(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152131
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ケーブル、ケーブルの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 7/18 20060101AFI20231005BHJP
H01B 13/22 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01B7/18 Z
H01B13/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062087
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391025534
【氏名又は名称】坂東電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】山田 仁
(72)【発明者】
【氏名】矢島 吉晴
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】高石 秀伸
【テーマコード(参考)】
5G313
【Fターム(参考)】
5G313AB04
5G313AC01
5G313AD04
5G313AE01
5G313AE02
5G313AE04
(57)【要約】
【課題】被覆物を剥離し易いケーブルを提供する。
【解決手段】本発明のケーブルは、線状体と、不揮発性を有し、前記線状体に塗布された塗布材と、前記塗布材に付着された離型材と、前記塗布材および前記離型材を介して前記線状体を被覆する被覆層と、備える。
。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状体と、
不揮発性を有し、前記線状体に塗布された塗布材と、
前記塗布材に付着された離型材と、
前記塗布材および前記離型材を介して前記線状体を被覆する被覆層と、
を備えるケーブル。
【請求項2】
前記塗布材は、シリコーンオイルである、
請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記シリコーンオイルは、親油性を有する、
請求項2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記離型材の平均粒径は、4μm以上、30μm以下である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項5】
前記塗布材の厚さは、1μm以上である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項6】
前記塗布材の粘度は、0.65mm2/s以上、30,000mm2/s以下である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項7】
不揮発性を有する塗布材を線状体に塗布する第1塗布装置と、
前記塗布材に離型材を付着する第2塗布装置と、
前記塗布材および前記離型材を介して前記線状体を被覆する被覆層を形成する第3塗布装置と、
を備えるケーブルの製造装置。
【請求項8】
前記塗布材は、シリコーンオイルである、
請求項7に記載のケーブルの製造装置。
【請求項9】
前記線状体は屈曲することなく、前記第1塗布装置、前記第2塗布装置および前記第3塗布装置を順に通過する、
請求項7又は8に記載のケーブルの製造装置。
【請求項10】
不揮発性を有する塗布材を線状体に塗布するステップと、
前記塗布材に離型材を付着するステップと、
前記塗布材および前記離型材を介して前記線状体を被覆する被覆層を形成するステップと、
を備えるケーブルの製造方法。
【請求項11】
前記塗布材は、シリコーンオイルである、
請求項10に記載のケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル、ケーブルの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ゴム・プラスチック電線等のケーブルの線状体を加湿した後に、当該線状体に粉体を塗布することで、被覆物の剥離性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている技術は、線状体に対して粉体を塗布するために線状体の表面を加湿している。しかしながら、水分は揮発性を有するので、線状体の表面に粉体を均一に塗布できず、依然として被覆物の剥離性のばらつきが生じる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、被覆物の剥離性のばらつきを抑えられるケーブル、ケーブルの製造装置及びケーブルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、線状体と、不揮発性を有し、前記線状体に塗布された塗布材と、前記塗布材に付着された離型材と、前記塗布材および前記離型材を介して前記線状体を被覆する被覆層と、を備えるケーブルが提供される。
【0007】
また、本発明の他の一観点によれば、不揮発性を有する塗布材を線状体に塗布する第1塗布装置と、前記塗布材に離型材を付着する第2塗布装置と、前記塗布材および前記離型材を介して前記線状体を被覆する被覆層を形成する第3塗布装置と、を備えるケーブルの製造装置が提供される。
【0008】
更に、本発明の他の一観点によれば、不揮発性を有する塗布材を線状体に塗布するステップと、前記塗布材に離型材を付着するステップと、前記塗布材および前記離型材を介して前記線状体を被覆する被覆層を形成するステップと、を備えるケーブルの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被覆物の剥離性のばらつきを抑えられるケーブル、ケーブルの製造装置及びケーブルの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】一実施形態に係るケーブルの製造装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図3】一実施形態に係るケーブルの製造装置の制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態に係るケーブルの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】実施例及び比較例に係るケーブルを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。各図面を通じて共通する機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略又は簡略化することがある。
