(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152553
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及びエアーバッグ
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20231010BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20231010BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20231010BHJP
C09D 183/05 20060101ALI20231010BHJP
C09D 183/07 20060101ALI20231010BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20231010BHJP
B60R 21/235 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/36
C09D183/05
C09D183/07
C09D7/61
B60R21/235
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062670
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】芦田 諒
(72)【発明者】
【氏名】生方 茂
(72)【発明者】
【氏名】平林 佐太央
【テーマコード(参考)】
3D054
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
3D054CC26
3D054CC30
3D054CC45
3D054FF14
3D054FF16
4J002CP03X
4J002CP04X
4J002CP13W
4J002CP14W
4J002DA076
4J002DD076
4J002DJ017
4J002EX018
4J002FD017
4J002FD130
4J002FD156
4J002FD206
4J002FD348
4J002GH00
4J002GH02
4J038DL041
4J038DL111
4J038HA446
4J038JC32
4J038JC38
4J038KA04
4J038KA08
4J038MA14
4J038NA10
4J038PA19
4J038PB07
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】エアーバッグ用基布にコーティングし、硬化させた際に滑脱抵抗性に優れるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及びエアーバッグを提供する。
【解決手段】(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する重合度が50~2,000のオルガノポリシロキサン、(B)1分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)BET法による比表面積が50m2/g以上であるシリカ微粉末、(D)ヒドロシリル化反応用触媒、(E)エポキシ基、イソシアネート基、及び(メタ)アクリル基から選ばれる1種以上の官能基を含有する有機ケイ素化合物、及び(F)1分子中に6個以上のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物、を含有するものであることを特徴とするエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物であって、
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する重合度が50~2,000のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記組成物中に含まれるヒドロシリル基が、前記組成物中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モル当たり、1~10モルとなる量、
(C)BET法による比表面積が50m2/g以上であるシリカ微粉末:1~30質量部、
(D)ヒドロシリル化反応用触媒:前記(A)成分の配合質量に対して、触媒金属元素の質量換算で1~500ppm、
(E)エポキシ基、イソシアネート基、及び(メタ)アクリル基から選ばれる1種以上の官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部、及び
(F)1分子中に6個以上のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~6.0質量部、
を含有するものであることを特徴とするエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
前記(F)成分の1分子中に6個以上のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を持つ有機ケイ素化合物が、下記式(1)の平均構造で表される重量平均分子量が200~8,000のアルコキシシリケートであることを特徴とする請求項1に記載のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【化1】
(式中、Rは独立して水素原子、または炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、及び炭素数6~12の1価芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、nは3~100の整数である。)
【請求項3】
更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物から選ばれる1種以上の縮合触媒を、前記(A)成分100質量部に対して、0.05~5質量部含有するものであることを特徴とする請求項1に記載のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物から選ばれる1種以上の縮合触媒を、前記(A)成分100質量部に対して、0.05~5質量部含有するものであることを特徴とする請求項2に記載のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
更に、(H)成分として、パウダー状の三次元網状オルガノポリシロキサンレジンを、前記(A)成分100質量部に対して、0.1~100質量部含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
エアーバッグ用基布上に、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜を有するものであることを特徴とするエアーバッグ。
【請求項7】
エアーバッグ用基布上に、請求項5に記載のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜を有するものであることを特徴とするエアーバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及びエアーバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維表面にゴム被膜を形成させることを目的としたエアーバッグ用シリコーンゴム組成物が提案されている。シリコーンゴム被膜を有するエアーバッグは内圧保持性及び低燃焼速度性に優れるため、自動車等のエアーバッグとして好適に用いられている。
【0003】
このようなエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物としては、分子鎖両末端にヒドロシリル基を持つ架橋剤と、側鎖にヒドロシリル基を持つ架橋剤とを組み合わせたものが挙げられる(特許文献1)。このエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、内圧保持性に優れることを特徴とする。また、レジン状ポリシロキサンを含有し、シロキサン成分をシリカ、表面処理剤、水とともに事前混合してエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を製造する方法も知られている(特許文献2)。この組成物を繊維表面に被覆することで低燃焼速度性に優れるエアーバッグ用基布が得られる。さらに、T単位又はQ単位を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを架橋剤とするエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物も開示されている(特許文献3)。この組成物を塗布したコーティング基布は強度に優れることを特徴とする。そして、M、D、Q単位からなり、D単位にのみ架橋性官能基を含有するシリコーンレジンを難燃化材として配合したエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が開示されている(特許文献4)。この組成物を塗布したエアーバッグは、低燃焼速度性に優れることを特徴とする。
