(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152307
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびそれを用いた光学フィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 1/10 20060101AFI20231010BHJP
C08L 35/02 20060101ALI20231010BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20231010BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231010BHJP
C08F 218/14 20060101ALI20231010BHJP
B29C 41/12 20060101ALI20231010BHJP
B29C 41/36 20060101ALI20231010BHJP
B29C 55/04 20060101ALI20231010BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C08L1/10
C08L35/02
C08J5/18 CEP
C08J5/18 CEY
G02B5/30
C08F218/14
B29C41/12
B29C41/36
B29C55/04
B29C55/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062210
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤井 靖芳
(72)【発明者】
【氏名】小峯 拓也
【テーマコード(参考)】
2H149
4F071
4F205
4F210
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AB01
2H149DA02
2H149DA12
2H149DB29
2H149DB30
2H149FA02Y
2H149FA12Z
2H149FA58Y
2H149FD05
2H149FD06
2H149FD08
2H149FD09
2H149FD12
2H149FD25
2H149FD47
4F071AA09
4F071AA31X
4F071AA36X
4F071AF30Y
4F071AF35Y
4F071AG34
4F071AH12
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BB07
4F071BC01
4F071BC12
4F205AA01
4F205AC05
4F205AG01
4F205AH73
4F205GA07
4F205GB01
4F205GF01
4F205GF24
4F205GN29
4F210AA01
4F210AG01
4F210AH73
4F210QC01
4F210QC05
4J002AB021
4J002BH002
4J002GF00
4J002GP00
4J002GQ00
4J100AL19Q
4J100AL34P
4J100BA05Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA32
4J100JA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光学フィルムに適する樹脂組成物、それを用いた位相差特性に優れた光学フィルムならびに光学フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂成分として一般式(1)で示されるセルロースエステル樹脂70~97重量%ならびに特定のフマル酸エステル残基単位80~95モル%および特定のケイ皮酸エステル残基単位2~20モル%を含むフマル酸エステル系重合体3~30重量%を含有することを特徴とする樹脂組成物、それを用いた光学フィルムならびに光学フィルムの製造方法。
(式中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立して水素または炭素数2~4のアシル基を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分として下記一般式(1)で示されるセルロースエステル樹脂70~97重量%ならびに下記一般式(2)で示されるフマル酸エステル残基単位80~95モル%および下記一般式(3)で示されるケイ皮酸エステル系残基単位5~20モル%を含むフマル酸エステル系重合体3~30重量%を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立して水素または炭素数2~4のアシル基を示す。)
【化2】
(式中、R
4、R
5は独立して水素または炭素数1~8のアルキル基を示す。)
【化3】
(式中、R
6は炭素数1~8のアルキル基を示し、Xは水素または炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。)
【請求項2】
一般式(1)で示されるセルロースエステル系樹脂が酢酸セルロースもしくは酢酸プロピオン酸セルロースであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の樹脂組成物を用いてなり、厚みが15~200μmであることを特徴とする光学フィルム。
【請求項4】
ガラス域光弾性係数の絶対値が10×10-12Pa-1未満である請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
光線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項3又は4に記載の光学フィルム。
【請求項6】
ヘーズが1%以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の光学フィルム。
【請求項7】
下記式(1)で示される面内位相差(Re)と膜厚(d)の比が1nm/μm以上であり、下記式(2)で示される面内位相差(Rth)と膜厚(d)の比が-0.5nm/μm以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の光学フィルム。
Re=(ny-nx)×d (1)
Rth=(nz-(nx+ny)/2)×d
(式中、nxはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を示し、nyはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を示し、nzはフィルム面外の屈折率を示す。)
【請求項8】
一般式(1)で示されるセルロースエステル系樹脂70~97重量%ならびに一般式(2)で示されるフマル酸エステル残基単位80~95モル%および一般式(3)で示されるケイ皮酸エステル系残基単位5~20モル%を含むフマル酸エステル系重合体3~30重量%を含有する樹脂組成物を溶剤に溶解し、得られた樹脂溶液を基材にキャストし、乾燥後、基材より剥離することを特徴とする請求項3又は4に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
キャストして得られた厚み20~200μmのフィルムを一軸延伸またはアンバランス二軸延伸させることを特徴とする請求項8に記載の光学フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物およびそれを用いた光学フィルムに関するものであり、より詳しくは、樹脂組成物ならびに位相差特性に優れた液晶ディスプレイ用の光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、マルチメディア社会における最も重要な表示デバイスとして、携帯電話、コンピューター用モニター、ノートパソコン、テレビまで幅広く使用されている。液晶ディスプレイには表示特性向上のため多くの光学フィルムが用いられている。特に光学補償フィルムは、正面や斜めから見た場合のコントラスト向上、色調の補償など大きな役割を果たしている。
【0003】
液晶ディスプレイには、垂直配向型(VA-LCD)、面内配向型液晶(IPS-LCD)、スーパーツイストネマチック型液晶(STN-LCD)、反射型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイなどの多くの方式が有り、ディスプレイにあわせた光学補償フィルムが必要となっている。
【0004】
従来の光学補償フィルムとしては、セルロース系樹脂、ポリカーボネートや環状ポリオレフィンなどの延伸フィルムが用いられている。特にトリアセチルセルロースフィルムなどのセルロース系樹脂からなるフィルムは、偏光子であるポリビニルアルコールとの接着性も良好なことから幅広く使用されている。
