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特開2023-152129導電性組成物およびその製造方法、ならびに導電性組成物を用いた導電体および積層構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152129
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】導電性組成物およびその製造方法、ならびに導電性組成物を用いた導電体および積層構造体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231005BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20231005BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231005BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20231005BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20231005BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20231005BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/08
C08L63/00 A
H01B1/22 A
H01B1/00 E
H01B1/00 J
H01B5/14 Z
B32B27/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062083
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和也
(72)【発明者】
【氏名】小澤 咲月
(72)【発明者】
【氏名】東海 裕之
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK53B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DE00B
4F100GB41
4F100JB13B
4F100JG01B
4F100JJ03B
4J002AA001
4J002CD002
4J002DA076
4J002FB086
4J002FB236
4J002FD116
4J002FD117
4J002FD140
4J002GF00
4J002GQ00
4J002GQ02
5G301DA03
5G301DA42
5G301DA57
5G301DD01
5G301DE01
5G307GA02
5G307GB02
(57)【要約】
【課題】はんだリフロー等の高温条件下に繰り返し晒された後であっても、高温条件下に晒される前と比較した抵抗値の変化が極めて小さい導電体を形成することができる導電性組成物を提供する。
【手段】バインダー樹脂と、第1の導電性粒子と、第2の導電性粒子とを含む導電性組成物において、熱重量・示差熱同時測定により25℃から280℃まで加熱した時の第1の導電性粒子の重量減少率を0.075%未満、熱重量・示差熱同時測定により25℃から280℃まで加熱した時の第2の導電性粒子の重量減少率を0.075%以上とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂と、第1の導電性粒子と、第2の導電性粒子とを含む導電性組成物であって、
熱重量・示差熱同時測定により25℃から280℃まで加熱した時の前記第1の導電性粒子の重量減少率が0.075%未満であり、
熱重量・示差熱同時測定により25℃から280℃まで加熱した時の前記第2の導電性粒子の重量減少率が0.075%以上である
ことを特徴とする、導電性組成物。
【請求項2】
前記第1の導電性粒子および第2の導電性粒子の少なくとも一種が銀粉を含む、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記第1の導電性粒子および第2の導電性粒子の少なくとも一種が表面処理剤により表面処理されている、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記表面処理剤が有機酸を含む、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記第1の導電性粒子が、前記導電性組成物中の固形分の総質量に対して20~60質量%含まれる、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項6】
前記第2の導電性粒子が、前記導電性組成物中の固形分の総質量に対して20~60質量%含まれる、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項7】
前記導電性組成物中の前記第1の導電性粒子と第2の導電性粒子との質量比が3:7~7:3である、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項8】
熱硬化性成分をさらに含む、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項9】
前記熱硬化性成分がエポキシ樹脂である、請求項8に記載の導電性組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の導電性組成物を固化させてなる、導電体。
【請求項11】
基材と、該基材上に設けられた請求項10に記載の導電体の層とを有する、積層構造体。
【請求項12】
請求項10に記載の導電体または請求項11に記載の積層構造体を備える、電子部品。
【請求項13】
バインダー樹脂と、第1の導電性粒子と、第2の導電性粒子とを含む導電性組成物の製造方法であって、
前記バインダー樹脂と、前記第1の導電性粒子および第2の導電性粒子とを混合する工程を含み、
熱重量・示差熱同時測定により25℃から280℃まで加熱した時の前記第1の導電性粒子の重量減少率が0.075%未満であり、
熱重量・示差熱同時測定により25℃から280℃まで加熱した時の前記第2の導電性粒子の重量減少率が0.075%以上である
ことを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性組成物およびその製造方法、ならびに該導電性組成物を固化させて得られる導電体、該導電体の層を有する積層構造体に関する。さらに、本発明は、該導電体または積層構造体を備える電子部品にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の配線回路等のパターン状の導電体を形成するための材料として、バインダー樹脂に金属粉末を混合したペースト状の導電性組成物が知られている。このような導電性組成物は、基板上に塗布した後に固化させることにより、所望のパターン配線や電極等を形成することができる。そして、近年では電子機器の高性能化に伴い、導電性組成物を用いて形成されるパターン配線や電極等には、抵抗値がより低く信頼性がより高いことが求められている。