【0004】
近年、省スペース化や低重量化のために、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の低塗工量化が進んでおり、低塗工量でもエアーバッグ展開時に、インフレータガスの圧力でエアーバッグが破裂しないようなエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の開発が望まれている。インフレータガスの圧力でエアーバッグが破裂しないようにするためにはシリコーンコーティング基布の滑脱抵抗性が重要であると考えられているが、従来のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物に関する文献で滑脱抵抗性について言及しているものは少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-531695号公報
【特許文献2】特開2013-209517号公報
【特許文献3】特表2019-513907号公報
【特許文献4】国際公開第2018/168315号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、エアーバッグ用基布にコーティングし、硬化させた際に滑脱抵抗性に優れるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及びエアーバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物であって、
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する重合度が50~2,000のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記組成物中に含まれるヒドロシリル基が、前記組成物中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モル当たり、1~10モルとなる量、
(C)BET法による比表面積が50m2/g以上であるシリカ微粉末:1~30質量部、
(D)ヒドロシリル化反応用触媒:前記(A)成分の配合質量に対して、触媒金属元素の質量換算で1~500ppm、
(E)エポキシ基、イソシアネート基、及び(メタ)アクリル基から選ばれる1種以上の官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部、及び
(F)1分子中に6個以上のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~6.0質量部、
を含有するものであるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を提供する。
【0008】
このようなエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物であれば、これより製造したエアーバッグ用シリコーンコーティング基布は滑脱抵抗性に優れるものとなる。
【0009】
また、本発明では、前記(F)成分の1分子中に6個以上のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を持つ有機ケイ素化合物が、下記式(1)の平均構造で表される重量平均分子量が200~8,000のアルコキシシリケートであることが好ましい。
【化1】
(式中、Rは独立して水素原子、または炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、及び炭素数6~12の1価芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、nは3~100の整数である。)
【0010】
このようなエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物であれば、これにより作製したエアーバッグ用シリコーンコーティング基布は滑脱抵抗性により優れるものとなる。
【0011】
また、本発明では、更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物から選ばれる1種以上の縮合触媒を、前記(A)成分100質量部に対して、0.05~5質量部含有するものであることが好ましい。
【0012】
このようなエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物であれば、シリコーンゴム層のエアーバッグ用基布への接着性がより優れるものとなる。
【0013】
また、本発明では、更に、(H)成分として、パウダー状の三次元網状オルガノポリシロキサンレジンを、前記(A)成分100質量部に対して、0.1~100質量部含有するものであることが好ましい。
【0014】
このようなエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物であれば、これより作成したエアーバッグ用シリコーンコーティング基布は難燃性により優れるものとなる。
【0015】
また、本発明では、エアーバッグ用基布上に、上記に記載のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜を有するものであるエアーバッグエアーバッグを提供する。
【0016】
このようなエアーバッグであれば、滑脱抵抗性に優れるエアーバッグとなる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、エアーバッグ用基布にコーティングし、硬化することで滑脱抵抗性に優れるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及びエアーバッグを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述のように、エアーバッグ用基布にコーティングし、硬化させた際に滑脱抵抗性に優れるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及びエアーバッグの開発が求められていた。
【0019】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、1分子中に6個以上のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物を含有するエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物であれば、エアーバッグ用基布にコーティングし、硬化させた際に滑脱抵抗性に優れるものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
即ち、本発明は、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物であって、
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する重合度が50~2,000のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記組成物中に含まれるヒドロシリル基が、前記組成物中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モル当たり、1~10モルとなる量、
(C)BET法による比表面積が50m2/g以上であるシリカ微粉末:1~30質量部、
(D)ヒドロシリル化反応用触媒:前記(A)成分の配合質量に対して、触媒金属元素の質量換算で1~500ppm、
(E)エポキシ基、イソシアネート基、及び(メタ)アクリル基から選ばれる1種以上の官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部、及び
(F)1分子中に6個以上のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~6.0質量部、
