IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

特開2023-152755硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置。
<>
  • 特開-硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置。 図1A
  • 特開-硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置。 図1B
  • 特開-硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置。 図1C
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152755
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置。
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/00 20060101AFI20231005BHJP
   C08G 61/10 20060101ALI20231005BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20231005BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231005BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08G73/00
C08G61/10
C08J5/24
H05K1/03 610T
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029512
(22)【出願日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2022061372
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 和賢
(72)【発明者】
【氏名】下野 智弘
【テーマコード(参考)】
4F072
4J032
4J043
4M109
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB03
4F072AB06
4F072AB09
4F072AB28
4F072AB29
4F072AD03
4F072AE02
4F072AG03
4F072AH02
4F072AH21
4F072AL13
4J032CA04
4J032CB04
4J032CC01
4J032CE03
4J032CE05
4J032CF03
4J032CG07
4J032CG08
4J043PA15
4J043QC23
4J043RA31
4J043SA13
4J043TA73
4J043UA112
4J043WA13
4J043ZA43
4J043ZB11
4J043ZB50
4J043ZB59
4M109AA01
4M109CA21
4M109EA07
4M109EB12
4M109EB13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は、硬化時において、低誘電正接及び低吸湿率を示す硬化性組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示は、2以上の直鎖又は分岐状のアルキレン基が結合された単環式又は縮合多環式芳香族基を含有するポリマレイミド化合物(A)と、シアネート化合物(B)と、を含有することを特徴とする硬化性組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の直鎖又は分岐状のアルキレン基が結合された単環式又は縮合多環式芳香族基を含有するポリマレイミド化合物(A)と、
シアネート化合物(B)と、を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記ポリマレイミド化合物(A)は、以下の一般式(1)で表される構造単位を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【化1】
(上記一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して、アルキル基を表し、
はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、R及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、
は、以下の一般式(x):
【化2】
(一般式(x)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、tは0~4の整数を表す。)
で表される置換基を表し、rは、Xが結合されたベンゼン環1つ当たりのXの置換数の平均値であり、0~4の数を表し、pは1~3の整数を表し、qは0~4の整数を表し、kは1~100の整数を表す。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項4】
補強基材、及び、前記補強基材に含浸した請求項1又は2に記載の硬化性組成物の半硬化物を有するプリプレグ。
【請求項5】
請求項4に記載のプリプレグ、及び、銅箔を積層した積層体を有する、回路基板。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物を含有するビルドアップフィルム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物を含有する半導体封止材。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体封止材の硬化物を含む半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ系樹脂又はBT(ビスマレイミド-トリアジン)系樹脂などの熱硬化性樹脂をガラスクロスに含浸、加熱乾燥して得られるプリプレグ、該プリプレグを加熱硬化した積層板、及び当該積層板と該プリプレグとを組み合わせて加熱硬化した多層板が、電子機器用の回路基板材料として広く使用されている。中でも、半導体を実装するためのインターポーザの役割を果たすプリント配線板の一種であるパッケージ基板は、薄型化が進み、実装時のパッケージ基板の反りが問題となることから、実装時のパッケージ基板の反りを抑制するため、高耐熱性を発現する材料が求められている。
また、近年、信号の高速化及び高周波数化が進み、これらの環境下で十分に低い誘電率を維持し、かつ十分に低い誘電正接を発現する硬化物を形成しうる熱硬化性組成物の提供が望まれている。特に最近では各種電材用途、とりわけ先端材料用途においては、耐熱性、誘電特性に代表される性能の一層の向上、及びこれらを兼備する材料、組成物が求められている。これらの要求に対し、耐熱性と低誘電率・低誘電正接を兼備する材料としてマレイミド樹脂が注目されている。しかしながら、従来のマレイミド樹脂は高耐熱性を示すものの、吸湿性が高く、誘電特性(誘電率・誘電正接値)が先端材料用途に要求されるレベルには達していない。
例えば、特許文献1には、耐熱性を損なわず、積層板としての誘電率が4.0以下であるプリント基板用材料として、インダン環を有するポリマレイミド樹脂とトリアリルシアヌレート又は芳香族ジアミンとを含有する熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-247202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の熱硬化性樹脂組成物は、誘電正接値を検討していないため、誘電率及び誘電正接値が先端材料用途に要求されるレベルには達しておらず、高温時の低吸湿性と、低誘電率及び低誘電正接性とを両立していない。
そこで、本開示が解決しようとする技術的課題は、硬化時において、吸湿性が小さく、かつ低誘電正接及び低誘電率を示す硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、2以上の直鎖又は分岐状のアルキレン基が結合された単環式又は縮合多環式芳香族環を含有するポリマレイミド化合物(A)と、シアネート化合物(B)と、を含有する硬化性組成物を用いることにより、硬化時における吸湿性と、低誘電正接及び低誘電率とを高次に両立することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、硬化時における低吸湿性、低誘電率及び低誘電正接性を高次に両立することができる硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供しうる。このような硬化性組成物は、電子部品封止材料用途などにおいて、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Aは、本実施例のポリマレイミド化合物(A-1)のGPC測定結果を示す。
図1B図1Bは、本実施例のポリマレイミド化合物(A-1)のFD-MS測定結果を示す。
図1C図1Cは、本実施例のポリマレイミド化合物(A-1)の13C-NMR測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態(「本実施形態」と称する。)について詳細に説明するが、本開示は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0009】
[用語]
本明細書における「反応原料」とは、化合又は分解といった化学反応により目的の化合物を得るために用いられ、目的の化合物の化学構造を部分的に構成する化合物をいい、溶媒、触媒といった、化学反応の助剤の役割を担う物質は除外される。本明細書では特に、「反応原料」とは、例えば目的物をポリマレイミド化合物(A)とした場合、当該ポリマレイミド化合物(A)又はその前駆体化合物(例、前記芳香族アミン化合物(a)同士が前記芳香族ジビニル化合物(b1)を介して連結された中間体アミン化合物(c))を化学反応により得るための前駆体をいう。
本明細書における「芳香族基」は、炭素原子数3~30の芳香族環を有することが好ましく、炭素原子数4~26の芳香族環を有することがより好ましい。そして、本明細書における「芳香族基」は、当該芳香族基中の芳香族環の水素原子が、置換基、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。また、「芳香族基」は、複素芳香族を含み、「芳香族基」中の-CH-又は-CH=が互いに隣接しないよう、-O-、-S-又は-N=に置換されてもよい。
当該芳香族環の種類は、例えば、単環式芳香族環、縮合多環式芳香族環が挙げられる。前記単環式芳香族環としては、例えば、ベンゼン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等が挙げられる。前記縮合多環式芳香族環としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、アクリジン等が挙げられる。また、当該芳香族基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルケニル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数1~12のアリール基、炭素原子数1~12のアラルキル基又はハロゲン原子に置換されてもよい。
なお、一価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を1つ除いた基をいい、二価の芳香族基とは、「芳香族基」中の任意の水素原子を2つ除いた基をいい、三価~六価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を3~6つ除いた基をいう。
本明細書における「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。当該アラルキル基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルケニル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、「アラルキレン基」は、前記「アラルキル基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アルキル基」は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、(n-)ヘプチル基、(n-)オクチル基、(n-)ノニル基、(n-)デシル基、(n-)ウンデシル基、(n-)ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基又はシクロノニル基が挙げられる。