【0005】
セルロース系樹脂のなかでも、セルロースエステル系樹脂は広く光学補償フィルムとして使用されているが、セルロースエステル系樹脂とブレンドして透明化フィルムが得られる負に大きな固有複屈折を有する材料は存在しないといった課題があった。(例えば、特許文献1参照)さらに、特許文献1記載の負の固有複屈折を有する材料はその構造からガラス域光弾性係数が正であるため、セルロースエステルとのブレンドフィルムにおいて大きな正のガラス域光弾性係数を発現するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学フィルム特に光学補償フィルムに適する樹脂組成物ならびにそれを用いた位相差特性に優れた光学フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のセルロースエステル系樹脂および特定のフマル酸エステル系重合体を含有する樹脂組成物、それを用いた光学フィルムおよびその製造方法が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、樹脂成分として一般式(1)で示されるセルロースエステル樹脂70~97重量%ならびに一般式(2)で示されるフマル酸エステル残基単位80~95モル%および下記一般式(3)で示されるケイ皮酸エステル残基単位5~20モル%を含むフマル酸エステル系重合体3~30重量%を含有することを特徴とする樹脂組成物、それを用いた光学フィルム、ならびにその製造方法である。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として下記一般式(1)で示されるセルロースエステル樹脂70~97重量%ならびに下記一般式(2)で示されるフマル酸エステル残基単位80~95モル%および下記一般式(3)で示されるケイ皮酸エステル残基単位5~20モル%を含むフマル酸エステル系重合体3~30重量%を含有する。
【0011】
【0012】
(式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素または炭素数2~4のアシル基を示す。)
【0013】
【0014】
(式中、R4、R5は独立して水素または炭素数1~8のアルキル基を示す。)
【0015】
【0016】
(式中、R6は水素または炭素数1~8のアルキル基を示し、Xは水素または炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示す。)
本発明のセルロースエステル樹脂は、機械特性に優れ、製膜時の成形加工性に優れたものとなることから、塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)に溶解させた10%溶液の25℃における粘度は、好ましくは150~10,000mPa・sでり、より好ましくは300~8,000mPa・sでり、特に好ましくは500~5,000mPa・sである。
【0017】
本発明のセルロースエステル樹脂におけるセルロースの水酸基の酸素原子を介して置換している置換度(DS)は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化はDS=3)を意味し、溶解性、相溶性、延伸加工性の点から、エステル基の全置換度DSは、好ましくは2.3~3.0であり、さらに好ましくは2.4~3.0であり、特に好ましくは2.7~3.0であり、異なる2種以上のセルロースエステル系樹脂を混合して用いてもよい。
【0018】
セルロースエステル系樹脂におけるR1、R2、R3はそれぞれ独立して水素または炭素数2~4のアシル基であり、炭素数2~4のアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオンニル基、ブチロイル基等を例示することができる。
【0019】
本発明における具体的なセルロースエステル樹脂としては、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース等が挙げられる。この中でも、光学特性に優れることから、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースが好ましく、酢酸セルロースが特に好ましい。また、2種以上のセルロースエステル樹脂を含有しても良い。
【0020】
本発明の樹脂組成物が含有するフマル酸エステル系重合体は、一般式(2)で示されるフマル酸エステル残基単位80~95モル%および一般式(3)で示されるケイ皮酸エステル系残基単位5~20モル%を含むものである。フマル酸エステル残基単位が80モル%未満の場合およびケイ酸エステル系残基単位が20モル%を超える場合は、光学フィルムとした際に透明な光学フィルムが得られない。
【0021】
フマル酸エステル系重合体におけるフマル酸エステル残基単位のエステル置換基であるR4およびR5は独立して水素または炭素数1~8のアルキル基であり、炭素数1~8のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基が挙げられる。具体的なフマル酸エステル残基単位としては、フマル酸モノメチル残基単位、フマル酸モノエチル残基単位、フマル酸モノプロピル残基単位、フマル酸モノイソプロピル残基単位、フマル酸モノブチル残基単位、フマル酸モノイソブチル残基単位、フマル酸モノsec-ブチル残基単位、フマル酸モノtert-ブチル残基単位、フマル酸モノペンチル残基単位、フマル酸モノヘプチル残基単位、フマル酸モノヘキシル残基単位、フマル酸モノシクロヘキシル残基単位、フマル酸モノオクチル残基単位、フマル酸モノ2-エチルヘキシル残基単位、フマル酸ジメチル残基単位、フマル酸ジエチル残基単位、フマル酸ジプロピル残基単位、フマル酸ジイソプロピル残基単位、フマル酸ジブチル残基単位、フマル酸ジイソブチル残基単位、フマル酸ジsec-ブチル残基単位、フマル酸ジtert-ブチル残基単位、フマル酸ジペンチル残基単位、フマル酸ジヘキシル残基単位、フマル酸ジシクロヘキシル残基単位、フマル酸ジヘプチル残基単位、フマル酸ジオクチル残基単位、フマル酸ジ(2-エチルヘキシル)残基単位、フマル酸エチルイソプロピル残基単位、フマル酸エチルtert-ブチル残基単位、フマル酸エチルシクロヘキシル残基単位、フマル酸イソプロピルtert-ブチル残基単位、フマル酸イソプロピルシクロヘキシル残基単位、フマル酸tert-ブチルシクロヘキシル残基単位等を例示することができ、これらの1種もしくは2種以上を使用してもよい。このなかでも、得られる樹脂混合物の光学特性が良好となることから、フマル酸モノエチル残基単位、フマル酸モノイソプロピル残基単位、フマル酸モノブチル残基単位、フマル酸ジイソプロピル残基単位、フマル酸ジsec-ブチル残基単位、フマル酸ジtert-ブチル残基単位、フマル酸ジシクロヘキシル残基単位が好ましく、フマル酸ジイソプロピル残基単位が特に好ましい。
【0022】
フマル酸エステル系重合体におけるケイ酸エステル系残基単位のエステル置換基であるR6は炭素数1~8のアルキル基を示し、炭素数1~8のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基が挙げられる。また、フマル酸エステル系重合体におけるケイ酸エステル系残基単位の芳香環状の置換基Xは水素または炭素数1~4のアルキル基もしくは炭素数1~3のアルコキシ基を示し、例えば水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、teert-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基が挙げられる。