IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 出光興産株式会社の特許一覧

特開2023-152064シラン変性非晶質オレフィン系重合体、粘接着剤組成物、感圧接着剤及びホットメルト接着剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152064
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】シラン変性非晶質オレフィン系重合体、粘接着剤組成物、感圧接着剤及びホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/42 20060101AFI20231005BHJP
   C09J 123/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08F8/42
C09J123/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062002
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金丸 正実
【テーマコード(参考)】
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4J040DA111
4J040DA141
4J040DJ031
4J040GA31
4J040JB01
4J040JB09
4J040LA01
4J040LA02
4J040MA11
4J100AA01P
4J100AA01Q
4J100AA02P
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100AA03Q
4J100AA04P
4J100AA04Q
4J100AA07P
4J100AA07Q
4J100AA09P
4J100AA09Q
4J100AA15Q
4J100AA16P
4J100AA16Q
4J100AA19Q
4J100AB02Q
4J100AC03Q
4J100AG04Q
4J100AJ02Q
4J100CA01
4J100CA10
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA22
4J100HA55
4J100HC36
4J100HC80
4J100JA03
4J100JA05
(57)【要約】
【課題】良好な粘着性を有し、且つ高い凝集力を発現可能な粘接着剤組成物を得ることができるシラン変性非晶質オレフィン系重合体を提供する。
【解決手段】下記の(1)~(3)を満たす、シラン変性非晶質オレフィン系重合体。
(1)融解吸熱量(ΔH-D)が5J/g未満である
(2)ケイ素元素をケイ素原子換算で0.3~5.0質量%含む
(3)重量平均分子量(Mw)が1,000~500,000である
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)~(3)を満たす、シラン変性非晶質オレフィン系重合体。
(1)融解吸熱量(ΔH-D)が5J/g未満である
(2)ケイ素元素をケイ素原子換算で0.3~5.0質量%含む
(3)重量平均分子量(Mw)が1,000~500,000である
【請求項2】
下記の(4)~(5)を満たす、請求項1に記載のシラン変性非晶質オレフィン系重合体。
(4)メソペンタッド分率[mmmm]が20モル%未満である
(5)ラセミペンタッド分率[rrrr]が20モル%未満である
【請求項3】
下記の(6)~(7)を満たす、請求項1又は2に記載のシラン変性非晶質オレフィン系重合体。
(6)2,1-結合分率が0.5モル%未満である
(7)1,3-結合分率が0.5モル%未満である
【請求項4】
前記シラン変性非晶質オレフィン系重合体を構成するα‐オレフィン重合体が、プロピレン系重合体、及びブテン系重合体から選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のシラン変性非晶質オレフィン系重合体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のシラン変性非晶質オレフィン系重合体を含有する粘接着剤組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の粘接着剤組成物を用いた感圧接着剤。
【請求項7】
請求項5に記載の粘接着剤組成物を用いたホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン変性非晶質オレフィン系重合体、これを含有する粘接着剤組成物、及びこれを用いた感圧接着剤及びホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分子中に反応基を有する反応型ホットメルト接着剤の開発が行われている。その代表的な例としては、分子中にイソシアネート基を有するプレポリマーを主成分とし、接着後、イソシアネート基の架橋反応を利用して耐熱性を向上させたウレタン系反応型ホットメルト接着剤がよく知られている。
【0003】
