(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152477
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20231010BHJP
C23C 14/00 20060101ALI20231010BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20231010BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231010BHJP
【FI】
C23C14/24 U
C23C14/24 C
C23C14/00 B
H05B33/10
H05B33/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062513
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 由季
(72)【発明者】
【氏名】小野島 昇
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107CC45
3K107GG04
3K107GG28
3K107GG32
3K107GG34
4K029AA02
4K029AA09
4K029AA11
4K029AA24
4K029BA02
4K029BA04
4K029BA62
4K029BB03
4K029BC07
4K029BD01
4K029CA01
4K029DA03
4K029DA10
4K029DA12
4K029DB03
4K029DB06
4K029DB14
4K029HA01
4K029KA01
(57)【要約】
【課題】監視ユニットの監視精度を向上する技術を提供すること。
【解決手段】基板に蒸着物質を放出する第一の蒸着源と、前記第一の蒸着源からの蒸着物質の放出状態を監視する第一の監視手段と、前記基板に蒸着物質を放出する第二の蒸着源と、前記第二の蒸着源からの蒸着物質の放出状態を監視する第二の監視手段と、を備えた成膜装置であって、前記第一の蒸着源から前記第二の監視手段への前記蒸着物質の飛散を抑制し、かつ、前記第二の蒸着源から前記第一の監視手段への前記蒸着物質の飛散を抑制する防着部材を備え、前記防着部材は、第一の方向に延設された第一の壁部と、前記第一の壁部から第一の方向と交差する方向に延設された第二の壁部と、を備え、前記第一の壁部と前記第二の壁部との接続部が、前記第一の方向で、前記第一の蒸着源及び前記第二の蒸着源と、前記第一の監視手段及び前記第二の監視手段と、の間に位置している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に蒸着物質を放出する第一の蒸着源と、
前記第一の蒸着源に対して第一の方向に配置され、前記第一の蒸着源からの蒸着物質の放出状態を監視する第一の監視手段と、
前記第一の蒸着源に対して前記第一の方向と交差する第二の方向に配置され、前記基板に蒸着物質を放出する第二の蒸着源と、
前記第二の蒸着源に対して前記第一の方向に配置され、前記第二の蒸着源からの蒸着物質の放出状態を監視する第二の監視手段と、
を備えた成膜装置であって、
前記第一の蒸着源から前記第二の監視手段への前記蒸着物質の飛散を抑制し、かつ、前記第二の蒸着源から前記第一の監視手段への前記蒸着物質の飛散を抑制する防着部材を備え、
前記防着部材は、
前記第一の方向に延設された第一の壁部と、
前記第一の壁部から前記第一の方向と交差する方向に延設された第二の壁部と、を備え、
前記第一の壁部と前記第二の壁部との接続部が、前記第一の方向で、前記第一の蒸着源及び前記第二の蒸着源と、前記第一の監視手段及び前記第二の監視手段と、の間に位置している、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記防着部材は、前記第一の壁部から、前記第二の壁部とは反対側で、前記第一の方向と交差する方向に延設された第三の壁部を備え、
前記第一の壁部と前記第三の壁部との接続部が、前記第一の方向で、前記第一の蒸着源及び前記第二の蒸着源と、前記第一の監視手段及び前記第二の監視手段と、の間に位置している、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置であって、
前記第二の壁部と前記第三の壁部とは、前記第二の方向に連続的に延設されている、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
請求項2に記載の成膜装置であって、