本明細書における「シクロアルキル基」は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、メチルシクロブチル基、ノルボルニル基又はアダマンチル基等が挙げられる。
本明細書における「アルキルチオ基」は、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、オクチルチオ基又は2-エチルヘキシルチオ基が挙げられる。
本明細書における「アルケニル基」は、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ビニル基、アリル基又はイソプロペニル基等が挙げられる。
本明細書における「アルコキシ基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基又はノニルオキシ基等が挙げられる。
本明細書における「アリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントリル基、アズレニル基、テトラリニル基等が挙げられる。また、当該「アリール基」は、当該アリール基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数1~10のアルケニル基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、「アリーレン基」は、前記「アリール基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アリールオキシ基」は、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アンスリルオキシ基、フェナントリルオキシ基又はピレニルオキシ基等が挙げられる。
本明細書における「アリールチオ基」は、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アンスリルチオ基、フェナントリルチオ基又はピレニルチオ基等のアリールチオ基が挙げられる。
本明細書における「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等が挙げられる。
本明細書における「構造単位」とは、反応又は重合時に形成される化学構造の(繰り返し)単位をいい、換言すると、反応又は重合よりに形成される生成化合物において、当該反応又は重合に関与する化学結合の構造以外の部分構造をいい、いわゆる残基をいう。
【0010】
[硬化性組成物]
本実施形態の硬化性組成物は、2以上の直鎖又は分岐状のアルキレン基が結合された単環式又は縮合多環式芳香族環を含有するポリマレイミド化合物(A)(以下、単にポリマレイミド化合物(A)と称する。)と、シアネート化合物(B)と、を含有する。
化学構造中に極性官能基の割合が少ないポリマレイミド化合物(A)を有するため、組成物全体として優れた低誘電特性及び低吸湿性を両立しえる。
【0011】
本実施形態の硬化性組成物において、ポリマレイミド化合物(A)、及び、シアネート化合物(B)の成分の配合比(質量部)としては、ポリマレイミド化合物(A):シアネート化合物(B)、90:10~10:90であることが好ましく、より好ましくは、80:20~20:80であり、更に好ましくは、75:25~25:75である。前記範囲に配合比を調製することにより、優れた、低吸湿性、低誘電率及び低誘電正接を発現することができるため、好ましい。
【0012】
本実施形態の硬化性組成物は、シアネート化合物(B)以外の硬化剤(C)を本発明の硬化を損なわない範囲で含有してもよい。また、本実施形態の硬化性組成物は、ポリマレイミド化合物(A)及びシアネート化合物(B)以外の他の樹脂(D)、硬化促進剤又は添加剤を添加してもよい。当該添加剤としては、難燃剤、無機充填材、シランカップリング剤、離型剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、顔料及び乳化剤等が挙げられる。
【0013】
以下、本実施形態の硬化性組成物の必須成分である芳香族環を含有するアルキレン基を有するポリマレイミド化合物(A)及びシアネート化合物(B)について詳説した後、任意成分である、シアネート化合物(B)以外の硬化剤(C)、他の樹脂(D)、硬化促進剤及び添加剤について説明する。
【0014】
(ポリマレイミド化合物(A))
本実施形態にかかるポリマレイミド化合物(A)は、2以上の直鎖又は分岐状のアルキレン基が結合された単環式又は縮合多環式芳香族環及び2以上のマレイミド基を有する化合物である。
前記2以上の直鎖又は分岐状のアルキレン基が結合された単環式又は縮合多環式芳香族環とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~12のアルキレン基が2以上存在し、かつ前記アルキレン基の一方の結合手が単環式又は縮合多環式芳香族環に2以上結合した二価以上の基をいう。したがって、単環式又は縮合多環式芳香族環に結合した直鎖又は分岐鎖のアルキレン基の数が、前記芳香族環を含有するアルキレン基の価数と一致する。本実施形態における2以上の直鎖又は分岐状のアルキレン基が結合された単環式又は縮合多環式芳香族環としては、2価~4価の基であることが好ましく、2価~3価の基であることがより好ましい。
本実施形態における2以上の直鎖又は分岐状のアルキレン基が結合された単環式又は縮合多環式芳香族環としては、以下の一般式(I)で表される基であることが好ましい。
【0015】
【化1】
(上記一般式(I)中、Arは、(2+h)価の芳香族基を表し、L、L及びLはそれぞれ独立して、炭素原子数1~12のアルキレン基を表し、hは0以上2以下の整数を表し、*は他の原子との結合を表す。)
なお、上記一般式(I)において、hが0の場合は一般式(I)で表される基は2価であり、hが2の場合は一般式(I)で表される基は4価である。
前記マレイミド基とは、以下の一般式(II)で表される基であることが好ましい。
【0016】
【化2】
(上記一般式(II)中、Arは芳香族基を表し、破線は不在であるか、あるいは単結合を表し、*は他の原子との結合を表す。)
なお、一般式(II)中、破線は、不在であるか、あるいは単結合を表す。前記破線が不在である場合、上記一般式(II)のマレイミド基は一価になりうる。一方、前記破線が単結合である場合、上記一般式(II)のマレイミド基は二価になりうる。
本実施形態の好適なポリマレイミド化合物(A)は、以下の一般式(1)で表される構造単位を有する化合物である、あるいはアルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a)(以下、芳香族アミン化合物(a)とも称する。)と、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(b1)(以下、芳香族ジビニル化合物(b1)とも称する。)と、無水マレイン酸とを反応原料(1)とする化合物である。
【0017】
【化3】
(上記一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して、アルキル基を表し、
はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、R及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、
は、以下の一般式(x):
【0018】
【化4】
(一般式(x)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、tは0~4の整数を表す。)
で表される置換基を表し、rは、Xが結合されたベンゼン環1つ当たりのXの置換数の平均値であり、0~4の数を表し、pは1~3の整数を表し、qは0~4の整数を表し、kは1~100の整数を表す。)
これにより、硬化時において、低吸湿性及び低誘電正接性をより高次に両立することができる。
【0019】
<ポリマレイミド化合物(A)の好ましい形態>
本実施形態のポリマレイミド化合物(A)は、上記一般式(1)で表される構造単位を有することが好ましい。
また、上記一般式(1)において、pが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。qが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。tが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
【0020】
上記一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基を表すことがより好ましい。また、pが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。一般式(1)中の好ましいRとしては、メチル基、エチル基又はn-プロピル基である。なお、一般式(1)中のRが結合したベンゼン環は、芳香族アミン化合物(a)のベンゼン環でありうる。
上記一般式(1)中、pは1又は2を表すことが好ましい。なお、一般式(1)中のRが結合されたベンゼン環の2位、3位、4位、5位又は6位の少なくとも1つにRが結合されていることが好ましい。
【0021】
上記一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表すことが好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基を表すことがさらに好ましい。また、qが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。一般式(1)中の好ましいRとしては、メチル基、エチル基又はn-プロピル基である。なお、一般式(1)中のRが結合したベンゼン環は、芳香族ジビニル化合物(b1)のベンゼン環でありうる。また、上記一般式(1)中、qは0、1又は2を表すことが好ましい。
【0022】
上記一般式(1)中、R及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、R及びRの一方が水素原子、他方がメチル基である。これにより、ポリマレイミド化合物(A)自体が有する不飽和結合の反応性を高い水準に維持することができる。上記一般式(1)中のR、R、R及びRにおいて、アルキル基の占める割合が多くなるとその立体的障害により、ポリマレイミド化合物(A)自体が有する不飽和結合の反応性が低下しうる傾向が見受けられる。そのため、R、R、R及びRが全てアルキル基であると、ポリマレイミド化合物(A)自体が有する不飽和結合の反応性が低下し、効率よく硬化物を形成できない。
【0023】
上記一般式(1)中、Xは上記の一般式(x)で表され、かつ当該一般式(x)において、Rは水素原子、Rはメチル基を表すことが好ましい。また、上記一般式(x)中、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表すことが好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数6~10のアリール基を表すことがより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数6~10のアリール基を表すことがさらに好ましい。また、上記一般式(x)中、tは0~4の整数を表すことが好ましく、0~3の整数を表すことがより好ましい。なお、tが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
【0024】
上記一般式(1)中、rは、Xが結合されたベンゼン環1つ当たりのXの置換数の平均値を意味し、0~4の範囲であることが好ましく、0~3の範囲であることがさらに好ましい。
上記一般式(1)中、kは繰り返し単位数を表し、1~100の整数であることが好ましく、1~90の整数であることがより好ましく、1~80の整数であることがさらに好ましい。
【0025】
<ポリマレイミド化合物(A)の他の好ましい形態>
本実施形態のポリマレイミド化合物(A)の他の好ましい形態としては、アルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a)と、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(b1)と、無水マレイン酸とを反応原料(1)とする化合物でありうる。この際、本実施形態において、エテニル基を1つ有する芳香族モノビニル化合物(b2)(以下、芳香族モノビニル化合物(b2)とも称する。)をさらに前記反応原料(1)に含有されてもよい。また、本実施形態のポリマレイミド化合物(A)は、アルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a)同士がエテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(b1)を介して架橋された中間体アミン化合物(c)と、無水マレイン酸とを反応原料(3)とするポリマレイミド化合物(A)であることが好ましい。さらには、前記中間体アミン化合物(c)は、アルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a)と、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(b1)と、必要により添加されるエテニル基を1つ有する芳香族モノビニル化合物(b2)とを反応原料(2)とする化合物であることが好ましい。
