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特開2023-152502液状組成物の製造方法及び液状組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152502
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】液状組成物の製造方法及び液状組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/10 20060101AFI20231010BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C08L101/10
C08L27/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062555
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 蔵
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC03Y
4J002BD15W
4J002CH07X
4J002DJ017
4J002EB136
4J002FA087
4J002FD017
4J002FD136
4J002GF00
4J002GQ01
4J002HA08
(57)【要約】
【課題】テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む粒子と硬化性樹脂を含み、分散安定性等の液物性に優れる液状組成物の製造方法の提供、及びかかる液状組成物を提供する。
【解決手段】反応性基及び加水分解性シリル基を有する化合物を含み、50℃以下かつ含水率5000ppm以下に保持した非水系溶剤と、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子とを混合し、さらに硬化性樹脂を混合する、液状組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性基及び加水分解性シリル基を有する化合物を含み、50℃以下かつ含水率5000ppm以下に保持した非水系溶剤と、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子とを混合し、さらに硬化性樹脂を混合する、液状組成物の製造方法。
【請求項2】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記硬化性樹脂が、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル基含有樹脂又はマレイミド樹脂である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記硬化性樹脂が、前記反応性基及び加水分解性シリル基を有する化合物が有する前記反応性基と反応し得る基を有するか、又は前記反応性基と同種の反応性基を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記反応性基が、アクリル基、メタアクリル基、ビニル基、エポキシ基又はスチリル基である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
さらに、硬化剤及び硬化促進剤を混合する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
さらに、難燃剤、エラストマー又は無機粒子の少なくとも1種を混合する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記混合を、円筒形の撹拌槽と、前記撹拌槽の内壁面の内側で回転する、複数の孔が形成された円筒部を有する回転部位とを備える撹拌機の前記撹拌槽内で、前記回転部位の回転による遠心力によって、前記撹拌槽の内壁面に薄膜円筒状に拡げながら撹拌して行う、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
反応性基及び加水分解性シリル基を有する化合物と、非水系溶剤と、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、前記反応性基と反応し得る基を有するか又は前記反応性基と同種の反応性基を有する硬化性樹脂を含む、含水率5000ppm以下の液状組成物。
【請求項10】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項9に記載の液状組成物。
【請求項11】
前記硬化性樹脂が、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル基含有樹脂又はマレイミド樹脂である、請求項9に記載の液状組成物。
【請求項12】
前記反応性基が、アクリル基、メタアクリル基、ビニル基、エポキシ基又はスチリル基である、請求項9に記載の液状組成物。
【請求項13】
さらに、硬化剤及び硬化促進剤を含む、請求項9に記載の液状組成物。
【請求項14】
さらに、難燃剤、エラストマー又は無機粒子の少なくとも1種を含む、請求項9に記載の液状組成物。
【請求項15】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と前記硬化性樹脂の合計含有量が30質量%以上である、請求項9~14のいずれか1項に記載の液状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と硬化性樹脂を含む、非水系の液状組成物の製造方法、及びかかる液状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のテトラフルオロエチレン系ポリマーは、電気特性、撥水撥油性、耐薬品性、耐熱性等の物性に優れており、プリント基板等の種々の産業用途に利用されている。より優れた物性を有する材料を形成するために、テトラフルオロエチレン系ポリマーを他の樹脂材料に混合する検討もなされている。テトラフルオロエチレン系ポリマーは他の樹脂材料との親和性が概して低いことから、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を非水系溶媒中にまず分散させ、かかる分散液と他の樹脂材料のワニスを混合する方法が提案されている。
しかし、テトラフルオロエチレン系ポリマーは表面張力が低く、その粒子の分散安定性が低い。非水系溶媒中でのテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の分散安定性を高める観点から、特許文献1にはテルペンフェノール樹脂を含む分散液が開示されている。特許文献2には、特定のフッ素系添加剤を含む溶液組成物が開示されている。特許文献3には、ポリオキシアルキレンブロックポリマーを分散安定剤として含有するイソプロパノール分散液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-181537号公報
【特許文献2】特開2016-210886号公報