前記第二の壁部と前記第三の壁部とは、延設方向が互いに異なる、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記防着部材は、前記第一の方向に離間した複数の前記第二の壁部を有する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
請求項2に記載の成膜装置であって、
前記防着部材は、前記第一の方向に離間した複数の前記第三の壁部を有する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
請求項2に記載の成膜装置であって、
前記第一の壁部、前記第二の壁部及び前記第三の壁部は、前記第一の方向で、前記第一の蒸着源及び前記第二の蒸着源と、前記第一の監視手段及び前記第二の監視手段と、の間に位置している、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記防着部材は、
前記第一の方向に延設され、前記第一の壁部と前記第二の方向に離間した第三の壁部と、
前記第三の壁部から、前記第一の壁部とは反対側で、前記第一の方向と交差する方向に延設された第四の壁部と、を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
請求項8に記載の成膜装置であって、
前記防着部材は、前記第二の方向に延設され、前記第一の壁部と前記第三の壁部とを接続する第五の壁部を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
請求項9に記載の成膜装置であって、
前記第一の壁部及び前記第三の壁部は、前記第一の蒸着源及び前記第二の蒸着源の側の第一の端部と、前記第一の監視手段及び前記第二の監視手段の側の第二の端部と、を有し、
前記第五の壁部は、前記第一の端部において前記第一の壁部と前記第三の壁部とを接続する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の成膜装置を用いて基板に成膜する工程を備える、
ことを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の製造においては、マスクを用いて基板上に蒸発源から放出された有機材料や金属材料等の蒸着物質が蒸着される。基板に蒸着された蒸着物質の膜厚管理等を目的として、蒸着源からの蒸着物質の放出状態を監視する監視ユニットを設けた蒸着装置が提案されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-137877号公報
【特許文献2】特開2019-99870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の蒸着源に対応して複数の監視ユニットを設けた場合、ある監視ユニットにその監視ユニットに対応しない蒸着源から蒸着物質が到達する場合がある(クロストーク)。このクロストークにより、監視ユニットの監視精度が低下する。
【0005】
本発明は、監視ユニットの監視精度を向上する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
基板に蒸着物質を放出する第一の蒸着源と、
前記第一の蒸着源に対して第一の方向に配置され、前記第一の蒸着源からの蒸着物質の放出状態を監視する第一の監視手段と、
前記第一の蒸着源に対して前記第一の方向と交差する第二の方向に配置され、前記基板に蒸着物質を放出する第二の蒸着源と、
前記第二の蒸着源に対して前記第一の方向に配置され、前記第二の蒸着源からの蒸着物質の放出状態を監視する第二の監視手段と、
を備えた成膜装置であって、
前記第一の蒸着源から前記第二の監視手段への前記蒸着物質の飛散を抑制し、かつ、前記第二の蒸着源から前記第一の監視手段への前記蒸着物質の飛散を抑制する防着部材を備え、
前記防着部材は、
前記第一の方向に延設された第一の壁部と、
前記第一の壁部から前記第一の方向と交差する方向に延設された第二の壁部と、を備え、
前記第一の壁部と前記第二の壁部との接続部が、前記第一の方向で、前記第一の蒸着源及び前記第二の蒸着源と、前記第一の監視手段及び前記第二の監視手段と、の間に位置している、
ことを特徴とする成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、監視ユニットの監視精度を向上する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略図。
【
図4】(A)は
図3の部分拡大図、(B)は防着部材の斜視図。
【
図6】(A)~(D)は防着部材の他の構成例を示す図。
【
図7】(A)及び(B)は防着部材の他の構成例を示す図。
【