換言すると、本実施形態における中間体アミン化合物(c)は、アミノ基(アミノ基の水素原子がさらに炭素原子数1~6のアルキル基で置換された置換アミノ基も含む。)が結合された芳香環及び前記芳香環にアルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a)の構造単位と、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(b1)の構造単位とが化学結合により連結され、かつ必要により芳香族モノビニル化合物(b2)の構造単位が前記芳香族アミン化合物(a)の構造単位中の前記芳香環に化学結合された構造を有することが好ましい。そして、本実施形態におけるポリマレイミド化合物(A)は、前記中間体アミン化合物(c)の芳香環に結合したアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)がN-置換マレイミド環に置換された構造を有する。
したがって、本実施形態における「ポリマレイミド化合物(A)」と、当該「ポリマレイミド化合物(A)」の前駆体である「中間体アミン化合物(c)」とは、芳香環に結合したアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)がN-置換マレイミド環に置き換わっている点が異なる重合体化合物である。
なお、上記芳香族アミン化合物(a)の構造単位とは、芳香族アミン化合物(a)の芳香環から2つの水素原子を取り除いた基をいう。例えば、芳香族アミン化合物(a)が後述の一般式(a)で表される場合、一般式(a)のベンゼン環から2つの水素原子を取り除いた基を芳香族アミン化合物(a)の構造単位という。また、上記芳香族ジビニル化合物(b1)の構造単位とは、芳香族ジビニル化合物(b1)の2つのエテニル基の不飽和結合が開裂した基をいう。
本実施形態において、特定の芳香環構造を有する芳香族アミン化合物(a)を反応原料としていることから、後述の芳香族ジビニル化合物(b1)との反応部位を制御しやすくなるため、均一な化学構造又は鎖長のポリマレイミド化合物(A)が得られやすくなり、その結果、硬化時における低吸湿性及び低誘電正接性を示すポリマレイミド化合物(A)を提供しうる。
【0026】
以下、ポリマレイミド化合物(A)の反応原料(1)の構成成分である、アルキル基を1以上3以下有する芳香族アミン化合物(a)、エテニル基を2つ有する芳香族ジビニル化合物(b1)、任意成分でありうるエテニル基を1つ有する芳香族モノビニル化合物(b2)及び無水マレイン酸について説明した後、ポリマレイミド化合物(A)の別の好ましい形態及びポリマレイミド化合物(A)の製造方法について説明する。
【0027】
<<芳香族アミン化合物(a)>>
本実施形態における芳香族アミン化合物(a)は、アミノ基(-NH又は置換アミノ基)が結合された芳香環を有し、かつ前記芳香環にはアルキル基が1以上3以下結合されている。そのため、芳香族アミン化合物(a)はアミン系化合物でありうる。また、芳香族アミン化合物(a)の中心構造を形成する芳香環は、単環式であることが好ましく、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を含む。芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環であることが好ましい。芳香族複素環としては、例えば、ピラン環又はピリジン環などのヘテロ六員環が挙げられる。また、本実施形態における芳香族アミン化合物(a)は、置換アミノ基を含まない-NHが結合された芳香環を有し、かつ前記芳香環にはアルキル基が1以上3以下結合されていることがより好ましい。
【0028】
本実施形態の芳香族アミン化合物(a)において、当該芳香族アミン化合物(a)の芳香環の1以上3以下の水素原子に置換されるアルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が挙げられ、炭素原子数1~6のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましい。前記アルキル基は、直鎖型、分岐型又は環状型のいずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。前記アルキル基の分子量が小さくなるほど、本発明が奏する効果(低寸法変化率)が一層顕著なものとなる。また、前記アルキル基の分子量が高くなるほど、本発明が奏する効果(低吸水)が一層顕著なものとなる。
【0029】
芳香族アミン化合物(a)におけるアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)を有する芳香環に結合されるアルキル基の数の上限は、前記芳香環がアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)を有し、かつ2本の結合手が重合に用いられる観点から、無置換状態の前記芳香環における置換可能な環構成原子の数から3を引いた数であればよい。例えば、前記芳香環がベンゼン環である場合、前記アルキル基の数は、3以下である。
また、芳香族アミン化合物(a)の芳香環に置換されるアルキル基の数を2以上にすることにより、後述の芳香族ジビニル化合物(b1)と反応部位を制御しやすくなるため、均一な化学構造又は鎖長のポリマレイミド化合物(A)が得られやすくなる。その結果、ポリマレイミド化合物(A)の硬化物において、低吸湿性及び優れた高周波電気特性を発揮しやすくなる。
【0030】
本実施形態における芳香族アミン化合物(a)の芳香環がベンゼン環である場合を一例として、芳香族アミン化合物(a)の好ましい形態について説明する。
本実施形態において、芳香族アミン化合物(a)を構成するベンゼン環中の炭素原子のうち、最も大きいHOMOの電子密度(ヒュッケル係数)を有する炭素原子が1以上無置換である(又は水素原子に置換されている)ことが好ましい。
これにより、後述の芳香族ジビニル化合物(b1)から形成されるカチオノイド試剤によるArS反応及び分子設計を制御しやすくなる。より詳細に説明すると、芳香族アミン化合物(a)を構成するベンゼン環中の炭素原子のうち、最も大きいHOMOの電子密度(ヒュッケル係数)を有する炭素原子が無置換であると、当該最も大きいHOMOの電子密度を有する炭素原子に対して、カチオノイド試剤である芳香族ジビニル化合物(b1)のカルボカチオンが反応しやすい。そのため、ベンゼン環の炭素原子に結合するアルキル基の数及び位置等を制御することにより、芳香族ジビニル化合物(b1)との結合部位又は結合数等を調整できる。そのため、得られるポリマレイミド化合物(A)の化学構造又は分子鎖長を設計しやすくなると推測している。
例えば、芳香族アミン化合物(a)が1つのベンゼン環と1つのアミノ基とを有するアニリン骨格を有する場合、当該アニリン核の2位,4位及び6位のうち少なくとも1つの炭素原子が水素原子に置換されていることが好ましい。これにより、アニリン核の電子密度の高いオルト位及びパラ位である2位,4位及び6位のうち少なくとも1つの炭素原子に対して、後述の芳香族ジビニル化合物(b1)から形成されるカチオノイド試剤が攻撃しやすくなる。特に、特定の位置にアルキル基が置換されたアニリン核を有する芳香族アミン化合物(a)を使用すると、芳香族ジビニル化合物(b1)との結合部位を概ね制御できるため、均一な化学構造又は鎖長のポリマレイミド化合物(A)が得られやすくなる。例えば、芳香族アミン化合物(a)として2,6-ジアルキルアミンを使用すると、4位に芳香族ジビニル化合物(b1)と結合したポリマレイミド化合物(A)を多く得られると考えられる。
【0031】
本実施形態の芳香族アミン化合物(a)の具体例としては、例えば、ジメチルアニリン(2,3-キシリジン、2,4-キシリジン、2,6-キシリジン、3,4-キシリジン又は3,5-キシリジン)、ジエチルアニリン(2,3-ジエチルアニリン、2,4-ジエチルアニリン、2,6-ジエチルアニリン、3,4-ジエチルアニリン若しくは3,5-ジエチルアニリン)、ジイソプロピルアニリン(2,3-ジイソプロピルアニリン、2,4-ジイソプロピルアニリン、2,6-ジイソプロピルアニリン、3,4-ジイソプロピルアニリン若しくは3,5-ジイソプロピルアニリン)、エチルメチルアニリン(例えば、2,3位、2,4位、2,6位、3,4位若しくは3,5位のいずれか一方がメチル基であり、他方がエチル基であるエチルメチルアニリン)、シクロブチルアニリン、シクロペンチルアニリン、シクロヘキシルアニリン、o,m,若しくはp-トルイジン、o,m,若しくはp-エチルアニリン、o,m,若しくはp-イソプロピルアニリン、o,m,若しくはp-プロピルアニリン、o,m,若しくはp-ブチルアニリン、メチルイソプロピルアニリン(例えば、2,3位、2,4位、2,6位、3,4位若しくは3,5位のいずれか一方がメチル基であり、他方がイソプロピル基であるメチルイソプロピルアニリン)、あるいはエチルブチルアニリン(例えば、2,3位、2,4位、2,6位、3,4位若しくは3,5位のいずれか一方がエチル基であり、他方がブチル基であるエチルブチルアニリン)等を用いることができる。また前記ブチルは、n-ブチル,tert-ブチル及びsec-ブチルを含む。なお、本実施形態における芳香族アミン化合物(a)は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
例えば、N-フェニルマレイミドのように、無置換のベンゼン環にマレイミド基が直接結合する化学構造の場合、ベンゼン環とマレイミドの5員環が、同一平面上に並んだ状態が安定なため、スタッキングしやすくなり、高い結晶性が発現してしまう。そのため、溶剤溶解性が劣る原因となる。これに対して、本開示の場合、例えば、2,6-ジメチルアニリンのように、ベンゼン環に対する置換基として、アルキル基(例えば、メチル基)を有する場合、メチル基の立体障害からベンゼン環とマレイミドの5員環とがねじれた配座をとり、スタッキングしにくくなることから結晶性が低下し、溶剤溶解性が向上し、好ましい態様となる。但し、立体障害が大きすぎると、マレイミドの合成時における反応性を阻害する場合も懸念されるため、例えば、炭素原子数1~6のアルキル基を有する芳香族アミン化合物(a)を使用することが好ましい。
【0033】
本実施形態における反応原料(1)の必須である芳香族アミン化合物(a)は、例えば、下記一般式(a)で表すことができる。
【0034】
【化5】
(上記一般式(a)中、R1aはアルキル基を表し、pは、1~3の整数を表す。複数存在するR1aは同一であっても、あるいは異なっていてもよい。)
【0035】
上記一般式(a)中、アルキル基は、炭素原子数1~6のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基であることがより好ましい。当該炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~3のアルキル基の例示は、上記と同様である。
上記一般式(a)中、pは、1又は2であることが好ましい。なお、R1aが複数存在する場合、互いに同一のアルキル基であっても、あるいは異なるアルキル基であってもよい。
なお、本実施形態において、上記一般式(a)で表される芳香族アミン化合物(a)は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
<<芳香族ジビニル化合物(b1)>>
本実施形態における芳香族ジビニル化合物(b1)は、芳香環上の置換基として2つのエテニル基(CH=CH-)(ビニル基とも称する。)を有し、前記芳香族アミン化合物(a)と反応できれば、特に制限なく使用できる。
また、本実施形態において、芳香族ジビニル化合物(b1)と芳香族モノビニル化合物(b2)との混合物を反応原料(1)に含むことが好ましい。
芳香族ジビニル化合物(b1)としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、及びこれらの芳香環上に炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基等の置換基が1以上置換した各種の化合物等が挙げられる。当該置換基の好ましい形態としては、上記一般式(1)中のRと同様である。また、前記アルキル基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよい。中でも、高耐熱性の効果を示す観点から、前記アルキル基又はアルコキシ基の炭素原子数は、1~4であることが好ましい。前記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0037】