【0012】
図1は、本実施形態に係るケーブル1の断面図である。ケーブル1は、線状体2と、線状体2の外周に塗布された塗布材3と、塗布材3の外周に設けられた離型材4と、離型材の外周に設けられた被覆層5とを備える。ケーブル1としては、メタリックケーブルや同軸ケーブル等の通信用ケーブル、送電線、通信用ケーブルと電力供給用のケーブルとを1本のケーブルとして一体化した複合ケーブル等の各種のケーブルが挙げられる。すなわち、本発明は各種のケーブルに適用し得る。
【0013】
線状体2は、ケーブル1のコアとなる導電性を有する部材である。線状体2は、例えば複数の銅線等の束により形成される。
【0014】
塗布材3は、不揮発性を有する塗布材を線状体2の表面に塗布することで形成される。本実施形態の塗布材としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジエンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等の親油性を有するシリコーンオイルを用いるが、これに限られない。塗布材として、例えばパラフィンオイル、親水性を有するシリコーンオイル等を用いてもよい。
【0015】
また、後述する被覆層5を形成する際には、高温状態の樹脂が塗布されるが、塗布材3は高温状態の樹脂から伝わる熱によって揮発しないことが好ましい。例えば、塗布材3として高温状態で揮発する物質を用いた場合には、塗布材3が加熱されると揮発し、内部で発泡してしまう。この場合、線状体2と被覆層5との間に隙間が生じ、被覆層5の密着度が低下する原因となる。一方、高温状態においても塗布材3が揮発しない場合には、線状体2と被覆層5との間に隙間が生じないため、上述したような不具合は生じない。
【0016】
塗布材3の厚さは、1μm以上であるものとする。塗布材3の厚さは、ケーブル1の全体で均一かつ適正な値となるように調整される。なお、塗布材3の厚さは、塗布材の単位面積当たりの塗布量(g/mm2)に換算され得る。
【0017】
また、本実施形態の塗布材の粘度は、0.65mm2/s以上、30,000mm2/s以下であるものとする。これにより、塗布材が線状体2の表面に付着し易くなる。また、後述する離型材が塗布材3の表面に付着し易くなる。
【0018】
離型材4は、塗布材3の表面に付着された離型材により形成される。本実施形態の離型材としては、平均粒径が4μm以上、30μm以下である粉体を用いるものとする。粉体は、例えばタルク、マイカ、カオリン等である。タルクは、無機鉱物中で最も軟らかく、耐熱性に優れている。
【0019】
被覆層5は、塗布材3および離型材4を介して線状体2を被覆する。被覆層5は、ジャケット、シースとも呼ばれる。被覆層5は、低摩擦性、耐熱性、耐久性を兼ね備えている。被覆層5は、ウレタン樹脂、エチレン樹脂、ブタジエン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂により形成される。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、およびテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等の樹脂が挙げられる。
【0020】
図2は、本実施形態に係るケーブル1の製造装置100の構成の一例を示す模式図である。
図2に示すように、製造装置100は、第1塗布装置110と、第2塗布装置120と、第3塗布装置130と、制御装置140とを備える。
【0021】
第1塗布装置110は、塗布材が格納された容器111と、容器111から塗布材を供給するための供給管112と、供給管112に設けられたバルブ113と、塗布用部材114とを備える。
【0022】
バルブ113は、後述する制御装置140からの制御信号によって開閉し、塗布用部材114への塗布材の供給量を調整する。
【0023】
塗布用部材114は、供給管112から供給された液体状の塗布材を内部に浸み込ませた状態で保持する部材である。本実施形態の塗布用部材114には、線状体2が第2塗布装置120側に移動できるように貫通孔(不図示)が形成されている。このため、線状体2が塗布用部材114の内部を移動すると、線状体2の表面(外周面)に塗布材が塗布される。塗布用部材114としては、例えばフェルト、スポンジ等の液体を吸収でき、かつ、柔軟性を有する部材が用いられる。塗布用部材114を用いることで、線状体2を水槽の中に浸す場合よりも塗布材を適正な量で塗布することができる。また、第1塗布装置11を小型化することもできる。
【0024】
第2塗布装置120は、離型材4の材料である粉体が格納された容器121と、容器121内の粉体を攪拌するミキサー(不図示)とを有する。第2塗布装置120の容器の鉛直方向における中央の位置には、線状体2が第1塗布装置110側から第3塗布装置130側に移動できるように貫通孔(不図示)が形成されている。このため、線状体2が貫通孔を介して第2塗布装置120(容器121)の内部を移動すると、塗布材3の表面に粉体が塗布される。
【0025】
第3塗布装置130は、被覆層5を形成するための材料である樹脂を溶融した状態で保持している。第2塗布装置120側から搬送された線状体2には、第3塗布装置13によって高温状態の樹脂が塗布される。塗布された樹脂は、温度低下に伴って硬化し、被覆層5が形成される。これにより、最終製品であるケーブル1が製造される。これにより、最終製品であるケーブル1が製造される。
【0026】
制御装置140は、第1塗布装置110、第2塗布装置120、第3塗布装置130に対して制御信号を出力し、各装置に設けられた駆動装置(不図示)やバルブの動作を制御する。