【特許文献3】特開2011-225710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3に開示される、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む非水系の分散液の分散安定性は未だ充分ではなく、混合する他の樹脂材料の種類や配合量等に制約を受けるのが現状である。また、かかる分散液から成形物を得る際、成形物におけるテトラフルオロエチレン系ポリマーに由来する物性の発現が不十分であり、他の樹脂材料が有する基材との密着性が低下しやすいという問題点を、本発明者らは知見している。
【0005】
本発明者らは鋭意検討し、非水系溶媒に、特定の反応性基を有する化合物を予め溶解させ、かかる化合物が反応しない温度に保持してテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む粒子を分散させ、さらに硬化性樹脂と混合すると、分散安定性や均質性等の液物性に優れた液状組成物が得られることを知見した。
さらに、かかる液状組成物からは、テトラフルオロエチレン系ポリマーと硬化性樹脂のそれぞれの物性を高度に具備した緻密な成形物を形成できる点、特に、低誘電正接等の電気特性や基材との密着性に優れた、プリプレグ等の含浸物、積層板等の成形物が得られる点を知見した。
本発明の目的は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む粒子と硬化性樹脂を含み、分散安定性等の液物性に優れる液状組成物の製造方法の提供、及びかかる液状組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 反応性基及び加水分解性シリル基を有する化合物を含み、50℃以下かつ含水率5000ppm以下に保持した非水系溶剤と、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子とを混合し、さらに硬化性樹脂を混合する、液状組成物の製造方法。
[2] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、[1]の製造方法。
[3] 前記硬化性樹脂が、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル基含有樹脂又はマレイミド樹脂である、[1]又は[2]の製造方法。
[4] 前記硬化性樹脂が、前記反応性基及び加水分解性シリル基を有する化合物が有する前記反応性基と反応し得る基を有するか、又は前記反応性基と同種の反応性基を有する、[1]~[3]のいずれかの製造方法。
[5] 前記反応性基が、アクリル基、メタアクリル基、ビニル基、エポキシ基又はスチリル基である、[4]の製造方法。
[6] さらに、硬化剤及び硬化促進剤を混合する、[1]~[5]のいずれかの製造方法。
[7] さらに、難燃剤、エラストマー又は無機粒子の少なくとも1種を混合する、[1]~[6]のいずれかの製造方法。
[8] 前記混合を、円筒形の撹拌槽と、前記撹拌槽の内壁面の内側で回転する、複数の孔が形成された円筒部を有する回転部位とを備える撹拌機の前記撹拌槽内で、前記回転部位の回転による遠心力によって、前記撹拌槽の内壁面に薄膜円筒状に拡げながら撹拌して行う、[1]~[7]のいずれかの製造方法。
[9] 反応性基及び加水分解性シリル基を有する化合物と、非水系溶剤と、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、前記反応性基と反応し得る基を有するか又は前記反応性基と同種の反応性基を有する硬化性樹脂を含む、含水率5000ppm以下の液状組成物。
[10] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、[9]の液状組成物。
[11] 前記硬化性樹脂が、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル基含有樹脂又はマレイミド樹脂である、[9]又は[10]の液状組成物。
[12] 前記反応性基が、アクリル基、メタアクリル基、ビニル基、エポキシ基又はスチリル基である、[9]~[11]のいずれかの液状組成物。
[13] さらに、硬化剤及び硬化促進剤を含む、[9]~[12]のいずれかの液状組成物。
[14] さらに、難燃剤、エラストマー又は無機粒子の少なくとも1種を含む、[9]~[13]のいずれかの液状組成物。
[15] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と前記硬化性樹脂の合計含有量が30質量%以上である、[9]~[14]のいずれかの液状組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む粒子と硬化性樹脂を含み、分散安定性等の液物性に優れる液状組成物を容易に製造できる。また、かかる液状組成物からは、テトラフルオロエチレン系ポリマーと硬化性樹脂とのそれぞれの物性を高度に具備した緻密かつ基材との密着性に優れた成形物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「ポリマーのガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「ポリマーの溶融温度(融点)」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度である。
「D50」は、粒子の平均粒子径であり、レーザー回折・散乱法によって求められる対象物の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって対象物の粒度分布を測定し、対象物の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
「比表面積」は、ガス吸着(定容法)BET多点法で粒子を測定し算出される値であり、NOVA4200e(Quantachrome Instruments社製)を使用して求められる。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、室温下(25℃)で回転数が30rpmの条件下で分散液又は液状組成物について測定される値である。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、液状組成物の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度ηを、回転数が60rpmの条件で測定される粘度ηで除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「モノマーに基づく単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
【0009】
本発明の製造方法(以下、「本法」とも記す。)は、反応性基及び加水分解性シリル基を有する化合物(以下、「本化合物」とも記す。)を含み、50℃以下かつ含水率5000ppm以下に保持した非水系溶剤と、テトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)とを混合し、さらに硬化性樹脂を混合する、液状組成物(以下、「本組成物」とも記す。)を得る方法である。