具体的なケイ酸エステル系残基単位としては、ケイ皮酸メチル残基単位、ケイ皮酸エチル残基単位、ケイ皮酸プロピル残基単位、ケイ皮酸イソプロピル残基単位、ケイ皮酸ブチル残基単位、ケイ皮酸sec-ブチル残基単位、ケイ皮酸tert-ブチル残基単位、ケイ皮酸イソブチル残基単位、ケイ皮酸ペンチル残基単位、ケイ皮酸ヘキシル残基単位、ケイ皮酸シクロヘキシル残基単位、ケイ皮酸ヘプチル残基単位、ケイ皮酸オクチル残基単位、ケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位、p-メチルケイ皮酸残基単位、p-メチルケイ皮酸メチル残基単位、p-メチルケイ皮酸エチル残基単位、p-メチルケイ皮酸プロピル残基単位、p-メチルケイ皮酸イソプロピル残基単位、p-メチルケイ皮酸ブチル残基単位、p-メチルケイ皮酸sec-ブチル残基単位、p-メチルケイ皮酸tert-ブチル残基単位、p-メチルケイ皮酸イソブチル残基単位、p-メチルケイ皮酸ペンチル残基単位、p-メチルケイ皮酸ヘキシル残基単位、p-メチルケイ皮酸シクロヘキシル残基単位、p-メチルケイ皮酸ヘプチル残基単位、p-メチルケイ皮酸オクチル残基単位、p-メチルケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位、p-エチルケイ皮酸メチル残基単位、p-エチルケイ皮酸エチル残基単位、p-エチルケイ皮酸プロピル残基単位、p-エチルケイ皮酸イソプロピル残基単位、p-エチルケイ皮酸ブチル残基単位、p-エチルケイ皮酸sec-ブチル残基単位、p-エチルケイ皮酸tert-ブチル残基単位、p-エチルケイ皮酸イソブチル残基単位、p-エチルケイ皮酸ペンチル残基単位、p-エチルケイ皮酸ヘキシル残基単位、p-エチルケイ皮酸シクロヘキシル残基単位、p-エチルケイ皮酸ヘプチル残基単位、p-エチルケイ皮酸オクチル残基単位、p-エチルケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位、p-プロピルケイ皮酸メチル残基単位、p-プロピルケイ皮酸エチル残基単位、p-プロピルケイ皮酸プロピル残基単位、p-プロピルケイ皮酸イソプロピル残基単位、p-プロピルケイ皮酸ブチル残基単位、p-プロピルケイ皮酸sec-ブチル残基単位、p-プロピルケイ皮酸tert-ブチル残基単位、p-プロピルケイ皮酸イソブチル残基単位、p-プロピルケイ皮酸ペンチル残基単位、p-プロピルケイ皮酸ヘキシル残基単位、p-プロピルケイ皮酸シクロヘキシル残基単位、p-プロピルケイ皮酸ヘプチル残基単位、p-プロピルケイ皮酸オクチル残基単位、p-プロピルケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位、p-メトキシケイ皮酸メチル残基単位、p-メトキシケイ皮酸エチル残基単位、p-メトキシケイ皮酸プロピル残基単位、p-メトキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、p-メトキシケイ皮酸ブチル残基単位、p-メトキシケイ皮酸sec-ブチル残基単位、p-メトキシケイ皮酸tert-ブチル残基単位、p-メトキシケイ皮酸イソブチル残基単位、p-メトキシケイ皮酸ペンチル残基単位、p-メトキシケイ皮酸ヘキシル残基単位、p-メトキシケイ皮酸シクロヘキシル残基単位、p-メトキシケイ皮酸ヘプチル残基単位、p-メトキシケイ皮酸オクチル残基単位、p-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位、p-エトキシケイ皮酸メチル残基単位、p-エトキシケイ皮酸エチル残基単位、p-エトキシケイ皮酸プロピル残基単位、p-エトキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、p-エトキシケイ皮酸ブチル残基単位、p-エトキシケイ皮酸sec-ブチル残基単位、p-エトキシケイ皮酸tert-ブチル残基単位、p-エトキシケイ皮酸イソブチル残基単位、p-エトキシケイ皮酸ペンチル残基単位、p-エトキシケイ皮酸ヘキシル残基単位、p-エトキシケイ皮酸シクロヘキシル残基単位、p-エトキシケイ皮酸ヘプチル残基単位、p-エトキシケイ皮酸オクチル残基単位、p-エトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸メチル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸エチル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸プロピル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸ブチル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸sec-ブチル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸tert-ブチル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸イソブチル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸ペンチル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸ヘキシル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸シクロヘキシル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸ヘプチル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸オクチル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位等を例示することができ、これらの1種もしくは2種以上を使用してもよい。このなかでも、得られる樹脂混合物の光学特性が良好となることから、ケイ皮酸エチル残基単位、ケイ皮酸イソプロピル残基単位、ケイ皮酸ブチル残基単位、ケイ皮酸イソブチル残基単位、p-メチル酸エチル残基単位、p-メチル酸イソプロピル残基単位、p-メチルケイ皮酸ブチル残基単位、p-メチルケイ皮酸イソブチル残基単位、p-メトキシケイ皮酸エチル残基単位、p-メトキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、p-メトキシケイ皮酸ブチル残基単位、p-メトキシケイ皮酸イソブチル残基単位、p-プロポキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位が好ましく、p-メトキシケイ皮酸エチル残基単位、p-メトキシケイ皮酸プロピル残基単位が特に好ましい。
【0023】
フマル酸エステル系重合体は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、フマル酸エステル残基単位およびケイ皮酸エステル系残基単位と共重合可能な他の単量体の残基単位を含んでいてもよく、フマル酸エステル残基単位およびケイ皮酸エステル系残基単位と共重合可能な他の単量体の残基単位としては、例えば、スチレン残基単位、α-メチルスチレン残基単位などのスチレン類残基単位;アクリル酸残基単位;アクリル酸メチル残基単位、アクリル酸エチル残基単位、アクリル酸ブチル残基単位などのアクリル酸エステル類残基単位;メタクリル酸残基単位;メタクリル酸メチル残基単位、メタクリル酸エチル残基単位、メタクリル酸ブチル残基単位などのメタクリル酸エステル類残基単位;酢酸ビニル残基単位、プロピオン酸ビニル残基単位などのビニルエステル類残基単位;メチルビニルエーテル残基単位、エチルビニルエーテル残基単位、ブチルビニルエーテル残基単位などのビニルエーテル残基単位;N―メチルマレイミド残基単位、N-シクロヘキシルマレイミド残基単位、N-フェニルマレイミド残基単位などのN-置換マレイミド残基単位;アクリロニトリル残基単位;メタクリロニトリル残基単位;エチレン残基単位、プロピレン残基単位などのオレフィン類残基単位;ビニルピロリドン残基単位;ビニルピリジン残基単位等の1種または2種以上を挙げることができる。
【0024】
フマル酸エステル系重合体は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1×103~5×105であることが好ましく、特に機械特性に優れ、製膜時の成形加工性に優れたものとなることから、2×103~3×105であることがさらに好ましく、5×103~2×105であることが特に好ましい。
【0025】
本発明の樹脂組成物におけるセルロースエステル系樹脂とフマル酸エステル系重合体の組成の割合は、セルロースエステル系樹脂70~97重量%およびフマル酸エステル系重合体3~50重量%である。セルロースエステル系樹脂が70重量%未満の場合、透明性の制御が困難となる。また、セルロースエステル系樹脂が97重量%を超える場合は、ガラス域光弾性係数の制御が困難である。好ましくは、セルロースエステル系樹脂73~97重量%およびフマル酸エステル系重合体3~27重量%であり、さらに好ましくはセルロースエステル系樹脂80~97重量%およびフマル酸エステル系重合体3~20重量%である。
【0026】
フマル酸エステル系重合体の製造方法としては、該フマル酸エステル系重合体が得られる限りにおいて如何なる方法により製造してもよく、例えば、フマル酸エステルとケイ皮酸エステル類、場合によってはフマル酸エステルおよびケイ皮酸エステル類と共重合可能な他の単量体を併用し、ラジカル重合を行うことにより製造することができる。この際のフマル酸エステルおよびケイ皮酸エステル類と共重合可能な他の単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン類;アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;ビニルピロリドン;ビニルピリジン等の1種または2種以上を挙げることができる。
【0027】