を含有するものであるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物である。
【0021】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書中において、粘度は、25℃において、JIS K 7117-1:1999に記載の方法で回転粘度計により測定した値である。また、重量平均重合度は、下記条件で測定したトルエンを展開溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析によるポリスチレン換算の重量平均分子量(重量平均重合度)として求めた値である。
[測定条件]
展開溶媒:トルエン
流量:0.35mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:10μL(濃度0.5重量%のトルエン溶液)
【0022】
<エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物>
本発明のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する重合度が50~2,000のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記組成物中に含まれるヒドロシリル基が、前記組成物中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モル当たり、1~10モルとなる量、
(C)BET法による比表面積が50m2/g以上であるシリカ微粉末:1~30質量部、
(D)ヒドロシリル化反応用触媒:前記(A)成分の配合質量に対して、触媒金属元素の質量換算で1~500ppm、
(E)エポキシ基、イソシアネート基、及び(メタ)アクリル基から選ばれる1種以上の官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部、及び
(F)1分子中に6個以上のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~6.0質量部、
を含有してなるものであって、室温(25℃)で液状のものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0023】
[(A)成分]
(A)成分の直鎖状のオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上含有する、数平均重合度が50~2,000のオルガノポリシロキサン、即ち1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する重合度が50~2,000のオルガノポリシロキサンであり、本発明にかかるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物のベースポリマー(主剤)である。
【0024】
(A)成分の分子構造は、直鎖状であり主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンが好ましい。また、(A)成分の直鎖状であるオルガノポリシロキサンの分子中においてアルケニル基が結合したケイ素原子の位置は、分子鎖末端(即ち、トリオルガノシロキシ基)及び分子鎖途中(即ち、分子鎖非末端に位置する2官能性のジオルガノシロキサン単位)のどちらか一方でも両方でもよい。(A)成分として、特に好ましいものは、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。
【0025】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基としては、例えば、通常、炭素数2~8、好ましくは炭素数2~4のものが挙げられる。その具体例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、特にビニル基であることが好ましい。
【0026】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基数は、2個以上であることを特徴とし、2~100個が好ましく、2~50個がより好ましい。
【0027】
(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子に結合した1価の炭化水素基としては、例えば、通常、炭素数1~12、好ましくは炭素数1~10の1価の炭化水素基が挙げられる。1価の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、特に、メチル基であることが好ましい。
【0028】
(A)成分の数平均重合度は、50~2,000であり、好ましくは100~1,500であり、より好ましくは120~1,000である。数平均重合度が50よりも低いと、得られるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の機械的特性が悪くなることがあり、また数平均重合度が2,000より大きいと、得られるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の粘度が高くなり、コーティング作業性が悪化することがある。
【0029】
(A)成分の粘度は、25℃において、好ましくは50~200,000mPa・s、より好ましくは100~150,000mPa・s、さらに好ましくは400~100,000mPa・sである。(A)成分の粘度が50mPa・s以上であれば、得られるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の機械的特性が良好となり、200,000mPa・s以下であれば、得られるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の粘度が高くならず、コーティング作業性も好適となる。
【0030】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。
【0031】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
[(B)成分]
(B)成分のケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)を1分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、即ち1分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、主に(A)成分中のアルケニル基とヒドロシリル化付加反応し、架橋剤(硬化剤)として作用するものである。
(B)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状(樹脂状)構造等各種のものが挙げられるが、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上のケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)を有する必要があり、通常2~300個、好ましくは3~200個、より好ましくは3~100個のヒドロシリル基を有することが望ましく、25℃で液状のものが使用される。このようなヒドロシリル基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。
【0033】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示されるものを用いることができる。
【化2】
(式(2)中、R
1は独立して炭素数1~10の1価炭化水素基であり、aは0.7~2.1、bは0.001~1.0で、かつa+bが0.8~3.0を満足する正数である。)
【0034】
式(2)中、R1は独立して炭素数1~10の1価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等が挙げられる。R1としては、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基である。なお、R1としては、アルケニル基などの脂肪族不飽和炭化水素基を除く。また、aは0.7~2.1、bは0.001~1.0で、かつa+bが0.8~3.0を満足する正数であり、好ましくは、aは1.0~2.0、bは0.01~1.0で、かつa+bが1.5~2.5を満足する正数である。
【0035】