【0003】
ところで、電子機器に用いられるプリント配線板に載置された電子部品を実装する場合には、はんだリフロー(リフローはんだ付け)と呼ばれるはんだ付けの方式が採られる場合がある。このはんだリフロー工程では、プリント配線板は通常260℃前後の高温条件下に晒されるため、プリント配線板上の導電性組成物を固化させて形成されるパターン配線や電極等の導電体も同様に高温に晒されることになる。導電性組成物を用いて導電体が形成される場合、はんだリフロー時の高温により導電体中の一部の成分の硬化反応が進行して、導電体が収縮する。その結果、導電体中の導電粉の凝集が進み、導電体の抵抗値が低下する場合がある。一方、導電性組成物と基板との熱膨張係数の差が大きい場合、導電性組成物を固化させて形成される導電体にクラックが発生し、その結果、導電体の抵抗値が増大したり、導電体が断線したりする場合がある。このように、導電性組成物を固化させて形成される導電体を備えるプリント配線板においては、はんだリフローにより導電体の性能が損なわれ、近年の高性能化した電子機器の導電体に求められる性能を発揮できなくなるという問題がある。また、はんだリフローは複数回にわたり行われる場合もあり、そのような場合には導電体が高温条件下に繰り返し晒されることになるため、導電体の抵抗値がより一層増大し、その結果、導電体の性能が著しく損なわれる。例えば、特許文献1では、導電体に含まれる導電性粒子である銀粉末における気孔の形成を抑制してその抵抗値の増大を抑制することが提案されており、そのために特定の物性、すなわち特定の強熱減量、タップ密度、最大アスペクト比およびBET比表面積を有する銀粉末を用いることが提案されている。
【0004】
しかしながら、この場合、導電性組成物に配合される銀粉末の物性が制限されてしまい、場合によっては所望の物性を有する導電体を得られないという問題がある。また、高温条件下に単回晒された後だけではなく、繰り返し晒された後であっても、抵抗値の変化の幅が小さい導電体を形成することができる導電性組成物の提供が継続的な技術的課題として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/110255号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、はんだリフロー等の高温条件下に繰り返し晒された後であっても、高温条件下に晒される前と比較した抵抗値の変化が極めて小さい導電体を形成することができる導電性組成物およびその製造方法を提供することである。また、本発明の別の目的は、上記導電性組成物を固化させて得られる導電体、該導電体の層を有する積層構造体、該導電体または積層構造体を備える電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、バインダー樹脂と、第1の導電性粒子と、第2の導電性粒子とを含む導電性組成物において、熱重量・示差熱同時測定により25℃から280℃まで加熱した時の第1の導電性粒子および第2の導電性粒子の重量減少率がそれぞれ0.075%未満および0.075%以上であることにより、該導電性組成物を固化させて得られる導電体がはんだリフロー等の高温条件下に繰り返し晒された後であっても、高温条件下に晒される前の導電体と比較して抵抗値の変化を顕著に抑制できることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
[1]バインダー樹脂と、第1の導電性粒子と、第2の導電性粒子とを含む導電性組成物であって、
熱重量・示差熱同時測定により25℃から280℃まで加熱した時の前記第1の導電性粒子の重量減少率が0.075%未満であり、
熱重量・示差熱同時測定により25℃から280℃まで加熱した時の前記第2の導電性粒子の重量減少率が0.075%以上である
ことを特徴とする、導電性組成物。
[2]前記第1の導電性粒子および第2の導電性粒子の少なくとも一種が銀粉を含む、[1]に記載の導電性組成物。
[3]前記第1の導電性粒子および第2の導電性粒子の少なくとも一種が表面処理剤により表面処理されている、[1]に記載の導電性組成物。
[4]前記表面処理剤が有機酸を含む、[1]に記載の導電性組成物。
[5]前記第1の導電性粒子が、前記導電性組成物中の固形分の総質量に対して20~60質量%含まれる、[1]に記載の導電性組成物。
[6]前記第2の導電性粒子が、前記導電性組成物中の固形分の総質量に対して20~60質量%含まれる、[1]のいずれかに記載の導電性組成物。
[7]前記導電性組成物中の前記第1の導電性粒子と第2の導電性粒子との質量比が3:7~7:3である、[1]のいずれかに記載の導電性組成物。
[8]熱硬化性成分をさらに含む、[1]に記載の導電性組成物。
[9]前記熱硬化性成分がエポキシ樹脂である、[8]に記載の導電性組成物。
[10][1]に記載の導電性組成物を固化させてなる、導電体。
[11]基材と、該基材上に設けられた[10]に記載の導電体の層とを有する、積層構造体。
[12][10]に記載の導電体または[11]に記載の積層構造体を備える、電子部品。
[13]バインダー樹脂と、第1の導電性粒子と、第2の導電性粒子とを含む導電性組成物の製造方法であって、
前記バインダー樹脂と、前記第1の導電性粒子および第2の導電性粒子とを混合する工程を含み、
熱重量・示差熱同時測定により25℃から280℃まで加熱した時の前記第1の導電性粒子の重量減少率が0.075%未満であり、
熱重量・示差熱同時測定により25℃から280℃まで加熱した時の前記第2の導電性粒子の重量減少率が0.075%以上である
ことを特徴とする、製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バインダー樹脂と、第1の導電性粒子と、第2の導電性粒子とを含む導電性組成物において、熱重量・示差熱同時測定により25℃から280℃まで加熱した時の第1の導電性粒子および第2の導電性粒子の重量減少率をそれぞれ0.075%未満および0.075%以上とすることにより、はんだリフロー等の高温条件下に繰り返し晒された後であっても、高温条件下に晒される前と比較した抵抗値の変化が極めて小さい導電体を形成することができる導電性組成物を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[導電性組成物]
本発明の導電性組成物は、バインダー樹脂と第1および第2の導電性粒子とを必須成分として含むものである。以下、本発明の導電性組成物に含有される各成分について詳述する。
【0011】
(バインダー樹脂)
本発明の導電性組成物には、導電性組成物に含まれる第1および第2の導電性粒子間の接触を促すためのバインダー樹脂が含まれる。バインダー樹脂としては、第1および第2の導電性粒子間の接触を促す機能を有するもの、特に有機バインダーであれば特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂、エラストマー等が挙げられる。バインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本発明の導電性組成物におけるバインダー樹脂の含有量は特に制限されないが、導電性組成物に含まれる固形分の総質量に対して、好ましくは5~50質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。なお、バインダー樹脂として後述するブロック共重合体を含む場合には、バインダー樹脂の総質量に対するブロック共重合体の量が、好ましくは85~100質量%である。バインダー樹脂の含有量が上述した範囲内にある場合、本発明の導電性組成物により形成される塗膜の伸縮性が良好となる。