ラジカル重合の方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法等のいずれもが採用可能である。
【0028】
ラジカル重合を行う際の重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-ブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などのアゾ系開始剤等が挙げられる。
【0029】
そして、溶液重合法または沈殿重合法において使用可能な溶媒として特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、酢酸イソプロピル等が挙げられ、これらの混合溶媒をも挙げられる。
【0030】
また、ラジカル重合を行う際の重合温度は、重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、一般的には30~150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、熱安定性を向上させるために酸化防止剤を含有していても良い。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤、その他酸化防止剤が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、耐候性を高めるためヒンダードアミン系光安定剤や紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエート等が挙げられる。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、いわゆる可塑剤として知られる化合物を、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水蒸気透過率低減、レターデーション調整等の目的で添加してもよく、可塑剤としては、例えば、リン酸エステルやカルボン酸エステル、糖エステルなどが挙げられる。また、アクリル系ポリマーなども用いられる。リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることが出来る。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル、クエン酸エステル及びアジピン酸エステル等が挙げられ、フタル酸エステルとしては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、アジピン酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸(2-ブトキシエチル)等が挙げられ、またクエン酸エステルとしては、クエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチル等を挙げることが出来る。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、トリメチロールプロパントリベンゾエート等も挙げられる。糖エステルとしては、例えば、スクロースオクタベンゾエート、スクロースオクタアセテート、スクロースアセテートイソブチレート等を挙げることが出来る。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1~8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしては、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来る。これら可塑剤を2種以上混合して使用してもよい。
【0034】
本発明の樹脂組成物は位相差を調整する目的で、芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤を含有していてもよい。位相差を調整する目的で使用される添加剤の下記式(A)で示される複屈折Δnについては、特に制限はないが、
光学特性に優れた光学フィルムとなることから、好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.05~0.5、特に好ましくは0.1~0.5である。添加剤のΔnは分子軌道計算によって求めることができる。
【0035】
Δn=ny-nx (A)
(式中、nxは添加剤分子の進相軸方向の屈折率を示し、nyは添加剤分子の遅相軸方向の屈折率を示す。)
本発明の樹脂組成物に芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤が含有される場合、本発明の樹脂組成物における芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤は、芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環の分子内の個数については、特に制限はないが、光学特性に優れた光学フィルムとなることから、好ましくは1~12個であり、さらに好ましくは1~8個である。芳香族炭化水素環としては、例えば、5員環、6員環、7員環または二つ以上の芳香族環からなる縮合環等が挙げられ、芳香族性ヘテロ環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、1,3,5-トリアジン環等が挙げられる。
【0036】
芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、カルボン酸残基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルホン酸残基、ホスホニル基、ホスホン酸残基等が挙げられる。
【0037】
本発明で用いられる芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤としては、例えば、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等のリン酸エステル系化合物;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジノルマルオクチルフタレート、2-エチルヘキシルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジカプリルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル系化合物;トリブチルトリメリテート、トリ-ノルマルヘキシルトリメリテート、トリ(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ-ノルマルオクチルトリメリテート、トリ-イソクチルトリメリテート、トリ-イソデシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル系化合物;トリ(2-エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラブチルピロメリテート、テトラ-ノルマルヘキシルピロメリテート、テトラ(2-エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ-ノルマルオクチルピロメリテート、テトラ-イソクチルピロメリテート、テトラ-イソデシルピロメリテート等のピロメリット酸エステル系化合物;安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル等の安息香酸エステル系化合物;フェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート等のサリチル酸エステル系化合物;メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のグリコール酸エステル系化合物;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、N-ベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド系化合物、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系化合物等が挙げられ、好ましくはトリクレジルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられ、これらは必要に応じて1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明の樹脂組成物に芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤が含有される場合、光学特性及び機械的特性の観点から、好ましくは本発明の樹脂組成物における芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環を有する添加剤の割合は0~30重量%であり、さらに好ましくは0~20重量%、特に好ましくは0~15重量%である。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、発明の主旨を超えない範囲で、その他ポリマー、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、顔料、染料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等を含有していてもよい。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、セルロースエステル樹脂とフマル酸エステル系重合体をブレンドすることにより得ることができる。
