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特開2023-152107ナトリウム遷移金属フッ化物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152107
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ナトリウム遷移金属フッ化物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 49/00 20060101AFI20231005BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20231005BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20231005BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20231005BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20231005BHJP
   C01G 45/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C01G49/00 Z
H01M10/054
H01M4/58
C01G53/00 A
C01G51/00 C
C01G45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062054
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】千葉 和幸
(72)【発明者】
【氏名】松永 修
(72)【発明者】
【氏名】小林 渉
(72)【発明者】
【氏名】高原 俊也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 陵二
【テーマコード(参考)】
4G002
4G048
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G002AA13
4G002AB02
4G002AE05
4G048AA04
4G048AA06
4G048AB02
4G048AC06
4G048AE06
5H029AJ03
5H029AK04
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ10
5H029HJ14
5H050AA08
5H050BA15
5H050CA10
5H050CB07
5H050CB11
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】 高エネルギー密度のナトリウム二次電池用の正極活物質として適した、ナトリウム遷移金属フッ化物及び、その簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】 ナトリウム(Na)、並びに、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)の群から選ばれる1以上の遷移金属を含むナトリウム遷移金属フッ化物と、ナトリウム原料、フッ化物原料、遷移金属原料(M)(ここで、MはFe、Mn、Ni、Coから選ばれる一つ以上を含む)を水に分散し、容器中にて250℃以下で反応させることにより得られるナトリウム遷移金属フッ化物とその製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム(Na)、並びに、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)の群から選ばれる1以上の遷移金属を含むナトリウム遷移金属フッ化物。
【請求項2】
一般式Na1-XMF(式中、Mは、Fe、Mn、Ni及びCoの群から選ばれる1以上の遷移金属元素であり、xは0≦x<1の範囲をとる。)で表される請求項1に記載のナトリウム遷移金属フッ化物。
【請求項3】
Williamson-Hall法により求められる結晶子径が200Å以上850Å以下である請求項1又は2に記載のナトリウム遷移金属フッ化物。
【請求項4】
ナトリウム源、フッ素源、遷移金属源及び水を含有し、なおかつ、水の含有量が75質量%以下である組成物を結晶化する工程、を有する請求項1又は2に記載のナトリウム遷移金属フッ化物の製造方法。
【請求項5】
前記組成物のpHが2.5以上であり、かつ、7.0以下である請求項4に記載のナトリウム遷移金属フッ化物の製造方法。
【請求項6】
前記組成物を250℃以下で結晶化する請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記組成物が、以下の質量組成を有する請求項4に記載の製造方法。なお、以下の組成における合計は100質量%である。
ナトリウム源 : 4質量%以上、18質量%以上
フッ素源 : 4質量%以上、18質量%以上
遷移金属源 : 5質量%以上、12質量%以上
水 : 残部
【請求項8】
請求項1又は2に記載のナトリウム遷移金属フッ化物を含む正極活物質。
【請求項9】
請求項8に記載の正極活物質を備えたナトリウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池の正極活物質として有用なナトリウム遷移金属フッ化物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナトリウム二次電池は、ポストリチウム二次電池として注目を集めている。ナトリウム二次電池の正極材料として、これまでにナトリウムを含む遷移金属酸化物やナトリウムを含む遷移金属ポリアニオンが検討されている。
【0003】
ナトリウムを含む遷移金属酸化物材料としては、正極材料重量当たりの利用可能理論容量が200mAh/g程度の材料が候補材料として提案され検討がなされているものの、報告されている利用可能容量は130mAh/g程度に留まっている(非特許文献1)。
【0004】
ナトリウムを含む遷移金属ポリアニオン材料についても様々な候補材料が検討されているものの、利用できる容量はナトリウムを含む遷移金属酸化物材料と同程度である。
【0005】
ナトリウムを含む遷移金属酸化物材料やナトリウムを含む遷移金属ポリアニオン材料を遥かに凌ぐ高容量が期待されている材料として、フッ化物を含有する正極材料も提案されている。例えば、遷移金属フッ化物のFeFはペロブスカイト構造で頂点共有骨格構造を有することから、イオン体積の大きなNaイオンに対しても可逆的な挿入脱離が可能で、実用化が期待されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、従来提案の遷移金属フッ化物はナトリウムが包含されていないことから、そのままの状態ではナトリム二次電池を構成できないことが課題であった。
【0007】
遷移金属フッ化物にナトリウムを包含させる方法として、遷移金属フッ化物とフッ化ナトリウムからメカノケミカル合成する方法が報告されているが、この方法で得られたナトリウム遷移金属フッ化物はその初回の充電量が50mAh/g程度に留まり、本来備えている高容量の性能を発揮できていない(非特許文献2)。
【0008】
また、不活性雰囲気下、溶融急冷法によるナトリウム遷移金属フッ化物の合成法が検討され、初回の充電量が200mAh/gのナトリウム遷移金属フッ化物が合成できることが報告されているが、合成方法が複雑で工業的な生産手法としては好ましいとは言えない(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-130265号公報
【特許文献2】特開2012-174475号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Journal of Electrochemical Society,162(14),A2538‐A2550(2015).