しかしながら、ウレタン系反応型ホットメルト接着剤では、イソシアネート化合物を使用することから、安全性や、接着剤の製造工程や使用時に空気中の水分と反応し、発泡するといった問題点があった。そこで、イソシアネート化合物を使用しない反応型ホットメルト接着剤として、アルコキシシリル基を利用した反応型ホットメルト接着剤の開発が進められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、シラン変性ポリマー、接着剤組成物の重量に基づいて0.1重量%~15重量%の酸官能性ワックス、および接着剤組成物の重量に基づいて0.05重量%~8重量%の塩基官能性ワックスを含むシラン反応性ホットメルト接着剤組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、環球法による軟化点が90~130℃のアモルファスポリ-α-オレフィン重合体に、アルコキシシラン化合物を反応させてなるグラフト変性体100重量部、環球法による軟化点が80~160℃のオレフィン系樹脂5~70重量部からなることを特徴とする建材内装ラッピング用反応性ホットメルト接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2016-508528号公報
【特許文献2】特開2004-176028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、グリーン強度の迅速な発現、長い可使時間および高い最終(硬化)強度を含めた、商業用途に望ましい特性の組合せを有するシラン反応性ホットメルト接着剤組成物を得るための検討はなされている。また、特許文献2では、塗工性、巻き込み性に優れ、反応前の初期耐熱性が良好である反応性ホットメルト接着剤組成物を得るための検討はなされている。しかしながら、特許文献1~2では、良好な粘着性を有し、且つ高い凝集力を発現させる粘接着剤組成物を得ることについて、更なる改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、良好な粘着性を有し、且つ高い凝集力を発現可能な粘接着剤組成物を得ることができるシラン変性非晶質オレフィン系重合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、特定の融解吸熱量(ΔH-D)を有し、ケイ素原子を特定量含み、特定の重量平均分子量(Mw)を有するシラン変性非晶質オレフィン系重合体とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。すなわち、本発明は、次の<1>~<7>を提供する。
<1>下記の(1)~(3)を満たす、シラン変性非晶質オレフィン系重合体。
(1)融解吸熱量(ΔH-D)が5J/g未満である
(2)ケイ素元素をケイ素原子換算で0.3~5.0質量%含む
(3)重量平均分子量(Mw)が1,000~500,000である
<2>下記の(4)~(5)を満たす、上記<1>に記載のシラン変性非晶質オレフィン系重合体。
(4)メソペンタッド分率[mmmm]が20モル%未満である
(5)ラセミペンタッド分率[rrrr]が20モル%未満である
<3>下記の(6)~(7)を満たす、上記<1>又は<2>に記載のシラン変性非晶質オレフィン系重合体。
(6)2,1-結合分率が0.5モル%未満である
(7)1,3-結合分率が0.5モル%未満である
<4>前記シラン変性非晶質オレフィン系重合体を構成するα‐オレフィン重合体が、プロピレン系重合体、及びブテン系重合体から選ばれる1種以上である、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載のシラン変性非晶質オレフィン系重合体。
<5>上記<1>~<4>のいずれか1つに記載のシラン変性非晶質オレフィン系重合体を含有する粘接着剤組成物。
<6>上記<5>に記載の粘接着剤組成物を用いた感圧接着剤。
<7>上記<5>に記載の粘接着剤組成物を用いたホットメルト接着剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好な粘着性を有し、且つ高い凝集力を発現可能な粘接着剤組成物を得ることができるシラン変性非晶質オレフィン系重合体を提供することができる。また、本発明によれば、粘接着剤組成物を、感圧接着剤、ホットメルト接着剤の用途で特に有利に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。ただし、本発明の内容が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
[シラン変性非晶質オレフィン系重合体]
本発明のシラン変性非晶質オレフィン系重合体は、下記の(1)~(3)を満たす、シラン変性非晶質オレフィン系重合体である。
(1)融解吸熱量(ΔH-D)が5J/g未満である
(2)ケイ素元素をケイ素原子換算で0.3~5.0質量%含む
(3)重量平均分子量(Mw)が1,000~500,000である
なお、上記物性は、原料モノマーの選択、触媒の種類、使用量、重合溶媒の選択、重合温度、反応圧力などの重合条件により適宜調整することができる。
【0013】
本発明において、「非晶質の重合体」とは、示差走査熱量計(DSC)測定において融解吸熱量(ΔH-D)が5J/g未満の重合体のことをいう。
【0014】