【0013】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、飽和物であってもよく、不飽和物であってもよい。また、基材と導電性組成物との接着性の観点から、好ましくはフェノキシ樹脂、ブチラール樹脂が用いられる。
【0014】
エラストマーとしては、室温においてゴム弾性を有するものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、ゴム、熱可塑性エラストマー、官能基含有エラストマー、ブロック共重合体等が挙げられる。
【0015】
ゴムとしては、ジエン系ゴムおよび非ジエン系ゴムのいずれであってもよく、公知慣用のものを用いることができる。
【0016】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー等が挙げられる。
【0017】
官能基含有エラストマーとしては、例えば、官能基を有する熱可塑性エラストマー等が挙げられ、熱可塑性エラストマーの種類は上述したのと同じとすることができる。官能基含有エラストマーのうち、伸縮性の観点から、好ましくは官能基含有ウレタン系エラストマー、官能基含有オレフィン系エラストマーが用いられる。
【0018】
官能基含有エラストマーが有する官能基は、耐溶剤性の観点から、好ましくは(メタ)アクリロイル基、酸無水物基、カルボキシル基、エポキシ基である。耐溶剤性がより優れることから、(メタ)アクリロイル基を有する官能基含有エラストマーがより好ましく、複数の(メタ)アクリロイル基を有することが特に好ましい。
【0019】
(メタ)アクリロイル基を有するウレタン系エラストマーの具体例として、(メタ)アクリロイル基を2個有する(二官能)ウレタン系エラストマーの市販品としては、例えば、新中村化学工業株式会社製のU-108A、UA-112P、UA-5201、UA-512、UA-412A、UA-4200、UA-4400、UA-340P、UA-2235PE、UA-160TM、UA-122P、UA-512、UA-W2、UA-7000、UA-7100;サートマー社製のCN962、CN963、CN964、CN965、CN980、CN981、CN982、CN983、CN996、CN9001、CN9002、CN9788、CN9893、CN978、CN9782、CN9783;東亞合成化学工業社製のアロニックス(登録商標)M-1100、M-1200、M-1210、M-1310、M-1600;根上工業株式会社製のUN-9000PEP、UN-9200A、UN-7600、UN-333、UN-1255、UN-6060PTM、UN-6060P、SH-500B;共栄社化学株式会社製のAH-600、AT-600;ダイセル・オルネクス株式会社製のエベクリル280、エベクリル284、エベクリル402、エベクリル8402、エベクリル8411、エベクリル8807、エベクリル9270等が挙げられる。また、(メタ)アクリロイル基を3個有する(三官能)ウレタン系エラストマーの市販品としては、例えば、サートマー社製のCN929、CN944B85、CN989、CN9008;ダイセル・オルネクス株式会社製のエベクリル264、エベクリル265、エベクリル1259、エベクリル8201、KRM8296、エベクリル294/25HD、エベクリル4820等が挙げられる。また、(メタ)アクリロイル基を4個以上有する(四官能以上)ウレタン系エラストマーの市販品としては、例えば、新中村化学工業株式会社製のU-6HA、U-6H、U-15HA、UA-32P、U-324A、UA-7200;サートマー社製のCN968、CN9006、CN9010;根上工業株式会社製のUN-3320HA、UN-3320HB、UN-3320HC、UN-3320HS、UN-904、UN-901T、UN-905、UN-952;ダイセル・オルネクス株式会社製のエベクリル1290、エベクリル1290K、KRM8200、エベクリル5129、エベクリル8210、エベクリル8301、エベクリル8405等を挙が挙げられる。
【0020】
他の官能基含有エラストマーの具体例として、酸無水物基を有するエラストマーの市販品としては、例えば、サートマー社製のライコン(登録商標)130MA8、ライコン(登録商標)130MA13、ライコン(登録商標)130MA20、ライコン(登録商標)131MA5、ライコン(登録商標)131MA10、ライコン(登録商標)131MA17、ライコン(登録商標)131MA20、ライコン(登録商標)184MA6、ライコン(登録商標)156MA17等が挙げられる。また、(メタ)アクリロイル基を有するエラストマーの市販品としては、株式会社クラレ製のUS102、サートマー社製のCN301、CN307、大阪有機化学工業社製のBAC-45等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するエラストマーとしては、両末端カルボキシル基変性ブタジエン-アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。また、エポキシ基、カルボキシル基を有するエラストマーとしては、種々の骨格を有するエポキシ樹脂の一部または全部のエポキシ基を両末端カルボン酸変性型ブタジエン-アクリロニトリル共重合体で変性したエラストマー等が挙げられる。
【0021】
エラストマーとして上述したゴムや官能基含有エラストマーが用いられる場合、必要に応じて硫黄系および/または非硫黄系の加硫剤がエラストマーに添加される。ただし、第1および/または第2の導電性粒子として銀粉を含む導電性組成物においては、加硫剤に含まれる硫黄による導電性組成物中の銀粉が酸化や硫化によって腐食を防止する観点から、非硫黄系加硫化剤を用いることが好ましい。
【0022】
ブロック共重合体としては、ハードセグメントとソフトセグメントとのブロック共重合体であれば、特に制限されることなく用いることができる。ブロック共重合体は、結晶性が低く分子間力が弱いため、ガラス転移点(Tg)が比較的低く、導電性粒子と混合した場合には柔軟で伸びがよいという利点がある。好ましくは、Tgが150℃未満のハードセグメントと、Tgが0℃未満のソフトセグメントとのブロック共重合体が用いられる。なお、本発明において、Tgは示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
【0023】
ブロック共重合体におけるハードセグメントとソフトセグメントとの比率は特に制限されないが、好ましくは20:80~50:50、より好ましくは25:75~40:60の範囲に調整される。
【0024】
ブロック共重合体におけるハードセグメントを構成する単位としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート単位、スチレン単位等が挙げられる。また、ソフトセグメントを構成する単位としては、例えば、n-ブチルアクリレート単位、ブタジエン単位等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0025】
