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特開2023-152060樹脂組成物、繊維材料、及び、成形材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152060
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】樹脂組成物、繊維材料、及び、成形材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20231005BHJP
   C08J 5/06 20060101ALI20231005BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20231005BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20231005BHJP
   C08L 35/00 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20231005BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08J5/06 CER
C08J5/06 CEZ
D06M15/55
D06M15/263
C08L35/00
C08K3/04
C08K7/02
D06M101:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061995
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶川 正浩
(72)【発明者】
【氏名】木村 吉延
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4L033
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB28
4F072AC12
4F072AD44
4F072AG03
4F072AL02
4F072AL04
4F072AL17
4J002BH02X
4J002CD00W
4J002CD05W
4J002CD06W
4J002DA016
4J002FA046
4J002FD016
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GL00
4J002GN00
4L033AA09
4L033AB01
4L033AC11
4L033CA18
4L033CA49
(57)【要約】
【課題】本発明は、接着性に優れ、曲げ強度など機械強度に優れた成形材料を得ることができる樹脂組成物、繊維材料、及び、成形材料を提供する。
【解決手段】本発明は、エポキシ樹脂、及び、無水マレイン酸・アクリル共重合体を含有する樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、150~300g/eqであり、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の酸価が、100~500mgKOH/gであり、前記エポキシ樹脂、及び、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の含有割合(質量比)が、20/80~80/20である樹脂組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、及び、無水マレイン酸・アクリル共重合体を含有する樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、150~300g/eqであり、
前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の酸価が、100~500mgKOH/gであり、
前記エポキシ樹脂、及び、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の含有割合(質量比)が、20/80~80/20である樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物、及び、強化繊維を含有する繊維材料。
【請求項3】
前記強化繊維が、炭素繊維である請求項2に記載の繊維材料。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の繊維材料と、熱可塑性樹脂とを含有する成形材料。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である請求項4に記載の成形材料。
【請求項6】
曲げ強度が、60MPa以上である請求項5に記載の成形材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、繊維材料、及び、成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維は、軽量でありながら、強度および弾性率に優れるため、種々のマトリックス樹脂と組み合わせた複合材料として、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材、土木建築材およびスポーツ用品等の多くの分野に用いられている。
【0003】
炭素繊維を用いた複合材料の代表的な形態として、プリプレグを積層して得られるプリフォームをプレス成形(加圧力の下で脱泡し、賦形する成形方法)した成形品が挙げられる。このプリプレグは、連続した炭素繊維を一方向に配列させた炭素繊維基材に樹脂を含浸して製造する方法が一般的である。