本発明によれば、良好な粘着性を有し、且つ高い凝集力を発現可能な粘接着剤組成物を得ることができるシラン変性非晶質オレフィン系重合体を提供することができる、という効果を奏する。この理由は必ずしも定かではないが、以下のように考えられる。
シラン変性非晶質オレフィン系重合体は、非晶質の特性を有し、Tgが0℃未満のため、室温で粘着性を示す上に、非晶質オレフィン系重合体に付加したアルコキシシリル基と空気中の水分との反応により架橋が進行し、ポリマー分子同士が結合することで、ポリマー分子同士が強く絡み合い、凝集力が向上すると考えられる。
【0015】
シラン変性非晶質オレフィン系重合体の融解吸熱量(ΔH-D)は、5J/g未満であり、好ましくは3J/g未満、より好ましくは1J/g未満である。
なお、融解吸熱量は、示差走査型熱量計(DSC)により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
【0016】
シラン変性非晶質オレフィン系重合体は、ケイ素元素をケイ素原子換算で0.3~5.0質量%含み、好ましくは0.3~3.0質量%、より好ましくは0.3~2.0質量%含む。ケイ素元素は、有機シラン構造に由来するものであることが好ましい。
なお、ケイ素元素の含有量は、ICP発光分光分析により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
【0017】
シラン変性非晶質オレフィン系重合体は、重量平均分子量(Mw)が1,000~500,000であり、好ましくは5,000~100,000、より好ましくは8,000~80,000、更に好ましくは10,000~50,000である。
また、シラン変性非晶質オレフィン系重合体は、分子量分布(Mw/Mn)が好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.0以下である。
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、いずれもポリスチレン換算分子量であり、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
【0018】
本発明のシラン変性非晶質オレフィン系重合体は、下記の(4)~(5)を満たすことが好ましい。
(4)メソペンタッド分率[mmmm]が20モル%未満である
(5)ラセミペンタッド分率[rrrr]が20モル%未満である
【0019】
メソペンタッド分率[mmmm]及びラセミペンタッド分率[rrrr]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠して求めたものであり、13C-NMR(核磁気共鳴)スペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるシラン変性非晶質オレフィン系重合体の分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率及びラセミ分率である。
【0020】
シラン変性非晶質オレフィン系重合体のメソペンタッド分率[mmmm]は、好ましくは20モル%未満、より好ましくは15モル%未満、更に好ましくは10モル%未満、より更に好ましくは8モル%未満である。
メソペンタッド分率[mmmm]が、上記範囲にあると、良好な粘着性と高い凝集力を発現する粘接着剤組成物が得られ易くなる。
なお、メソペンタッド分率[mmmm]は、13C-核磁気共鳴法により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
【0021】
シラン変性非晶質オレフィン系重合体のラセミペンタッド分率[rrrr]は、好ましくは20モル%未満、より好ましくは15モル%未満、更に好ましくは10モル%未満、より更に好ましくは8モル%未満である。
ラセミペンタッド分率[rrrr]が、上記範囲にあると、良好な粘着性を有し、且つ高い凝集力を発現可能な粘接着剤組成物が得られ易くなる。
なお、ラセミペンタッド分率[rrrr]は、13C-核磁気共鳴法により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
【0022】
シラン変性非晶質オレフィン系重合体は、下記の(6)~(7)を満たすことが好ましい。
(6)2,1-結合分率が0.5モル%未満である
(7)1,3-結合分率が0.5モル%未満である
【0023】
2,1-結合分率、及び1,3-結合分率は、朝倉らにより報告された「Polymer Journal,16,717(1984)」、J.Randallらにより報告された「Macromol.Chem.Phys.,C29,201(1989)」及びV.Busicoらにより報告された「Macromol.Chem.Phys.,198,1257(1997)」で提案された方法に準拠して求めることができる。すなわち、13C-核磁気共鳴スペクトルを用いてメチレン基、メチン基のシグナルを測定し、シラン変性非晶質オレフィン系重合体中の2,1-結合分率、及び1,3-結合分率を求める。
【0024】
2,1-結合分率、及び1,3-結合分率及は、13C-NMRスペクトルの測定結果より、下記式により算出できる。
2,1-結合分率 =[(A+B)/2]/(A+B+C+D)×100(モル%)