図8】(A)~(D)は防着部材の他の構成例を示す図。
【
図9】(A)及び(B)は防着部材の他の構成例を示す図。
【
図10】(A)は有機EL表示装置の全体図、(B)は1画素の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<成膜装置の概要>
図1は本発明の一実施形態に係る成膜装置1の概略図、
図2は
図1のA-A線に沿う蒸着装置3の断面図である。なお、各図において矢印X及びYは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは垂直方向(鉛直方向)を示す。成膜装置1は、搬送装置2と、蒸着装置3と、を備える。搬送装置2は蒸着装置3の上方に配置されている。
【0011】
搬送装置2は、使用時に真空に維持される搬送室20cを内部に形成する搬送チャンバ20を備える。搬送チャンバ20のX方向の一端部には搬入口20aが、他端部には搬出口20bが設けられており、処理対象物は、搬入口20aから搬送室20c内に搬入され、処理後に搬出口20bから外部へ搬出される。搬送室20cには、X方向に配列された複数の搬送ローラ21が設けられている。この搬送ローラ21の列は、Y方向に離間して二列配置されている。各搬送ローラ21はY方向の回転軸周りに回転する。搬送対象物は、二列の搬送ローラ21の列に、そのY方向の両端部が載置され、搬送ローラ21の回転によってX方向に水平姿勢で搬送される。本実施形態では処理対象物の搬送機構としてローラ機構を用いたが、磁気浮上搬送等、他の種類の搬送機構であってもよい。
【0012】
蒸着装置3は、使用時に真空に維持される内部空間30aを形成するソースチャンバ30を備える。ソースチャンバ30は、上部に開口部が形成された箱型を有しており、開口部を介して、搬送室20cと内部空間30aとが連通している。蒸着装置3は上方に蒸着物質を放出する蒸着ユニット5を備える。
【0013】
蒸着ユニット5は、X方向に配列された蒸着源5A及び5Bを備える。蒸着源5A及び5Bはいわゆるラインソースである。各蒸着源5A及び5Bは、搬送装置2での処理対象物の搬送方向(X方向)と、交差する方向(本実施形態では搬送方向と直交するY方向)に延設されている。また、蒸着源5Aに対して蒸着源5Bは、Y方向と交差する方向(本実施形態ではX方向)に配置されている。
【0014】
蒸着源5A及び5Bは、蒸着物質の原材料を収容する坩堝や、坩堝を加熱するヒータ等を備え、原材料を加熱してその蒸気である蒸着物質を搬送室20cへ放出する。蒸着源5Aは、蒸着物質として例えばAgを放出し、蒸着源5Bは蒸着物質として例えばMgを放出する。
【0015】
蒸着装置3は、シャッタユニット6を備える。シャッタユニット6は、シャッタ60と、アーム部材61と、駆動ユニット62とを備える。シャッタ60は、蒸着源ユニット5と搬送室20c内を搬送される処理対象物との間の位置を含む移動軌道上で回動される。移動軌道は、シャッタ60の移動する経路であり、典型的には円軌道であるが、楕円軌道や直線軌道となることもある。
【0016】
本実施形態の場合、シャッタ60は、蒸着ユニット5の延設方向(本実施形態ではY方向)に沿って延設されており、駆動ユニット62は、アーム部材61を介して蒸着ユニット5の延設方向に沿う回動中心(本実施形態ではY方向の回動中心)周りにシャッタ60を回動する。
【0017】
本実施形態の場合、シャッタユニット6は、二組のシャッタ60を備えている。搬送室20cに対して蒸着ユニット5の放出口(ノズル)を二つのシャッタ60で開閉し、蒸着物質の搬送室20cへの放出の規制や、入射角の規制を行うことができる。
【0018】
蒸着ユニット5の上部やシャッタ7の周囲には防着部材4が設けられており、蒸着物質が周囲に付着することを抑制する。防着部材4は上下が開放した角筒形状を有しており、内部空間30aから搬送室20cに渡って配置されている。
【0019】
蒸着装置3には、また、蒸着装置3のY方向の一方端部に蒸着ユニット5からの蒸着物質の放出状態を監視する監視ユニット7A、7Bが設けられている。第一の監視手段である監視ユニット7Aは第一の蒸着源である蒸着源5Aに対応し、第二の監視手段である監視ユニット7Bは第二の蒸着源である蒸着源5Bに対応する。監視ユニット7A、7Bと、蒸着源5A及び5Bとの間には防着部材8が設けられている。蒸着装置3のY方向の他方端部にも、蒸着源5A及び蒸着源5Bに対応した監視ユニット、防着部材8が設けられているが、
図2に蒸着源5Aに対応した監視ユニット7Cのみが図示されている。
【0020】