【0004】
一方、複雑な形状への形状追従性に優れ、短時間成形可能な不連続な炭素繊維(チョップド、ウェブ等)を用いた炭素繊維複合材料も提案されているが、比強度、比剛性などの力学特性や特性の安定性において、構造材としての実用性能はプリプレグが優れている。
【0005】
また、近年、炭素繊維複合材料として、成形性、取扱い性、得られる成形品の力学特性に優れた成形材料が要求されるようになり、更に、工業的にも、より高い経済性、生産性が必要になってきている。これらの要求に応えるため、マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を用いたプリプレグの開発が進められている。
【0006】
炭素繊維の優れた特性を活かすには、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を高めることが重要であり、炭素繊維束とマトリックス樹脂との界面接着性を向上させるため、通常、炭素繊維束に気相酸化や液相酸化等の酸化処理を施し、炭素繊維表面に酸素含有官能基を導入する方法が行われている。例えば、特許文献1では炭素繊維束に電解処理を施すことにより、界面接着性の指標である層間せん断強度を向上させる方法が提案されている。
【0007】
なお、上述した炭素繊維の表面改質のみでは、十分な界面接着性が得られない場合、サイジング処理を追加する試みがなされる。例えば、特許文献2~4には、エポキシ基を有する化合物をサイジング剤(サイズ剤)として用いることで、界面接着性を向上させる手法が提案されている。また、特許文献3や特許文献4では、アミノ基やアミド基を有するサイジング剤を用いることで、サイジング剤を塗布した炭素繊維とマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂との相溶性を向上させる手法が提案されている。
【0008】
また、特許文献5では、炭素繊維の長手方向と垂直な断面において、全元素に対する酸素の組成比が2%以上である層が10nm以上存在し、アミノ基やアミド基、更に3官能以上のエポキシ基を有し、特定の重量平均分子量を有する化合物をサイジング剤として塗布したサイジング剤塗布炭素繊維が、熱可塑性樹脂に対して、接着性に優れることが開示されている。しかしながら、前記サイジング剤塗布炭素繊維においても、熱可塑性樹脂として、機械的特性に優れた効果を発揮するポリアミド樹脂との接着性(物性評価では曲げ強度)に関しては、十分ではなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平04-361619号公報
【特許文献2】特公昭63-14114号公報
【特許文献3】特開2013-166922号公報
【特許文献4】特開2006-89734号公報
【特許文献5】特開2019-65441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明が解決しようとする課題は、接着性に優れ、曲げ強度など機械強度に優れた成形材料を得ることができる樹脂組成物、繊維材料、及び、成形材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂、及び、特定の酸価を有する無水マレイン酸・アクリル共重合体を含有する樹脂組成物を用いることにより、強化繊維のサイズ剤として使用でき、前記樹脂組成物を用いて得られる繊維材料と熱可塑性樹脂との接着性に優れ、曲げ強度など機械強度に優れた成形材料が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂、及び、無水マレイン酸・アクリル共重合体を含有する樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、150~300g/eqであり、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の酸価が、100~500mgKOH/gであり、前記エポキシ樹脂、及び、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の含有割合(質量比)が、20/80~80/20である樹脂組成物に関する。
【0013】
本発明は、前記樹脂組成物、及び、強化繊維を含有する繊維材料に関する。
【0014】
本発明の繊維材料は、前記強化繊維が、炭素繊維であることが好ましい。
【0015】
本発明は前記繊維材料と、熱可塑性樹脂とを含有する成形材料に関する。
【0016】
本発明の成形材料は、前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂であることが好ましい。
【0017】
本発明の成形材料は、曲げ強度が、60MPa以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の樹脂組成物をサイズ剤として用いることで、強化繊維の表面を改質することで得られる繊維材料(サイジング済み強化繊維)は、マトリックス樹脂として使用される熱可塑性樹脂との接着性に優れるため、得られる成形材料は曲げ強度などの機械強度に優れ、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材等の高い機械強度が要求される分野にも使用することができ、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[エポキシ樹脂]