1,3-結合分率 =(D/2)/(A+B+C+D)×100(モル%)
A:15~15.5ppmの積分値
B:17~18ppmの積分値
C:19.5~22.5ppmの積分値
D:27.6~27.8ppmの積分値
【0025】
2,1-結合分率、1,3-結合分率の制御は、主触媒の構造や重合条件によって行われる。具体的には、主触媒の構造が大きく影響し、主触媒の中心金属周辺のモノマーの挿入場を狭くすることで2,1-結合分率、及び1,3-結合分率を抑制することができ、逆に挿入場を広くすることで2,1-結合分率、及び1,3-結合分率を増やすことができる。例えばハーフメタロセン型と呼ばれる触媒は中心金属周辺の挿入場が広いため、2,1-結合分率、及び1,3-結合分率や長鎖分岐などの構造が生成しやすく、ラセミ型のメタロセン触媒であれば、2,1-結合分率、及び1,3-結合分率を抑制することが期待できるが、ラセミ型の場合は立体規則性が高くなり、本発明で示しているような非晶質の重合体を得ることは困難である。例えば後述するようなラセミ型でも2重架橋したメタロセン触媒で3位に置換基を導入し、中心金属の挿入場を制御することで非晶かつ2,1-結合分率、及び1,3-結合分率の非常に少ない重合体を得ることができる。
【0026】
シラン変性非晶質オレフィン系重合体の2,1-結合分率は、好ましくは0.5モル%未満、より好ましくは0.3モル%未満、更に好ましくは0.2モル%未満である。
2,1-結合分率が、上記範囲にあると、良好な粘着性を有し、且つ高い凝集力を発現可能な粘接着剤組成物が得られ易くなる。
なお、2,1-結合分率は、13C-核磁気共鳴法により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
【0027】
シラン変性非晶質オレフィン系重合体の1,3-結合分率は、好ましくは0.5モル%未満、より好ましくは0.3モル%未満、更に好ましくは0.2モル%未満である。
1,3-結合分率が、上記範囲にあると、良好な粘着性を有し、且つ高い凝集力を発現可能な粘接着剤組成物が得られ易くなる。
なお、1,3-結合分率は、13C-核磁気共鳴法により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
【0028】
シラン変性非晶質オレフィン系重合体は、下記の(8)~(9)を満たすことが好ましい。
(8)ガラス転移温度が-35~15℃である
(9)190℃における溶融粘度が50~1,000mPa・sである
【0029】
シラン変性非晶質オレフィン系重合体のガラス転移温度は、好ましくは-35~15℃、より好ましくは-33~5℃、更に好ましくは-30~0℃である。
ガラス転移温度が、上記範囲にあると、良好な粘着性を有し、且つ高い凝集力を発現可能な粘接着剤組成物が得られ易くなる。
なお、ガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
【0030】
シラン変性非晶質オレフィン系重合体の190℃における溶融粘度は、好ましくは50~1,000mPa・s、より好ましくは50~750mPa・s、更に好ましくは50~500mPa・sである。
190℃における溶融粘度が、上記範囲にあると、シラン変性非晶質オレフィン系重合体を含有する粘接着剤組成物の流動性が向上し、感圧接着剤やホットメルト接着剤として用いた場合の塗工性が良好となる。
なお、190℃における溶融粘度は、JIS K6862に準拠し、TVB-15型ブルックフィールド型回転粘度計(M2のローター使用)を用いて測定することができる。
【0031】
シラン変性非晶質オレフィン系重合体を構成するα-オレフィン重合体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-ヘキセン等の炭素数2~8程度のα-オレフィンの単独重合体;それらのα-オレフィンと、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセン等の炭素数2~12程度の他のα-オレフィンや、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、及び塩化ビニル等のビニル化合物との共重合体;前記α-オレフィンの単独重合体や共重合体に前記ビニル化合物等をグラフトさせたグラフト重合体;等が挙げられる。これらの中でも、良好な粘着性と高い凝集力を発現する粘接着剤組成物を得る観点から、プロピレン系重合体、及びブテン系重合体から選ばれる1種以上が好ましく、プロピレン単独重合体、及び1-ブテン単独重合体から選ばれる1種以上がより好ましい。
なお、本発明でいう「α-オレフィン」は、エチレンを含む。
【0032】
シラン変性非晶質オレフィン系重合体は、有機シラン構造を有することが好ましく、なかでも、アルコキシシリル基が結合部を介して、α-オレフィン重合体の主鎖に結合していることが好ましい。
ここで、「アルコキシシリル基が結合部を介して、α-オレフィン重合体の主鎖に結合している」とは、例えば、α-オレフィン重合体に含まれる主鎖の炭素原子に、直接結合部が結合し、更にアルコキシシリル基が結合していることをいう。