本法によれば、F粒子と硬化性樹脂とを含む、分散安定性や均質性等の液物性に優れた本組成物を容易に製造できる。また、本組成物からは、Fポリマーと硬化性樹脂のそれぞれの物性を高度に具備し、低誘電正接性及び基材との密着性に優れる、プリプレグ等の含浸物、積層体等の成形物を製造できる。その理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
【0010】
本法は、換言すれば、本化合物を含み、50℃以下かつ含水率5000ppm以下に保持し、本化合物の加水分解が抑制された状態にある非水系溶剤に、F粒子を粉体状又は非水系溶剤に予備分散させた分散液の状態で混合し、次いで、50℃以下かつ含水率5000ppm以下に保持し、本化合物の加水分解反応が抑制された状態で、硬化性樹脂(好適には本化合物が有する反応性基と相互に反応し得る反応性基を有する硬化性樹脂)を混合する方法であるとも言える。なお、本法においては、必要に応じ硬化剤、硬化促進剤、難燃剤、エラストマー、無機粒子等の任意添加成分をさらに混合してもよい。
このように、本組成物の製造過程において、本化合物の加水分解に起因する縮合反応を極力抑制する条件にて本組成物の各構成成分を添加することで、本化合物の界面活性作用が維持されてF粒子の表面と相互作用しやすい状態となり、F粒子の分散性(分散安定性)等の液物性が向上すると考えられる。
また、それにより均一分散したF粒子と硬化性樹脂の相互作用も高まり、それが本組成物の安定性を高めているとも考えられる。そのため、本組成物を加熱して、硬化性樹脂を硬化させた成形物を形成する際に、F粒子と硬化性樹脂が高度なマトリックス構造を形成して、F粒子を高度に均一に分散された状態を保持でき、両者の物性を高度に発現できると考えられる。かかる傾向は、本組成物を繊維基材に含浸させて得たプリプレグにおいては、本化合物の有する反応性基、及び硬化性樹脂が好適に有する反応性基の存在により、繊維基材表面との相互作用が亢進してより顕著となる。
その結果、分散性等の液物性に優れる本組成物が得られ、かかる本組成物から、Fポリマーの物性と硬化性樹脂の物性とを高度に具備した成形物を形成できたと考えられる。
【0011】
本法におけるFポリマーは、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を含むポリマーである。
Fポリマーは熱溶融性であってもよく、非熱溶融性であってもよい。ここで、熱溶融性のポリマーとは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1~1000g/10分となる温度が存在するポリマーを意味する。また非熱溶融性のポリマーとは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1~1000g/10分となる温度が存在しないポリマーを意味する。
熱溶融性であるFポリマーの溶融温度は、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、260℃以上がさらに好ましい。前記Fポリマーの溶融温度は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。前記Fポリマーの溶融温度は、200~320℃が好ましい。この場合、本組成物が液物性に優れやすく、また、本組成物から緻密な成形物を形成しやすい。
【0012】
Fポリマーのガラス転移点は、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。Fポリマーのガラス転移点は、150℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましい。
Fポリマーのフッ素含有量は、70質量%以上が好ましく、72~76質量%であるのがより好ましい。かかるフッ素含有量が高く、表面張力が著しく低いFポリマーにおいても、本法によれば、上述した作用機構により、液物性に優れた本組成物が得られる。
Fポリマーの表面張力は、16~26mN/mが好ましい。なお、Fポリマーの表面張力は、Fポリマーで作製された平板上に、JIS K 6768に規定されているぬれ張力試験用混合液(和光純薬社製)の液滴を載置して測定できる。
【0013】
Fポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)、TFE単位とフルオロアルキルエチレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とクロロトリフルオロエチレンに基づく単位とを含むポリマーが挙げられ、PFA又はFEPが好ましく、PFAがより好ましい。これらのポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PAVEは、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF又はCF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
【0014】
Fポリマーは、酸素含有極性基を有するのが好ましく、水酸基含有基又はカルボニル基含有基を有するのがより好ましく、カルボニル基含有基を有するのがさらに好ましい。かかるFポリマーは接着性等の物性に優れ、分散安定性に優れる本組成物が得られる。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CFCHOH又は-C(CFOHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボニル基(>C(O))を含む基であり、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)及びカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
Fポリマーが酸素含有極性基を有する場合、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、主鎖の炭素数1×10個あたり、10~5000個が好ましく、100~3000個がより好ましい。なお、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、ポリマーの組成又は国際公開第2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
【0015】
酸素含有極性基は、Fポリマー中のモノマー単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよく、前者が好ましい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として酸素含有極性基を有するFポリマー、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られるFポリマーが挙げられる。
カルボニル基含有基を有するモノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)が好ましく、NAHがより好ましい。
【0016】