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂、及び、無水マレイン酸・アクリル共重合体を含有する樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、150~300g/eqであることを特徴とする。前記エポキシ樹脂は前記範囲のエポキシ当量を有することで、前記エポキシ樹脂を含有するサイズ剤である前記樹脂組成物と強化繊維を含有し得られる繊維材料(サイジング済み強化繊維)と、後述する熱可塑性樹脂であるポリアミド樹脂等と、前記エポキシ樹脂との反応性が高く、接着性が向上し、得られる成形材料が優れた機械強度を発揮でき、有用となる。
【0020】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、多価フェノール化合物やフェノール樹脂をグリシジルエーテル化することによって得られるグリシジルオキシアリール構造を分子構造内に有するエポキシ樹脂が挙げられ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、等のビスフェノール型エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールSノボラック型エポキシ樹脂、アルコキシ基含有ノボラック型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;その他、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(通称ザイロック樹脂のエポキシ化物)、レゾルシンのジグリシジルエーテル、ハイドロキノンのジグリシジルエーテル、カテコールのジグリシジルエーテル、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、硫黄含有エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の2官能型エポキシ樹脂、トリグリシジルシソシアヌレート、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール樹脂のエポキシ化物)、アルコキシ基含有ノボラック型エポキシ樹脂、アルコキシ基含有フェノールアラルキル樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、耐熱性付与の観点から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂や、クレゾールボノラック型エポキシ樹脂などが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、150~300g/eqであり、好ましくは、160~280g/eqであり、より好ましくは、170~250g/eqである。前記エポキシ当量が前記範囲内にあると、繊維材料と熱可塑性樹脂との接着性が良好となり、好ましい。
【0022】
[無水マレイン酸・アクリル共重合体]
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂、及び、無水マレイン酸・アクリル共重合体を含有する樹脂組成物であって、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の酸価が、100~500mgKOH/gであることを特徴とする。前記無水マレイン酸・アクリル共重合体(以下、単に「共重合体」をいう場合がある。)は、エポキシ樹脂に対して、硬化剤(架橋剤)としての機能を有し、更に、前記共重合体を含有するサイズ剤である前記樹脂組成物と強化繊維を含有し得られる繊維材料(サイジング済み強化繊維)と、後述する熱可塑性樹脂であるポリアミド樹脂等との接着性が向上し、得られる成形材料が優れた機械強度を発揮でき、有用となる。
【0023】
前記無水マレイン酸・アクリル共重合体としては、不飽和カルボン酸である無水マレイン酸を使用する。前記無水マレイン酸を用いることで、後述する熱可塑性樹脂であるポリアミド樹脂等と前記共重合体を含有する樹脂組成物との反応性が高く、接着性が向上、有用である。
【0024】
また、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の合成において、前記無水マレイン酸に加えて、使用可能なアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、ジ(メタ)アクリル酸(ジ)エチレングリコ-ル、ジ(メタ)アクリル酸-1,4-ブタンジオ-ル、ジ(メタ)アクリル酸-1,6-ヘキサンジオ-ル、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロ-ルプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸エステル等を使用することができる。中でも、粘度低減の効果や、得られる成形材料の耐熱性、繊維材料と熱可塑性樹脂との接着性の観点から、炭素数が1~12の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどが好ましく、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の強化繊維への濡れ性(繊維濡れ性)向上の観点から、炭素数が4~12の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーがより好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどがより好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記無水マレイン酸・アクリル共重合体を構成する無水マレイン酸とアクリル系モノマーの含有割合(質量比)としては、繊維材料と熱可塑性樹脂との接着性の観点から、好ましくは、25/75~75/25であり、より好ましくは、30/70~70/30である。