アルコキシシリル基としては、直鎖でも分岐であってもよい炭素数1~20のアルコキシ基を有するトリアルコキシシリル基が好ましく、直鎖でも分岐であってもよい炭素数1~10のアルコキシ基を有するトリアルコキシシリル基がより好ましい。具体的には、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロポキシシリル基等が挙げられ、トリメトキシシリル基及びトリエトキシシリル基が好ましい。
前記結合部としては、α-オレフィン重合体の主鎖の炭素原子に結合でき、アルコキシシリル基が結合できる2価以上の有機基であればよく、アルキレン基が好ましく、炭素数2~3のアルキレン基が更に好ましい。
【0033】
<非晶質オレフィン系重合体の製造方法>
非晶質オレフィン系重合体は、重合触媒を用いて、前述のα-オレフィンなどのモノマーを原料とし、所定の重合条件で単独重合または共重合することにより、製造することができる。
【0034】
重合触媒としては、特に限定されないが、メタロセン触媒が好ましく用いられ、なかでも一般式(I)で表される遷移金属化合物が好ましく用いられる。
【0035】
【化1】
【0036】
〔式中、Mは周期律表第3~10族又はランタノイド系列の金属元素を示す。E1及びE2はそれぞれ置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基,ホスフィド基,炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A1及びA2を介して架橋構造を形成しており、またそれらは互いに同一でも異なっていてもよい。Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1,E2又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY,E1,E2又はXと架橋していてもよい。A1及びA2は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、-O-、-CO-、-S-、-SO2-、-Se-、-NR1-、-PR1-、-P(O)R1-、-BR1-又は-AlR1-を示し、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基又は炭素数1~20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。qは1~5の整数で〔(Mの原子価)-2〕を示し、rは0~3の整数を示す。〕
【0037】
一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体例としては、日本特許公報第6263125号に記載の(1,1’-エチレン)(2,2’-テトラメチルジシリレン)ビスインデニルジルコニウムジクロライド、国際公開第2018/164161号に記載の(1,2’-ジフェニルシリレン)(2,1’-ジフェニルシリレン)ビス(3-トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、日本特許公報第4902053号に記載の(1,1’-ジメチルシリレン)(2,2’-テトラメチルジシリレン)ビスインデニルジルコニウムジクロライド等が挙げられる。
【0038】
重合方法としては、スラリー重合法、気相重合法、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法などのいずれの方法を用いてもよいが、スラリー重合法、気相重合法が好ましい。
重合温度は、好ましくは0~150℃、より好ましくは10~130℃、更に好ましくは20~100℃である。
重合時間は、好ましくは5分~8時間、より好ましくは30分~5時間、更に好ましくは40分~3時間である。
反応圧力は、好ましくは0~5MPa、より好ましくは0~3MPa、更に好ましくは0~2MPaである。
【0039】
重合方法によって、重合溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;などを用いることができる。
【0040】
<シラン変性非晶質オレフィン系重合体の製造方法>
シラン変性非晶質オレフィン系重合体は、前述の非晶質オレフィン系重合体と、炭素-炭素二重結合及びアルコキシシリル基を有する化合物とを、ラジカルを発生させる化合物の存在下で反応させることにより、製造することができる。
【0041】
炭素-炭素二重結合及びアルコキシシリル基を有する化合物は、ケイ素原子に炭素-炭素二重結合を有する有機基とアルコキシ基がそれぞれ1つ以上結合した化合物である。
炭素-炭素二重結合を有する有機基としては、ビニル、アリル、ブテニル、シクロヘキセニル、シクロペンタジエニル、(メタ)アクリロキシプロピルを挙げることができ、ビニル基、およびメタクリロキシ基、アクリロキシ基が好適である。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。
ケイ素原子に結合するアルコキシ基は1つ以上が好ましく、2つ以上がより好ましく、3つであることが更に好ましい。
炭素-炭素二重結合及びアルコキシシリル基を有する化合物の具体例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが挙げられ、ビニルトリエトキシシラン及びビニルトリメトキシシランが好ましい。