Fポリマーは、TFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基を有するポリマーであるのが好ましく、TFE単位、PAVE単位及びカルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位を含み、全単位に対して、これらの単位をこの順に、90~99モル%、0.99~9.97モル%、0.01~3モル%含むポリマーであるのがさらに好ましい。かかるFポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
【0017】
本法におけるF粒子は、Fポリマーの粒子であり、非中空状の粒子であるのが好ましい。F粒子のD50は、0.01μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。F粒子のD50は、10μm未満が好ましく、8μm未満がより好ましい。この場合、本組成物が分散安定性及び均質性等の液物性により優れやすい。また、本組成物から、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、熱伝導性及び基材との密着性に優れた成形物を得やすい。
F粒子の比表面積は、1~25m/gが好ましく、3~15m/gがより好ましい。
【0018】
F粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。F粒子は、少なくとも、熱溶融性Fポリマーの粒子であるのが好ましく、溶融温度が180~320℃である、酸素含有極性基を有する熱溶融性Fポリマーの粒子であるのがより好ましい。この場合、上述した作用機構がより発現されてF粒子の凝集も抑制されやすくなり、本組成物の液物性が向上しやすい。
【0019】
2種のF粒子を用いる場合、F粒子は、熱溶融性Fポリマーの粒子と非熱溶融性Fポリマーの粒子の混合物であるのが好ましい。この場合、熱溶融性Fポリマーの粒子による凝集抑制作用と、非熱溶融性Fポリマーのフィブリル化による保持作用とがバランスし、本組成物の分散性が向上しやすい。また、それから得られる成形物において、非熱溶融性Fポリマーの電気特性が高度に発現し、特に誘電正接の低い成形物が得られやすい。
前者の粒子としては、溶融温度が180~320℃である熱溶融性Fポリマーの粒子が好ましく、溶融温度が180~320℃であり、酸素含有極性基を有する熱溶融性Fポリマーの粒子がより好ましい。前者の粒子における、酸素含有極性基を有する熱溶融性Fポリマーの好適態様は、上述の酸素含有極性基を有するFポリマーにおける好適態様と同様である。
後者の粒子としては、非熱溶融性PTFEの粒子が好ましい。
【0020】
F粒子は、Fポリマー以外の樹脂や無機化合物を含んでいてもよく、FポリマーをコアとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をシェルとするコア-シェル構造を形成していてもよく、FポリマーをシェルとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をコアとするコア-シェル構造を形成していてもよい。
ここで、Fポリマー以外の樹脂としては、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、マレイミドが挙げられ、無機化合物としては、シリカ、窒化ホウ素が挙げられる。
【0021】
本法における本化合物は、反応性基及び加水分解性シリル基を有する化合物であり、反応性基としてアクリル基、メタアクリル基、ビニル基、エポキシ基又はスチリル基を有し、加水分解性シリル基としてトリアルコキシシリル基とを有する化合物であるのが好ましく、アクリル基又はメタアクリル基とトリアルコキシシリル基とを有する化合物であるのがより好ましい。
【0022】
本化合物の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0023】
本法における硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂、又は紫外線等の活性エネルギー線によって硬化する樹脂を包含し、熱硬化性樹脂が好ましい。硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、多官能シアン酸エステル樹脂;芳香族マレイミド、多官能性マレイミド、多官能マレイミド-シアン酸エステル樹脂等のマレイミド樹脂;オルトジビニルベンゼン樹脂等のビニル基含有樹脂;不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂等が挙げられる。
上記した硬化性樹脂の中でも、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル基含有樹脂又はマレイミド樹脂であるのが好ましい。
【0024】
硬化性樹脂の重量平均分子量について特に制限はないが、1000以上が好ましい。硬化性樹脂の重量平均分子量は、7000以下が好ましい。
本法においては、硬化性樹脂が、本化合物が有する前記した反応性基と反応し得る基を有するか、又は前記反応性基と同種の反応性基を有するのが好ましい。かかる反応性基としては、アクリル基、メタアクリル基、ビニル基、エポキシ基又はスチリル基が挙げられる。本法では、硬化性樹脂として、これらの反応性基を有する硬化性樹脂(以下、「反応性基含有硬化性樹脂」と記す。)を含む場合、得られる本組成物が液物性に優れやすい。また、本組成物から形成される成形物や、本組成物を後述する繊維基材に含浸させたプリプレグにおいて、上述した機構により、低誘電正接等の電気特性を発現しやすく、密着性に優れやすい。
反応性基含有硬化性樹脂としては市販されているものを用いてもよく、例えばSABIC社の「NORYL(登録商標) SA-9000」(商品名)が挙げられる。
【0025】
本法における非水系溶剤は、Fポリマーと反応せず、F粒子を分散させる液状分散媒として作用する、大気圧下、25℃にて液体である化合物であり、沸点が50~240℃である化合物が好ましい。非水系溶剤は1種類を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種の非水系溶剤を用いる場合、2種の非水系溶剤は、互いに相溶するのが好ましい。
本法において用いる非水系溶剤の含水率は5000ppm以下であり、500ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。非水系溶剤の含水率の下限は、特に限定されず、1ppmが挙げられる。非水系溶剤の含水率を前記範囲とすることで上述した作用機構が発現し、得られる本組成物が液物性に優れ、本組成物から形成される成形物が、低誘電正接等の電気特性や基材との密着性に優れる。
非水系溶剤の含水率を前記範囲に制御する方法は特に制限されず、モレキュラーシーブス、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム等の公知の脱水剤又は乾燥剤に予め接触させる方法、蒸留により精製する方法等が挙げられる。
なお、本発明における含水率は、JIS K 0068:2001に準拠してカールフィッシャー法により測定した値を意味する。
【0026】
非水系溶剤としては、炭化水素、アミド、ケトン及びエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の非プロトン性液状分散媒が好ましい。
炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、メチルシクロヘキサン等の脂環式骨格炭化水素、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
アミドとしては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンが挙げられる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが挙げられる。
これらの中でも、トルエン、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン又はシクロペンタノンがより好ましく、トルエンがさらに好ましい。
本法において、本組成物中の非水系溶剤の含有量は、10質量%以上が好ましい。非水系溶剤の含有量は、60質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
非水系溶剤は、本組成物から得られる成形物の成分分布の均一性の低下や空隙の抑制の観点から、脱気されているのが好ましい。
【0027】
本法においては、反応性基及び加水分解性シリル基を有する化合物(本化合物)を含み、50℃以下かつ含水率5000ppm以下に保持した非水系溶剤と、F粒子とを混合し、さらに硬化性樹脂を混合して、本組成物を得る。すなわち、本法における混合は、本化合物の分解が抑制されほぼ進行しない温度かつ含水率の条件下で行う。
混合における温度は50℃以下であり、40℃以下が好ましい。上記温度は0℃以上が好ましい。付帯設備が不要である観点から、混合における温度は10℃以上35℃以下であるのがより好ましい。
本化合物を含む非水系溶剤の含水率は5000ppm以下であり、500ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。含水率の下限は特に限定されず、1ppmが挙げられる。かかる含水率は、用いる非水系溶剤の含水率を予め調整してもよく、F粒子に含まれる水分量によって調整してもよく、本化合物を含む非水系溶剤の調製に際する雰囲気の含水率(湿度)から調整してもよい。
【0028】
本法における混合手段としては、プロペラブレード、タービンブレード、パドルブレード、シェル状ブレード等のブレード(撹拌翼)を一軸あるいは多軸で備える撹拌装置や、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、後述する薄膜旋回型高速ミキサーによる撹拌;ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル(ガラスビーズ又は酸化ジルコニウムビーズなどの粉砕媒体を用いたビーズミル)、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル又はアジテーターミル等のメディアを使用する分散機による混合;マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザーなどの高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等の、メディアを使用しない分散機を用いた混合が挙げられる。
混合は、バッチ式、連続式いずれでもよい。
【0029】
本法では、本化合物を含み、50℃以下かつ含水率5000ppm以下に保持した非水系溶剤を、円筒形の撹拌槽と、前記撹拌槽の内壁面の内側で回転する、複数の孔が形成された円筒部を有する回転部位とを備える撹拌機の前記撹拌槽内に入れ、F粒子を添加して、前記回転部位の回転による遠心力によって、前記撹拌槽の内壁面に薄膜円筒状に拡げながら撹拌して、F粒子を含む組成物を得、次いで硬化性樹脂、及び必要に応じて後述する硬化剤、硬化促進剤、難燃剤、エラストマー、無機粒子等の任意添加成分を添加して、50℃以下に保持してさらに混合するのが好ましい。
かかる撹拌手段は、薄膜旋回型高速ミキサーとも称され、上述した作用機構により、F粒子自体を変質させることなくその二次粒子をほぐしながら、F粒子と硬化性樹脂を混合できる。その結果、より短時間の撹拌で分散安定性に優れた本組成物が得られる。
【0030】
前記円筒形の撹拌槽の内壁面には凹凸が設けられていてもよい。かかる凹凸の高さ及び形状の組合せは、数μm~数百μm程度の深さ(高さ)、格子状の溝又はディンプルを備えたものであり、適宜取り換え可能となっていてもよい。また、撹拌槽の内壁面を例えば上中下と等分に分け、異なる凹凸パターンを形成していてもよい。
前記撹拌槽の材質は、凹凸形成加工処理可能であり、摩耗しにくい、例えばステンレスやセラミックス等を使用できる。
【0031】
前記撹拌槽は、撹拌対象を構成する成分の投入口を複数備えることができる。すなわち、本法で本組成物を製造するに際し、硬化性樹脂、及び後述する硬化剤、硬化促進剤等の任意添加成分を予備混合した混合物を撹拌槽内に一括して供給してもよく、硬化性樹脂、及び硬化剤、硬化促進剤等の任意添加成分を別々に撹拌槽内に供給してもよい。
また、前記撹拌槽は、撹拌対象を構成する成分を混合した混合物の排出口を備えることができる。したがって、本法はバッチ式でも連続式でも実施できる。
【0032】
前記撹拌槽の内壁面の内側で回転する、複数の孔が形成された円筒部を有する回転部位は、撹拌槽の内壁面に対して1~10mm程度の僅かな隙間を介して対向する。回転部位の周速及び撹拌時間は、適宜設定できる。
【0033】
本法において、本化合物を含み、50℃以下かつ含水率5000ppm以下に保持した非水系溶剤を撹拌槽内に有する薄膜旋回型高速ミキサーへF粒子を添加する際、F粒子は粉体状で添加してもよく、非水系溶剤へ予備分散させた分散液の態様で添加してもよい。
また、硬化性樹脂をさらに添加する際、硬化性樹脂は粉体状で添加してもよく、予め硬化性樹脂を非水系溶剤に溶解させたワニスの態様で添加してもよい。
本法において、後述する硬化剤及び硬化促進剤をさらに混合して本組成物を得る場合、硬化剤及び硬化促進剤は、硬化性樹脂と共に添加するのが好ましい。
本法において、後述する難燃剤、エラストマー又は無機粒子の少なくとも1種をさらに混合して本組成物を得る場合、これらの難燃剤、エラストマー又は無機粒子はF粒子の添加の際に添加してもよく、硬化性樹脂の添加の際に添加してもよい。
供給されたF粒子及び硬化性樹脂、並びに硬化剤、硬化促進剤、難燃剤、エラストマー、無機粒子等の任意添加成分等は、撹拌槽の内壁面と回転部位の円筒部の外周面との間の隙間に行き渡って膜状となり、回転部位の回転に伴って撹拌槽内で高速で旋回する。このとき、剪断応力だけでなくズリ応力を受けることで、高レベルでの分散が達成される。
【0034】
本法において、本組成物における本化合物の含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。上記含有量は、5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。
また、本組成物におけるF粒子の含有量に対する、本化合物の含有量の質量比は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましい。上記比は、0.3以下が好ましく、0.2以下がより好ましい。
本化合物の含有量、又は上記比(質量比)がかかる範囲にある場合、上述した作用機構が一層亢進して、液物性に優れた本組成物が得られやすい。
【0035】