本開示のポリマレイミド化合物(A)の反応原料(1)である芳香族ジビニル化合物(b1)は、下記式(b1)で表すことが好ましい。
【0038】
【化6】
(上記一般式(b1)中、R2bはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、q1bは0~4の整数を表す。なお、q1bが2以上の整数の場合、複数存在するR2bは互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。)
【0039】
上記式(b1)中のR2bは、一般式(1)中のRに対応しうる。したがって、上記一般式(b1)中のR2bは、一般式(1)と同様に、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表すことが好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基を表すことがさらに好ましい。
上記一般式(b1)中、q1bは、0~2であることが好ましい。なお、q1bが2以上の場合、複数存在するRb1は、互いに同一の基であっても、あるいは異なる基であってもよい。
【0040】
本実施形態の芳香族ジビニル化合物(b1)の具体例としては、例えば、1,2-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、2,5-ジメチル-1,4-ジビニルベンゼン、2,5-ジエチル-1,4-ジビニルベンゼン、cis,cis,β,β’-ジエトキシ-m-m-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニル-2,5-ジブチルベンゼン、1,4-ジビニル-2,5-ジヘキシルベンゼン、1,4-ジビニル-2,5-ジメトキシベンゼン及びこれらの誘導体からなる化合物等のジビニルベンゼン類、並びに、1,3-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、1,5-ジビニルナフタレン、1,6-ジビニルナフタレン、1,7-ジビニルナフタレン、2,3-ジビニルナフタレン、2,6-ジビニルナフタレン、2,7-ジビニルナフタレン、3,4-ジビニルナフタレン、1,8-ジビニルナフタレン、1,5-ジメトキシ-4,8-ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体からなる化合物等のジビニルナフタレン類が挙げられるが、これらに限定されない。
なお、本実施形態における芳香族ジビニル化合物(b1)は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、流動性の観点から、芳香族ジビニル化合物(b1)として、ジビニルベンゼン及びその芳香環上に置換基を有する化合物が好ましく、ジビニルベンゼンがより好ましい。また、本実施形態において、ジビニルベンゼンのビニル基の置換位置は、特に限定されないが、メタ体を主成分とすることが好ましい。ジビニルベンゼン中のメタ体の含有量は、ジビニルベンゼンの総量に対して40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上あることがより好ましい。
本実施形態において、ポリマレイミド化合物(A)の総量(100質量%)に対して、芳香族ジビニル化合物(b1)の構造単位は10~90質量%含有することが好ましく、20~90質量%含有することがより好ましい。上記芳香族ジビニル化合物(b1)の構造単位とは、芳香族ジビニル化合物(b1)の2つのエテニル基から水素原子をそれぞれ2つ(合計水素原子を4つ)取り除いた基をいう。
【0041】
<<芳香族モノビニル化合物(b2)>>
本実施形態におけるポリマレイミド化合物(A)は、芳香族アミン化合物(a)、芳香族ジビニル化合物(b1)及び無水マレイン酸の他、更に、その他の化合物を反応原料として用いてもよい。当該その他の化合物としては、例えば、エテニル基を一つ有する芳香族モノビニル化合物(b2)等が挙げられる。すなわち、実施形態において、芳香族アミン化合物(a)と、芳香族ジビニル化合物(b1)と、芳香族モノビニル化合物(b2)と、無水マレイン酸とを反応原料(1)とすることが好ましい。本実施形態のポリマレイミド化合物(A)が、その反応原料として芳香族アミン化合物(a)、芳香族ジビニル化合物(b1)及び無水マレイン酸に加えて、芳香族モノビニル化合物(b2)を用いることにより、最終的に得られるポリマレイミド化合物(A)の硬化物が低誘電正接の点に優れることから好ましい。
また、芳香族モノビニル化合物(b2)も芳香族ジビニル化合物(b1)と同様にカルボカチオンを生成するため、芳香族アミン化合物(a)を構成する芳香族炭化水素環中の炭素原子のうち、最も大きいHOMOの電子密度(ヒュッケル係数)を有する炭素原子に対して反応しやすい。
【0042】
本実施形態における芳香族モノビニル化合物(b2)は、例えば、ビニルベンゼン(スチレン)、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、及びこれらの芳香環上に炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基等の置換基が1以上置換した各種の化合物等が挙げられる。前記アルキル基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。中でも、低吸湿性を重視する場合、前記アルキル基又は前記アルコキシ基は、炭素原子数1~4であることが好ましい。前記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0043】
本開示のポリマレイミド化合物(A)の反応原料(1)となり得る芳香族モノビニル化合物(b2)は、下記一般式(b2)で表すことができる。
【0044】
【化7】
(上記一般式(b2)中、R9bはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、t1bは0~5の整数を表す。なお、t1bが2以上の整数の場合、複数存在するR9bは互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。)
【0045】
上記式(b2)中のR9bは、一般式(x)中のRに対応しうる。したがって、上記一般式(b1)中のR9bは、一般式(x)と同様に、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表すことが好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基を表すことがさらに好ましい。
上記一般式(b1)中、t1bは、1~4であることが好ましい。なお、t1bが2以上の場合、複数存在するR9bは、互いに同一の基であっても、あるいは異なる基であってもよい。
【0046】
本実施形態の芳香族モノビニル化合物(b2)の具体例としては、例えば、スチレン、フルオロスチレン、ビニル塩化ベンジル、アルキルビニルベンゼン(o-,m-,p-メチルスチレン、o-,m-,p-エチルビニルベンゼン)、o-,m-,p-(クロロメチル)スチレン及びこれらの誘導体からなる化合物等のビニルベンゼン類;4-ビニルビフェニル、4-ビニル-p-ターフェニル及びこれらの誘導体からなる化合物等のビフェニル化合物;並びに、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン及びこれらの誘導体からなる化合物等のビニルナフタレン類が挙げられるが、これらに限定されない。
特に、原料入手の観点から、アルキルビニルベンゼン及びその芳香環上に置換基を有する化合物が好ましく、エチルビニルベンゼンがより好ましい。
また、エチルビニルベンゼンのビニル基及びエチル基の置換位置は、特に限定されないが、メタ体を主成分とすることが好ましく、エチルビニルベンゼン中のメタ体の含有量は、エチルビニルベンゼンの総量に対して40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。
【0047】
本実施形態におけるポリマレイミド化合物(A)の反応原料(1)として、芳香族モノビニル化合物(b2)を用いる場合、前記反応原料(1)中の芳香族ジビニル化合物(b1)に対する芳香族モノビニル化合物(b2)のモル比((b1)/(b2))が、99/1~50/50であることが好ましく、より好ましくは、98/2~70/30である。
本実施形態において、ポリマレイミド化合物(A)の総量(100質量%)に対して、芳香族モノビニル化合物(b2)の構造単位は0~40質量%含有することが好ましく、0~30質量%含有することがより好ましい。上記芳香族モノビニル化合物(b2)の構造単位とは、芳香族モノビニル化合物(b2)の1つのビニル基から水素原子を2つ取り除いた基をいう。
【0048】
-無水マレイン酸-
本実施形態において、無水マレイン酸は、ポリマレイミド化合物(A)の反応原料(1)の必須成分であり、後述のポリマレイミド化合物(A)の製造方法の欄で説明する通り、芳香族アミン化合物(a)に由来するアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)をマレイミド化する反応に使用される。
【0049】
<ポリマレイミド化合物(A)の好ましい形態>
以下、本開示の好適なポリマレイミド化合物(A)の態様について、各芳香環がベンゼン環である場合を例に取り説明する。以下の化学構造式は、本開示を例示的に説明するためのものであり、本開示の範囲は、以下の化学構造式に限定されることはない。
【0050】
本実施形態にポリマレイミド化合物(A)は、以下の一般式(2)で表されることが好ましい。
【0051】
【化8】
(上記一般式(2)中、Rはそれぞれ独立して、アルキル基を表し、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、R及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、
は、以下の一般式(x):
【0052】
【化9】
(一般式(x)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、Rは炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表し、tは0~4の整数を表す。)
で表される置換基を表し、
21は水素原子又は下記一般式(i)で表される基を表し、M22は、水素原子、下記一般式(ii)で表される基又は下記一般式(iii)で表される基を表し、
【0053】
【化10】
[上記一般式(i)中、Rは炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、tは0~4の整数を表し、*は他の原子との結合を表す。なお、tが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。]
【0054】
【化11】
[上記一般式(ii)中、R1iiはアルキル基を表し、piiは0~4の整数を表す。なお、piiが2以上の整数である場合、複数存在するR1iiは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。上記一般式(iii)中、R1iiiはアルキル基を表し、Rは炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基;炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;又は水酸基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、piiiは0~3の整数を表し、tは0~4の整数を表し、r1iiiは、Xが結合されたベンゼン環1つ当たりの置換数の平均値であり、1~4の数を表し、*は他の原子との結合を表す。なお、piiiが2以上の整数である場合、複数存在するR1iiiは互いに同一であっても、又は異なっていてもよく、tが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。]
rは、Xが結合されたベンゼン環1つ当たりのXの置換数の平均値であり、0~4の数を表し、pは1~3の整数を表し、qは0~4の整数を表し、kは1~100の整数を表す。)