炭素-炭素二重結合及びアルコキシシリル基を有する化合物の使用量は、炭素-炭素二重結合及びアルコキシシリル基を有する化合物のケイ素原子換算で、前述の非晶質オレフィン系重合体100質量部に対して、好ましくは1.5~20質量部、より好ましくは2~10質量部、更に好ましくは2.5~8質量部である。
【0042】
ラジカルを発生させる化合物は、一般にラジカル重合開始剤として知られる化合物を使用することができる。
ラジカルを発生させる化合物としては、例えば、各種有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリルなどのアゾ系化合物等の中から、適宜選択して用いることができるが、これらの中では、有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルパーオキシド、ジ-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジデカノイルパーオキシド、ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキシドなどのジアシルパーオキシド類;t-ブチルヒドロパーオキシド、キュメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキシドなどのヒドロパーオキシド類;ジ-t-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのジアルキルパーオキシド類;1,1-ビス-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類;2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、n-ブチル4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエートなどのアルキルパーエステル類;ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどのパーオキシカーボネート類などが挙げられる。これらの中ではジアルキルパーオキシド類が好ましい。また、これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカルを発生させる化合物の使用量は、前述の非晶質オレフィン系重合体100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.3~5質量部、更に好ましくは0.5~3質量部である。
【0043】
[粘接着剤組成物]
本発明の粘接着剤組成物は、シラン変性非晶質オレフィン系重合体を含有する。シラン変性非晶質オレフィン系重合体の含有量は、粘接着剤組成物中、好ましくは10~100質量%、より好ましくは30~99.5質量%、更に好ましくは50~99質量%である。
【0044】
粘接着剤組成物には、シラン変性非晶質オレフィン系重合体以外に、各種添加剤を本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもよい。添加剤としては、例えば、硬化促進触媒、オイル、ワックス、可塑剤、フィラー、酸化防止剤、発泡剤、耐侯安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、合成油、ワックス、電気的性質改良剤、粘度調製剤、着色防止剤、防曇剤、顔料、染料、軟化剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、塩素捕捉剤等が挙げられる。
添加剤を用いる場合は、その含有量は、粘接着剤組成物中、通常30質量%以下であり、好ましくは0.001~20質量%、より好ましくは0.01~10質量%、更に好ましくは0.05~5質量%である。
【0045】
<粘接着剤組成物の製造方法>
本発明の粘接着剤組成物は、シラン変性非晶質オレフィン系重合体に、必要に応じて、各種添加剤を配合し、ヘンシェルミキサー等を用いてドライブレンドし、単軸又は2軸押出機、プラストミルやバンバリーミキサー等により、溶融混練して製造することができる。
【0046】
<粘接着剤組成物の特性>
本発明の粘接着剤組成物は、良好な粘着性を有し、且つ粘接着剤組成物中の樹脂の架橋反応が十分に進行し、高い凝集力を発現させることができる。
【0047】
<粘接着剤組成物の用途>
本発明の粘接着剤組成物は、感圧接着剤、ホットメルト接着剤の用途で特に有利に用いることができる。
【実施例0048】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0049】
[ケイ素元素濃度]
各例で製造したシラン変性非晶質オレフィン系重合体0.1gを電気炉にて550℃で12時間加熱し、灰分のアルカリ融解にて測定用溶液を調製し、ICP発光分光分析を行い(ICP発光分光分析装置:720-ES、アジレント・テクノロジー株式会社製)、ケイ素元素の濃度を求めた。
【0050】
[融解吸熱量(ΔH-D)]
各例で製造したシラン変性非晶質オレフィン系重合体を対象として、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、商品名:DSC-7)を用い、以下のようにして融解吸熱量(ΔH-D)を求めた。