【非特許文献2】Journal of Power Sources,187,247‐252(2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示では、新規のナトリウム遷移金属フッ化物、その製造方法、並びに、これを含む正極活物質及びナトリウム二次電池の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は特許請求の範囲に係る発明であり、また、本開示の要旨は以下の通りである。
[1] ナトリウム(Na)、並びに、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)の群から選ばれる1以上の遷移金属を含むナトリウム遷移金属フッ化物。
[2] 一般式Na1-XMF(式中、Mは、Fe、Mn、Ni及びCoの群から選ばれる1以上の遷移金属元素であり、xは0≦x<1の範囲をとる。)で表される上記[1]に記載のナトリウム遷移金属フッ化物。
[3] Williamson-Hall法により求められる結晶子径が200Å以上850Å以下である上記[1]又は[2]に記載のナトリウム遷移金属フッ化物。
[4] ナトリウム源、フッ素源、遷移金属源及び水を含有し、なおかつ、水の含有量が75質量%以下である組成物を結晶化する工程、を有する上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のナトリウム遷移金属フッ化物の製造方法。
[5] 前記組成物のpHが2.5以上であり、かつ、7.0以下である上記[4]に記載のナトリウム遷移金属フッ化物の製造方法。
[6] 前記組成物を250℃以下で結晶化する上記[4]又は[5]に記載の製造方法。
[7] 前記組成物が、以下の質量組成を有する上記[4]乃至[6]のいずれかに記載の製造方法。なお、以下の組成における合計は100質量%である。
ナトリウム源 : 4質量%以上、18質量%以上
フッ素源 : 4質量%以上、18質量%以上
遷移金属源 : 5質量%以上、12質量%以上
水 : 残部
【0013】
[8] 上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のナトリウム遷移金属フッ化物を含む正極活物質。
[9] 上記[8]に記載の正極活物質を備えたナトリウム二次電池。
【発明の効果】
【0014】
本開示では、新規のナトリウム遷移金属フッ化物、その製造方法、並びに、これを含む正極活物質及びナトリウム二次電池の少なくともいずれかを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1のNaFeFの粉末X線回折パターンである。
図2】実施例4のNaMnFの粉末X線回折パターンである。
図3】実施例7のNaNiFの粉末X線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示のナトリウム遷移金属フッ化物について、実施形態の一例を示して説明する。
【0017】
本実施形態で得られるナトリウム遷移金属フッ化物は、ナトリウム(Na)、並びに、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)の群から選ばれる1以上の遷移金属を含むフッ化物である。 一般式Na1-XMF(Mは、Fe、Mn、Ni及びCoの群から選ばれる少なくとも1以上であり、xは0≦x<1の範囲をとる。)で表されることを特徴とするナトリウム遷移金属フッ化物であり、一般式Na1-XMF(Mは、Fe、Mn、Ni及びCoの群から選ばれる1以上であり、xは0≦x<1の範囲をとる。)の単一相からなるナトリウム遷移金属フッ化物であることが好ましい。Mは、Fe、Mn、Ni及びCoの群から選ばれる1以上の遷移金属元素であり、好ましくはFe、Mn及びNiの群から選ばれる1以上、さらに好ましくはFe及びMnの少なくともいずれか、若しくは、Feである。
【0018】
本実施形態のナトリウム遷移金属フッ化物が、一般式Na1-XMF(Mは、Fe、Mn、Ni及びCoの群から選ばれる1以上であり、xは0≦x<1の範囲をとる。)で表されるナトリウム遷移金属フッ化物であることは、その粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンによって確認することができる。
【0019】
すなわち、本実施形態のナトリウム遷移金属フッ化物のXRDパターンのRietvelt解析し、これとシミュレーションにより得られるXRDパターン(以下、「参照データ」ともいう。)とを対比すること(フィッティング)によって確認することができる。