このような(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサンや、これらの各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換されたもの、式:R1
3SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R1
2HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R1
2HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R1HSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:R1SiO3/2で示されるシロキサン単位若しくは式:HSiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。
【0036】
(B)成分の配合量は、(A)成分を含む組成物中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モル(又は個)に対して、(B)成分を含む組成物中に含まれるヒドロシリル基が1~10モル(又は個)であり、好ましくは1.2~9モル(又は個)、より好ましくは1.5~8モル(又は個)となる量である。(A)成分を含む組成物中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モルに対して、(B)成分を含む組成物中に含まれるヒドロシリル基が1モル未満であると、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は十分に硬化せず、またこれが10モルを超えると、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物から得られるシリコーンゴム硬化物の耐熱性が極端に劣ることがある。
【0037】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
[(C)成分]
(C)成分のBET法による比表面積が50m2/g以上であるシリカ微粉末は、補強性充填剤として作用する。即ち、本発明にかかるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物から得られるシリコーンゴム硬化物に強度を付与するもので、シリカ微粉末を補強性充填剤として使用することにより、本発明に必要な強度を満足するコーティング膜を形成することが可能となる。かかるシリカ微粉末は、BET法による比表面積が50m2/g以上であり、好ましくは50~400m2/g、より好ましくは100~300m2/gであることができ、比表面積が50m2/g未満では、エアーバッグ用コーティング剤として満足するような機械的強度特性を付与することができない。
【0039】
このようなシリカ微粉末としては、比表面積が上記範囲内であることを条件として、従来からシリコーンゴム硬化物の補強性充填剤として使用されている公知のものでよく、例えば、煙霧質シリカ(ヒュームドシリカ)、沈降シリカ(湿式シリカ)などが挙げられる。
【0040】
上記シリカ微粉末は、例えば、クロロシラン、アルコキシシラン、オルガノシラザン等の(通常、加水分解性の)有機ケイ素化合物などの表面処理剤で、表面が疎水化処理されたシリカ微粉末を用いることができる。その場合、これらのシリカ微粉末は、予め粉体の状態で、表面処理剤により、直接表面疎水化処理されたものを用いてもよい。また、シリコーンオイル(例えば、上記(A)成分のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン)との混練時に表面処理剤を添加して、表面疎水化処理したものを用いてもよい。
【0041】
(C)成分の処理法としては、公知の技術により表面処理することができる。例えば、常圧で密閉された機械混練装置又は流動層に上記未処理のシリカ微粉末と表面処理剤とを入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において、室温(25℃)あるいは熱処理(加熱)下にて混合処理することができる。場合により、水又は触媒(加水分解促進剤等)を使用して表面処理を促進してもよい。混練後、乾燥することにより、表面処理シリカ微粉末を製造し得る。表面処理剤の配合量は、その表面処理剤の被覆面積から計算される量以上であればよい。
【0042】
表面処理剤として、具体的には、へキサメチルジシラザン等のシラザン類、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン及びクロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられ、これらで表面処理し、疎水性シリカ微粉末として用いることができる。表面処理剤としては、特にシランカップリング剤又はシラザン類が好ましい。
【0043】
なお、(C)成分のシリカ微粉末が、予め粉体の状態で、アルケニル基を含む表面処理剤により、直接表面疎水化処理されたものを用いる場合、(A)成分、及び(C)成分の表面処理剤を含む組成物中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モルに対して、(B)成分を含む組成物中に含まれるヒドロシリル基が1~10モル(又は個)、好ましくは1.2~8モル(又は個)、より好ましくは1.5~6モル(又は個)となる量とすることが好ましい。
これは、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モルに対して、ヒドロシリル基が1モル未満であると、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は十分に硬化せず、十分な接着力を発現しない場合があり、一方、ヒドロシリル基が10モルを超えると、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物から得られるシリコーンゴム硬化物の耐熱性が極端に悪化することがあるためである。
【0044】
(C)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、1~30質量部であり、好ましくは3~25質量部、より好ましくは5~20質量部である。配合量が1質量部未満であると、十分な強度を有するシリコーンゴム硬化物が得られず、配合量が30質量部を超えると、得られるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の粘度が高くなり、流動性が低下してコーティング作業が悪化することがある。
【0045】
(C)成分のシリカ微粉末は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0046】
[(D)成分]
(D)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、主に(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基と(B)成分中のヒドロシリル基との付加反応を促進するものである。このヒドロシリル化反応用触媒は、特に限定されず、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属;塩化白金酸;アルコール変性塩化白金酸;塩化白金酸と、オレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物等が挙げられ、好ましくは白金族金属化合物である。
【0047】
(D)成分の配合量は、(A)成分の配合質量に対して、触媒金属元素の質量換算で、1~500ppmであり、好ましくは5~100ppmである。この配合量が1ppm未満であると、付加反応が著しく遅くなったり、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が硬化しなかったりするため好ましくなく、配合量が500ppmを超えると、シリコーンゴム硬化物の耐熱性が低下する恐れがある。
【0048】
(D)成分の付加反応触媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
[(E)成分]
(E)成分は、エポキシ基、イソシアネート基、及び(メタ)アクリル基から選ばれる1種以上の官能基を含有する有機ケイ素化合物であり、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物のエアーバッグ用基布に対する接着性を発現・向上させるために添加するものである。