試料を窒素雰囲気下にて-40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブにおいて、ピーク低温側の熱量変化の無い点とピーク高温側の熱量変化の無い点とを結んだ線をベースラインとして、ピークと当該ベースラインとで囲まれる面積を求め、これを融解吸熱量(ΔH-D)とした。
【0051】
[ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)]
各例で製造したシラン変性非晶質オレフィン系重合体を対象として、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、商品名:DSC-7)を用い、以下のようにしてガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)を求めた。
試料10mgを窒素雰囲気下にて10℃/分で150℃に昇温後、-75℃まで冷却し、5分間保持した後、再度150℃まで昇温させることにより得られた2回目の昇温の融解吸熱カーブから、ガラス転移温度(Tg)を求めた。ガラス転移温度(Tg)の求め方について詳述すると、得られた融解吸熱カーブ中で、初めに吸熱方向に対して該吸熱カーブが変化した箇所において、元のベースラインの延長線と、元のベースラインとシフト後のベースラインとをつなぐカーブ上の変曲点(上に凸のカーブが下に凸のカーブに変わる点)での接線との交点が得られる位置に相当する温度を読み取り、ガラス転移温度Tgとした。また、融点を有している場合は、融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップを融点Tm(℃)とした。
【0052】
[重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)]
各例で製造したシラン変性非晶質オレフィン系重合体を対象として、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法によって、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。測定には、下記の装置及び条件にて、ポリスチレン換算の分子量として求めた。
<GPC測定装置>
機器 :東ソー株式会社製「HLC8321GPC/HT」
検出器 :RI検出器
カラム :東ソー株式会社製「TOSOH GMHHR-H(S)HT」×2本
<測定条件>
溶媒 :1,2,4-トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0mL/分
試料濃度 :0.5mg/mL
注入量 :300μL
検量線 :PS標準物質を用いて作製した。
分子量換算 :Universal Calibration法を用いて算出した。
解析プログラム:8321GPC-WS
【0053】
[メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]、1,3-結合分率、及び2,1-結合分率]
各例で製造したシラン変性非晶質オレフィン系重合体を対象として、下記の装置及び条件にて13C-NMRスペクトルの測定を行い、前述した方法により、メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]、1,3-結合分率、及び2,1-結合分率を求めた。
13C-NMR装置>
機器:JNM-EX400型13C-NMR装置(日本電子株式会社製)
<測定条件>
方法 :プロトン完全デカップリング法
濃度 :230mg/ミリリットル
溶媒 :1,2,4-トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度 :130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10,000回
<計算式>
[mmmm]=m/S×100
[rrrr]=γ/S×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8~22.5ppm
Pαβ:18.0~17.5ppm
Pαγ:17.5~17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7~20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖:21.7~22.5ppm
【0054】
[実施例1]
<錯体Aの合成>
特許第6263125号公報の合成例1の記載に従って、(1)式に示す(1,1’-エチレン)(2,2’-テトラメチルジシリレン)ビスインデニルジルコニウムジクロライド(錯体A)を合成した。
【0055】
【化2】
【0056】
<非晶質プロピレン単独重合体の製造>
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、ヘプタン(400mL)、トリイソブチルアルミニウム(2M,0.2mL,0.4mmol)、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのヘプタンスラリー(10μmol/mL,0.3mL,3.0μmol)、上記で合成した錯体A(10μmol/mL,0.10mL,1.0μmol)を加え、更に水素を0.1MPa導入した。撹拌しながらプロピレンを張り込み、全圧を0.8MPaまで昇圧し、温度を85℃にした後、60分重合した。重合反応終了後、プロピレン、水素を脱圧し、重合液を加熱、減圧下にて乾燥することにより、非晶質プロピレン単独重合体を得た。