【0020】
Rietvelt解析及びフィッティングは、それぞれ、参照データを使用して行えばよい。参照データとして、例えば、解析ソフトとしてPDXL-2を使用した場合、そのデータベースカード番号が、NaFeFが01-080-1156、NaMnFが01-018-224、NaNiFが01-081-0953、及び、NaCoFが01-081-0955であることが挙げられる。
【0021】
XRDパターンは、一般的な粉末X線回折装置を使用して測定すればよい。XRDパターンの好ましい測定条件として、以下の条件が例示できる。
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン速度 : 20°/分
計測時間 : 3秒
測定範囲 : 2θ=5°から90°
【0022】
本実施形態のナトリウム遷移金属フッ化物は、結晶性が高く、そのXRDパターンにおいて回折強度が最大のピーク(以下、「メインピーク」ともいう。)の半値幅(以下、「FWHM」ともいう。)が0.20°以下であり、0.15°以下であることが好ましい。メインピークの半値幅は、0.20°以下、0.15°以下又は0.12°以下であること、また、0を超え、0.01以上、0.04以上又は0.06以上であること、が挙げられる。
【0023】
メインピークは、一般的な解析ソフト(例えば、リガク社製PDXL-2)を使用したXRDパターンの解析においてピークトップの2θが特定されて検出されるピークであり、回折強度は、解析で特定された2θにおける強度(以下、「ピーク強度」ともいう。)である。メインピークは、XRDパターンにおいて最も高いピーク強度を有するピークである。
【0024】
メインピークの2θは、22.0°~32.0°の範囲であり、それぞれ、NaFeFが22.5±0.5°、NaMnFが31.6±0.5°、NaNiFが23.0±0.5°、及び、NaCoFが23.0±0.5°であることが挙げられる。
【0025】
本実施形態のナトリウム遷移金属フッ化物は、Williamson-Hall法により求められる結晶子径(以下、「WH径」ともいう。)が200Å以上850Å以下であり250Å以上800Å以下であることが好ましい。
【0026】
WH径は、一般式Na1-XMFに帰属される3つのXRDピークについて、それぞれ、以下のプロット(X,Y)を求め、得られるプロットの最小二乗法により求められる以下の一次近似式におけるy切片の逆数(ε)として求めることができる。
【0027】
<プロット>
Y=(β・sinθ)/λ
X=sinθ/λ
<一次近似式>
Y=2η・X+(1/ε) ・・・(1)
上式において、βは半値幅(°)、θは回折角(°)、λは線源の波長(nm)、ηは不均一歪及びεはWH径(Å)である。なお、η(傾き)及び1/ε(y切片)は、プロットの最小二乗法により求められる。
【0028】
WH径の測定に際して使用するXRDピークは、それぞれ、(020)面、(121)面及び(202)面に相当するピークであればよく、これらのXRDピークは上述の参照データとのフィッティングにより確認することができる。
【0029】
好ましいWH径として、それぞれ、NaFeFが200Å以上又は250Å以上であること、また、700Å以下又は600Å以下であることが挙げられ、NaMnFが500Å以上又は550Å以上であること、また、700Å以下又は650Å以下であることが挙げられ、NaNiFが500Å以上であること、また700Å以下であることが挙げられ、NaCoFが600Å以上であること、また850Å以下であることが挙げられる。
【0030】
次に、本実施形態のナトリウム遷移金属フッ化物の製造方法について説明する。
【0031】
本実施形態のナトリウム遷移金属フッ化物は、ナトリウム源、フッ素源、遷移金属源及び水を含有し、なおかつ、水の含有量が75質量%以下である組成物を結晶化する工程、を有する製造方法により得ることができる。
【0032】
ナトリウム源は、ナトリウム(Na)を含む塩及び化合物の少なくともいずれかであり、水溶性のナトリウム塩が挙げられる。具体的なナトリウム源として、フッ化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリム及びヘキサメタリン酸ナトリウムの群から選ばれる1以上が挙げられる。
【0033】
フッ素源は、フッ素(F)を含む塩及び化合物の少なくともいずれかであり、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム及びフッ化アンモニウムの群から選ばれる1以上、フッ化ナトリウム及びフッ化カリウムの少なくともいずれか、若しくは、フッ化ナトリウム、が挙げられる。なお、フッ化ナトリウムはフッ素及びナトリウムを含むため、ナトリウム源及びフッ素源とみなすことができる。