ブロック共重合体の市販品としては、例えば、リビング重合を用いて製造されるアルケマ社製のアクリル系トリブロックコポリマーが挙げられる。より具体的には、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリメチルメタアクリレート共重合体に代表されるSBMタイプ、ポリメチルメタアクリレート-ポリブチルアクリレート-ポリメチルメタアクリレート共重合体に代表されるMAMタイプ、およびカルボン酸変性処理または親水基変性処理されたMAM NタイプまたはMAM Aタイプが用いられる。SBMタイプとしては、例えば、E41、E40、E21、E20等が挙げられる。また、MAMタイプとしては、例えば、M51、M52、M53、M22等が挙げられる。MAM Nタイプとしては、例えば、52N、22N等が挙げられる。MAM Aタイプとしては、例えば、SM4032XM10等が挙げられる。ブロック共重合体の市販品の別の例としては、例えば、株式会社クラレ製のクラリティ(登録商標)が挙げられる。クラリティ(登録商標)は、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸ブチルから誘導されるブロック共重合体である。
【0026】
ブロック共重合体の重量平均分子量は適宜設定することができ、例えば、10,000~500,000、20,000~400,000、50,000~300,000等とすることができる。
【0027】
ブロック共重合体の引張破断伸び率は適宜設定することができ、例えば、100~600%、200~600%、300~500%等とすることができる。本発明において、引張破断伸び率は下記式で表され、国際標準化機構の国際規格ISO 37に準拠した方法により測定することができる。
【数1】
【0028】
上述したエラストマーには、必要に応じて軟化剤、可塑剤等の公知の添加剤が含まれていてもよい。軟化剤としては、例えば、鉱物油系軟化剤、植物油系軟化剤等が挙げられる。鉱物油系軟化剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。植物油系軟化剤としては、例えば、ひまし油、錦実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、パイン油、トール油等が挙げられる。軟化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組わせて用いてもよい。軟化剤の添加量により、エラストマーのゴム弾性や伸張性を調整することができる。
【0029】
(導電性粒子)
本発明の導電性組成物には、第1の導電性粒子および第2の導電性粒子が含まれる。第1および第2の各導電性粒子は、本発明の導電性組成物を用いて形成された硬化物に導電性を付与するものである。
【0030】
本発明の導電性組成物は、該導電性組成物に配合される第1および第2の各導電性粒子について、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA:Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis)により25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率をそれぞれ特定の範囲とすることにより、導電性組成物を固化させて得られる硬化物(導電体)がはんだリフロー等の高温条件下に繰り返し晒された後であっても、高温条件下に晒される前の導電体と比較して抵抗値の変化を顕著に抑制することができる。
【0031】
本発明の導電性組成物に配合される第1の導電性粒子は、TG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率(以下、単に「第1の導電性粒子の重量減少率」とも言う。)が0.075%未満である。また、本発明の導電性組成物に配合される第2の導電性粒子は、TG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率(以下、単に「第2の導電性粒子の重量減少率」とも言う。)が0.075%以上である。本発明において、第1および第2の各導電性粒子の重量減少率はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製の熱重量測定装置TGA5500を用いて、熱重量測定法により以下の方法により測定するものとする。具体的には、まず、導電性粒子80mgを試料として準備する。準備された試料を25℃から285℃まで10℃/分の昇温速度で昇温しながら加熱したときの重量変化を測定する。測定された重量変化の結果から、25℃から280℃にかけての重量減少率M(%)を下記式によって算出する。下記式において、W0は加熱前の試料の重量(すなわち、80mg)、W1は25℃から10℃/分の昇温速度で昇温して加熱した場合に280℃に達した時点での試料の重量を示す。
M=100-(W1/W0)×100
【0032】
導電性組成物に配合される第1および第2の各導電性粒子を熱重量・示差熱同時測定により25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率を上述した範囲とすることにより、導電性組成物の硬化物である導電体が高温条件下に晒された場合のその前後において導電体の抵抗値の変化を顕著に抑制できる理由は定かではないが、以下のように推論できる。すなわち、重量減少率が小さい導電性粒子はその表面の付着物が相対的に少なく、そのような導電性粒子を含む導電体は高温条件下に晒された場合に抵抗値が低下する傾向を示し、一方、重量減少率が大きい導電性粒子はその表面の付着物が相対的に多く、そのような導電性粒子を含む導電体は高温条件下に晒された場合に抵抗値が上昇する傾向を示すと推定される。本発明の導電性組成物においては、これらの導電性粒子を組み合わせて用いることにより、導電性組成物を固化させて形成される導電体の抵抗値を高度に安定化することができると考えられる。
【0033】
導電性粒子としては、導電性組成物に用いられる従来公知のものを用いることができ、例えば、銀粒子、銅粒子、ニッケル粒子等の金属粒子(金属粉)、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等の炭素粒子(炭素粉)、WC、BC、ZrC、NbC、MoC、TiC、TaC等の金属酸化物、TiN、ZrN、TaN等の金属窒化物、WSi、MoSi等の金属ケイ化物等が挙げられる。第1および第2の各導電性粒子としては、それぞれこれらの導電性粒子の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
第1および第2の各導電性粒子としては、好ましくはそれぞれ銀粒子(銀粉)が用いられ、特に好ましくはそれぞれ銀粉のみが用いられる。銀粉は、単体の銀の形態であることが好ましいが、銀の合金や、銀をコアまたは被覆層とする多層体の形態であってもよく、銀の酸化物の形態であってもよく、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