上記を満たす有機ケイ素化合物であれば、いかなる有機ケイ素化合物でも使用できるが、後述する(F)成分とは異なるものであり、1分子中にエポキシ基とケイ素原子に結合したアルコキシ基とをそれぞれ1個以上有する有機ケイ素化合物であることが好ましく、接着発現性の観点からは、エポキシ基を1個以上と、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を1個以上(例えば、トリアルコキシシリル基なら3個、オルガノジアルコキシシリル基なら2個となる等)有する有機ケイ素化合物、例えば、オルガノシラン、又はケイ素原子数が2~100個、好ましくは2~50個程度の環状若しくは直鎖状のオルガノシロキサンであって、エポキシ基を1個以上とケイ素原子に結合したアルコキシ基を2個以上有するものがより好ましい。
【0050】
エポキシ基は、例えば、グリシドキシプロピル基等のグリシドキシアルキル基;2,3-エポキシシクロヘキシルエチル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基等のエポキシ含有シクロヘキシルアルキル基等の形で、ケイ素原子に結合していることが好ましい。
ケイ素原子に結合したアルコキシ基は、ケイ素原子と結合して、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基等のアルキルジアルコキシシリル基等を形成していることが好ましい。
【0051】
(E)成分の有機ケイ素化合物としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシルエチル)トリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシルエチル)メチルジメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシルエチル)メチルジエトキシシラン、(2,3-エポキシシクロヘキシルエチル)トリエトキシシラン、(2,3-エポキシシクロヘキシルエチル)メチルジメトキシシラン、(2,3-エポキシシクロヘキシルエチル)メチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤(即ち、エポキシ官能性基含有オルガノアルコキシシラン)、又は3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、又は3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネート基含有のシランカップリング剤、又は下記の化学式で示されるエポキシ基を含む環状オルガノポリシロキサン、又はエポキシ基を含む直鎖状オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、これらの2種以上の混合物、あるいはこれらの1種若しくは2種以上の部分加水分解縮合物等が挙げられる。
【0052】
主なものを、以下に例示する。
【化3】
(式中、pは1~40の整数、qは0~40の整数、rは1~40の整数、好ましくは1~20の整数である。)
【0053】
(E)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1~10質量部であり、好ましくは0.15~5質量部である。配合量が0.1質量部未満であると、得られるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が十分な接着力を発現しないことがある。配合量が10質量部を超えると、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物のチキソ性が高くなり、流動性が低下し、コーティング作業性が悪化することがある。
【0054】
なお、(E)成分が、アルケニル基及び/又はヒドロシリル基を含む場合、(A)成分、(C)成分及び(E)成分を含む組成物中に含まれるケイ素原子(又は窒素原子)に結合したアルケニル基の合計1モル(又は個)に対する(B)成分及び(E)成分を含む組成物中に含まれるヒドロシリル基の合計が、1~10モル(又は個)であり、好ましくは1.2~8モル(又は個)、より好ましくは1.5~6モル(又は個)となる量である。
これは、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モルに対して、ヒドロシリル基が1モル未満であると、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は十分に硬化せず、十分な接着力を発現しない場合があり、一方、ヒドロシリル基が10モルを超えると、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物から得られるシリコーンゴム硬化物の耐熱性が極端に劣ることがあるためである。
【0055】
(E)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0056】
[(F)成分]
(F)成分は、1分子中に6個以上のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物であり、これを含有するエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物をエアーバッグ用基布にコーティングし、加熱硬化することで、基布の糸同士の密着を強化し、滑脱抵抗改善剤として作用する。
【0057】
(F)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1~6.0質量部であり、好ましくは0.12~5.8質量部である。配合量がこの範囲外であると、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物をエアーバッグ用基布にコーティングし、硬化させた際に滑脱抵抗性に劣るものとなる。
【0058】
(F)成分は1分子中に6個以上のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を持つ有機ケイ素化合物であり、前述の(E)成分と異なるもの、即ちエポキシ基、イソシアネート基、及び(メタ)アクリル基から選ばれる1種以上の官能基を含有しないものであれば、いかなる有機ケイ素化合物でも使用できるが、下記式(1)の平均構造で表され、重量平均重合度が200~8,000であるアルコキシシリケートであることが好ましい。
【化4】
(式中、Rは独立して水素原子、または炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、及び炭素数6~12の1価芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、nは3~100の整数である。)
【0059】
(F)成分が上記式(1)で表されるアルコキシシリケートである場合、重量平均分子量は200~8,000が好ましく、より好ましくは250~7,000であり、更に好ましくは300~6,000である。重量平均分子量が200以上であれば化合物の沸点が低くならず、加熱硬化時に有効成分が揮散せず、十分な滑脱抵抗性改善効果が得られ、重量平均分子量が8,000以下であればエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の粘度が高くならず、コーティング作業性が悪化しない。
【0060】
式(1)を満たす具体的な化合物としては以下のものが挙げられる。
【化5】
(式中、Rは独立して炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、及び炭素数6~12の1価芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、nは3~100の整数、mは6~100の整数である。)
【0061】
その他の(F)成分の例としては、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビス-(トリメトキシシリルプロピル)アリルイソシアヌレート、ビス-(トリエトキシシリルプロピル)アリルイソシアヌレート、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタンの他に、下記の化学式で示されるアルコキシシリル基を含む環状オルガノポリシロキサン、又はアルコキシシリル基を含む直鎖状オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、これらの2種以上の混合物、あるいはこれらの1種若しくは2種以上の部分加水分解縮合物等が挙げられる。
【化6】