【0034】
遷移金属源は、遷移金属を含む塩及び化合物の少なくともいずれかであり、遷移金属の硫酸塩、硝酸塩及び塩化物の群から選ばれる1以上であることが好ましい。遷移金属源は、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)の群から選ばれる1以上の元素を含むことが好ましく、Fe及びMnの群から選ばれる1以上であることがより好ましい。
【0035】
水(HO)は、純水及びイオン交換水等が挙げられる。
【0036】
ナトリウム源、フッ素源、遷移金属源及び水を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)は水の含有量が75質量%以下であり、70質量%以下又は65質量%以下であることが好ましく、また40質量%以上、50質量%以上又は55質量%以上であることが好ましい。上述の水の含有量であることで、ナトリウム源、フッ素源及び遷移金属源が完全溶解していない状態となる。原料組成物の水の含有量が上述の範囲を超えると、ナトリウム源、フッ素源及び遷移金属源が完全溶解した状態の原料組成物から複数の異なる相の核生成及び結晶化が促進され、単一相のナトリウム遷移金属フッ化物が得られにくくなる。
【0037】
原料組成物の液性は酸性~中性、更には弱酸性から中性であることが好ましく、そのpHは2.5以上又は3.0以上であり、かつ、7.0以下又は6.5以下であることが挙げられる。
【0038】
原料組成物は、遷移金属の酸化防止やpH調整等、原料組成物の状態を安定化するため添加剤を含んでいることが好ましい。添加剤としては、酸が挙げられ、無機酸及び有機酸の少なくともいずれかであればよい。好ましい酸として、アスコルビン酸、塩酸、亜硫酸及びチオ硫酸の群から選ばれる1以上が例示できる。
【0039】
原料組成物の組成として、以下の質量組成が挙げられる。なお、以下の組成における合計は100質量%である。
ナトリウム源 : 4質量%以上、6質量%以上、かつ、
16質量%以下、18質量%以下、
フッ素源 : 4質量%以上、6質量%以上、かつ、
16質量%以下、18質量%以下、
遷移金属源 : 5質量%以上、7質量%以上、かつ、
10質量%以下、12質量%以下、
添加物 : 0質量%以上、6質量%以上、かつ、
20質量%以下、22質量%以下、
水 : 残部
【0040】
結晶化は水熱処理により行えばよい。水熱処理において、原料組成物を、フッ素樹脂製容器や、内面をフッ素樹脂で被覆した容器に密閉して結晶化することで、反応容器と原料組成物との副反応が生じにくくなる。水熱処理は静置状態又は撹拌状態であればよく、撹拌状態であることが好ましい。
【0041】
好ましい結晶化条件として以下の条件が挙げられる。
結晶化温度 : 60℃以上又は80℃以上、かつ、
230℃以下、200℃以下、180℃以下又は160℃以下
結晶化時間 : 1時間以上、5時間以上又は10時間以上かつ、
120時間以下、100時間以下又は48時間以下
結晶化圧力 : 自生圧
【0042】
結晶化温度は反応速度の観点から高い方が好ましいが、250℃以下で原料組成物を結晶化することが好ましい。結晶化温度が250℃以下であることで副生相の生成が抑制されやすく、本実施形態のナトリウム遷移金属フッ化物が単一相で得られやすくなる。
【0043】
本実施形態の製造方法は、洗浄工程、乾燥工程等の後処理工程を有していてもよい。
【0044】
洗浄工程は、ナトリウム遷移金属フッ化物を回収し、洗浄し不純物を除去する。回収はろ過等の公知の固液分離により行えばよく、洗浄は回収したナトリウム遷移金属フッ化物に十分量の純水を流通させればよい。
【0045】
乾燥工程は、ナトリウム遷移金属フッ化物に付着した水分を除去する。乾燥は公知の方法で行うことができ、例えば、大気中、100~180℃で処理することや、真空雰囲気、60~150℃で処理することが例示できる。
【0046】
本実施形態のナトリウム遷移金属フッ化物はナトリウム二次電池の正極活物質として使用することができる。
【0047】
本実施形態のナトリウム遷移金属フッ化物を備えたナトリウム二次電池(以下、「本実施形態の二次電池」ともいう。)は、上述した本実施形態のナトリウム遷移金属フッ化物を備えていればよく、本実施形態のナトリウム遷移金属フッ化物を正極活物質として備えていればよい。すなわち、本実施形態の二次電池は、正極と、負極と、電解液と、を備えるナトリウム二次電池である。
【0048】
<正極>
本実施形態の二次電池における正極は、少なくとも正極活物質を含む正極活物質層を備える。