【0026】
前記無水マレイン酸・アクリル共重合体を構成する無水マレイン酸とアクリル系モノマーに加えて、必要に応じて、その他モノマー成分として、スチレン等の不飽和二重結合など含む重合性モノマーを使用することができる。
【0027】
前記無水マレイン酸・アクリル共重合体を構成する無水マレイン酸とアクリル系モノマーの含有割合として、強化繊維への濡れ性(繊維濡れ性)向上の観点から、モノマー成分全量100質量%に対して、70~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。
【0028】
前記無水マレイン酸・アクリル共重合体は、上記無水マレイン酸やアクリル系モノマーなどを、所望の特性に応じて適宜、組み合わせて重合することにより、得ることができる。また、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体など、いずれを含んでいてもよい。
【0029】
(重合方法)
前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の重合方法としては、任意の適切な方法を採用することができ、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合が挙げられ、中でも、取り扱いやすさの観点から、溶液重合が好ましい。
【0030】
(ラジカル重合開始剤)
前記無水マレイン酸・アクリル共重合体は、例えば、ラジカル重合する際に、ラジカル重合開始剤を含んでもよい。前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、加熱時にフリーラジカルを発生させる熱重合開始剤であり得る。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等が挙げられる。中でも、過酸化物系ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0032】
前記過酸化物系ラジカル重合開始剤としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物;tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,4-ビス(1-tert-ブチルパーオキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド化合物;ジラウロイルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のジアシルパーオキサイド化合物;tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシラウレート、(1,1-ジメチルプロピル)2-エチルパーヘキサノエート、tert-ブチル2-エチルパーヘキサノエート、tert-ブチル3,5,5-トリメチルパーヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシマレイン酸等のパーオキシエステル化合物;等が挙げられる。
【0033】
前記アゾ系ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチル-バレロニトリル等のアゾニトリル化合物;2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等のアゾアミド化合物;2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)等のアルキルアゾ化合物;等が挙げられる。
【0034】
前記ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、日油社製の「パーブチルC」、「パーブチルA」、「パーブチルP」、「パーブチルL」、「パーブチルO」、「パーブチルND」、「パーブチルZ」、「パーブチルI」、「パークミルP」、「パークミルD」、「パーヘキシルD」、「パーヘキシルA」、「パーヘキシルI」、「パーヘキシルZ」、「パーヘキシルND」、「パーヘキシルO」、「パーヘキシルPV」、「パーヘキシルO」等が挙げられる。
【0035】
前記重合開始剤の使用量としては、通常の使用量であればよく、例えば、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体を構成するモノマー全量の合計100質量部に対して、0.005~1質量部程度の範囲から選択することができ、好ましくは0.01~0.8質量部である。
【0036】
重合温度、及び、重合時間としては、使用するモノマーの種類、重合開始剤の種類等に応じて、適宜選択することができ、例えば、重合温度は20~150℃程度とすることができ、重合時間は2時間~240時間程度とすることができる。
【0037】
(連鎖移動剤)