上記一般式(2)中、pが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよく、qが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよく、tが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。)で表されることが好ましい。
なお、上記一般式(2)中のR~R、X、p、q、r、t及びkの好ましい形態は、上記一般式(1)と同様である。さらには、上記一般式(i)は上記一般式(x)に対応し、上記一般式(ii)中のR1iiは上記一般式(1)中のRに対応し、上記一般式(iii)中のR1iiiは上記一般式(1)中のRに対応する。
【0055】
本開示のポリマレイミド化合物(A)の数平均分子量(Mn)は、350~2,000の範囲であることが好ましく、400~1,500の範囲であることがより好ましい。また、ポリマレイミド化合物(A)の重量平均分子量(Mw)は400~500,000の範囲であることが好ましく、450~400,000の範囲であることがより好ましい。
本開示のポリマレイミド化合物(A)は、低誘電率及び低誘電正接に優れる点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定から算出される分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.001~500の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1.001~400である。なお、GPC測定から得られるGPCチャートより、分子量分布が広範囲にわたり、高分子量成分が多い場合には、可撓性に寄与する高分子量成分の割合が多くなるため、従来のマレイミドを使用した硬化物と比較して、脆性が抑えられ、可撓性や柔軟性に優れた硬化物を得ることができ、好ましい態様となる。
なお、本実施形態のポリマレイミド化合物(A)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)を用いて、後述する実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【0056】
本実施形態におけるポリマレイミド化合物(A)が、下記一般式(3)で表されるインダン骨格(又はインダン骨格を有する構造単位)を含有する場合、当該ポリマレイミド化合物(A)の総量(100質量%)に対して、前記インダン骨格の比率は10質量%以下が好ましく、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がさらに好ましく、2質量%以下がよりさらに好ましく、0.9質量%以下が特に好ましい。
【0057】
【化12】
(上記一般式(3)中、R31、R32及びR33はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、R34はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基;又はメルカプト基を表し、qは、0~3の整数を表し、qが2以上の整数の場合、複数存在するR34は、互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。また、*は他の原子との結合を表す。)
上記一般式(3)中、R34はそれぞれ独立して、炭素原子数1~6のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基を表すことがより好ましい。また、上記一般式(3)中、R31、R32及びR33は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
本実施形態の硬化性組成物において、硬化性組成物全体に対して、ポリマレイミド化合物(A)を30質量%以上95質量%以下含有することが好ましく、40質量%以上85質量%以下含有することがより好ましく、50質量%以上80質量%以下含有することが最も好ましい。ポリマレイミド化合物(A)の含有量が50質量%以上80質量%以下の範囲であると耐熱性及び低吸湿性の観点で好ましい。
【0058】
<ポリマレイミド化合物(A)の製造方法>
以下、本開示のポリマレイミド化合物(A)の製造方法について説明する。
本実施形態のポリマレイミド化合物(A)は、その製法は特に限定されず、芳香族アミン化合物(a)と、芳香族ジビニル化合物(b1)と、無水マレイン酸とを反応原料(1)として使用する、あるいは、上記一般式(1)で表される構造単位を有する限りどのように製造されたものでもよい。本開示のポリマレイミド化合物(A)の製造方法の一例としては、例えば、以下の工程(1)及び(2)を含む製造方法が挙げられる。
工程(1):反応原料(2)として、芳香族アミン化合物(a)と、芳香族ジビニル化合物(b1)とを反応させて、本実施形態における中間体アミン化合物(c)を得る工程;
工程(2):反応原料(3)として、上記工程(1)で得られた中間体アミン化合物(c)と、無水マレイン酸とを反応させて、本開示のポリマレイミド化合物(A)を得る工程。
具体的には、本実施形態のポリマレイミド化合物(A)の製造方法は、芳香族アミン化合物(a)と、芳香族ジビニル化合物(b1)とを固体酸触媒下で反応させる工程(1)(架橋工程とも称する。)と、前記工程(1)により生成した中間体アミン化合物(c)と無水マレイン酸とを縮合させる工程(2)(縮合工程とも称する。)を有することが好ましい。
以下、本開示のポリマレイミド化合物(A)を製造する方法の各工程について順に説明する。
【0059】
<<工程(1):中間体アミン化合物(c)の製造工程>>
以下に、本実施形態における中間体アミン化合物(c)の製造工程について説明する。
本実施形態における工程(1)は、特に制限されないが、例えば、上述した芳香族アミン化合物(a)と、上述した芳香族ジビニル化合物(b1)(例えば、ジビニルベンゼン)と、更に必要に応じて、芳香族モノビニル化合物(b2)(例えば、エチルビニルベンゼン)等のその他の化合物を、酸触媒の存在下で反応させる工程である。これにより、中間体アミン化合物(c)が生成されうる。
【0060】
前記芳香族アミン化合物(a)と、前記芳香族ジビニル化合物(b1)の配合割合としては、得られる硬化物の製造時の成形性、硬化性の物性バランスを考慮すると、前記芳香族アミン化合物(a)1モルに対して、前記芳香族ジビニル化合物(b1)のモル割合として、0.1~10モルが好ましく、0.2~3モルがより好ましい。また、前記芳香族モノビニル化合物(b2)を併用する場合には、前記芳香族アミン化合物(a)1モルに対して、前記芳香族ジビニル化合物(b1)と前記芳香族モノビニル化合物(b2)との合計のモル割合として、0.1~10モルが好ましく、0.2~3モルがより好ましい。
また、上記反応を実施する具体的方法としては、全原料を一括装入し、そのまま所定の温度で反応させるか、又は、芳香族アミン化合物(a)と酸触媒とを装入し、所定の温度に保ちつつ、芳香族ジビニル化合物(b1)やその他の化合物(例えば、芳香族モノビニル化合物(b2))等を滴下させながら反応させる方法が一般的である。この際、滴下時間は、通常、0.1~12時間であり、6時間以下が好ましい。反応後、溶媒を使用した場合は、必要により、溶媒と未反応物を留去させて、前記中間体アミン化合物(c)を得ることができ、溶媒を使用しない場合は、未反応物を留去することによって目的物である前記中間体アミン化合物(c)を得ることができる。
【0061】
本実施形態の工程(1)に用いる酸触媒には、例えば、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂のような固体酸、ヘテロポリ塩酸等を挙げることができるが、反応後、ろ過により簡便に触媒除去が可能な固体酸がハンドリンク性の観点からも好ましく、他の酸を用いるときは、反応後、塩基による中和と水による洗浄を行うことが好ましい。
前記酸触媒の配合量は、仕込む原料(芳香族ジビニル化合物(b1)又は芳香族ジビニル化合物(b1)及び芳香族モノビニル化合物(b2)の混合物、及び、芳香族アミン化合物(a))の総量100質量部に対して、酸触媒を1~100質量部の範囲で配合されるが、ハンドリング性と経済性の点から、1~60質量部が好ましい。反応温度は、通常100~270℃の範囲であればよいが、異性体構造の生成を抑制し、熱分解等の副反応を避けるためには100~220℃が好ましい。
【0062】
本実施形態の工程(1)において、芳香族ジビニル化合物(b1)又は芳香族ジビニル化合物(b1)及び芳香族モノビニル化合物(b2)の混合物と、芳香族アミン化合物(a)との混合物反応時間、すなわち架橋反応の時間としては、短時間では反応が完全に進行せず、また長時間にすると生成物の熱分解反応等の副反応が起こることから、前記反応温度条件下で、通常は、のべ1~48時間の範囲であるが、好ましくは、のべ1~30時間の範囲である。
本実施形態における中間体アミン化合物(c)の製造方法においては、アニリン又はその誘導体が溶剤を兼ねるため、必ずしも他の溶剤は用いなくても良いが、溶剤を用いることも可能である。例えば、ジビニルベンゼンを原料として反応させる場合には、トルエン、キシレン、又はクロロベンゼン等の共沸脱水可能な溶剤を用いて、必要により触媒等に含まれる水分を共沸脱水させた後、溶媒を留去してから、上記反応温度の範囲で反応を行う方法を採用してもよい。
【0063】
上記工程(1)により得られる中間体アミン化合物(c)は、例えば、以下の一般式(4)で表されることが好ましい。
【0064】
【化13】
(上記一般式(4)中、Rはそれぞれ独立して、アルキル基を表し、Rはそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基;炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基;炭素原子数3~10のシクロアルキル基;ハロゲン原子;水酸基又はメルカプト基を表し、
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、R及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、
は、以下の一般式(x):
【0065】
【化14】
(一般式(x)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつR及びRの一方が水素原子、他方がメチル基であり、Rはアルキル基を表し、tは0~4の整数を表す。)
で表される置換基を表し、rは、Xが結合されたベンゼン環1つ当たりのXの置換数の平均値であり、0~4の数を表し、pは1~3の整数を表し、qは0~4の整数を表し、kは1~100の整数を表す。)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0066】
また、上記一般式(4)において、pが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。qが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。tが2以上の整数である場合、複数存在するRは互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
【0067】
なお、上記一般式(4)中のR~R、X、p、q、r、t及びkの好ましい形態は、上記一般式(1)と同様である。また、上記工程(1)により得られる中間体アミン化合物(c)の別の好ましい形態としては、ポリマレイミド化合物(A)の好ましい形態でもある上記一般式(2)中のN-置換マレイミド基をアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)に置換した構造が挙げられる。
【0068】
本実施形態において、中間体アミン化合物(c)のアミン当量としては、172~400g/当量であることが好ましく、より好ましくは172~350g/当量である。
なお、本明細書における中間体アミン化合物(c)のアミン当量の測定は、JIS K 0070(1992)に規定される中和滴定法に準拠した方法で測定した値とする。
【0069】
<<工程(2):マレイミド化>>
本実施形態における工程(2)は、工程(1)で得られた中間体アミン化合物(c)と、無水マレイン酸とを反応させる工程である。中間体アミン化合物(c)のアミノ基(-NH及び置換アミノ基を含む。)がマレイミド化反応により、前記アミノ基がN-置換マレイミド環に置換された化学構造を形成することができるため、本開示のポリマレイミド化合物(A)が得られる。
本実施形態において、工程(1)により得られた上記一般式(4)で表される中間体アミン化合物(c)を反応器に仕込み、適当な溶媒に溶解した後、触媒の存在下で無水マレイン酸と反応させる。そして反応後、水洗等により未反応の無水マレイン酸又は他の不純物を除去し、減圧によって溶媒を除くことにより目的物であるポリマレイミド化合物(A)を得ることができる。また、必要により反応時に脱水剤を用いてもよい。
【0070】