正極活物質層は、正極活物質を含み、例えば、バインダー、導電材及び添加剤等を含んでいてもよい。
【0049】
粒子径や比表面積等の正極活物質の物性は、目的に応じて適宜調整すればよい。
【0050】
バインダーは、二次電池の正極で使用されているバインダーであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、SBR系材料及びイミド系材料等が挙げられる。
【0051】
導電材は、二次電池の正極で使用されている導電材であればよく、例えば、炭素材料及び金属繊維の少なくともいずれかの導電性繊維、銅、銀、ニッケル及びアルミニウム等の金属粉末、ポルフェニレン誘導体等の有機導電性材料等が挙げられる。炭素材料としては、例えば、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、芳香環を含む合成樹脂、石油系ピッチ等を焼成して得られたメソポーラスカーボン等が挙げられる。
【0052】
また、それらの混合割合も目的に応じて、適宜調整しても何ら問題はない。
【0053】
<負極>
本実施形態の二次電池における負極は、少なくとも負極活物質を含む負極活物質層を備える。
負極活物質は、二次電池で使用される負極活物質が適用でき、例えば、充放電カチオンの挿入及び脱離が可能な物質、充放電カチオンと可逆的に化合物を形成する物質及び充放電カチオンと可逆的に合金化する物質等が挙げられ、白金、亜鉛、炭素材料、ケイ素材料、充放電カチオンと合金を形成する材料、及び、充放電カチオンを含有する遷移金属酸化物等が挙げられる。
【0054】
粒子径や比表面積等の負極活物質の物性は、目的に応じて適宜調整すればよい。
【0055】
これらの負極活物質は、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
負極活物質層は、負極活物質を含み、例えば、バインダー、導電材及び添加剤等を含んでいてもよい。バインダー、導電材及び添加剤は、正極活物質層に含まれるものと同様なものが使用できる。
【0056】
<電解液>
電解液は、電解質塩としてナトリウムの塩を含んでいればよい。電解質塩の具体例としては、例えば、六フッ化リン酸ナトリウム、四フッ化ホウ酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、水酸化物ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム等を挙げることができる。これらの電解質塩を単独、若しくは二種以上を混合して用いても、何ら問題はない。
【0057】
溶媒は水溶媒あるいは非水溶媒を使用することができる。非水溶媒は、例えば、エステル、エーテル、カーボネート、ニトリル、スルホラン、フラン及びジオキソランの群から選ばれる1以上が挙げられる。
電解液におけるナトリウム塩の濃度(ナトリウム濃度)は、電池用電解液としてのイオン伝導度を与えることができれば任意であるが、0.1mol/dm以上飽和濃度以下であることが好ましい。
【0058】
<セパレータ等>
本実施形態の二次電池における上記以外の構成要素、例えば、セパレータ、正極集電体、負極集電体、ケーシング、リード等は、公知の二次電池に適用されるものを使用することができる。
【実施例0059】
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明する。しかしながら、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
<組成分析>
一般的なX線回折装置(装置名:SmartLab、リガク社製)を使用して生成物の構造を評価した。測定条件は以下の通りである。
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン速度 : 20°/分
計測時間 : 3秒
測定範囲 : 2θ=5°から90°
【0061】
さらに遷移金属とナトリウムの組成比を確定するために、X線回折装置(装置名:SmartLab、リガク社製)に付属のデータ処理ソフト(商品名:PDXL-2、リガク社製)により、Rietvelt精密解析を行い、生成物の組成を求めた。
【0062】
<充放電サイクル評価>
以下に示す電池を作製し、充放電サイクル評価を行った。
【0063】