また、重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤)を使用することができる。前記連鎖移動剤としては、例えば、n-ラウリルメルカプタン、t-ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、2-メルカプトエタノール等のメルカプタン類から選択され、中でもt-ラウリルメルカプタンの使用が好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記連鎖移動剤の使用量としては、通常の使用量であればよく、例えば、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体を構成するモノマー全量の合計100質量部に対して、0.001~0.5質量部程度とすることができ、好ましくは0.02~0.15質量部程度である。
【0039】
前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の酸価は、100~500mgKOH/gであり、好ましくは、150~480mgKOH/gであり、より好ましくは、250~460mgKOH/gである。前酸価が前記範囲内であると、重合が容易となり、有用である。
【0040】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂、及び、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の含有割合(質量比)が、20/80~80/20であることを特徴とする。前記含有割合(質量比)が前記範囲内であることで、繊維材料と熱可塑性樹脂との接着性が良好となり、好ましい。なお、前記エポキシ樹脂、及び、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の質量比としては、好ましくは、25/75~75/25であり、より好ましくは、30/70~70/30であり、更に好ましくは、35/65~65/35である。
【0041】
(硬化剤(架橋剤))
前記樹脂組成物には、前記エポキシ樹脂、及び、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体以外に、必要に応じて、硬化剤(架橋剤)をさらに含んでもよい。前記架橋剤としては、特に制限されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤等が挙げられる。前記架橋剤としては、使用する樹脂組成物に含まれる官能基の種類等に応じて、適宜使用することができる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記樹脂組成物には、前記硬化反応を促進する観点から、硬化触媒を使用することができる。前記硬化触媒としては、例えばトリエチルアミン、N,N-ベンジルメチルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミン、N,N-ジメチルアニリンなどのアミン類;メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン等のフォスフィン類等を使用することができる。
【0043】
(その他添加剤)
前記樹脂組成物には、必要に応じて、その他の添加剤を含有してもよい。前記添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、潤滑剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤等の添加剤、pH調整剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、分散安定剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機充填剤、有機充填剤、可塑剤、補強剤、触媒、抗菌剤、防カビ剤、防錆剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤などを用いることができる。これら添加剤の配合量は、特に制限されず、適宜、選択し得る。
【0044】
(溶剤)
前記樹脂組成物には、必要に応じて、溶剤を使用することができる。前記溶剤としては、例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリル等を使用することができる。などが挙げられる。前記使用量の範囲内であると、粘度低減に効果があり、強化繊維に前記樹脂組成物(ワニス)を塗布・含浸することが容易であり、作業性に優れ、好ましい。
【0045】
前記樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂前記、及び、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体の架橋反応によって硬化した皮膜等の硬化物を形成することができる。具体的には、前記エポキシ樹脂、及び、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体を混合した前記樹脂組成物を、強化繊維等に塗布・含浸した後、加熱等することによって、前記樹脂組成物に含まれる前記エポキシ樹脂と、前記無水マレイン酸・アクリル共重合体が反応し、皮膜等の硬化物を形成することができる。これにより得られた繊維材料、及び、前記繊維材料を用いて得られる成形材料は、優れた接着性や集束性を発揮できる。
【0046】
[繊維材料]
本発明の繊維材料は、前記樹脂組成物、及び、強化繊維を含有することを特徴とする。前記樹脂組成物と前記強化繊維を使用することで、強化繊維の表面に、皮膜等の硬化物を形成することができ、更に、熱可塑性樹脂であるポリアミド樹脂などを塗布・含浸することで、これらの接着性に優れ、得られる成形材料の曲げ強度などの機械強度に優れ、好ましい。