本実施形態の工程(2)において使用される有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、スルホラン等の非プロトン性溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられ、またこれらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0071】
本実施形態の工程(2)において、中間体アミン化合物(c)と無水マレイン酸との混合比率としては、中間体アミン化合物(c)のアミノ当量に対する無水マレイン酸の当量比を、1~5の範囲に配合することが好ましく、より好ましくは1~3で仕込み、中間体アミン化合物(c)と無水マレイン酸との合計量に対して、0.1~10の質量比、好ましくは0.2~5の質量比の有機溶媒中で反応させることが好ましい態様となる。
【0072】
本実施形態の工程(2)において使用可能な触媒としては、ニッケル、コバルト、ナトリウム、カルシウム、鉄、リチウム、マンガン等の酢酸塩、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩等の無機塩、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂のような固体酸、ヘテロポリ塩酸等を挙げることができるが、特にトルエンスルホン酸が好ましく用いられる。
【0073】
本実施形態の工程(2)に用いる脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸のような低級脂肪族カルボン酸無水物、五酸化リン、酸化カルシウム、酸化バリウム等の酸化物、硫酸等の無機酸、モレキュラーシーブ等の多孔性セラミック等が挙げられるが、好ましくは無水酢酸を用いることができる。
本実施形態の工程(2)において使用される触媒、脱水剤の使用量の制限は特にないが、通常、中間体アミン化合物(c)のアミノ基(-NH)1当量に対し、触媒は0.0001~1.0モル、好ましくは0.01~0.3モル、脱水剤は1~3モル、好ましくは1~1.5モルで使用することができる。
本実施形態の工程(2)において、マレイミド化の反応条件としては、上記中間体アミン化合物(c)と無水マレイン酸を仕込み、10~100℃、好ましくは30~60℃の温度範囲で、0.5~12時間、好ましくは1~4時間反応させた後、前記触媒を加えて、90~130℃、好ましくは105~120℃の温度範囲で、1~24時間、好ましくは1~10時間反応させることができる。
【0074】
(シアネート化合物(B))
本開示の硬化性組成物は、ポリマレイミド化合物(A)に加えて、シアネート化合物(B)を含有する。前記シアネート化合物(B)は、誘電率又は誘電正接等の誘電特性に優れるため、MHz帯からGHz帯という高周波数帯(高周波領域)においても、十分に低い誘電率を維持しつつ、十分に低い誘電正接を発現する硬化物を得ることができる硬化性成物を調製することができるため、高周波用成形材料として用いることができ、有用である。また、ポリマレイミド化合物(A)との反応により、硬化剤として作用し、三次元架橋を生じることができるため、耐熱性、低熱膨張性、密着性、更には、機械特性又は耐薬品性にも優れた硬化物を得ることができ、好ましい態様となる。
【0075】
本実施形態の硬化性組成物において、硬化性組成物全体に対して、シアネート化合物(B)を5質量%以上60質量%以下含有することが好ましく、10質量%以上50質量%以下含有することがより好ましく、12質量%以上45質量%以下含有することがさらに好ましく、15質量%以上40質量%以下含有することが特に好ましく、20質量%以上30質量%以下含有することが最も好ましい。シアネート化合物(B)の含有量が20質量%以上30質量%以下の範囲であると耐熱性の観点で好ましい。
【0076】
本実施形態のシアネート化合物(B)は、1以上のシアネート基(シアン酸エステル:-O-C≡N)を有する化合物でありうる。前記シアネート化合物(B)としては、例えば、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用してもよい。
シアネート化合物(B)(上記シアネートエステル樹脂)の中でも、特に耐熱性に優れる硬化物が得られる点においては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂が好ましい。
【0077】
(シアネート化合物(B)以外の硬化剤(C))
本実施形態の硬化性組成物には、シアネート化合物(B)以外の硬化剤(C)を本発明の硬化を損なわない範囲で加えることもできる。なお、硬化性組成物全量100質量%に対して、前記硬化剤(C)は、2質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上10質量%以下が最も好ましい。硬化剤(C)の含有量が5質量%以上10質量%以下の範囲であると硬化性、低誘電正接の観点で好ましい。
【0078】
本実施形態の硬化剤(C)としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ-ル系化合物、ポリフェニレンエーテル系化合物、不飽和二重結合含有置換基を有する化合物、ジエン系ポリマーなどが挙げられる。これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
【0079】
上記アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF-アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。
【0080】
上記アミド系化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0081】
上記酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0082】
上記フェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0083】
上記ポリフェニレンエーテル系化合物としては、例えば、下記一般式(5)又は(16)で表される構造を有することが好ましい。
【0084】
【化15】
【0085】
【化16】
【0086】
上記一般式(5)及び(6)中において、Rd1~Rd8はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルケニル基、炭素原子数3~5のシクロアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、炭素原子数1~5のチオエーテル基、炭素原子数2~5のアルキルカルボニル基、炭素原子数2~5のアルキルオキシカルボニル基、炭素原子数2~5のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数1~5のアルキルスルホニル基等が挙げられる。上記一般式(5)及び(6)の構造の末端構造としては、水酸基若しくは反応性二重結合含有基を有するもの等が挙げられる。また、vは1~30の整数値であり、w及びuも1~30の整数値である。
【0087】
上記炭素原子数1~5のチオエーテル基としては、特に制限されないが、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基等が挙げられる。
【0088】
上記炭素原子数2~5のアルキルカルボニル基としては、特に制限されないが、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が挙げられる。
【0089】
上記炭素原子数2~5のアルキルオキシカルボニル基としては、特に制限されないが、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0090】
上記炭素原子数2~5のアルキルカルボニルオキシ基としては、特に制限されないが、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0091】
上記炭素原子数1~5のアルキルスルホニル基としては、特に制限されないが、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基等が挙げられる。
【0092】
本実施形態において、上記一般式(5)及び(6)中のRd1~Rd8は互いに同一であっても又は異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数3~5のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基であることがさらに好ましく、水素原子、メチル基であることが特に好ましい。
【0093】
上記一般式(6)中のYは、フェノール性水酸基を2つ有する芳香族化合物由来の2価の芳香族基が挙げられる。
そして、前記フェノール性水酸基を2つ有する芳香族化合物としては、特に制限されないが、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールA等が挙げられる。これらのうち、ヒドロキノン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールFであることが好ましく、4,4’-ビフェノール、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールAであることがより好ましい。
また、前記フェノール性水酸基を2つ有する芳香族化合物の2つのフェノール性水酸基は、フェニレンエーテル結合(Yと結合する2つの酸素原子)を形成することとなるため、Yはフェノール性水酸基を2つ有する芳香族化合物由来の2価の芳香族基となる。換言すると、上記フェノール性水酸基を2つ有する芳香族化合物から任意の水素原子を2つ取り除いた基を「フェノール性水酸基を2つ有する芳香族化合物由来の2価の芳香族基」とする。
【0094】
上記不飽和二重結合含有置換基を有する化合物としては、例えば、分子中に2個以上の不飽和結合含有置換基を有する化合物であれば特に限定されないが、前記不飽和結合含有置換基として、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、スチリルメチル基などを有する化合物が挙げられる。
【0095】
上記ジエン系ポリマーとしては、例えば、極性基により変性されていない非変性ジエン系ポリマーが挙げられる。ここで、極性基とは、誘電特性に影響を及ぼす官能基であり、例えば、フェノール基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。前記ジエン系ポリマーとしては、特に限定されず、例えば、1,2-ポリブタジエンや1,4-ポリブタジエン等を用いることができる。
【0096】
上記ジエン系ポリマーとして、ポリマー鎖中のブタジエン単位の50%以上が1,2-結合であるブタジエンのホモポリマー及びその誘導体を用いることもできる。
【0097】
(他の樹脂(D))
また、本開示の目的を損なわない範囲であれば、ポリマレイミド化合物(A)及びシアネート化合物(B)以外に、他の樹脂(D)を含有してもよい。当該他の樹脂(D)としては、前記ポリマレイミド化合物(A)以外のビスマレイミド類、アリルエーテル系化合物、アリルアミン系化合物、トリアリルシアヌレート、アルケニルフェノール系化合物、ビニル基含有ポリオレフィン化合物等、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、スチレン無水マレイン酸共重合体、ポリブタジエン及びその変性物、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、シリコーンゲル、シリコーンオイル等を適宜配合することも可能である。他の樹脂(D)の含有量は、硬化性組成物全量100質量%に対して、2質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上10質量%以下が最も好ましい。他の樹脂(D)の含有量が5質量%以上10質量%以下の範囲であると耐熱性および相溶性の観点で好ましい。
【0098】
(硬化促進剤)