実施例で得られたナトリウム遷移金属フッ化物とアセチレンブラック(製品名:DENKA BLACK Li Li-435,デンカ社製)を質量比で70:30となるように混合した後、遊星ボールミルを使用して、400rpm、1時間、アルゴン雰囲気下の条件で処理し、ナトリウム遷移金属フッ化物をカーボンコーティングした。コーティング後のナトリウム遷移金属フッ化物とPTFE(製品名:ポリフロン PTFE F-104,ダイキン工業社製)を質量比で90:10となるように混合した後、直径4mmのペレット状に成形して正極合剤とし、これを圧力1t/cmの一軸プレスでチタンメッシュに圧着して正極とした。得られた正極は120℃で2時間、減圧乾燥した後、以下の構成からなる三極式のナトリウム二次電池を作製した。
【0064】
試験極 :正極
対極 :金線
参照極 :銀-塩化極
電解液 :(溶媒)エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの体積比が
1:1の混合溶媒
(電解質)1mol/dm NaPF
作製したナトリウム二次電池を使用し、以下の条件で定電流の充放電試験を行い、1サイクル目の放電容量を測定した。
【0065】
温度 : 室温(25℃±3℃)
電極電位 : -1.70~1.47V(銀-塩化銀電極基準)
電流値 : 0.25mA
充放電回数 : 5サイクル
【0066】
実施例1
市販の塩化鉄四水和物(FeCl・4HO)、市販のフッ化ナトリウム(NaF)、市販の塩酸(HCl)及び水を混合し、以下の組成を有し、pHが6.0である原料組成物を得た。
FeCl : 7.4質量%
NaF : 15.0質量%
HCl : 13.4質量%
O : 残部
原料組成物を、フッ素樹脂製容器を内部に備えたステンレス容器に充填し、容器を密閉した。当該容器を70℃の恒温槽に配置し、静置した状態で16時間処理して結晶化物を得た。得られた結晶化物を十分量の純水で洗浄後、真空中、80℃で4時間乾燥し、本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物とした。
【0067】
本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物(ナトリウム鉄フッ化物)は、NaFeF組成の単一相であり、副生相を含んでいなかった。
【0068】
実施例2
原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物(ナトリウム鉄フッ化物)を得た。なお、原料組成物のpHは7.0であった。
【0069】
FeCl : 7.3質量%
NaF : 15.6質量%
HCl : 13.3質量%
O : 残部
本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物(ナトリウム鉄フッ化物)は、NaFeF組成の単一相であり、副生相を含んでいなかった。
【0070】
実施例3
原料組成物を以下の組成としたこと、及び、処理時間を96時間としたこと以外は実施例1と同様な方法で本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物(ナトリウム鉄フッ化物)を得た。なお、原料組成物のpHは3.0であった。
【0071】
FeCl : 7.5質量%
NaF : 13.7質量%
HCl : 13.6質量%
O : 残部
本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物(ナトリウム鉄フッ化物)は、NaFeF組成の単一相であり、副生相を含んでいなかった。
【0072】
実施例4
市販の硫酸マンガン五水和物(MnSO・5HO)、市販のフッ化ナトリウム、市販のアスコルビン酸及び純水を混合し、以下の組成を有し、pHが3.5である原料組成物を得た。
【0073】
MnSO : 9.1質量%
NaF : 7.8質量%
アスコルビン酸 : 10.6質量%
O : 残部
原料組成物を、フッ素樹脂製容器を内部に備えたステンレス容器に充填し、容器を密閉した。当該容器を180℃の恒温槽に配置し、静置した状態で16時間処理した。得られた結晶化物を十分量の純水で洗浄後、真空中、80℃で4時間乾燥し、本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物とした。
【0074】
本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物(ナトリウムマンガンフッ化物)は、NaMnF組成の単一相であり、副生相を含んでいなかった。
【0075】
実施例5
原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例4と同様な方法で本実施例の結晶化物を得た。なお、原料組成物のpHは3.5であった。
【0076】
MnSO : 8.1質量%
NaF : 9.2質量%
アスコルビン酸 : 18.7質量%
O :残部