導電性粒子の形状は特に制限されず、例えば、球状、略球状、回転楕円体状、略回転楕円体状、略回転楕円体状、フレーク(鱗片)状、デンドライト状等の種々の形状の導電性粒子を用いることができる。好ましくは形状の異なる2種以上の導電性粒子が組み合わせて用いられ、特に好ましくは球状、略球状、回転楕円体状、略回転楕円体状の導電性粒子と、フレーク(鱗片)状の導電性粒子とが組み合わせて用いられる。一般的に、導電性組成物を基板等に印刷する場合、その印刷パターンの端部(エッジ部)の切れを良好なものとするためには、導電性組成物が適度な粘度とチキソトロピー性(チキソ性)とを併せ持つ必要がある。導電性組成物に配合される導電性粒子が球状、略球状、回転楕円体状、略回転楕円体状等の導電性粒子のみである場合、導電性組成物のチキソ性が十分に得られない場合が多く、印刷した場合の印刷パターンの端部の切れを良好なものとするためには粘度を上げる必要がある。しかしながら、印刷パターンの端部の切れを良好なものとしようとすると粘度が上がりすぎてしまい、導電性組成物を印刷する際に掠れが生じて良好な印刷パターンの質が低下するという問題がある。一方、フレーク(鱗片)状の導電性粒子はチキソ性を増大させやすいため。導電性組成物に配合される導電性粒子がフレーク(鱗片)状の導電性粒子のみである場合には、導電性組成物のチキソ性が高くなりすぎる場合が多く、良好な印刷性を得られないという問題がある。そこで、球状、略球状、回転楕円体状、略回転楕円体状の導電性粒子とフレーク(鱗片)状の導電性粒子とを組み合わせて導電性組成物に配合することにより、少量のフレーク状(鱗片)状の導電性粒子で十分にチキソ性を増大させ、適度な粘度とチキソ性とを併せ持つ導電性組成物とすることができる。また、フレーク(鱗片)状の導電性粒子は、球状、略球状、回転楕円体状、略回転楕円体状の導電性粒子と比較して抵抗値が低い傾向にあるため、フレーク(鱗片)状の導電性粒子の配合割合を大きくすることにより、少ない導電性粒子で導電性組成物において求められる導電性を得ることができる。
【0036】
第1の導電性粒子のメディアン径(D50)は特に制限されないが、例えば、0.1~20μm、2.0~20μm、3.0~15μm等とすることができる。また、第2の導電性粒子のメディアン径(D50)は特に制限されないが、例えば、0.1~20μm、0.1~15μm、0.1~10μm等とすることができる。本発明において、第1および第2の各導電性粒子のD50は、日機装株式会社製のマイクロトラック MT3300EXおよび同社製の循環装置ASVRを用いて以下の方法で測定することができる。なお、本明細書において、各導電性粒子のメディアン径(D50)とは、各導電性粒子を構成する粒子をすべて球状と仮定した場合の仮想の個数分布に基づいて求められる。
【0037】
<条件設定>
測定条件を以下の手順に従って入力する。マイクロトラック MT3300EXの付属のソフト(「粒度分布測定」)を立ち上げ、SET UPの画面から進み、測定条件設定のオプションから時間設定を行う。Setzero時間を30sec、測定を30sec、測定回数を2回とする。次いで、分析条件を以下の手順に従って入力する。分析条件の粒子情報タブ内の粒子の特徴は反射とする。また、溶媒情報において、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を選択し、溶媒屈折率を1.4とする。次いで、スケール設定を以下の手順に従って入力する。粒径範囲において、最小粒径を0.021μm、最大粒径を704μmとする。次にサンプリングシステムを以下の手順に従って入力する。循環装置ASVRの洗浄回数を4回、流速を50%、超音波出力を40W、超音波時間を300secとする。すべての条件を入力した後、測定条件の設定において、保存を押して閉じる。
【0038】
<サンプル調製>
以下の手順でサンプルの調製を行う。スクリュー瓶に導電性粒子を0.5g秤取り、スポイトを用いて20gのPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を少しずつ添加し、スクリュー瓶を振とうして導電性粒子を分散させてサンプルを作製する。いずれのサンプルも、外部分散や予備分散を行わないものとする。
【0039】
<サンプルのメディアン径(D50)の測定>
以下の手順でサンプル中の導電性粒子のメディアン径(D50)の測定を行う。まず、マイクロトラック MT3300EXの付属のソフトの粒度分布測定をクリックし、サンプルローディングの画面を開く。次いで、本体のサンプル投入口にスポイトを用いてサンプルを数滴滴下する。次いで、サンプルローディングの画面において、赤色の指示バーが表示されたら、指示バーが赤色から緑色の範囲内に入るまで、サンプル投入口にサンプルを滴下する。指示バーが緑色の範囲内に入ったら測定ボタンを押してサンプル中の導電性粒子のメディアン径(D50)の測定を開始する。サンプルの調製からメディアン径(D50)の測定までは5分以内に行う。測定結果として表示された累積平均径50%の値、面積平均径MAの値をそれぞれ読み取る。累積平均径50%の値をマイクロトラックで測定したメディアン径(D50)の値とする。
【0040】
各導電性粒子と上述したバインダー樹脂との親和性を調整するため、さらに各導電性粒子の重量変化率を上述した特定の範囲とするために、表面処理された導電性粒子を用いてもよい。導電性粒子の表面処理の方法としては、分散液を含む溶液中に導電性粒子を投入して撹拌する湿式法や、導電性粒子を撹拌しながら分散液を含む溶液を噴霧する乾式法等の方法が挙げられる。また、界面活性剤を併用して表面処理を行ってもよい。
【0041】
導電性粒子の表面処理に用いられる分散剤としては、例えば、脂肪酸等の有機酸、有機金属、ゼラチン等の保護コロイドが挙げられる。分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不純物の混入抑制や疎水基との吸着性の向上の観点から、分散剤としては、好ましくは脂肪酸またはその塩が用いられる。また、分散剤としては、脂肪酸またはその塩を界面活性剤でエマルション化したものを用いてもよい。好ましい分散剤としては、例えば、炭素原子数6~24の脂肪酸が挙げられ、具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、リノレン酸等が好ましく用いられる。これらの脂肪酸は、導電性組成物を用いた配線層や電極への悪影響が少ないと考えられるため好ましい。
【0042】
導電性粒子の表面処理は、各導電性粒子の表面全体にわたり施されていてもよく、表面の一部にのみ施されていてもよい。導電性粒子の表面の一部に表面処理が施されている場合、処理される表面の面積は、例えば、導電性粒子の表面全体の面積の10~90%、20~80%、30~70%、40~60%等とすることができる。
【0043】