【0047】
(強化繊維)
前記強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、金属繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維等の有機繊維などが挙げられるが、より高強度、高弾性の成形品が得られることから、炭素繊維又はガラス繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維は単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0048】
前記ガラス繊維としては、例えば、含アルカリガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス等を原料にして得られたものを使用することができるが、経時劣化も少なく機械的特性が安定している無アルカリガラス(Eガラス)を使用することが好ましい。
【0049】
前記炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できるが、これらの中でも、容易に高強度の炭素繊維が得られることから、ポリアクリロニトリル系のものが好ましい。
【0050】
前記強化繊維としては、例えば、撚糸、紡糸、紡績加工、不織加工したものを使用することができる。また、前記炭素繊維の形状としては、フィラメント、ヤーン、ロービング、ストランド、チョップドストランド、フェルト、ニードルパンチ、クロス、ロービングクロス、ミルドファイバー、ナノファイバー等のものを使用することができる。
【0051】
前記強化繊維の表面に、前記樹脂組成物を用いることによって形成された皮膜を形成して、繊維材料を形成する方法としては、例えば、前記樹脂組成物をキスコーター法、ローラー法、含浸法、スプレー法、刷毛などその他公知の方法で、前記強化繊維表面に前記樹脂組成物を均一に塗布し、次いで常温または加熱下で硬化させることによって形成する方法が挙げられる。前記前記樹脂組成物が溶媒として有機溶剤を含む場合には、前記塗布後に加熱ローラーや熱風、熱板等を用いて、加熱乾燥することが好ましい。
【0052】
また、前記硬化は、例えば、前記樹脂組成物の架橋反応によって硬化した皮膜を形成する場合には、概ね200~300℃で加熱することが好ましく、250~290℃がより好ましく、成形材料の機械特性(曲げ強度)が優れる観点から、260~280℃が更に好ましい。
【0053】
本発明の繊維材料の成分中の、前記強化繊維の含有率は、得られる成形材料の機械強度がより向上することから、1~40質量%の範囲が好ましく、3~20質量%の範囲がより好ましい。
【0054】
[成形材料]
本発明の成形材料は、前記繊維材料と、熱可塑性樹脂とを含有することを特徴とする。前記樹脂組成物によって表面処理の施された繊維材料(サイジング済み強化繊維)は、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂と組み合わせて使用し得られる成形材料を形成した際に、前記繊維材料と熱可塑性樹脂との界面の接着性(密着性)を著しく向上できるため、成形材料の曲げ強度等の機械強度を向上することが可能である。
【0055】
(熱可塑性樹脂)
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド等のポリオレフィン樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリアセタール等を使用することができ、中でも、成形物の機械的物性の観点から、ポリアミド樹脂であることが好ましい。
【0056】
前記表面処理の施された繊維材料(サイジング済み強化繊維)と前記熱可塑性樹脂と(必要に応じて重合性単量体等と)を含む成形材料としては、例えば、プリプレグやシートモールディングコンパウンド(SMC)等が挙げられる。
【0057】
前記プリプレグとしては、例えば、前記熱可塑性樹脂を離型紙上に塗布し、その塗布面に表面処理の施された繊維材料を載置し、必要に応じてローラー等を用いて押圧含浸する方法が挙げられる。
【0058】
また、前記シートモールディングコンパウンドは、例えば、前記熱可塑性樹脂を、前記表面処理の施された繊維材料に十分含浸し、シート状に加工等することによって製造することができる。
【0059】
前記成形材料の硬化は、例えば、加圧(例えば、1~5MPa)または常圧下、加熱(例えば、200~300℃)または光照射によって、ラジカル重合させることによって進行させることができる。このような場合には、公知の熱硬化剤や光硬化剤等を組み合わせ使用することもできる。
【0060】
[用途]
本発明の樹脂組成物は、優れた接着性や繊維の集束性を有し、高強度の成形材料が得られることから、コーティング剤や接着剤、成形材料をはじめ、強化繊維の集束剤(サイズ剤)、紙加工剤、セメント混和剤、シーリング剤、防水剤などの建築材料や、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材、土木建築材およびスポーツ用品等の様々な用途に使用することが可能である。
【実施例0061】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0062】
(酸価の測定)
仕込み量に基づき、下記計算式にて、得られる共重合体の理論酸価を計算した。なお、下記計算式中、酸官能基含有モノマーとは、無水マレイン酸や、その他の酸官能基含有モノマー(例えば、アクリル酸など)を指す。