図3は成膜装置1の動作の一例を示す説明図である。成膜装置1は、搬送装置2により処理対象物を搬送しながら(搬送工程)、蒸着装置3により処理対象物に蒸着物質を蒸着する(蒸着工程)成膜方法を実行可能な、インライン型の成膜装置である。成膜装置1は、例えば、表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する、電子デバイスの製造方法を実行する製造装置に適用可能である。
【0021】
図3では、処理対象物として基板10が例示されている。基板10はマスク11と共に搬送され、基板10の下側に位置するマスク11を通して蒸着物質を基板10に蒸着することにより、所定のパターンの蒸着物質の薄膜を基板100に形成することができる。基板10は例えばガラス、樹脂、金属等の材料からなる板材であり、蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。
【0022】
本実施形態では、複数の蒸着源5A、5Bが基板10の搬送方向に配置されている。蒸着装置5A、5Bにより異なる種類の蒸着物質を放出することができる。例えば、蒸着源5Aは、蒸着物質として例えばAgを放出し、蒸着源5Bは蒸着物質として例えばMgを放出する。
【0023】
図3の例では、シャッタ60により蒸着源5A、5Bの放出範囲を規制し、各蒸着源5A、5Bの蒸着物質が基板10に対して略同じ領域に放出される態様を例示している。このように本実施形態では、基板10に対して複数の蒸着源5A、5Bによって蒸着物質を蒸着することができる。
【0024】
<監視ユニット及び防着部材>
監視ユニット7A、7B及び防着部材8について、
図1、
図2に加えて
図4(A)~
図5を参照して説明する。
図4(A)は
図2の監視ユニット7A部分の拡大図であり、
図5は
図2のB-B線に沿う蒸着装置3の断面図である。
【0025】
監視ユニット7A及び7Bは支持部材9に支持されている。支持部材9は監視ユニット7A及び’Bと蒸着源5A及び5Bとの間の仕切り壁90を有し、仕切り壁90には仕切り壁90をその厚み方向に貫通する窓部9a、9bが形成されている。監視ユニット7A及び7Bは仕切り壁90の背後、特に、窓部9a、9bの背後に配置されている。
【0026】
監視ユニット7Aは、そのケースの内部に膜厚センサとして水晶振動子7aを備えている。水晶振動子7aには、ケースに形成された導入部7bを介して蒸着源5Aから放出された蒸着物質が導入されて付着する。導入部7bは窓部9aに臨んでいる。水晶振動子7aの振動数は蒸着物質の付着量により変動する。水晶振動子7aの振動数を監視することで、基板10に蒸着した蒸着物質の膜厚等、蒸着源5Aの放出状態を監視することができる。監視ユニット7Bも同様の構造により、蒸着源5Bの放出状態を監視する。
【0027】
蒸着ユニット5は、ハウジング50を有し、その上面には蒸着源5Aの蒸着物質が放出される複数のノズル5aと、蒸着源5Bの蒸着物質が放出される複数のノズル5aとが形成されている。複数のノズル5aはY方向に配列されており、また、複数のノズル5bもY方向に配列されている。
【0028】
監視ユニット7Aは、蒸着源5Aに対して第一の方向であるY方向に配置され、本実施形態の場合、複数のノズル5aの配列方向の延長線上に位置している。監視ユニット7Bは、蒸着源5Bに対してY方向に配置され、本実施形態の場合、複数のノズル5bの配列方向の延長線上に位置している。監視ユニット7Aに対して監視ユニット7BはY方向と交差する第二の方向(本実施形態ではX方向)に配置されている。
【0029】
監視ユニット7A及び7Bは蒸着ユニット5からY方向に離間して配置されており、監視ユニット7A及び7Bと蒸着ユニット5との間には防着部材8が設けられている。防着部材8は、Y方向に延設された壁部80と、壁部80からY方向と交差する方向に延設された壁部81と、壁部81とは壁部80の反対側で、壁部80からY方向と交差する方向に延設された壁部82と、を含む。
【0030】
壁部80は、Y-Z平面の平板状の部材であり、X方向の位置は、複数のノズル5aと複数のノズル5bとの間の位置で、特に真ん中である。壁部81及び壁部82は、本実施係形態の場合、X方向に連続的に延設されており、X-Z平面の平板状の部材である。壁部81及び壁部82は、壁部80のY方向の端部のうち、監視ユニット7A及び7B側の端部の接続部8aにおいて壁部80に接続されている。接続部8aはY方向で蒸着源5A及び5Bと監視ユニット7A及び7Bとの間に位置している。防着部材8は平面視でT字型を有している。
【0031】
図5を参照して防着部材8の機能について説明する。監視ユニット7Aには、ノズル5aから線L1で示す経路で蒸着物質が導入され、また、監視ユニット7Bにはノズル5Bから線L2で示す経路で蒸着物質が導入される。各監視ユニット7A、7Bは、対応する蒸着源5A、5Bの放出状態を監視する。