本実施形態の硬化性組成物は、必要に応じて、硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、前記シアネート化合物(B)を使用するため、例えば、フェノール類、アミン類、ルイス酸類、3級スルホニウム塩、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、エポキシ基含有化合物などが挙げられる。これらの中でも、ノニルフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、銅、鉛、スズ、マンガン、ニッケル、鉄、亜鉛、コバルト等のカルボン酸塩、チタンテトラ-n-ブトキシドとそのポリマー、銅、ニッケル、コバルト等のペンタジオナート塩、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムテトラ(メチルフェニル)ボレート、オクチル酸亜鉛などを用いることができる。また、前記硬化促進剤は、前記シアネート化合物(B)との相溶性が高く、硬化反応が円滑に進行するため好ましい。さらに、これらの中でも、テトラフェニルホスホニウムテトラ(メチルフェニル)ボレートが特に好ましい。前記硬化促進剤がテトラフェニルホスホニウムテトラ(メチルフェニル)ボレートを使用することで、他のものに比べて、より早く硬化反応が進行し好ましい。また、前記硬化促進剤の添加量は、例えば、前記シアネート化合物(B)100質量部に対して0.001~1.00質量部であることが好ましい。
【0099】
(添加剤)
本実施形態の硬化性組成物は、必要に応じて、添加剤を適宜併用することもできる。前記添加剤としては、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤、非ハロゲン系難燃剤、無機充填材、難燃剤、溶媒等が挙げられる。添加剤の含有量は、硬化性組成物全量100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%以上10質量%以下が最も好ましい。
【0100】
上記難燃剤としては、無機リン系難燃剤、有機リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤又は非ハロゲン系難燃剤が挙げられる。本実施形態の硬化性組成物には、目的を損なわない範囲で、難燃性を発揮させるために、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合することがより好ましい。前記非ハロゲン系難燃剤として、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、これらを単独、あるいは、組み合わせて用いることができる。
【0101】
本実施形態の硬化性組成物には、必要に応じて、無機充填材を配合することができる。前記無機充填材として、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、硬化性組成物の全体量に対して30質量%以上50質量%以下が特に好ましい。また、前記硬化性組成物を以下に詳述する導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0102】
本実施形態の硬化性組成物は、硬化性組成物全体(100質量%)に対して、ポリマレイミド化合物(A)及びシアネート化合物(B)の合計含有量の下限が、40質量%、42質量%、45質量%、47質量%、48%質量又は50質量%であることが好ましい。また、前記合計含有量の上限は、100質量%、99質量%、98質量%又は97質量%であることが好ましい。上記上限値と上記下限値とは任意に組み合わせすることができる。したがって、例えば、本実施形態の硬化性組成物は、硬化性組成物全体(100質量%)に対して、ポリマレイミド化合物(A)及びシアネート化合物(B)の合計含有量が40質量%以上100質量%以下であることが好ましく、ポリマレイミド化合物(A)及びシアネート化合物(B)の合計含有量が45質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、ポリマレイミド化合物(A)及びシアネート化合物(B)の合計含有量が50質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の硬化性組成物は、硬化性組成物全体(100質量%)に対して、ポリマレイミド化合物(A)、シアネート化合物(B)、無機充填材及び添加剤の合計含有量の下限が、70質量%、72質量%、75質量%、77%質量又は80質量%であることが好ましい。また、前記合計含有量の上限は、100質量%、99質量%、98質量%又は97質量%であることが好ましい。前記上限値と前記下限値とは、ポリマレイミド化合物(A)及びシアネート化合物(B)の合計含有量の範囲と同様に任意に組み合わせすることができる。
本実施形態の硬化性組成物は、硬化性組成物全体(100質量%)に対して、ポリマレイミド化合物(A)、シアネート化合物(B)及び添加剤の合計含有量の下限が、43質量%、45質量%、48質量%、50%質量又は53質量%であることが好ましい。また、前記合計含有量の上限は、100質量%、99質量%、98質量%又は97質量%であることが好ましい。前記上限値と前記下限値とは、ポリマレイミド化合物(A)及びシアネート化合物(B)の合計含有量の範囲と同様に任意に組み合わせすることができる。
【0103】
[硬化物]
本開示の硬化物は、前記硬化性組成物により得られることが好ましい。前記硬化物は、前記硬化性組成物を硬化反応させて得ることができる。前記硬化性組成物は、上述した各成分(例えば、硬化剤、配合剤)を均一に混合することにより得られ、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。前記硬化物としては、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
前記硬化(熱硬化)反応としては、無触媒下でも容易に行われるが、さらに速く反応させたい場合には、有機過酸化物、アゾ化合物のような重合開始剤やホスフィン系化合物、三級アミンの様な塩基性触媒の添加が効果的である。例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、トリフェニルホスフィン、トリエチルアミン、イミダゾール類等があり、配合量としては、硬化性樹脂組成物全体の0.05~5質量%が好ましい。
【0104】
[耐熱材料及び電子材料]
本開示のポリマレイミド化合物(A)及びシアネート化合物(B)を含有する硬化性組成物により得られる硬化物が、優れた低吸湿性及び低誘電特性を両立することから、耐熱部材又は電子部材に好適に使用可能である。特に、プリプレグ、回路基板、半導体封止材、半導体装置、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、導電性ペーストを用いた接着剤やレジスト材料などに好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用でき、高耐熱性又は寸法変化率が小さいプリプレグとして特に適している。また、前記硬化性組成物に含まれる前記ポリマレイミド化合物(A)は、各種溶剤への優れた溶解性を示すことから塗料化が可能である。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【0105】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて製造される代表的な製品(回路基板、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、ビルドアップ基板、ビルドアップフィルム、導電ペースト)について例を挙げて説明する。
【0106】
[回路基板]
本開示は、下記プリプレグ、及び、銅箔の積層体である回路基板である。本実施形態の硬化性組成物からプリント回路基板を得る方法としては、上記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着させる方法が挙げられる。
【0107】
[半導体封止材料]
本開示は、本実施形態の硬化性組成物を含有する半導体封止材料である。本実施形態の硬化性組成物を用いて得られる半導体封止材料は、本開示のポリマレイミド化合物(A)及びシアネート化合物(B)を使用することにより、吸湿性、低誘電正接性率が改善されているため、製造工程における加工性や成形性、耐リフロー性に優れ、好ましい態様となる。
前記半導体封止材料に用いられる本実施形態の硬化性組成物には、無機充填材を含有することができる。なお、前記無機充填材の充填率としては、本実施形態の硬化性組成物100質量部に対して、例えば、無機充填材を0.5~1200質量部の範囲で用いることができる。また、当該無機充填材としては、上記の通り、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、ノイブルグ珪土、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、等を挙げることができる。
【0108】
前記半導体封止材料を得る方法としては、本実施形態の硬化性組成物に、更に任意成分である、硬化促進剤及び/又は添加剤を必要に応じて、押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法などが挙げられる。パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などの高充填化、又は溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などを用いるとよい。その充填率は、硬化性組成物100質量部当たり、無機充填材を30~95質量部の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
【0109】
[半導体装置]
本開示は、前記半導体封止材料の硬化物を含む半導体装置である。本実施形態の硬化性組成物を用いて得られる半導体封止材料を用いて得られる半導体装置は、本開示のポリマレイミド化合物(A)及びシアネート化合物(B)を使用するため、低粘度で流動性に優れ、更に、吸湿性、熱時弾性率又は金属材料との接着性が改善されているため、製造工程における加工性や成形性、耐リフロー性に優れ、好ましい態様となる。
【0110】
前記半導体装置を得る方法としては、前記半導体封止材料を注型、又は、トランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに室温(20℃)~250℃の温度範囲で、加熱硬化する方法が挙げられる。
【0111】
[プリプレグ]
本開示は、補強基材、及び、前記補強基材に含浸した本実施形態の硬化性組成物の半硬化物を有するプリプレグである。上記硬化性組成物からプリプレグを得る方法としては、後述する有機溶媒を配合して、ワニス化した硬化性組成物を、補強基材(紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布など)に含浸したのち、用いた溶媒種に応じた加熱温度、好ましくは50~170℃で加熱することによって、前記硬化性組成物を半硬化(あるいは未硬化)してプリプレグを得る方法が挙げられる。この時用いる硬化性組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の組成物に含まれる樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
本実施形態において、硬化性組成物の半硬化物は、加熱温度及び加熱時間を調整して、硬化反応を完了させずに途中で停止させることによって得られる。また、例えば、半硬化物は、例えば85%以下5%以上の硬化度でありうる。一方、本実施形態における硬化物は、半硬化物より高い硬化度を有しうる。
なお、当該半硬化物の硬化度は、硬化性組成物を加熱する際の硬化発熱量と、その半硬化物の硬化発熱量をDSCにより測定し、以下の式から算出できる。
硬化度(%)=[1-(半硬化物の硬化発熱量/硬化性組成物の硬化発熱量)]×100
【0112】
本実施形態のプリプレグの製造に用いる有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、下記のようにプリプレグからプリント回路基板をさらに製造する場合には、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶媒を用いることが好ましく、また、不揮発分が40~80質量%となる割合で用いることが好ましい。また、本実施形態のプリプレグの製造に用いる補強基材としては、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の無機繊維、有機繊維からなる織布や不織布、またはマット、紙等であり、これらを単独、あるいは、組み合わせて用いることができる。
【0113】
本実施形態のプリプレグの熱処理の条件としては、使用する有機溶剤、触媒、各種添加剤の種類や使用量などに応じて、適宜選択されるが、通常、80~220℃の温度で、3分~30分といった条件で行われることが好ましい。
【0114】
[ビルドアップ基板]