共重合体の理論酸価(mgKOH/g)=[(酸官能基含有モノマーの仕込み質量/全モノマーの仕込み質量)×100/酸官能基含有モノマーの分子量]×酸官能基含有モノマーの官能基数×561
【0063】
(粘度の測定)
B型粘度計にて、ロータ-No.3またはNo.4、回転数60rpmの条件にて測定(mPa・s)を行った。
なお、作業性や繊維への濡れ性(繊維濡れ性)の観点から、粘度として、1~10000mPa・sが好ましく、1000~50000mPa・sがより好ましい。
【0064】
〔合成例1〕
(無水マレイン酸・アクリル共重合体の調製)
攪拌機、温度計および冷却器、窒素ブローを取り付けた2.0Lの反応容器中に、無水マレイン酸を98.4質量部、メチルイソブチルケトン200.0質量部を仕込み120℃まで加熱したのち、ここにアクリル酸メチルを147.6質量部、重合開始剤(パーヘキシルO、日油株式会社製、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)を1.0質量部、メチルイソブチルケトンを50.0質量部混合したものを3時間かけて滴下した。滴下して2時間ホールド後、冷却し、理論酸価約460の無水マレイン酸・アクリル共重合体を得た。得られた前記共重合体を含む溶液中の共重合体の含有量(以下、「共重合体の不揮発分」という。)は49.5質量%、粘度は1900mPa・sであった。
【0065】
〔合成例2〕
(無水マレイン酸・アクリル共重合体の調製)
攪拌機、温度計および冷却器、窒素ブローを取り付けた2.0Lの反応容器中に、無水マレイン酸を98.4質量部、メチルイソブチルケトン200.0質量部を仕込み80℃まで加熱したのち、ここにメタアクリル酸ブチルを140.2質量部、メタアクリル酸を4.9質量部、スチレンを2.5部、重合開始剤(パーヘキシルO、日油株式会社製、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)を1.0質量部、メチルイソブチルケトンを50.0質量部混合したものを3時間かけて滴下した。滴下して2時間ホールド後、冷却し、理論酸価約460の無水マレイン酸・アクリル共重合体を得た。前記共重合体の不揮発分は50.3質量%、粘度は4950mPa・sであった。
【0066】
〔合成例3〕
(アクリル酸・アクリル共重合体の調製)
攪拌機、温度計および冷却器、窒素ブローを取り付けた2.0Lの反応容器中に、メチルイソブチルケトン200.0質量部を仕込み120℃まで加熱したのち、ここにアクリル酸145.0質量部、アクリル酸メチルを101.0質量部、重合開始剤(パーヘキシルO、日油株式会社製、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)を1.0質量部、メチルイソブチルケトンを50.0質量部混合したものを3時間かけて滴下した。滴下して2時間ホールド後、冷却し、理論酸価約460のアクリル酸・アクリル共重合体を得た。前記共重合体の不揮発分は49.7質量%、粘度は1150mPa・sであった。
【0067】
[実施例1]
(繊維材料の調製)
合成例1で得られた共重合体75.0質量部と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN-770、DIC株式会社製、エポキシ当量180~200g/eq)25.0質量部、メチルエチルケトン1900.0質量部を混合溶解し、樹脂組成物を調製した。
続いて、170mm×170mm、約6gの試験布を、前記試験布1枚に対して、20gの前記樹脂組成物でディッピング加工した。加工後、ドラフト内で乾燥して溶剤を揮発させた。揮発後、得られた試験布をテフロン織物シート(EBM製、商品名:厚口ベーキングシート、厚み0.1mm)と、2mm厚ステンレス金属板で挟み込み、270℃に設定した熱プレスで、2MPaの圧力のもと、3分間加熱処理して、繊維材料を得た。
【0068】
[実施例2]
(繊維材料の調製)
合成例1で得られた共重合体50.0質量部と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN-770、DIC株式会社製、エポキシ当量180~200g/eq)50.0質量部、メチルエチルケトン1900.0質量部を混合溶解し、樹脂組成物を調製した。
続いて、170mm×170mm、約6gの試験布を、前記試験布1枚に対して、20gの前記樹脂組成物でディッピング加工した。加工後、ドラフト内で乾燥して溶剤を揮発させた。揮発後、得られた得られた試験布をテフロン織物シート(EBM製、商品名:厚口ベーキングシート、厚み0.1mm)と、2mm厚ステンレス金属板で挟み込み、270℃に設定した熱プレスで、2MPaの圧力のもと、3分間加熱処理して、繊維材料を得た。
【0069】
[実施例3]
(繊維材料の調製)
合成例2で得られた共重合体50.0質量部と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN-770、DIC株式会社製、エポキシ当量180~200g/eq)50.0質量部、メチルエチルケトン1900.0質量部を混合溶解し、樹脂組成物を調製した
続いて、170mm×170mm、約6gの試験布を、前記試験布1枚に対して、20gの前記樹脂組成物でディッピング加工した。加工後、ドラフト内で乾燥して溶剤を揮発させた。揮発後、得られた得られた試験布をテフロン織物シート(EBM製、商品名:厚口ベーキングシート、厚み0.1mm)と、2mm厚ステンレス金属板で挟み込み、270℃に設定した熱プレスで、2MPaの圧力のもと、3分間加熱処理して、繊維材料を得た。