本法において、本組成物中のF粒子と硬化性樹脂の合計含有量は、30質量%以上であるのが好ましく、本組成物から電気特性及び基材との密着性により優れた成形物が得られる観点から、50質量%以上であるのがより好ましい。
また、本法において、本組成物中のF粒子の質量に対する硬化性樹脂の質量の比が、0.1以上60以下であるのが好ましい。本組成物中のF粒子の質量に対する硬化性樹脂の質量の比は0.5以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましい。また、本組成物中のF粒子の質量に対する硬化性樹脂の質量の比は30以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。
これらのいずれかの比(質量比)がかかる範囲にある場合、上述した作用機構が亢進して、液物性に優れた本組成物が得られやすい。
【0036】
本法において、本組成物は硬化剤をさらに含有してもよい。硬化剤は硬化性樹脂を架橋し、その耐熱性、機械的特性等を維持又は向上させる作用を有する。硬化剤は、炭素-炭素二重結合を分子中に2つ以上有することが好ましい。硬化剤の分子量は通常100以上5000以下である。
硬化剤としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の多官能ビニル化合物;フェノールとビニルベンジルクロリドの反応から合成されるビニルベンジルエーテル系化合物;スチレン、フェノールとアリルクロリドの反応から合成されるアリルエーテル系化合物;分子中にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2個以上有する多官能アクリル系化合物;トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)等のトリアルケニルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0037】
また、本法において、本組成物は、硬化剤と共に硬化促進剤をさらに含有してもよい。本組成物が硬化促進剤をさらに含有すると、本組成物から成形物を得るに際し、本組成物中の硬化性樹脂の硬化反応をより温和な条件で開始できる。
硬化促進剤としてはラジカル開始剤が好ましく、例えばα,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン(別名:1,3-ビス(ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、過酸化ベンゾイル、3,3’,5,5’-テトラメチル-1,4-ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。
【0038】
本法においては、本組成物は、難燃剤をさらに含有してもよい。難燃剤は、本組成物から形成される成形物の難燃性を向上できる。難燃剤としては、例えば縮合リン酸エステル、環状リン酸エステル等のリン酸エステル、環状ホスファゼン化合物、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム等のホスフィン酸金属塩からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有するリン系難燃剤;臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤が挙げられる。
【0039】
本法においては、本組成物は、エラストマーをさらに含有してもよい。エラストマーは熱硬化性であっても熱可塑性であってもよい。本組成物がエラストマーをさらに含有すると、本組成物から得られる成形物の耐熱性、接着性、寸法安定性を向上できる。
エラストマーとしては、例えばポリスチレン-ポリブタジエンブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリイソプレンブロックコポリマー等のスチレン系エラストマー、1,2-ポリブタジエン,1,4-ポリブタジエン、マレイン酸変性ポリブタジエン、アクリル酸変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエンが挙げられる。
【0040】
本法においては、本組成物は、無機粒子をさらに含有してもよい。無機粒子は、酸化物、窒化物、金属単体、合金及びカーボンを含む無機粒子が好ましく、酸化ケイ素(シリカ)、金属酸化物(酸化ベリリウム、酸化セリウム、アルミナ、ソーダアルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等)、窒化ホウ素、及びメタ珪酸マグネシウム(ステアタイト)を含む無機粒子がより好ましく、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、チタン、亜鉛から選択される元素の少なくとも1種を含有する無機酸化物を含む無機粒子がさらに好ましく、シリカ及び窒化ホウ素を含む無機粒子が特に好ましく、シリカを含む無機粒子が最も好ましい。シリカを含む無機粒子を本組成物が含有すると、本組成物の加工性、本組成物を含有するプリプレグを含む絶縁層の耐熱性を向上でき、かつかかる絶縁層の誘電正接及び線膨張係数を低減できるため、金属張積層板及びプリント配線板の寸法安定性を高められる。
また、無機粒子はセラミックスであってもよい。無機粒子は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の無機粒子を併用する場合、2種のシリカを含む無機粒子を用いてもよく、シリカと金属酸化物とを含む無機粒子を用いてもよい。
【0041】
無機粒子の形状は、粒状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよい。無機粒子の具体的な形状としては、球状、鱗片状、層状、平板状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状が挙げられる。無機粒子は中空状であってもよく、中空状の無機粒子と、非中空状の無機粒子を含んでもよい。無機粒子の形状としては、球状又は鱗片状が好ましい。
無機粒子のD50は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。無機粒子のD50は、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。
【0042】
無機粒子の好適な具体例としては、シリカ粒子(アドマテックス社製の「アドマファイン(登録商標)」シリーズ等)、ジカプリン酸プロピレングリコール等のエステルで表面処理された酸化亜鉛粒子(堺化学工業株式会社製の「FINEX(登録商標)」シリーズ等)、球状溶融シリカ粒子(デンカ社製の「SFP(登録商標)」シリーズ等)、多価アルコール及び無機物で被覆処理された酸化チタン粒子(石原産業社製の「タイペーク(登録商標)」シリーズ等)、アルキルシランで表面処理されたルチル型酸化チタン粒子(テイカ社製の「JMT(登録商標)」シリーズ等)、中空状シリカ粒子(太平洋セメント社製の「E-SPHERES」シリーズ、日鉄鉱業社製の「シリナックス」シリーズ、エマーソン・アンド・カミング社製「エココスフイヤー」シリーズ等)、タルク粒子(日本タルク社製の「SG」シリーズ等)、ステアタイト粒子(日本タルク社製の「BST」シリーズ等)、窒化ホウ素粒子(昭和電工社製の「UHP」シリーズ、デンカ社製の「デンカボロンナイトライド」シリーズ(「GP」、「HGP」グレード)等)が挙げられる。