導電性粒子に施された表面処理は、多くの場合、該導電性粒子を加熱することにより失われ、加熱温度が高くなるほど失われやすくなる。そして、表面処理の種類や量によるものの、表面処理が施された導電性粒子を280℃まで加熱するとほとんどの表面処理が失われることを本発明者らは見出した。したがって、TG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時の導電性粒子の重量減少率は、該導電性粒子の表面に施された表面処理の量に依存する傾向がある。例えば、導電性粒子の表面に同じ種類の表面処理が施されている場合、表面処理の量が多い方が、280℃まで加熱した場合に失われる表面処理の量が多く、導電性粒子の重量減少率は大きいと考えられる。したがって、本発明においては、導電性粒子に施されている表面処理の量(例えば、導電性粒子の表面全体に表面処理が施されているか、または表面の一部に表面処理が施されているか等)によって、TG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時に特定の重量減少率をもたらす導電性粒子を適宜選択することができる。換言すれば、導電性粒子の表面積(すなわち、導電性粒子の大きさ、形状)、表面処理を施す導電性粒子の部分(範囲)、表面処理の種類や量を適宜変更することにより、TG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時に特定の重量減少率をもたらす導電性粒子を得、本発明の導電性組成物に配合することができる。
【0044】
本発明の導電性組成物における第1の導電性粒子と第2の導電性粒子との質量比(第1の導電性粒子の質量:第2の導電性粒子の質量)は、好ましくは3:7~7:3、より好ましくは4:6~6:4、さらに好ましくは5:5である。
【0045】
本発明の導電性組成物における第1の導電性粒子の含有量は特に制限されないが、導電性組成物に含まれる固形分の総質量に対して、好ましくは20~60質量%、より好ましくは30~60質量%、さらに好ましくは35~55質量%である。また、本発明の導電性組成物における第2の導電性粒子の含有量は特に制限されないが、導電性組成物に含まれる固形分の総質量に対して、好ましくは20~60質量%、より好ましくは30~60質量%、さらに好ましくは35~55質量%である。
【0046】
上述した通り、本発明の導電性組成物は、該導電性組成物を固化させて得られる導電体が高温条件下に繰り返し晒された後であっても、高温条件下に晒される前の導電体と比較して抵抗値の変化を顕著に抑制することができる。本明細書において、本発明の導電性組成物を固化させて得られる硬化物(導電体)が晒される「高温条件」は特に制限されないが、例えば、150℃以上、180℃以上、200℃以上等とすることができ、また、300℃以下、280℃以下、250℃以下等とすることができる。より具体的には、高温条件は、例えば、150~300℃、180~280℃、200~250℃等とすることができる。また、高温条件下に晒される時間も特に制限されないが、例えば、10秒以上、30秒以上、60秒以上等とすることができ、300秒以下、240秒以下、180秒以下等とすることができる。より具体的には、高温条件下に晒される時間は、例えば、10~300秒、30~240秒、60~180秒等とすることができる。
【0047】
本明細書において、本発明の導電性組成物を固化させて得られる導電体を高温条件下に「繰り返し」晒すとは、導電体を高温条件下に断続的に複数回にわたり晒すことを意味する。導電体を高温条件下に晒す回数は特に制限されないが、例えば、2回以上、5回以上、7回以上、10回以上、15回以上等とすることができる。
【0048】
高温条件下に晒される前の抵抗値と比較した場合の、高温条件下に晒された後の抵抗値の変化率(以下、単に「抵抗値の変化率」とも言う。)は下記式で表される。
【数2】
【0049】
本発明において、導電性組成物を固化させて得られる導電体の抵抗値は、ミリオームメーターを用いて四端子測定法により測定することができる。具体的には、FR-4基材の銅ベタ基板上に、導電性組成物を用いてスクリーン印刷版(150メッシュ、テトロン製)で両端に5mm×5mmのパッドを有する、幅1mm、長さ400mmの評価用ラインパターンをパターン印刷し、80℃で30分熱処理した後、180℃で30分熱硬化させる。熱硬化後のラインパターン(導電体)の抵抗値を、5mm×5mmのパッド部分にプローブを当てて日置電機株式会社製のミリオームハイテスタ3540を用いて、四端子測定法により測定する。より具体的な方法の例としては、実施例に示す方法が挙げられる。
【0050】
本発明の導電性組成物を固化させて得られる導電体は、上述した抵抗値の変化率の変化率が、好ましくは±5%未満以内であり、より好ましくは±4%以内であり、さらに好ましくは±3.5%以内であり、特に好ましくは±3%以内である。高温条件下に晒される前と後との導電体の抵抗値の変化率が上記の範囲である場合、導電性の抵抗値の変化が顕著に抑制されているということができる。なお、本明細書において「±X%以内」という場合、-N%~+N%の範囲を意味する。また、「±Y%未満以内」という場合、-Y%超~+Y%未満の範囲を意味する。
【0051】
一つの実施形態においては、本発明の導電性組成物は、該導電性組成物を固化させて得られる導電体がはんだリフローに10回繰り返して晒された場合であっても、はんだリフローに晒される前の導電体と比較して抵抗値の増大を顕著に抑制することができる。具体的には、導電体がはんだリフローに晒される前と比較した場合の、はんだリフローに晒された後の導電体の抵抗値の変化率が、好ましくは±5%未満以内であり、より好ましくは±4%以内であり、さらに好ましくは±3.5%以内であり、特に好ましくは±3%以内である。
【0052】
(有機溶剤)
本発明の導電性組成物には、組成物の調製や、基板やフィルムに塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を配合することができる。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等、公知慣用の有機溶剤を用いることができる。これらの中でもグリコールエーテル類が好ましい。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
有機溶剤の揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0054】
導電性組成物における有機溶剤の含有量は、導電性組成物を構成する材料に応じ適宜変更することが好ましいが、例えば、導電性組成物に対して、5~30質量%等とすることができる。
【0055】
(熱硬化性成分)
本発明の導電性組成物は、熱硬化性成分をさらに含んでいてもよい。熱硬化性成分としては、例えば、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂等の公知慣用のものが挙げられる。熱硬化性成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、熱硬化性成分としては好ましくはエポキシ樹脂が用いられる。
【0056】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0057】
エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER 828、806、807、YX8000、YX8034、834、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYD-128、YDF-170、ZX-1059、ST-3000、DIC株式会社製のEPICLON 830、835、840、850、N-730A、N-695および日本化薬株式会社製のRE-306等が挙げられる。
【0058】
(熱硬化触媒)
本発明の導電性組成物は、熱硬化触媒を含んでいてもよい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。
【0059】
熱硬化触媒の市販品としては、例えば、四国化成工業株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT 3513N(ジメチルアミン系化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CAT SA 102(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)等が挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基およびオキセタニル基の少なくともいずれか1種とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。
【0060】
(その他の成分)
本発明の導電性組成物には、必要に応じてさらに、着色剤、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤等の成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0061】
本発明の導電性組成物は、例えば、溶剤に溶解したバインダー樹脂と第1および第2の各導電性粒子とを混練することにより製造することができる。混練方法としては、例えば、ロールミル等の撹拌混合装置を用いる方法が挙げられる。具体的には、バインダー樹脂を有機溶剤に溶解して固形分50質量%の樹脂溶液を調製し、得られた樹脂溶液に第1および第2の各導電性粒子を添加し、撹拌機を用いて予備撹拌混合した後、3本ロールミルを用いて混練することにより、導電性組成物を得ることができる。用いられるバインダー樹脂や有機溶剤およびそれらの配合割合によって、液状の導電性組成物としたり、ペースト状(半固形状)の導電性組成物とすることができる。好ましくは、本発明の導電性組成物は、ペースト状の導電性組成物である。
【0062】
[導電性組成物の用途]
本発明の導電性組成物は、固化させて導電体とすることができる。例えば、導電性組成物からなる塗布膜を基材上に形成し、乾燥、固化させることにより導電体の層とすることができる。導電性組成物の固化は、例えば、導電性組成物を乾燥および/または熱処理することにより行うことができる。熱処理の例としては、例えば、熱風乾燥、熱硬化等が挙げられる。熱処理に先立ち、成形を行ってもよい。例えば、導電体の層は、基材上に本発明の導電性組成物を所望の形状となるように塗布し、必要に応じて成形した後、固化させることにより得ることができる。導電体の層は、用途に応じて種々の形状であり得、例えば、導体回路、配線、電極等とすることができる。
【0063】
導体回路を形成する場合、本発明の導電性組成物を基材上に印刷または塗布して塗膜パターンを形成するパターン形成工程と、パターニングされた塗膜を固化させる固化工程とを含む。塗膜パターンの形成には、例えば、マスキング法、レジスト法等の方法を用いることができる。
【0064】
パターン形成工程に用いられる方法としては、例えば、印刷方法、ディスペンス方法等が挙げられる。印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等が挙げられ、精緻な回路を形成する場合には、好ましくはスクリーン印刷が用いられる。また、大面積に塗布する方法としては、好ましくはグラビア印刷およびオフセット印刷が用いられる。また、ディスペンス方法とは、導電性組成物の塗布量を制御してニードルから押し出しパターンを形成する方法であり、アース配線等の部分的なパターン形成や凹凸のある部分へのパターン形成に好適に用いられる。
【0065】
導電性組成物を塗布する基材はとしては、電気絶縁性のものであれば特に制限なく用いることができ、目的に応じて適宜選択することができる。基材としては、例えば、紙-フェノール樹脂、紙-エポキシ樹脂、ガラス布-エポキシ樹脂、ガラス-ポリイミド、ガラス布/不織布-エポキシ樹脂、ガラス布/紙-エポキシ樹脂、合成繊維-エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンオキシド・シアネートエステル等の複合材を用いたすべてのグレード(例えば、FR-4等)の銅張積層板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド等のプラスチックからなるシートまたはフィルム、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、スチレン系ブロックコポリマー系等の熱可塑性エラストマーからなるシートまたはフィルム等が挙げられる。
【0066】
上述したように、本発明の導電性組成物は、基板上で固化させて導電体の層を形成することができる。したがって、本発明の導電性組成物は、基板と導電体の層とを有する積層構造体の製造の用途にも用いられ得る。そして、このような導電体や積層構造体は種々の電子機器の部品の用途に用いられ得る。
【実施例0067】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0068】
[導電性粒子の調製]
下記の手順に従って、導電性粒子1~5をそれぞれ調製した。なお、各導電性粒子のメディアン径(D50)は、日機装株式会社製のマイクロトラック MT3300EXおよび同社製の循環装置ASVRを用いて上述した方法により測定されたものである。また、各導電性粒子の重量減少率の測定は後述する方法により行った。
【0069】
(導電性粒子1の調製)
水:イソプロパノール=1:1(質量比)の混合液中に、メディアン径(D50)10.1μmのフレーク(鱗片)状の銀粉400質量%と、25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率が0.069%になるようにステアリン酸とを混合し、溶媒を除去した後、70℃で3時間加熱処理して導電性粒子1を調製した。
【0070】
(導電性粒子2の調製)
水:イソプロパノール=1:1(質量比)の混合液中に、メディアン径(D50)10.2μmのフレーク(鱗片)状の銀粉400質量%と、25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率が0.050%になるようにオレイン酸とを混合し、溶媒を除去した後、70℃で3時間加熱処理して導電性粒子2を調製した。
【0071】
(導電性粒子3の調製)
水:イソプロパノール=1:1(質量比)の混合液中に、メディアン径(D50)5.2μmのフレーク(鱗片)状の銀粉400質量%と、25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率が0.072%になるようにステアリン酸とを混合し、溶媒を除去した後、70℃で3時間加熱処理して導電性粒子3を調製した。