【0070】
[比較例1]
(繊維材料の調製)
170mm×170mm、約6gの試験布を、テフロン織物シート(EBM製、商品名:厚口ベーキングシート、厚み0.1mm)と、2mm厚ステンレス金属板で挟み込み、270℃に設定した熱プレスで、2MPaの圧力のもと、3分間加熱処理して、樹脂組成物によるディッピング加工を行わない繊維材料を得た。
【0071】
[比較例2]
(繊維材料の調製)
合成例3で得られた共重合体50.0質量部と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN-770、DIC株式会社製、エポキシ当量180~200g/eq)50.0質量部、メチルエチルケトン1900.0質量部を混合溶解し、樹脂組成物を調製した。
170mm×170mm、約6gの試験布を、前記試験布1枚に対して、20gの前記樹脂組成物でディッピング加工した。加工後、ドラフト内で乾燥して溶剤を揮発させた。揮発後、得られた試験布をテフロン織物シート(EBM製、商品名:厚口ベーキングシート、厚み0.1mm)と、2mm厚ステンレス金属板で挟み込み、270℃に設定した熱プレスで、2MPaの圧力のもと、3分間加熱処理して、繊維材料を得た。
【0072】
[比較例3]
(繊維材料の調製)
合成例1で得られた共重合体100.0質量部、及び、メチルエチルケトン1900.0質量部を混合溶解し、樹脂組成物を調製した
続いて、170mm×170mm、約6gの試験布を、前記試験布1枚に対して、20gの前記樹脂組成物でディッピング加工した。加工後、ドラフト内で乾燥して溶剤を揮発させた。揮発後、得られた得られた試験布をテフロン織物シート(EBM製、商品名:厚口ベーキングシート、厚み0.1mm)と、2mm厚ステンレス金属板で挟み込み、270℃に設定した熱プレスで、2MPaの圧力のもと、3分間加熱処理して、繊維材料を得た。
【0073】
[比較例4]
(繊維材料の調製)
合成例2で得られた共重合体100.0質量部、メチルエチルケトン1900.0質量部を混合溶解し、樹脂組成物を調製した
続いて、170mm×170mm、約6gの試験布を、前記試験布1枚に対して、20gの前記樹脂組成物でディッピング加工した。加工後、ドラフト内で乾燥して溶剤を揮発させた。揮発後、得られた得られた試験布をテフロン織物シート(EBM製、商品名:厚口ベーキングシート、厚み0.1mm)と、2mm厚ステンレス金属板で挟み込み、270℃に設定した熱プレスで、2MPaの圧力のもと、3分間加熱処理して、繊維材料を得た。
【0074】
[比較例5]
(繊維材料の調製)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN-770、DIC株式会社製、エポキシ当量180~200g/eq)100.0質量部、メチルエチルケトン1900.0質量部を混合溶解し、樹脂組成物を調製した
続いて、170mm×170mm、約6gの試験布を、前記試験布1枚に対して、20gの前記樹脂組成物でディッピング加工した。加工後、ドラフト内で乾燥して溶剤を揮発させた。揮発後、得られた得られた試験布をテフロン織物シート(EBM製、商品名:厚口ベーキングシート、厚み0.1mm)と、2mm厚ステンレス金属板で挟み込み、270℃に設定した熱プレスで、2MPaの圧力のもと、3分間加熱処理して、繊維材料を得た。
【0075】
[曲げ強度の評価]
メチルエチルケトンに、ポリアミド樹脂を溶解して、固形分が5質量%となる様に調製した樹脂溶液に、実施例及び比較例で得られた繊維材料を、約6gになるようにカットしたものを、前記ポリアミド樹脂溶液40gにて、ディッピング加工し、自然乾燥して、加工シートを得た。得られた加工シートを2枚重ね合わせて、270℃の熱プレスで、2MPaの圧力をかけながら、3分間加熱処理し、板状の成形材料を得た。
得られた成形材料を用いて、JIS K-7171(ISO178)に準拠し、幅20mm、長さ85mmに切り出し、試験片とした。この試験片を、スパン26mm、速度0.8mm/minの条件にて、曲げ強度(MPa)を測定した。評価結果を表1(270℃で熱プレス)に示した。
なお、前記曲げ強度が、60MPa以上であることが好ましく、80MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることが更に好ましく、100MPa~150MPaが特に好ましい。前記曲げ強度が、前記範囲内であると、例えば、自動車用途などに要求される機械物性(機械強度)を満足させることが可能となり、好ましい。
【0076】
【表1】
【0077】
上記評価結果より、全ての実施例において、曲げ強度が高く、サイズ剤である樹脂組成物を用いて繊維材料を調製したことで、ポリアミド樹脂と前記繊維材料との接着性が高く、機械強度に優れることを確認できた。
特に、実施例1~3では、繊維材料を調製する際に、加熱温度を270℃と高く設定することにより、試験布乾燥時のサイズ剤の試験布表面への濡れ性が良好となり、曲げ強度が、向上することが確認できた。
【0078】
一方、上記評価結果より、比較例1では、樹脂組成物を使用せず、樹脂組成物によるディッピング加工を行わない繊維材料を用いて、ポリアミド樹脂をディッピング加工して成形材料を調製したことで、曲げ強度が非常に劣ることが確認された。
また、比較例2は、無水マレイン酸・アクリル共重合体の代わりに、アクリル酸・アクリル共重合体を使用し、比較例3及び4では、エポキシ樹脂を使用せず、また、比較例5では、エポキシ樹脂を使用したが、無水マレイン酸・アクリル共重合体を使用しなかったため、比較例2~5は、実施例と比較して、曲げ強度が低く、機械強度に劣ることを確認された。