【0041】
ブレンドの方法としては、溶融ブレンド、溶液ブレンド等の方法を用いることができる。溶融ブレンド法とは加熱により樹脂を溶融させて混練することにより製造する方法である。溶液ブレンド法とは樹脂を溶剤に溶解しブレンドする方法である。溶液ブレンド法に用いる溶剤としては、樹脂が溶解する限り制限は無いが、塩化メチレン、クロロホルムなどの塩素系溶剤が好ましく用いられる。また、これら塩素系溶剤に対して、メタノールやエタノール、ブタノール等のアルコール類を加えた混合溶剤が好ましく用いられる。
【0042】
本発明では、本発明の樹脂組成物を用いてなり、厚みが15~200μmである光学フィルムとすることができる。
【0043】
本発明の樹脂組成物を用いたフィルムは、フィルムの取扱い性の観点から、厚みが15~200μmであり、18~150μmであることが好ましく、20~100μmであることが特に好ましい。
【0044】
本発明の樹脂組成物を用いた光学フィルムのガラス域光弾性係数(Cg)は、応力による位相差変動が小さくなることから、好ましくは10×10-12Pa-1未満であり、さらに好ましくは9×10-12Pa-1未満であり、8×10-12Pa-1未満が特に好ましい。このときのガラス域光弾性係数は、フィルムの引張加重を変化させた条件にて、全自動複屈折計(Axometrics社製、商品名AxoScan)を用いて面内位相差(Re)の変化量を測定することにより算出されるものである。
【0045】
本発明の樹脂組成物を用いた光学フィルムは、フィルムの取扱い性及び光学部材の薄膜化への適合性の観点から、厚みが5~100μmであることが好ましく、10~150μmがさらに好ましく、15~100μmが特に好ましい。
【0046】
本発明の樹脂組成物を用いた光学フィルムの位相差特性は、薄膜化の観点から、下記式(1)で示される面内位相差(Re)と膜厚(d)の比が1nm/μm以上であることが好ましい。このときの位相差特性は全自動複屈折計(Axometrics社製、商品名AxoScan)を用い、測定波長589nmの条件で測定されるものである。
【0047】
Re=(ny-nx)×d (1)
(式中、nxはフィルム面内の進相軸方向(最も屈折率の小さい方向)の屈折率を示し、nyはフィルム面内の遅相軸方向(最も屈折率の大きい方向)の屈折率を示し、nzはフィルム面外の屈折率を示し、dはフィルム厚みを示す。)
本発明の光学フィルムは、輝度向上のため、光線透過率が好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0048】
本発明の光学フィルムは、コントラスト向上のため、ヘーズが好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.6%以下である。
【0049】
本発明の樹脂組成物を用いた光学フィルムの製造方法としては、本発明の光学フィルムの製造が可能であれば如何なる方法を用いてもよいが、光学特性、耐熱性、表面特性などに優れる光学フィルムが得られることから、溶液キャスト法により製造することが好ましい。ここで、溶液キャスト法とは、樹脂溶液(一般にはドープと称する。)を支持基板上に流延した後、加熱することにより溶媒を蒸発させて光学フィルムを得る方法である。流延する方法としては、例えば、Tダイ法、ドクターブレード法、バーコーター法、ロールコーター法、リップコーター法等が用いられ、工業的には、ダイからドープをベルト状またはドラム状の支持基板に連続的に押し出す方法が一般的に用いられている。また、用いられる支持基板としては、例えば、ガラス基板、ステンレスやフェロタイプ等の金属基板、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック基板などがある。高度に表面性、光学均質性の優れた基板を工業的に連続製膜するには、表面を鏡面仕上げした金属基板が好ましく用いられる。溶液キャスト法において、厚み精度、表面平滑性に優れた光学フィルムを製造する際には、樹脂溶液の粘度は極めて重要な因子であり、樹脂溶液の粘度は樹脂の濃度、分子量、溶媒の種類に依存するものである。
【0050】
本発明の樹脂組成物を用いた光学フィルムを製造する際の樹脂溶液は、セルロースエステル樹脂とフマル酸エステル系重合体を溶媒に溶解し調製する。樹脂溶液の粘度は、重合体の分子量、重合体の濃度、溶媒の種類で調整可能である。樹脂溶液の粘度としては、特に制限はないが、フィルム塗工性をより容易にするため、好ましくは100~10000mPa・s、さらに好ましくは300~5000mPa・s、特に好ましくは500~3000mPa・sである。
【0051】
本発明の樹脂組成物を用いた光学フィルムの製造方法としては、例えば、樹脂成分として前記一般式(1)で示されるセルロースエステル樹脂70~97重量%ならびに前記一般式(2)で示されるフマル酸エステル残基単位80~95モル%および前記一般式(3)で示されるケイ皮酸エステル系残基単位5~20モル%を含むフマル酸エステル系重合体3~30重量%を含有する樹脂組成物を溶剤に溶解し、得られた樹脂溶液を基材にキャストし、乾燥後、基材より剥離することが挙げられる。
【0052】
本発明の樹脂組成物を用いて得られた光学フィルムは、面内位相差(Re)を向上させるために延伸することが好ましい。光学フィルムを延伸する方法としては、ロール延伸による縦一軸延伸法やテンター延伸による横一軸延伸法、これらの組み合わせによるアンバランス逐次二軸延伸法やアンバランス同時二軸延伸法等を用いることができる。また本発明では、熱収縮性フィルムの収縮力の作用下に延伸を行う特殊延伸法を用いずに位相差特性を発現させることができる。
【0053】
延伸する際の光学フィルムの厚みは、延伸処理のし易さおよび光学部材の薄膜化への適合性の観点から、厚みが15~200μmであることが好ましく、18~150μmであることがより好ましく、20~100μmであることが特に好ましい。
【0054】
延伸の温度は特に制限はないが、良好な位相差特性が得られることから、好ましくは50~210℃、さらに好ましくは80~200℃、特に好ましくは100~190℃である。一軸延伸の延伸倍率は特に制限はないが、良好で均一な位相差特性が得られることから、1.05~2.5倍が好ましく、1.1~2.2倍がよりに好ましく、1.2~2.0倍が特に好ましい。アンバランス二軸延伸の延伸倍率は特に制限はないが、光学特性に優れた光学フィルムとなることから長さ方向には1.05~2.5倍が好ましく、1.1~2.2倍がさらに好ましく、1.2~2.0倍が特に好ましく、光学特性に優れた光学フィルムとなることから、幅方向には1.01~1.2倍が好ましく、1.05~1.1倍がさらに好ましい。延伸温度、延伸倍率により面内位相差(Re)を制御することができる。
【0055】
本発明の樹脂組成物を用いた光学フィルムは、必要に応じて他樹脂を含むフィルムと積層することができる。他樹脂としては、例えば、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、マレイミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド等が挙げられる。また、ハードコート層やガスバリア層を積層することも可能である。
【発明の効果】
【0056】
本発明の樹脂組成物を用いた光学フィルムは、薄膜で特定の位相差特性を示すことから、液晶ディスプレイ等の光学補償フィルムとして有用である。
【実施例0057】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
なお、実施例により示す諸物性は、以下の方法により測定した。
【0059】
<重合体の解析>
重合体の構造解析は核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名:JNM-GX270)を用い、プロトン核磁気共鳴分光(1H-NMR)スペクトル分析より求めた。