(式中、eは2~40の整数、好ましくは2~20の整数、fは0~40の整数、gは0~40の整数である。)
【0062】
(F)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0063】
[その他の成分]
本発明にかかるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物には、前記(A)~(F)成分以外にも、目的に応じて、その他の任意の成分を配合することができる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのその他の成分は、各々、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0064】
[(G)成分]
(G)成分の縮合触媒は、有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物から選ばれる1種以上であり、接着促進のために、前記(E)成分中の接着性付与官能基の縮合触媒として作用するものである。
【0065】
(G)成分の具体例としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド等の有機チタン酸エステル、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラアセチルアセトネート等の有機チタンキレート化合物、等のチタン系縮合触媒(チタニウム化合物);ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド等の有機ジルコニウムエステル、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機ジルコニウムキレート化合物、等のジルコニウム系縮合触媒(ジルコニウム化合物);アルミニウムセカンダリーブトキシド等の有機アルミニウム酸エステル、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等の有機アルミニウムキレート化合物、等のアルミニウム系縮合触媒(アルミニウム化合物)が挙げられる。
【0066】
(G)成分の有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物は、必要に応じて配合される任意成分であり、その配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.1~2質量部である。配合量が0.05~5質量部の範囲内であると、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物から得られる硬化物はエアーバッグ用基布への接着性に優れたものとなる。
【0067】
(G)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0068】
[(H)成分]
(H)成分は、三次元網状(樹脂状)構造であることが特徴のオルガノポリシロキサンレジン、即ちパウダー状の三次元網状オルガノポリシロキサンレジンである。好適には、3官能性のR4SiO3/2単位及び4官能性のSiO4/2単位から選ばれる1種以上の分岐鎖状シロキサン単位から基本的に構成され、必要に応じて、単官能性のR4
3SiO1/2単位及び/又は2官能性のR4
2SiO2/2単位を任意に含有してもよく、難燃性向上剤として作用する。但し、このオルガノポリシロキサンレジンは分子中にアルケニル基を含んでもよいが、ケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)を含まない。また、このオルガノポリシロキサンレジンは三次元網状(樹脂状)構造を有し、25℃でパウダー状であるので、基本的に直鎖状構造を有し、25℃で液状である(A)成分とは明確に差別化されるものである。
【0069】
上記式中のR4は、独立して炭素数1~10、好ましくは1~8の1価炭化水素基であり、上記(A)成分中において例示したアルケニル基及び1価の有機基と同様のものが挙げられ、具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基等のアルケニル基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、特に、メチル基、ビニル基であることが好ましい。
【0070】
(H)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量は、ケイ素原子に結合した置換基全体に対して0~10モル%であることが好ましく、特に2~8モル%程度であることが好ましい。
【0071】
(H)成分のオルガノポリシロキサンレジンは、R4SiO3/2単位及び/又はSiO4/2単位を含有することが好ましく、その合計量は、(H)成分のオルガノポリシロキサンレジン中20~75モル%、特に30~65モル%とすることが好ましい。
ここで、(H)成分のオルガノポリシロキサンレジンには、上述したように、R4
3SiO1/2単位及び/又はR4
2SiO2/2単位を任意に含有してもよいが、その合計含有量は、(H)成分のオルガノポリシロキサンレジン中0~70モル%、特に0~50モル%とすることが好ましい。
(H)成分のオルガノポリシロキサンレジン中のR4SiO3/2単位及び/又はSiO4/2単位の合計量が20~75モル%の範囲内にあると、十分な難燃性改善効果が得られ、好適である。
【0072】
また、(H)成分のオルガノポリシロキサンレジンのトルエンを展開溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量は2,000~50,000の範囲が好ましく、4,000~20,000であることが特に好ましい。重量平均分子量が2,000~50,000の範囲内にあると、十分な難燃性改善効果が得られ、コーティング作業性が良好なエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の粘度となる。なお、この重量平均分子量は、上記(A)成分の重合度を求める際に用いたものと同じ条件のGPC分析によって求めた値である。
【0073】
(H)成分のオルガノポリシロキサンレジンの具体例としては、式:R’3SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R’2R”SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R’2SiO2/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R’3SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R’2R”SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R’2R”SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R’2SiO2/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R’R”SiO2/2で示されるシロキサン単位と式:R’SiO3/2で示されるシロキサン単位若しくは式:R”SiO3/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。
【0074】
上記式中のR’は、アルケニル基以外の互いに同一又は異種の非置換若しくは置換の炭素数1~10、好ましくは1~8の1価炭化水素基であり、その例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられるが、特にメチル基が好ましい。また、上記式中のR”は、アルケニル基であり、その例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基などが挙げられるが、ビニル基が特に好ましい。
【0075】
(H)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1~100質量部であり、1~90質量部であることが好ましく、5~80質量部であることが特に好ましい。0.1~100質量部の範囲内の配合量であると、十分な難燃性改善効果が得られ、費用対効果に優れる。
【0076】
