並べる必要があり、製造装置600が大型化しやすい。
【0185】
これに対して製造装置700は、多層磁性シート300が巻き付けられた第1多層磁性シート巻出しロール711などを用いるため、製造装置の小型化を図りやすい。言い換えると、多層磁性シート300Tを製造しやすい。
【0186】
本開示の磁性シート100および磁性シート100の製造方法によれば、第1の磁性シート110および第2の磁性シート120が固定テープ130により隣り合った状態で固定される。また、第1の磁性シート110および第2の磁性シート120は、磁性薄帯20が所定値以下の間隔Dで隣り合って固定される。第1の磁性シート110における樹脂シート15および第2の磁性シート120における樹脂シート15に接着された固定テープ130は、樹脂シート15とともに粘着層10から剥離することができる。
【0187】
磁性薄帯20が所定値以下の間隔Dで隣り合うため、磁性薄帯20が設けられていない部分に起因する特性の低下を抑制しやすい。言い換えると、第1の磁性シート110および第2の磁性シート120を含む磁性シート100は、求められる特性を損ないにくくなる。
【0188】
粘着層10および磁性薄帯20を積層させた積層体において、磁性薄帯20が切断されて長手方向に不連続な部分を有しても、当該積層体を磁性シート100として利用することができる。つまり、上述の積層体における磁性薄帯20が不連続な部分を切断して取り除くことができる。上述の積層体における不連続な部分を取り除いた残りを、第1の磁性シート110および第2の磁性シート120とし、第1の磁性シート110および第2の磁性シート120を固定テープ130で固定することで、磁性シート100として利用することが可能となる。
【0189】
粘着層10および磁性薄帯20を積層させた積層体において、当該積層体の長手方向の長さが所望の値よりも短い場合であっても、当該積層体を磁性シート100として利用することができる。つまり、所望の値よりも短い積層体および他の積層体を第1の磁性シート110および第2の磁性シート120とし、第1の磁性シート110および第2の磁性シート120を固定テープ130で固定することで、長手方向の長さが所望の値以上となる磁性シート100にすることができる。
【0190】
本開示の多層磁性シート300および多層磁性シート300Tによれば、磁性薄帯20が所定値以下の間隔Dで隣り合うため、磁性薄帯20が設けられていない部分に起因する特性の低下を抑制しやすい。少なくとも1層の磁性薄帯20に間隔Dを有していても、他の磁性薄帯20における間隔Dと対応する場所は、磁性薄帯20が連続して配置されている。そのため、少なくとも1層の磁性薄帯20に間隔Dを有していても、多層磁性シート300および多層磁性シート300Tは、求められる特性を損ないにくくなる。ここで、多層磁性シート300および多層磁性シート300Tに含まれる磁性薄帯20の層数は10層以上であることが好ましく、25層以上であることが更に好ましい。
【0191】
粘着層10および磁性薄帯20を積層させた積層体において、磁性薄帯20が切断されて長手方向に不連続な部分を有しても、当該積層体を多層磁性シート300および多層磁性シート300Tに利用することができる。つまり、上述の積層体における磁性薄帯20が不連続な部分を切断して取り除くことができる。上述の積層体における不連続な部分を取り除いた残りを、所定値以下の間隔Dで隣合わせることで、多層磁性シート300および多層磁性シート300Tに利用することが可能となる。
【0192】
粘着層10および磁性薄帯20を積層させた積層体において、当該積層体の長手方向の長さが所望の値よりも短い場合であっても、当該積層体を多層磁性シート300および多層磁性シート300Tに利用することができる。つまり、所望の値よりも短い積層体および他の積層体を第1所定値以下の間隔Dで隣合わせることで、長手方向の長さが所望の値以上となる多層磁性シート300および多層磁性シート300Tに利用することができる。
【0193】
積層方向からみて、第1の磁性シート110における端部111および第2の磁性シート120における端部121の形状を直線状に延びる形状とすることで、第1の磁性シート110および第2の磁性シート120を隣り合った状態で固定しやすくなる。
【0194】
粘着層10における粘着剤12が設けられた領域の幅Aが、磁性薄帯20の幅Bよりも広くなる。粘着層10に磁性薄帯20を貼り付ける際に、粘着層10や磁性薄帯20に蛇行が生じても、磁性薄帯20の全面に粘着層10の粘着剤12が配置されやすくなる。
【0195】
幅Aから幅Bを引いた値を0.2mm以上とすることにより、粘着層10に磁性薄帯20を貼り付ける際に、磁性薄帯20に粘着剤12が配置されない部分の発生を防ぎやすい。幅Aから幅Bを引いた値を3mm以下とすることにより、磁性シート100における磁性薄帯20が配置されていない部分が大きくなることを防ぎやすい。また、磁性シートを並列して並べたときに、磁性薄帯間の間隔が大きくなることを防ぎやすい。
【0196】
磁性薄帯20をアモルファス合金薄帯、又は、ナノ結晶合金薄帯とすることにより、磁性薄帯20を軟磁性薄帯とすることが可能となる。また、合金を用いて磁性薄帯20を形成することができる。
【0197】
磁性薄帯20に複数の小片22を含ませることにより、磁性シート100、多層磁性シート300および多層磁性シート300Tの特性を向上させやすくなる。具体的には、磁性シート100、多層磁性シート300および多層磁性シート300Tをインダクタ用磁性体として用いる場合にQ値の向上を図りやすくなる。また、磁性シート100、多層磁性シート300および多層磁性シート300Tを磁気シールド用磁性体として用いる場合には、磁性薄帯20の電流路を分断して渦電流損を低減しやすくなる。
【0198】
第1積層端部301又は第2積層端部302に樹脂シート15を設けることにより、製造された多層磁性シート300および多層磁性シート300Tを保護しやすくなる。例えば、製造した後の多層磁性シート300および多層磁性シート300Tを搬送する際に、粘着層10や磁性薄帯20が損傷することを防ぎやすい。
【0199】
また、第1積層端部301に、アモルファス合金薄帯、又は、ナノ結晶合金薄帯、もしくは、他の磁性材や、アルミニウム等の金属箔、並びに樹脂シート等を貼り付けてもよい。
【0200】
隣接する磁性薄帯20の間のうち、少なくとも1つの間に2層以上の粘着層10が積層されることにより、10層以上の磁性薄帯20を有する多層磁性シート300Tを製造しやすくなる。
【0201】
なお、本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本開示に係る磁性シート100、多層磁性シート300および多層磁性シート300Tは、誘導素子などとして使用することができる。
【符号の説明】
【0202】
10…粘着層、 11…支持体、 11A…第1面、 11B…第2面、 12…粘着剤、 15…樹脂シート、 20…磁性薄帯、 22…小片、 100…磁性シート、 110…第1の磁性シート、 111…端部、 120…第2の磁性シート、 121…端部、 130…固定テープ、 300…多層磁性シート、 300T…多層磁性シート、 301…第1積層端部、 302…第2積層端部、
D…間隔
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