【0060】
<数平均分子量の測定>
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー製、商品名:HLC-8320GPC(カラムGMHHR―Hを装着))を用い、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃で測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0061】
<溶液粘度の測定>
B型粘度計(BROOKFIELD社製、商品名:DV2T)を用い、25℃で測定した。
【0062】
<フィルムの光線透過率およびヘーズの測定>
作成したフィルムの光線透過率およびヘーズは、ヘーズメーター(日本電色工業製、商品名:NDH2000)を使用し、光線透過率の測定はJIS K 7361-1(1997版)に、ヘーズの測定はJIS-K 7136(2000年版)に、それぞれ準拠して測定した。
【0063】
<光弾性係数の測定>
全自動複屈折計(Axometrics社製、商品名AxoScan)および試料引張冶具を用いて、フィルムの引張加重を変化させて波長589nmの光を用いてフィルムの位相差変化を測定することにより求めた。
【0064】
<位相差特性の測定>
全自動複屈折計(Axometrics社製、商品名AxoScan)を用いて波長589nmの光を用いて光学フィルムの位相差特性を測定した。
【0065】
合成例1
容量100mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル61.4g、4-メトキシケイ皮酸エチル8.6gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.51gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、72時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン200gで溶解させた。このポリマー溶液を4Lのヘキサン中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/4-メトキシケイ皮酸エチル共重合体50gを得た。得られた重合体の数平均分子量は75,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位88モル%、4-メトキシケイ皮酸エチル残基単位12モル%であった。
【0066】
合成例2
容量100mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル58.2g、フマル酸モノエチル3.1g、4-メトキシケイ皮酸エチル8.7gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.52gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、72時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン200gで溶解させた。このポリマー溶液を4Lのヘキサン中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/フマル酸モノエチル/4-メトキシケイ皮酸エチル共重合体46gを得た。得られた重合体の数平均分子量は49,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位78モル%、フマル酸モノエチル残基単位9モル%、4-メトキシケイ皮酸エチル残基単位13モル%であった。
【0067】
合成例3
容量100mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル58.2g、ケイ皮酸エチル6.2gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.51gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、72時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン200gで溶解させた。このポリマー溶液を4Lのヘキサン中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/ケイ皮酸エチル共重合体33gを得た。得られた重合体の数平均分子量は30,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位88モル%、ケイ皮酸エチル残基単位12モル%であった。
【0068】
合成例4
容量100mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル66.2g、4-メトキシケイ皮酸プロピル3.8gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.51gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、72時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン200gで溶解させた。このポリマー溶液を4Lのヘキサン中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/ケイ皮酸エチル共重合体62gを得た。得られた重合体の数平均分子量は128,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位94モル%、ケイ皮酸エチル残基単位6モル%であった。
【0069】
合成例5
容量100mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル54.4g、フマル酸モノエチル5.3g、ケイ皮酸エチル10.3gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.53gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、72時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン200gで溶解させた。このポリマー溶液を4Lのヘキサン中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/フマル酸モノエチル/ケイ皮酸エチル共重合体25gを得た。得られた重合体の数平均分子量は37,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位73モル%、フマル酸モノエチル残基単位11モル%、ケイ皮酸エチル残基単位16モル%であった。
【0070】
合成例6
容量100mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル48.9g、フマル酸ジ(2-エチルヘキシル)11.1g、4-メトキシケイ皮酸エチル10.0gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.47gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、72時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン200gで溶解させた。このポリマー溶液を4Lのヘキサン中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/フマル酸ジ(2-エチルヘキシル)/4-メトキシケイ皮酸エチル共重合体43gを得た。得られた重合体の数平均分子量は38,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位79モル%、フマル酸モノエチル残基単位5モル%、ケイ皮酸エチル残基単位16モル%であった。
【0071】
合成例7
容量100mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル51.0g、4-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル19.0gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.47gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、72時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン200gで溶解させた。このポリマー溶液を4Lのヘキサン中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/4-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル共重合体32gを得た。得られた重合体の数平均分子量は42,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位82モル%、4-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位18モル%であった。