なお、(H)成分がアルケニル基を含む場合、組成物中に含まれるヒドロシリル基が、組成物中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モル当たり、1~10モルとなる量である。例えば、(H)成分は、組成物中の(A)成分、(C)成分、(E)成分及び(H)成分中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モルに対する(B)成分及び(E)成分中に含まれるヒドロシリル基が、1~10モル(又は個)、好ましくは1.2~8モル(又は個)、より好ましくは1.5~6モル(又は個)となる量とすることができる。組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モルに対して、ヒドロシリル基の合計が1モル未満であると、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は十分に硬化せず、十分な接着力を発現しない場合があり、一方、ヒドロシリル基が10モルを超えると、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物から得られるシリコーンゴム硬化物の耐熱性が極端に劣ることがあるためである。
【0077】
このように、本発明では、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物中に含まれる各成分のアルケニル基の合計1モルに対するヒドロシリル基の合計のモル数が1~10モルとなるように各成分を配合する。
【0078】
(H)成分の三次元網状オルガノポリシロキサンレジンは、1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0079】
・反応制御剤
反応制御剤は、(D)成分のヒドロシリル化反応用触媒に対して、硬化抑制効果を有する化合物であれば、特に限定されず、公知のものを用いることができる。その具体例としては、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物;硫黄含有化合物;アセチレンアルコール類等のアセチレン系化合物;アルケニル基を2個以上含む化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体などが挙げられる。
【0080】
反応制御剤による硬化抑制効果の度合は、その反応制御剤の化学構造によって異なるため、反応制御剤の添加量は、使用する反応制御剤の各々について、最適な量に調整することが好ましい。最適な量の反応制御剤を添加することにより、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は室温での長期貯蔵安定性及び硬化性に優れたものとなる。
【0081】
・非補強性充填剤
(C)成分の表面処理シリカ微粉末以外の充填剤として、例えば、結晶性シリカ(例えば、BET法による比表面積が50m2/g未満の石英粉)、有機樹脂製中空フィラー、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子(いわゆるシリコーンレジンパウダー)、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、カーボンブラック、ケイ藻土、タルク、カオリナイト、ガラス繊維等の充填剤;これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面疎水化処理した充填剤;シリコーンゴムパウダー;シリコーンレジンパウダーなどが挙げられる。
【0082】
・その他の成分
その他にも、例えば、1分子中に1個のケイ素原子に結合した水素原子を含有し、他の官能性基を含有しないオルガノポリシロキサン、1分子中に1個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、他の官能性基を含有しないオルガノポリシロキサン、ケイ素原子に結合した水素原子もケイ素原子に結合したアルケニル基も他の官能性基も含有しない無官能性のオルガノポリシロキサン(いわゆるジメチルシリコーンオイル)、有機溶剤、クリープハードニング防止剤、可塑剤、チキソ性付与剤、顔料、染料、防かび剤などを配合することができる。
【0083】
<エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の調製>
上記(A)~(F)成分の他、(G)成分、(H)成分、更に必要に応じて配合されるその他の成分を均一に混合することにより、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製することができる。
こうして得られるエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、25℃で液状の組成物であり、25℃における粘度は、1~500Pa・sであることが好ましく、より好ましくは2~400Pa・sであり、更に好ましくは5~300Pa・sである。25℃において、上記の粘度範囲内であれば、エアーバッグ用基布に塗工する際に、塗工むらや硬化後の基布への接着力不足などが生じにくいため、好適に用いることができる。
【0084】
<エアーバッグ用基布>
一般に、シリコーンゴム層が形成されるエアーバッグ用基布(繊維布からなる基材)としては、公知のものが用いられ、その具体例としては、6,6-ナイロン、6-ナイロン、アラミド繊維などの各種ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの各種ポリエステル繊維などの各種合成繊維の織生地が挙げられる。
【0085】
<エアーバッグ>
本発明のエアーバッグは、エアーバッグ用基布上に、上記エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜を有するものである。
【0086】
<エアーバッグの製造方法>
上記エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を、エアーバッグ用基布(繊維布からなる基材)の片面または両面、特には片面のみに塗布した後、乾燥炉などで加熱硬化してシリコーンゴム層(硬化被膜)を形成できる。このようにして得たエアーバッグ用シリコーンゴムコーティング基布を用いて、エアーバッグが製造できる。
【0087】
ここで、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物をエアーバッグ用基布にコーティングする方法としては、常法を採用することができるが、ナイフコーターによるコーティングが好ましい。コーティング層の厚さ(又は表面塗布量)は、通常5~100g/m2、好ましくは8~90g/m2、より好ましくは10~80g/m2とすることができる。
【0088】
エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、公知の硬化条件下で公知の硬化方法により硬化させることができる。具体的には、例えば、100~200℃において、1~30分加熱することにより、該組成物を硬化させることができる。
【0089】
このようにして製造された片面または両面にシリコーンゴム層を有するエアーバッグ用基布(エアーバッグ用シリコーンゴムコーティング基布)をエアーバッグに加工する際は、シリコーンゴムでコーティングされた面を内面側として2枚の上記エアーバッグ用シリコーンゴムコーティング基布の外周部同士を接着剤で貼り合わせた後、その接着剤層を縫い合わせて作製する方法が挙げられる。また、予め袋織りして作製されたエアーバッグ用基布の外側両面に、上記のように、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を所定のコーティング量でコーティングし、所定の硬化条件下で硬化させる方法を採ってもよい。なお、ここで用いる接着剤には、公知のものを用いることができるが、シームシーラントと呼ばれるシリコーン系接着剤が接着力や接着耐久性などの面から好適である。
【実施例0090】
以下、調製例及び実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0091】
(A)成分として、次の成分を用いた。
(A-1):分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され数平均重合度が700、粘度が30,000mPa・sの直鎖状ジメチルポリシロキサン(ビニル基の数:2個)
(A-2):分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、数平均重合度が200、粘度が700mPa・sであり、主鎖を構成する2官能性ジオルガノシロキサン単位のうちビニルメチルシロキサン単位を5モル%、ジメチルシロキサン単位を95モル%含有する直鎖状ジメチル-ビニルメチルポリシロキサン(ビニル基の数:10個)