【0043】
無機粒子の表面は、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。シランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0044】
本組成物が無機粒子をさらに含有する場合、その含有量は、F粒子に対し、質量比として10:90~90:10の範囲であることが好ましく、30:70~70:30の範囲がより好ましい。この場合、本組成物から形成される成形物の低比誘電率化と加工性の向上とを、高い水準で両立できる。
【0045】
本法における本組成物は、分散性を向上する観点から、さらに界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、ノニオン性であるのが好ましい。界面活性剤としては、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤を含む場合、本組成物における界面活性剤の含有量は1~15質量%が好ましい。
【0046】
本法において、本組成物は、本化合物の反応を制御する観点から、さらに、3,5-ジブチル-4-ヒドロキシトルエン、p-メトキシフェノール等の安定剤を含んでいてもよい。
【0047】
本法において、本組成物は、さらに他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂としては芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミック酸、芳香族ポリアミドイミド等の芳香族系ポリマーが挙げられ、芳香族ポリイミド又は芳香族ポリアミック酸が好ましい。この場合、本組成物から形成する成形物が柔軟性と密着性に優れやすい。
【0048】
本法において、本組成物は、これらの成分以外にも、チキソ性付与剤、粘度調節剤、脱水剤、消泡剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0049】
本発明はまた、本化合物と、非水系溶剤と、F粒子と、反応性基含有硬化性樹脂を含む、含水率5000ppm以下の液状組成物を提供する。
上記の液状組成物における本化合物、非水系溶剤、F粒子及び反応性基含有硬化性樹脂の具体的態様については、本法において説明した本組成物と同様である。
上記の液状組成物は、さらに、硬化剤及び硬化促進剤を含んでいてもよい。
また、上記の液状組成物は、さらに、難燃剤、エラストマー又は無機粒子の少なくとも1種を含んでいてもよい。
硬化剤、硬化促進剤、難燃剤、エラストマー及び無機粒子の具体的態様については、本法において説明した本組成物と同様である。
また、上記の液状組成物は、本法において説明した本組成物と同様の、界面活性剤、他の樹脂、添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0050】
上記の液状組成物における本化合物量、非水系溶剤及びF粒子の各々の含有量、F粒子の含有量に対する本化合物の含有量の質量比の好適な範囲も、本法において説明した本組成物における好適な範囲と同様である。
また、上記の液状組成物中のF粒子と硬化性樹脂の合計含有量は、30質量%以上であるのが好ましく、電気特性及び基材との密着性により優れた成形物が得られる観点から、50質量%以上であるのがより好ましい。F粒子の質量に対する反応性基含有硬化性樹脂の含有質量比の好適な範囲は、本法で得られる本組成物中の、F粒子の質量に対する硬化性樹脂の質量の比の好適な範囲と同様である。
【0051】
上記の液状組成物の25℃における粘度は、10~10000mPa・sが好ましく、50~5000mPa・sがより好ましい。
上記の液状組成物のチキソ比は、1~2.5が好ましく、1.2~2がより好ましい。この場合、上記の液状組成物の物性が向上しやすい。
上記の液状組成物は、本化合物を含む含水率5000ppm以下の非水系溶剤に、50℃以下でF粒子を混合し、次いで反応性基含有硬化性樹脂を混合することで得られ、かかる混合は、好適には上記した薄膜旋回型高速ミキサーを用いた撹拌により行われるのが好ましい。
【0052】
本組成物は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の強化繊維の繊維基材(トウ、織布等)に含浸させて、F粒子及び硬化性樹脂を含侵させたプリプレグを製造するのに好適に使用できる。
本組成物を用いてプリプレグを製造する場合、例えば、まず繊維基材に本組成物を浸漬法、塗布法等の公知の方法で含浸させる。続いて、本組成物を加熱して乾燥させ又は半硬化させる。
かかる加熱による乾燥条件は非水系溶剤の沸点以下が好ましく、該沸点-20℃以下がより好ましい。乾燥時の具体的な温度は、80℃~200℃が好ましい。なお、非水系溶剤を除去する工程で空気を吹き付けてもよい。
上記乾燥は、常圧下及び減圧下のいずれの状態で行ってもよい。
また、乾燥の雰囲気は、酸化性ガス雰囲気(酸素ガス等)、還元性ガス雰囲気(水素ガス等)、不活性ガス雰囲気(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)のいずれであってもよい。
乾燥時間は、0.1~30分間が好ましく、0.5~20分間がより好ましい。
【0053】
本組成物におけるF粒子は、本化合物により表面処理された状態にあるとも考えられる。そのため、繊維基材に含浸させた本組成物から加熱により非水系溶剤を除去すれば、加熱によって本化合物が繊維基材の表面とも相互作用し、F粒子と硬化性樹脂と繊維基材とが高度に複合一体化した、プリプレグを得ることもできる。
【0054】
上記で説明したプリプレグ、又はプリプレグを複数枚積層した積層物に、金属基板を重ねて、本組成物の硬化物を含むプリプレグを絶縁層とし、金属基板を金属層とする金属張積層板が得られる。金属基板としては、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、それらの合金等の金属箔等が挙げられ、銅箔が好ましく、圧延銅箔又は電解銅箔がより好ましい。
絶縁層における一方の面と、その反対側の面とにそれぞれ金属層を備える金属張積層板を得る場合には、二つの金属基板を、プリプレグ又は積層物の一方の面及びその反対側の面にそれぞれ重ねる。金属層を一つのみ備える金属張積層板を得る場合には、金属基板を、プリプレグ又は積層物の一つの面に重ねる。これらを熱プレスすることにより、繊維基材と本組成物の硬化物とを含む絶縁層と、金属箔からなる金属層とを有する金属張積層板を製造できる。
熱プレスにおける最高加熱温度は160℃以上230℃以下であるのが好ましい。熱プレスのプレス圧力は、通常、0.5MPa以上6MPa以下であるのが好ましい。熱プレスの加熱時間は、通常、30分以上240分以下であるのが好ましい。
金属張積層板における、上記の絶縁層と金属層との剥離強度は、2lb/in以上が好ましく、3lb/in以上がより好ましい。上記剥離強度は、10lb/in以下が好ましい。なお、剥離強度は、後述する実施例の方法により測定できる。
【0055】