【0072】
合成例8
容量100mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル63.3g、4-メチルケイ皮酸エチル6.7gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.51gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、72時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン200gで溶解させた。このポリマー溶液を4Lのヘキサン中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/4-メチルケイ皮酸エチル共重合体39gを得た。得られた重合体の数平均分子量は35,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位89モル%、4-メチルケイ皮酸エチル残基単位11モル%であった。
【0073】
合成例9
容量100mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル68.1g、ケイ皮酸エチル1.8gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.51gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、72時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン200gで溶解させた。このポリマー溶液を4Lのヘキサン中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/ケイ皮酸エチル共重合体64gを得た。得られた重合体の数平均分子量は108,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位97モル%、ケイ皮酸エチル残基単位3モル%であった。
【0074】
合成例10
容量100mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル55.7g、4-メトキシケイ皮酸エチル14.3gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.51gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを50℃の恒温槽に入れ、72時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン200gで溶解させた。このポリマー溶液を4Lのヘキサン中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/4-メトキシケイ皮酸エチル共重合体59gを得た。得られた重合体の数平均分子量は44,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位79モル%、ケイ皮酸エチル残基単位21モル%であった。
【0075】
実施例1
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)36.0g、合成例1により得られたフマル酸ジイソプロピル/4-メトキシケイ皮酸エチル共重合体4.0gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0076】
得られた光学フィルムは、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数(Cg)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0077】
実施例2
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)32.0g、合成例2により得られたフマル酸ジイソプロピル/フマル酸モノエチル/4-メトキシケイ皮酸エチル共重合体4.0g、スクロースオクタアセテート4.0gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0078】
得られた光学フィルムは、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数(Cg)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0079】
実施例3
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)30.0g、合成例3により得られたフマル酸ジイソプロピル/ケイ皮酸エチル共重合体10.0gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0080】
得られた光学フィルムは、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数(Cg)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0081】
実施例4
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)34.0g、合成例4により得られたフマル酸ジイソプロピル/4-メトキシケイ皮酸プロピル共重合体6.0gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0082】
得られた光学フィルムは、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数(Cg)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0083】
実施例5
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)28.0g、合成例5により得られたフマル酸ジイソプロピル/フマル酸モノエチル/ケイ皮酸エチル共重合体10.0g、スクロースオクタベンゾエート2.0gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0084】
得られた光学フィルムは、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数(Cg)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0085】
実施例6
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)38.0g、合成例6により得られたフマル酸ジイソプロピル/フマル酸ビス(2-エチルヘキシル)/4-メトキシケイ皮酸エチル共重合体4.0g、アジピン酸2-エチルヘキシル2.0gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0086】
得られた光学フィルムは、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数(Cg)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0087】
実施例7
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)38.0g、合成例7により得られたフマル酸ジイソプロピル/4-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル共重合体2.0gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0088】
得られた光学フィルムは、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数(Cg)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0089】
実施例8