【0027】
図2に示されるように、本実施形態の製造装置100は、一つの線状体2に対して、第1塗布装置110、第2塗布装置120、第3塗布装置130で連続的に異なる塗布工程を実行し、ケーブル1を製造する。線状体2は、屈曲することなく、第1塗布装置110、第2塗布装置120および第3塗布装置130を順に通過し、水平方向Aにおいて一直線に搬送される。このため、線状体2の表面に塗布材3が塗布された段階や、塗布材3の表面に離型材4を付着させた段階で巻き取り装置などを用いて中間部材を巻き取る必要がない。これにより、高品質のケーブル1を効率よく製造できる。
【0028】
図3は、本実施形態に係るケーブル1の製造装置100の制御装置140のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0029】
制御装置140は、種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ141と、プロセッサ141によって実行される様々な制御プログラムなどを格納するROM(Read Only Memory)142を有する。
また、制御装置140は、プロセッサの処理動作中のデータや入力データなどを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)143と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリ144とを更に有する。
【0030】
また、制御装置140は、所定の指令あるいはデータなどを入力するキーボードあるいは各種スイッチなどを含む入力装置145と、製造装置100の入力・設定状態などをはじめとする種々の表示を行う表示装置146(例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示器)とを更に備える。
【0031】
なお、
図3に示されているハードウェア構成は一例であり、これら以外の装置が追加されていてもよく、一部の装置が設けられていなくてもよい。また、一部の装置が同様の機能を有する別の装置に置換されていてもよい。図示されているハードウェア構成は適宜変更可能である。
【0032】
図4は、本実施形態に係るケーブル1の製造方法の一例を示すフローチャートである。この処理は、上述した制御装置140が第1塗布装置110、第2塗布装置120、および第3塗布装置130をそれぞれ制御することによって実行される。
【0033】
まず、第1塗布装置110は、不揮発性を有する塗布材を線状体2の表面に塗布する(ステップS101)。これにより、線状体2の表面に所定の厚さの塗布材3が形成される。ここでは、線状体2および塗布材3からなる部材を第1中間部材と呼ぶ。
【0034】
次に、第2塗布装置120は、第1塗布装置110側から搬送された第1中間部材の表面に離型材を付着する(ステップS102)。これにより、塗布材3の表面に離型材4が形成される。ここでは、線状体2、塗布材3および離型材4からなる部材を第2中間部材と呼ぶ。
【0035】
最後に、第3塗布装置130は、第2塗布装置120側から搬送された第2中間部材の表面に樹脂を塗布し、硬化させることで被覆層5を形成する(ステップS103)。これにより、ケーブル1が製造される。
【0036】
本実施形態によれば、シリコーンオイル等の不揮発性を有する塗布材が線状体2の表面に塗布された後に、形成された塗布材3の表面に離型材(粉体)が付着される。これにより、離型材を均一かつ十分に付着させることができる。その結果、最終製品であるケーブル1から被覆層5を容易に剥離することができ、かつ、被覆層5の剥離性のばらつきを抑えられる。
【0037】
[実施例]
以下、実施例に係るケーブル1と、比較例に係るケーブルとを比較した結果について図を参照しながら説明する。
【0038】
図5は、実施例及び比較例に係るケーブルを比較した図である。ここでは、4種類のサンプルA~Dを挙げている。各サンプルのケーブルの直径は、9mmである。塗布材は、線状体2の表面に離型材4を付着させるために塗布した物質である。引抜力は、各ケーブルから同じ条件で被覆層5を引き抜くために要した力の測定値である。
【0039】
サンプルAは、塗布材が無い状態で製造された比較例に係るケーブルである。この場合、測定された引抜力の範囲は、150[N/50mm]~300[N/50mm]であり、ばらつきが大きい。
【0040】
サンプルBは、塗布材として水を用いて製造された比較例に係るケーブルである。この場合、測定された引抜力の範囲は、100[N/50mm]~200[N/50mm]であった。サンプルBの引抜力は、サンプルAの引抜力よりも小さい。サンプルBの場合には、サンプルAの場合よりも測定値のばらつきが若干抑えられたが、ばらつきは依然として大きい。
【0041】
サンプルCは、塗布材としてシリコーンオイルを用いて製造された実施例に係るケーブル1である。この場合、測定された引抜力の範囲は、30[N/50mm]~70[N/50mm]であった。サンプルCの引抜力は、サンプルBの引抜力よりも更に小さい。すなわち、サンプルCの場合には、サンプルBの場合よりも測定値のばらつきが抑えられ、測定値が適正な範囲に収まっている。
【0042】
このように、実施例に係るケーブル1によれば、比較例に係るケーブルの場合も被覆層5を小さい力で引き抜ける。すなわち、被覆層5(被覆物)を剥離し易く、かつ、剥離に要する力にばらつきがない高品質なケーブル1が提供される。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例、ほかの実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。また、実施形態において特段の説明や図示のない部分に関しては、当該技術分野の周知技術や公知技術を適宜適用可能である。
【0044】
1 ケーブル
2 線状体
3 塗布材
4 離型材
5 被覆層
100 製造装置
110 第1塗布装置
120 第2塗布装置
130 第3塗布装置
140 制御装置
141 プロセッサ
142 ROM
143 RAM
144 不揮発性メモリ
145 入力装置
146 表示装置