【0057】
<シラン変性非晶質プロピレン単独重合体の製造>
窒素導入管及び撹拌翼を備えた500mLセパラブルフラスコに、上記で得られた非晶質プロピレン単独重合体50gを入れ、窒素気流下で油浴にて160℃に加熱した。
非晶質プロピレン単独重合体が溶解したところで、攪拌しながら、ビニルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)1.5gを添加し、次いで、有機過酸化物として、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(日油株式会社製、商品名「パーヘキサ(登録商標)25B」)0.5gを滴下し、窒素気流下で、1時間撹拌し、反応させた。
反応終了後、トラップ付き(ドライアイス/エタノール)の真空ポンプを接続し、160℃の油浴にて、10分間減圧することにより、未反応のビニルトリメトキシシラン等の揮発成分を除去し、復圧後、シラン変性非晶質プロピレン単独重合体を得た。
【0058】
[実施例2]
<非晶質1-ブテン単独重合体の製造>
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、ヘプタン(200mL)、トリイソブチルアルミニウム(2M,0.2mL,0.4mmol)、1-ブテン(200mL)、上記で合成した錯体A(10μmol/mL,0.20mL,2.0μmol)、東ソーファインケム社製MAO(2000μmol)を加え、更に水素を0.1MPa導入した。撹拌しながら温度を70℃にした後、30分間重合した。重合反応終了後、5mLのエタノールで重合を停止し、反応物を減圧下、乾燥することにより、非晶質1-ブテン単独重合体を得た。
【0059】
<シラン変性非晶質1-ブテン単独重合体の製造>
実施例1のシラン変性非晶質プロピレン単独重合体の製造において、非晶質プロピレン単独重合体を、上記で得られた非晶質1-ブテン単独重合体に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、シラン変性非晶質1-ブテン単独重合体を得た。
【0060】
[比較例1]
実施例1で得られた非晶質プロピレン単独重合体を比較例1とした。
【0061】
[比較例2]
実施例2で得られた非晶質1-ブテン単独重合体を比較例2とした。
【0062】
[比較例3]
実施例1のシラン変性非晶質プロピレン単独重合体の製造において、非晶質プロピレン単独重合体を、非晶質プロピレン/エチレン/1-ブテン共重合体(Evonik社製、商品名「VESTOPLAST 708」)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法によって、シラン変性非晶質プロピレン/エチレン/1-ブテン共重合体(VESTOPLAST 708のシラン変性物)を得た。
【0063】
[粘接着剤組成物の評価]
20mLサンプル瓶に、各例で得られたシラン変性非晶質オレフィン系重合体または非晶質オレフィン系重合体5gと、硬化促進触媒としてジブチル錫ジラウレート約0.05gとを投入し、スパチュラにて1分間撹拌して粘接着剤組成物のサンプルを得た。得られたサンプルを指で触り、粘着性の有無を確認した。
また、得られたサンプル約0.3gを、ポリプロピレン板1(100mm×25mm×1mm)の両端に25mm×25mm幅で塗布して、20℃、湿度50%の環境下で24時間放置した。その後、放置したポリプロピレン板1に、別のポリプロピレン板2(100mm×25mm×1mm)を重ね合わせて、500gの錘を載せて荷重をかけた。10分後、錘を外し、2枚のポリプロピレン板が接着されていることを確認後、2枚のポリプロピレン板を手で剥がし、ポリプロピレン板2側への付着しているノリ残りの面積を目視にて測定した。
粘接着剤組成物のサンプルを下記基準で評価した。
A:粘着性有り、且つ、ノリ残りの面積が10%以下
B:粘着性有り、且つ、ノリ残りの面積が10%を超える
C:粘着性無し
ここで、「ノリ残りの面積が10%以下」の場合には、粘接着剤組成物中の樹脂の架橋反応が十分に進行し、高い凝集力が発現したと評価することができる。
【0064】
各例で得られたシラン変性非晶質オレフィン系重合体または非晶質オレフィン系重合体の物性の測定結果、及び粘接着剤組成物の評価結果を、表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示される結果から、以下のことが確認された。
実施例1~2で得られたシラン変性非晶質オレフィン系重合体を含有する粘接着剤組成物によれば、良好な粘着性を有し、且つ高い凝集力を発現することが確認された。
一方、比較例1~2で得られた非晶質オレフィン系重合体を含有する粘接着剤組成物によれば、粘着性は有していても、凝集力が実施例1~2よりも劣ることが確認された。
また、比較例3で得られたVESTOPLAST 708のシラン変性物を含有する粘接着剤組成物によれば、粘着性を有しないことが確認された。