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)36.0g、合成例8により得られたフマル酸ジイソプロピル/4-メチルケイ皮酸エチル共重合体4.0gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0090】
得られた光学フィルムは、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数(Cg)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0091】
実施例9
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)32.0g、合成例1により得られたフマル酸ジイソプロピル/4-メチルケイ皮酸エチル共重合体4.0g及び可塑剤としてスクロースオクタアセテート4.0gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0092】
得られた光学フィルムは、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数(Cg)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0093】
実施例10
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)32.0g、合成例2により得られたフマル酸ジイソプロピル/フマル酸モノエチル/4-メチルケイ皮酸エチル共重合体4.0g及び可塑剤としてアジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)4.0gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0094】
得られた光学フィルムは、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数(Cg)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0095】
実施例11
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:700mPa・s、全置換度DS=2.4)38.4g、合成例2により得られたフマル酸ジイソプロピル/フマル酸モノエチル/4-メチルケイ皮酸エチル共重合体1.6gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0096】
得られた光学フィルムは、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数(Cg)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0097】
実施例12
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:700mPa・s、全置換度DS=2.4)37.2g、合成例2により得られたフマル酸ジイソプロピル/フマル酸モノエチル/4-メチルケイ皮酸エチル共重合体2.8gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0098】
得られた光学フィルムは、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数(Cg)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0099】
比較例1
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)40gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0100】
得られた光学フィルムは、ガラス域光弾性係数が目的とする光学特性を有しないものであった。
【0101】
比較例2
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)26.0g、合成例1により得られたフマル酸ジイソプロピル/4-メトキシケイ皮酸エチル共重合体14.0gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0102】
得られた光学フィルムは、ヘーズが目的とする光学特性を有しないものであった。
【0103】
比較例3
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)36.0g、合成例9により得られたフマル酸ジイソプロピル/ケイ皮酸エチル共重合体4.0gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0104】
得られた光学フィルムは、ヘーズが目的とする光学特性を有しないものであった。
【0105】
比較例4
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 三酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:1500mPa・s、全置換度DS=2.9)36.0g、合成例10により得られたフマル酸ジイソプロピル/4-メトキシケイ皮酸エチル共重合体4.0gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0106】
得られた光学フィルムは、ヘーズが目的とする光学特性を有しないものであった。
【0107】
比較例5
セルロースエステル系樹脂として酢酸セルロース(富士フイルム和光純薬社製 酢酸セルロース、10%塩化メチレン/メタノール(9/1重量比)溶液粘度:700mPa・s、全置換度DS=2.4)39.2g、合成例2により得られたフマル酸ジイソプロピル/フマル酸モノエチル/4-メチルケイ皮酸エチル共重合体0.8gを塩化メチレン:メタノール=95:5(重量比)に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、40℃で5分乾燥した後、100℃で20分乾燥し、さらに120℃で5分乾燥し、幅150mmの光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを15mm×60mmに切り出し、ヘーズ、全光線透過率、ガラス域光弾性係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0108】
得られた光学フィルムは、ガラス域光弾性係数が目的とする光学特性を有しないものであった。
【0109】
【0110】
実施例13
実施例1で得られた光学フィルムを30mm×50mmに切り出し、170℃で1.6倍に一軸延伸した。
【0111】
得られた光学フィルムの位相差特性を測定した。その結果を表2に示す。
【0112】
得られた光学フィルムは、ガラス域光弾性係数の絶対値、面内位相差(Re)、面外位相差(Rth)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0113】
実施例14
実施例2で得られた光学フィルムを30mm×50mmに切り出し、190℃で2.0倍に一軸延伸した。
【0114】
得られた光学フィルムの位相差特性を測定した。その結果を表2に示す。
【0115】
得られた光学フィルムは、ガラス域光弾性係数の絶対値、面内位相差(Re)、面外位相差(Rth)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0116】
実施例15
実施例3で得られた光学フィルムを30mm×50mmに切り出し、195℃で3.0倍に一軸延伸した。
【0117】
得られた光学フィルムの位相差特性を測定した。その結果を表2に示す。
【0118】
得られた光学フィルムは、ガラス域光弾性係数の絶対値、面内位相差(Re)、面外位相差(Rth)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0119】
実施例16
実施例5で得られた光学フィルムを30mm×50mmに切り出し、195℃で2.0倍に一軸延伸した。
【0120】
得られた光学フィルムの位相差特性を測定した。その結果を表2に示す。
【0121】
得られた光学フィルムは、ガラス域光弾性係数の絶対値、面内位相差(Re)、面外位相差(Rth)が目的とする光学特性を有するものであった。
【0122】
比較例6
比較例1で得られた光学フィルムを30mm×50mmに切り出し、200℃で2.0倍に一軸延伸した。
【0123】
得られた光学フィルムの位相差特性を測定した。その結果を表2に示す。
【0124】
得られた光学フィルムは、ガラス域光弾性係数の絶対値、面内位相差(Re)、面外位相差(Rth)が目的とする光学特性を有するものではなかった。
【0125】