本実施形態の硬化性組成物からビルドアップ基板を得る方法としては、以下の工程1~3を経由する方法が挙げられる。工程1では、まず、ゴム、フィラーなどを適宜配合した前記硬化性組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。工程2では、必要に応じて、硬化性組成物が塗布された回路基板に所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、前記基板に凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。工程3では、工程1~2の操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップしてビルドアップ基板を成形する。なお、前記工程において、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うとよい。また、本実施形態におけるビルドアップ基板は、銅箔上で当該組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~300℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0115】
[ビルドアップフィルム]
本開示は、本実施形態の硬化性組成物を含有するビルドアップフィルムである。本実施形態のビルドアップフィルムを製造する方法としては、上記硬化性組成物を、支持フィルム(Y)上に塗布したのち、乾燥させて、支持フィルム(Y)上に硬化性組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとすることにより製造する方法が挙げられる。
硬化性組成物からビルドアップフィルムを製造する場合、該フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70~140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール、あるいは、スルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。なお、得られるビルドアップフィルムや回路基板(銅張積層板等)においては、相分離などに起因する、局所的に異なる特性値を示すといった現象を生じさせず、任意の部位において一定の性能を発現させるため、外観均一性が要求される。
【0116】
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は、通常0.1~0.5mm、深さは通常0.1~1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0117】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の上記硬化性組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶媒を乾燥させて硬化性組成物からなる組成物層(X)を形成させることにより製造することができる。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0118】
形成される組成物層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とすることが好ましい。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。なお、本実施形態における組成物層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0119】
上記した支持フィルム(Y)及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
【0120】
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
なお、前記のようにして得られたビルドアップフィルムから多層プリント回路基板を製造することができる。例えば、前記樹脂組成物層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、前記樹脂組成物の層(X)を回路基板に直接接するように回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。また必要により、ラミネートを行う前にビルドアップフィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を70~140℃とすることが好ましく、圧着圧力を1~11kgf/cm(9.8×10~107.9×10N/m)とすることが好ましく、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0121】
<導電ペースト>
本発明の硬化性組成物から導電ペーストを得る方法としては、例えば、導電性粒子を該組成物中に分散させる方法が挙げられる。上記導電ペーストは、用いる導電性粒子の種類によって、回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とすることができる。
【実施例0122】
本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、合成したポリマレイミド化合物(A)の物性測定は以下の通り実施し、表1に示した。
【0123】
(1)アミン当量
以下の測定法により、中間体アミン化合物(c)のアミン当量を測定した。
500mL共栓付き三角フラスコに、試料である中間体アミン化合物(c)を約2.5g、ピリジン7.5g、無水酢酸2.5g、トリフェニルホスフィン7.5gを精秤後、冷却管を装着し120℃に設定したオイルバスにて150分加熱還流する。
冷却後、蒸留水5.0mL、プロピレングリコールモノメチルエーテル100mL、テトラヒドロフラン75mLを加え、0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液で電位差滴定法により滴定した。同様の方法で空試験を行なって補正した。
アミン当量(g/当量)=(S×2,000)/(Blank-A)
S:試料の量(g)
A:0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液の消費量(mL)
Blank:空試験における0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液の消費量(mL)
【0124】
(2)GPC測定
以下の測定装置、測定条件を用いて、実施例及び比較例で得られたポリマレイミド化合物(A)についての、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
「測定装置」
東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
「測定条件」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:合成例で得られたポリマレイミド化合物(A)の樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0125】
(3)FD-MS測定
実施例で得られたポリマレイミド化合物(A)のFD-MSスペクトルは、以下の測定装置、測定条件を用いて測定した。
測定装置:JMS-T100GC AccuTOF
測定条件
測定範囲:m/z=4.00~2000.00
変化率:51.2mA/min
最終電流値:45mA
カソード電圧:-10kV
記録間隔:0.07sec
【0126】
(4)13C-NMR測定
実施例で得られたポリマレイミド化合物(A)の13C-NMRスペクトルは以下の測定装置、測定条件にて測定した。
13C-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECZ400S」
共鳴周波数:100MHz
積算回数:4000回
溶媒:クロロホルム-d
試料濃度:12質量%
緩和試薬:クロム(III)アセチルアセトネート
【0127】
(5)ポリマレイミド化合物(A)の合成
<合成例1>ポリマレイミド化合物(A-1)の合成
(I)中間体アミン化合物(c-1)の合成
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ及び攪拌機を取り付けたフラスコに、2-エチルアニリン242.4g(2.0mol)、キシレン242g及び活性白土80gを仕込み、攪拌しながら130℃まで昇温し、30分間ホールドした。その後、DVB-810(ジビニルベンゼン/エチルスチレンの混合物(ジビニルベンゼン/エチルスチレン=81/19(mol)%)、日鉄ケミカル&マテリアル製)272.0gを2時間かけて滴下し、そのまま1時間反応させた。その後、6時間かけて190℃に昇温させ、10時間ホールドした。反応後、100℃まで空冷し、トルエン300gで希釈してろ過により活性白土を除き、減圧下で溶剤及び未反応物等の低分子量物を留去することにより、中間体アミン化合物(c-1)を得た。中間体アミン化合物(c-1)のアミン当量は214g/当量であった。
(II)マレイミド化
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ及び攪拌機を取り付けた2Lフラスコに無水マレイン酸117.7g(1.2mol)、トルエン700gを仕込み室温で攪拌した。次に中間体アミン化合物(c-1)を214g(1当量)とDMF175gとの混合溶液を1時間かけて滴下し、その後2時間反応させた。その反応液にp-トルエンスルホン酸一水和物37.1gを加え、115℃まで加熱し還流下で共沸してくる水とトルエンとを冷却・分離した後、トルエンだけを系内に戻して脱水反応を5時間行った。室温まで空冷後、49%NaOHで中和した。その後、60℃でトルエンと水を減圧留去し、フラスコ内に残ったDMF溶液にMEK(メチルエチルケトン)600gを加えた。その溶液を60℃に昇温後、イオン交換水200gで3回分液処理して溶液中の塩を取り除いた。さらに硫酸ナトリウムを加え乾燥後、減圧濃縮し得られた反応物を80℃で真空乾燥を行い、ポリマレイミド化合物(A-1)を得た。当該ポリマレイミド化合物(A-1)の化学構造及び特性解析は、GPC、FD-MS及び13C-NMRを用いて確認した。その測定結果を、図1A図1Cに示す。また、GPC測定結果より、ポリマレイミド化合物(A-1)のMnは998、Mwは367,834、Mw/Mnは368.697であった。
【0128】
<実施例1~2及び比較例1~2>
<<硬化性組成物の調製と硬化物の作製>>
上記合成例1で得られたポリマレイミド化合物(A-1)と、以下の式(7)で表される比較用マレイミド(1)(「BMI-1000」大和化成工業株式会社製)と、
【0129】
【化17】
シアネート化合物(B)としてシアネートエステル(B-1)(2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン(東京化成工業株式会社製)と、TPP-MK(Tetra phenyl phosphonium tetra-p-tolylborate)と、を以下の表1に示す割合で配合し、実施例1~2及び比較例1~2の硬化性組成物を調製した。
【0130】
次いで、実施例1~2及び比較例1~2の硬化性組成物を以下の硬化条件を用いて硬化することにより、実施例1~2及び比較例1~2の硬化性組成物に対応する硬化物をそれぞれ作製した。そして、下記の方法で誘電率及び誘電正接、吸湿性の物性評価を行った。その結果を表1に示す。
<<硬化条件>>
真空プレスを用いて200℃で2時間の後、250℃で2時間加熱硬化した。
成型後板厚:1.3mm
<<誘電率及び誘電正接の評価>>
JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザ「E8362C」を用い空洞共振法にて、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を測定した。
<<吸湿性の評価>>
本実施例・比較例において、低吸湿性の評価方法として、以下の方法により吸湿率(%)を算出して評価した。
上記得られた硬化物から5mm×55mm×1.3mmの寸法に切り出した試験片を、プレッシャークッカー試験機を使用して、85℃、85%RH、1気圧の条件で50時間保持後、下記式にて、吸湿率(%)を算出して評価した。
吸湿率(%)=(試験後の試験片の質量-試験前の試験片の質量)/(試験前の試験片の質量)×100
【0131】
【表1】
【0132】
上記表1に示す結果から、実施例1~2と比較例1~2とを比較すると、実施例1~2のポリマレイミド化合物(A)及びシアネート化合物(B)を含有した硬化性組成物を用いることにより、低誘電率及び低誘電正接性、高温多湿下における低吸湿率が達成されたことを確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本開示によれば、硬化時において、低誘電特性及び低吸湿率を示す硬化性組成物及びその硬化物を提供できる。
図1A
図1B
図1C