【0032】
一方、ノズル5aから放出される蒸着物質は放射状に飛散するため、線L3で示す経路で監視ユニット7Bに向かって飛散する場合がある。監視ユニット7Bに蒸着源5Aの蒸着物質が到達すると、蒸着源5Bの監視精度が低下する。同様に、ノズル5bから放出される蒸着物質が線L5で示す経路で監視ユニット7Aに向かって飛散する場合があり、監視ユニット7Aに蒸着源5Bの蒸着物質が到達すると、蒸着源5Aの監視精度が低下する。
【0033】
壁部80はこうした蒸着物質のクロストークを防止する。すなわち、壁部80を設けたことで、線L3で示す経路で蒸着源5Aから監視ユニット7Bへ蒸着物質が飛散することが抑制される。同様に、線L5で示す経路で蒸着源5Bから監視ユニット7Aへ蒸着物質が飛散することが抑制される。
【0034】
一方、壁部80はこのように各蒸着源5A及び5Bから蒸着物質が付着し、堆積するため、その温度が高温となる。すると、線L4で示す経路で壁部80から蒸着源5Aからの放射熱が監視ユニット7Aへ向かって反射する場合があり、監視ユニット7Aの温度が上昇すると、蒸着源5Aの監視精度が低下する。壁部81はこうした蒸着源5Aからの放射熱の監視ユニット7Aへの到達を抑制する。同様に、線L6で示す経路で壁部80から蒸着源5Bからの放射熱が監視ユニット7Bへ向かって反射する場合があり、監視ユニット7Bに壁部80で反射した蒸着源5Bからの放射熱が到達すると、蒸着源5Bの監視精度が低下する。壁部82はこうした反射する蒸着源5Bからの放射熱の監視ユニット7Bへの到達を抑制する。
【0035】
このように本実施形態では、防着部材8を設けたことで監視ユニットの監視精度を向上することができる。
【0036】
<防着部材の構成例>
防着部材8は、蒸着源5A及び5Bの仕様や使用態様に応じて様々な形態をとることができる。
図6(A)の防着部材8Aは、壁部81及び壁部82を二組設け、壁部80のY方向の端部のうち、監視ユニット7A及び7B側の端部の接続部8aと、蒸着源5A及び5B側の端部の接続部8bとにそれぞれ接続し、平面視でH字型を有している。接続部8bに接続された壁部81及び82は主に蒸着物質のクロストークと反射された蒸着源5A及び5Bからの放射熱の監視ユニット7A及び7Bへの到達を防止する。
【0037】
図6(B)の防着部材8Bは、壁部81は設けずに、壁部80と壁部82により防着部材を構成している。壁部80のX方向の位置は、複数のノズル5aと複数のノズル5bとの間の位置で、真ん中よりも監視ユニット7A及び蒸着源5Aの側に偏っている。防着部材8Bは平面視でL字型を有している。防着部材8Bは、例えば、蒸着源5Aよりも蒸着源5Bの方がクロストークと反射された放射熱の到達の影響が強い場合に、その防止に有利な構造である。
【0038】
図6(C)の防着部材8Cは、壁部82が二つ設けられており、一方の壁部82を壁部80のY方向の途中部位の接続部8cに接続している。壁部80で反射された監視ユニット7Bへの放射熱の到達が多い場合に、その防止に有利な構造である。
【0039】
図6(D)の防着部材8Dは、壁部81及び82が三つ設けられており、壁部80のY方向の端部の接続部8a、8b、途中部位の接続部8cに各壁部81及び82を接続している。全体的に、クロストークの防止、及び、壁部80で反射された監視ユニット7A及び7Bへの放射熱の到達防止に有利な構造である。
【0040】
図7(A)の防着部材8Eは、壁部81は設けずに、壁部80と二つの壁部82により防着部材を構成している。二つの壁部82は、壁部80のY方向の各端部の接続部8a、8bにそれぞれ接続されており、防着部材8Eは平面視でC字型(又はU字型)を有している。防着部材8Eは、例えば、壁部80で反射されて監視ユニット7Aへ向かう放射熱の到達よりも、監視ユニット7Bへ向かう放射熱の到達の方が多い場合に、その防止に有利な構造である。
【0041】
図7(B)の防着部材8Fは、壁部81及び82に代えて、互いに延設方向が異なる壁部83、84を備えている。壁部83、84は延設方向がX方向から傾斜している。壁部83は接続部8aから蒸着源5Aの側へ傾斜して延び、壁部84は接続部8aから蒸着源5Bの側へ傾斜して延びている。防着部材8Fは平面視で矢印型を有している。壁部83、84の幅を短くしつつ、壁部80で反射して監視ユニット7A及び7Bに向かう放射熱の到達を防止できる。
【0042】
図8(A)の防着部材8Gは、二つの壁部80をX方向に離間して設けている。二つの壁部80の蒸着源5A及び5B側の端部は壁部85で接続されている。壁部85の接続部位は、二つの壁部80のY方向の途中部位でもよい。壁部81は監視ユニット7Aの側の壁部80に接続部8aで接続され、壁部81は監視ユニット7Bの側の壁部80に接続部8aで接続されている。二つの壁部80を設けたことにより、防着部材8Gの温度上昇を抑制でき、壁部80で反射して到達する放射熱を低減できる。