【0072】
(導電性粒子4の調製)
水:イソプロパノール=1:1(質量比)の混合液中に、メディアン径(D50)0.9μmのフレーク(鱗片)状の銀粉400質量%と、25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率が0.44%になるようにオレイン酸とを混合し、溶媒を除去した後、70℃で3時間加熱処理して導電性粒子4を調製した。
【0073】
(導電性粒子5の調製)
水:イソプロパノール=1:1の(質量比)混合液中に、メディアン径(D50)4.4μmのフレーク(鱗片)状の銀粉400質量%と、25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率が0.12%になるようにラウリン酸とを混合し、溶媒を除去した後、70℃で3時間加熱処理して導電性粒子5を調製した。
【0074】
[導電性粒子の重量減少率の測定]
導電性粒子1~5のそれぞれについて、以下の手順に従って、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)により25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率を測定した。まず、各導電性粒子80mgを準備し、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製の熱重量測定装置TGA5500を用いて、各導電性組成物を25℃から285℃まで10℃/分の昇温速度で昇温しながら加熱したときの重量変化を測定した。測定された重量変化の結果から、25℃から280℃にかけての重量減少率M(%)を下記式によって算出した。なお、下記式において、W0は加熱前の資料の重量(すなわち、80mg)、W1は25℃10℃/分で昇温して加熱した場合に280℃に達した時点での各導電性粒子の重量を示す。
M=100―(W1/W0)×100
【0075】
[導電性組成物の調製]
下記表1に示す各成分を、同表に示す量で混合し、撹拌機を用いて予備撹拌した後、3本ロールミルを用いて混練し、実施例1~3および比較例1~6の各導電性組成物を調製した。なお、なお、表1中の各成分の詳細は以下の通りであり、導電性粒子1~5についての物性はいずれも各導電性組成物に配合される前の状態の物性である。また、表1中、単位を記載していない数値は、いずれも「質量部」を表す。
バインダー樹脂:フェノキシ樹脂(PKHC、ImChem社製)
熱硬化性成分:ビスフェノールAD型エポキシ樹脂(R710、株式会社プリンテック社製)
熱硬化触媒:アダクト型潜在性硬化エポキシ硬化剤(キュアダクト(登録商標)P-050、四国化成工業株式会社製)
溶剤:ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
導電性粒子1:上述した手順に従って調製された導電性粒子1(TG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率:0.069%)
導電性粒子2:上述した手順に従って調製された導電性粒子2(TG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率:0.050%)
導電性粒子3:上述した手順に従って調製された導電性粒子3(TG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率:0.072%)
導電性粒子4:上述した手順に従って調製された導電性粒子4(TG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率:0.44%)
導電性粒子5:上述した手順に従って調製された導電性粒子5(TG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率:0.12%)
【0076】
【表1】
【0077】
[導電性組成物の硬化物(導電体)の作製]
ソルダーレジスト(PSR―4000D10ME、太陽インキ製造株式会社製)をスクリーン印刷法により塗布、乾燥し紫外線を照射して露光硬化させ、熱風循環式乾燥炉にてポストキュアしたFR-4基材を準備した。ポストキュア後のソルダーレジストの膜厚は20μmであった。準備されたFR-4基材上に、実施例および比較例の各導電性組成物を用いてスクリーン版(150メッシュ、テトロン製)で両端に5mm×5mmのパッドを有する、幅1mm、長さ400mmの抵抗値評価用ラインパターンを印刷して導電性組成物の膜を形成し、熱風循環式乾燥炉にて80℃で30分乾燥させた後、熱風循環式乾燥炉で180℃で30分熱硬化させることにより、各導電性組成物の硬化物(導電体)を形成し、評価用基板を得た。
【0078】
[高温条件下に晒される前の導電体の抵抗値の測定]
各評価用基板上の導電体の抵抗値を、5mm×5mmのパッド部分にプローブを当てて日置電機株式会社製のミリオームハイテスタ3540を用いて、四端子測定法により測定した。
【0079】
[高温条件下に晒された後の導電体の抵抗値の測定]
高温条件下に晒される前の導電体の抵抗値を測定した後の各評価用基板上の導電体の抵抗値を、下記条件でリフロー炉(NIS―20―82C、エイテックテクトロン株式会社製)に10回通して高温条件下に晒した後に、5mm×5mmのパッド部分にプローブを当てて日置電機株式会社製のミリオームハイテスタ3540を用いて、四端子測定法により測定した。
・リフロー条件
・雰囲気下:空気中
・プロファイル:30℃ → 180℃ (90秒間)
・炉内温度※:180℃保持(90秒間)
180℃ → 265℃(40秒間)
265℃保持(10秒間)
265℃ → 150℃(40秒間)
※炉内温度は基板上の実測値。
【0080】
[高温条件下に晒される前後の導電体の抵抗値の変化率の算出]
実施例および比較例の各導電性組成物について、上述した各評価用基板を用いて測定された高温条件下に晒される前後の導電体の抵抗値から、高温条件下に晒される前後の導電体の抵抗値の変化率を下記式に基づいて算出した。結果を表1に示す。
【数3】
【0081】
表1に示す結果から、TG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率が0.075%である導電性粒子と、TG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率が0.075%以上である導電性粒子とを含む各実施例の導電性組成物では、形成される硬化物(導電体)の抵抗値の変化が、高温条件下に晒される前後において顕著に抑制されることが分かる。一方、TG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率が0.075%である導電性粒子、およびTG-DTAにより25℃から280℃まで加熱した時の重量減少率が0.075%以上である導電性粒子のいずれか一方しか含まない各比較例の導電性組成物では、形成される硬化物(導電体)の抵抗値の変化が、高温条件下に晒される前後において十分に抑制されないことが分かる。