本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物(ナトリウムマンガンフッ化物)は、NaMnF組成の単一相であり、副生相を含んでいなかった。
【0077】
実施例6
原料組成物を以下の組成としたこと、及び、160℃の恒温槽に配置したこと以外は実施例4と同様な方法で本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物を得た。なお、原料組成物のpHは3.5であった。
【0078】
MnSO : 7.9質量%
NaF : 11.3質量%
アスコルビン酸 : 18.3質量%
O :残部
本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物(ナトリウムマンガンフッ化物)は、NaMnF組成の単一相であり、副生相を含んでいなかった。
【0079】
実施例7
市販の硫酸ニッケル六水和物(NiSO・6HO)、市販のフッ化ナトリウム、市販の亜硫酸及び純水を混合し、以下の組成を有し、pHが3.5である原料組成物を得た。
【0080】
NiSO : 8.1質量%
NaF : 8.9質量%
亜硫酸 : 20.6質量%
O : 残部
原料組成物を、フッ素樹脂製容器を内部に備えたステンレス容器に充填し、容器を密閉した。当該容器を220℃の恒温槽に配置し、静置した状態で16時間処理した。得られた結晶化物を十分量の純水で洗浄後、真空中、80℃で4時間乾燥し、本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物とした。
【0081】
本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物(ナトリウムニッケルフッ化物)は、NaNiF組成の単一相であり、副生相を含んでいなかった。
【0082】
実施例8
市販の硫酸コバルト七六水和物(CoSO・7HO)、市販のフッ化ナトリウム及び純水を混合し、以下の組成を有し、pHが7.0である原料組成物を得た。
【0083】
CoSO : 7.9質量%
NaF : 8.0質量%
O : 残部
原料組成物を、フッ素樹脂製容器を内部に備えたステンレス容器に充填し、容器を密閉した。当該容器を180℃の恒温槽に配置し、静置した状態で16時間処理した。得られた結晶化物を十分量の純水で洗浄後、真空中、80℃で4時間乾燥し、本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物とした。
【0084】
本実施例のナトリウム遷移金属フッ化物(ナトリウムコバルトフッ化物)は、NaCoF組成の単一相であり、副生相を含んでいなかった。
【0085】
実施例1乃至8の結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
比較例1
原料組成物を以下の組成としたこと、及び、200℃の恒温槽に配置したこと以外は実施例1と同様な方法で本比較例の結晶化物を得た。なお、原料組成物のpHは2.0であった。
【0088】
FeCl : 8.2質量%
NaF : 8.3質量%
HCl : 1.5質量%
O : 残部
本比較例の結晶化物は、NaFeFとNaFeFとの混合物からなるナトリウム遷移金属フッ化物であり、NaFeFの含有率は77%であった。
【0089】
比較例2
アスコルビン酸を使用しなかったこと、ナトリウム源としてフッ化ナトリウムと亜硫酸ナトリウム(NaSO)を使用したこと、原料組成物を以下の組成としたこと、及び、160℃の恒温槽に配置したこと以外は実施例4と同様な方法で本比較例の結晶化物を得た。原料組成物のpHは6.0であった。
【0090】
MnSO : 8.9質量%
NaF : 7.6質量%
NaSO : 7.4質量%
O : 残部
本比較例の結晶化物は、酸化マンガン(MnOx)を主相とする、酸化マンガンとナトリウムマンガンフッ化物の混合物であった。
【0091】
比較例3
原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例7と同様な方法で本比較例の結晶化物を得た。原料組成物のpHは4.0であった。
【0092】
NiSO : 9.6質量%
NaF : 10.5質量%
O :残部
本実施例の結晶化物は、硫化ニッケル(NiS)とNaNiFの混合物であった。
【0093】
測定例
実施例4及び5のナトリウムマンガンフッ化物を正極活物質として備えたナトリウム二次電池を構成し、放電容量を測定した。結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
図1
図2
図3