【0043】
図8(B)の防着部材8Hは、
図8(A)の例において、壁部81、82に代えて、
図7(B)の例のように傾斜した壁部83、84を設けた例である。
図8(C)の防着部材8Iは、
図8(A)の例において、壁部81、82を複数設けた例であり、二つの壁部81、82が設けられている。一方の壁部81、82は壁部80の端部の接続部8aに接続され、他方の壁部81、82は壁部80の途中部位の接続部8cに接続されている。
図8(D)の防着部材8Jは、
図8(C)の例において、壁部81、82に代えて
図7(B)の例のように傾斜した壁部83、84を設けた例である。
【0044】
図9(A)の防着部材8Kは、二つの壁部80をX方向に離間して設けているが、
図8(A)の例とは異なり、二つの壁部80を接続していない。壁部81は、監視ユニット7Aの側の壁部80のY方向の両端部にそれぞれ設けられ、壁部82は、監視ユニット7Bの側の壁部80のY方向の両端部にそれぞれ設けられている。この構成例も防着部材8Kの温度上昇を抑制でき、壁部80で反射して到達する放射熱を低減できる。
図9(B)の例は、
図9(A)の例において、壁部81、82に代えて、
図7(B)の例のように傾斜した壁部83、84を設けた例である。
【0045】
このように防着部材8は様々な形態をとることができ、
図6(A)~
図9(B)に例示した構造例は適宜組み合わせることも可能である。すなわち、壁部80と壁部81との接続部8aが、Y方向で、蒸着源5A及び蒸着源5Bと、監視ユニット7A及び監視ユニット7Bと、の間に位置している構成であれば、防着部材8は様々な形態をとることができる。
【0046】
また、本実施形態では、蒸着源5A、5Bを二つ設け、対応する監視ユニット7A、7Bも、蒸着装置3のY方向の一方端部に二つ設けているが、蒸着源は3つ以上設けてもよく、対応する監視ユニットも3つ以上設けてもよい。この場合、防着部材は、蒸着源と監視ユニットの組数よりも一つ少ない数だけ設ければよい。
【0047】
<電子デバイス>
次に、電子デバイスの一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成を例示する。
【0048】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図10(A)は有機EL表示装置500の全体図、
図10(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0049】
図10(A)に示すように、有機EL表示装置500の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0050】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の副画素の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0051】
図10(B)は、
図10(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0052】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、
図10(B)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0053】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0054】
図10(B)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0055】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0056】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0057】
こうした電子デバイスの製造において、上述した成膜装置1が適用可能であり、当該製造方法は、搬送装置2により基板53を搬送する搬送工程と、搬送されている基板53に蒸着装置3によって各層の少なくともいずれか一つの層を蒸着する蒸着工程と、を含むことができる。
【0058】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0059】
1 成膜装置、2 搬送装置、3 蒸着装置、5A 蒸着源、5B 蒸着源、7A 監視ユニット、7B 監視ユニット