金属張積層板における金属層を、フォトリソグラフィ法などでパターニングすることで、導体配線を作製する。また、必要に応じて、金属張積層板の絶縁層にレーザー加工又はドリル加工を施して孔を形成し、この孔の内面にめっきを施したり、孔内に導電性ペーストを充填したりすることでビアを作製して、絶縁層と、絶縁層に重なる導体配線とを備えるプリント配線板を製造できる。
プリント配線板は、導体配線を二つ備え、これらが、絶縁層における一つの面と、その反対側にある面とに、それぞれ重なっていてもよい。プリント配線板は、導体配線を一つのみ備え、これが絶縁層における一つの面に重なっていてもよい。また、プリント配線板は、複数の絶縁層と複数の導体配線とを備える多層プリント配線板であってもよい。この場合、複数の絶縁層のうち少なくとも一つが、上記で説明した本組成物の硬化物を含有すればよい。
【0056】
以上、本法及び本組成物について説明したが、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されない。
例えば、本法は、上記実施形態の構成において、他の任意の工程を追加で有してもよいし、同様の作用を生じる任意の工程と置換されていてよい。また本組成物は、上記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。
【実施例0057】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の準備
[F粒子]
F粒子1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、酸素含有極性基を有するポリマー1(溶融温度:300℃)からなる粒子(D50:2.0μm)
[反応性基及び加水分解性シリル基を有する化合物]
化合物1:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
化合物2:トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン(商品名「DYNASYLAN(登録商標) F8261」、ボニック社製)
[非水系溶剤]
Tol:トルエン
[硬化性樹脂]
硬化性樹脂1:両末端メタアクリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂(商品名「NORYL(登録商標) SA-9000」、SABIC社製、重量平均分子量1700)
硬化性樹脂2:両末端水酸基含有ポリフェニレンエーテル樹脂(商品名「S203A」(商品名、両末端水酸基含有ポリフェニレンエーテル樹脂、旭化成ケミカルズ社製))
[硬化剤]
硬化剤1:トリアリルイソシアヌレート
[硬化促進剤]
硬化促進剤1:2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(商品名「パーヘキサ(登録商標)25B」、日油社製)
[難燃剤]
難燃剤1:エチレンビス(ペンタブロモフェニル)(商品名「SAYTEX(登録商標)8010」、アルベマール社製)
[エラストマー]
エラストマー1:ポリブタジエン(商品名「B3300」、日本曹達社製)
[無機粒子]
無機粒子1:球状溶融シリカ粒子(商品名「FB3SDC」、球状溶融シリカ粒子、デンカ社製、D50:3.1μm)
【0058】
2.液状組成物の製造
<例1>
(1)硬化性樹脂1を59部、硬化剤1を25部、エラストマー1を16部用意し、これらの合計値を樹脂系100部と定義した。用いた各成分の部は、前記樹脂系100部に対する部を意味する。
(2)化合物1を1質量%含むTol溶液(含水率50ppm)を樹脂系に対して311部用意し、円筒形の撹拌槽と、この撹拌槽の内壁面の内側で回転する、複数の孔が形成された円筒部を有する回転部位とを備える撹拌機の撹拌槽内に入れて、25℃に保持した。次いで、F粒子1の30部を加えて回転部位を高速回転させて混合し、さらに、上記の樹脂系を100部、硬化促進剤1を1部、難燃剤1を9.4部、無機粒子1を62部、を順次添加して、25℃に保持しながら回転部位を高速回転させて混合し、液状組成物1(含水率100ppm)を得た。
【0059】
<例2>
化合物1を1質量%含むTol溶液(含水率50ppm)を樹脂系に対して311部用意し、40℃に保持したこと以外は、例1と同様にして、液状組成物2(含水率100ppm)を得た。
【0060】
<例3>
化合物1を1質量%含むTol溶液(含水率1000ppm)を樹脂系に対して311部用意し、25℃に保持したこと以外は、例1と同様にして、液状組成物3(含水率1800ppm)を得た。
【0061】
<例4>
硬化性樹脂2を59部、硬化剤1を25部、エラストマー1を16部用意し、これらの合計値を樹脂系100部と定義したこと以外は、例1と同様にして、液状組成物4(含水率100ppm)を得た。
【0062】
<例5>
化合物2を1質量%含むTol溶液(含水率50ppm)を樹脂系に対して311部用意し、25℃に保持したこと以外は、例1と同様にして、液状組成物5(含水率100ppm)を得た。
【0063】
3.プリプレグ及び積層体の製造
ガラスクロスに液状組成物1を含浸させた後、160℃、4分間で加熱乾燥し、Tolを除去して、プリプレグ1を得た。さらに、プリプレグ1の表面にキャリア付銅箔(厚さ:18μm、最大高さ粗さRz:2μm、三井金属社製、MT18E)を配置して、230℃、30MPaで120分間、加熱加圧し、積層体1を製造した。
液状組成物1を、液状組成物2~5のそれぞれに変更した以外は、積層体1と同様にして、積層体2~5をそれぞれ製造した。
【0064】
4.評価
4-1.液状組成物の分散安定性
液状組成物1~5のそれぞれ18mLを、内容積30mLのスクリュー管に入れ、25℃にて14日間静置し、静置前後の液状組成物の分散安定性を、下記の基準に従って評価した。
[評価基準]
〇:沈降成分の再分散が容易にできる。
△:沈降成分が一部固着しているが、超音波振動により再分散ができる。
×:沈降成分が固着し変性しており、再分散が困難である。
【0065】
4-2.誘電正接
積層体1~5のそれぞれについて、積層体の銅箔を塩化第二鉄水溶液でエッチングにより除去して、単独のプリプレグ層を作製した。
SPDR(スプリットポスト誘電体共振)法にて、プリプレグ層の誘電正接(測定周波数:10GHz)を測定した。
そして、プリプレグ層の電気特性を、下記の基準に従って評価した。
[評価基準]
〇:誘電正接が0.0030未満である。
△:誘電正接が0.0030以上0.0040以下である。
×:誘電正接が0.0040超である。
【0066】
4-3.密着性
積層体1~5のそれぞれについて、IPC-TM650-2.4.8に準拠し、プリプレグとキャリア付銅箔との間の剥離強度(lb/in)を測定し、以下の基準に従って評価した。
[評価基準]
〇:3lb/in以上
△:2lb/in以上3lb/in未満
×:2lb/in未満
【0067】
それぞれの評価結果を、表1にまとめて示す。
【0068】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の製造方法で得られる液状組成物は、液物性に優れ、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく物性と、硬化性樹脂に基づく特性、さらに必要に応じて無機粒子等に基づく特性とを具備した成形物(フィルム、プリプレグ等の含浸物、積層板等)の製造に使用できる。