(A-3):分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され数平均重合度が540、粘度が10,000mP・sの直鎖状ジメチルポリシロキサン(ビニル基の数:2個)
(A-4):分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され数平均重合度が450、粘度が5,000mP・sの直鎖状ジメチルポリシロキサン(ビニル基の数:2個)
【0092】
(B)成分として、次の成分を用いた。
(B-1):分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され数平均重合度が64、粘度が45mPa・sである直鎖状ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(前記式(2)においてa=1.33,b=0.70,R1=CH3、ヒドロシリル基の数:45個)
(B-2):分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され数平均重合度が40、粘度が20mPa・sである直鎖状メチルハイドロジェンポリシロキサン(前記式(2)においてa=1.10,b=0.95,R1=CH3、ヒドロシリル基の数:38個)
【0093】
(C)成分として、次の成分を用いた。
(C):比表面積がBET法で300m2/gであるシリカ微粉末(商品名:Aerosil 300、日本アエロジル株式会社製)
【0094】
(D)成分として、次の成分を用いた。
(D):塩化白金酸/1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するジメチルポリシロキサン溶液
【0095】
(E)成分として、次の成分を用いた。
(E):γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0096】
(F)成分として、次の成分を用いた。
(F-1):重量平均分子量が530であるメチルシリケート(商品名:MKCシリケート MS-51、三菱ケミカル株式会社製)
(F-2):重量平均分子量が1,700であるメチルシリケート(商品名:MKCシリケート MS-56S、三菱ケミカル株式会社製)
(F-3):トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(商品名:KBM-9659、信越化学工業株式会社製)
(F-4):テトラエトキシシラン(東京化成工業株式会社製:比較用)
【0097】
(G)成分として、次の成分を用いた。
(G):ジルコニウムアセチルアセトネート(商品名:ZC-162、マツモトファインケミカル株式会社製)
【0098】
(H)成分として、次の成分を用いた。
(H):(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)(CH2=CH)SiO2/2単位とSiO4/2単位からなり、重量平均分子量が5,500であり、Q単位含有率が56モル%であり、アルケニル基含有量はケイ素原子が結合した置換基全体に対して6.7モル%であるパウダー状の三次元網状オルガノポリシロキサンレジン
【0099】
反応制御材として、次の成分を用いた。
(反応制御材):1-エチニルシクロヘキサノール
【0100】
[調製例1]
ベースオイル(A―1)60質量部、ヘキサメチルジシラザン8質量部、水2質量部、シリカ微粉末(C)40質量部をニーダー中に投入し、室温にて1時間混合した。その後、ヘキサメチルジシラザン8質量部を追加し、更に室温にて1時間混合した。その後、温度を150℃に昇温し、引き続き2時間混合した。この後、ベースオイル(A―1)25質量部、ベースオイル(A―2)5質量部を添加して均一になるまで混合し、ベースコンパウンド(1)を得た。
【0101】
[実施例・比較例]
表1の配合比でそれぞれの成分を室温にてミキサーで30分間混合し、エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製した。
【0102】
それぞれの組成物についてエアーバッグ用66ナイロン基布(経糸密度46本/インチ、緯糸密度46本/インチ)に表面塗布量が25~30g/m2になるようにナイフコーターでコーティングした後に、200℃の乾燥機で1分間の加熱硬化を行い、シリコーンゴム硬化物でコーティングされたエアーバッグ基布(シリコーンゴム被覆ナイロン基布)を作製した。上記のシリコーンゴム被覆ナイロン基布を幅50mm×長さ300mmの大きさでカットし、ASTM D6479-15:2020に記載の方法で滑脱抵抗を測定した(使用装置:オートグラフAGS-X;島津製作所株式会社製)。N=5で測定した結果の中央値を表1に示す。
【0103】
【0104】
表1から分かるように、本発明のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を用いた実施例1~6は、滑脱抵抗の値が大きく、滑脱抵抗性に優れるものとなった。
【0105】
一方、本発明のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を用いなかった比較例1~4は、実施例と比べ滑脱抵抗性に劣るものとなった。
【0106】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物であって、
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する重合度が50~2,000のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記組成物中に含まれるヒドロシリル基が、前記組成物中に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モル当たり、1~10モルとなる量、
(C)BET法による比表面積が50m
2/g以上であるシリカ微粉末:1~30質量部、
(D)ヒドロシリル化反応用触媒:前記(A)成分の配合質量に対して、触媒金属元素の質量換算で1~500ppm、
(E)エポキシ基、イソシアネート基、及び(メタ)アクリル基から選ばれる1種以上の官能基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~10質量部、及び
(F)1分子中に6個以上のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物:0.1~6.0質量部、
を含有するものであることを特徴とするエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
[2]:前記(F)成分の1分子中に6個以上のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を持つ有機ケイ素化合物が、下記式(1)の平均構造で表される重量平均分子量が200~8,000のアルコキシシリケートであることを特徴とする上記[1]のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【化7】
(式中、Rは独立して水素原子、または炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、及び炭素数6~12の1価芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、nは3~100の整数である。)
[3]:更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物から選ばれる1種以上の縮合触媒を、前記(A)成分100質量部に対して、0.05~5質量部含有するものであることを特徴とする上記[1]又は上記[2]のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
[4]:更に、(H)成分として、パウダー状の三次元網状オルガノポリシロキサンレジンを、前記(A)成分100質量部に対して、0.1~100質量部含有するものであることを特徴とする上記[1]、上記[2]又は上記[3]のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
[5]:エアーバッグ用基布上に、上記[1]、上記[2]、上記[3]又は上記[4]のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜を有するものであることを特徴とするエアーバッグ。
【0107】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。